説明

成形品の気孔分布の分析方法

【課題】 成形品に形成された気孔に、特定のマーカー元素を分子内に有する樹脂を含有する樹脂組成物を充填した後、その形状を実質的に維持した状態で固形化して、このマーカー元素を検出することにより、成形品の表面や内部における気孔の分布を精度よく分析する方法を提供する。
【解決手段】 樹脂材料又は樹脂成形材料の成形品に形成された気孔の分布状態を分析する方法であって、
(a)ホウ素、窒素、フッ素、ケイ素、リン、硫黄、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるマーカー元素を分子内に有する樹脂を含有する樹脂組成物を、上記気孔内に充填する第1の工程と、
(b)上記気孔内に充填された樹脂組成物を、その形状を実質的に維持して固形化する第2の工程と、
(c)上記固形化した樹脂組成物中のマーカー元素を検出することにより、上記成形品に形成された気孔の分布状態を分析する第3の工程と、
を有することを特徴とする、成形品の気孔分布の分析方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の気孔分布の分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂をはじめ、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂をバインダーとして用いた成形品は広く使用されているが、機械的強度、硬度等の物理的特性の向上を検討する方法の一つとして、成形品に形成された気孔の分布状態を分析することにより、配合条件、成形条件の最適化を図る手法が用いられる。更に、成形品に不具合が発生した場合においても、気孔の分布状態を確認することが原因を解明する方法となりうると考えられる。
しかし、成形品を構成する樹脂や充填材等の分散状態は、SEM(走査型電子顕微鏡)等の装置により容易に観察できるが、成形品に形成された微細な気孔を明確にとらえるのは困難である。
【0003】
例えば、マイクロクラックの評価方法として、マイクロクラックに硝酸塩、硫酸塩を含有する溶液を充填し、加熱乾燥または熱分解により付着固定した後、マイクロクラックを含む破断面をEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)により分析し、付着固定した金属元素を調べる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、この方法では、一度マイクロクラックに満たされた金属元素を含む溶液が乾燥により蒸発し、金属元素はマイクロクラック内壁の一部の箇所に残存するに留まる。このため、マイクロクラック全体がEPMAで検出できる物質で満たされることにはならず、その分布、形状を正確に把握するのは困難であった。
【0004】
また、例えば、フェノール樹脂を用いた成形品のひとつである自動車のブレーキ等に使用される摩擦材のように、成形品中に各種金属系フィラー、金属系繊維などの金属成分を含有する場合には、成形品中のこれらの金属成分と、分析に用いる溶液中の金属成分との区別ができないことがある。従って、上記分析方法は、このような成形品に対しては適用できない場合があるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平06−018456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、成形品に形成された気孔に、特定のマーカー元素を分子内に有する樹脂を含有する樹脂組成物を充填した後、その形状を実質的に維持した状態で固形化して、このマーカー元素を検出することにより、成形品の表面や内部における気孔の分布を精度よく分析する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(2)により達成される。
(1)樹脂材料又は樹脂成形材料の成形品に形成された気孔の分布状態を分析する方法であって、
(a)ホウ素、窒素、フッ素、ケイ素、リン、硫黄、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるマーカー元素を分子内に有する樹脂を含有する樹脂組成物を、上記気孔内に充填する第1の工程と、
(b)上記気孔内に充填された樹脂組成物を、その形状を実質的に維持して固形化する第2の工程と、
(c)上記固形化した樹脂組成物中のマーカー元素を検出することにより、上記成形品に形成された気孔の分布状態を分析する第3の工程と、
を有することを特徴とする、成形品の気孔分布の分析方法。
(2)上記第3の工程におけるマーカー元素の検出は、電子プローブマイクロアナライザーにより行われるものである上記(1)に記載の成形品の気孔分布の分析方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の分析方法は、成形品の表面や内部に形成された気孔の分布状態やその形状を明らかにすることができるものであり、この分析結果に基づき、成形品材料の配合条件、成形条件の最適化、機械的強度などの特性設計を容易に行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の、成形品の気孔分布の分析方法(以下、単に「分析方法」ということがある)について詳細に説明する。本発明の分析方法は、樹脂材料又は樹脂成形材料の成形品に形成された気孔の分布状態を分析する方法であって、
(a)ホウ素、窒素、フッ素、ケイ素、リン、硫黄、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるマーカー元素を分子内に有する樹脂を含有する樹脂組成物を、上記気孔内に充填する第1の工程と、
