説明

成形ホースの製造方法および製造装置

【課題】 ゴム層と同ゴム層に積層された樹脂層とを有し、且つ、所定形状に曲げ加工された成形ホースを製造するための装置において、加硫が終了したホースから曲がり形状の芯棒を抜き取る操作を、たとえ曲がり形状の曲率半径が小さくても、比較的容易に実行でき、しかも、加硫芯棒の曲がり形状に即した所望の曲がり形状を得ることの可能な、成形ホースの製造装置と製造方法を提供する。
【解決手段】 所定形状に対応する形状の中芯を内面側に挿入した状態のホースを加硫のために加熱し、次に、加硫後で放冷前のホースから中芯を抜き取った後に用いられ、ホース42の外形を所定形状に保持するために、ホース42の外面に外力を加える当接部30a,30b,30c,30dを有し、この当接部によって外形を所定形状に保持したままホース42を室温まで冷却可能な装置1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム層と前記ゴム層に積層された樹脂層とを有し、且つ、所定形状に曲げ加工された成形ホースを製造する方法および同方法に用いる製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の方法および同方法に用いる装置としては、本発明に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1に開示された発明がある。この特許文献1には、ゴム層と樹脂層とを積層した曲がりホース(成形ホース)の製造方法が記されており、ここには、中芯の外周に内層ゴム、中間樹脂、外層ゴムの順に押し出し成形し、次に、中芯を付けたまま予備加硫を行うことで内外層ゴムに或る程度の弾性を付与し、予備加硫が終了したホースから中芯を抜き、この予備加硫したホースを所望の曲がりをつけた加硫用の芯棒(マンドレル)に差し込み、さらに、加硫用の芯棒を付けたままで本加硫する方法が記されている。
【特許文献1】特開2000−289121号公報(段落番号0016、0018、図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の発明には、記載された操作の次工程として、本加硫が終了したホースから曲がり形状の加硫用の芯棒を抜き取る際に、ホース温度が室温付近まで下がってから抜き取ろうとすると、内外層ゴムの硬度が高く抜き難いため、曲がり形状の曲率半径が所定の下限値を上回るように設定しておかないとスムースな抜き取りができず、曲率半径が下限値より小さくなると抜き取りに無理が生じてゴム層が裂け易い、瘤状の隆起や皺(しわ)が形成されてしまう、或いは、加硫用の芯棒が変形してしまうという問題があった。尚、ゴム層に積層された樹脂層が当初の形状に戻ろうとする性質などに起因する、加硫芯棒から取り出したホースの曲げ角度が加硫芯棒の曲げ角度よりも大きくなる曲げ戻り現象を防止する目的で、加硫芯棒の曲げ角度を予測される曲げ戻りの分だけきつくしておく方法を取ると、本加硫を完了したホースから曲がり形状の加硫芯棒を抜き取る操作がさらに困難になるという問題が生じる傾向があった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、上に例示した従来技術による技術の持つ前述した欠点に鑑み、ゴム層と前記ゴム層に積層された樹脂層とを有し、且つ、所定形状に曲げ加工された成形ホースを製造する方法、並びに、同方法に用いる装置であって、加硫が終了したホースから曲がり形状の芯棒を抜き取る操作を、たとえ曲がり形状の曲率半径が小さくても、比較的容易に且つホースが裂ける瘤または皺が形成される等の障害を伴わずに実行でき、しかも、加硫芯棒の曲がり形状に即した所望の曲がり形状を得ることの可能な、成形ホースの製造方法、並びに、同方法に用いる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴は、ゴム層と前記ゴム層に積層された樹脂層とを有し、且つ、所定形状に曲げ加工された成形ホースを製造する方法であって、
前記所定形状に対応する形状の中芯を内面側に挿入した状態のホースを加硫のために加熱し、加硫後で放冷前のホースから前記中芯を抜き取った後、ホースの外面に外力を加える治具によってホースの外形を前記所定形状に保持しつつホースを冷却する点にある。
【0006】
したがって、本発明の第1の特徴構成による方法では、加硫後のホースから曲がり形状の中芯(マンドレル)を抜き取る操作を、ホースの放冷前のゴム層が未だ十分な柔軟性を保持している段階で行うので、たとえ曲がり形状の曲率半径が小さくても、同操作を比較的容易に実行できる。また、曲がり形状の中芯を抜き取った後のホースを冷却(例えば室温或いは室温以下まで冷却)する操作を、ホースの外面に外力を加える治具によってホースの外形を前記所定形状に保持しつつ行うので、ホースが予備加硫時の直線形状に戻ろうとすることなく、中芯の曲がり形状に即した所望の曲がり形状の成形ホースが円滑に、しかも、ホースが裂ける瘤または皺が形成される等の障害を伴わずに得られる。
【0007】
本発明の第2の特徴は、ゴム層と前記ゴム層に積層された樹脂層とを有し、且つ、所定形状に曲げ加工された成形ホースを製造する方法であって、
直線状の第1中芯を内面側に挿入した状態のホースを予備加硫のために加熱し、前記第1中芯を抜き取り、次に、前記所定形状に対応する形状の第2中芯を内面側に挿入した状態のホースを加硫のために加熱し、加硫後で放冷前のホースから前記第2中芯を抜き取った後、ホースの外面に外力を加える治具によってホースの外形を前記所定形状に保持しつつホースを冷却する点にある。
【0008】
したがって、本発明の第2の特徴構成による方法では、本加硫後のホースから曲がり形状の第2中芯(マンドレル)を抜き取る操作を、ホースの放冷前のゴム層が未だ十分な柔軟性を保持している段階で行うので、たとえ曲がり形状の曲率半径が小さくても、同操作を比較的容易に実行できる。また、曲がり形状の第2中芯を抜き取った後のホースを冷却(例えば室温或いは室温以下まで冷却)する操作を、ホースの外面に外力を加える治具によってホースの外形を前記所定形状に保持しつつ行うので、ホースが予備加硫時の直線形状に戻ろうとすることなく、第2中芯の曲がり形状に即した所望の曲がり形状の成形ホースが円滑に得られる。
