説明

成形加工用樹脂被覆アルミニウム板及びその製造方法

【課題】 プレス成形性に優れると共に、接着性能およびアルカリ脱脂脱膜性を確保できる成形加工用樹脂被覆アルミニウム板を提供する。
【解決手段】 アルミニウム板又はアルミニウム合金板表面に樹脂塗膜が設けられた成形加工用樹脂被覆アルミニウム板において、前記樹脂塗膜は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂のうちの1種又は2種以上を含むアルカリ可溶性樹脂中にリン酸亜鉛微粒子及びワックスが均一に分散した樹脂塗膜であり、前記ワックスの量が0.03〜0.12g/mであり、前記リン酸亜鉛微粒子の粒径が0.01〜1μmであり、前記アルカリ可溶性樹脂に対する前記リン酸亜鉛微粒子の配合比が5.3〜300重量%であり、かつ、前記アルカリ可溶性樹脂と前記リン酸亜鉛微粒子の合計固形分量に対する前記ワックスの配合比が2〜15重量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形加工されて缶エンド材、缶ボディ材、電気電子機器部材、自動車用ボディ材又は建材などに用いられる樹脂被覆アルミニウム板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム板及びアルミニウム合金板(以下、総称してアルミニウム板という)は、耐食性が良好で軽量であることから、飲料缶材料、建材、電気及び電子部品を含む家電材並びに自動車材等の用途に広く適用されている。アルミニウム板を前記用途に適用する場合は、通常、アルミニウム板を所定の形状にプレス成形して適用する。アルミニウム板のプレス成形は、プレス機に枚葉状のシートを1枚ずつ供給して行う方法と、プレス機にコイル状のアルミニウム板を連続的に供給して行う方法とがあり、後者は生産性に優れた製造方法として前記用途の事業分野において広く採用されている。また、前記用途のアルミニウム板は、耐食性のより一層の向上、外観の向上及びキズ付きの防止等を目的として、プレス成形後に表面に塗装を施されて使用されることが多い。
【0003】
このプレス成形に際して、成形加工性を向上させるために潤滑性を有する被膜をアルミニウム板表面に設ける方法が提案されている。例えば、特許文献1では、塗膜等の表面処理皮膜上にパラフィンワックスを融点以上の温度で塗布する方法が提案されている。また、特許文献2では、クロメート処理後ウレタン、エステル、エポキシ系樹脂にシリカゾル5〜30%、ワックスが5〜20%含有有機組成物を塗布して、1〜10g/mの被膜を形成させる方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、アルミニウム板を接着等によって組み立てて製品形状とする場合には、このようにワックスを含有する被膜を形成したアルミニウム板を用いると、アルミニウム板表面の被膜によって接着剤の油分が十分に吸収されず、接着性を低下させることがある。
【0005】
また、プレス成形後に塗装を施す場合には、塗装前に潤滑塗膜をアルカリ脱脂等によって除去することが不可欠である。この際の脱膜性が不足していると、潤滑被膜が十分に除去されず、その後の塗装が良好に行えなくなる。
【0006】
かかる事情を考慮した表面被覆アルミニウム材として、特許文献3に、粒径0.1〜10μm、粒子密度10〜10個/mのアルミニウム以外の金属微粒子及び酸化物、水酸化物を陰極電解法又は無電解法で付着させ、更に5〜500nmの有機皮膜を被覆させる方法が開示されている。しかし、このようにして形成された被膜には潤滑性に大きく寄与するワックスが含まれないため、より過酷な張り出し成形と絞り成形性が要求される場合には十分なプレス成形性を得ることができない。
【特許文献1】特開平6−254490号公報
【特許文献2】特開平6−55137号公報
【特許文献3】特開平10−34079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上のように、従来の表面被覆アルミニウム板においては、プレス成形を良好に行うことのできる十分な潤滑性を与えようとすると、他部材との接着時に接着性が損なわれたり、プレス成形後の工程におけるアルカリ脱脂脱膜性が低下したりする問題があった。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、プレス成形性に優れると共に、接着性能およびアルカリ脱脂脱膜性を確保できる成形加工用樹脂被覆アルミニウム板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の成形加工用樹脂被覆アルミニウム板は、