(b)上記気孔内に充填された樹脂組成物を、その形状を実質的に維持して固形化する第2の工程と、
(c)上記固形化した樹脂組成物中のマーカー元素を検出することにより、上記成形品に形成された気孔の分布状態を分析する第3の工程と、
を有することを特徴とする。
【0010】
はじめに、本発明の分析方法に用いられる成形品について説明する。
本発明で用いられる成形品としては、樹脂材料又は樹脂成形材料の成形品を用いることができる。
ここで用いられる樹脂材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂など、成形品となりうる性状を備えたものであれば、単独あるいは組み合わせて用いることができる。また、樹脂単独で用いてもよいし、樹脂とともに硬化剤や硬化促進剤などを配合して用いることもできる。
また、樹脂成形材料は、上記樹脂材料とともに、有機充填材、無機充填材などの充填材、可塑剤、顔料、各種添加剤などを混合したものである。
本発明で用いられる成形品は、これら各種の原材料成分を混合・混練して得られる樹脂材料あるいは樹脂成形材料を、射出成形、移送成形、圧縮成形などの公知の手法によって、通常加熱加圧して所定の形状に賦型して得られるものである。
【0011】
本発明の分析方法は、第1の工程として、
(a)ホウ素、窒素、フッ素、ケイ素、リン、硫黄、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるマーカー元素を分子内に有する樹脂を含有する樹脂組成物を、成形品に形成された気孔内に充填する。
このように、樹脂組成物として、上記マーカー元素を分子内に有する樹脂を含有するものを用いることにより、成形品の気孔内に充填された樹脂組成物中に、上記マーカー元素を高い精度で分散させることができる。
【0012】
まず、上記樹脂組成物に用いられる、マーカー元素を有する樹脂について説明する。
本発明の分析方法において、マーカーとして用いられる元素としては、ホウ素、窒素、フッ素、ケイ素、リン、硫黄、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるものである。
そして、上記マーカー元素を有する樹脂としては、例えば、
(1)樹脂骨格にマーカー元素を有する樹脂、
(2)樹脂構造中にマーカー元素を導入した樹脂、
などを用いることができる。
【0013】
上記マーカー元素を有する樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれをも用いることができる。
熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、樹脂骨格にマーカー元素を有する樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
樹脂構造中にマーカー元素を導入した樹脂としては例えば、塩素化エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ホウ酸変性フェノール樹脂、アミノ変性フェノール樹脂、ニトロフェノール変性フェノール樹脂、フッ化フェノール変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、塩化フェノール変性フェノール樹脂、臭化フェノール変性フェノール樹脂、ヨウ化フェノール変性フェノール樹脂などの変性フェノール樹脂のほか、シリコーン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂などが挙げられる。
【0014】
また、熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、樹脂骨格にマーカー元素を有する樹脂として、ナイロン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性シリコーン樹脂などが挙げられる。
樹脂構造中にマーカー元素を導入した樹脂としては例えば、塩化ビニル樹脂、アニリン樹脂などが挙げられる。
【0015】
なお、本発明の分析方法を適用するにあたって、分析対象とする成形品を構成する樹脂材料又は樹脂成形材料として、上記マーカー元素に相当する元素を含有する原材料成分を用いている場合は、これ以外の元素をマーカー元素として有する樹脂を用いることができる。
【0016】
次に、本発明の分析方法で用いられる樹脂組成物について説明する。
ここで用いられる樹脂組成物は、上記マーカー元素を有する樹脂を含有するものである。
マーカー元素を有する樹脂は、単独で用いてもよいし、併用することもできる。併用する場合は、熱硬化性樹脂を2種以上用いる方法、熱可塑性樹脂を2種以上用いる方法、あるいは、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを併せ、各々を1種以上用いる方法によってもよい。
【0017】
また、マーカー元素を有した樹脂以外の成分としては、例えば、マーカー元素を有していない樹脂、樹脂成分の硬化剤、硬化促進剤のほか、反応性希釈剤、可塑剤などを用いることができる。
これらの成分の配合により、樹脂組成物を低粘度化させたり、所定の温度条件下で好適なタイミングで硬化させたりすることができる。
なお、樹脂組成物には、通常の有機溶媒は用いないことが好ましい。特に、第1の工程、及び、後述する第2の工程において、樹脂組成物に付与される熱エネルギーにより蒸発して消失するような有機溶媒は用いないことが好ましい。これにより、気孔に充填された樹脂組成物の形状を実質的に維持することができ、気孔分布の分析精度を向上させることができる。
