説明

成形体の離型装置

【課題】超音波振動装置によって適切な周波数を付与しながら成形体の離型を行う離型装置を提供する。
【解決手段】
離型装置1は、パンチ2と、金型3と、突き出し機構4と、超音波振動子5aを有した超音波振動装置5と、を備える。金型3には、例えば金属粉末6が充填されかつパンチ2によって金属粉末6が押し固められる金型内空間が設けられている。突き出し機構4は、金型3に設けられた貫通孔3cに挿通された突き出し部4aによって金型内空間3aから金属粉末6を外方に突き出す。超音波振動子5aは、金型3の外壁部3dに取り付けられ、超音波振動装置5の周波数は、金型3の共振周波数である。また、超音波振動装置5の周波数が既定値であった場合には、金型3は、金型3の共振周波数が超音波振動装置5の既定周波数になるように金型3が設計変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の離型技術に関するものであり、より詳しくは、粉末冶金または射出成形の製法により成形された成形体を超音波振動によって離型する成形体の離型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属粉末成形品や樹脂材料成形品(例えば、プラスチック製品)を製造するために、量産性の良さから粉末冶金や射出成形の技術が用いられている。
【0003】
しかしながら、これらの製造過程において、金型から成形品を分離することが困難な場合が多い。
【0004】
この問題を解決するために、従来は、離型剤を塗布したり、金型から成形品を抜きやすくするよう金型の内空間(キャビティ)に抜き勾配を付与したりして対処されている。
【0005】
しかしながら、離型剤の塗布のみでは、関連し合う金型と成形品との接着性を断つのみであり、くさび効果のような機械的な抑圧状態を解放することは困難であった。また、最近では、製品形状に関して高精度な仕様が要求されており、くさび効果の開放に十分な抜き勾配を金型内空間に付与することが許容されない状況に置かれている。
【0006】
一方、特許文献1又は特許文献2に、プレス成形又は射出成形の離型工程において、成形品の離型性を向上させるために、超音波振動装置によって金型や金型の入れ子に超音波振動を付与する技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、離型性を最適にする超音波振動の周波数については特に言及はなく、適切な周波数を付与していない場合には、離型性向上の効果を十分得られないばかりか、該周波数で成形品を共振させてしまうこともあり、ひいては円滑な離型を阻害し、成形品自体に衝撃を与えてしまう結果となりかねない。
【0008】
また、実際に利用可能な市販の超音波振動装置では発生可能な周波数は固定されており、周波数を適宜変更することは容易でない。
【特許文献1】特開2002−104831号公報
【特許文献2】特開2008−201122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、以上のような成形品の離型装置における問題点や欠点を改善し、超音波振動装置によって適切な周波数を付与しながら成形体の離型を行う離型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討の末、超音波振動装置が、金型内で成形された成形体を共振させず、金型のみを共振させる周波数を金型に付与できれば、成形品に衝撃を与えることなく金型から離型することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明では次の1〜6の構成をとるものである。
1.パンチと、金型と、突き出し機構と、超音波振動子を有した超音波振動装置と、を備えた金属粉末成形体の離型装置であって、
前記金型には、金属粉末が充填されかつ前記パンチによって該金属粉末が押し固められる金型内空間が設けられ、
前記超音波振動子は、前記金型の外壁部に取り付けられ、
前記金型内空間に押し固められた前記金属粉末成形体を離型するときに、前記超音波振動子によって前記金型を超音波加振しながら前記突き出し機構によって前記金属粉末成形体を外方に突き出し、
前記超音波振動装置の周波数は、前記金型の共振周波数でありかつ前記成形体の共振周波数ではないことを特徴とする成形体の離型装置。
2.前記超音波振動装置の前記周波数が既定値であり、かつ、
前記金型は、前記金型の前記共振周波数が前記超音波振動装置の前記周波数になるように該金型の形状、寸法、又は材質が調整されて設計されていることを特徴とする前記1に記載の金属粉末成形体の離型装置。
3.前記金型の設計に有限要素法による数値解析が利用されていることを特徴とする前記2に記載の金属粉末成形体の離型装置。