【0009】
本発明の第3の特徴は、前記冷却に際して、前記治具はホースの外周の長さの少なくとも三分の一にわたって外力を加える点にある。
【0010】
したがって、本発明の第3の特徴構成による方法では、前記治具は、ホースの側面を左右から挟み付けることによって、前記曲げ加工に基づくホースの扁平化を抑制することができ、その結果、長手方向に沿って一貫して断面形状が円形で従って断面積も長手方向に沿って一定の、流体の搬送に対して有利な成形ホースが円滑に得られる。
【0011】
本発明の第4の特徴は、前記治具は、ホースを巻き掛け可能な周面を備えた押さえ部材からなり、前記押さえ部材の前記周面は、巻き掛けられたホースの断面を円形に保つためにホースの両側面を支持する円弧状の断面を備える点にある。
【0012】
したがって、本発明の第4の特徴構成による方法では、治具が、ホースを巻き掛け可能な周面を備えた押さえ部材からなるので、ホースを押さえ部材の周面に沿ったある程度の長さにわたって案内及び位置規制でき、その結果、押さえ部材の位置や押さえ部材の周面の向きを適宜に設定することによって、ホースに付与すべき所定形状が三次元形状(成形ホースの少なくとも2つの湾曲部を含む軸芯を一つの平面内に含ませることの出来ない形状)である場合にも、加硫芯棒の曲がり形状に見合った所望の曲がり形状の成形ホースが得られる。また、押さえ部材の周面が、巻き掛けられたホースの断面を円形に保つためにホースの両側面を支持する円弧状の断面を備えるので、長手方向に沿って一貫して断面形状がより正確な円形を呈した、流体の搬送に対して有利な成形ホースが円滑に得られる。
【0013】
本発明の第5の特徴は、ホースが少なくとも2層のゴム層を有し、前記樹脂層は前記ゴム層の間に配置された熱可塑性フッ素樹脂層からなる点にある。
【0014】
すなわち、本発明の第5の特徴構成による方法では、ホースが、加硫操作を施された後、冶具による拘束状態で室温まで冷却されるため、複数のゴム層の間に、塑性変形し難く、従って曲げ加工後にも元の直線形状に復元しようとする傾向の強い、耐ガソリン成分(炭化水素)透過性を備えた熱可塑性フッ素樹脂層がゴム層の間に介装されたホースにも適用できることとなり、その結果、得られた成形ホースを、光化学スモッグの原因となる炭化水素放出量を抑えた、しかも、他部品との干渉を避けるためにきつく湾曲した自動車用のフューエルホースにも十分に適用できる。
【0015】
本発明の第6の特徴は、前記所定形状に含まれる湾曲部をホースの軸芯に沿った切断面に関して、ホース外周面が形成する最も小さな円弧の半径を、ホースの前記軸芯が形成する円弧の半径によって除した商をホース湾曲率と定義した時、前記ホース湾曲率が0.62以上に設定されている点にある。
【0016】
すなわち、自動車用のフューエルホースに多く見られるこのような内径と外径および湾曲部の湾曲率に関する寸法的条件を備えた形状のホースの場合には、内部に中芯を入れた本加硫を完了後、例えば室温或いは室温以下まで放冷後にホースのゴム層に損傷を与えることなく中芯を抜き取ることは困難であるが、本発明による、加硫後で放冷前のホースから中芯を抜き取った後、ホースの外面に外力を加える治具によってホースの外形を所定形状に保持しつつホースを室温或いは室温以下まで冷却するという方法を取れば、ゴム層に損傷を与えることなくホースを作製することが可能である。従って、本発明の第6の特徴構成による方法では、比較的に径が小さく、且つ、他部品との干渉を避けるためにきつく湾曲しているために成形の難しい、自動車用のフューエルホース、すなわち、湾曲部のホース湾曲率を、ホース外周面が形成する最も小さな円弧の半径を、ホースの前記軸芯が形成する円弧の半径によって除した商によって定義した時、例えばホース湾曲率が0.62に設定されているような、非常に曲げ加工の過酷なホースにも十分適用できる。
【0017】
本発明の第7の特徴は、ゴム層と前記ゴム層に積層された樹脂層とを有し、且つ、所定形状に曲げ加工された成形ホースを製造するための装置であって、
前記所定形状に対応する形状の中芯を内面側に挿入した状態のホースを加硫のために加熱し、次に、加硫後で放冷前のホースから中芯を抜き取った後に用いられ、ホースの外形を前記所定形状に保持するためにホースの外面に外力を加える当接部を有し、前記当接部によって外形を前記所定形状に保持したままホースを室温まで冷却可能に構成されている点にある。
【0018】
したがって、本発明の第7の特徴構成による装置では、加硫後のホースから曲がり形状の中芯(マンドレル)を抜き取る操作を、ホースの放冷前のゴム層が未だ十分な柔軟性を保持している段階で行うので、たとえ曲がり形状の曲率半径が小さくても、同操作を比較的容易に実行できる。また、曲がり形状の中芯を抜き取った後のホースを室温まで冷却する操作を、ホースの外形を前記所定形状に保持しつつ行うために、ホースの外面に外力を加える治具を備えるので、ホースが予備加硫時の直線形状に戻ろうとすることなく、中芯の曲がり形状に即した所望の曲がり形状の成形ホースが円滑に得られる。
【0019】
本発明の第8の特徴は、ゴム層と前記ゴム層に積層された樹脂層とを有し、且つ、所定形状に曲げ加工された成形ホースを製造するための装置であって、
直線状の第1中芯を内面側に挿入した状態のホースを予備加硫のために加熱し、前記第1中芯を抜き取り、次に、前記所定形状に対応する形状の第2中芯を内面側に挿入した状態のホースを加硫のために加熱し、さらに、加硫後で放冷前のホースから前記第2中芯を抜き取った後に用いられ、ホースの外形を前記所定形状に保持するためにホースの外面に外力を加える当接部を有し、前記当接部によって外形を前記所定形状に保持したままホースを室温まで冷却可能に構成されている点にある。
【0020】
したがって、本発明の第8の特徴構成による装置では、本加硫後のホースから曲がり形状の第2中芯(マンドレル)を抜き取る操作を、ホースの放冷前のゴム層が未だ十分な柔軟性を保持している段階で行うので、たとえ曲がり形状の曲率半径が小さくても、同操作を比較的容易に実行できる。また、曲がり形状の第2中芯を抜き取った後のホースを室温まで冷却する操作を、ホースの外形を前記所定形状に保持しつつ行うために、ホースの外面に外力を加える治具を備えるので、ホースが予備加硫時の直線形状に戻ろうとすることなく、第2中芯の曲がり形状に即した所望の曲がり形状の成形ホースが円滑に得られる。
