説明

慢性リンパ球性白血病を治療する方法および組成物

HSP90阻害剤、特にアンサマイシン、より具体的には17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)を投与することによる慢性リンパ球性白血病の新規治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、慢性リンパ球性白血病(CLL)の治療、具体的にはHSP90阻害剤を用いる侵襲性(進行性)CLLの治療、より具体的にはアンサマイシン、例えば、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)を用いるCLLの治療に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の説明には、本発明の理解に有用な情報を含む。本明細書に記載のあらゆる情報が先行技術または本発明に関連するものであるか、具体的にまたは非明示的に引用したあらゆる刊行物が先行技術であると承認しない。
【0003】
慢性リンパ球性白血病(CLL)の経過は変化しやすい。侵襲性疾患では、CLL細胞は、通常、非突然変異免疫グロブリン重鎖可変領域遺伝子(Ig VH)および70-kDゼータ関連タンパク質(ZAP70)を発現するが、無痛性疾患ではCLL細胞は、通常、突然変異IgVHを発現するがZAP70は発現しない。CLL患者におけるZAP70の発現は、疾患の進行、臨床結果の悪さ、全生存率の低下、および早期治療の必要性と関連する。非突然変異IgVHの存在は、ZAP70の発現と強い関連があるが、ZAP70はB細胞CLLの治療の必要性と予後に対するより強い予測因子である。Rassenti、L.Z. et al.、N Eng J Med.、2004、351、893-901。
【0004】
ZAP70は、本来ナチュラルキラー(NK)細胞とT細胞にのみ発現する70-kD細胞質タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)であり、T細胞レセプター情報伝達に重要な役割を果たす。Keating et al.、Hematology、2003、153-175。B細胞はZAP70を欠き、代わりにB細胞レセプター(BCR)複合体を介する情報伝達に別の関連PTKを用いる。研究は、非突然変異Ig VH遺伝子を有するCLL B細胞が、一般的に正常血液T細胞が発現するのと同等なレベルのZAP70タンパク質を発現することを示した。反対に、突然変異Ig VH遺伝子を発現するかまたはCD38を低レベルで発現するCLL B細胞は、一般的に検出可能なレベルのZAP70タンパク質を発現しない。Chen、et al.、Blood 2002、100:13、4609-4614。ZAP70のB細胞での発現は遺伝的に予め決定されない。Chen、2002、上記。ZAP70の発現は、CLLに発現したBCR複合体の情報伝達能に機能的重要性を持つ。Keating et al 上記。ZAP70は、BCRの結合後の下流の情報伝達分子のリン酸化を促進し、膜抗原レセプター情報伝達経路に役割を演じる。Keating et al.、上記、およびRassenti et al.、上記。ある研究は、CLLにおけるZAP70の発現は、非突然変異IgVHを発現するCLL細胞と一般に関連する比較的侵襲性の臨床挙動をもたらす特徴である、CLL B細胞におけるより有効なIgM情報伝達を可能にすることを示す。Chen、et al.、Blood、2004(オンライン予備発表2004年8月28日)。
【0005】
真核性熱ショックタンパク質90(HSP90)は、情報伝達、細胞周期調節、および転写制御のメディエーターを含む種々のクライアントタンパク質のホールディング、活性化、および組み立てに関与する遍在性シャペロンタンパク質である。クライアントタンパク質に対するその作用を発揮するため、HSP90はコシャペロン分子と活性ATP結合部位からなる活性タンパク質複合体の形成を必要とする。HSP90クライアントタンパク質と同定されるタンパク質には、貫膜チロシンキナーゼ[HER-2/neu、上皮成長因子レセプター(EGFR)、MET、およびインスリン様成長因子-1レセプター(IGF-IR)]、準安定(metastable)情報伝達タンパク質(Akt、Raf-1、およびIKK)、突然変異情報伝達タンパク質(p53、Kit、Flt3、およびv-src)、キメラ情報伝達タンパク質(NPM-ALK、Bcr-Abl)、ステロイドレセプター(アンドロゲン、エストロゲン、およびプロゲステロンレセプター)、細胞周期調節因子(cdk4、cdk6)、およびアポトーシス関連タンパク質が含まれる。悪性進行および癌の予後はコシャペロンタンパク質との高度の複合体で存在する活性化HSP90の存在と関連しうると仮定された。Kamal et al.、Nature、2003、425:407-410。
【0006】
アンサマイシン抗生物質、例えば、ヘルビマイシンA(HA)、ゲルダナマイシン(GDM)、17-AAG、および他のHSP90阻害剤は、HSP90のN末端ATP結合ポケットの密な結合によりその抗癌効果を示すと考えられる(Stebbins、C. et al.、Cell、1997、SP:239-250)。このポケットは、高度に保存され、DNAギラーゼのATP結合部位と弱い相同性を有する(Stebbins、C. et al.、上記;Grenert、J.P. et al, J. Biol. Chem. 1997、272:23843-50)。さらに、ATPおよびADPは共にこのポケットと低親和性で結合し、弱いATPアーゼ活性を有することが示されている(Proromou、C. et al.、Cell、1997、90:65-75;Panaretou、B. et al.、EMBO J.、1998、17:482936)。In vitroおよびin vivo試験は、アンサマイシンおよび他のHSP90阻害剤によるこのN末端ポケットの占有はHSP90機能を変化させ、タンパク質ホールディングを阻害することを示した。アンサマイシンおよび他のHSP90阻害剤は高濃度でHSP90に対するタンパク質基質の結合を抑制することが示されている(Scheibel、T. H. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1999、96:1297-302;Schulte、T. W. et al.、J. Biol. Chem. 1995、270:24585-8;Whitesell、L. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1994、97:8324-8328)。アンサマイシンは、シャペロン関連タンパク質物質のATP依存性放出を阻害することも示された(Schneider、C. L. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1996、93:14536-41;Sepp-Lorenzino et al.、J. Biol. Chem. 1995、270:16580-16587)。いずれにせよ、該基質は、プロテオソームのユビキチン依存性プロセスにより分解される(Schneider、C. L. 上記;Sepp-Lorenzino、L. et al.、J. Biol. Chem.、1995、270:16580-16587;Whitesell、L. et al.、上記)。
【0007】
この基質の不安定化は、腫瘍と非形質転換細胞の両方に同様に生じ、情報伝達調節因子のサブセット、例えばRaf(Schulte、T. W. et al.、Biochem. Biophys. Res. Commun. 1997、239:655-9;Schulte、T. W. et al.、J. Biol. Chem. 1995、245-270:24585-8)、核ステロイドレセプター(Segnitz、B.、and U. Gehring、J. Biol. Chem. 1997、272:18694-18701;Smith、D. F. et al Mol. Cell. Biol. 1995、75:6804-12)、v-src(Whitesell、L.、et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1994、91:8324-8328)、およびある種の貫膜チロシンキナーゼ(Sepp-Lorenzino、L. et al.、J. Biol Chem. 1995、270:16580-16587)、例えばEGFレセプター(EGFR)、Her2/Neu(Hartmann、F. et al Int. J. Cancer 1997、70:221-9;Miller、P. et al.、Cancer Res. 1994、54:2724-2730;Mimnaugh、E. G. et al.、J. Biol Chem. 1996、277:22796-801;Schnur、R. et al.、J. Med. Chem. 1995、38:3806-3812)、CDK4、および突然変異体p53(Erlichman et al.、Proc. AACR、2001、42、abstract 4474)に対して特異的に有効であることが示されている。これらタンパク質のアンサマイシン誘導損失は、ある種の調節経路の選択的崩壊をもたらし、細胞周期の特定の期での成長停止(Muise-Heimericks、R. C. et al、J. Biol. Chem.、1998、273:29864-72)、およびそのように処置した細胞のアポトーシス、および/または分化(Vasilevskaya、A. et al.、Cancer Res.、1999、59:3935-40)をもたらす。
【0008】
ZAP70発現は、侵襲形のCLLと関連があり、そのような過剰発現を制御する手段が必要である。正常細胞および組織に対する傷害を同時に避けまたは最小限にする処置が最も望ましいであろう。本発明はこの要求に取り組む。
(発明の要約)
【0009】
本願の発明者らは、ZAP70がHSP90のクライアントタンパク質であり、HSP90の特異的阻害剤、例えば17-AAGがこのチロシンキナーゼの発現と機能を下方調節し、用量および時間依存性にZAP-90陽性CLL B細胞に選択的にアポトーシスを誘導することをみいだした。
【0010】
本発明のある局面は、必要とする患者に医薬的有効量のHSP90阻害剤を投与することによりCLL B細胞におけるZAP70の発現を特徴とするCLLの一種を治療する方法である。
【0011】
ある態様において、該阻害剤はアンサマイシンであり、アンサマイシンは下記の群、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩またはプロドラッグから選ばれる:
【化1】


【0012】