4.可動金型と、固定金型と、突き出し機構と、超音波振動子を有した超音波振動装置と、を備えた樹脂材料成形体の離型装置であって、
前記固定金型には、樹脂材料が射出充填されかつ前記可動金型によって該樹脂材料が押し固められる金型内空間が設けられ、
前記超音波振動子は、前記金型の外壁部に取り付けられ、
前記金型内空間に押し固められた前記樹脂材料成形体を離型するときに、前記超音波振動子によって前記金型をに超音波加振しながら前記突き出し機構によって前記金属粉末成形体を外方に突き出し、
前記超音波振動装置の周波数は、前記金型の共振周波数でありかつ前記成形体の共振周波数ではないことを特徴とする成形体の離型装置。
5.前記超音波振動装置の前記周波数が既定値であり、かつ、
前記金型は、前記金型の前記共振周波数が前記超音波振動装置の前記周波数になるように該金型の形状、寸法、又は材質が調整されて設計されていることを特徴とする前記4に記載の樹脂材料成形体の離型装置。
6.前記金型の設計に有限要素法による数値解析が利用されていることを特徴とする前記5に記載の樹脂材料成形体の離型装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0013】
本発明によれば、金型に取り付けられた超音波振動装置が加振する周波数は金型の共振周波数に設定されているため、金型を著しく振動させ、つまり、共振させることが可能である。また、通常は、金型の共振周波数と成形体その他の部品の共振周波数とは異なるので、成形体等を共振させることはない(また、共振周波数が同一にならないように金型は設計される)。これにより、離型の際、成形体に衝撃を与えることなく、しかも金型と成形体との間の摩擦係数を低減することができ、ひいては円滑な離型を実現し、高品位な成形品を製造することが可能となる。
【0014】
また、本発明においては、金型を、利用可能な市販の超音波振動装置の設定周波数に適合するようにその形状、寸法、又は材質を調整して設計してもよく、超音波振動装置を特に選択、改良する必要がないまま、本発明の離型装置に適用することができる。
【0015】
また、本発明においては、金型の共振周波数が超音波振動装置の設定周波数に適合するように金型を設計する際に、数値解析シミュレーションを適宜利用してもよく、金型のジオメトリ(寸法や形状)や材質を容易に特定(調整)することが可能である。従って、本発明を適用できる成形品の範囲は格段に広くなるとともに、金型設計上のコスト、ひいては本発明の離型装置の製造コストを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、本発明は、下記の具体的な実施態様に何等限定されるものではない。なお、各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
【0017】
[本発明の離型装置の構成]
図1は、本発明の成形体の離型装置1の概略を示す。図示の離型装置1は、粉末冶金への適用を意図したものであり、具体的には金属粉末成形体の離型装置1である。
【0018】
図1に示すように離型装置1は、パンチ2と、金型3と、突き出し機構4と、超音波振動子5aとアンプ5bとを有した超音波振動装置5と、を備えている。
【0019】
金型3の材質としては、超硬合金のV10、V20、及びV30(いずれもJIS規格)、高合金工具鋼のSKD11及びSKD61、NAK55及びNAK80(析出硬化系鋼、大同特殊鋼株式会社製のプラスチック金型用鋼)、耐摩耗・耐衝撃工具用鋼のG5及びG8、又はステンレス鋼SUS304等が挙げられる。
【0020】
また、金型3には金型内空間(キャビティ)3aが設けられ、この金型内空間3aに金属粉末(パウダー)6が投入・充填され、パンチ2によって金属粉末6が押し固められる。なお、投入用の金属粉末6は図示しないホッパー等の貯蔵庫に貯蔵しておいて金型内空間3aへ必要量だけ適宜投入するようにしてもよいし、ある程度塊状になった金属粉末を手動で投入するようにしてもよい。さらに、金型3には、金型3の底面から金型内空間3aの底面3b間に貫通孔3cが配設されている。
【0021】
また、突き出し機構4には、突き出し部4a(例えば、ノックピン)が設けられている。突き出し部4aは、金型3の上下方向に移動可能な状態で金型3の貫通孔3cに挿通されている。この突き出し機構4は、例えば、油圧や電磁力等を利用した公知の駆動機構によって駆動されるように構成されていてもよい。そして、金型内空間3aにおいて金属粉末6の投入・充填・押圧(圧縮・固化)が終了すると(図1(a)及び(b)を参照)、超音波振動装置5によって金型3を超音波加振しながら、突き出し機構4によって金型内空間3aの底面3bから金属粉末成形体6を外方(上方向)に突き出すことで、金属粉末成形体6の離型を行う(図1(c)を参照)。