【0021】
本発明の第9の特徴は、前記治具はホースの外周の長さの少なくとも三分の一にわたって外力を加えるように構成されている点にある。
【0022】
したがって、本発明の第9の特徴構成による装置では、前記治具がホースの側面を左右から挟み付けることによって、前記曲げ加工に基づくホースの扁平化を抑制することができ、その結果、長手方向に沿って一貫して断面形状が略円形で従って断面積も長手方向に沿って一定の、流体の搬送に対して有利な成形ホースが円滑に得られる。
【0023】
本発明の第10の特徴は、前記当接部が、ホースを巻き掛け可能な押さえ部材の周面からなり、前記押さえ部材の前記周面は、巻き掛けられたホースの断面をより円形に保つためにホースの両側面を支持する円弧状の断面を備える点にある。
【0024】
したがって、本発明の第10の特徴構成による装置では、治具が、ホースを巻き掛け可能な周面を備えた押さえ部材からなるので、ホースを押さえ部材の周面に沿った或る程度の長さにわたって案内及び位置規制でき、その結果、押さえ部材の位置や押さえ部材の周面の向きを適宜に設定することによって、ホースに付与すべき所定形状が三次元形状(成形ホースの少なくとも2つの湾曲部を含む軸芯を一つの平面内に含ませることの出来ない形状)である場合にも、加硫芯棒の曲がり形状に見合った所望の曲がり形状の成形ホースが得られる。また、押さえ部材の周面が、巻き掛けられたホースの断面をより円形に保つためにホースの両側面を支持する円弧状の断面を備えるので、長手方向に沿って一貫して断面形状が従来技術のものに比してより円形を呈した、流体の搬送に対して有利な成形ホースが円滑に得られる。
【0025】
本発明の第11の特徴は、フロアに載置可能なベース部と、前記ベース部に対して第1軸芯周りで揺動可能に支持された可動部とを有し、前記ベース部と前記可動部の一方に少なくとも2つの押さえ部材が設けられており、前記ベース部と前記可動部の他方に前記少なくとも2つの押さえ部材の間にホースの一部を押し込み可能な少なくとも1つの押さえ部材が設けられている点にある。
【0026】
したがって、本発明の第11の特徴構成による装置では、ホースを例えばベース部に設けられた少なくとも2つの押さえ部材の上に載置し、可動部をベース部と近接するように揺動操作すれば、可動部に設けられた少なくとも1つの押さえ部材によって、ホースの一部が少なくとも2つの押さえ部材の間に押し込まれ、可動部をこの状態で固定し、ホースの温度が室温付近まで下がるまで装置の全体を放置すれば、湾曲部を安定して備えた成形ホースが得られる。そこで、このような押さえ部材の数や押さえ部材の位置を適宜に設定すれば、所定形状に対応する所望の形状の成形ホースが円滑に得られる。
【0027】
本発明の第12の特徴は、前記押さえ部材の軸芯が前記第1軸芯に対して傾斜して設けられている点にある。
【0028】
したがって、本発明の第12の特徴構成による装置では、押さえ部材の軸芯が第1軸芯に対して設置されているので、成形されたホースの向きが第1軸芯と直行する平面から傾斜した、三次元形状(成形ホースの少なくとも2つの湾曲部を含む軸芯を一つの平面内に含ませることの出来ない形状)を付与された付加価値の高い成形ホースを円滑に作製することができる。
【0029】
本発明の第13の特徴は、前記押さえ部材がその回転位置を調節可能に、且つ、前記第1軸芯と平行な向きに沿って位置調節可能に構成されている点にある。
【0030】
したがって、本発明の第13の特徴構成による装置では、単一の装置を用いながらも、押さえ部材の回転位置を適宜調節し、押さえ部材の位置を第1軸芯と平行に移動させて適宜変更することによって、曲がり部の湾曲率や曲がり部の位置が互いに異なる複数の種類の成形ホースを作製可能となる。
【0031】
本発明の第14の特徴は、前記押さえ部材に加熱手段が設けられている点にある。
【0032】
したがって、本発明の第14の特徴構成による装置では、前記所定形状に対応する形状の中芯(第2中芯)を内面側に挿入しての加硫(本加硫)を完全に行わず、本加硫工程の一部を残した状態で中芯を抜き取り、ホースを前記装置にセットし、そこで押さえ部材に設けられた加熱手段によってホースの湾曲部に対して残りの本加硫工程を実施し、その後、ホースの全体を冷却することで成形ホースを完成させるという使い方ができるので、所定形状に対応する形状の中芯の抜き取りをより円滑に行うことができ、結果的に、より曲がり方のきつい成形ホースを作製可能となる。
【0033】
本発明の第15の特徴は、所定形状に保持されたホースを強制冷却する手段が設けられている点にある。
【0034】
したがって、本発明の第15の特徴構成による装置では、本加硫を終えた或いは略終えたホースの冷却を迅速に行うことができる。尚、強制冷却する手段の具体的な形態としては、加工装置にセットされたホースの内面に冷却流体(空気などの気体または水などの液体)を流すことの可能な機構などで構成することができる。
【0035】
本発明の第16の特徴は、前記ベース部と前記可動部の前記一方か前記他方に、ホースの内面に嵌り込むことでホースの一端を固定するための突起が設けられており、前記突起にホースを内面側から強制冷却するための流体を供給する孔が設けられている点にある。
【0036】
したがって、本発明の第16の特徴構成による装置では、本加硫を終えた或いは略終えたホースの一端を前記突起に被せ、ホースの各湾曲部を当接部に当てた状態でホースを装置にセットし、前記突起の孔を介してホースの内側に冷却用流体を流すことができるので、成形ホースの作製をより効率的に実施できる。
【0037】
本発明によるその他の特徴および利点は、以下図面を用いた実施形態の説明により明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の実施形態の一例について図面に基づいて以下に解説する。本発明による、成形ホースを製造する方法および同方法に用いる装置は、ゴム層と同ゴム層に積層された樹脂層とを有し、且つ、所定形状に曲げ加工された成形ホースの作製に用いることができる。しかし、図1に例示する、自動車等に用いる燃料供給用ホース50に適用した場合には、その発明の有効性を最も発揮できる。
