説明

成形型、成形方法、及び、レンズアレイ

【課題】成形されたレンズアレイに損傷を与えることなく、容易に離型することができる成形型、成形方法、及び、レンズアレイを提供する。
【解決手段】基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とを有するレンズアレイを成形材料で成形する成形型であって、成形材料に接する型面を有する型部材を備え、型部材がレンズ部の形状を転写するために型面に設けられた複数のレンズ転写部と、型面におけるレンズ転写部を除く部位の少なくとも一部に形成された離型部とを備え、離型部が傾斜面を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型、成形方法、及び、レンズアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器の携帯端末には、小型で薄型な撮像ユニットが搭載されている。このような撮像ユニットは、一般に、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子と、固体撮像素子上に被写体像を形成するためのレンズと、を備えている。
【0003】
携帯端末の小型化・薄型化に伴って撮像ユニットの小型化・薄型化が要請されている。また、携帯端末のコストの低下を図るため、製造工程の効率化が望まれている。このような小型かつ多数のレンズを製造する方法としては、基板部に複数のレンズを形成した光学成形体であるレンズアレイを製造し、該基板部を切断して複数のレンズをそれぞれ分離させることでレンズモジュールを量産する方法が知られている。
【0004】
また、複数のレンズ部が形成された基板部と複数の固体撮像素子が形成された半導体ウェハとを一体に組み合わせ、各レンズ部と固体撮像素子をセットとして含むように基板部とともに半導体ウェハを切断することで撮像ユニットを量産する方法が知られている。
【0005】
一例として、次の工程によりレンズアレイが製造される。このような製造方法としては下記特許文献1に示すものがある。
(1)ウェハ上に樹脂を塗布した状態で、1つの転写体(型)の形状を樹脂に転写する。
(2)型の形状を転写する工程を1500〜2400回程度繰り返し、1つのウェハ上に1500〜2400個のレンズ形状を持つマスタレンズアレイを形成する。
(3)マスタレンズアレイのレンズ面に、電鋳によってNi等の金属イオンを堆積させてスタンパ(Ni電鋳型)を製造する。
(4)スタンパを一対の型部材として使用し、これら一対の型部材のうち下型部材に成形材料として熱硬化性や光硬化性の樹脂を供給する。
(5)下型部材に供給された成形材料を上型部材で押圧することによって上型部材及び下型部材の型面に倣って樹脂を変形させる。
(6)上型部材及び下型部材の間に挟み込まれている樹脂に光又は熱を照射して硬化させる。
(7)硬化させた後、上型部材及び下型部材から成形されたレンズアレイを離型し、レンズアレイを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開08/153102号
【特許文献2】特開2008−307735号公報
【特許文献3】特開2003−222706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、数インチ〜10インチ程度の大きさの基板に多数(数百個〜数千個)のレンズ部を形成したレンズアレイを成形する場合には、レンズアレイの形状が扁平であることから上下の型部材の型面と成形体との接触面積が大きい。また、型面と成形されたレンズアレイ表面との間が真空状態になることで離型の際に働く抵抗力が大きくなる。このため、従来の個別レンズを成形する場合に比べて、レンズアレイが型部材の型面に付着して離型が困難である。また、外部から負荷をかけてレンズアレイを離型させようとすると、レンズアレイに反りや変形等の不具合が発生することや破損することが懸念されている。
【0008】
特許文献2及び特許文献3には、樹脂成形用金型における樹脂と接する型面に傾斜部を設ける構成が開示され、特許文献3には傾斜部を離型起点とすることが開示されている。しかし、特許文献2及び3には、レンズアレイの成形する場合の離型については記載がなかった。
【0009】
本発明は、成形されたレンズアレイに損傷を与えることなく、容易に離型することができる成形型、成形方法、及び、レンズアレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とを有するレンズアレイを成形材料で成形する成形型であって、
前記成形材料に接する型面を有する型部材を備え、前記型部材が前記レンズ部の形状を転写するために前記型面に設けられた複数のレンズ転写部と、前記型面における前記レンズ転写部を除く部位の少なくとも一部に形成された離型部とを備え、前記離型部が傾斜面を含む成形型。
【0011】