アルミニウム板又はアルミニウム合金板表面に樹脂塗膜が設けられた成形加工用樹脂被覆アルミニウム板において、
前記樹脂塗膜は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂のうちの1種又は2種以上からなるアルカリ可溶性樹脂に、リン酸亜鉛微粒子及びワックスが均一に分散した樹脂塗膜であり、
前記ワックスの量が0.03〜0.12g/mであり、前記リン酸亜鉛微粒子の粒径が0.01〜1μmであり、
前記アルカリ可溶性樹脂に対する前記リン酸亜鉛微粒子の配合比が5.3〜300重量%であり、
かつ、前記アルカリ可溶性樹脂と前記リン酸亜鉛微粒子の合計固形分量に対する前記ワックスの配合比が2〜15重量%であることを特徴とする成形加工用樹脂被覆アルミニウム板である。
【0010】
前記樹脂塗膜の被覆量が0.2〜1.5g/mであることとすれば、より好ましい。
【0011】
また、本発明の成形加工用樹脂被覆アルミニウム板の製造方法は、
ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂のうちの1種又は2種以上からなるアルカリ可溶性樹脂に、前記アルカリ可溶性樹脂に対して重量比5.3〜300%のリン酸亜鉛微粒子及び前記アルカリ可溶性樹脂と前記リン酸亜鉛の合計固形分量に対して重量比2〜15%のワックスを均一に分散させて樹脂塗料を作製する工程と、
前記樹脂塗料をアルミニウム板又はアルミニウム合金板表面にロールコーター法により塗布する工程と、
を含むことを特徴とする成形加工用樹脂被覆アルミニウム板の製造方法である。
【0012】
前記樹脂塗料の塗布量が0.2〜1.5g/mであることとすれば、より好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プレス成形性に優れると共に、塗膜密着性及び接着性能にも優れ、かつ、アルカリ脱脂での脱膜性を確保できる成形加工用樹脂被覆アルミニウム板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に用いるアルミニウム板又はアルミニウム合金板の種類は特に限定されるものではないが、JIS A1100等の純アルミニウム系合金板、JIS A3004等のAl−Mn系合金板、JIS A5182等のAl−Mg系合金板、JIS A6063等のAl−Mg−Si系合金板等を用いることができる。なお、以下において、アルミニウム板及びアルミニウム合金板を総称して「アルミニウム板」と呼ぶ。
【0015】
本発明の成形加工用樹脂被覆アルミニウム板は、アルミニウム板表面に、以下に述べる樹脂塗膜が設けられたものである。この樹脂被覆塗膜量が0.2g/m以下では、成形金型とアルミニウム面とが接触し易くなる結果、座屈やカジリといった成形不良が発生し易くなることがある。また、1.5g/mを超えると、プレス成形性がそれ以上向上せず、コストアップ要因となる。そのため、樹脂塗膜量は、0.2〜1.5g/mの範囲であることが好ましい。
【0016】
なお、アルミニウム板表面のMg(主に水酸化物等の形で存在する)が多いと樹脂塗膜の密着性が悪くなるので、表面のMg量を抑制することが好ましい。アルミニウム板表面のMgは、GDS(グロー放電発光分析)にて最大発光強度を測定することにより評価することができ、本発明においては、Mgの最大発光強度が2V以下となることが好ましい。
【0017】
アルミニウム板表面に設ける樹脂塗膜は、水溶性かつアルカリ可溶性を有する高分子樹脂中に、リン酸亜鉛微粒子及び潤滑成分であるワックスが均一に分散したものである。
【0018】
高分子樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂のうちの1種又は2種以上からなる樹脂を用いることができる。なお、これらの樹脂の中でも、水溶性・アルカリ可溶性を有するものを選ぶものとする。このような水溶性かつアルカリ可溶性の高分子樹脂を樹脂塗膜に用いることで、後にアルミニウム板に塗装を施して使用する場合に、前処理として行うアルカリ脱脂での脱膜性を良好にすることができる。