【0039】
燃料供給用ホース50は、図1(ロ)に示すように、内層50a、外層50c、及び内層50aと外層50cの間に介装された中間層50bとから構成されている。内層50aには耐ガソリン性とシール性が求められるためにFKM(フッ素ゴム)が、外層50cには弾力性と耐候性と耐熱性などが求められるためにECO(エピクロルヒドリンゴム)が選択されている。そして、中間層50bにはガソリンなどの炭化水素の透過を規制する機能を備えた熱可塑性フッ素樹脂として、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの3元共重合体(略称THV、商品名を挙げれば、例えばDyneon社製のTHV500G、THV610、THV815)が採用されている。但し、内層としてはNBR(ニトリルゴム)等を用いても良く、外層としてはCSM(クロロスルホン化ポリエチレン)等を用いても良い。また、中間層としては、上述したTHVの他に、エチレンと四フッ化エチレンとの共重合体(ETFE)、六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、三フッ化塩化エチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等のフッ素樹脂、或いは、ナイロン等を用いても良い。
尚、上述の例のように一層からなる内層50aではなく、例えば、内側に配置されたFKMと、外側に配置されたECOとからなる2層状の内層とするなど、多層状の内層としても良い。外層50c及び中間層50bについても同様で、多層状の外層或いは多層状の中間層としても良い。
また、必ずしも上述の例のように樹脂製の中間層の外側にゴムによる外層を設けなくても良い。すなわち、この場合、燃料供給用ホースは、ゴムによる内層とその外側を被覆する樹脂製の外層のみで構成される。同様に、必ずしも上述の例のように樹脂製の中間層の内側にゴムによる内層を設けなくても良い。この場合、燃料供給用ホースは、樹脂からなる内層とその外側を被覆するゴム製の外層のみで構成される。
【0040】
燃料供給用ホース50の太さに関する寸法は内径が17mm、外径が23mm、ホースを形成する側壁部の厚さが3mmであるが、他にも、少なくとも、内径が6〜37.5mmで、外径が11〜46mmの範囲のホースであれば適用できる。
また、燃料供給用ホース50は、ガソリンタンクからエンジンに至る供給経路上にある種々の周辺部材との干渉を避ける目的で、図1(イ)に示すような所定の湾曲形状を有する。因みに、最も曲がり方の急な第2湾曲部V2と第3湾曲部V3の曲率半径は40mmであり、湾曲部V2の前後に位置する略直線状のホース部どうしは約90°の角度をなしている。湾曲部V3の前後に位置する略直線状のホース部についても同様である。
【0041】
燃料供給用ホース50を作製する際に用いられる工程について、以下に概略的に説明する。
<第1工程>先ず、図2に例示するような、長尺で直線状の第1中芯11と、第1押出し機12と、第2押出し機13と、第3押出し機14とを備えたホース製造ライン10によって、3層からなる未加硫の直線状のホース40を成形する。第1押出し機12は、第1中芯11の外周にFKM(フッ素ゴム)からなる内層51を押出し成形し、第2押出し機13は内層51の上にTHV熱可塑性フッ素樹脂からなる中間層52を押出し成形し、第3押出し機14は中間層52の上にECO(エピクロルヒドリンゴム)からなる外層53を押出し成形する。このホース製造ライン10によって、第1中芯11上に得られる長尺のホース40の各ゴム層は、未加硫であり、概して粘土状を呈している。
【0042】
<第2工程>ホース40から第1中芯11を抜き取り、ホース40を、一旦所定のドラム15の外周面に巻き取り、同ドラム15に巻き取られた状態のホース40を加硫缶16内に収納して所定の温度条件下で加熱することで各ゴム層を予備加硫し、引き続き、放冷する。これによって、幾らかの弾力性を備えた予備加硫済みのホース41が得られる。
<第3工程>図2に示すように、加硫缶16から取り出したドラム15の外周面から予備加硫済みのホース41を巻き戻して、適当な長さに裁断し、図3に矢印で示すように、予備加硫済みのホース41に所定の湾曲形状に曲げられた第2中芯17を挿入する。
<第4工程>図4に例示するように、第2中芯17に外嵌させたホース41を、適当なオーブン18または加硫缶内にて所定の温度条件下で加熱することで各ゴム層を本加硫する。
<第5工程>本加硫を終えたホース42を第2中芯17と共にオーブン18または加硫缶から取り出し、図5に矢印で示すように、直ぐに(放冷される前の、ホース42が十分な柔軟性を保持している間に)第2中芯17を抜き取り、次に、やはり放冷される前に、図7から図9に示すホース拘束冶具1にセットし、そのまま、ホース42の外形をホース拘束冶具1によって所定形状に保持しつつ、ホース42が室温になるまで放冷する。
<第6工程>図9に示すように、放冷済みのホース42を、十分な弾力性を備えた完成した燃料供給用ホース50(成形ホース)として、ホース拘束冶具1から取り出す。
【0043】
図7から図9に示すように、ホース拘束冶具1は、フロア等に載置可能な矩形筐体状のベース部2と、ベース部2に対して第1軸芯X1周りで揺動可能に支持された多数の揺動アーム3(可動部の一例)とを有する。
図7に示すように、ベース部2は、一対のほぼ垂直な側板21を有し、これらの一対の側板21の間には、いずれも丸棒で構成された、第1シャフト22a、第2シャフト22b、及び、第3シャフト22cが、水平に且つ側板21に対して垂直に延びている。第2シャフト22bと第3シャフト22cは互いに同じ高さに配置されている。
ホース拘束冶具1を操作する作業者(不図示)から見て最も後方に位置する第1シャフト22aには、各揺動アーム3が回動自在に支持されている。各揺動アーム3は互いに独立した形で回動操作される。そして、前後の中央付近に位置する第2シャフト22bには、揺動アーム3の数と同じ数量のコロ30a(押さえ部材の一例)が、第2シャフト22bの長手方向に沿ってほぼ等間隔で外嵌固定されている。また、手前側に位置する第3シャフト22cにも、やはり揺動アーム3の数と同じ数量のコロ30bがほぼ等間隔で外嵌固定されている。