基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とを有するレンズアレイを成形材料で成形する成形方法であって、
前記レンズ部の形状を転写するレンズ転写部が設けられた型面を前記成形材料に押し付けて成形する工程と、
前記成形材料を硬化させる工程と、
前記型面の、前記レンズ転写部を除く部位の少なくとも一部に設けられた離型部に形成された傾斜面で、前記レンズアレイと前記型部材との間の剥離を生じさせ、レンズアレイを離型する工程と、を有する成形方法。
【0012】
本発明は、レンズアレイを硬化させた際に生じる該レンズアレイの伸縮に起因して、離型部の傾斜面でレンズアレイと型面との間でズレが生じる。離型部において型部材とレンズアレイとの間に生じた剥離した部位がレンズアレイと型面との間の他の領域に適宜拡がり、レンズアレイと型面との間の離型抵抗力を著しく低下させ、この結果、レンズアレイを型部材から離型させることができる。従って、レンズアレイに外部から負荷をかけることなく離型を行うことができ、レンズアレイに変形等の不具合が生じない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成形されたレンズアレイに損傷を与えることなく、容易に離型することができる成形型、成形方法、及び、レンズアレイを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】レンズアレイの断面図である。
【図2】レンズモジュールの一例を示す断面図である。
【図3】撮像ユニットの一例を示す断面図である。
【図4】レンズアレイの一部を断面斜視図である。
【図5】レンズアレイの一部を拡大して示した断面図である。
【図6】成形型の断面図である。
【図7】図6の成形型を用いて成形するときの状態を示す断面図である。
【図8】レンズアレイの離型を示す断面図である。
【図9】図8の要部拡大図である。
【図10】成形型の断面図である。
【図11】図10の成形型を用いた成形の手順を示す断面図である。
【図12】別の構成例の成形型を平面視した状態を示す図である。
【図13】図12の成形型の矢印方向の断面を斜視した図である。
【図14】図12の成形型の離型部の斜視図である。
【図15】レンズアレイの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず、光学成形体の一例としてレンズアレイの構成と、該レンズアレイを備えたレンズモジュール及び撮像ユニットの構成について説明する。
【0016】
レンズアレイは、円盤形状の基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とを備えている。レンズ部は、基板部と同じ成形材料から構成され、該基板部に一体成形されたものである。
【0017】
図1は、レンズアレイの断面図である。基板部1の両面に形成されたレンズ部10は、基板部1の平面部分から突出する凸面を有する凸レンズ形状を有する。レンズ部10の形状は、特に限定されず、用途などによって適宜変形される。
【0018】
基板部1には、該基板部1の厚みより薄い厚みの部分に相当する薄肉部4が形成されている。また、基板部1におけるレンズ部10を除く部位に、基板部1の表面から突出し、断面視において略台形状の凸部2が形成されている。凸部2の形状については、後述する。
【0019】
レンズアレイは、成形型を用いて成形材料を成形し、硬化させることで得られる。
【0020】
図2は、レンズモジュールの断面図である。
レンズモジュールは、基板部1と、及び該基板部1に一体成形されたレンズ部10とを含んだ構成である。レンズモジュールの基板部1は、凸部2と薄肉部4とが形成された部分が切断されたものである。また、レンズモジュールは、基板部1の一方の面にスペーサ12が設けられている。
【0021】
スペーサ12は、他の部材と重ね合わせるときの間隔を確保する部材である。
【0022】
レンズモジュールは、図1に示すレンズアレイの基板部1をダイシングし、レンズ部10ごとに分断させたものである。レンズモジュールに備えられるスペーサ12は、基板部1上のダイシングされる領域に予め形成され、ダイシングによって分離され、各レンズモジュールの基板部1に付属する。
【0023】
図3は、撮像ユニットの断面図である。
撮像ユニットは、上述のレンズモジュールと、センサモジュールとを備える。レンズモジュールのレンズ部10は、センサモジュール側に設けられた撮像素子Dに被写体像を結像させる。レンズモジュールの基板部1とセンサモジュールの半導体基板Wとが、平面視において略同一の矩形状である。
【0024】
