説明

感光性組成物、感光性フィルム、感光性積層体、永久パターン形成方法、及びプリント基板

【課題】難燃性、耐折性、及びめっき耐性の全てが優れる感光性組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(G)で表される構造単位を有する酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂と、平均粒子径が1.0μm以下の特定の有機リン酸金属塩と、重合性化合物を含有する感光性組成物。


一般式(G)中、R〜Rは水素原子又は1価の有機基を表す。Aは2価の有機基を表す。Xは酸素原子、硫黄原子又は−N(R)−を表す。前記Rは水素原子又は1価の有機基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板用ソルダーレジスト材料として好適な感光性組成物、並びに、該感光性組成物を用いた感光性フィルム、感光性積層体、永久パターン形成方法、及びプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ソルダーレジスト等の永久パターンを形成するに際して、支持体上に感光性組成物を塗布し、乾燥することにより感光層を形成した感光性フィルムが用いられてきている。ソルダーレジスト等の永久パターンを形成する方法としては、例えば、永久パターンが形成される銅張積層板等の基体上に、感光性フィルムを積層させて積層体を形成し、該積層体における感光層に対して露光を行い、該露光後、感光層を現像してパターンを形成させ、その後硬化処理等を行うことにより永久パターンを形成する方法等が知られている。
【0003】
前記ソルダーレジストに用いる感光性組成物において難燃性の向上を図ることは重要な課題の一つであり、種々の検討がなされている。
【0004】
例えば、カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを有するウレタン樹脂(A)と、体積平均粒子径が0.1μm〜1μmの範囲であるホスフィン酸塩(B)をウレタン樹脂(A)100質量部に対して、5質量部〜50質量部含む感光性難燃樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
この提案の技術では、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマー(a)中のカルボキシル基と、エポキシ基又はオキセタン基とエチレン性不飽和基とを有する化合物(b)中のエポキシ基又はオキセタン基と、を反応してなる水酸基含有ウレタンプレポリマー(c)中の水酸基と、多塩基酸無水物(d)中の酸無水物基と、を反応させてなるウレタン樹脂が用いられている。
【0005】
また、(A)ビフェニル骨格を有するノボラック型酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂と、(B)ホスフィン酸塩と、(C)光重合性化合物と、(D)光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献2、及び3参照)。
【0006】
また、(A)ビフェニル骨格を有するノボラック型酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂と、(B)ポリウレタン樹脂と、(C)ホスフィン酸塩と、(D)分子内に少なくとも一つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(E)光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献4参照)。
この提案の技術では、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物との反応生成物であるポリウレタン樹脂が用いられている。
【0007】
しかし、これらの提案の技術では、求められる難燃性は得られるものの、耐折性が十分ではないという問題がある。
【0008】
感光性組成物に使用可能なホスフィン酸塩以外の難燃剤としては、フォスファゼン化合物、縮合リン酸エステル、環状リン化合物などが挙げられる。
しかし、これらの難燃剤を用いると、めっき耐性が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−117452号公報
【特許文献2】特開2010−169810号公報
【特許文献3】特許4586922号公報
【特許文献4】特開2009−251585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような状況を鑑み、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、難燃性、耐折性、及びめっき耐性の全てが優れる感光性組成物、並びに、該感光性組成物を用いた感光性フィルム、感光性積層体、永久パターン形成方法、及びプリント基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
<1>酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂と、下記一般式(1)で表されるリン酸金属塩と、重合性化合物と、光重合開始剤とを含有し、
該酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂が、下記一般式(G)で表される構造単位を有し、
該一般式(1)で表されるリン酸金属塩の平均粒子径が、1.0μm以下である感光性組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
一般式(1)中、A及びBは、それぞれ独立に、直鎖状の炭素数1〜6のアルキル基、分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、及びKのいずれかを表す。mは、1〜4の整数を表す。
【0014】
【化2】

【0015】
一般式(G)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、及び1価の有機基のいずれかを表す。Aは、2価の有機基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、及び−N(R)−のいずれかを表す。前記Rは、水素原子、及び1価の有機基のいずれかを表す。
<2>酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂が、ポリマージオール残基を繰り返し単位として含む<1>に記載の感光性組成物。
<3>前記ポリマージオール残基の質量平均分子量が400〜8,000である<2>に記載の感光性組成物。
<4>酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂中における前記ポリマージオール残基の質量比率が10〜60%である<2>または<3>に記載の感光性組成物。
<5>酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂が、芳香族基を有する<1>〜<4>のいずれか1項に記載の感光性組成物。
<6>酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂が、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フェナントレン型、及びアントラセン型から選択される少なくともいずれかの骨格を有する<1>〜<5>のいずれか1項に記載の感光性組成物。
<7>一般式(1)で表されるリン酸金属塩の最大粒子径(d100)が、5μm以下である<1>〜<6>のいずれか1項に記載の感光性組成物。
<8>更に、熱架橋剤を含有する<1>〜<7>のいずれか1項に記載の感光性組成物。
<9><1>〜<8>のいずれか1項に記載の感光性組成物を含む感光層を支持体上に有してなることを特徴とする感光性フィルム。
<10>基体上に、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の感光性組成物を含む感光層を有することを特徴とする感光性積層体。
<11><1>〜<8>のいずれか1項に記載の感光性組成物により形成された感光層に対して露光を行うことを少なくとも含むことを特徴とする永久パターン形成方法。
<12><11>に記載の永久パターン形成方法により永久パターンが形成されることを特徴とするプリント基板。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、前記目的を達成することができ、難燃性、耐折性、及びめっき耐性の全てが優れる感光性組成物、並びに、該感光性組成物を用いた感光性フィルム、感光性積層体、永久パターン形成方法、及びプリント基板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(感光性組成物)
本発明の感光性組成物は、酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂と、リン酸金属塩と、重合性化合物と、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、架橋剤などのその他の成分を含有する。
【0018】
<酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂>
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、酸基及びエチレン性不飽和基を有するポリウレタン樹脂であって、下記一般式(G)で表される構造単位を有する。
前記酸基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基が挙げられる。
前記エチレン性不飽和基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル基が挙げられる。
前記エチレン性不飽和基を有する官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルフェニル基、ビニルエステル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、アリルエステル基などが挙げられる。
【0019】
【化3】

【0020】
一般式(G)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、及び1価の有機基のいずれかを表す。Aは、2価の有機基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、及び−N(R)−のいずれかを表す。前記Rは、水素原子、及び1価の有機基のいずれかを表す。ここで、R〜RやRにおける1価の有機基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、ウレイド基、ウレタン基などが挙げられ、これらの基はさらにこれらの置換基で置換されていてもよい。なお、以降の各一般式における1価の有機基、置換基も同様の基が挙げられる。
リン酸金属塩を含有する感光性組成物は、通常、耐折性が十分ではないが、前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂が、前記一般式(G)で表される構造単位を有することにより、予想外に耐折性が優れることを、本発明者らは見出した。
【0021】
前記一般式(G)中のRの1価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキル基が好ましい。前記一般式(G)中のRとしては、水素原子、メチル基が好ましい。
前記一般式(G)中のR、及びRの1価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキル基が好ましい。
前記一般式(G)中のR、及びRとしては、水素原子が好ましい。
前記一般式(G)中のAとしては、2価の有機残基であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、アルキレン基のアルキレン鎖中に−O−、−S−、―N(RA1)−、−OCONH−、−OCONH−ZA1−NHCOO−、−O−ZA1−O−、−OCO−ZA1Z−COO−、−S−ZA1−S−を有する基が挙げられる。ここで、RA1は水素原子、1価の有機基を表し、ZA1はアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、2価のヘテロ環基を表す。具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。これらの中でもメチレン基が好ましい。
前記一般式(G)中のXとしては、酸素原子が好ましい。
前記一般式(G)中のRの1価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基がより好ましい。
【0022】
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂に、前記一般式(G)で表される構造単位を導入する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジイソシアネート化合物と、下記一般式(G−1)で表される化合物とを反応させる方法などが挙げられる。
【0023】
【化4】