【0044】
さらに、一対の側板21の間には、いずれも断面が矩形の細長い板材で構成された、第1ビーム23a、第2ビーム23b、第3ビーム23c、及び、第4ビーム23dが水平に且つ側板21に対して垂直に延びている。
第1ビーム23aには、各ホースの内面に嵌り込むことでホース42の先端を固定するための突起24が、揺動アーム3の数と同じ数だけ設けられている。ホース42の各湾曲部を各コロ30に対して正確に位置決めするために、ホース42を突起24に被せる時、ホース42の先端が突起24の全長を覆い隠すと同時に第1ビーム23aの面に接当するように実施する。
次に、第2ビーム23b、第3ビーム23c、及び、第4ビーム23dの各々には、ホース42を上方から嵌め込むことの可能な溝状案内部25が、揺動アーム3の数と同じ数だけ設けられている。溝状案内部25は、ホース42の外面を下方と左右から支持することでホース42を上下方向と左右方向に関して位置決めする機能を果たす。
【0045】
さらに、一対の側板21の一端には、一本の板材またはアングル等で構成された第5ビーム26が水平に且つ側板21に対して垂直に延びている。第5ビーム26には、音叉を逆さまにした形状で、各揺動アーム3の遊端3aと係止可能なストッパ部材27が、揺動アーム3の数と同じ数だけ設けられている。
各揺動アーム3にも、コロ30cとコロ30dとが揺動アーム3の長手方向に沿って互いに離間して設けられている。ベース部2側のコロ30a、30bはベース部2に対して回転不能に設けられており、揺動アーム3側のコロ30cとコロ30dも揺動アーム3に対して回転不能に設けられている。尚、各コロ30a、30b、30c、30d(いずれも押さえ部材の一例)は合成樹脂によって形成されている。コロ30を除くホース拘束冶具1の構成部品は、いずれもステンレススチールなどの鋼鉄からなる。但し、ベース部2側のコロ30a、30b及び揺動アーム3側のコロ30cとコロ30dの一部或いは全部を、ベース部2又は揺動アーム3に対して回転自在に設けても良い。
また、各揺動アーム3には、ホース42の一部を第2ビーム23bの溝状案内部25の底部に押し付け可能な箱状などの押し付け部材28が設けられている。
【0046】
そこで、前述の第5工程について、ホース拘束冶具1の構成に沿って具体的に解説すると以下のようになる。
先ず、図5に示すように、オーブン17または加硫缶内での本加硫を終えたホース42から第2中芯16を抜き取ると、直ぐに、図7及び図8に例示するように、ホース42の先端をホース拘束冶具1の突起24に差し込み、ホース42の先端よりも少し手前側の部位を第2ビーム23bの溝状案内部25内に嵌め込み、ホース42の先端に最も近い第1湾曲部V1と第3湾曲部V3とを、それぞれ第2シャフト22bのコロ30aと第3シャフト22cのコロ30bの周面に巻き掛け、ホース42の残りの部位を第3ビーム23cと第4ビーム23dの溝状案内部25内に嵌め込む。
【0047】
次に、揺動アーム3を手前側に揺動操作して、ベース部2に近付けて行くと、先ず、ホース42の一部が揺動アーム3のコロ30cとコロ30dの各周面内に入り込み、揺動アーム3を更にベース部2に近付けると、揺動アーム3のコロ30cがホース42の一部(第2湾曲部V2になる部位)を、ベース部2側のコロ30aとコロ30bの間に押し込み、揺動アーム3のコロ30dがホース42の別の一部(第4湾曲部V4になる部位)を、ベース部2側の第3ビーム23cの溝状案内部25と第4ビーム23dの溝状案内部25の各底部に押し付ける。尚、コロ30cとコロ30dは揺動アーム3に対して回転自在に設けられているので、ホース42が既に若干直線状に戻り始めていても、揺動アーム3のコロ30cとコロ30dはその各周面内にホース42をスムースに受け入れ、ホース42の湾曲部V2,V4を所定の高さ位置まで押し下げることができる。
【0048】
揺動アーム3が十分にベース部2に近付いたら、ストッパ部材27を揺動アーム3の遊端3aに係止することで揺動アーム3を固定する。これでホース42のホース拘束冶具1への設置が完了する(ホース42が嵌め込まれ、ストッパ部材27が係止された状態を示す図8を参照)。
引き続き、残りのホース42も、オーブン17または加硫缶から出し、第2中芯16を抜き取り、同様にホース拘束冶具1に設置し、全てのホース42の温度が室温近くになるまで放置する。
全てのホース42が室温近く(または室温以下)になるまで放冷(または冷却)されたら、図9に例示するように、ストッパ部材27を揺動アーム3の遊端3aから外し、揺動アーム3を上方に揺動操作して、ベース部2から引き離し、各ホース42を完成した燃料供給用ホース50(成形ホース)として取り出すことができる。
【0049】
尚、コロ30a、30b、30c、30dの周面(当接部の一例)は、いずれもホース42の外面を構成する円の曲率半径よりも僅かに大きな曲率半径を持った円弧状の断面を備えている。例えば、コロ30aを直径方向に沿って切断した時に得られる断面に見られる円弧状の内面の輪郭線Fは、図6に示されるように、ホース42の断面を構成する円の約半分(「少なくとも三分の一」の一例)を包含するように設定されている。残りのコロ30b、30c、30dについても同様である。従って、コロ30a、30b、30c、30dは、輪郭線Fに対応する内面を介して、ホース42の円形の外周の長さの少なくとも三分の一にわたってホース42の外面に、ホース42の外形を所望の所定形状に保持する(或いは矯正する)ための外力を加えることができ、しかも、巻き掛けられたホース42を前記内面によって左右から支持して、ホース42の断面を略円形に保つことによって、湾曲部においてホース42が平坦化する(潰れて長円化する)傾向を効果的に抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態で例として挙げた燃料供給用ホース50を対象としているホース拘束冶具1に関していえば、コロ30a、30b、30c、30dはいずれも第1軸芯X1に対して捩れるように傾斜した軸芯を備えている。各コロ30a、30b、30c、30dの軸芯どうしも平行ではなく、互いに交差するように構成されている。この構成のために、ホース拘束冶具1は、燃料供給用ホース50のような、ホースに三次元形状(成形ホースの少なくとも2つの湾曲部を含む曲がった軸芯を一つの平面内に含ませることの出来ない形状)を付与することが可能となる。