さらにある態様において、アンサマイシンは17-AAGであり、175℃以下のDSC融点および/または5.85度、4.35度、および7.90度の2ゼータ角(two-theta angle)に局在するピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする低融点形の17-AAGを含んでよい。別の態様において、該アンサマイシンはDSC融点約156℃および5.85度、4.35度、および7.90度の2ゼータ角に局在するピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする低融点多形体の17-AAGである。さらに別の態様において、該アンサマイシンはDSC融点約172℃を特徴とする別の低融点多形体の17-AAGである。さらに、該17-AAGは、高融点形、低融点形、非晶質形、またはその組み合わせであってよい。
さらに他の態様において、該阻害剤はHSP90のATP結合部位と結合する。
【0013】
本発明の別の局面において、HSP90阻害剤は静脈内、病巣内、非経口的、または経口的に投与される。
【0014】
本発明のさらなる局面において、該HSP90阻害剤は、ZAP70が上昇していない正常B細胞のHSP90よりZAP70が上昇している該患者のB細胞中のHSP90に対して約2〜10倍低いIC50を有する。ある態様において、該HSP90阻害剤は、ZAP70が上昇していない正常B細胞のHSP90よりZAP70が上昇している該患者のB細胞中の該HSP90に対して約2倍、5倍、または10倍低いIC50を有する。
【0015】
本発明の別の局面において、該阻害剤は、ZAP70が上昇している細胞において約100nMまたはそれ以下のIC50を有する。ある態様において、該阻害剤はZAP70が上昇している細胞において約75nMまたはそれ以下のIC50を有する。ある態様において、該阻害剤はZAP70が上昇している細胞において約50nMまたはそれ以下のIC50を有する。ある態様において、該阻害剤はZAP70が上昇している細胞において約30nMまたはそれ以下のIC50を有する。
【0016】
上記局面および態様は、実行可能または適切なときは組み合わせてよい。当業者に自明な前記局面および態様の他の局面および変化は本発明の意図内にある。
【0017】
本発明の利点には、製造し易さ、臨床的に許容される試薬の使用(例えば、環境および/または患者への毒性が減少している)、製剤安定性の増大、輸送および倉庫保管がより簡単、および薬局や臨床での取り扱いが簡単、の1またはそれ以上が含まれる。
(図面の簡単な説明)
【0018】
図1は、B細胞、T細胞、ZAP70陽性CLL B細胞(ZAP70+CLL B細胞)、およびZAP70陰性CLL B細胞(ZAP70-CLL B細胞)の溶解物中のHSP90に対するビオチン化ゲルダナマイシンプローブ(ビオチン-GM)と17-AAGの競合結合を示す。ウエスタンブロットバンドは、HSP90のビオチン-GMに対する結合の阻害は17-AAG濃度の増加と共に減少することを示す(1a.)。結果は、HSP90のビオチン-GMに対する結合の阻害%対17-AAG濃度(nM)を定量しブロットする(1b)。報告されたIC50は、最大の半分の結合阻害を生じるのに必要な17-AAGの濃度である(1c)。
【0019】
図2は、17-AAGの増加する濃度の存在下におけるZAP70+CLL B細胞(▲)およびZAP70-CLL B細胞(■)の溶解物中のHSP90に対するビオチン化ゲルダナマイシンプローブ(ビオチン-GM)の結合の阻害をグラフで示す。
【0020】
図3は、正常B細胞(◆)およびT細胞(■)の溶解物中のHSP90に対するビオチン化ゲルダナマイシン(ビオチン-GM)の結合の阻害をグラフで示す。
【0021】
図4は、SDS-PAGE、および示した抗体を用いるウエスタンブロットにより分析した免疫共沈降によるMCF-7乳癌細胞、ZAP70+CLL B、およびZAP70-CLL B、および正常TおよびB細胞におけるHSP90およびZAP70の結合を示す。「IP」は免疫沈降を示し、「WB」はウエスタンブロットを示す。P23およびHOPは、既知の2つの多シャペロンHSP90複合体の基本成分である。
【0022】
図5は、37℃で24時間、EC1(17-AAG)(■)、EC82(▲)、EC86(X)(EC82およびEC86はプリンベースのHSP90阻害剤である)またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)(◆)で処置後のZAP70+CCL B細胞中のZAP70の分解を比較する。
【0023】
図6は、37℃で24時間、300nM EC1(17-AAG)で処理(右パネル)または非処理(左パネル)のCLL B細胞におけるZAP70の発現を2色フローサイトメトリーにより比較する。右上1/4区画は正常T細胞(CD3+、ZAP70+)であり、右下1/4区画は(CD3-、ZAP70+)であり、左上1/4区画はCD3+、ZAP70-であり、左下1/4区画はCD3-、ZAP70-である。
【0024】
図7は、EC1(17-AAG)(◆)またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)(■)で処置後のZAP70+CCL B細胞の生存率%(100%−アポトーシス細胞%として表現)を比較する。
【0025】
図8は、100nMのEC1(17-AAG)(■)またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)(◆)で処置後のZAP70+CCL B細胞の生存率%(100%−アポトーシス細胞%として表現)を比較する。細胞死滅率が50%に達するまでの時間は17-AAGで処置後約48時間である。
【0026】
図9は、100nM EC1(17-AAG)で48時間処置後のZAP70+患者16人およびZAP70-患者11人から得たCCL B細胞の生存率%(100%−アポトーシス細胞%として表現)を比較する。ZAP70+CLL B細胞の平均生存率%は45.74±3.177%であり、ZAP70-CLL B細胞の平均生存率%は93±1.701%である。2つのポピュレーション間の生存率の差のStudents T-TestのP値は<0.0001であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、T細胞にのみ正常に発現するタンパク質キナーゼであるZAP70の過剰発現を特徴とする侵襲形の慢性リンパ球性白血病(CLL)のHSP90阻害剤による治療方法に関する。該方法は、ZAP70がHSP90と免疫共沈殿し、HSP90クライアントタンパク質であることを示唆するという観察結果に基づく。本発明者らは、さらにZAP70陽性CLL試料において、細胞質に存在する大部分のHSP90が複合形であるが、ZAP70陰性試料ではほとんどのHSP90が複合化していないことをみいだした。本発明者らは、CLL B細胞中の異常な過剰発現および機能が活性化HSP90に依存し、その発現レベルが特異的HSP90阻害剤を用いることにより下方調節され、ZAP70陽性CLL B細胞のアポトーシスの誘導をもたらすかもしれないと仮定した。ZAP70発現のレベルは、ナノモル濃度のHSP90阻害剤で24時間処置した細胞で30〜40%低下したことがわかった。
I. 定義
【0028】
以下の用語は以下の意味を有し、以下に特に示していない用語は当該分野で用いるそのよく用いられる通常の意味を有する。
【0029】
用語「ZAP70陽性」および「ZAP70陰性」は、フローサイトメトリー(FACSCalibur、BD Biosciences and Flow Jo software)により測定した20%のカットオフ表現に基づく。「HSP90阻害化合物」または「HSP90阻害剤」は、HSP90シャペロンタンパク質および/またはHSP90に依存するタンパク質の構造および/または機能を混乱させるものである。HSP90タンパク質は、天然に高度に保存されている(例えば、NCBI受託No.P07900およびXM 004515(それぞれヒトαおよびβHSP90)、P11499(マウス)、AAB2369(ラット)、P46633(チャイニーズハムスター)、JC1468(ニワトリ)、AAF69019(ニクバエ)、AAC21566(ゼブラフィッシュ)、AAD30275(サケ)、002075(ブタ)、NP 015084(酵母)、およびCAC29071(カエル)参照)。Grp94およびTrap-1は、本明細書で用いるHSP90の定義内にある関連分子である。すなわち、すべて同様の効果と阻害能を有すると予想される多くの種々のHSP90がある。本発明のHSP90阻害剤は、特定の宿主患者のHSP90を特異的に対象とするか、または異なる種由来のHSP90同族体またはHSP90変異体に対する反応性に基づいて同定することができよう。
【0030】
用語「アンサマイシン」は、長鎖により架橋したベンゾキノン、ベンゾヒドロキノン、ナフトキノン、またはナフトヒドロキノン部分のいずれかを含む「アンサ」構造を有する化合物を特徴付ける広義の用語である。ナフトキノンまたはナフトヒドロキノンクラスの化合物の例には、それぞれ臨床的に重要な薬剤であるリファンピシンとリファマイシンがある。ベンゾキノンクラスの化合物の例にはゲルダナマイシンがある(その合成誘導体の17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)、17-N,N-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(DMAG)、ジヒドロゲルダナマイシン、およびヘルバマイシンを含む)。ベンゾヒドロキノンクラスの例にはマクベシンがある。本発明をアンサマイシン、特に17-AAGを用いて例示するが、本明細書に記載のCLLの新規治療方法は高融点形および低融点形両方の該化合物、およびその多形体、互変体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩、およびプロドラッグに適用されると理解すべきである。さらに、該方法は、限定されるものではないが、「実施例」の項の実施例1〜13に記載のものを含む多くの他のアンサマイシン、例えばゲルダナマイシン、17-N,N-ジメチルアミノエチルアミノゲルダナマイシン、およびその多形体、互変体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩、およびプロドラッグに適用されると理解すべきである。番号付けした化合物の構造を「要約」の項に記載する。
【0031】
用語「薬理活性化合物」、「活性医薬成分」または「治療成分」は、「薬剤」と同義であり、培養細胞または生物に投与したときにin vitroまたはin vivoで直接または間接的に生物活性を示すあらゆる化合物を意味する。
【0032】