【0024】
一般式(G−1)中、R〜R、A、及びXは、前記一般式(G)中のR〜R、A、及びXと同じである。
【0025】
前記一般式(G−1)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、芳香族基を有することが好ましい。また、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フェナントレン型、及びアントラセン型から選択される少なくともいずれかの骨格を有することが好ましい。
ここで、前記芳香族という用語は、文献、特にJerry MARCH,MARCH’S Advanced Organic Chemistry,第5版,John Wiley and Sons,2001,37頁以下に定義されているような芳香族の慣用概念を意味する。
【0030】
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂における前記芳香族基を有する骨格としては、例えば、下記一般式(I)で表される基などが挙げられる。
【0031】
【化8】

【0032】
一般式(I)中、Xは、直接結合、−CH−、−C(CH−、−SO−、−S−、−CO−、又は−O−を表す。R、R、R、及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、一価の有機基、ハロゲン原子、−OR、―N(R10)(R11)、又は−SR12を表し、R、R10、R11、及びR12は、水素原子、又は一価の有機基を表す。
としては、現像性の観点で、−CH−、−O−が好ましく、−CH−が特に好ましい。
、R、R、R、R、R10、R11、及びR12における一価の有機基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、−OR13(ただし、R13は一価の有機基を表す)、アリール基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素などが挙げられる。
、R、R、及びRとしては、解像性の観点から、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、−OR13が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0033】
また、前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、単官能でも多官能でもよいアルコール基を有する化合物と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)との反応生成物で表される構造単位を含有するポリウレタン樹脂であることが好ましい。
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂中の前記MDIの質量組成比率は、30質量%以上が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましく、33質量%〜70質量%が更に好ましく、35%質量%〜70質量%が特に好ましい。
前記MDIの質量組成比率が、30質量%未満であると、硬度が低下してしまうことがある。
【0034】
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、下記一般式(i)で表されるジイソシアネート化合物の少なくとも1種と、下記一般式(ii)で表されるジオール化合物の少なくとも1種と、の反応生成物で表される構造単位を基本骨格としつつ、前記一般式(G)で表される構造を有するポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0035】
OCN−X−NCO ・・・ 一般式(i)
HO−Y−OH ・・・ 一般式(ii)
【0036】
一般式(i)及び(ii)中、X及びYは、それぞれ独立に2価の有機基を表す。
【0037】
−一般式(i)で表されるジイソシアネート化合物−
前記一般式(i)で表されるジイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記一般式(i)中、Xは、イソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド基などを有していてもよい。
前記一般式(i)で表されるジイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等のジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物;などが挙げられる。これらの中でも、硬度の観点から4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が特に好ましい。
【0038】
また、前記一般式(i)で表されるジイソシアネート化合物としては、例えば、トリイソシアネート化合物と、エチレン性不飽和基を有する単官能のアルコール又は単官能のアミン化合物1当量とを付加反応させて得られる生成物などが挙げられる。
前記トリイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0034〕〜〔0035〕に記載された化合物などが挙げられる。
前記エチレン性不飽和基を有する単官能のアルコール又は前記単官能のアミン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0037〕〜〔0040〕に記載された化合物などが挙げられる。
これらのジイソシアネート化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
−一般式(ii)で表されるジオール化合物−
前記一般式(ii)で表されるジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテルジオール化合物、ポリエステルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物、カルボキシル基を有するジオール化合物、側鎖にエチレン性不飽和基を含有するジオール化合物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記ポリエーテルジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0068〕〜〔0076〕に記載された化合物などが挙げられる。
前記ポリエステルジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0077〕〜〔0079〕、段落〔0083〕〜〔0085〕におけるNo.1〜No.8及びNo.13〜No.18に記載された化合物などが挙げられる。
【0041】
前記ポリカーボネートジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0080〕〜〔0081〕及び段落〔0084〕におけるNo.9〜No.12で記載された化合物などが挙げられる。
【0042】
前記カルボキシル基を有するジオール化合物としては、例えば、以下の式(X)〜(Z)に示すものが含まれる。
【0043】
【化9】

【0044】
式(X)〜(Z)中、R15としては、水素原子、置換基{例えば、シアノ基、ニトロ基、−F、−Cl、−Br、−I等のハロゲン原子、−CONH、−COOR16、−OR16、−NHCONHR16、−NHCOOR16、−NHCOR16、−OCONHR16(ここで、前記R16は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数7〜15のアラルキル基を表す。)などの各基が含まれる。}を有していてもよいアルキル基、前記置換基を有していてもよいアラルキル基、前記置換基を有していてもよいアリール基、前記置換基を有していてもよいアルコキシ基、前記置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表すものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水素原子、炭素数1〜8個のアルキル基、炭素数6〜15個のアリール基が好ましい。前記式(X)〜(Z)中、L、L10、L11は、それぞれ同一でもよいし、相違していてもよく、単結合、置換基(例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子が好ましい。)を有していてもよい2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表すものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数1〜20個のアルキレン基、炭素数6〜15個のアリーレン基が好ましく、炭素数1〜8個のアルキレン基がより好ましい。また必要に応じ、前記L〜L11中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えば、カルボニル、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド、エーテルなどの基や結合を有していてもよい。なお、前記R15、L、L10、L11のうちの2個又は3個で環を形成してもよい。
前記式(Y)中、Arとしては、置換基を有していてもよい3価の芳香族炭化水素基を表すものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数6〜15個の芳香族基が好ましい。
【0045】
前記式(X)〜(Z)で表されるカルボキシル基を有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記側鎖にエチレン性不飽和基を含有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルのように市販されているものでもよいし、ハロゲン化ジオール化合物、トリオール化合物、アミノジオール化合物等の化合物と、エチレン性不飽和基を含有する、カルボン酸、酸塩化物、イソシアネート、アルコール、アミン、チオール、ハロゲン化アルキル化合物等の化合物との反応により製造される化合物であってもよい。
また、特開2005−250438号公報の段落〔0057〕〜〔0060〕に記載された化合物、前記一般式(G−1)で表される化合物などが挙げられる。これらの中でも、前記一般式(G−1)で表される化合物が、前記一般式(G)で表される構造単位を前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂に容易に導入できる点で好ましい。
【0047】
前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂を得る際には、上述したジオール化合物の他に、イソシアネート基と反応しない置換基を有するジオール化合物を併用することもできる。
前記イソシアネート基と反応しない置換基を有するジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0087〕〜〔0088〕に記載された化合物などが挙げられる。
【0048】
また、前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の合成には、上述したジオール化合物の他に、テトラカルボン酸二無水物をジオール化合物で開環させた化合物を併用することもできる。
前記テトラカルボン酸二無水物をジオール化合物で開環させた化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2005−250438号公報の段落〔0095〕〜〔0101〕に記載された化合物などが挙げられる。
【0049】
本発明で使用する酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、例えば、重合性組成物中の他の成分との相溶性を向上させ、保存安定性を向上させるといった観点から、前記側鎖にエチレン性不飽和基を含有するジオール化合物やカルボキシル基を含有するジオール化合物以外のジオール化合物を共重合させることができ、本発明においては、このようなジオール化合物を共重合させることが特に好ましい。
このようなジオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低分子のジオール化合物やポリマージオール化合物であるポリエーテルジオール化合物、ポリエステルジオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物、m−ジヒドロキシベンゼンのポリカーボネート化合物などを挙げることできる。
【0050】
このようなジオール化合物は、下記一般式(U)として表され、ポリウレタン樹脂として組み込まれると、下記一般式(U1)で表される部分構造で表される。
【0051】
【化10】