【0051】
因みに、種々の断面寸法のホースについて、90°曲げの加工(所定形状の一例)が可能か否かを、ホースの湾曲部における軸芯Pの曲率半径R(中心Rと称する場合もある)毎に判定した実験の結果を、添付した図11の図表に示す。90°曲げの加工とは、図10に例示するように、湾曲部を挟んで隣接する略直線状の部位L1、L2どうしが90°をなすように曲がった状態に成形する加工を指す。図11の図表の最も左の列に記された6から37.5の4つの数値はホースの内径D1を示す数値(mm)であり、因みに、内径D1が6mm、7.6mm、17mm、37.5mmの各ホースの外径D2はそれぞれ11mm、14mm、23mm、46mmであった。また、図11の図表の最も上の行に記された10から85の16個の数値はホース軸芯Pの曲率半径R(mm)を示す数値である。図表中の○印は円滑に成形が可能であったことを示し、△印は前記第5工程における、本加硫を終えオーブン17または加硫缶から取り出したホース42から第2中芯16を抜き取る操作を特に注意深く行えば成形が可能であったことを示し、×印は成形が不可能であったことを示す。図11の図表からは、一般的に内径D1が大きく同時に曲率半径Rが小さくなる程、90°曲げの加工が困難になる傾向が読み取られる。
【0052】
次に、図12の図表は、図11に実験結果を示した各ホースの湾曲部について、そのホース湾曲率Cを、軸芯Pの曲率半径R毎に算出した結果を示す。ここで、ホース湾曲率Cとは、ホースの湾曲部を軸芯Pに沿った切断面において、ホース外周面が形成する最も小さな円弧の半径、すなわち、図10に示す半径rを、軸芯Pが形成する円弧の半径R(曲率半径R)によって除した商(r/R)によって定義される値であり、原則的にホース湾曲率Cが小さいほど曲げ加工の困難性が高い。図12の図表に示されるホース湾曲率Cを、図11の実験結果と見比べると、本発明の製造方法とホース拘束冶具1によって成形した場合、ホース湾曲率Cが0.62以上の条件で90°曲げの加工が可能(○または△)であることが判る。
【0053】
より具体的な例としては、これらの図表から、本発明による製造方法とホース拘束冶具1を用いれば、例えば、内径が17mmの燃料供給用ホース50の場合、湾曲部の曲率半径が40mm以上であれば円滑な成形が可能であることが判る。同様に、内径が6mmの燃料供給用ホースの場合には曲率半径が20mm以上であれば、内径が7.6mmの燃料供給用ホースの場合には曲率半径が25mm以上であれば、そして、内径が37.5mmの燃料供給用ホースの場合には曲率半径が75mm以上であれば円滑な成形が可能であることが判る。
〔別実施形態〕
【0054】
<1>コロ30a、30b、30c、30dがその回転位置を調節可能に、且つ、第1軸芯X1と平行な向きに沿って位置調節可能に構成することも可能である。この構成の具体的な実現方法としては、例えば、コロ30aについて述べれば、各コロ30aを第2シャフト22bに対して回動不能に設け、さらに、第2シャフト22bを、ベース部2の側板21に対して複数の回転姿勢の間で回動可能で、且つ、ベース部2の側板21に対して左右にスライド移動可能となるように設け、同時に、選択されたいずれかの回転姿勢と左右の任意のスライド位置に固定可能にすれば良い。他のコロ30b、30c、30dについても同様な方法で回転位置を調節可能に、且つ、第1軸芯X1と平行な向きに沿って位置調節可能に構成することができる。このように構成すれば、一台のホース拘束冶具1を、互いに三次元形状が異なる複数の種類の燃料供給用ホースに適用可能となる。
【0055】
<2>コロ30a、30b、30c、30dを、例えば形状の同じ鋼製の或いは耐熱性の高い樹脂製のコロとし、この耐熱性のコロの内部に加熱手段を設けることが可能である。このように構成すれば、例えば、所定形状に対応する形状の第2中芯を内面側に挿入しての加硫(本加硫)を完全に行わず、本加硫工程の最終段階の一部を残した状態で中芯を抜き取り、ホースをホース拘束冶具1にセットし、そこでコロに設けられた前記加熱手段によってホースの湾曲部に対して残りの本加硫工程を実施し、その後、ホースの全体を冷却することで成形ホースを完成させるという使い方ができる。この方法によれば、本加硫工程を最後まで進めずに(ゴム層の柔軟性が未だ高い間に)第2中芯を抜くので、第2中芯の抜き取りをより円滑に行うことができ、結果的に、より曲がりのきつい成形ホースを作製可能となる。
【0056】
<3>ホース拘束冶具1にセットされたホースを強制冷却する手段を設けることが可能である。このように構成すれば、本加硫を終えた或いは略終えたホースの冷却を迅速に行うことができる。強制冷却する手段の具体的な形態としては、加工装置にセットされたホースの内面に冷却流体(空気などの気体または水などの液体)を流すことの可能な機構で構成することができる。特に、第1ビーム23aの突起24に、冷却用の流体を供給する孔を設けることができる。冷却用の流体として水を用いた場合、第1の突起24からホース42内に供給された冷却水は、ホース42の開放された後端から隣接する第2の突起24から対応するホース42内に供給されるという具合に、全てのホース42に対して直列状に流れ、最初の突起24に戻る循環経路を構成して、その循環経路の途中に冷却水を冷却するための手段を介装すれば良い。他方、冷却用の流体として空気を用いた場合、突起24からホース42内に供給された冷却用空気は、ホース42の開放された後端から大気中に排出されるように構成しても良い。尚、ホースの先端を固定するための突起は、ベース部ではなく揺動アーム(可動部)側に設けることも可能である。或いは、強制冷却する手段の形態としては、加工装置にセットされたホースの外面に冷却流体(空気などの気体または水などの液体)を吹き付ける機構で構成しても良い。
【0057】