「プロドラッグ」は、プロドラッグを哺乳動物対象に投与したときに薬剤の放出がin vivoで生じる担体と共有結合した薬剤である。本発明化合物のプロドラッグは、修飾が日常的操作またはin vivoで開裂して所望の化合物を生じるような方法で該化合物に存在する官能基を修飾することにより製造される。プロドラッグには、ヒドロキシ、アミン、またはスルフヒドリル基が、哺乳動物対象に投与した時に開裂してそれぞれ遊離ヒドロキシル、アミノ、またはスルフヒドリル基を形成するあらゆる基と結合している化合物が含まれる。プロドラッグの例には、限定されるものではないが本発明化合物のアルコールおよびアミン官能基のアセテート、ホルメート、またはベンゾエート誘導体;本発明化合物のアルコールまたはフェノール官能基のリン酸エステル、ジメチルグリシンエステル、アミノアルキルベンジルエステル、アミノアルキルエステル、またはカルボキシアルキルエステルなどが含まれる。プロドラッグは、例えば、REMINGTON PHARMACEUTICAL SCIENCES、第20版、Ch. 47、pp. 913-914に記載のドラッグデリバリーの多くの利点を与えることができる。
【0033】
「医薬的に許容される塩」には、医薬的に許容される無機および有機酸および塩基から誘導されるものが含まれる。適切な酸の例には、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、1,2 エタンスルホン酸(エジシレート)、ガラクトシル-d-グルコン酸などが含まれる。シュウ酸のような他の酸はそれ自身医薬的に許容されるものではないが、本発明化合物およびその医薬的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の製造において用いることができよう。適切な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属(例えばナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、アンモニウム、およびN-(C1-C4アルキル)4+塩などが含まれる。これらのいくつかの実例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化コリン、炭酸ナトリウムなどが含まれる。「化合物(例えば化合物「x」)またはその医薬的に許容される塩」を列挙し、該化合物のみを表示している請求項は、選択肢またはつながりにおいてそのような化合物の医薬的に許容される塩もしくは塩類を含むと解釈すべきである。
【0034】
「医薬的有効量」は、治療または予防効果をもたらすことができる量を意味する。治療および/または予防効果を得るために本発明に従って投与する化合物の特定用量は、もちろん例えば投与する特定の化合物、投与経路、治療する病状、および治療する個体を含む症例を取り囲む特定の環境により決定されるであろう。典型的な1日用量(単回または分割した用量で投与される)は、本発明の活性化合物を約0.01mg/kg〜約100、より好ましくは50mg/kg体重の用量レベルで含むであろう。好ましい1日用量は、一般に約0.05mg/kg〜約20mg/kg、理想的には約0.1mg/kg〜約10mg/kgであろう。
【0035】
好ましい治療効果は、治療する疾患に特徴的な細胞の増殖をある程度まで阻害する。治療効果は、通常、該疾患と関連する1またはそれ以上の症状もある程度軽減するであろう(軽減しなくてもよい)。
【0036】
用語「IC50」は、あるポピュレーションまたは特定の細胞種の細胞、例えばより大きな細胞ポピュレーション内の癌細胞対非癌細胞の50%を殺滅するのに必要なHSP90阻害剤の濃度と定義する。IC50は、必ずではないが、好ましくは増殖性疾患を示す細胞より正常細胞でより大きい。
【0037】
「生理学的に許容される担体」は、生物に有意な刺激を生じない、投与した化合物の生物活性および特性を排除しない担体または希釈剤を表す。製剤に応じて、希釈剤は、固体、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム、もしくは液体、例えば水または油でありうる。
【0038】
「賦形剤」は、化合物の加工、投与、および薬剤学的特性を促進する医薬組成物に加える無毒性の医薬的に許容される物質を表す。賦形剤には、限定されるものではないが、増量剤、希釈剤、流動促進剤、潤滑剤、崩壊剤、結合剤、可溶化剤、安定化剤/充填剤、および種々の機能的および非機能的コーティング剤が含まれる。
【0039】
用語「約」は、示した特定のエンドポイントを15%(含む)まで超えることを意味する。すなわち、該範囲が広くなる。
【0040】
用語「所望により」は、該用語に続く工程または化合物が該方法または製剤の部分でなくてよいことを示す。
【課題を解決するための手段】
【0041】
II. アンサマイシンの製造
本発明のアンサマイシンは、合成、天然、またはその2つの組み合わせ、すなわち、「半合成」であってよく、二量体および結合変異体およびプロドラッグ形を含んでよい。本発明の種々の態様に有用ないくつかの典型的ベンゾキノンアンサマイシンとその製造方法には、限定されるものではないが、例えば、米国特許No.3,595,955(ゲルダナマイシンの製造方法を記載)、No.4,261,989、No.5,387,584、およびNo.5,932,566に記載のもの、ならびに下記「実施例」の項(実施例1〜12)に記載のものがある。ゲルダナマイシンは、例えば、CN Biosciences(Merck KGaAの関連会社、Darmstadt、Germany、本部はSan Diego、California、USA)(cat. no.345805)からも市販されている。17-N,N-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デスメトキシ-ゲルダナマイシン(DMAG)は、EMD/Calbiochemから市販されている。ゲルダナマイシン誘導体、4,5-ジヒドロゲルダナマイシンおよびそのヒドロキノンのStreptomyces hygroscopicus(ATCC 55256)の培養からの生化学的精製は、WO 93/14215(Cullen et al)に記載されている。ゲルダナマイシンの触媒的水素化による4,5-ジヒドロゲルダナマイシンの別の合成方法も知られている。例えば、「Progress in the Chemistry of Organic Natural Products」、Chemistry of the Ansamycin Antibiotics、1976 33:278参照。本発明の種々の態様に用いることができる他のアンサマイシンは、上記「背景技術」の項に記載の文献および「要約」の項に記載されている。
【0042】
17-AAGは、窒素雰囲気下、乾燥THF中のアリルアミンとの反応によりゲルダナマイシンから製造してよい。粗生成物は、H2O:EtOH(90:10)中でスラリーにすることにより精製することができ、得られた洗浄結晶は、キャピラリー融点技術により206-212℃の融点を有する。17-AAGの第2生成物は、2-プロピルアルコール(イソプロパノール)から粗生成物を溶解し、再結晶することにより得ることができる。この第2の17-AAG生成物は、キャピラリー融点技術により147-153℃の融点を有する。2つの17-AAG生成物は、低融点形および高融点形として設計される。低融点形の安定性は、高融点形が精製される、高融点形への変換が観察されない溶媒(H2O:EtOH(90:10))中で結晶をスラリーにすることにより試験してよい。17-AAGの2つの多形体形の製造の詳細については実施例1〜2参照。
III. HSP90の阻害によるZAP70の下方調節の効果の分類と評価
A. 細胞溶解物中のZAP70レベルの測定
【0043】
タンパク質濃度を測定し、細胞内および液体試料中のタンパク質レベルを測定または予測する多くの種々のタイプの方法が当該分野で知られている。間接的技術には、核酸ハイブリダイゼーションおよび例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いる増幅が含まれる。これら技術は当業者に知られており、例えばSambrook、Fritsch & Maniatis、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版(1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N. Y.、Ausubel、et al.、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、NY、1994に記載されている。ZAP70の濃度は、イムノアッセイ技術、例えばイムノブロッティング、ラジオイムノアッセイ、イムノフルオレッセンス、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、酵素免疫測定法(ELISA)、およびZAP70に対する抗体を用いる派生技術、およびフローサイトメトリーにより測定してよい。好都合な定量的ZAP70発現測定法には、Rassenti et al(上記)が最近発表した研究(この内容は本明細書の一部を構成する)に記載のフローサイトメトリーの一種であるFACS(蛍光活性化セルソーター)(FACSCalibur、BD Biosciences and Flow-Jo software、version 2.7.4(Tree Star))がある。Rassentiの研究では、血液細胞をアロフィコシアニンおよびフィコエリスリンとそれぞれ結合したCD19特異的およびCD3特異的モノクローナル抗体(Pharmingen)、およびAlexa-488色素と結合した抗ZAP70モノクローナル抗体(Becton Dickenson)で染色した。他の色素系を用いてもよい。リンパ球を前角光散乱に基づいてゲートし、健康ドナーから得た血液単核細胞を用いて初期ゲートを定めることができる。ZAP70の発現はこのゲーティング閾値以上のCD19+CD3細胞の割合を計算することにより測定した。ZAP70陽性およびZAP70陰性は、カットオフ表現に基づき、例えばフローサイトメトリーにより白血病細胞の20%以上に検出されたZAP70の発現とすることができる。
B. HSP90リガンドのHSP90に対する結合親和性の測定
【0044】
種々の同位体法および非同位体法、例えば比色法、酵素法、および濃度測定法がある阻害剤の標的タンパク質に対する結合親和性を評価するのに十分な感度を提供する。これら方法は、一般的には当該分野で知られており、本発明の文脈において用いることができる。
【0045】
HSP90リガンドのHSP90に対する結合親和性は、Kamal et al.、Nature 2003、425:407-410に記載の競合結合アッセイにより測定することもできる(この内容は本明細書の一部を構成する)。該リガンドの結合親和性は、既知のHSP90阻害剤であるゲルダナマイシンの結合阻害能により測定される。HSP90含有細胞を最初に溶解緩衝液中で溶解させる。溶解物を17-AAGとまたはそれなしでインキュベーションし、次いでBioMag(登録商標)ストレプトアビジン磁気ビーズ(Qiagen)と結合したビオチン-GMとインキュベーションした。結合試料と非結合上清を別々に回収し、SDSタンパク質ゲルを用いて分析し、HSP90抗体(StressGen、SPA-830)を用いてブロットすることができる。ウエスタンブロット中のバンドをBio-rad Fluor-S Multilmagerを用いて定量することができ、HSP90のビオチン-GMに対する結合の阻害%を計算した。IC50は最大の半分の結合阻害を生じるのに必要なHSP90リガンドの濃度である。