【0052】
一般式(U)及び(U1)において、LU1はエチレン性不飽和基およびカルボキシル基を含まない2価の連結基を表す。
【0053】
U1は、例えば、アルキレン基、アリーレン基、2価のヘテロ環基が挙げられ、該アルキレン基は、アルキレン基の鎖中に−O−、−OCOO−、フェニレン基、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、−OCO−ZL1−COO−(ZL1はアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基を表す。)を含んでもよい。
【0054】
一般式(U)で表されるジオール化合物のうち、低分子のジオール化合物としては、質量平均分子量が400未満のものが好ましく、例えば、特開2007−2030号公報の段落〔0048〕に記載された化合物、などが挙げられる。
本発明においては、ポリマージオール化合物が好ましく、以下に詳細に説明する。
【0055】
−ポリマージオール化合物−
前記ポリマージオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック共重合体又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、テトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのブロック共重合体又はランダム共重合体等のポリエーテルジオール類;多価アルコール又はポリエーテルジオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物であるポリエステルジオール類;グリコール又はビスフェノールと炭酸エステルとの反応、あるいは、グリコール又はビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを作用させる反応などで得られるポリカーボネートジオール類;カプロラクトン変性ポリテトラメチレンジオール等のカプロラクトン変性ポリマージオール、ポリオレフィン系ポリマージオール、水添ポリブタジエンジオール等のポリブタジエン系ポリマージオール、シリコーン系ポリマージオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
なお、本発明において好ましい化合物や部分構造は前記一般式(U)、(U1)におけるLU1が、−(CHCHO)nU1CHCH−、−〔CHCH(CH)O〕nU1−CHCH(CH)−、−(CHCHCHO)nU1−CHCHCH−、下記一般式(LL1)で表される構造、下記一般式(LL2)で表される構造または下記一般式(LL3)で表されるポリブタジエンジオール残基である。
【0057】
【化11】

【0058】
ここで、RLL1およびRLL2は各々独立に2価の鎖状炭化水素基または2価の環状炭化水素基を表す。nU1〜nU4は各々独立に1以上の数を表す。
【0059】
2価の鎖状炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基が好ましい。これらは分岐又は置換基を有していてもよい。より好ましい炭素数としては2〜8であり、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、2−メチル−テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2−ブテニレン基、2−ブチニレン基が好適な例として挙げられる。
2価の環状炭化水素基としては、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがより好ましく、6員環であることがさらに好ましい。単環でも縮合環でもよく、単環が好ましい。芳香族環、脂肪族環のいずれでもよい。このうち、芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい例として挙げられ、脂肪族環としては、シクロヘキサン環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環が好ましい例として挙げられる。
【0060】
前記ポリマージオール化合物の質量平均分子量は、400〜8,000であることが好ましく、500〜5,000であることがより好ましく、600〜3,000であることがさらに好ましく、800〜2,000であることが特に好ましい。前記質量平均分子量が、400未満であると、耐折性が十分に得られないことがあり、8,000を超えると、得られるポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)が低下しすぎるため、絶縁信頼性が低下してしまうことがある。
ここで、前記質量平均分子量は、例えば高速GPC装置(東洋曹達株式会社製、HLC−802A)を使用して、0.5質量%のTHF溶液を試料溶液とし、カラムはTSKgel HZM−M 1本を使用し、200μLの試料を注入し、前記THF溶液で溶離して、25℃で屈折率検出器あるいはUV検出器(検出波長254nm)により測定することができる。
【0061】
前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂中における前記ポリマージオール残基の質量比率は10〜60%であることが好ましく、20〜60%であることがより好ましく、25〜55%であることがさらに好ましく、30〜50%であることが特に好ましい。前記質量比率が10%未満であると硬化後の反り抑制が困難になることがあり、60%を超えると光硬化の感度が低下しすぎて解像性が悪化してしまうことがある。
【0062】
−主鎖の末端のカルボキシル基−
また、前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂としては、ポリマー主鎖の末端に、少なくとも1つのカルボキシル基を有するものも、アルカリ性現像液による非画像部の現像性に優れる点で好適に用いられる。ポリマー主鎖の末端に、少なくとも1つのカルボキシル基を有し、2つ以上5つ以下のカルボキシル基を有することが好ましく、2つのカルボキシル基を有することが現像性に優れ、微細パターン形成性の点で特に好ましい。
なお、前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂における主鎖の末端は、2つあるが、片末端に少なくとも1つのカルボキシル基を有することが好ましく、両末端に少なくとも1つのカルボキシル基を有していてもよい。
【0063】
前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の主鎖の末端に、下記一般式(II)で表される構造を有することが好ましい。
【0064】
−L−(COOH) ・・・ 一般式(II)
【0065】
一般式(II)中、Lは、(n+1)価の有機連結鎖を表し、nは1以上の整数を示し、1〜5が好ましく、2が特に好ましい。
で表される有機連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選択される1以上の原子を含んで構成され、具体的には、Lで表される有機連結基の主骨格を構成する原子数は、1〜30が好ましく、1〜25がより好ましく、1〜20が更に好ましく、1〜10が特に好ましい。
なお、前記「有機連結基の主骨格」とは、前記ポリウレタン樹脂の主鎖と末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を意味し、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。
【0066】
前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の主鎖の末端に、少なくとも1つのカルボキシル基を導入する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリウレタン樹脂製造の原料として、少なくとも1つのカルボキシル基を有するカルボン酸化合物を用いる方法などが挙げられる。
【0067】
前記カルボン酸化合物としては、カルボキシル基を1つ有するモノカルボン酸化合物、カルボキシル基を2つ有するジカルボン酸化合物、カルボキシル基を3つ有するトリカルボン酸化合物、カルボキシル基を4つ有するテトラカルボン酸化合物、カルボキシル基を5つ有するペンタカルボン酸化合物などが挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基を2つ有するジカルボン酸化合物が、現像性に優れ、微細パターン形成性の点で特に好ましい。
【0068】
前記カルボン酸化合物としては、少なくとも1つのカルボキシル基を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(III)で表される化合物が好適である。
【0069】
H−O−L−Y−L−(COOH) 一般式(III)
【0070】
一般式(III)中、L及びnは、前記一般式(I)と同じ意味を表す。
Yは、2価以上の原子を表す。Lは、単結合又は置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
前記一般式(III)において、Yは、2価以上の原子を表す。前記2価以上の原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、炭素原子、ケイ素原子、などが挙げられる。これらの中でも、窒素原子、炭素原子が特に好ましい。ここで、Yで表される原子が2価以上であるとは、少なくともYが、L、及びLを介して末端−COOHが結合する2つの結合手を有することを意味するが、Yは、更に水素原子、又は置換基を有していてもよい。
Yに導入可能な置換基としては、水素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びハロゲン原子から選択される原子を含んで構成される置換基が挙げられる。これらの中でも、炭素原子数1〜50の炭化水素基が好ましく、炭素原子数1〜40の炭化水素基がより好ましく、炭素原子数1〜30の炭化水素基が特に好ましい。
【0071】
前記一般式(III)におけるLは、単結合又は置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。前記アルキレン基としては、炭素原子数1〜20のアルキレン基が好ましく、炭素原子数2〜10のアルキレン基がより好ましい。前記アルキレン基に導入可能な置換基としては、例えばハロゲン原子(F、Br、Cl、I)、置換基を有していてもよいアルキル基、などが挙げられる。
【0072】
前記一般式(III)で表されるカルボン酸化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳酸、リンゴ酸、ヒドロキシへキサン酸、クエン酸、ジオール化合物と酸無水物の反応物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、リンゴ酸が特に好ましい。
【0073】
−酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の製造方法−
前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記ジイソシアネート化合物及びジオール化合物、必要に応じ、エチレン性不飽和基やカルボキシル基を有さないジオール化合物、特に好ましくはポリマージオール化合物を、非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性の公知の触媒を添加し、加熱することにより合成する方法などが挙げられる。合成に使用されるジイソシアネート及びジオール化合物のモル比(M:M)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1:1〜1.2:1が好ましく、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、分子量あるいは粘度といった所望の物性の生成物が、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
【0074】
前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂におけるエチレン性不飽和基の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エチレン性不飽和基当量としては、0.05mmol/g〜3.0mmol/gが好ましく、0.5mmol/g〜2.7mmol/gがより好ましく、0.75mmol/g〜2.4mmol/gが特に好ましい。
ここで、エチレン性不飽和基当量は、例えば、臭素価を測定することにより求めることができる。前記臭素価は、例えば、JIS K2605に準拠して測定することができる。
なお、ここで、エチレン性不飽和当量は、代表的にはビニル基当量であり、上記臭素価で得られた測定する樹脂100gに対して付加した臭素(Br)のグラム数(gBr/100g)から、樹脂1g当たりの付加した臭素(Br)のモル数に変換した値である。
【0075】
前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の質量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3,000〜50,000が好ましく、現像性の観点から3,000〜30,000がより好ましい。
【0076】
前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の酸価(固形分酸価)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20mgKOH/g〜120mgKOH/gが好ましく、30mgKOH/g〜110mgKOH/gがより好ましく、35mgKOH/g〜100mgKOH/gが特に好ましい。前記酸価が、20mgKOH/g未満であると、現像性が不十分となることがあり、120mgKOH/gを超えると、現像速度が高すぎるため現像のコントロールが難しくなることがある。
なお、前記酸価は、例えば、JIS K0070に準拠して測定することができる。ただし、サンプルが溶解しない場合は、溶媒としてジオキサン又はテトラヒドロフランなどを使用する。
【0077】
前記酸変性のエチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の前記感光性組成物固形分中の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜60質量%がより好ましい。前記含有量が、5質量%以上であれば、現像性、露光感度が良好となり、80質量%以下であれば、感光層の粘着性が強くなりすぎることを防止できる。
【0078】
<リン酸金属塩>
前記リン酸金属塩は、下記一般式(1)で表されるリン酸金属塩である。
【0079】
【化12】