【0019】
樹脂塗膜に添加するリン酸亜鉛微粒子の粒径は0.01〜1μmとし、アルカリ可溶性樹脂とリン酸亜鉛微粒子の重量比は25:75〜95:5とする(すなわち、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対し、リン酸亜鉛微粒子が5.3〜300重量部)。リン酸亜鉛微粒子の粒径及び量をこのような範囲とすることによって、樹脂塗膜の表面に凹凸が形成され、樹脂被覆アルミニウム板を相互に接着あるいは外部の部材と接着する際にアンカー効果が働き、優れた接着性能を得ることができる。
【0020】
リン酸亜鉛微粒子の粒径が0.01μ未満では、樹脂塗膜形成後の塗膜表面に凹凸が形成されないため、接着性能が低下する。一方、粒径が1μmを超えると、塗膜表面から飛び出したリン酸亜鉛微粒子が過剰に存在するようになり、プレス成形性の低下を招くこととなる。また、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対してリン酸亜鉛微粒子が5.3重量部より小さいと、塗膜表面に凹凸が形成されないため、接着性能が低下する。一方、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対してリン酸亜鉛微粒子が300重量部より大きいと、樹脂成分量が不足し、プレス成形時の塗膜伸びが確保されないために成形性が低下すると共に、アルミニウム板表面における塗膜密着性が劣ることとなる。
【0021】
樹脂塗膜に添加するワックスとしては、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、ラノリンワックス、クリスタリンワックス等を用いることができ、その量は0.03〜0.12g/mとする。アルカリ可溶性樹脂とリン酸亜鉛微粒子の合計固形分量に対する前記ワックスの重量比は、2〜15%とする。ワックス量が0.03g/m以下では、潤滑性が不足するため、十分なプレス成形性が確保されない。一方、ワックス量が0.12g/mを超えると、プレス成形性がそれ以上向上しないばかりか、樹脂被覆アルミニウム板を相互に接着あるいは外部の部材と接着する際に接着剤にワックスや油分が十分に吸収されず、接着性能が低下するため好ましくない。
【0022】
本発明の樹脂被覆アルミニウム板を製造する際のアルミニウム板表面への樹脂塗膜形成方法としては、種々の方法を用いることができ、例えばロールコーター法、ロールスクイズ法、ケミコーター法、浸漬法、スプレー法等を用いることができる。これらの方法の中でも、塗膜の均一性に優れ、生産性が良好なロールコーター法が特に好ましい。ロールコーター法としては、塗布量管理が容易なグラビアロール方式や、厚塗りに適したナチュラルコート方式、塗布面に美的外観を付与するのに適したリバースコート方式等を採用することができる。
【0023】
アルミニウム板表面に樹脂塗膜を形成した後、乾燥を行う。乾燥は、熱風炉、赤外炉、誘導加熱炉などにより行うことができるが、中でも特に、電気ヒーター,燃焼ガス等により間接的に加熱した空気等を用いる熱風炉が好ましい。
【0024】
〔実施例1〕
次に、本発明の実施例1について説明する。アルミニウム板として、最終熱処理を行ったJIS A5182−O(0.8mm厚さ)を用意した。樹脂塗膜形成の前処理として、アルカリ脱脂(日本ペイント製EC−371に、60℃×5秒間浸漬)→水洗(室温で15秒間。スプレー圧1.5kg/cm)→酸洗(10wt%のHSO(30℃)に5秒間浸漬)→水洗(室温で15秒間。スプレー圧1.5kg/cm)→純水洗浄→熱風乾燥の工程で処理を行った。この工程を経たアルミニウム板から幅50mm×長さ60mmの測定試料を切り出し、表面のMg量を、GDSにて最大発光強度を測定することにより求めた。
【0025】
GDS装置は、堀場製作所製JY5000RFを用いた。Mg量の測定条件は、アルゴンガスで置換後の圧力を600Paとし、出力30W、モジュール650、フェーズ350、アノード径4mmφとした。また、Mg検出波長を384nm、Mg感度を750Vとした。測定試料の酸化皮膜表面層から、スパッタ時間1秒以内でスパッタされるMgの最大ピーク高さを発光強度(V)として測定した。
【0026】