センサモジュールは、半導体基板Wと、半導体基板Wに設けられた撮像素子Dを含んでいる。半導体基板Wは、例えばシリコンなどの半導体材料で形成されたウェハを平面視略矩形状に切り出して成形されている。撮像素子Dは、半導体基板Wの略中央部に設けられている。撮像素子Dは、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサである。センサモジュールは、チップ化された撮像素子Dを配線等が形成された半導体基板上にボンディングした構成とすることができる。又は、撮像素子Dは、半導体基板Wに対して周知の成膜工程、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程、不純物添加工程等を繰り返し、該半導体基板に電極、絶縁膜、配線等を形成して構成されてもよい。
【0025】
レンズモジュールは、その基板部1がスペーサ12を挟んでセンサモジュールの半導体基板Wの上に重ね合わされている。レンズモジュールのスペーサ12とセンサモジュールの半導体基板Wとは、例えば接着剤などを用いて接合される。スペーサ12は、レンズモジュールのレンズ部10がセンサモジュールの撮像素子D上で被写体像を結像させるように設計され、レンズ部10がセンサモジュールに接触しないように、該レンズ部10と撮像素子Dとの間に所定の距離を隔てる厚みで形成されている。
【0026】
レンズモジュール及び撮像ユニットに設けられるスペーサ12は、レンズモジュールの基板部1とセンサモジュールの半導体基板Wとを所定の距離を隔てた位置関係を保持することができる範囲で、その形状は特に限定されず適宜変形できる。例えば、スペーサ12は、基板部1の平面視において格子状の部材であってもよく、レンズ部10の周囲に複数設けられた柱状の部材であってもよい。また、スペーサ12は、センサモジュールの撮像素子Dの周囲を取り囲むような枠状の部材であってもよい。撮像素子Dを枠状のスペーサ12によって取り囲むことで外部から隔絶すれば、撮像素子Dにレンズを透過する光以外の光が入射しないように遮光することができる。また、撮像素子Dを外部から密封することで、撮像素子Dに塵埃が付着することを防止できる。
【0027】
レンズモジュールは、レンズ部10が形成された基板部1を複数備えた構成としてもよい。このとき、互いに重ね合わされる基板部1同士がスペーサ12を介して組み付けられる。また、レンズ部10が形成された基板部1を複数備えたレンズモジュールの最下位置の基板部1にスペーサ12を介してセンサモジュールを接合して撮像ユニットを構成してもよい。
【0028】
撮像ユニットは、携帯端末等に内蔵される図示しない回路基板にリフロー実装される。回路基板には、撮像ユニットが実装される位置に予めペースト状の半田が適宜印刷されており、そこに撮像ユニットが載せられ、この撮像ユニットを含む回路基板に赤外線の照射や熱風の吹付けといった加熱処理が施され、撮像ユニットが回路基板に溶着される。
【0029】
次に、レンズアレイを成形するのに用いる成形材料について説明する。
【0030】
成形材料としては、成形時には流動性を有し、成形後、加熱や光照射によって硬化する樹脂を用いる。このような樹脂としては、熱硬化性樹脂、又は、活性エネルギー線(例えば紫外線、電子線)の照射により硬化する樹脂のいずれであってもよい。
【0031】
樹脂は、成形時の型形状の転写適性等、成形性の観点から硬化前には適度な流動性を有していることが好ましい。具体的には常温で液体であり、粘度が1000〜50000mPa・s程度のものが好ましい。
【0032】
樹脂は、一方、硬化後にはリフロー工程を通しても熱変形しない程度の耐熱性を有していることが好ましい。該観点から、硬化物のガラス転移温度は200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることが特に好ましい。樹脂組成物にこのような高い耐熱性を付与するためには、分子レベルで運動性を束縛することが必要であり、有効な手段としては、(1)単位体積あたりの架橋密度を上げる手段、(2)剛直な環構造を有する樹脂を利用する手段(例えばシクロヘキサン、ノルボルナン、テトラシクロドデカン等の脂環構造、ベンゼン、ナフタレン等の芳香環構造、9,9’−ビフェニルフルオレン等のカルド構造、スピロビインダン等のスピロ構造を有する樹脂、具体的には例えば、特開平9−137043号公報、同10−67970号公報、特開2003−55316号公報、同2007−334018号公報、同2007−238883号公報等に記載の樹脂)、(3)無機微粒子など高Tgの物質を均一に分散させる手段(例えば特開平5−209027号公報、同10−298265号公報等に記載)等が挙げられる。これらの手段は複数併用してもよく、流動性、収縮率、屈折率特性など他の特性を損なわない範囲で調整することが好ましい。
【0033】
樹脂の組成物は、形状転写精度の観点から、硬化反応による体積収縮率が小さいものが好ましい。樹脂の硬化収縮率としては10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
【0034】