<4>或いは、図13に示す形態のホース拘束冶具1Aを用いても良い。このホース拘束冶具1Aは、フロア等に載置可能な平面視で矩形のベース部52と、ベース部52に対して着脱可能な一本の丸棒部材53(可動部の一例)とを有する。ベース部52は、水平から僅かに傾斜して配置された矩形板状の第1ベース板61と、第1ベース板61の最もレベルの低い一辺から、第1ベース板61よりも強い勾配で傾斜して配置された矩形板状の第2ベース板62と、第1ベース板61の最もレベルの高い一辺から若干離間した位置で垂直に延びた係止板63とを備える。ベース部52の左右の端部には、丸棒部材53の両端を係止可能な一対の係止部材52aが配置されている。
【0058】
第1ベース板61と係止板63との間には、ホース43の先端をほぼ垂直に挿入して係止可能な縦孔63aが形成されている。また、第1ベース板61の上面には、矩形板状の第1ブロック64と第3ブロック66が、ベース部52の長手方向に沿って多数並設されている。第1ブロック64どうしの間と、第3ブロック66どうしの間とには、ホース43の直線状部分を案内する溝が形成されている。第1ブロック64が形成する案内溝と第3ブロック66が形成する案内溝とは、「く」の字状を形成するように互いに曲折しており、各第1ブロック64と第3ブロック66の間には、円柱状の第2ブロック65が配置されている。第2ベース板62の上面には、第3ブロック66と同類の第4ブロック67がベース部52の長手方向に沿って多数並設されている。
【0059】
ホース拘束冶具1Aを用いる場合、加硫缶またはオーブン内での本加硫を終えたホース43から第2中芯を抜き取ると、直ぐに、ホース43の先端を縦孔63aに差し込み、ホース43の先端よりも少し手前側の略直線状の部位を第1ブロック64どうしが形成する溝内に嵌め込み、ホース43の先端に2番目に近い第2湾曲部V2を円柱状の第2ブロック65に当接させ、第2湾曲部に続く略直線状の部分を第3ブロック66どうしが形成する溝内に嵌め込み、ホース43の後端の略直線状の部分を第4ブロック67の側面に当てる。残りのホース43も、加硫缶またはオーブンから出し、第2中芯を抜き取り、同様にホース拘束冶具1Aに設置する。次に、各ホース43の第2湾曲部V3を丸棒部材53で押さえ、丸棒部材53の両端を一対の係止部材52aに順番に差し込む。これで、多数のホース43のホース拘束冶具1Aに対する設置が完了する。第1ベース板61の端部の角が、ホース43の第1湾曲部V1を所定の湾曲状態に保持する当接部の役目を果たしている。円柱状の第2ブロック65はホース43の第2湾曲部V2を所定の湾曲状態に保持する当接部の役目を果たし、水平な姿勢で係止された丸棒部材53はホース43の第3湾曲部V3を所定の湾曲状態に保持する当接部の役目を果たす。このような構成によって、ホース43を3つの湾曲部を含む三次元形状に保持できる。
引き続き、全てのホース43の温度が室温近くになるまで放置する。
全てのホース43が室温近くになるまで放冷されたら、丸棒部材53を係止部材52aから外し、各ホース43を完成した燃料供給用ホース51(成形ホース)として取り出すことができる。
【0060】
<5>さらに、図14に示す形態のホース拘束冶具1Bを用いても良い。このホース拘束冶具1Bは、フロア等に載置可能な矩形板状のベース部材72と、ベース部材72からほぼ垂直に立設された複数の棒状の規制部材73a,73b,73c,73d,73e,73f,73g,73hと、ベース部材72の上面に設けられた幾つかのスペーサ部材74a,74bとからなる。図中で最も左側に位置する、断面が矩形の規制部材73aには、板状の補助部材75が取り付けられている。
【0061】
ホース拘束冶具1Bを用いる場合、加硫缶またはオーブン内での本加硫を終えたホース44から第2中芯を抜き取ると、直ぐに、ホース44の先端を補助部材75の垂直面に当て付けつつ、ホース44の残りの部位を、規制部材73bと規制部材73cの間、規制部材73dと規制部材73eの間、規制部材73eと規制部材73fの間、そして、規制部材73gと規制部材73hの間へと、ホース44のジグザグ状の形状に沿って差し込む。これで、最初のホース44のホース拘束冶具1Bに対する設置が完了する。このような構成によって、すなわち、平坦なベース部材72上に平面視で互い違いに配置された複数の棒状の規制部材73と、特定の位置に配置されたスペーサ74との作用で、ホース44を少なくとも3つの湾曲部を含む三次元形状に保持できる。
【0062】
引き続き、残りのホース44も、加硫缶またはオーブンから出し、第2中芯を抜き取り、先行してホース拘束冶具1Bに設置されたホース44の上に載置する形で同様にホース拘束冶具1Bに設置し、全てのホース42の温度が室温近くになるまで放置する。
全てのホース44が室温近くになるまで放冷されたら、各ホース44を一本ずつ完成した燃料供給用ホース52(成形ホース)としてホース拘束冶具1Bから取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の適用対象の一例としての燃料供給用ホースを示す略図
【図2】本発明によるホースの製造方法の第1工程及び第2工程を示す略図
【図3】本発明によるホースの製造方法の第3工程を示す略図
【図4】本発明によるホースの製造方法の第4工程を示す略図
【図5】本発明によるホースの製造方法の第5工程を示す略図
【図6】本発明によるホースの製造装置のローラとホースの関係を示す断面図
【図7】本発明によるホースの製造装置の一実施形態を示す斜視図
【図8】図7の装置の一状態を示す破断側面図
【図9】図7の装置の別の状態を示す破断側面図
【図10】90°曲げの加工試験に供されるホースの湾曲部を示す断面図
【図11】軸芯の曲率半径Rと成形可能性との関係を示す図表
【図12】軸芯の曲率半径Rとホース湾曲率との関係を示す図表
【図13】本発明によるホースの製造装置の別実施形態を示す斜視図
【図14】本発明によるホースの製造装置のさらに別の実施形態を示す斜視図
【符号の説明】
【0064】
1 ホース拘束冶具(成形ホース製造装置)
2 ベース部
3 揺動アーム(可動部)
11 第1中芯
12 第1押出し機
13 第2押出し機
14 第3押出し機
15 ドラム
16 加硫缶
17 第2中芯
18 オーブン
24 突起