次に、水溶性・アルカリ可溶性を有するウレタン樹脂に、粒径及び配合量を種々変えたリン酸亜鉛微粒子と、配合量を種々変えた融点105℃のポリエチレンワックスを均一に含有させた樹脂塗料を作製した(表1)。これらの樹脂塗料をアルミニウム板にロールコーターにて塗布し、PMT(板到達温度)115℃、在炉時間30秒間で乾燥を行い、性能評価用の試験片とした。
【0027】
上のようにして得られた樹脂被覆アルミニウム板の性能として、プレス成形性(絞り性)、プレス成形性(カジリ性)、接着性能及びアルカリ脱脂脱膜性を評価した。
【0028】
(1)プレス成形性(絞り性)
試験片に市販の潤滑油(油研工業製RP−75N)を0.5g/m塗油後、ポンチ径50mmφ、肩R5mmの金型にて、BHF(しわ押さえ荷重)600N、成形速度5mm/秒で深絞り成形を行い、限界絞り比(LDR)を求めた。評価・判定基準は以下のとおりとした。
【0029】
○:LDR 2.1以上 合格
△:LDR 1.9〜2.0 不合格
×:LDR 1.89以下 不合格
【0030】
(2)プレス成形性(耐カジリ性)
試験片に市販の潤滑油(油研工業製RP−75N)を0.5g/m塗油後、バウデン式磨耗試験機を用い、試験荷重500gf,摺動速度0.6mm/秒,鋼球直径=3/16インチの条件にて、50往復目の動摩擦係数(μ)を測定した。評価・判定基準は以下のとおりとした。
【0031】
○:μ 0.1以下 合格
△:μ 0.1以上 不合格
×:50往復未満で、かじり発生 不合格
【0032】
(3)接着性能
試験片を1mm厚さ×25mm幅×150mm長さに切断し、市販の潤滑油(油研工業製RP−75N)を浸漬塗油後、1日室温放置し、構造用接着剤(サンスター製#1086)で接着面積25mm×10mm、接着剤厚さ0.2mmにて接着を行い、180℃×20分の加熱処理を施した。これらについて、25mm/分の引張り速度で引張り試験を行い、せん断強さを測定した。評価・判定基準は以下のとおりとした。
【0033】
◎:せん断強さ 19MPa以上 合格
○:せん断強さ 17MPa以上 19MPa未満 合格
×:せん断強さ 17MPa未満 不合格
【0034】
(4)アルカリ脱脂脱膜性
市販の潤滑油(油研工業製RP−75N)を0.5g/m塗油後、市販のアルカリ脱脂剤(日本パーカライジング製FC−E3003、COによりpH=11に調整)に40℃×2分間浸漬後、30秒間水洗を行った後の水濡れ面積で、アルカリ脱脂脱膜性を評価した。評価・判定基準は以下のとおりとした。
【0035】
◎:水濡れ面積 100% 合格
○:水濡れ面積 90%以上100%未満 合格
×:水濡れ面積 90%未満 不合格
【0036】
表2に、実施例1の評価・判定結果を示す。本発明例1〜11の樹脂被覆アルミニウム板は、アルミニウム板表面のMg量を反映するGDS発光強度が2V以下と低く、また、樹脂塗膜におけるリン酸亜鉛微粒子の粒径及び配合量、ワックスの配合量が本発明規定の範囲内であり、さらに、樹脂塗膜の被覆量が適正であったため、プレス成形性、接着性能及びアルカリ脱膜性の全てを満足している。
【0037】
これに対し、比較例1では、リン酸亜鉛微粒子の粒径が0.005μmと小さ過ぎたため、樹脂被覆アルミニウム板表面に凹凸が形成されず、アンカー効果が得られなかった結果、接着性能に劣っていた。一方、比較例2では、リン酸亜鉛微粒子の粒径が1.2μmと大き過ぎたため、塗膜表面から飛び出したリン酸亜鉛微粒子が過剰に存在するようになり、プレス成形性(耐カジリ性)に劣っていた。
【0038】
比較例3では、樹脂塗膜中にリン酸亜鉛微粒子を配合していないため、樹脂被覆アルミニウム板表面に凹凸が形成されず、アンカー効果が得られなかった結果、接着性能に劣っていた。一方、比較例4では、ウレタン樹脂とリン酸亜鉛の合計量に対するリン酸亜鉛微粒子の配合比が80%と多過ぎたため、樹脂成分量が不足し、成形時の塗膜伸びが確保されない結果、プレス成形性に劣っていた。
【0039】
比較例5では、ウレタン樹脂とリン酸亜鉛微粒子の合計固形分量に対するワックスの配合比が1%と少な過ぎたため、十分な潤滑性が得られず、プレス成形性に劣っていた。また、比較例6では、ワックスの配合量が0.14g/mと多過ぎたため、接着性能に劣っていた。
【0040】
比較例7では、樹脂塗膜形成の前処理において酸洗処理を行わなかったため、アルミニウム板表面において検出されるMg量が多くなった。その結果、接着性能およびアルカリ脱脂脱膜性に劣っていた。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