硬化収縮率の低い樹脂の組成物としては、例えば、(1)高分子量の硬化剤(プレポリマ−など)を含む樹脂組成物(例えば特開2001−19740号公報、同2004−303293号公報、同2007−211247号公報等に記載、高分子量硬化剤の数平均分子量は200〜100,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは500〜50,000の範囲であり、特に好ましくは1,000〜20,000の場合である。また該硬化剤の数平均分子量/硬化反応性基の数で計算される値が、50〜10,000の範囲にあることが好ましく、100〜5,000の範囲にあることがより好ましく、200〜3,000の範囲にあることが特に好ましい。)、(2)非反応性物質(有機/無機微粒子,非反応性樹脂等)を含む樹脂組成物(例えば特開平6−298883号公報、同2001−247793号公報、同2006−225434号公報等に記載)、(3)低収縮架橋反応性基を含む樹脂組成物(例えば、開環重合性基(例えばエポキシ基(例えば、特開2004−210932号公報等に記載)、オキセタニル基(例えば、特開平8−134405号公報等に記載)、エピスルフィド基(例えば、特開2002−105110号公報等に記載)、環状カーボネート基(例えば、特開平7−62065号公報等に記載)、エン/チオール硬化基(例えば、特開2003−20334号公報等に記載)、ヒドロシリル化硬化基(例えば、特開2005−15666号公報等に記載)、(4)剛直骨格樹脂(フルオレン、アダマンタン、イソホロン等)を含む樹脂組成物(例えば、特開平9−137043号公報等に記載)、(5)重合性基の異なる2種類のモノマーを含み相互貫入網目構造(いわゆるIPN構造)が形成される樹脂組成物(例えば、特開2006−131868号公報等に記載)、(6)膨張性物質を含む樹脂組成物(例えば、特開2004−2719号公報、特開2008−238417号公報等に記載)等を挙げることができ、本発明において好適に利用することができる。また上記した複数の硬化収縮低減手段を併用すること(例えば、開環重合性基を含有するプレポリマーと微粒子を含む樹脂組成物など)が物性最適化の観点からは好ましい。
【0035】
レンズアレイには、高−低2種類以上のアッベ数の異なる樹脂が望まれる。
高アッべ数側の樹脂は、アッベ数(νd)が50以上であることが好ましく、より好ましくは55以上であり特に好ましくは60以上である。屈折率(nd)は1.52以上であることが好ましく、より好ましくは1.55以上であり、特に好ましくは1.57以上である。このような樹脂としては、脂肪族の樹脂が好ましく、特に脂環構造を有する樹脂(例えば、シクロヘキサン、ノルボルナン、アダマンタン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の環構造を有する樹脂、具体的には例えば、特開平10−152551号公報、特開2002−212500号公報、同2003−20334号公報、同2004−210932号公報、同2006−199790号公報、同2007−2144号公報、同2007−284650号公報、同2008−105999号公報等に記載の樹脂)が好ましい。
【0036】
低アッべ数側の樹脂は、アッベ数(νd)が30以下であることが好ましく、より好ましくは25以下であり特に好ましくは20以下である。屈折率(nd)は1.60以上であることが好ましく、より好ましくは1.63以上であり、特に好ましくは1.65以上である。
このような樹脂としては芳香族構造を有する樹脂が好ましく、例えば9,9’‐ジアリールフルオレン、ナフタレン、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール等の構造を含む樹脂(具体的には例えば、特開昭60−38411号公報、特開平10−67977号公報、特開2002−47335号公報、同2003−238884号公報、同2004−83855号公報、同2005−325331号公報、同2007−238883号公報、国際公開2006/095610号公報、特許第2537540号公報等に記載の樹脂等)が好ましい。
【0037】
樹脂は、屈折率を高める目的やアッベ数を調整する目的のために、無機微粒子をマトリックス中に分散させたものであることが好ましい。無機微粒子としては、例えば、酸化物微粒子、硫化物微粒子、セレン化物微粒子、テルル化物微粒子が挙げられる。より具体的には、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、硫化亜鉛等の微粒子を挙げることができる。
特に上記高アッべ数の樹脂に対しては、酸化ランタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の微粒子を分散させることが好ましく、低アッベ数の樹脂に対しては、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム等の微粒子を分散させることが好ましい。無機微粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、複数の成分による複合物であってもよい。
