説明

懸架装置

本発明は、医療目的で使用する室内で機器を自由に配置する懸架装置に関する。軸上に装着する中央リンク(160)、中間リンク(150)および、エンドリンク(140)を備えた多数の開放形状リンクが互いに直列に連結されている。各リンクの側面形状は、少なくとも1つの凹部(30)を備える。形状の凹部(30)は、ケーブルを収容するように構成されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
医療目的で使用する室内では、従来、機器を壁や天井に取り付ける懸架装置が使用されている。これらの取付け装置には、多くの利点がある。まず、床に広い空間を確保できる。これは、衛生上非常に有利である。処置室の清掃中、機器を移動する必要がなく、床にケーブル類やホース類がないからである。また、それぞれの作業範囲内において、機器を自由に配置することができる。
【背景技術】
【0002】
上記の目的を達成しうる周知の装置として、図1に例示したものがある。この装置は、水平位置決め用の3本の軸1−3と、垂直位置決め用の1本の軸4を有する。この装置は、壁もしくは天井に、中心軸とも呼ばれる垂直軸1を介して固定される。水平方向に移動可能な延長アーム5がこの軸に連結される。必要な作業半径に応じて、様々な長さの延長アームをこの装置に取り付けることができる。2本の軸の連結部は、延長アームに固定されている。1本の軸4は水平方向、もう1本の軸2は垂直方向に向いている。スプリングアーム6は連結部に連結される。隣接する連結部の2本の軸2,4の作用により、スプリングアーム6は、水平方向だけでなく、垂直方向にも移動可能である。医療機器は、スプリングアームの延長アームと反対側に取り付ける。スプリングアームは、さらに、垂直軸3を有する。スプリングアームは、両垂直軸2,3が常に互いに平行となる様に構成されている。
【0003】
この装置の延長アーム5は、中空部を有している。機器のケーブル類が延長アーム内を通っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケーブルの配線は一般的には工場での組み立て時に行われるが、装置が堅牢であり、且つ閉鎖形状であるため困難な作業である。その後に別の線を配線しようとしても、大部分は、装置を分解しないことには不可能である。このため、その後の設線は、装置の外側に取り付けられることが多い。医療目的を前提とする場合、これは衛生上問題である。
【0005】
さらに、特定の範囲内では、所望の位置に届くものの、その所望の位置までの経路は、必ずしも明確ではなく、直感的に認識できるとは限らない。垂直回転軸により、長くて堅牢な延長アームの動作を同時に行わなければならないためである。このため、使用者は、機器と個々の垂直軸の動作に意識のかなりの部分を集中せざるを得なくなる。
【0006】
上記のような構成が、懸架装置の動作の動力化を妨げている。これは、複雑な動作順序の自動化が必要であり、個々の部材の動作範囲が大きいことが原因である。それぞれの垂直軸ごとに大きい回転半径も確保しなければならないため、モータの選択がさらに複雑となる。
【0007】
それぞれ動作範囲が異なる用途ごとに延長アームを適合させるため、様々な長さを有する延長アームが単に製造されている。しかし、それぞれ所望の長さに応じて、新しく部品を製造しなければならないという欠点がある。このため、製造コストが上がり、長さの選択肢も少ない。
【0008】
本発明の目的は、より操作性が高く、ケーブルを容易かつ衛生的に配線でき、より経済的に製造可能な改良懸架装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の懸架装置によって達成できる。上記の問題を解決するため、本発明の水平延長アームは、多数の直列に連結された部材を備える。従来の懸架装置では、水平延長アームは、堅牢であり閉鎖形状であった。本発明では、延長アームは、それぞれが2本の垂直軸を有する多数の中間部材の組立体に置き換えられる。それぞれの組立体は、中間部材に加え、中心軸に連結する中心部材と、機器もしくはスプリングアームを装着するエンド部材とを有する。すべての部材は、例えばT字型、もしくはI字型の開放形状を有していることを特徴とする。これらの開放形状の凹部は、機器のケーブル180の収容に適しており、衛生上の理由から、着脱式の可撓性を有するカバー190で覆われている。各開放形状の少なくとも1つの凹部は、側方が開放されているのが好ましい。開放形状部材の凹部同士はまた、互いに直列に連結することが好ましい。
【0010】
中間部材および、エンド部材は、その曲げ荷重に対応して寸法を変更することができる。つまり、エンド部材に向かうに従い、曲げ荷重が小さくなるため、組立体をエンド部材に向かうに従って寸法が小さくなるよう構成することも可能である。これにより、材料の使用量を減らすことができる。
【0011】