【0080】
ただし、前記一般式(1)中、A及びBは、それぞれ独立に、直鎖状の炭素数1〜6のアルキル基、分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、及びKのいずれかを表す。mは、1〜4の整数を表す。
前記A及びBとしては、直鎖状の炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
前記Mとしては、Alが好ましい。
前記mとしては、3が好ましい。
【0081】
前記一般式(1)で表されるリン酸金属塩としては、市販品を用いることができる。該市販品としては、例えば、ホスフィン酸アルミニウムであるエクソリットOP−935、エクソリットOP−930、エクソリットOP1230、エクソリットOP−1240、エクソリットOP−1312(いずれもクラリアントジャパン社製)などが挙げられる。
【0082】
前記一般式(1)で表されるリン酸金属塩の平均粒子径は、1.0μm以下であり、0.5μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましい。前記平均粒子径が、1.0μmを超えると、耐折性が低下し、耐折性が不十分となる。前記平均粒子径の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm以上が好ましい。
前記一般式(1)で表されるリン酸金属塩の最大粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下が特に好ましい。前記最大粒子径の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上が好ましい。
前記平均粒子径及び前記最大粒子径は、例えば、濃厚系粒径アナライザー(商品名FPAR1000、大塚電子社製)を用いて測定することができる。具体的には、測定原理を動的光散乱法とし、サイズ分布解析手法をキュムラント法及び/又はヒストグラム法として測定する。
前記平均粒子径とは、積算(累積)質量百分率で表したときの積算値50%の粒度で定義されるものでd50(D50)などと定義されるものである。
前記最大粒子径とは、積算値100%の粒度で定義されるものでd100(D100)などと定義されるものである。
【0083】
前記一般式(1)で表されるリン酸金属塩を、前記平均粒子径、及び前記最大粒子径にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、アトライター等により分散する方法などが挙げられる。
【0084】
前記一般式(1)で表されるリン酸金属塩の前記感光性組成物固形分中の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量部〜40質量部が好ましく、5質量部〜25質量部がより好ましい。前記含有量が、5質量部未満であると、十分な難燃性が得られないことがあり、40質量部を超えると、耐折性が低下することがある。
【0085】
<重合性化合物>
前記重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エチレン性不飽和基を1つ以上有する化合物が好ましい。なお、この重合性化合物は、先に説明したバインダー樹脂とは異なる化合物で、例えば分子量が1000以下のモノマーもしくはオリゴマーであることが好ましい。
【0086】
前記エチレン性不飽和基を有する官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルフェニル基、ビニルエステル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、アリルエステル基などが挙げられる。
【0087】
前記エチレン性不飽和基を1つ以上有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0088】
前記(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパン、グリセリン、ビスフェノール等の多官能アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加反応した後で(メタ)アクリレート化したもの;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートがより好ましい。
重合性化合物としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を2個以上有するものやエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートが特に好ましい。
【0089】
前記重合性化合物の前記感光性組成物固形分中の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%〜50質量%が好ましく、10質量%〜40質量%がより好ましい。前記含有量が、5質量%以上であれば、現像性、露光感度が良好となり、50質量%以下であれば、感光層の粘着性が強くなりすぎることを防止できる。
【0090】
<光重合開始剤>
前記光重合開始剤としては、前記重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましく、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、前記光重合開始剤は、波長約300nm〜800nmの範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有していることが好ましい。前記波長は330nm〜500nmがより好ましい。
前記光重合開始剤としては、中性の光重合開始剤が好ましい。また、必要に応じてその他の光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0091】
前記中性の光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも芳香族基を有する化合物であることが好ましく、(ビス)アシルホスフィンオキシド又はそのエステル類、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、チオキサントン化合物であることがより好ましい。前記中性の光重合開始剤は、2種以上を併用してもよい。
【0092】
前記光重合開始剤としては、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキシド又はそのエステル類、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、チオキサントン化合物、オキシム誘導体、有機過酸化物、チオ化合物などが挙げられる。これらの中でも、感光層の感度、保存性、及び感光層とプリント配線板形成用基板との密着性等の観点から、オキシム誘導体、(ビス)アシルホスフィンオキシド又はそのエステル類、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、チオキサントン化合物が好ましい。
【0093】
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド、前記アセトフェノン系化合物、前記ベンゾフェノン系化合物、前記ベンゾインエーテル系化合物、前記ケタール誘導体化合物、前記チオキサントン化合物としては、例えば、特開2010−256399号公報の段落〔0042〕に記載された(ビス)アシルホスフィンオキシド、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、チオキサントン化合物などが挙げられる。
【0094】
前記オキシム誘導体としては、例えば、特開2010−256399号公報の段落〔0043〕〜〔0059〕に記載されたオキシム誘導体などが挙げられる。
【0095】
前記光重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤の前記感光性組成物固形分中の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜30質量%が好ましく、0.5質量%〜20質量%がより好ましく、0.5質量%〜15質量%が特に好ましい。
【0096】
<熱架橋剤>
前記熱架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、感光層の硬化後の膜強度を改良するために、現像性等に悪影響を与えない範囲で、例えば、エポキシ化合物(例えば、1分子内に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物)、1分子内に少なくとも2つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物を用いることができ、特開2007−47729号公報に記載されているようなオキシラン基を有するエポキシ化合物、β位にアルキル基を有するエポキシ化合物、オキセタニル基を有するオキセタン化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート又はその誘導体のイソシアネート基にブロック剤を反応させて得られる化合物(ブロック化ポリイソシアネート化合物)、オキサゾリン誘導体などが挙げられる。
【0097】
また、前記熱架橋剤として、メラミン誘導体を用いることができる。該メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン(メチロール基を、メチル、エチル、ブチル等でエーテル化した化合物)などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保存安定性が良好で、感光層の表面硬度あるいは硬化膜の膜強度自体の向上に有効である点で、アルキル化メチロールメラミンが好ましく、ヘキサメチル化メチロールメラミンが特に好ましい。
【0098】
前記エポキシ化合物としては、例えば、特開2010−256399号公報の段落〔0071〕〜〔0073〕に記載されたエポキシ化合物などが挙げられる。
【0099】
前記オキセタン化合物としては、例えば、特開2010−256399号公報の段落〔0074〕に記載されたオキセタン化合物などが挙げられる。
【0100】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、特開2010−256399号公報の段落〔0075〕に記載されたポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0101】
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、例えば、特開2010−256399号公報の段落〔0076〕に記載された化合物などが挙げられる。
【0102】
前記オキサゾリン誘導体としては、例えば、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン、1,4−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)などが挙げられる。
【0103】
前記メラミン誘導体としては、例えば、特開2010−256399号公報の段落〔0077〕に記載されたメラミン誘導体などが挙げられる。
【0104】
前記熱架橋剤の前記感光性組成物固形分中の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%〜50質量%が好ましく、3質量%〜30質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%以上であれば、硬化膜の膜強度が向上され、50質量%以下であれば、現像性、露光感度が良好となる。
【0105】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィラー、熱硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(着色顔料あるいは染料)などが挙げられ、更に基材表面への密着促進剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を併用してもよい。
これらの成分を適宜含有させることにより、目的とする感光性フィルムの安定性、写真性、膜物性などの性質を調整することができる。
前記フィラーについては、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0098〕〜〔0099〕などが挙げられる。
ただし、本発明においては、感光性組成物中に無機フィラーである無機微粒子を含有しないことが好ましく、含有したとしても感光性組成物の固形分比で10質量%未満、より好ましくは1質量%未満である。
前記熱重合禁止剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0101〕〜〔0102〕などが挙げられる。
前記熱硬化促進剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0093〕などが挙げられる。
前記可塑剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0103〕〜〔0104〕などが挙げられる。
前記着色剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0105〕〜〔0106〕などが挙げられる。
前記密着促進剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0107〕〜〔0109〕などが挙げられる。
【0106】
(感光性フィルム)
本発明の感光性フィルムは、少なくとも、支持体と、該支持体上に本発明の感光性組成物を含む感光層とを有し、更に必要に応じて、その他の層を有する。
【0107】
<支持体>
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記感光層を剥離可能であり、かつ光の透過性が良好であるものが好ましく、更に表面の平滑性が良好であることがより好ましい。
【0108】
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2008−250074号公報の段落〔0115〕〜〔0117〕に記載の支持体などが挙げられる。
【0109】
<感光層>
前記感光層は、本発明の前記感光性組成物を含む層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記感光層の積層数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0110】
前記感光層の形成方法としては、例えば、前記支持体の上に、本発明の前記感光性組成物を、水又は溶剤に溶解、乳化又は分散させて感光性組成物溶液を調製し、該溶液を直接塗布し、乾燥させることにより積層する方法などが挙げられる。
【0111】
前記感光性組成物溶液に用いる溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0112】
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコーター、スリットスピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等を用いて、前記支持体に直接塗布する方法などが挙げられる。
前記乾燥の条件としては、各成分、溶媒の種類、使用割合等によっても異なるが、通常60℃〜110℃の温度で30秒間〜15分間程度である。
【0113】
前記感光層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜100μmが好ましく、2μm〜50μmがより好ましく、4μm〜30μmが特に好ましい。
【0114】
<その他の層>
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護フィルム、熱可塑性樹脂層、バリア層、剥離層、接着層、光吸収層、表面保護層等の層が挙げられる。前記感光性フィルムは、これらの層を1種単独で有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0115】
−保護フィルム−
前記感光性フィルムは、前記感光層上に保護フィルムを形成してもよい。
前記保護フィルムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2008−250074号公報の段落〔0118〕に記載の保護フィルムなどが挙げられる。
前記保護フィルムと前記支持体との組合せとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2008−250074号公報の段落〔0118〕に記載の組合せなどが挙げられる。
【0116】
また、前記支持体と前記保護フィルムとの静摩擦係数は、0.3〜1.4が好ましく、0.5〜1.2がより好ましい。
前記静摩擦係数が、0.3以上であれば、滑り過ぎによって、ロール状にした場合に巻ズレが発生することを防止でき、1.4以下であれば、良好なロール状に巻くことができる。