【0038】
また、無機微粒子には光触媒活性低減、吸水率低減などの種々の目的から、異種金属をドープしたり、表面層をシリカ、アルミナ等異種金属酸化物で被覆したり、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、有機酸(カルボン酸類、スルホン酸類、リン酸類、ホスホン酸類等)又は有機酸基を持つ分散剤などで表面修飾してもよい。無機微粒子の数平均粒子サイズは通常1nm〜1000nm程度とすればよいが、小さすぎると物質の特性が変化する場合があり、大きすぎるとレイリー散乱の影響が顕著となるため、1nm〜15nmが好ましく、2nm〜10nmが更に好ましく、3nm〜7nmが特に好ましい。また、無機微粒子の粒子サイズ分布は狭いほど望ましい。このような単分散粒子の定義の仕方はさまざまであるが、例えば、特開2006−160992号に記載されるような数値規定範囲が好ましい粒径分布範囲に当てはまる。ここで上述の数平均1次粒子サイズとは、例えばX線回折(XRD)装置あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)などで測定することができる。無機微粒子の屈折率としては、22℃、589nmの波長において、1.90〜3.00であることが好ましく、1.90〜2.70であることが更に好ましく、2.00〜2.70であることが特に好ましい。無機微粒子の樹脂に対する含有量は、透明性と高屈折率化の観点から、5質量%以上であることが好ましく、10〜70質量%が更に好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
【0039】
樹脂に微粒子を均一に分散させるためには、例えばマトリックスを形成する樹脂モノマーとの反応性を有する官能基を含む分散剤(例えば特開2007−238884号公報実施例等に記載)、疎水性セグメント及び親水性セグメントで構成されるブロック共重合体(例えば特開2007−211164号公報に記載)、あるいは高分子末端又は側鎖に無機微粒子と任意の化学結合を形成しうる官能基を有する樹脂(例えば特開2007−238929号公報、特開2007−238930号公報等に記載)等を適宜用いて微粒子を分散させることが望ましい。
【0040】
また、樹脂には、シリコン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有化合物等の公知の離型剤やヒンダードフェノール等の酸化防止剤等の添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0041】
樹脂には、必要に応じて硬化触媒又は開始剤を配合することができる。具体的には、例えば特開2005−92099号公報(段落番号[0063]〜[0070])等に記載の熱又は活性エネルギー線の作用により硬化反応(ラジカル重合あるいはイオン重合)を促進する化合物を挙げることができる。これらの硬化反応促進剤の添加量は、触媒や開始剤の種類、あるいは硬化反応性部位の違いなどによって異なり一概に規定することはできないが、一般的には硬化反応性樹脂組成物の全固形分に対して0.1〜15質量%程度が好ましく、0.5〜5質量%程度がより好ましい。
【0042】
樹脂に上記成分を適宜配合して製造する際に、液状の低分子モノマー(反応性希釈剤)等に他の成分を溶解することができる場合には、別途溶剤を添加する必要はない。しかし、それ以外の場合には、樹脂は、別途溶剤を用いることで各構成成分を溶解させ、製造される。溶剤としては、樹脂の組成物が沈殿することなく、均一に溶解又は分散されるものであれば特に制限はなく適宜選択することができ、具体的には、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、水等を挙げることができる。樹脂が溶剤を含む場合には該樹脂を基板及び/又は型部材の上にキャストし溶剤を乾燥させた後に型形状を転写する操作を行うことが好ましい。
【0043】
図4は、レンズアレイの一部を断面斜視図である。図5は、レンズアレイの一部を拡大して示した断面図である。
【0044】
図4に示すように、凸部2は、基板部1の表面において、レンズ部10の1つ1つを平面視において矩形状に囲うように形成されている。凸部2と、該凸部2とは別のレンズ部10を囲う凸部2との間には、基板部1の表面に沿って薄肉部4が形成されている。つまり、凸部2と薄肉部4は、基板部1において配列されたレンズ部10を避けるように設けられている。
【0045】
図5は、レンズアレイの一部を拡大して示した断面図である。
凸部2は、基板部1の表面と略平行な突出面2aと、突出面2aの両側には傾斜面2bとを有する。凸部2は、図5の断面視において、突出面2aが上辺とすると、下辺より上辺が短くなるように傾斜面2bが設けられている。
【0046】