【0022】
また、超音波振動装置5の超音波振動子5aはその加振面が金型3の外壁部3cに取り付けられており、これにより、金型3に超音波振動を与えることが可能となり、成形体6が金型3から離型し易くなる。
【0023】
しかしながら、付与する振動の周波数には注意を払うべきである。例えば、金型内空間3aが複雑な形状をなすとともに、超音波加振周波数の値が金型3の共振周波数(固有振動数)に設定されていない場合には、金型3と成形体6との機械的抑圧状態(くさび効果)を開放するのに十分な振動を金型3に付与できなくなる恐れがある。また、超音波加振周波数の値が、成形体6や離型装置1を構成するその他の構成部品の共振周波数(固有振動数)と重なっていた場合には、離型時に誤って成形体6に衝撃を与えてしまう恐れがある。
【0024】
そこで、本発明では、超音波振動装置5の超音波加振周波数を金型3の共振周波数のみに設定し、離型装置1の離型時に超音波振動装置5が圧縮・固化した成形体6を共振させはしないが、金型3のみを共振させるようにした。これにより、成形体6には衝撃を与えることがないばかりか、金型内空間3aと成形体6との間の摩擦係数を著しく低減することができるので、成形体6を金型3から円滑に離型することが可能となる。
【0025】
以上のように、超音波振動装置5は、超音波加振周波数を金型3の共振周波数に合致させておくことが肝要であり、金型3の共振周波数は、例えば、以下に示すように有限要素法による数値解析(振動モード解析)により求められる。
【0026】
[金型の共振周波数の数値解析]
図2は、有限要素法数値解析の解析モデル(a)と解析結果(b)及び(c)との一例を示す。図2(a)の解析モデルには、直径φ30mmの超硬合金V10(JIS規格)の金型3と、直径10mm及び厚み2mmのステンレス粉末6と、を想定した。なお、金型3に金属内空間3aが設けられており、ステンレス粉末6が上記寸法で押し固められるように金属内空間3aも同寸法に設定されている。
【0027】
図2(b)と(c)は、図2(a)の解析モデルを用いて数値解析を行った結果であり、図2(b)は50144Hz(約50.1kHz)での金型3の共振モードを示し、図2(c)は65176Hz(約65.2kHz)での金型3の共振モードを示す。
【0028】
図2(b)に示すように、例えば、金型3の外壁部3cの近傍(金型上面の外周部、図中A参照)は配色が濃くなっているのがわかる。さらに、その内側に向かうに従い配色が薄くなり(図2(b)中、Bを参照)、さらに金型内空間3aの内周面や底面3bに至ると再度配色が濃くなっているのがわかる(図2(b)中、Cを参照)。これは実際のコンピュータ上の解析表示画面で確認すると、図中AからCに向かうに従い、濃い赤色(共振状態)、黄色、黄緑、濃い青色(共振なし)となっている。つまり、金型3が50144Hzの振動状態に置かれると、成形体たるステンレス粉末6が載置される金属内空間3aの底面3bでは共振が全く起こらず、金型3の上面やその外周部に向かうに従って振動振幅が大きな共振を起こしていることがわかる。
【0029】
図2(c)の共振モード結果では、図2(b)の結果と同様に、金型3の外壁部3cの近傍(図2(c)中、Aを参照)や金型の底部(ベース部)の一部(図2(c)中、Aを参照)が、その他の部分と比較して濃い配色(実際は赤色)となっており、その他部分は薄い配色(実際は黄色もしくは黄緑色)となっている。加えて、金型内空間3aの内周面
やその底面3b(図2(c)中、Cを参照)は濃い色の配色であるが、実際の解析画面上では濃い青色となっている。なお、図2(c)では共振(変形)状態が視覚的にも確認できる。従って、金型3が65176Hzの振動状態に置かれると、成形体たるステンレス粉末6が載置される金属内空間3aの底面3bは共振が全く起こらず、金型3の上面やその外周部に向かうに従って振動振幅が比較的に大きな共振を起こしていることがわかる。(なお、図2の解析結果は、拡大率を大きくして変形度を強調している。)
【0030】
以上の結果より、図1に示すような本発明の離型装置1の超音波装置5を用いて、50144Hzもしくは65176Hzの周波数で上記ジオメトリ(寸法、形状、材質等)の金型3を加振させれば、金型3(具体的には金型3の一部)のみを共振させ、圧縮・固化した成形品自体を共振させないでおくことができる。
【0031】
なお、上述の例では、金型3の共振周波数として、50144Hz及び65176Hzの値が得られた。これらの周波数のいずれかの値になるように超音波振動装置5を設定して金型3を超音波加振すればよいことになる。ただし、周波数が低い方が金型3の振幅をより大きくすることができ、また、周波数をより高く設定するには、超音波振動装置5等の装置に掛かるコストが上昇する。従って、加振効果及びコスト面の観点からは、50144Hzの値が、超音波加振周波数として好ましい。