〔実施例2〕
次に、本発明の実施例2について説明する。アルミニウム板の種類、前処理、GDS測定は、実施例1の場合と同様とした。
【0044】
次に、水溶性・アルカリ可溶性を有するアクリル樹脂、エポキシ樹脂又はポリエステル樹脂に、粒径0.3μmで配合量を種々変えたリン酸亜鉛微粒子と、配合量を種々変えた融点105℃のポリエチレンワックスを含有させた樹脂塗料を作製した(表3)。これらの樹脂塗料をアルミニウム板にロールコーターにて塗布し、PMT(板到達温度)120℃、在炉時間30秒間で乾燥を行い、性能評価用の試験片とした。
【0045】
上のようにして得られた樹脂被覆アルミニウム板の性能として、プレス成形性(絞り性)、プレス成形性(カジリ性)、接着性能及びアルカリ脱脂脱膜性を評価した。なお、性能評価方法及び評価・判定基準は、実施例1の場合と同様である。
【0046】
表4に、実施例2の評価・判定結果を示す。本発明例12〜24の樹脂被覆アルミニウム板は、アルミニウム板表面のMg量を反映するGDS発光強度が2V以下と低く、また、樹脂塗膜におけるリン酸亜鉛微粒子の粒径及び配合量、ワックスの配合量が本発明規定の範囲内であり、さらに、樹脂塗膜の被覆量が適正であったため、プレス成形性、接着性能及びアルカリ脱脂脱膜性の全てを満足している。
【0047】
一方、比較例19、20では、樹脂とリン酸亜鉛の合計量に対するリン酸亜鉛微粒子の配合比が80%と多過ぎたため、樹脂成分量が不足し、成形時の塗膜伸びが確保されない結果、プレス成形性に劣っていた。
【0048】
比較例21、22では、樹脂とリン酸亜鉛微粒子の合計固形分量に対するワックスの配合比が1%と少な過ぎたため、十分な潤滑性が得られず、プレス成形性に劣っていた。また、比較例23、24では、ワックスの配合量が0.14g/mと多過ぎたため、接着性能に劣っていた。
【0049】
【表3】

【0050】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム板又はアルミニウム合金板表面に樹脂塗膜が設けられた成形加工用樹脂被覆アルミニウム板において、
前記樹脂塗膜は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂のうちの1種又は2種以上を含むアルカリ可溶性樹脂中にリン酸亜鉛微粒子及びワックスが均一に分散した樹脂塗膜であり、
前記ワックスの量が0.03〜0.12g/mであり、前記リン酸亜鉛微粒子の粒径が0.01〜1μmであり、
前記アルカリ可溶性樹脂に対する前記リン酸亜鉛微粒子の配合比が5.3〜300重量%であり、
かつ、前記アルカリ可溶性樹脂と前記リン酸亜鉛微粒子の合計固形分量に対する前記ワックスの配合比が2〜15重量%であることを特徴とする成形加工用樹脂被覆アルミニウム板。
【請求項2】
前記樹脂塗膜の被覆量が0.2〜1.5g/mであることを特徴とする請求項1に記載の成形加工用樹脂被覆アルミニウム板。
【請求項3】
ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂のうちの1種又は2種以上からなるアルカリ可溶性樹脂に、前記アルカリ可溶性樹脂に対して重量比5.3〜300%のリン酸亜鉛微粒子及び前記アルカリ可溶性樹脂と前記リン酸亜鉛の合計固形分量に対して重量比2〜15%のワックスを均一に分散させて樹脂塗料を作製する工程と、
前記樹脂塗料をアルミニウム板又はアルミニウム合金板表面にロールコーター法により塗布する工程と、
を含むことを特徴とする成形加工用樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂塗料の塗布量が0.2〜1.5g/mであることを特徴とする請求項3に記載の成形加工用樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。

【公開番号】特開2009−190209(P2009−190209A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31269(P2008−31269)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】