次に、上記のレンズアレイを成形するための成形型、及び、該成形型を用いた成形手順を説明する。
【0047】
図6は、成形型の断面図である。
成形型は、一対の型部材102,104からなる。この例では、図のように鉛直方向の下方に配置された型部材102を下型とし、上方に配置された型部材104を上型とする。
【0048】
一対の型部材102,104は、製造するレンズアレイのレンズ部の形状を反転させた形状のレンズ転写部102a,104aを含む型面を有する。成形時には、型部材102,104のそれぞれの型面が成形材料に接し、両者で挟み込むことによって該成形材料を成形する。一対の型部材102,104は、それぞれの型面が成形されるレンズアレイの基板1の平面視においける面積とほぼ等しい。また、一対の型部材102,104は、周縁部の径がほぼ等しく、いずれも型面の形状が正円形である。
【0049】
型部材102の型面には、レンズ転写部102aを除く部位に離型部103が設けられている。離型部103は、レンズ転写部102aを囲うように型面に沿って延設された、凹部である。離型部103は、成形時にレンズアレイの基板部1に凸部2を転写する部位であり、すなわち、離型部103の形状を反転させた形状が、レンズアレイの凸部2の形状に相当する。
【0050】
離型部103は、底面103aと、該底面103aの両側に形成された傾斜面103bを含む。これら傾斜面103bは、1つの底面103aから型部材102の型面側へ向かって拡がっていくようにテーパ状に形成されている。
【0051】
離型部103は、1つのレンズ転写部102aに対して1つ設けられ、型面を平面視した状態で、型部材102の中心に対して点対称となる位置関係で複数設けられている。型部材104の方にも同様に離型部が設けられていてもよい。
【0052】
図7は、図6の成形型を用いて成形するときの状態を示す断面図である。
先ず、型部材102の型面に成形材料である樹脂10Rを供給する。樹脂10Rは、図示しないディスペンサノズルを用いて型面上に所定量だけ塗布される。樹脂10Rを供給した後、図7に示すように、型部104と型部材102とによって、樹脂10Rを挟み込む。なお、この例では、樹脂10Rは熱硬化性樹脂である。
【0053】
型部104と型部材102の間で樹脂10Rを挟み込んだ状態で、成形型の外部から熱を加え、樹脂10Rを硬化させる。こうすることで、レンズ転写部102a,104a、及び、離型部103の形状に倣って、その形状の反転形状が表面に転写されたレンズアレイの成形体ができる。硬化後、レンズアレイの離型を行う。
【0054】
図8は、レンズアレイの離型を示す断面図である。
型部材104をレンズアレイから離型し、レンズアレイを型部材102に保持させた状態とする。
【0055】
レンズアレイの内部には、硬化時に伸縮することによって内部応力が発生している。このため、レンズアレイは、型部材104から開放されることで、内部応力によって型部材の型面に沿って僅かに変位する。この変位によって、離型部103では、レンズアレイと型部材102との剥離が生じ、この剥離した部位が起点となってレンズアレイと型部材102の間に隙間が生じる。
【0056】
図9は、図8の要部拡大図である。
レンズアレイの内部応力Fによって、凸部2の傾斜面(ここでは図中右側の傾斜面)2bと、型部材102における離型部103の傾斜面3aとの間でズレが生じる。離型部103において型部材102とレンズアレイとの間に生じた隙間がレンズアレイと型面との間の他の領域に適宜拡がり、レンズアレイと型面との間の離型抵抗力を著しく低下させ、この結果、レンズアレイを型部材102から離型させることができる。レンズアレイと型部材102の型面との間に隙間ができるとともに、レンズアレイが型部材102の型面から僅かな隙間を介して浮き上がり、つまり、離型した状態となる。従って、レンズアレイに外部から負荷をかけることなく離型を行うことができ、レンズアレイに変形等の不具合が生じない。
【0057】
また、基板部1に薄肉部4(図1参照)を設けることで、レンズ部10同士の間での硬化による収縮を抑さえることができ、個別のレンズ部10において収縮させることができる。こうすることで、レンズアレイ全体がその中心に向かって収縮することを抑制することができ、レンズ部10同士のピッチばらつきを抑えられる。
【0058】
次に、成形型の別の構成例を説明する。以下の例は、離型部の形状及び配置を変形したものである。離型部以外の構成については、特に説明しない限り、上述した例と同じであるため説明を省略又は簡略する。
【0059】
図10は、成形型の断面図である。図10では、一対の型部材の一部示したものである。
【0060】
一対の型部材102,104には、レンズ転写部102a,104aが設けられている。
【0061】