【0018】
なお、本発明の分析方法においては、樹脂組成物として、1種類の樹脂成分のみからなるものを用いる場合もあるが、便宜上、このような場合も樹脂組成物と呼称するものとする。
【0019】
本発明の分析方法で用いられる樹脂組成物の性状としては特に限定されないが、成形品の気孔に充填する処理を行う際の温度条件下で、低粘度化した液状となるものであることが好ましい。一例を挙げると、上記温度下で、5〜1000mPa・sの粘度を有するものであることが好ましい。
これにより、樹脂組成物を成形品の気孔内に効率よく充填させることができる。
【0020】
上記ような樹脂組成物としては、例えば、エポキシ当量が100〜600である2官能タイプのエポキシ樹脂と液状酸無水物硬化剤、3官能タイプのエポキシ樹脂とアミン硬化剤、などを好適に用いることができる。
【0021】
第1の工程においては、上記で説明した樹脂組成物を、成形品に形成された気孔に充填する。
【0022】
上記充填する際の温度としては特に限定されず、熱硬化性樹脂を用いた樹脂組成物の場合は、樹脂が溶融、流動し、かつ、硬化しない温度域を樹脂種によって選定することができるが、一例を挙げると、50〜130℃で行うことができる。
充填する際の温度が低すぎる場合は、樹脂の流動性が低く、また、成形品に形成された気孔中に存在する空気が熱によって排出されにくいため、樹脂組成物の充填性が低下するようになる。一方、温度が高すぎると、樹脂組成物が気孔に充填される前に、樹脂組成物によっては樹脂の硬化反応が進行して高粘度化するため、樹脂組成物の充填性が低下することがある。また、樹脂組成物の熱分解や揮発により、充填時または充填後に、その形状を維持することが難しくなることがある。
【0023】
また、熱可塑性樹脂の場合は、樹脂が溶融、流動する温度域を樹脂種によって選定することができるが、一例を挙げると、150〜200℃で行うことができる。
充填する際の温度が低すぎる場合は、樹脂の流動性が低いため、樹脂組成物の充填性が低下するようになる。一方、温度が高すぎると、樹脂組成物によっては熱分解が進み、充填後にその形状を維持することが難しくなることがある。
【0024】
本発明の分析方法において、成形品の気孔に樹脂組成物を充填する方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂組成物中に成形品を浸漬した後、必要に応じて所定温度に加温して所定時間保持する方法を好適に適用することができる。なお、気孔への樹脂組成物の充填は、大気圧下で行ってもよいし、密閉された空間内において、加圧下又は減圧下で行うこともできる。
【0025】
本発明の分析方法は、第2の工程として、
(b)気孔内に充填された樹脂組成物を、その形状を実質的に維持して固形化する。
【0026】
上記気孔内に充填された樹脂組成物を、その形状を実質的に維持して固形化する方法としては特に限定されないが、例えば、マーカー元素を有する樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合は、第1の工程後、樹脂が硬化する温度域まで加温硬化することにより行うことができる。加温硬化による場合には、樹脂が硬化する温度域まで加温するに留めることが好ましい。温度が高すぎると、樹脂組成物の熱分解や揮発により、樹脂組成物の形状を維持することが難しくなることがある。
また、マーカー元素を有する樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合は、第1の工程後、樹脂が固形状となる温度域まで冷却固化することにより行うことができる。
【0027】
上記第2の工程を実施する形態としては特に限定されないが、例えば、第1の工程後、樹脂組成物と成形品とを一緒にした状態で、加温硬化または冷却固化して固形化した後、両者を分離してもよいし、第1の工程後、樹脂組成物中から成形品を取り出し、これを同様に固形化した後、成形品表面の樹脂組成物を除去する方法によってもよい。
【0028】
なお、上記第1の工程、及び、第2の工程で、樹脂組成物とともに成形品を加温する場合には、成形品の変形や熱分解が起こらないような温度域で実施することが好ましい。
【0029】
本発明の分析方法は、第3の工程として、
(c)上記固形化した樹脂組成物中のマーカー元素を検出することにより、成形品に形成された気孔の分布状態を分析する。
【0030】
このように、気孔に充填された後に固形化した樹脂組成物中に含まれるマーカー元素を検出することで、この樹脂組成物の分布状態を検出することができる。これにより、成形品に形成された気孔の分布状態や形状を明らかにすることができる。
【0031】
上記マーカー元素の分散状態を検出する方法としては特に限定されないが、例えば、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて検出する方法を好適に適用することができる。これにより、マーカー元素の分散状態を高精度に検出することができる。EPMAの特性X線の分光には、波長分散型分光器、エネルギー分散型分光器を使用することができる。
【0032】
以上に説明したように、本発明の分析方法は、成形品に形成された気孔に、特定のマーカー元素を分子内に有する樹脂を含有する樹脂組成物を充填し、その形状を実質的に維持した状態で固形化した後、このマーカー元素を検出することにより、成形品の気孔の分布を分析するものである。