より単純で、より直感的な操作が可能であるという利点は、部材の数、ひいては垂直軸の数が多いことにより実現できる。実施形態により、軸毎の回転が限られていたとしても、軸数が増えれば、操作が実質的に容易になる。これにより、使用者は、懸架装置に集中する必要なく、直接所望の場所に装置を誘導することができる。従来の懸架装置で必要とされた軸同士の調整は、もはや必要ない。
【0012】
自動化の際には、各垂直軸の回転半径が小さいため、モータの選択が容易である。モータ数が必然的に増えるため、小さいモータで所望の操作性を得ることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、実質的なコストをかけずに中間部材の数を変更することで、特定の作業範囲が必要な場合であっても、対応可能である。中間部材を追加挿入することにより、半径を容易に、例えばL1からL2のように広げることができる。これにより、生産する個々の構成部材の数が最小限ですむため、とりわけ、生産上、明らかな利点となる。これにより、製造コストを下げることができる。
【0014】
開放形状部材の凹部は、機器のケーブルを収容するのに非常に適している。ケーブルは、T字型またはI字型形状の側部に容易に取り付け可能である。着脱式の可撓性カバーでケーブルを凹部に固定する。カバーが着脱式であるため、後にケーブルを取り付ける際にも容易に行うことができる。また、カバーにより、露出領域を減らすことができる。洗浄がさらに容易であり、不衛生で汚れた箇所が発生しないため、医療目的で使用する室内に求められる高い衛生要件に対して有利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来技術による懸架装置を示す図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による懸架装置の中間リンクを示す図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態による懸架装置の中心リンクを示す図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態による懸架装置のエンドリンクを示す図である。
【図5】本発明による懸架装置の2本の異なる長さのリンク組立体の鳥瞰斜視図である。
【図6】本発明による懸架装置における2本の異なる長さの連結装置の組立体の斜視図である。
【図7】本発明の好ましい実施形態によるケーブルと可撓性カバーを含む連結組立体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図2に、I字型の中間リンクを示す。垂直軸10および20が中間リンクの両側に位置する。さらに、中間リンクは、中間リンクに沿って延在し、1本以上の機器のケーブルを収容する側方開放凹部30を備える。それぞれの垂直軸に沿って位置するピンにより、直列に配置された中間リンクが互いに連結される。垂直軸10および20を部分的に包含するヒンジ40および50が中間リンクのそれぞれの端部に位置する。ヒンジ40および50は、2個のリンクを互いに取り付けた時に嵌合し、または挟むように構成されている。2個のヒンジ50は、ヒンジ40より薄く形成されている。理由は、水平中央面からさらに離れた位置に位置しているからである。水平中央面は、中間リンクの上下面の間に位置しており、中間リンクの上下面に平行に配置されている。この面からの距離が遠ければ遠いほど、ヒンジ50が発揮する曲げ力を弱めるレバレッジ効果が大きくなる。これにより、ヒンジに作用する水平方向の力が低減される。ヒンジ40は、リンクの中央面上に直接位置する。これにより、ヒンジに作用する水平方向の力を増大させる。したがって、ヒンジ40は、ヒンジ50より長い。
【0017】
同じ原理がI字型を選択した理由ともなっている。断面積は、曲げ力に比例する。その領域の中央面までの距離もまた、曲げ力に比例する。結果、領域が中央面より遠ければ遠いほど、小さい面積で同じ曲げ力を得ることができる。I字型の断面積の大部分が中央面から最大限離れているため、I字型を選択している。よって、I字型は、特に曲げ力に対して耐性を有することになる。
【0018】
図3は、中心リンクを示す。これもまた、中心軸70と垂直軸80の2本の軸を有している。中心リンクの、中心軸70を設けた端部は、中心軸70の方向に延在するヒンジ90を有する。このヒンジにより、延長アーム全体がジャーナル170(図6)上に懸架される。中心リンクの反対側の端部は、垂直軸20が位置する中間リンクの端部と全く同様の構成である。同じヒンジ40を有している。中心リンクの端部は、ピン130(図5)で、中間リンクのヒンジ50(図2)を設けた側と連結される。ピンは垂直軸80を形成する。中間リンクは、中心軸80を中心として回転可能に装着される。
【0019】
図4は、エンドリンクを示す。これも垂直軸100と端軸110の2本の軸を有する。エンドリンクの、垂直軸100が位置する端部は、中間リンクの、垂直軸10が位置する側の端部と全く同様に形成されている。同じヒンジ50を有している。エンドリンクの端部は、ピンで中間リンクと、正確には、ヒンジ40を備えた中間リンクの側と連結されている。エンドリンクの他方の端部は、端軸110が貫通するように延在するヒンジ120を有している。この端軸に、別のピンにより機器またはスプリングアームが装着される。