型部材102の型面には、該型面から突出し、型面に沿って延設された離型部203が形成されている。離型部203は、型部材102の型面において、レンズ転写部102aを除く部位に設けられている。離型部203は、型面を平面視した状態で、型部材102の中心と、その中心と同心円になる複数の凸部である。離型部203は、断面視において、下辺よりも上辺が短い台形である。型部材102の中心に設けられる離型部203は設けないで省略してもよい。
【0062】
図11Aから図11Cは、図10の成形型を用いた成形の手順を示す断面図である。
先ず、上述した手順と同様に、型部材102,104の間に成形材料である樹脂を挟み込み、樹脂を硬化させる。このとき、型部材102の型面に形成された離型部203の形状に倣って、レンズアレイの基板1における型部材102側の面には、離型部203の反転形状と一致する形状の凹部22が形成される(図11A)。
【0063】
図11Aに示すように、離型部203は、断面視において台形であり、その上底に位置する上面203aと、該上面203aの両側に設けられた傾斜面203bとからなる。これら傾斜面203bは、1つの上面203aから型部材102側へ向かって拡がっていくようにテーパ状に形成されている。
【0064】
図11Bに示すように、型部材104を成形されたレンズアレイから離型させる。すると、レンズアレイは、型部材104から開放されたことにより、硬化時に生じた内部応力に基づく変位が可能となる。そして、型部材102の離型部203の傾斜面202bとレンズアレイの凹部22の傾斜面22bとの間にズレが生じ、レンズアレイを離型させることができる。
【0065】
図11Cは、レンズアレイを型部材102から完全に離型した状態を示している。レンズアレイの基板部1におけるレンズ部10を除く部位に、型部材102の離型部203の反転形状に相等する凹部22が形成される。凹部22は、レンズ部10を除く部位に設けられているため、レンズ部10の光学特性に影響が与えることがない。また、レンズアレイを成形した後で、基板部1の凹部22が設けられた部分を別の工程で取り除いてもよい。
【0066】
離型部の形状は、上記のように型部材の型面に沿って延設されたものに限定されず、次に例のように円錐台の形状としてもよい。
【0067】
図12は、成形型を平面視した状態を示す図である。この例では、型部材101の型面における、レンズ転写部102aを除く部位に、複数の離型部303が配置されている。複数の離型部303は、図12のように型面を平面視した状態で、型部材102の中心Cに対して点対称となる位置関係で設けられている。
【0068】
図13は、図12のレンズアレイの矢印方向の断面を斜視した図である。図14は、離型部の斜視図である。
【0069】
離型部303は、型部材102の型面から突出する円錐台の形状を有する。離型部303は、上面303aと該上面303aの周囲に傾斜面303bとからなる。
【0070】
離型部303は、型部材102の中心に1個設け、中心から等距離となる円周上において、周方向に等間隔となるように少なくとも3個設けることが好ましい。
【0071】
このように、離型部303は、図4や図10のように、型面から突出し、型面に沿って延設された形状であってもよいし、図13のように型面から突出した円錐台であってもよい。
【0072】
また、離型部303が、型面に沿って延設された形状である場合に、一部に切欠きを設けて、断続的に設けられていてもよい。
【0073】
離型部の傾斜面の角度や、離型部が凸部である場合にはその高さ(凹部である場合にはその深さ)は、使用する成形材料の収縮特性などを鑑みて決められる。
【0074】
上記の例では、一対の型部材のうち一方の型部材のみに離型部を形成する例を説明したが、一対の型部材の両方の型面に離型部を設けた構成としてもよい。この場合、一方の型部材と他方の型部材との間で、離型部の形状及び配置のうち少なくとも一方が異なる構成とすることが好ましい。こうすれば、予め定めた一方の型部材に成形体であるレンズアレイを保持させ、その後、該一方の型部材から離型させればよいため、常に同じ手順で離型することができ、製造効率が良い。
【0075】
本発明は、上述した例に限定されず、適宜変形可能である。
図15は、図4のレンズアレイの変形例である。
図15に示すレンズアレイのように、凸部2は、基板部1の表面において、レンズ部10の1つ1つを平面視において円形状に囲うように形成されていてもよい。このような構成例においても、レンズアレイの断面図は、図5と同様となる。
【0076】
本明細書は、以下の内容を開示するものである。
(1)基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とを有するレンズアレイを成形材料で成形する成形型であって、
前記成形材料に接する型面を有する型部材を備え、前記型部材が前記レンズ部の形状を転写するために前記型面に設けられた複数のレンズ転写部と、前記型面における前記レンズ転写部を除く部位の少なくとも一部に形成された離型部とを備え、前記離型部が傾斜面を含む成形型。
(2)(1)に記載の成形型であって、
前記離型部が、前記型面に沿って延設された凹部である成形型。