【0117】
前記感光性フィルムの長さ、保管方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2008−250074号公報の段落〔0120〕に記載の長さ、保管方法などが挙げられる。
【0118】
前記保護フィルムは、前記保護フィルムと前記感光層との接着性を調整するために表面処理してもよい。前記表面処理は、例えば、前記保護フィルムの表面に、ポリオルガノシロキサン、弗素化ポリオレフィン、ポリフルオロエチレン、ポリビニルアルコール等のポリマーからなる下塗層を形成させる。該下塗層の形成は、前記ポリマーの塗布液を前記保護フィルムの表面に塗布した後、30℃〜150℃で1分間〜30分間乾燥させることにより形成させることができる。前記乾燥の際の温度は50℃〜120℃が特に好ましい。
【0119】
(感光性積層体)
本発明の感光性積層体は、少なくとも基体と、前記基体上に感光層とを有してなり、更に必要に応じて、その他の層を積層してなる。
前記感光層は、本発明の前記感光性組成物を含む層である。
前記感光層は、例えば、上述の製造方法で作製された前記感光性フィルムから転写されたものであり、上述と同様の構成を有する。
【0120】
<基体>
前記基体は、感光層が形成される被処理基体、又は本発明の感光性フィルムの少なくとも感光層が転写される被転写体となるもので、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面平滑性の高いものから凸凹のある表面を持つものまで任意に選択できるが、板状の基体、いわゆる基板が好ましい。具体的には、公知のプリント配線板製造用の基板(プリント基板)、ガラス板(ソーダガラス板など)、合成樹脂性のフィルム、紙、金属板などが挙げられ、本発明においてはポリイミドフイルムが特に好ましい。
【0121】
<感光性積層体の製造方法>
前記感光性積層体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の感光性フィルムにおける少なくとも感光層を加熱及び加圧の少なくともいずれかを行いながら転写して積層する方法などが挙げられる。
【0122】
前記感光性積層体の製造方法の一例は、前記基体の表面に本発明の感光性フィルムを加熱及び加圧の少なくともいずれかを行いながら積層する方法である。なお、前記感光性フィルムが前記保護フィルムを有する場合には、該保護フィルムを剥離し、前記基体に前記感光層が重なるようにして積層するのが好ましい。
前記加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、15℃〜180℃が好ましく、60℃〜140℃がより好ましい。
前記加圧の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1MPa〜1.0MPaが好ましく、0.2MPa〜0.8MPaがより好ましい。
【0123】
前記加熱の少なくともいずれかを行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラミネータ(例えば、大成ラミネータ株式会社製、VP−II、ニチゴーモートン株式会社製、VP130)などが好適に挙げられる。
【0124】
本発明の感光性フィルム及び前記感光性積層体は、電子材料分野における高精細な永久パターンの形成用として広く用いることができ、特に、プリント基板の永久パターン形成用に好適に用いることができる。
【0125】
(永久パターン形成方法)
本発明の永久パターン形成方法は、露光工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0126】
<露光工程>
前記露光工程は、本発明の感光性組成物により形成された感光層に対して露光を行う工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記感光性積層体における感光層に対して露光を行う工程などが挙げられる。
【0127】
前記露光の対象としては、前記感光層である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、基材上に感光性フィルムを加熱及び加圧の少なくともいずれかを行いながら積層して形成した積層体に対して行われることが好ましい。
【0128】
前記露光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、デジタル露光、アナログ露光などが挙げられる。
【0129】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基材の表面処理工程、現像工程、硬化処理工程、ポスト露光工程などが挙げられる。
【0130】
−現像工程−
前記現像工程は、前記感光層の未露光部分を除去する工程である。
前記露光部分の除去方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、現像液を用いて除去する方法などが挙げられる。
【0131】
前記現像液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2008−250074号公報の段落〔0171〕〜〔0173〕に記載の現像液などが挙げられる。
【0132】
−硬化処理工程−
前記硬化処理工程は、前記現像工程が行われた後、形成されたパターンにおける感光層に対して硬化処理を行う工程である。
前記硬化処理工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、全面露光処理、全面加熱処理などが好適に挙げられる。
【0133】
前記全面露光処理、及び前記全面加熱処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2008−250074号公報の段落〔0176〕〜〔0177〕に記載の方法などが挙げられる。
【0134】
前記永久パターンの形成方法が、保護膜、層間絶縁膜、及びソルダーレジストパターンの少なくともいずれかを形成する永久パターン形成方法である場合には、プリント基板上に前記永久パターン形成方法により、永久パターンを形成し、更に、以下のように半田付けを行うことができる。
即ち、前記現像により、前記永久パターンである硬化層が形成され、前記プリント基板の表面に金属層が露出される。該プリント配線板の表面に露出した金属層の部位に対して金メッキを行った後、半田付けを行う。そして、半田付けを行った部位に、半導体や部品などを実装する。このとき、前記硬化層による永久パターンが、保護膜あるいは絶縁膜(層間絶縁膜)、ソルダーレジストとしての機能を発揮し、外部からの衝撃や隣同士の電極の導通が防止される。
【0135】
(プリント基板)
本発明のプリント基板は、少なくとも基体と、前記永久パターン形成方法により形成された永久パターンと、を有してなり、更に、必要に応じて適宜選択した、その他の部材を有する。
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基材と前記永久パターン間に、更に絶縁層が設けられたビルドアップ基板などが挙げられる。本発明においては、特にフレキシブル配線基板に使用するのが好ましい。
【実施例】
【0136】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制限されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を表す。
【0137】
なお、調製例における酸価、質量平均分子量は、以下の方法により測定した。
<酸価>
前記酸価は、JIS K0070に準拠して測定した。ただし、サンプルが溶解しない場合は、溶媒としてジオキサン又はテトラヒドロフランなどを使用した。
<質量平均分子量>
前記質量平均分子量は、高速GPC装置(東洋曹達社製HLC−802A)を使用して測定した。即ち、0.5質量%のTHF(テトラヒドロフラン)溶液を試料溶液とし、カラムはTSKgel HZM−M 1本を使用し、200μLの試料を注入し、前記THF溶液で溶離して、25℃で屈折率検出器により測定した。次に、標準ポリスチレンで較正した分子量分布曲線より質量平均分子量を求めた。
<エチレン性不飽和基当量>
エチレン性不飽和基当量は臭素価をJIS K2605に準拠して測定することにより求めた。
【0138】
(調製例1)
<酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂U2の合成>
コンデンサー、及び撹拌機を備えた1Lの3つ口丸底フラスコに、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)11.11g(0.075モル)、グリセロールモノメタクリレート(GLM)35.44g(0.221モル)、ポリプロピレングリコール(分子量1000)(PPG1000)78.75g(0.079モル)及びリンゴ酸6.03g(0.045モル)をシクロヘキサノン300mLに溶解した。これに、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)23.46g(0.094モル)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)47.30g(0.281モル)、2,6-ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン0.6g、及び触媒として、商品名:ネオスタンU−600(日東化成社製、無機ビスマス)0.6gを添加し、75℃にて、5時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、シクロヘキサノンで濃度調整して、固形分濃度40質量%の酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂(U2)溶液を得た。得られた酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の質量平均分子量は7000であり、固形分酸価は46mgKOH/gであり、エチレン性不飽和基当量は1.1mmol/gであった。
【0139】
(調製例2)
<酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂U1の合成>
調製例1において、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)11.11g(0.075モル)、グリセロールモノメタクリレート(GLM)35.44g(0.221モル)、ポリプロピレングリコール(分子量1000)(PPG1000)78.75g(0.079モル)及びリンゴ酸6.03g(0.045モル)の組み合わせを、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)14.45g(0.098モル)、グリセロールモノメタクリレート(GLM)44.45g(0.278モル)及びリンゴ酸6.03g(0.045モル)との組合せに代え、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)23.46g(0.094モル)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)47.30g(0.281モル)の組み合わせを、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)75.08g(0.300モル)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)12.61g(0.075モル)の組み合わせに代えたこと以外は、調製例1と同様にして、固形分濃度40質量%の酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂(U1)溶液を合成した。得られた酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の質量平均分子量は8000であり、固形分酸価は69mgKOH/gであり、エチレン性不飽和基当量は1.82mmol/gであった。
【0140】
(調製例3)
<酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂U3の合成>
調製例1において、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)11.11g(0.075モル)、グリセロールモノメタクリレート(GLM)35.44g(0.221モル)、ポリプロピレングリコール(分子量1000)(PPG1000)78.75g(0.079モル)及びリンゴ酸6.03g(0.045モル)の組み合わせを、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)15.00g(0.101モル)、グリセロールモノメタクリレート(GLM)31.83g(0.199モル)、ポリテトラメチレングリコール(分子量1000)(PTMG1000)75g(0.075モル)及びリンゴ酸6.03g(0.045モル)との組合せに代えたこと以外は、調製例1と同様にして、固形分濃度40質量%の酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂(U3)溶液を合成した。得られた酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の質量平均分子量は8600であり、固形分酸価は54mgKOH/gであり、エチレン性不飽和基当量は1mmol/gであった。
【0141】
(調製例4)
<酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂U4の合成>
調製例1において、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)11.11g(0.075モル)、グリセロールモノメタクリレート(GLM)35.44g(0.221モル)、ポリプロピレングリコール(分子量1000)(PPG1000)78.75g(0.079モル)及びリンゴ酸6.03g(0.045モル)の組み合わせを、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA)15.00g(0.101モル)、グリセロールモノメタクリレート(GLM)31.83g(0.199モル)、ETERNACOL UH−100(宇部興産製、分子量1000)75g(0.075モル)及びリンゴ酸6.03g(0.045モル)との組合せに代えたこと以外は、調製例1と同様にして、固形分濃度40質量%の酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂(U4)溶液を合成した。得られた酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂の質量平均分子量は8800であり、固形分酸価は54mgKOH/gであり、エチレン性不飽和基当量は1mmol/gであった。
【0142】
(調製例5)
<樹脂U5の合成>
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、及び温度計を備えた4口フラスコに、ポリテトラメチレングリコール(PTG1000SN:保土ヶ谷化学社製:水酸基価=110mgKOH/g、Mw=1,020)156質量部、ジメチロールブタン酸(日本化成社製)129質量部、及び溶剤としてシクロヘキサノン375質量部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコに、イソホロンジイソシアネート215質量部を投入し、90℃で8時間攪拌し、ウレタン化の反応を行った。少量サンプリングを行い、ポリスチレン換算の質量平均分子量が13,000、実測によるポリマー不揮発分の酸価が98mgKOH/gであるカルボキシル基含有ウレタンプレポリマー溶液を得た。
【0143】
次に、このフラスコの窒素導入管からの窒素を停止し、乾燥空気の導入に切り替え、攪拌しながらグリシジルメタクリレート111質量部、ジメチルベンジルアミン6質量部、更に重合禁止剤としてヒドロキノン0.3質量部を投入し、90℃のまま8時間反応させた。
【0144】
次に、このフラスコに無水コハク酸63質量部を投入し、乾燥空気雰囲気下、90℃のまま更に6時間反応させた。FT−IR測定にて酸無水物基の吸収が消失しているのを確認後、室温まで冷却した。次いでこの溶液にシクロヘキサノンを加えて、固形分が40質量%になるように調整した。
【0145】
(調製例6)
<樹脂U6の調製>
ZCR−1569H(日本化薬社製、ビフェニル骨格を有するノボラック型酸変性エチレン性不飽和基含有エポキシ樹脂)をシクロヘキサノンで希釈して固形分濃度40質量%に調整し、樹脂U6として用いた。
【0146】
(調製例7)
<樹脂U7の調製>
ZCR−1569H(日本化薬社製)とUXE−3024(日本化薬社製、下記一般式で表される構造のポリウレタン樹脂)を、固形分比率でZCR−1569H:UXE−3024=20:45に混合したものを、シクロヘキサノンで希釈して固形分濃度40質量%に調整し、樹脂U7として用いた。
【0147】
【化13】