【0046】
図1-3は、B細胞、T細胞、ZAP70陽性CLL B細胞、およびZAP70陰性CLL B細胞の溶解物中のHSP90のビオチン化ゲルダナマイシンプローブ(ビオチン-GM)に対する17-AAGの競合結合を示す。該ウエスタンブロットバンドは、HSP90のビオチン-GMに対する結合の阻害は17-AAG濃度の増加と共に低下することを示す(1a)。結果は、HSP90のビオチン-GMに対する結合の阻害%対17-AAG濃度(nM)を定量しブロットする(1b)。図は、結合阻害がZAP70+CLL B細胞から単離したHSP90に対してより高いことを示す。IC50の計算値は、17 AAGがZAP70-CLL B細胞および正常B細胞に比べてZAP70+CLL B細胞から単離したHSP90に対して結合親和性が約10x高いことを示す。
C. 免疫共沈殿による該タンパク質の結合の測定
【0047】
種々のタンパク質の相互結合は、目的タンパク質に特異的な抗体を用いる免疫共沈殿実験により測定することができる。これら方法は当該分野でよく知られている。Goldsby R.A. et al.、KiRBY IMMUNOLOGY、第4版、W.H. Freeman and Company、2000参照。
【0048】
ZAP70がHSP90のクライアントタンパク質である否か、およびZAP70+CLL B細胞中のHSP90が多シャペロン複合体中に存在するか否かを決定するため、一連の4つの免疫共沈殿実験を行った。MCF-7乳癌細胞、ZAP70+およびZAP70-慢性リンパ球性白血病(CLL B)細胞の初代単離物、および正常TおよびB細胞を溶解し、目的タンパク質に特異的な抗体を有するプレブロックプロテインA Sepharoseビーズ(Zymed)でインキュベーションした。結合および非結合分画を別々に回収し、SDS-PAGE、および示した抗体を用いるウエスタンブロットにより分析することができる。
【0049】
図4は、免疫共沈殿実験のイムノブロットを示す。実験の各工程に用いる抗体を示した。IP Abは、免疫沈降に用いる抗体を示す。WB Abは、ウエスタンブロットに用いる抗体を示す。P23およびHOPは、既知の2つの多シャペロンHSP90複合体の基本成分である。第1ゲルは、ZAP70がZAP70+CLL B細胞と正常T細胞に発現するが、ZAP70-CLL B細胞または正常B細胞には発現しないことを示す。第2ゲルは、ZAP70がZAP70+CLL B細胞中のHSP90と物理的に結合するが、正常T細胞を含むあらゆる他の細胞種とは結合しないことを示す。第3ゲルは、免疫共沈殿を逆転させることにより先の知見を確認する。第4ゲルは、MCF-7細胞(陽性コントロール、Kamal et al.、Nature、2003、425:407-410参照)およびZAP70+CLL B細胞中のHSP90は活性状態(HOPおよびp23との多シャペロン複合体)であるが、ZAP70-CLL B細胞または正常TまたはB細胞中のHSP90は潜在的休止状態(HOPまたはp23と結合していない)であることを示す。
IV. ZAP70阻害の有効性の分類と評価
【0050】
HSP90阻害によるZAP70に対する下流効果は、ZAP70発現量または選択したHSP90阻害剤で処置後の細胞の生存率を測定することにより直接測定することができる。
【0051】
個々のZAP70+患者由来のB細胞慢性リンパ球性白血病細胞の初代単離物を37℃で24時間EC1(17-AAG)、EC82、またはEC86(2つの既知のプリンベースのHSP90阻害剤)、またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)で処理した。ZAP70タンパク質発現レベルを、特異抗ZAP70抗体およびFACS分析を用いる透過性細胞の間接免疫蛍光により測定した。
【0052】
図5は、免疫共沈殿実験で示された物理的結合により示されるように(図4)、3種類すべての活性HSP90阻害剤がZAP70の分解を用量依存性に誘導したことを示し、ZAP70がHSP90依存性クライアントタンパク質であることが確認された。さらに、3種の構造的に関連性がないHSP90阻害剤が同じ効果を生じたという事実は、HSP90がCLL B細胞におけるZAP70の安定性に必須のタンパク質であることを強く示す。
【0053】
個々のZAP70+B細胞慢性リンパ球性白血病患者からの白血球細胞の初代単離物を37℃で24時間300nM EC1(17-AAG)で処理するか(右パネル)、または処理しなかった(左パネル)。ZAP70タンパク質の発現レベルをフィコエリスリンと結合した特異的抗CD3抗体およびAlexa-488色素と結合した抗ZAP70抗体を用いる2色間接免疫蛍光法により測定し、フローサイトメトリーにより分析した。CD3はT細胞の特異的マーカーである。
【0054】
図6は、CLL-B細胞無処理(左パネル)または処理(300nM 17-AAG)(右パネル)細胞におけるZAP70の発現を比較する。無処理細胞で示されるように(左パネル)、該細胞の約5%が正常T細胞(CD3+、ZAP70+、右上1/4区画)であり、該細胞の〜85%がZAP70+CLL B細胞(CD3-、ZAP70+、右下1/4区画)であった。EC1(17-AAG)は、免疫共沈殿実験においてB-CLL細胞でみられ、正常T細胞ではみられなかった物理的結合から予測されるように(図4)、B-CLL細胞におけるZAP70の分解を誘導したが(%陽性細胞 85%→34%)、正常T細胞では誘導しなかった(%陽性細胞 4.5%→4.2%)。HSP90阻害剤がB-CLL細胞におけるZAP70の分解を誘導し、正常T細胞では誘導しないという知見は、そのような薬剤がZAP70キナーゼ阻害剤よりより特異的な抗白血病作用を有することを示唆する。これはB-CLL患者がその疾患により慢性的に免疫抑制されるので重要であり、ZAP70による正常T細胞機能に対する作用がないことは明らかに有益である。
【0055】
個々のZAP70+患者からのCLL B細胞の初代単離物を37℃で24時間EC1(17-AAG)またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)で処理した。アポトーシス細胞を、ミトコンドリア生体染色色素DiOC6およびプロピジウムアイドダイド染色を用いる標準的プロトコールにより同定した。生存率%は100%−%アポトーシス細胞で表す。
【0056】
図7は、EC1(17-AAG)(◆)またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)(■)で処理した後のZAP70+慢性リンパ球性白血病B細胞の生存率%の比較を示す。ZAP70+CLL B細胞が50%阻害剤濃度(IC50)約80nMで17-AAGにより容易に死滅したことを明確に示す。
【0057】
ZAP70+CLL B細胞が死滅する割合を測定するために同様の実験を行った。個々のZAP70+患者由来のCLL B細胞の初代単離物を37℃で種々の時間100nM EC1(17-AAG)またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)で処置した。アポトーシス細胞を、ミトコンドリア生体染色色素DiOC6およびプロピジウムアイドダイド染色を用いる標準的プロトコールにより同定した。生存率%は100%−%アポトーシス細胞で表す。
【0058】
図8は、100nMのEC1(17-AAG)(■)またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)(◆)で処置後のZAP70+慢性リンパ球性白血病B細胞の生存率%を比較する。結果は、ZAP70+腫瘍細胞が17-AAGにより急速に死滅し、50%の細胞が約48時間後に死滅したことを示す。
【0059】
ZAP70+患者16人およびZAP70-患者11人からのCCL B細胞の初代単離物を37℃で48時間100nM EC1(17-AAG)で処理した。アポトーシス細胞を、ミトコンドリア生体染色色素DiOC6およびプロピジウムアイドダイド染色を用いる標準的プロトコールにより同定した。生存率%は100%−%アポトーシス細胞で表す。
【0060】
図9は、48時間100nM EC1(17-AAG)で処理後の、ZAP70+患者16人およびZAP70-患者11人由来のCLL B細胞の生存率を比較する。ZAP70+CLL B細胞の平均生存率%は45.74±3.177%であり、ZAP70-B CLL細胞の平均生存率%は93±1.701%である。2ポピュレーション間の生存率の差のStudents T-Test P値は<0.0001であり、高度に統計的有意であった。
V. 医薬組成物の製剤と投与
【0061】
ゲルダナマイシンは、U.S. Department of Agriculture、Northern Utilization and Research Division、Agricultural Research、Peoria、I11.、USAに寄託したStreptomyces hygroscopicus(受託番号NRRL 3602)の二次培養を用い、米国特許No. 3,595,955に従って製造してよい。本発明化合物の多くの誘導体は、米国特許No.4,261,989、5,387,584、および5,932,566に記載のごとく標準技術に従って製造してよい。
【0062】
当業者は、例えばGoodman and Gilman's、The Pharmacological Basis of Therapeutics、最新版;Pergamon Press;およびRemington's Pharmaceutical Sciences(最新版) Mack Publishing Co.、Easton、Paに記載のような本発明の用途に用いることができる製剤技術および投与技術をよく知っている。
【0063】
本発明の方法に用いる化合物は、標準的薬務に従って単独または医薬組成物中で医薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤と組み合わせて投与することができよう。該化合物は、経口的に、または静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸内、および局所投与経路を含む非経口的に投与することができる。
【0064】
例えば、本発明の治療用組成物または医薬組成物は、治療を要する領域に局所投与することができる。これは、例えば、限定されるものではないが、外科手術時の局所注入、局所適用、例えばクリーム、軟膏、注射、カテーテル、またはインプラント(該インプラントは、シアラスティック(sialastic)膜のような膜、または繊維を含む多孔性、非多孔性、またはゲル状物質から作られた)により達成することができよう。投与は、腫瘍または新生物性もしくは前新生物性組織の部位(または元の部位)に直接投与することもできる。
【0065】