【0032】
これにより、離型時には、成形品6に衝撃を与えることなく、しかも金型内空間3aと成形品6との間の摩擦係数を低減させ、成形品6を円滑かつ容易に離型することが可能になる。なお、加振する周波数が高くなればその振幅も必然的に小さくなるので、金型3の共振現象が成形体6に与える影響が極めて小さくなる。従って、周波数の高くした超音波加振は離型現象(特に、高品質・高精度な製品の離型)に極めて有効に作用する。上述したように、これらの最適加振周波数は、有限要素法解析によるコンピュータシミュレーションを利用すれば容易に計算することが可能である。
【0033】
一方、本発明の実際上の実施を想定すると、利用可能な市販の超音波振動装置5には、発生可能な周波数が固定化されているものが多く、周波数の設定変更が可能な装置であっても、周波数を微修正できる仕様となっているものは殆ど存在しない。そこで、本発明の別の実施態様においては、超音波振動装置5の加振周波数を金型3の共振周波数に調節するのではなく、逆に、金型3の共振周波数(固有振動数)を、市販の超音波振動装置5の加振周波数に適合するように金型3のジオメトリを調整するように金型3を設計変更することとした。
【0034】
以下に金型3の設計変更の一例を示す。例えば、上述した解析モデルで想定した金型モデルでは、50144Hzの共振周波数を超音波振動装置5で付与したいにも拘わらず、市販の超音波振動装置5において45kHz(45000Hz)の共振周波数しか出力できない場合がある。この場合、図3に示すように、例えば、金型3の外側円筒部分の直径をφ30mm(図3(a)参照)からφ20mm(図3(b)参照)に設計変更することで、金型3の共振周波数が45000Hzにすることができる。このように対応することにより、市販の超音波振動装置5で本発明の離型装置1を実現することが可能となる。
【0035】
以上、粉末冶金における金属粉末成形体の離型装置1の構成及び作用効果について詳述した。一方、射出成形によって製作される樹脂材料成形体(例、プラスチック製品)においても粉末冶金と同様に離型に関する問題があったが、本発明は、粉末冶金の離型技術に限定されず、樹脂材料射出成形体の離型装置にも適用可能である。この場合の離型装置の構成は図示しないが、図1のパンチ2及び金型3は、可動金型及び固定金型に代替されるものとなろう。なお、超音波振動子5aは、図1の実施例と同様に固定金型の外壁部に取り付けてもよいが、これに限定されず可動金型の外壁部、又は固定金型及び可動金型双方の外壁部に取り付けるように構成してもよい。
【実施例】
【0036】
以下に本発明の離型装置1を実際に製作して作用効果を確認した実施例を幾つか示す。まず、第1の実施例として、金型内空間3aとしてφ10mmの内周面を有した超硬合金V10製の金型3が設けられた離型装置1(粉末冶金用)を製作して、ステンレス粉末成形体6の離型を行った。この結果、直径φ10mm及び厚さ2mmのステンレス粉末製のフィレットを無傷の状態のまま容易に取り出すことができた。
【0037】
別の実施例(第2の実施例)として、金型内空間3aとして10mm×20mm×5mmのリレー用樹脂コネクター射出成形用キャビティを有したダイス鋼(高合金工具鋼SKD)製の金型3に対しても本発明の離型装置を適用した。なお、上記金型は従来の方法で離型した際には、抜き勾配が小さく取り出しが非常に困難であったが、本発明の離型装置を上記金型に適用すると、射出成形された樹脂コネクターを難なく取り出すことができた。
【0038】
なお、上述の本発明の離型装置は、金属粉末を成形する粉末冶金(装置)、樹脂材料を成形する射出成形装置、又は粉末冶金と射出成形を組み合わせた金属粉末射出成形(Metal Injection Molding)装置に適用できる。
【0039】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0040】
本発明によれば、金型に取り付けられた超音波振動装置が加振する周波数は金型の共振周波数に設定されているため、金型を著しく振動させ、つまり、共振させることが可能である。また、通常は、金型の共振周波数と成形体その他の部品の共振周波数とは異なるので、成形体等を共振させることはない。これにより、離型の際、成形体に衝撃を与えることなく、しかも金型と成形体との間の摩擦係数を低減することができ、ひいては円滑な離型を実現し、高品位な成形品を製造することが可能となる。
【0041】
また、本発明においては、金型を、利用可能な市販の超音波振動装置の設定周波数に適合するようにその形状、寸法、又は材質を調整して設計してもよく、超音波振動装置を特に選択、改良する必要がないまま、本発明の離型装置に適用することができる。