25 溝状案内部
27 ストッパ部材
28 押し付け部材
30 コロ(押さえ部材、当接部)
F 輪郭線(周面、当接部)
41 ホース
42 ホース
50 燃料供給用ホース(成形ホース)
50a 内層ゴム層
50b 中間層
50c 外層
V 湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム層と前記ゴム層に積層された樹脂層とを有し、且つ、所定形状に曲げ加工された成形ホースを製造する方法であって、
前記所定形状に対応する形状の中芯を内面側に挿入した状態のホースを加硫のために加熱し、加硫後で放冷前のホースから中芯を抜き取った後、ホースの外面に外力を加える治具によってホースの外形を前記所定形状に保持しつつホースを冷却する成形ホースの製造方法。
【請求項2】
ゴム層と前記ゴム層に積層された樹脂層とを有し、且つ、所定形状に曲げ加工された成形ホースを製造する方法であって、
直線状の第1中芯を内面側に挿入した状態のホースを予備加硫のために加熱し、前記第1中芯を抜き取り、次に、前記所定形状に対応する形状の第2中芯を内面側に挿入した状態のホースを加硫のために加熱し、加硫後で放冷前のホースから前記第2中芯を抜き取った後、ホースの外面に外力を加える治具によってホースの外形を前記所定形状に保持しつつホースを冷却する成形ホースの製造方法。
【請求項3】
前記冷却に際して、前記治具はホースの外周の長さの少なくとも三分の一にわたって外力を加える請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記治具は、ホースを巻き掛け可能な周面を備えた押さえ部材からなり、前記押さえ部材の前記周面は、巻き掛けられたホースの断面をより円形に保つためにホースの両側面を支持する円弧状の断面を備える請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
ホースが少なくとも2層のゴム層を有し、前記樹脂層は前記ゴム層の間に配置された熱可塑性フッ素樹脂層からなる請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記所定形状に含まれる湾曲部をホースの軸芯に沿った切断面に関して、ホース外周面が形成する最も小さな円弧の半径を、ホースの前記軸芯が形成する円弧の半径によって除した商をホース湾曲率と定義した時、前記ホース湾曲率が0.62以上に設定されている請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
ゴム層と前記ゴム層に積層された樹脂層とを有し、且つ、所定形状に曲げ加工された成形ホースを製造するための製造装置であって、
前記所定形状に対応する形状の中芯を内面側に挿入した状態のホースを加硫のために加熱し、次に、加硫後で放冷前のホースから中芯を抜き取った後に用いられ、ホースの外形を前記所定形状に保持するためにホースの外面に外力を加える当接部を有し、前記当接部によって外形を前記所定形状に保持したままホースを室温まで冷却可能に構成された製造装置。
【請求項8】
ゴム層と前記ゴム層に積層された樹脂層とを有し、且つ、所定形状に曲げ加工された成形ホースを製造するための製造装置であって、
直線状の第1中芯を内面側に挿入した状態のホースを予備加硫のために加熱し、前記第1中芯を抜き取り、次に、前記所定形状に対応する形状の第2中芯を内面側に挿入した状態のホースを加硫のために加熱し、さらに、加硫後で放冷前のホースから前記第2中芯を抜き取った後に用いられ、ホースの外形を前記所定形状に保持するためにホースの外面に外力を加える当接部を有し、前記当接部によって外形を前記所定形状に保持したままホースを室温まで冷却可能に構成された製造装置。
【請求項9】
前記治具はホースの外周の長さの少なくとも三分の一にわたって外力を加えるように構成されている請求項7または8に記載の製造装置。
【請求項10】
前記当接部が、ホースを巻き掛け可能な押さえ部材の周面からなり、前記押さえ部材の前記周面は、巻き掛けられたホースの断面をより円形に保つためにホースの両側面を支持する円弧状の断面を備える請求項9に記載の製造装置。
【請求項11】
フロアに載置可能なベース部と、前記ベース部に対して第1軸芯周りで揺動可能に支持された可動部とを有し、前記ベース部と前記可動部の一方に少なくとも2つの押さえ部材が設けられており、前記ベース部と前記可動部の他方に前記少なくとも2つの押さえ部材の間にホースの一部を押し込み可能な少なくとも1つの押さえ部材が設けられている請求項7から10のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項12】
前記押さえ部材の軸芯が前記第1軸芯に対して傾斜して設けられている請求項11に記載の製造装置。
【請求項13】
前記押さえ部材がその回転位置を調節可能に、且つ、前記第1軸芯と平行な向きに沿って位置調節可能に構成されている請求項11または12に記載の製造装置。
【請求項14】
前記押さえ部材に加熱手段が設けられている請求項10から13のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項15】
前記所定形状に保持されたホースを強制冷却する手段が設けられている請求項7から14のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項16】
前記ベース部と前記可動部の前記一方か前記他方に、ホースの内面に嵌り込むことでホースの一端を固定するための突起が設けられており、前記突起にホースを内面側から強制冷却するための流体を供給する孔が設けられている請求項15に記載の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−123206(P2006−123206A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311147(P2004−311147)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000145471)株式会社十川ゴム (28)
【Fターム(参考)】