さらに、本発明化合物または組成物は、小胞、例えばリポソームを用いて送達することができる(例えば、Langer、1990、Science、249:1527-1533;Treatら、1989、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer、Lopez-BernsteinおよびFidler(eds.)、Liss、N. Y.、pp.353-365参照)。
【0066】
本発明の方法に用いる化合物および医薬組成物は、制御放出系を用いて送達することができる。ある態様ではポンプを用いてよい(Sefton、1987、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201;Buchwaldら、1980、Surgery、88:507;Saudekら、1989、N. Engl. J. Med.、321:574参照)。さらに、制御放出系は、治療標的の近傍に置くことができる(Goodson、1984、Medical Applications of Controlled Release、Vol.2、pp.115-138参照)。
【0067】
本発明の方法に用いる医薬組成物は、活性成分を、経口使用に適した形、例えば錠剤、トローチ、ローゼンジー錠、水性もしくは油性サスペンジョン剤、分散可能粉末もしくは顆粒剤、エマルジョン剤、硬もしくは軟カプセル剤、またはシロップ剤もしくはエリキシル剤として含むこともできる。経口使用を意図した組成物は、医薬組成物を製造するための当該分野で知られたあらゆる方法に従って製造してよく、そのような組成物は、医薬的に洗練された味のよい製剤を提供するため、甘味料、香味料、着色料、および保存料からなる群から選ばれる1またはそれ以上の物質を含んでよい。錠剤は、錠剤の製造に適した無毒性の医薬的に許容される賦形剤と混合した活性成分を含む。これら賦形剤は、例えば不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、もしくはリン酸ナトリウム;顆粒化剤および崩壊剤、例えば微晶質セルロース、ナトリウムクロスカルセロース、コーンスターチ、またはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、もしくはアカシア、および潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、もしくはタルクであってよい。錠剤は、コートされていなくても、または薬剤の味を隠すかまたは消化管中の分解および吸収を遅らせて長期にわたる持続作用をもたらすための知られた技術によりコートすることができよう。例えば、味を隠すための水溶性物質、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース、または時間遅延物質、例えばエチルセルロース、またはセルロースアセテートブチレートを適切に用いることができよう。
【0068】
経口使用のための製剤は、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合している硬ゼラチンカプセル剤、または活性成分が水溶性担体、例えばポリエチレングリコールもしくは油状媒質、例えばピーナッツ油、水性パラフィン、もしくはオリーブ油と混合している軟ゼラチンカプセル剤として存在してもよい。
【0069】
水性サスペンジョン剤は、水性サスペンジョン剤を製造するのに適した賦形剤と混合した活性物質を含む。そのような賦形剤には懸濁化剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ガムトラガカントおよびガムアカシアがあり、分散剤または湿潤剤は天然のホスファチド、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸、例えばポリオキシエチレンステアレートとの縮合生成物、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪酸アルコール、例えばヘプタデカエチレン-オキシセタノールとの縮合生成物、またはエチレンオキシドと脂肪酸から誘導した部分エステル、およびヘキシトール、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートとの縮合生成物、またはエチレンオキシドと脂肪酸から誘導した部分エステル、およびヘキシトール無水物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートとの縮合生成物であってよい。水性サスペンジョン剤は、1またはそれ以上の保存料、例えばエチルまたはn-プロピル p-ヒドロキシベンゾエート、1またはそれ以上の着色料、1またはそれ以上の香味料、および1またはそれ以上の甘味料、例えばショ糖、サッカリン、もしくはアスパルテームを含んでいてもよい。
【0070】
油状サスペンジョン剤は、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、ココナッツ油、または鉱油、例えば液体パラフィンに活性成分を懸濁することにより製剤化することができよう。油状サスペンジョン剤は、増粘剤、例えば密蝋、硬パラフィン、またはセチルアルコールを含んでいてよい。上記したような甘味料および香味料を加えて味のよい経口用製剤を得てよい。これら組成物は、抗酸化剤、例えばブチル化ヒドロキシアニソール、またはα-トコフェロールを加えることにより保存することができよう。
【0071】
水を加えることにより水性サスペンジョンを製造するのに適した分散可能な粉末剤および顆粒剤は、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁化剤、および1またはそれ以上の保存料と混合した活性成分を提供する。適切な分散剤もしくは湿潤剤、および懸濁化剤は上記のものにより例示される。さらなる賦形剤、例えば甘味料、香味料、および着色料も存在してよい。これら組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸を加えることにより保存することができよう。
【0072】
本発明の方法に用いる医薬組成物は油中水エマルジョン剤の形であってもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくはラッカセイ油、または鉱油、例えば液体パラフィン、またはこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤は、天然のホスファチド、例えばダイズレシチン、および脂肪酸から誘導されたエステルまたは部分エステル、およびヘキシトール無水物、例えばソルビタンモノオレエート、および該部分エステルと、エチルオキシド、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとの縮合生成物であってよい。エマルジョン剤は、甘味料、香味料、保存料、および抗酸化剤も含んでいてよい。
【0073】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味料、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはショ糖を用いて製剤化してよい。そのような製剤は、緩和薬、保存料、香味料および着色料、および抗酸化剤も含んでいてよい。
【0074】
医薬組成物は、無菌注射可能水性溶液の形であってよい。用いることができる許容されるビークルおよび溶媒の中には水、リンゲル溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。
【0075】
無菌注射可能製剤は、活性成分が油状相に溶解している、無菌注射可能油中水ミクロエマルジョン剤であってもよい。例えば、活性成分は最初にダイズ油とレシチンの混合物に溶解してよい。次に、油状溶液を水とグリセロールの混合物に導入し、加工してミクロエマルジョン剤を形成する。
【0076】
注射可能溶液剤またはミクロエマルジョン剤は、局所ボーラス注射により患者の血流に導入することができよう。あるいはまた、本化合物の一定の循環濃度が維持されるように溶液剤またはミクロエマルジョン剤を投与することが好都合なことがある。そのような一定濃度を維持するために、連続的静脈送達装置を用いてよい。そのような装置の例にはDeltec CADD-PLUS(登録商標)モデル5400静脈内用ポンプがある。
【0077】
医薬組成物は、筋肉内および皮下投与用の無菌注射可能水性または油脂性サスペンジョン剤の形であってよい。このサスペンジョン剤は、上記のそれら適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用い知られた方法に従って製剤化することができよう。無菌注射可能製剤は、無菌の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射可能溶液またはサスペンジョン(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液のような)であってよい。さらに、無菌不揮発油を常套的に溶媒または懸濁化媒質として用いる。この目的には、合成モノ-またはジグリセリドを含むあらゆる無刺激性不揮発油を用いてよい。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は、注射可能剤の製造に用途がある。
【0078】
本発明の方法に用いるHSP90阻害剤は、薬剤の直腸内投与用の坐剤の形で投与することもできよう。これら組成物は、該阻害剤と通常の温度で固体であるが直腸内温度で液体であり、直腸内で溶けて薬物を放出するであろう適切な非刺激性賦形剤と混合することにより製造することができる。そのような物質には、ココアバター、グリセリンゼラチン、水素化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールとポリエチレングリコールの脂肪酸エステルの混合物が含まれる。
【0079】
局所使用には、HSP90阻害剤を含むクリーム剤、軟膏、ゼリー剤、溶液剤、またはサスペンジョン剤などを用いることができる。本明細書で用いている局所適用には洗口液およびうがい薬を含むことができる。
【0080】
本発明の方法に用いる化合物は、適切な鼻内ビークルおよび送達装置の局所使用を介して経鼻形で、または当業者によく知られた経皮的皮膚パッチの形を用いる経皮経路で投与することができる。経皮送達系の形で投与するには、もちろん、投薬は投薬計画を通して間欠的より連続的であろう。
【0081】
本発明の方法および化合物は、治療する病状に対して特に有用であるように選んだ他のよく知られた治療剤と組み合わせて用いてもよい。例えば、本発明化合物は、知られた抗癌剤および細胞毒性剤と組み合わせると有用かもしれない。
【0082】
さらに、本発明の方法および化合物は、細胞表面増殖因子レセプターと核シグナル開始細胞増殖を結びつけるシグナリング経路の部分の他の阻害剤と組み合わせても有用かもしれない。
【0083】