【0020】
図5は、異なるリンクから構成された2本の延長アーム131および132を上から見た様子を示す。ここでは、中間リンク150を挿入または取り外すことよって、どのように容易に延長アームの長さを変えられるかを図示している。図の一端側にはジャーナル170が示されている。ジャーナル170は、通常、壁または天井に固定される。中心リンク160の一方側は、ジャーナル上に載置され、他方の側はピン130で一連の中間リンク150に連結される。延長アームの端部には、エンドリンク140が位置する。
【0021】
図6は、図5と同じ延長アーム131および132を示す斜視図である。ここで、連結部は、延長アームの操縦性を明確に示すため互いに対して幾分旋回した状態を表わしている。
【0022】
図7は、図5に示した延長アーム131および132の側面図である。下側の延長アームでは、さらにI型形状の凹部30の中にケーブル180をどのように渡すかを示している。ケーブル180は、開放形状リンクの側方の開放された凹部30の中に非常に容易に載置することができる。上側の延長アームでは、可撓性を有するカバー190も示されている。開放形状リンクの凹部は、可撓性を有するカバーで覆われている。これにより、内部に位置するケーブルが保護される。カバーは、ピンまたはクリップ210によって、それぞれのリンクに取り付けられる、比較的堅牢なカバー板220から形成される。板と板の間の区間200は、個々のリンクの互いに対する動作の自由を阻むことがないように、可撓性の材料で形成する。
【符号の説明】
【0023】
1 軸(中心軸)
2 軸
3 軸
4 軸
5 延長アーム
6 スプリングアーム
10 垂直軸
20 垂直軸
30 開放形状の凹部
40 ヒンジ
50 ヒンジ
60 曲げ力受け領域
70 中心軸
80 垂直軸
90 ヒンジ
100 垂直軸
110 端軸
120 ヒンジ
130 ピン
131 長さL1を有する延長アーム
132 長さL2を有する延長アーム
140 エンドリンク
150 中間リンク
160 中心リンク
170 ジャーナル
180 ケーブル
190 可撓性カバー
200 カバーの間の可撓性を有する区間
210 カバーピン
220 カバー板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸上に装着する中心部材(160)、中間部材(150)および、エンド部材(140)を備える多数の開放形状部材が互いに直列に連結され、前記部材のそれぞれの形状が、少なくとも1つの凹部(30)を備え、前記形状の前記凹部(30)はケーブルの収容に適していることを特徴とする、機器を自由に配置する懸架装置。
【請求項2】
前記凹部(30)は、可撓性を有するカバー(190)で被覆可能であることを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記中央部材(160)が中心軸(70)に装着され、前記中央部材(160)は、前記中心軸に対して回転可能かつ、前記中心軸に沿って変位可能であることを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項4】
各前記中間部材は、それぞれ2本の垂直回転軸を有することを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項5】
各前記部材は、T字型、I字型、もしくはH字型のいずれかに形成可能であることを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項6】
前記エンド部材(140)の寸法は、曲げ荷重の減少に対応して小さくなり、前記中間部材(150)の寸法は、曲げ荷重の減少に対応して前記エンド部材に向かうほど小さくなり、寸法決めの形態は、曲げ荷重に対する耐性に対応することを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項7】
装置のアームの長さが、前記中間部材の挿入および取り外しにより変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−501988(P2011−501988A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528294(P2010−528294)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008305
【国際公開番号】WO2009/049769
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510097998)オンダル インドゥストリーテヒニック ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】