【0148】
ここで、一般式中、R11はエポキシアクリレートの残基、R12はジイソシアネートの残基、R13は炭素数1〜5のアルキル基、R14は水素原子又はメチル基を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。
【0149】
(調製例8)
<樹脂U8の調製>
アクリル樹脂(メタクリル酸、メタクリル酸メチル、及びアクリル酸ブチルの共重合体;メタクリル酸:メタクリル酸メチル:アクリル酸ブチル=17質量%:62質量%:21質量%で質量平均分子量10,0000、酸価110mgKOH/g)とUXE−3024(日本化薬社製)を、固形分比率でアクリル樹脂:UXE−3024=30:40に混合したものを、シクロヘキサノンで希釈して固形分濃度40質量%に調整し、樹脂U8として用いた。
【0150】
(調製例9)
<難燃剤分散液(a−1〜a−5及びA−1〜A−7)の調製>
リン酸金属塩3.64質量部(商品名:OP−935、クラリアントジャパン社製)と、各樹脂溶液(固形分濃度40質量%)19.97質量部と、分散剤0.18質量部(商品名:BYK−W903、ビックケミージャパン社製)と、シクロヘキサノン3.26質量部を秤量して、直径0.65mmのジルコニアビーズが充填されたモーターミルM−50(アイガー社製)分散機を用いて分散し、難燃剤分散液a−1〜5とA−1〜7を得た。
分散時間と難燃剤分散液の粒子径の関係を表1に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
なお、平均粒子径、及び最大粒子径は以下の方法で測定した。
上記難燃剤分散液を50倍に希釈したものを、濃厚系粒径アナライザー(商品名FPAR1000、大塚電子社製)を用いて測定した。測定原理は動的光散乱法とし、サイズ分布解析手法をキュムラント法及び/又はヒストグラム法として測定した。
平均粒子径は、積算(累積)質量百分率で表したときの積算値50%の粒度で定義されるものでd50(D50)などと定義されるものであり、最大粒子径は、積算値100%の粒度で定義されるものでd100(D100)などと定義されるものである。
【0153】
(調製例10)
<難燃剤分散液b、c、dの調製>
調製例9において、難燃剤を、表2に記載の難燃剤に代えた以外は、調製例9の難燃剤分散液a−1の調製方法と同様(即ち分散時間0分間)にして、難燃剤分散液b、c、dを調製した。
【0154】
【表2】