本発明の方法は、限定されるものではないが、VEGFレセプター、アンギオスタチン、およびエンドスタチンを標的とするリボザイムおよびアンチセンスを含むVEGFレセプター阻害剤を含む、血管形成を阻害することにより腫瘍細胞の増殖および侵襲性を阻害する他の薬剤を用いても有用かもしれない。
【0084】
本発明の方法と組み合わせて用いることができる抗新生物薬の例には、一般に、アルキル化剤、代謝拮抗薬;エピドフィロトキシン;抗新生物酵素;トポイソメラーゼ阻害剤;プロカルバジン;メトキサントロン;プラチナ配位複合体;生物反応修飾物質および成長阻害剤;ホルモン/抗ホルモン性治療剤、および造血成長因子が含まれる。
【0085】
抗新生物剤の典型的なクラスには、例えばアントラサイクリンファミリーの薬剤、ビンカ薬、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオシド、エポチロン、ジスコデルモリド、プテリジンファミリーの薬剤、ジイネン、およびポドフィロトキシンが含まれる。それらクラスの特に有用なメンバーには、例えば、カルミノマイシン、ダウノルビシン、アミノプテリン、メトトレキセート、メトプテリン、ジクロロメトトレキセート、マイトマイシンC、ポルフィロマシン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシンもしくはポドフィロトキシン誘導体、例えば、エトポシド、リン酸エトポシドまたはテニポシド、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ラウロシジン、ビンデシン、ラウロシン、パクリタキセルなどが含まれる。他の有用な抗新生物薬には、エストラムスチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、ゲムシタビン、イフォサミド、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、シタラビン、イダトレキセート、トリメトレキセート、ダカルバジン、L-アスパラギナーゼ、カンプトテシン、CPT-11、トポテカン、アラ-C、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ピリドベンゾインドール誘導体、インターフェロン、およびインターロイキンが含まれる。
【0086】
本発明の方法に用いるHSP90阻害剤をヒト対象に投与するとき、1日用量は、通常担当医師が決定し、用量は一般に個々の患者の年齢、体重、および反応、ならびに患者の症状の重症度に従って変化するであろう。
【0087】
ある典型的適用において、適切な用量のHSP90阻害剤を、癌、例えば肺癌の治療を受ける哺乳動物に投与する。投与は、各タイプの阻害剤の量を約0.1mg/kg体重〜約60mg/kg体重/日、好ましくは約0.5mg/kg体重/日〜約40mg/kg体重/日で行う。本組成物を含む特定の治療用量には、約0.01mg〜約1000mgのHSP90阻害剤を含む。好ましくは該用量は約1mg〜約1000mgのHSP90阻害剤を含む。
【0088】
好ましくは、医薬製剤は単位剤形である。そのような形では、製剤が適切な量の活性成分、例えば所望の目的を達成するための有効量を含む単位用量に小さく分割される。
【0089】
製剤の単位用量中の活性化合物の量は、特定の適用に従って約0.1mg〜1000mg、好ましくは約1mg〜300mg、より好ましくは10mg〜200mgで変化または調節してよい。
【0090】
用いる実際の用量は、患者の要求および治療すべき病状の重症度に応じて変えてよい。特定の状況のための適切な用量の決定は当該分野の技術の範囲内である。一般に、治療(処置)は、化合物の最適用量以下のより低用量で開始される。したがって、用量はその環境下で最適効果に達するまで小量ずつ増加させる。便宜上、総1日用量を分割し、所望により1日の間に部分に分けて投与してよい。
【0091】
本発明の方法に用いるHSP90阻害剤ならびに適用可能であれば他の化学療法剤および/または放射線療法の投与量および投与頻度は、患者の年齢、病状、および大きさ、ならびに治療すべき疾患の重症度といったような因子を考慮して担当臨床医(医師)の判断で調節されよう。
【0092】
化学療法剤および/または放射線療法は、当該分野でよく知られた治療プロトコールに従って投与することができる。化学療法剤および/または放射線療法の投与は、治療する疾患およびその疾患に対する該化学療法剤および/または放射線療法の既知の効果に基づいて変更することができる。また、熟練臨床医の知識に従って治療プロトコール(例えば投与量および投与回数)を患者に対する投与した治療剤(すなわち、抗腫瘍剤または放射線)の観察された効果を考慮し、投与した治療剤に対する該疾患の観察された反応を考慮して変更することができる。
【0093】
また、一般に、HSP90阻害剤および化学療法剤は、同じ医薬組成物で投与する必要はなく、異なる物理化学的特性のため異なる経路で投与しなければならないことがある。例えば、HSP90阻害剤はその良好な血液レベルをもたらし、維持するように経口投与してよく、化学療法剤は静脈内投与してよい。同じ医薬組成物での可能な投与方法および投与の妥当性の決定は、十分に熟練臨床医の知識内である。初回投与は当該分野で知られた確立されたプロトコールに従って行うことができ、次いで観察された効果に基づいて熟練臨床医が用量、投与方法、および投与回数を修正することができる。
【0094】
HSP90阻害剤および化学療法剤および/または放射線の具体的選択は、担当臨床医の診断、および患者の病状および適切な治療プロトコールの判定によって決まるであろう。
【0095】
HSP90阻害剤および化学療法剤および/または放射線は同時に(例えば、同時に、実質的に同時に、または同じ治療プロトコール内で)、または増殖性疾患の性状、患者の病状、およびHSP90阻害剤と組み合わせて(すなわち、1つの投与プロトコール内で)投与する化学療法および/または放射線の実際の選択に応じて連続的に投与することができよう。
【0096】
HSP90阻害剤および化学療法剤および/または放射線を同時にまたは実質的に同時に投与しない場合は、HSP90阻害剤および化学療法剤および/または放射線の最初の投与順序は重要でないかもしれない。すなわち、HSP90阻害剤を最初に投与し、次いで化学療法剤および/または放射線を投与するか、または化学療法剤および/または放射線を最初に投与し、次いでHSP90阻害剤を投与してよい。この交互投与は1つの治療プロトコール中に反復することができる。治療プロトコール中の各治療剤の投与順序および投与の反復数の決定は、治療する疾患および患者の病状の評価後の熟練臨床医の知識内にある。例えば、化学療法剤および/または放射線を特にそれが細胞毒性剤であれば最初に投与し、次いでHSP90阻害剤の投与で治療を継続し、次いで有利であれば該治療プロトコールが完結するまで化学療法剤および/または放射線などの投与を行ってよい。
【0097】
すなわち、経験と知識に従って、臨床医は治療の進行に応じて個々の患者の要求に従って治療の成分(治療剤、すなわち、HSP90阻害剤、化学療法剤、または放射線)の各投与プロトコールを変更することができる。
【0098】
治療が投与した用量で有効かどうかの判断において担当医は、患者の一般的健康問題とより明確な徴候、例えば疾患関連症状の軽減、腫瘍成長の阻害、腫瘍の実際の縮小、または転移の阻害を考慮するであろう。腫瘍の大きさは、標準的方法、例えば放射線医学的試験、例えばCATまたはMRIスキャンにより測定することができ、継続的な測定値を用いて腫瘍の成長が遅くなってきたかまたはさらに逆転してきたかどうかを判定することができる。疼痛のような疾患関連症状の軽減、および全体的病状の改善を用いて治療効果の判定の助けとすることもできる。
VI. 製剤の使用方法
A. 用量範囲
【0099】
進行固形腫瘍の成人患者における17-AAGの第I相薬理試験では、3週間おきに5日間毎日1時間注入投与したときの最大耐容用量(MTD)が40mg/m2であった。(Wilson et al.、Am. Soc. Clin. Oncol、abstract、「Phase I Pharmacologic Study of 17-(Allylamino)-17-Demethoxygeldanamycin(AAG) in Adult Patients with Advanced Solid Tumors」 2001。) この試験において、最終半減期、クリアランス、および定常期容量は、それぞれ2.5±0.5時間、41.0±13.5L/時間、および86.6±34.6L/m2であった。血漿Cmaxレベルは、40および56mg/m2で1860±660nMおよび3170±1310nMであった。これらの値を指針に用い、本発明製剤の患者に対する有用な用量範囲は、活性成分約0.40mg/m2〜4000mg/m2を含むと予期される(ここで、m2は表面積を表す。)。mg/m2を薬剤mg/kg患者体重に変換する標準的アルゴリズムが存在する。
【実施例】
【0100】
以下の実施例は例示のためだけに提供され、その中に含まれるすべての薬剤、成分、モル比、濃度、pH、および工程は、特許請求の範囲に特に記載しない限り本発明を限定することを意図しない。実施例1〜12の化合物の製造は以下に適切に再現される:本願出願人の米国仮出願No.60/371,668および60/478,430、および国際出願PCT/US03/10533(「NOVEL ANSAMYCIN FORMULATIONS AND METHODS FOR PRODUCING AND USING SAME」、2003年4月4日出願)、および国際出願PCT/US 03/1053(「DRUG FORMULATIONS HAVING LONG AND MEDIUM CHAIN TRIGLYCERIDES」、2003年10月4日出願)(これらに対して本願は優先権を主張する。)。
実施例1:17-AAGの製造
【0101】
乾燥2Lフラスコ中の1.45Lの乾燥THF中45.0g(80.4mmol)のゲルダナマイシンを50mLの乾燥THF中36.0 mL(470mmol)のアリルアミンに30分間かけて滴加した。反応混合物を窒素下室温で4時間撹拌した(この時点でTLC分析は反応が完結したことを示した[(GDM:明黄色:Rf=0.40;(5% MeOH-95% CHCl3);17-AAG:紫色:Rf=0.42(5% MeOH-95% CHCl3)]。溶媒を回転蒸発(rotary evaporation)により除去し、粗物質を420mLのH2O:EtOH(90:10)中25℃でスラリーにし、濾過し、45℃で8時間乾燥し、紫色結晶の40.9g(66.4mmol)の17-AAGを得た(収率82.6%、純度>98%(HPLCで254nMでモニターした))。MP 206-212℃。1H NMRおよびHPLCは求める生成物と一致する。
実施例2:低融点形の17-AAGの製造
【0102】
実施例1から得られる粗17-AAGを80℃の800 mLの2-プロピルアルコール(イソプロパノール)に溶解し、次いで室温に冷却した。濾過し、次いで45℃で8時間乾燥し、紫色結晶の44.6 g(72.36mmol)の17-AAGを得た(収率90%、純度>99%(HPLCで254nMでモニターした))。MP = 147-153℃。1H NMRおよびHPLCは求める生成物と一致する。
