説明

感圧型半導体ウエハ表面保護用粘着テープ

【課題】半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハに貼り付け、半導体ウエハの裏面を研削後、前記粘着テープを剥離する工程において、従来剥離が困難であった、ウエハの厚さ、口径、表面の膜状態(ポリイミド、ベンゾシクロブテン等)であっても、紫外線硬化型表面保護用粘着テープを用いることなく、良好に剥離することができ、半導体ウエハを汚染しない半導体ウエハ表面保護用粘着テープを提供する。
【解決手段】基材フィルム上に粘着剤層を有する半導体ウエハ表面保護用粘着テープであって、前記粘着剤層が感圧型粘着剤であり、前記粘着剤層表面のヨウ化メチレンに対する接触角が30度以上60度以下であり、前記感圧型粘着剤を構成する主成分であるポリマーの重量平均分子量または架橋後の分子の重量平均分子量が100万以上であることを特徴とする半導体ウエハ表面保護用粘着テープである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧型半導体ウエハ表面保護用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハを加工する工程は、半導体ウエハのパターン表面に半導体ウエハ表面保護用粘着テープを貼り付ける工程と、半導体ウエハの裏面を研削する工程と、ダイシングテープへ半導体ウエハをマウントする工程と、半導体ウエハから表面保護用粘着テープを剥離する工程と、ダイシングにより半導体ウエハを半導体チップに分割する工程と、分割された半導体チップをリードフレームへ接合するダイボンディング工程とを経た後、半導体チップを外部保護の為に樹脂で封止するモールド工程等により構成されている。
【0003】
従来、裏面研削によりウエハの厚さを200〜400μm程度まで薄くしていた。そのウエハ厚さでは、感圧型の粘着剤を用いた表面保護用粘着テープでも、ウエハからの剥離は問題なかった。近年、半導体チップの小型化が図られるにつれて、ウエハの薄厚化が進み、チップの種類によっては、50μm程度まで薄くなっている。また、ウエハサイズについても、従来、口径が最大8インチであったものが、12インチ以上に大型化される傾向にある。
【0004】
また、ウエハ表面の半導体素子上に半導体素子自身を保護する耐熱性樹脂膜を形成する場合があるが、耐熱性樹脂膜がポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ベンゾシクロブテン、またはこれらの共重合体から選択される化合物を1種以上含む膜である場合、一般に表面保護用粘着テープへの粘着力が増加して剥離が困難となることが知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに、その耐熱性樹脂膜の表面を、プラズマ処理等を行うことで表面改質されている場合、さらにその表面保護用粘着テープへの粘着力は増加する(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
そのような薄厚、大口径、耐熱性樹脂膜付きのウエハにおいて、従来の感圧型の粘着剤を用いた表面保護用粘着テープでは、同テープを剥離する際に粘着力が強く、容易に剥離できないためにウエハが破損する問題があった。この課題に関して、ウエハに表面保護用粘着テープを貼った状態で紫外線等を照射して表面保護用粘着テープの粘着力を低下させ、剥離を容易にする技術が知られている。しかし、そのような紫外線硬化型表面保護用粘着テープにおいても、ウエハ表面が改質されている場合は、粘着力が十分低下せず、容易に剥離できない為にウエハが破損したり、前記粘着テープが剥離できずに破断したりしてしまう問題が発生する場合があった。
【0006】
更に、デバイスによっては紫外線を照射することを嫌うため、紫外線硬化型表面保護用粘着テープを用いることなく上記課題を解決することが重要となってきている。また、当然にウエハ表面に表面保護用粘着テープの粘着剤が残ると汚染の原因となるため、剥離後のウエハ表面に粘着剤が残らないことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−156215号公報
【特許文献2】特開2007−59440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハに貼り付け、半導体ウエハの裏面を研削後、前記粘着テープを剥離する工程において、従来、剥離が困難であった、ウエハの厚さ、口径、表面の膜状態(ポリイミド、ベンゾシクロブテン等)であっても、紫外線硬化型表面保護用粘着テープを用いることなく、良好に剥離することができ、半導体ウエハを汚染しない半導体ウエハ表面保護用粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1)基材フィルム上に粘着剤層を有する半導体ウエハ表面保護用粘着テープであって、前記粘着剤層が感圧型粘着剤であり、前記粘着剤層表面のヨウ化メチレンに対する接触角が30度以上60度以下であり、前記感圧型粘着剤を構成する主成分であるポリマーの重量平均分子量または架橋後の分子の重量平均分子量が100万以上であることを特徴とする半導体ウエハ表面保護用粘着テープ、
(2)前記感圧型粘着剤を構成する主成分のポリマーが(メタ)アクリル系ポリマーであることを特徴とする(1)記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ、
(3)30℃〜70℃における前記粘着テープのSUS研磨面に対する粘着力が1.0N/25mm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ、
を提供するものである。