【0042】
また、本発明においては、金型の共振周波数が超音波振動装置の設定周波数に適合するように金型を設計する際に、数値解析シミュレーションを適宜利用してもよく、金型のジオメトリ(寸法や形状)や材質を容易に特定(調整)することが可能である。従って、本発明を適用できる成形品の範囲は格段に広くなるとともに、金型設計上のコスト、ひいては本発明の離型装置の製造コストを抑制することが可能となる。
【0043】
本発明は前記実施例に限定されることなく、特許請求の記載した発明の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、上述の実施態様では本発明の離型装置の突き出し機構を金型(固定金型)内に設けていたが、金型と対向するパンチ(可動金型)内に設置する構成にしてもよく、これらの変形例も本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の離型装置の構成及び離型方法の各工程を示した図であり、図1(a)、(b)、及び(c)は、それぞれ、金属粉末の充填工程、押圧・成形工程、及び離型工程を示す。
【図2】本発明の有限要素法数値解析による金型の挙動を示した図であり、図2(a)は解析モデルを示し、図2(b)及び(c)は解析結果を示す。
【図3】本発明の金型の設計変更の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0045】
1 離型装置
2 パンチ(可動金型)
3 金型(固定金型)
3a 金型内空間(キャビティ)
3b 金型内空間の底面
3c 貫通孔
3d 金型の外壁部
4 突き出し機構
4a 突き出し部
5 超音波振動装置
5a 超音波振動子
5b アンプ
6 金属粉末、樹脂材料、又はこれらの成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチと、金型と、突き出し機構と、超音波振動子を有した超音波振動装置と、を備えた金属粉末成形体の離型装置であって、
前記金型には、金属粉末が充填されかつ前記パンチによって該金属粉末が押し固められる金型内空間が設けられ、
前記超音波振動子は、前記金型の外壁部に取り付けられ、
前記金型内空間に押し固められた前記金属粉末成形体を離型するときに、前記超音波振動子によって前記金型を超音波加振しながら前記突き出し機構によって前記金属粉末成形体を外方に突き出し、
前記超音波振動装置の周波数は、前記金型の共振周波数でありかつ前記成形体の共振周波数ではないことを特徴とする成形体の離型装置。
【請求項2】
前記超音波振動装置の前記周波数が既定値であり、かつ、
前記金型は、前記金型の前記共振周波数が前記超音波振動装置の前記周波数になるように該金型の形状、寸法、又は材質が調整されて設計されていることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末成形体の離型装置。
【請求項3】
前記金型の設計に有限要素法による数値解析が利用されていることを特徴とする請求項2に記載の金属粉末成形体の離型装置。
【請求項4】
可動金型と、固定金型と、突き出し機構と、超音波振動子を有した超音波振動装置と、を備えた樹脂材料成形体の離型装置であって、
前記固定金型には、樹脂材料が射出充填されかつ前記可動金型によって該樹脂材料が押し固められる金型内空間が設けられ、
前記超音波振動子は、前記金型の外壁部に取り付けられ、
前記金型内空間に押し固められた前記樹脂材料成形体を離型するときに、前記超音波振動子によって前記金型を超音波加振しながら前記突き出し機構によって前記金属粉末成形体を外方に突き出し、
前記超音波振動装置の周波数は、前記金型の共振周波数でありかつ前記成形体の共振周波数ではないことを特徴とする成形体の離型装置。
【請求項5】
前記超音波振動装置の前記周波数が既定値であり、かつ、
前記金型は、前記金型の前記共振周波数が前記超音波振動装置の前記周波数になるように該金型の形状、寸法、又は材質が調整されて設計されていることを特徴とする請求項4に記載の樹脂材料成形体の離型装置。
【請求項6】
前記金型の設計に有限要素法による数値解析が利用されていることを特徴とする請求項5に記載の樹脂材料成形体の離型装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−120080(P2010−120080A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298894(P2008−298894)
【出願日】平成20年11月24日(2008.11.24)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】