実施例3:低融点形の17-AAGの溶媒安定性
【0103】
25℃の400 mLのH2O:EtOH(90:10)中の、実施例2から得られる17-AAG生成物を濾過し、45℃で8時間乾燥して紫色結晶の42.4 g(68.6mmol)の17-AAGを得た(収率95%、純度>99%(HPLCで254nMでモニターした))。MP=147-175℃。1H NMRおよびHPLCは求める生成物と一致する。
実施例4:化合物237:二量体の製造
【0104】
3,3-ジアミノ-ジプロピルアミン(1.32g、9.1mmol)を、N2下、火炎乾燥フラスコ中のDMSO(200 mL)中のゲルダナマイシン(10g、17.83mmol)の溶液に滴加した。12時間後、反応混合物を水で希釈した。沈殿物を形成し、次いで濾過して粗生成物を得た。粗生成物をシリカクロマトグラフィー(5% CH3OH/CH2Cl2)にかけ、紫色固体の求める二量体を得た。フラッシュクロマトグラフィー後に純粋な紫色生成物を得た;収率:93%;mp 165℃;
【数1】

【0105】
対応するHCl塩を以下の方法により製造した:EtOH(5 ml、0.12 3N)中のHCl溶液を室温でTHF(15 ml)およびEtOH(50 ml)中の化合物#237(1g、上記のごとく製造)の溶液に加えた。反応混合物を10分間撹拌した。該塩を沈殿させ、濾過し、大量のEtOHで洗浄し、次いで減圧下で乾燥した。あるいはまた、「メシレート」塩を、Clの代わりにメタンスルホン酸を用いて形成することができる。
実施例5:化合物914の製造
【0106】
10mLのジオキサン中のゲルダナマイシン(500mg、0.89mmol)に室温で二酸化セレン(IV)(198mg、1.78mmol)を加えた。反応混合物を100℃に加熱し、3時間撹拌した。室温に冷却した後、該溶液を酢酸エチルで希釈し、水およびブラインで洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、次いで減圧下で蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)後に純粋な黄色の最終生成物を得た;収率:75%;
【数2】

実施例6:化合物967の製造
【0107】
3mLのTHF中の化合物#914(50mg、0.05mmol)にアリルアミン(3.5mg、0.06mmol)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を回転蒸発により除去した。純粋な紫色生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)後に得た;収率:90%;
【数3】

実施例7:化合物956の製造
【0108】
化合物#956を、アゼチジンをアリルアミンの代わりに用いる以外は化合物#967について記載したのと同じ方法により製造した。純粋な紫色の最終生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)後に得た;収率:89%;
【数4】

実施例8:化合物529の製造
【0109】
EtOAc中の17-アミノゲルダナマイシン(1mmol)の溶液を室温でNa2S2O4(0.1 M、300 ml)で処理した。2時間後、水性層をEtOAcで2回抽出し、混合有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで減圧下で濃縮して黄色固体の18,21-ジヒドロ-17-アミノゲルダナマイシンを得た。この固体を無水THFに溶解し、カニューレでピコリノイルクロリド(1.1mmol)およびMS4A(1.2 g)の混合物に移した。2時間後、EtN(i-Pr)2(2.5mmol)をさらに反応混合物に加えた。一夜撹拌後、反応混合物を濾過し、次いで減圧下で濃縮した。次に、水を残渣に加え、これをEtOAcで3回抽出した。混合有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで減圧下で濃縮して粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィーで精製して黄色固体の17-ピコリノイル-アミノゲルダナマイシン、化合物529を得た。Rf= 0.52、80:15:5 CH2Cl2:EtOAc:MeOH中。Mp = 195-197℃。
【数5】

実施例9:化合物1046の製造
【0110】
化合物#1046を、ピコリノイルクロリドの代わりに4-クロロメチル-ベンゾイルクロリドを用い、化合物#529について記載の方法に従って製造した。(3.1g、81%)。Rf= 0.45、80:15:5 CH2Cl2:EtOAc:MeOH中。
【数6】

実施例10:化合物1059の製造
【0111】
THF(5 ml)中の化合物#1046(0.14g、0.2mmol)の溶液にヨウ化ナトリウム(30mg、0.2mmol)およびモルホリン(35μL、0.4mmol)を加えた。得られた混合物を10時間加熱還流し、次いで室温に冷却し、減圧濃縮した。残渣をEtOAc(30 ml)に再溶解し、水(10 ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、再度濃縮した。次に、残渣をEtOH(10 ml)中で再結晶し、黄色固体の化合物1059を得た(100mg、66%)。Rf= 0.10、80:15:5 CH2Cl2:EtOAc:MeOH中。
【数7】

実施例11:化合物1236の製造
【0112】
化合物#1236を、モルホリンの代わりにベンジルエチルアミンを用い化合物#1059について記載の方法に従って製造した。Rf= 0.43、80:15:5 CH2Cl2:EtOAc:MeOH中。
【数8】

実施例12:化合物563:17-(ベンゾイル)-アミノゲルダナマイシンの製造
【0113】
EtOAc中の17-アミノゲルダナマイシン(1mmol)の溶液を室温でNa2S2O4(0.1 M、300 mL)で処理した。2時間後、水性層をEtOAcで2回抽出し、混合有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで減圧濃縮して黄色固体の18,21-ジヒドロ-17-アミノゲルダナマイシンを得た。この固体を無水THFに溶解し、カニューレで塩化ベンゾイル(1.1mmol)とMS4A(1.2 g)の混合物に移した。2時間後、EtN(Z-Pr)2(2.5mmol)をさらに反応混合物に加えた。一夜撹拌後、反応混合物を濾過し、次いで減圧濃縮した。次に、水を残渣に加え、これをEtOAcで3回抽出し、混合有機層をNa2SO4で乾燥し、次いで減圧濃縮して粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィーで精製して17-(ベンゾイル)-アミノゲルダナマイシンを得た。Rf= 0.50、80:15:5 CH2Cl2:EtOAc:MeOH中。Mp = 218-220℃。
【数9】

実施例13:細胞溶解物の製造
【0114】
試験のための細胞を溶解用緩衝液(20mM HEPES、pH7.3、1mM EDTA、5mM MgCl2、100mM KCl)中でPotter-Elvejemホモゲナイザーを用いて手動で上下させて溶解させた。
実施例14:HSP90溶解物の結合アッセイ
【0115】
正常B細胞、正常T細胞、ZAP70+CLL B細胞、およびZAP70-CLL B細胞を実施例13に記載のごとく溶解用緩衝液中で溶解させた。溶解物を4℃で30分間、17-AAGの存在下または非存在下でインキュベーションし、次いで4℃で1時間BioMag(登録商標)ストレプトアビジン磁気ビーズ(Qiagen)と結合させたビオチン−GMとインキュベーションした。チューブを磁気ラック上に置き、結合していない上清を除去した。磁気ビーズを溶解用緩衝液で3回洗浄し、95℃で5分間SDS-PAGE試料用緩衝液中でボイルした。試料をSDSタンパク質ゲルを用いて分析し、次いでウエスタンブロットをHSP90抗体(StressGen、SPA-830)を用いて行った。ウエスタンブロット中のバンドをBio-rad Fluor-S MultiImagerを用いて定量し、HSP90のビオチン-GMに対する結合の阻害%を計算した。報告したIC50は、最大の半分の結合阻害を生じるのに必要な17-AAGの濃度である。競合結合の結果を図1〜3に示す。
実施例15:HSP90とクライアントタンパク質との結合の評価試験
【0116】
MCF-7乳癌細胞、ZAP70+およびZAP70-B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)細胞の初代単離物、および正常TおよびB細胞を実施例13に記載のごとく溶解させ、免疫共沈殿実験をKamal et al.、Nature、2003 425:407-410に記載のごとく行った。プロテインA Sepharoseビーズ(Zymed)を5%BSAでプレブロックした。細胞溶解物を50μLのプロテインA Sepharoseビーズ(50%スラリー)とインキュベーションして前清浄化(pre-cleared)した。100μLの前清浄化細胞溶解物に、HSP90、p23、およびHopに対する無抗体または抗体を加え、4℃で1時間回転させながらインキュベーションした。次に、50μLの前清浄化ビーズ(50%スラリー)を加え、4℃で1時間回転させながらインキュベーションした。結合ビーズを3,000gで短時間遠心し、非結合試料を回収した。ビーズを溶解用緩衝液で3回、50mM Tris、pH6.8で1回洗浄し、次いでSDS試料用緩衝液を95℃で5分間加えた。結合および非結合試料をSDS-PAGEおよび示した抗体を用いるウエスタンブロットで分析した。免疫共沈殿試験の結果を図4に示す。
実施例16:選択したHSP90阻害剤によるZAP70発現の阻害を証明するための試験
【0117】
個々のZAP70+患者からのZAP70+慢性リンパ球性白血病 B細胞の初代単離物を37℃で24時間EC1(17-AAG)、EC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)、またはEC82またはEC86(他の2つの既知HSP90阻害剤)で処理した。ZAP70タンパク質の発現レベルを特異的抗ZAP70抗体を用いる透過性細胞の間接免疫蛍光およびFACS分析により測定した。試験結果を図5に示す。3つすべての活性HSP90阻害剤は用量依存性にZAP70の分解を誘導し、免疫共沈殿試験(図4)で示された物理結合が示すように、ZAP70がHSP90依存性クライアントタンパク質であることが確認された。3種の構造的に関連性がないHSP90阻害剤が同じ効果を生じたという事実は、HSP90がCLL B細胞におけるZAP70の安定性に必須のタンパク質であることを強く示す。
実施例17:ZAP70+CCL B細胞患者の血液細胞に対するHSP90阻害の下流効果を測定する試験
【0118】