ここでSUS研磨面とは、JIS G 4305に規定されているSUS304鋼板で鏡面仕上げのものまたは研磨紙で磨いたものを用いる。磨き方についてはJIS Z 0237に基づき仕上げられており、研磨紙は280番の粗さのものを用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハに貼り付け、半導体ウエハの裏面を研削後、前記粘着テープを剥離する工程において、従来、剥離が困難であった、ウエハの厚さ、口径、表面の膜状態(ポリイミド、ベンゾシクロブテン等)であっても、紫外線硬化型表面保護用粘着テープを用いることなく、良好に剥離することができ、半導体ウエハを汚染しない半導体ウエハ表面保護用粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態に係る半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、基材フィルムの少なくとも片面に、少なくとも1種類の粘着剤が塗布され、粘着剤層を形成している。
本発明の粘着剤層は、1種類の接着剤からなるものでも、異なる2種類以上の粘着剤が積層されていてもよいが、被着体側の粘着剤が感圧型であって、粘着層表面のヨウ化メチレンに対する接触角が30度以上60度以下で、かつ前記粘着剤層を構成する主成分であるポリマーまたは架橋後のポリマーの重量平均分子量が100万以上である。
【0012】
本発明において、粘着剤層表面のヨウ化メチレンに対する接触角とは、粘着剤層表面とヨウ化メチレンの接触直後の接触角を意味する。この接触角は、温度23℃、湿度50%で測定した値である。測定は市販の接触角測定装置を用いて行うことができる。
本発明において、粘着剤層表面のヨウ化メチレンに対する接触角は、30度以上60度以下であり、40度以上60度以下が好ましい。
【0013】
ヨウ化メチレンに対する接触角は、30度以下である場合、剥離が容易ではなくなり糊残りや剥離不良を引き起こしてしまう。一方、60度を超える場合も同様に糊残りや剥離不良をおこしてしまう。ヨウ化メチレンに対する接触角がこの範囲に入っていない場合、ウエハの活性面と粘着剤層表面との表面自由エネルギーの差は大きくなってしまうため、ウエハとテープが強固に接着してしまい、それゆえ糊残りや剥離不良を引き起こすと考えられる。
【0014】
本発明の粘着剤層に適用される主成分であるポリマーまたは架橋後のポリマーの重量平均分子量は100万以上である。架橋前の重量平均分子量が100万以上であれば架橋によって分子量が低下することが無いため、より好ましい。また、架橋前の重量平均分子量の上限については特に定めるものではないが、200万以下が好ましい。重量平均分子量が200万を超えてしまう場合、ポリマーの反応制御が難しく、重合が上手くいかなかったり、分子量分布が広がってしまったりして目的となるポリマー性能が発揮されない可能性が高いためである。更に、反応時間も長くなってしまうため、コストアップにも繋がってしまう可能性もある。
【0015】
粘着剤層に適用される主成分であるポリマーの重量平均分子量が100万以下である場合、低分子量成分が粘着剤層表面へブリードしてくるため、被着体であるウエハに低分子量の有機物成分が転写してしまい、糊残りや有機物汚染の原因となってしまう。
【0016】
なお、重量平均分子量の測定は、下記測定条件のGPC( ゲルーパーミション・クロマトグラフ) にて測定することができる。
(GPC装置:東ソー社製HLC−8120GPC、カラム:TSK gel SuperHM−H/H4000/H3000/H2000、流量:0.6ml/min、濃度:0.3質量%、注入量:20μl、カラム温度:40℃)
【0017】
前記粘着剤を構成する主成分のポリマーは(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーは粘着力の制御が容易であるためである。
【0018】
(メタ)アクリル系ポリマーである(メタ)アクリル系共重合体は、アクリル酸アルキルエステル等のモノマー(1)と、後述する硬化剤と反応しうる官能基を有するモノマー(2)を共重合してなる。
【0019】
モノマー(1)としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
モノマー(2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
(メタ)アクリル系共重合体は上記モノマー(1)と(2)を常法により溶液重合法によって共重合させることによって得られる。
【0022】
(メタ)アクリル系共重合体には硬化剤を配合することによって粘着力が制御される。硬化剤の配合部数を調整することで所定の粘着力を得ることができる。
【0023】
硬化剤は、(メタ)アクリル系共重合体が有する官能基と反応させて、(メタ)アクリル系共重合体を架橋し、粘着力および凝集力を調整するために用いられるものである。例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ系化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、テトラメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン系化合物等が挙げられる。
【0024】
また、本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの30℃〜70℃におけるSUS研磨面に対する粘着力は1N/25mm以下、好ましくは0.7N/25mm以下、さらに好ましくは0.5N/25mm以下である。
【0025】
本発明における粘着剤層には、上記の成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分を含有することができる。
【0026】