【0155】
表2中の難燃剤は以下のとおりである。
フォスファゼン化合物:SPS−100、大塚化学社製
縮合リン酸エステル:CR−741、大八化学社製
環状リン化合物:SANKO−BCA、三光社製
【0156】
(調製例11)
<顔料分散液の調製>
ブルー顔料(BASF社製、HELIOGEN BLUE D7086)を0.018質量部と、イエロー顔料(BASF社製、Pariotol Yellow D0960)を0.005質量部と、メラミン(メラミン、和光純薬工業社製)0.548質量部と、シクロヘキサノン69.29質量部を秤量し、直径0.65mmのジルコニアビーズが充填されたモーターミルM−50(アイガー社製)分散機を用いて90分間分散し、顔料分散液を得た。
【0157】
(実施例1)
−感光性フィルムの製造−
支持体としての厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、16FB50)上に、下記の組成からなる感光性組成物溶液を塗布し、乾燥させて、前記支持体上に厚み38μmの感光層を形成した。前記感光層上に、保護層として、厚み20μmのポリプロピレンフィルム(王子特殊紙社製、アルファンE−200)を積層し、感光性フィルムを製造した。
【0158】
−感光性組成物溶液の組成−
・調製例9の難燃剤分散液a−3・・・・・・・・・・・・・・・・27.06質量部
・調製例11の顔料分散液・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4.26質量部
・調製例1の酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂U1溶液(固形分濃度40%に調整)・・・6.66質量部
・光重合開始剤(IRGACURE 907、チバ・ジャパン社製)・・0.50質量部
・光重合開始剤(DETX−S、日本化薬社製)・・・・・・・・0.0047質量部
・光重合開始剤(EAB−F、保土谷化学社製)・・・・・・・・0.0166質量部
・重合性化合物(リポキシVR−60、昭和電工社製)・・・・・・・4.57質量部
・界面活性剤(B1176(3%希釈)、DIC社製)・・・・・・・1.94質量部
・架橋剤(エポトートYDF−170、東都化成社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)・・・4.98質量部
・溶剤(シクロヘキサノン)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.80質量部
【0159】
−基体への積層−
銅張積層板(スルーホールなし、銅厚み18μm)の表面に酸洗浄処理を施して基体を調製した。該銅張積層板上に、前記感光性フィルムの感光層が前記銅張積層板に接するようにして前記感光性フィルムにおける保護フィルムを剥がしながら、真空ラミネータ(ニチゴーモートン株式会社製、VP130)を用いて積層させ、前記銅張積層板と、前記感光層と、前記ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)とがこの順に積層された感光性積層体を調製した。
圧着条件は、真空引きの時間40秒間、圧着温度70℃、圧着圧力0.2MPa、加圧時間10秒間とした。
前記得られた感光性積層体について、以下に示す評価方法で、レジストパターンを形成した。
【0160】
−露光工程−
前記調製した感光性積層体における感光層に対し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)側から、所定のパターンを有する青紫色レーザ露光によるパターン形成装置を用いて、超高圧水銀灯により所定のパターンが得られるようにエネルギー量200mJ/cmを照射し露光し、前記感光層の一部の領域を硬化させた。
【0161】
−現像工程−
室温にて10分間静置した後、前記感光性積層体からポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)を剥がし取り、銅張積層板上の感光層の全面に、アルカリ現像液として、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、30℃にて60秒間、0.18MPa(1.8kgf/cm)の圧力でスプレー現像し、未露光の領域を溶解除去した。その後、水洗し、乾燥させ、永久パターンを形成した。
【0162】
−硬化処理工程−
前記永久パターンの全面に対して、160℃で1時間、加熱処理を施した後、エネルギー量1,000mJ/cmを照射し露光することで永久パターンの表面を硬化し、膜強度を高め、試験板を作製した。
【0163】
以下の評価に供した。結果を表3に示す。
【0164】
<難燃性>
ポリイミド基材(ポリイミド厚み12.5μm)に銅箔(銅箔厚み12μm)を積層したフレキシブルプリント配線板用基板(新日鉄化学社製、商品名「エスパネックス」Mシリーズ)をエッチングし銅箔を取り除くことにより、厚み12.5μmのポリイミド基材を得た。
このポリイミド基材の両面に、作製した感光性フィルムの前記感光層(厚み38μm)をラミネートにより接着した。室温にて10分間静置した後、超高圧水銀灯によりエネルギー量150mJ/cmを照射し露光し、前記感光層を硬化させ、160℃で1時間、加熱処理を施した後、エネルギー量1,000mJ/cmを照射し露光することで、感光層を硬化し、膜強度を高めた。
上記より得られた硬化された前記感光層が形成されたポリイミド基材を20cm×5cmの大きさにカットすることにより、複合体サンプルを得た。得られた複合体サンプルを直径1cm×20cmの円筒状棒に巻きつけ、複合体サンプルの端部から12.5cmの位置を耐熱テープでとめた後、棒を抜くことで長さ20cm、径1cmの難燃性試験用サンプルを得た。
得られた難燃性試験用サンプルをクランプで吊るし、3cmの炎を3秒間接炎することにより難燃性の試験を行った。
〔評価基準〕
○:UL94 VTM−0を満たすもの
×:UL94 VTM−0を満たさないもの
【0165】
<耐折性>
ポリイミド基材(ポリイミド厚み25μm)に銅箔(銅箔厚み18μm)を積層したフレキシブルプリント配線板用基板(新日鉄化学社製、商品名「エスパネックス」Mシリーズ)にドライフィルムレジストをラミネートし、18mJ/cmで露光した後、0.15MPa/40sの条件で現像することにより、L/S=100/100μmのラインパターンを作製した。前記ドライフィルムレジストのラインパターンを施したフレキシブルプリント配線板用基板をエッチング処理した後、3質量%水酸化ナトリウム水溶液/0.1MPa/120sでドライフィルムレジストを剥離することで、L/S=100/100μmの銅箔ラインパターンを作成した。
そこで得られた銅箔ラインパターン付きポリイミドに、作製した感光性フィルムの感光層を銅箔ラインパターン側にラミネートし、室温にて10分静置した後、超高圧水銀灯により、エネルギー量150mJ/cmを照射し露光し、前記感光層を硬化させ、160℃で1時間、加熱処理を施した後、エネルギー量1,000mJ/cmを照射し露光することで、感光層を硬化し、膜強度を高めることにより評価用積層体を得た。
得られた評価用積層体を5mm×10cm角に裁断し、ラインパターン側を外側にして長辺方向180°折り曲げ、折り曲げた部分に所定のおもりを3秒間載せ、下記基準で耐折性を評価した。
〔評価基準〕
◎:400gでクラックがないもの
○:200gでクラックがないもの
△:200gでクラック長さが折り曲げ辺の長さの10%以下であるもの
×:200gでクラック長さが折り曲げ辺の長さの10%を超えるもの
【0166】
<ブリードアウト>
永久パターンが形成された試験板を40℃で一週間放置したものの表面層(永久パターン)を顕微鏡(倍率:200倍)で観察し、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○:表面が白化しておらず、タック性がみられず、かつ結晶物の析出や液状物質の染み出しが観察されない。
×:表面の白化、タック性、結晶物の析出、及び液状物質の染み出しのいずれかが観察される。
【0167】
<解像性>
前記感光性積層体を室温(23℃)で55%RHにて10分間静置した。得られた感光性積層体のポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)上から、丸穴パターンを用い、丸穴の直径の幅50μm〜200μmの丸穴が形成できるよう、パターン形成装置を用いて最適光エネルギー量で露光を行った。
室温にて10分間静置した後、前記感光性積層体からポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)を剥がし取った。
銅張積層板上の感光層の全面に、現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.15MPaにて前記最短現像時間の2倍の時間スプレーし、未硬化領域を溶解除去した。
このようにして得られた硬化樹脂パターン付き銅張積層板の表面を光学顕微鏡で観察し、パターン部の捲くれ乃至剥がれなどの異常が無く、かつスペース形成可能な最小の丸穴パターン幅を測定し、これを解像度とし、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:直径100μm以下の丸穴が解像可能で、解像性が良好である
×:直径100μm以下の丸穴が解像不可で、解像性が劣る
なお、最短現像時間は、以下の方法により求めた。
前記積層体の感光層からポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)を剥がし取り、銅張積層板上の前記感光層の全面に30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を0.15MPaの圧力にてスプレーし、炭酸ナトリウム水溶液のスプレー開始から銅張積層板上の感光層が溶解除去されるまでに要した時間を測定し、これを最短現像時間とした。
また、最適光エネルギー量は、以下の方法により求めた。
前記感光性積層体の感光層表面に、INPREX IP−3000(富士フイルム株式会社製、ピクセルピッチ=1.0μm)を用いて、L/S(ライン/スペース)=50μm/50μmのパターンデータを0.5mJ/cmから21/2倍間隔で500mJ/cmまでの光エネルギー量の異なる光を照射して露光し、L/S(ライン/スペース)=50μm/50μmのラインパターンを硬化させた。室温にて10分間静置した後、前記感光性積層体から前記支持体を剥がし取り、銅張積層板上の感光層の全面に、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.15MPaにて最短現像時間の2倍〜3倍の時間スプレー現像し、未硬化の領域を溶解除去した。このようにして得られたL=50μmのパターンの線幅を、レーザ顕微鏡(VK−9500、キーエンス社製、対物レンズ50倍)を用いて測定し、線幅が50μmとなる光エネルギー量を求め、それを最適光エネルギー量とした。
【0168】
<めっき耐性の評価>
ポリイミド基材(ポリイミド厚み25μm)に銅箔(銅箔厚み18μm)を積層したフレキシブルプリント配線板用基板(新日鉄化学社製、商品名「エスパネックス」Mシリーズ)の表面に酸洗浄処理を施したものを使用したこと以外は、前記感光性積層体と同様にして作製された感光性積層体の感光層表面に、INPREX IP−3000(富士フイルム社製、ピクセルピッチ=1.0μm)を用いて、最適光エネルギー量にて30μm〜1,000μmまでの独立細線パターンを形成し、室温にて10分間静置した後、前記感光性積層体から支持体を剥がし取り、銅張積層板(フレキシブルプリント配線用基板)上の感光層の全面に、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.15MPaにて前記最短現像時間の2倍〜3倍の時間(または40秒間〜60秒間)スプレー現像し、未硬化の領域を溶解除去した。その後、160℃で1時間加熱処理(ポストベーク)をした後、さらに超高圧水銀灯により1,000mJ/cmで全面露光を行い、ソルダーレジストパターン(永久パターン)を形成した。
前記硬化樹脂パターン(永久パターン)を、50℃の酸性脱脂液(スルカップACL-
007、上村工業株式会社製)に5分間浸漬した後、水洗した。次いで、22℃のソフトエッチ液(ペルオキソ二硫酸ナトリウム125g/L、硫酸18g/L)に90秒間、22℃の10%硫酸水溶液中に120秒間、22℃のアクチベーター液(KAT−450,上村工業株式会社製)に120秒間、22℃の10%硫酸水溶液中に60秒間浸漬させた。なお、ここまでの各工程間で水洗を行なった。この後、85℃で35分間、無電解Niめっき(ニムデンNDF−2、上村工業株式会社製)を行い、水洗後、次いで、75℃の金めっき液(奥野製薬工業社製、OPCムデンゴール、pH12〜13、厚付け金めっき0.3μm)に4分間浸漬し、無電解金めっきを行った後、流水中に3分間浸漬して水洗した後、更に、60℃の温水で3分間浸漬して十分に水洗後、乾燥し、無電解金めっきした試験基板を得た。
めっき試験後の硬化樹脂パターン(永久パターン)に対して、JIS K5600−5−6を参考にしてピール試験を行い、以下の基準で評価した。
○:ピール試験後も全く異常が無いもの
×:ピール試験時に剥がれが観られたもの
【0169】
(実施例2〜3、比較例1〜5)
実施例1において、難燃剤分散液を表3に記載の難燃剤分散液に代えた以外は、実施例1と同様にして、感光性組成物、感光性フィルムなどを得た。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0170】
【表3】