個々のZAP70+慢性リンパ球性白血病B細胞患者からの白血球細胞の初代単離物を、37℃で24時間300nM 17-AAGで処理するか、または処理しなかった。次に、試料をRassebti et al.(上記)に記載の方法によりフローサイトメトリー分析用に調製した。該細胞をアロフィコシアニンおよびフィコエリスリンとそれぞれ結合したCD19特異的およびCD3特異的モノクローナル抗体(Pharmingen)で染色し、次いでAlexa-488色素と結合したZAP70特異的モノクローナル抗体(Becton Dickenson)で染色した。CD3はT細胞の特異的マーカーである。ZAP70タンパク質の発現レベルをフローサイトメトリー(FACSCalibur、BD Biosciences)およびFlow-Jo sorftware、version 2.7.4(Tree Star)により測定した。結果を図6に示す。左パネルは無処理細胞のZAP70発現を示し、右パネルは無処理細胞のZAP70発現を示す。
【0119】
無処理細胞(左パネル)において、細胞の約5%が正常T細胞(CD3+、ZAP70+、右上1/4区画)であり、該細胞の〜85%がZAP70+CLL B細胞(CD3-、ZAP70+、右下1/4区画)であった。17-AAGは、免疫共沈殿実験においてCLL B細胞でみられ、正常T細胞ではみられなかった物理的結合から予測されるように(図4)、CLL B細胞におけるZAP70の分解を誘導したが(%陽性細胞 85%→34%)、正常T細胞では誘導しなかった(%陽性細胞 4.5%→4.2%)。
実施例18. ZAP70+CCL B細胞の生存性に対するHSP90阻害の濃度依存性効果
【0120】
個々の患者からのZAP70+慢性リンパ球性白血病 B細胞の初代単離物を37℃で48時間増加する濃度のEC1(17-AAG)またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)で処理した。アポトーシス細胞を、ミトコンドリア生体染色色素DiOC6およびプロピジウムアイドダイド染色を用いる標準的プロトコールにより同定した。結果を生存率%対該阻害剤濃度(nM)で図7にプロットした。生存率%は100%−%アポトーシス細胞で表す。ZAP70+CLL B細胞が50%阻害濃度(IC50)約80nMで17-AAGにより容易に死滅した。
実施例19:ZAP70+CCL B細胞生存率に対するHSP90阻害の時間依存性効果
【0121】
個々のZAP70+患者からのB細胞慢性リンパ球性白血病の初代単離物を37℃で種々の時間100nMのEC1(17-AAG)またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)で処理した。アポトーシス細胞を、ミトコンドリア生体染色色素DiOC6およびプロピジウムアイドダイド染色を用いる標準的プロトコールにより同定した。試験結果を生存率%対処理時間(時間)で図8にプロットした。生存率%は100%−%アポトーシス細胞で表す。ZAP70+腫瘍細胞は17-AAGにより急速に死滅し、50%の細胞が約48時間後に死滅した。
実施例20:CLL B細胞におけるHSP90阻害の下流効果
【0122】
ZAP70+患者16人およびZAP70-患者11人からの慢性リンパ球性白血病 B細胞(CLL B細胞)の初代単離物を37℃で48時間100nM EC1(17-AAG)で処理した。アポトーシス細胞を、ミトコンドリア生体染色色素DiOC6およびプロピジウムアイドダイド染色を用いる標準的プロトコールにより同定した。試験結果を図9にプロットした。生存率%は100%−%アポトーシス細胞で表す。ZAP70+腫瘍細胞は17-AAGにより急速に死滅し、その平均生存率%は45.74±3.177%であり、ZAP70-細胞は同じ条件下で薬剤による影響を受けず、その平均生存率%は93±1.701%であった。2ポピュレーション間の生存率の差のStudents T-Test P値は<0.0001であり、高度に統計的有意である。
【0123】
前記実施例は、本発明の種々の態様を単に例示するものであり、限定するものではない。当業者は、本発明の範囲および精神から離れることなく本発明に置換および修飾を行ってよいことを容易に解るであろう。すなわち、そのようなさらなる態様は本発明の範囲および下記特許請求の範囲内にある。
【0124】
ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、種々の供給業者から購入するか、または例えばHarlow et al.、ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL、2nd Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1988)に記載のよく知られた方法を用いて製造してよい。本明細書に記載の試薬は、例えばSigma-Aldrichから市販されているか、または当業者に知られたおよび/または本明細書の一部を構成する引用文献に記載の日常的手順を用いて過度な実験を行うことなく容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】B細胞、T細胞、ZAP70陽性CLL B細胞(ZAP70+CLL B細胞)、およびZAP70陰性CLL B細胞(ZAP70-CLL B細胞)の溶解物中のHSP90に対するビオチン化ゲルダナマイシンプローブ(ビオチン-GM)と17-AAGの競合結合を示す。
【図2】17-AAGの増加する濃度の存在下におけるZAP70+CLL B細胞(▲)およびZAP70-CLL B細胞(■)の溶解物中のHSP90に対するビオチン化ゲルダナマイシンプローブ(ビオチン-GM)の結合の阻害をグラフで示す。
【図3】正常B細胞(◆)およびT細胞(■)の溶解物中のHSP90に対するビオチン化ゲルダナマイシン(ビオチン-GM)の結合の阻害をグラフで示す。
【図4】SDS-PAGE、および示した抗体を用いるウエスタンブロットにより分析した免疫共沈降によるMCF-7乳癌細胞、ZAP70+CLL B、およびZAP70-CLL B、および正常TおよびB細胞におけるHSP90およびZAP70の結合を示す。
【図5】37℃で24時間、EC1(17-AAG)(■)、EC82(▲)、EC86(X)(EC82およびEC86はプリンベースのHSP90阻害剤である)またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)(◆)で処置後のZAP70+CCL B細胞中のZAP70の分解を比較する。
【図6】37℃で24時間、300nM EC1(17-AAG)で処理(右パネル)または非処理(左パネル)のCLL B細胞におけるZAP70の発現を2色フローサイトメトリーにより比較する。
【図7】EC1(17-AAG)(◆)またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)(■)で処置後のZAP70+CCL B細胞の生存率%(100%−アポトーシス細胞%として表現)を比較する。
【図8】100nMのEC1(17-AAG)(■)またはEC116(不活性構造関連HSP90阻害剤)(◆)で処置後のZAP70+CCL B細胞の生存率%(100%−アポトーシス細胞%として表現)を比較する。
【図9】100nM EC1(17-AAG)で48時間処置後のZAP70+患者16人およびZAP70-患者11人から得たCCL B細胞の生存率%(100%−アポトーシス細胞%として表現)を比較する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
B細胞におけるZAP70の発現レベルの上昇を特徴とする慢性リンパ球性白血病の一種の治療方法であって、そのような治療を要する患者に医薬的有効量のHsp90阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項2】
該阻害剤がアンサマイシンである請求項1記載の方法。
【請求項3】
該アンサマイシンが以下の群、またはその多形体、溶媒和物、エステル、互変体、エナンチオマー、医薬的に許容される塩またはプロドラッグから選ばれる請求項2記載の方法:
【化1】


【請求項4】
該アンサマイシンが17-AAGである請求項2記載の方法。
【請求項5】
DSC融点が175℃以下であることを特徴とする低融点形の17-AAGを含む請求項2記載の方法。
【請求項6】
該17-AAGが高融点形、低融点形、非晶質形、またはその組み合わせから選ばれる請求項4記載の方法。
【請求項7】
該阻害剤がHSP90のATP結合部位に結合する請求項1記載の方法。
【請求項8】
該投与が病巣内である請求項1記載の方法。
【請求項9】
該投与が非経口的である請求項1記載の方法。
【請求項10】
該投与が経口的である請求項1記載の方法。
【請求項11】
該投与が静脈内である請求項1記載の方法。
【請求項12】
該HSP90阻害剤が、ZAP70が上昇していないB細胞よりZAP70が上昇している該患者のB細胞中の該HSP90に対して少なくとも2倍低いIC50を有する請求項1記載の方法。
【請求項13】
該HSP90阻害剤が、ZAP70が上昇していないB細胞よりZAP70が上昇している該患者のB細胞中の該HSP90に対して少なくとも5倍低いIC50を有する請求項1記載の方法。
【請求項14】
該HSP90阻害剤が、ZAP70が上昇していないB細胞よりZAP70が上昇している該患者のB細胞中の該HSP90に対して少なくとも10倍低いIC50を有する請求項1記載の方法。
【請求項15】
該阻害剤がZAP70が上昇しているB細胞のHSP90に対して約100nMまたはそれ以下のIC50を有する請求項1記載の方法。
【請求項16】
該阻害剤がZAP70が上昇しているB細胞のHSP90に対して約75nMまたはそれ以下のIC50を有する請求項1記載の方法。
【請求項17】
該阻害剤がZAP70が上昇しているB細胞のHSP90に対して約50nMまたはそれ以下のIC50を有する請求項1記載の方法。
【請求項18】
該阻害剤がZAP70が上昇しているB細胞のHSP90に対して約30nMのIC50を有する請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−519031(P2008−519031A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540031(P2007−540031)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/039816
【国際公開番号】WO2006/050457
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(504172359)コンフォーマ・セラピューティクス・コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】CONFORMA THERAPEUTICS CORPORATION
【Fターム(参考)】