(3)(1)に記載の成形型であって、
前記離型部が、前記型面から突出し、該型面に沿って延設されている成形型。
(4)(1)に記載の成形型であって、
前記離型部が、前記型面から突出した円錐台である成形型。
(5)(1)から(4)のいずれか1つに記載の成形型であって、
前記離型部が、前記型面を平面視した状態で、該型部材の中心に対して点対称となる位置関係で複数設けられている成形型。
(6)(1)から(5)のいずれか1つに記載の成形型であって、
前記型部材が一対で構成され、一方の型部材と他方の型部材との間で、前記離型部の形状及び配置のうち少なくとも一方が異なる成形型。
(7)基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とを有するレンズアレイを成形材料で成形する成形方法であって、
前記レンズ部の形状を転写するレンズ転写部が設けられた型面を前記成形材料に押し付けて成形する工程と、
前記成形材料を硬化させる工程と、
前記型面の、前記レンズ転写部を除く部位の少なくとも一部に設けられた離型部に形成された傾斜面で、前記レンズアレイと前記型部材との間の剥離を生じさせ、レンズアレイを離型する工程と、を有する成形方法。
(8)(7)に記載の成形方法であって、
前記型部材が一対で構成され、一方の型部材と他方の型部材との間で、前記離型部の形状及び配置のうち少なくとも一方が異なり、
前記一方の型部材及び前記他方の型部材から順に前記レンズアレイを離型する成形方法。
(9)(1)から(6)のいずれか1つに記載の成形型によって成形されたレンズアレイであって、
前記レンズアレイは、前記基板部における前記レンズ部を除く部位に前記離型部の形状を反転させた形状を有する凹部又は凸部を有するレンズアレイ。
【符号の説明】
【0077】
1 基板部
10 レンズ部
102,104 型部材
102a,104a レンズ転写部
103,203 離型部
103b,203b 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とを有するレンズアレイを成形材料で成形する成形型であって、
前記成形材料に接する型面を有する型部材を備え、前記型部材が前記レンズ部の形状を転写するために前記型面に設けられた複数のレンズ転写部と、前記型面における前記レンズ転写部を除く部位の少なくとも一部に形成された離型部とを備え、前記離型部が傾斜面を含む成形型。
【請求項2】
請求項1に記載の成形型であって、
前記離型部が、前記型面に沿って延設された凹部である成形型。
【請求項3】
請求項1に記載の成形型であって、
前記離型部が、前記型面から突出し、該型面に沿って延設されている成形型。
【請求項4】
請求項1に記載の成形型であって、
前記離型部が、前記型面から突出した円錐台である成形型。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の成形型であって、
前記離型部が、前記型面を平面視した状態で、該型部材の中心に対して点対称となる位置関係で複数設けられている成形型。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の成形型であって、
前記型部材が一対で構成され、一方の型部材と他方の型部材との間で、前記離型部の形状及び配置のうち少なくとも一方が異なる成形型。
【請求項7】
基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とを有するレンズアレイを成形材料で成形する成形方法であって、
前記レンズ部の形状を転写するレンズ転写部が設けられた型面を前記成形材料に押し付けて成形する工程と、
前記成形材料を硬化させる工程と、
前記型面の、前記レンズ転写部を除く部位の少なくとも一部に設けられた離型部に形成された傾斜面で、前記レンズアレイと前記型部材との間の剥離を生じさせ、レンズアレイを離型する工程と、を有する成形方法。
【請求項8】
請求項7に記載の成形方法であって、
前記型部材が一対で構成され、一方の型部材と他方の型部材との間で、前記離型部の形状及び配置のうち少なくとも一方が異なり、
前記一方の型部材及び前記他方の型部材から順に前記レンズアレイを離型する成形方法。
【請求項9】
上記請求項1から6のいずれか1項に記載の成形型によって成形されたレンズアレイであって、
前記レンズアレイは、前記基板部における前記レンズ部を除く部位に前記離型部の形状を反転させた形状を有する凹部又は凸部を有するレンズアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−194751(P2011−194751A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65240(P2010−65240)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】