本発明に用いられる基材フィルムの材質としては、特開2004−186429の記載のものを挙げることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のエンジニアリングプラスチック、またはポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテンもしくはペンテン系共重合体等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。またはこれらの群から選ばれる2種以上が混合されたものもしくは複層化されたものでもよい。基材フィルムの厚さは50〜200μmが好ましい。
【0027】
基材フィルム上に上記の粘着剤層を形成するためには、基材フィルムの少なくとも片面に、少なくとも1種類の粘着剤を任意の方法で塗布すればよい。乾燥後の粘着剤層の厚さは10〜300μmが好ましい。また、基材フィルムと粘着剤層の間に、必要に応じてプライマー層などの中間層を設けてもよい。
【0028】
また、必要に応じて、実用に供するまでの間、粘着剤層を保護するため通常セパレータとして用いられる合成樹脂フィルムを粘着剤層側に貼付しておいても良い。
【0029】
本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープを用いることにより、例えば、ウエハ表面の半導体素子上に形成する耐熱性樹脂膜が、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ベンゾシクロブテン、またはこれらの共重合体から選択される化合物を1種以上含む膜であり、その膜がプラズマ等で表面改質されていて、厚さが100μm、口径が12インチのウエハの処理工程においても破損なく剥離することが可能である。さらに、紫外線硬化型表面保護用粘着テープを用いる必要はなく、半導体ウエハの被着面を汚染しない。
【0030】
本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープにより、半導体ウエハの裏面を研削後、前記粘着テープを剥離する工程において、従来は、ウエハの厚さ、口径、表面状態によっては剥離が困難となる条件であっても、容易に剥離することができる。
【実施例】
【0031】
以下実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる厚さ110μmの基材フィルムに、エチルアクリレートを主成分とする重量平均分子量120万のアクリル系共重合体をベースにイソシアネート系硬化剤であるコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2重量%含有する粘着剤(アクリル系A)を塗布し、セパレータによる転写方式にて乾燥厚20μmの粘着剤層を形成し、基材フィルムに常温でラミネートすることで粘着テープを作製した。
【0032】
<実施例2>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる厚さ110μmの基材フィルムに、ブチルアクリレートを主成分とする重量平均分子量165万のアクリル系共重合体をベースにイソシアネート系硬化剤であるコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2重量%含有する粘着剤(アクリル系B)を塗布し、セパレータによる転写方式にて乾燥厚20μmの粘着剤層を形成し、基材フィルムに常温でラミネートすることで粘着テープを作製した。
【0033】
<実施例3>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる厚さ110μmの基材フィルムに、ブチルアクリレートを主成分とする重量平均分子量110万のアクリル系共重合体をベースにイソシアネート系硬化剤であるコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2重量%含有する粘着剤(アクリル系C)を塗布し、セパレータによる転写方式にて乾燥厚20μmの粘着剤層を形成し、基材フィルムに常温でラミネートすることで粘着テープを作製した。
【0034】
<実施例4>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる厚さ110μmの基材フィルムに、エチルアクリレートおよびブチルアクリレートを重量比で1:1にて構成されたポリマーを主成分とする重量平均分子量120万のアクリル系共重合体をベースにイソシアネート系硬化剤であるコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2重量%含有する粘着剤(アクリル系D)を塗布し、セパレータによる転写方式にて乾燥厚20μmの粘着剤層を形成し、基材フィルムに常温でラミネートすることで粘着テープを作製した。
【0035】
<比較例1>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる厚さ110μmの基材フィルムに、メチルアクリレートを主成分とする重量平均分子量105万のアクリル系共重合体をベースにイソシアネート系硬化剤であるコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2重量%含有する粘着剤(アクリル系E)を塗布し、セパレータによる転写方式にて乾燥厚20μmの粘着剤層を形成し、基材フィルムに常温でラミネートすることで粘着テープを作製した。
【0036】
<比較例2>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる厚さ110μmの基材フィルムに、ブチルアクリレートを主成分とする重量平均分子量20万のアクリル系共重合体をベースにイソシアネート系硬化剤であるコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2重量%含有する粘着剤(アクリル系F)を塗布し、セパレータによる転写方式にて乾燥厚20μmの粘着剤層を形成し、基材フィルムに常温でラミネートすることで粘着テープを作製した。
【0037】