本発明の分析方法は、成形品の表面や内部に形成された気孔を樹脂組成物で充填し、この形状を実質的に変えることなく固形化したものを分析対象とすることができるので、気孔の分布や形状を高い精度で分析することができるものである。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
実施例及び比較例において記載されている「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0034】
1.成形品の作製
粉末状のノボラック型フェノール樹脂、繊維基材としてアラミド繊維、有機充填材としてカシューダスト、及び無機充填材として硫酸バリウムとを用い、これらを表1に示す配合割合で仕込み、混合して、樹脂成形材料を調製した。
これを、温度160℃、圧力19.6MPaで10分間成形して、150mm×150mm×20mmの成形硬化物を得、これをさらに200℃で5時間焼成して成形品を作製した。
【0035】
【表1】

【0036】
上記樹脂成形材料に用いた原材料は以下の通りである。
(1)ノボラック型フェノール樹脂:住友ベークライト社製・「PR−217」
(2)アラミド繊維:ドライパルプ 平均繊維長2mm
(3)カシューダスト:平均粒径 500μm
(4)硫酸バリウム:平均粒径 20μm
【0037】
2.樹脂組成物の充填
<実施例1>
樹脂組成物として、シリコーン樹脂(トウレ・ダウコーニング・シリコーン社製・「SE1881」)を用いた。
温度計、温調装置を備えた1Lの容器に、上記樹脂組成物300gを入れ、次いで、上記で得られた成形品を入れた。容器内温度を120℃に保ちながら5時間保持し、成形品の気孔に樹脂組成物を充填させた。
この後、容器内温度を240℃に上げ、6時間保持して、樹脂組成物を硬化させた。
これを常温まで冷却後、容器より硬化した樹脂組成物及び成形品を取り出し、成形品の表面に付着した余剰な樹脂組成物を除去した後、所定の位置で成形品を切断して、その断面部の一部を分析用試料とした。
【0038】
<実施例2>
樹脂組成物として、エポキシ樹脂(旭電化工業社製・「ED−503」:塩素含有2官能エポキシ樹脂)と、その硬化剤(旭電化工業社製・「EH−3326」:酸無水物硬化剤)とを、エポキシ当量と酸無水物当量とが1:1となるように混合したものを用いた。
これ以降は、実施例1と同様にして、分析用試料を得た。
【0039】
<実施例3>
樹脂組成物として、ポリ塩化ビニル(日本ゼオン社製・「Geon121」)100部と、可塑剤[(大八化学工業社製・「DOS」:ビス(2−エチルヘキシル)セバケート]65部とを分散混合したものを用いた。
これ以降は、実施例1と同様にして、分析用試料を得た。
【0040】
<比較例>
樹脂組成物の充填を行わず、上記「1.成形品の作製」で得られた成形品をそのまま用い、所定の位置で成形品を切断して、その断面部の一部を分析用試料とした。
【0041】
3.評価
実施例1〜3、及び、比較例で得られた評価用試料を用いて、その表面をEPMA(島津製作所社製・「EPMA−1600」)により定性分析、及び、面分析を行った。
定性分析結果を表2に示す。また、実施例2の面分析結果を図1に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例1は、マーカー元素としてケイ素を有する樹脂を含有する樹脂組成物、実施例2と実施例3は、マーカー元素として塩素を有する樹脂を含有する樹脂組成物を用い、本発明の分析方法を実施したものであり、実施例1はケイ素、実施例2、3はともに塩素を検出することができ、これにより、気孔の分布状態が明らかとあった。
一方、比較例では、マーカー元素を有する樹脂を含有する樹脂組成物の充填を行っておらず、成形品に形成された気孔を判別するのは困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の分析方法は、成形品に形成された気孔の分布状態や形状を明らかにすることができる。本発明の分析結果を活用することにより、成形品の配合条件、成形条件の最適化、機械的強度などの特性設計を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】気孔に樹脂組成物が充填された成形品(実施例2)の、EPMAによる面分析結果
【符号の説明】
【0046】
1 塩素が検出された領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料又は樹脂成形材料の成形品に形成された気孔の分布状態を分析する方法であって、
(a)ホウ素、窒素、フッ素、ケイ素、リン、硫黄、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるマーカー元素を分子内に有する樹脂を含有する樹脂組成物を、前記気孔内に充填する第1の工程と、
(b)前記気孔内に充填された樹脂組成物を、その形状を実質的に維持して固形化する第2の工程と、
(c)前記固形化した樹脂組成物中のマーカー元素を検出することにより、前記成形品に形成された気孔の分布状態を分析する第3の工程と、
を有することを特徴とする、成形品の気孔分布の分析方法。
【請求項2】
前記第3の工程におけるマーカー元素の検出は、電子プローブマイクロアナライザーにより行われるものである請求項1に記載の成形品の気孔分布の分析方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−105883(P2006−105883A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295652(P2004−295652)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】