【0171】
(実施例4〜6、比較例6〜9)
実施例1において、難燃剤分散液及び樹脂を表4に記載の難燃剤分散液及び樹脂に代えた以外は、実施例1と同様にして、感光性組成物、感光性フィルムなどを得た。
実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0172】
【表4】

【0173】
実施例1〜6の感光性組成物は、難燃性、耐折性、及びめっき耐性に優れ、更にブリードアウトがなく、解像性にも優れていた。また、実施例3〜6の感光性組成物は、実施例1,2に比べ耐折性に優れていた。
平均粒子径が1.0μmを超えるリン酸金属塩を難燃剤として用いた比較例1、2の感光性組成物は、耐折性が不十分であった。リン酸金属塩以外の難燃剤を用いた比較例3〜5の感光性組成物は、めっき耐性が不十分であった。酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂とは異なる樹脂を用いた比較例6〜9の感光性組成物は、耐折性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明の感光性組成物は、難燃性、耐折性、及びめっき耐性の全てが優れるため、フレキシブルプリント基板などに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂と、下記一般式(1)で表されるリン酸金属塩と、重合性化合物と、光重合開始剤とを含有し、
該酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂が、下記一般式(G)で表される構造単位を有し、
該一般式(1)で表されるリン酸金属塩の平均粒子径が、1.0μm以下であることを特徴とする感光性組成物。
【化1】

一般式(1)中、A及びBは、それぞれ独立に、直鎖状の炭素数1〜6のアルキル基、分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、及びKのいずれかを表す。mは、1〜4の整数を表す。
【化2】

一般式(G)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、及び1価の有機基のいずれかを表す。Aは、2価の有機基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、及び−N(R)−のいずれかを表す。前記Rは、水素原子、及び1価の有機基のいずれかを表す。
【請求項2】
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂が、ポリマージオール残基を繰り返し単位として含む請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記ポリマージオール残基の質量平均分子量が400〜8,000である請求項2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂中における前記ポリマージオール残基の質量比率が10〜60%である請求項2または3に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂が、芳香族基を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記酸変性エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂が、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フェナントレン型、及びアントラセン型から選択される少なくともいずれかの骨格を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記一般式(1)で表されるリン酸金属塩の最大粒子径(d100)が、5μm以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項8】
更に、熱架橋剤を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性組成物を含む感光層を支持体上に有してなることを特徴とする感光性フィルム。
【請求項10】
基体上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性組成物を含む感光層を有することを特徴とする感光性積層体。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性組成物により形成された感光層に対して露光を行うことを少なくとも含むことを特徴とする永久パターン形成方法。
【請求項12】
請求項11に記載の永久パターン形成方法により永久パターンが形成されることを特徴とするプリント基板。

【公開番号】特開2012−215804(P2012−215804A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151880(P2011−151880)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】