<比較例3>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる厚さ110μmの基材フィルムに、スチレンとイソプレンからなるベースポリマーであるKratonD 1320X(商品名、シェルジャパン社製)に粘着付与剤であるArkonM100(商品名、荒川化学工業社製)を重量比で6:4になるように混合したポリマーをベースに、イソシアネート系硬化剤であるコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2重量%含有する粘着剤(ゴム系A)を塗布し、セパレータによる転写方式にて乾燥厚20μmの粘着剤層を形成し、基材フィルムに常温でラミネートすることで粘着テープを作製した。
【0038】
実施例1〜4および比較例1〜3の粘着テープを以下の条件にしたがって実験を行った。また、それぞれの測定結果について表1にまとめた。
<粘着力測定>
本発明における、シリコンウエハの活性ポリイミド(PI)膜面および鏡面研磨面に対する粘着力測定方法を説明する。ここで、活性ポリイミド膜は、シリコンウエハに感光性ポリイミドを塗布し、乾燥、UV硬化後の膜厚5μmのポリイミド膜を形成し、さらに、プラズマによるエッチングにて活性化処理を行ったものである。
粘着テープから幅25mm×長さ300mmの試験片を3点採取し、それらを活性ポリイミド膜面および鏡面研磨面上に貼着した後、2kgのゴムローラを3往復かけ圧着し、1時間放置後、測定値がその容量の15〜85%の範囲に入るJIS B 7721に適合する引張試験機を用いて粘着力を測定する。測定は、180度引きはがし法によるものとし、この時の引張速さは300mm/minとする。測定温度範囲は23℃、測定湿度は49%である。その後、活性ポリイミド膜面での粘着力と、鏡面研磨面での粘着力の比を求めた。
【0039】
<加熱剥離粘着力測定>
本発明における、SUS研磨面に対する粘着力測定方法を説明する。粘着テープから幅25mm×長さ300mmの試験片を3点採取し、それらをJIS R 6253に規定する280番の耐水研磨紙で仕上げたJIS G 4305に規定する厚さ1.5mm〜2.0mmのSUS304鋼板上に貼着した後、2kgのゴムローラを3往復かけ圧着し、1時間放置後、測定値がその容量の15〜85%の範囲に入るJIS B 7721に適合する引張試験機を用いてSUS板を30℃、40℃、70℃の各条件にて加熱しながら粘着力を測定する。測定は、180度引きはがし法によるものとし、この時の引張速さは300mm/minとする。このときの測定湿度は49%である。
【0040】
<粘着剤層表面のヨウ化メチレン接触角>
まず、基材フィルム上に粘着剤層が形成された実施例および比較例の粘着剤層表面にセパレータを貼合する。次に、平らな面で測定を行う必要があるため、基材フィルムの粘着剤層が設けられていない方の面を、両面テープを用いて表面が平らのウエハに固定した。セパレータを剥離し、ヨウ化メチレンを滴下し、接触角θを協和化学株式会社製FACE接触角計CA−S150型を用いて測定した。測定温度は23℃、測定湿度は50%である。
【0041】
<剥離試験>
実施例および比較例で作製した粘着テープについて、貼り付け機(日東精機株式会社製DR8500II)を用いて8インチウエハの活性ポリイミド膜付ウエハに貼り付け、グラインダー(株式会社ディスコ製DFG8540)を使用して厚さ100μmまで研磨した。その後、日東精機株式会社製HR8500IIを用いて、剥離性試験を25枚行った。
テープがウエハから25枚全てが問題なく剥離できたものを:○
剥離中のウエハの破損等が発生若しくは剥離できなかったもの:×
【0042】
<汚染性試験>
ウエハ表面に実施例および比較例で作製した粘着テープを貼り付け、剥がしたウエハ表面の元素比率をXPS(X線光電子分光分析)にて測定し、粘着シートからの転写汚染物に由来する炭素の増加量をブランクウエハと比較しatomic%として算出した。また、測定条件は以下の条件にて測定を行った。
X線原:MgKα、X線のTake off angle:45°、
測定面積:1.1mmφ
炭素増加量が25atomic%以下であったもの:○
炭素増加量が25atomic%より大きかったもの:×
【0043】
【表1】

【0044】
表1で示すように、比較例1〜比較例3の粘着テープでは、剥離性が悪く、剥離時に、上記のいずれかの不具合が生じるか非汚染性が非常に悪い。一方、これに対し、実施例1〜実施例4の粘着テープはいずれも、剥離性は良好であり且つ非汚染性に優れ、表面保護用粘着テープとして問題なく使用できることが判った。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に粘着剤層を有する半導体ウエハ表面保護用粘着テープであって、
前記粘着剤層が感圧型粘着剤であり、
前記粘着剤層表面のヨウ化メチレンに対する接触角が30度以上60度以下であり、
前記感圧型粘着剤を構成する主成分であるポリマーの重量平均分子量または架橋後の分子の重量平均分子量が100万以上である
ことを特徴とする半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
【請求項2】
前記感圧型粘着剤を構成する主成分のポリマーが(メタ)アクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
【請求項3】
30℃〜70℃における前記粘着テープのSUS研磨面に対する粘着力が1.0N/25mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。

【公開番号】特開2011−129605(P2011−129605A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284728(P2009−284728)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】