説明

成形機のエジェクト装置

【課題】小型、軽量かつ低コストにしてメンテナンス性が良好な成形機のエジェクト装置を提供する。
【解決手段】エジェクト用電動サーボモータ1の回転を、タイミングベルト14を介してプーリ2に伝達し、プーリ2の回転を、ネジ軸3とこれに螺合されるナット体5とからなるボールネジ機構を用いて押出プレート6(エジェクトピン8)の直線往復運動に変換する。プーリ2を回転可能に収納したプーリケース11を、可動ダイプレート4と一体に形成されたトグル取付部9に取り付ける。また、押出プレート6をネジ軸3に沿って案内するガイドレール7を、可動金型の取付面側から挿入されたボルト36を用いて可動ダイプレート4に締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機やダイカストマシンなどの成形機に備えられるエジェクト装置に係り、特に、可動ダイプレートへの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイカストマシンに備えられるエジェクト装置として、エジェクト用電動サーボモータの回転をボールネジ機構を用いてエジェクトピンの直線往復運動に変換するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図5乃至図8に、本願出願人が従来実施しているこの種の電動式エジェクト装置の一例を示す。これらの図に示すように、本例の電動式エジェクト装置は、エジェクト用電動サーボモータ1と、該モータ1によって回転駆動されるプーリ2と、該プーリ2に連結されたネジ軸3と、該ネジ軸3に螺合され、該ネジ軸3の回転に伴って可動ダイプレート4に接近する方向又は可動ダイプレート4から離隔する方向に直線往復移動するナット体5と、該ナット体5に取り付けられた押出しプレート6と、該押出しプレート6をネジ軸3に沿って案内するガイドバー7と、押出プレート6に取り付けられたエジェクトピン8とから主に構成されている。なお、図中の符号9は、可動ダイプレート4に形成されたトグル取付部を示しており、可動ダイプレート4は、このトグル取付部9に連結されたトグルリンク機構を介して図示しない固定ダイプレートに対して接近又は離隔する方向に直線往復移動される。
【0004】
プーリ2は、軸受10を介してプーリケース11の内部に回転可能に収納され、エジェクト用電動サーボモータ1は、プーリケース11の外面から外向きに突設されたモータ取付プレート12の先端部にボルト13を用いて締結される。そして、エジェクト用電動サーボモータ1のモータ軸に備えられたプーリ1aとプーリケース11の内部に収納されたプーリ2とは、タイミングベルト14を介して連結される。モータ取付プレート12には、タイミングベルト14を覆うベルトカバー15が取り付けられる。このように、プーリ1aとプーリ2とをタイミングベルト14を介して連結すると、プーリ1aとタイミングベルト14との間、及びプーリ2とタイミングベルト14との間で滑りを生じないので、エジェクトピンの突出位置を高精度に制御することができる。
【0005】
図6及び図7に示すように、プーリケース11の開放側の端部には、取付フランジ16が一体に形成されており、プーリケース11は、この取付フランジ16及びガイドレール7を介して可動ダイプレート4の端面に取り付けられる。即ち、取付フランジ16の可動ダイプレート4側の端面には、ガイドレール7の一端部を嵌合可能な凹部17が形成されており、該凹部17の底面には、取付フランジ16の他の端面まで貫通するボルト貫通孔18が開設されている。一方、可動ダイプレート4の凹部17と対応する位置には、ガイドレール7の他端部を嵌合可能な凹部19が形成され、該凹部19の底面にはネジ穴20が形成されている。また、ガイドレール7は、円柱形に形成され、その一端面から他の端面まで貫通するボルト貫通孔21が開設されている。そして、ガイドレール7の一端部を可動ダイプレート4に形成された凹部19内に嵌合し、このガイドレール7の他端部を取付フランジ16に形成された凹部17に嵌合した後、取付フランジ16に開設されたボルト貫通孔18及びガイドレール7に開設されたボルト貫通孔21内に挿通されたボルト22を、凹部19の底面に形成されたネジ穴20に螺合することにより、プーリケース11を固定することができる。
【0006】
押出しプレート6には、ガイドレール7の貫通孔が開設されており、この貫通孔には、図7に示すように、滑り軸受23が設けられる。エジェクトピン8は、図5に示すように、ナット24を用いて押出しプレート6に締結される。その先端部は、可動ダイプレート4に開設されたエジェクトピン挿入孔25内に摺動可能に挿入される。
【0007】
このように構成された従来の電動式エジェクト装置は、エジェクト用電動サーボモータ1を正転したとき、ネジ軸3の回転駆動に伴ってナット体5が可動ダイプレート4に接近する方向に直線移動し、エジェクトピン8の先端部が可動ダイプレート4の可動金型取付面側に突出し、成形品を可動金型から取り出す。この状態からエジェクト用電動サーボモータ1を逆転すると、ネジ軸3の回転駆動に伴ってナット体5が可動ダイプレート4から離隔する方向に直線移動し、エジェクトピン8の先端部が成形品の取り出し位置よりも後退する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−315072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来のエジェクト装置は、プーリケース11に取付フランジ16を設け、取付フランジ16に開設された凹部17内にガイドレール7の一端部を嵌合すると共に、取付フランジ16に開設されたボルト貫通孔18及びガイドレール7に開設されたボルト貫通孔21内に挿通されたボルト22を、可動ダイプレート4の凹部19の底面に形成されたネジ穴20に螺合することによって可動ダイプレート4にプーリケース11を取り付けるので、長大なガイドレール7とボルト22とが必要となり、装置が大型化、大重量化及び高コスト化するという問題がある。プーリケース11に取付フランジ16を設けるので、押出しプレート6に対するエジェクトピン8の取り付け及び取り外しをするための作業スペースが制限され、メンテナンス性が悪いという問題もある。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型、軽量かつ低コストにしてメンテナンス性が良好な成形機のエジェクト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するため、第1に、エジェクト用電動サーボモータによって回転駆動されるプーリと、前記プーリに連結されたネジ軸と、前記ネジ軸に螺合され、前記ネジ軸の回転に伴って可動ダイプレートに接近する方向又は可動ダイプレートから離隔する方向に直線往復移動するナット体と、前記ナット体に取り付けられた押出しプレートと、前記押出しプレートを前記ネジ軸に沿って案内するガイドレールと、前記押出プレートに取り付けられたエジェクトピンと、前記可動ダイプレートに形成されたトグル取付部とを備えた成形機のエジェクト装置において、前記プーリを回転可能に保持するプーリケースを前記トグル取付部に取り付けると共に、前記ガイドレールを可動金型の取付面側から挿入されたボルトを用いて前記可動ダイプレートに締結するという構成にした。
【0012】
かかる構成によると、プーリケースを可動ダイプレートのトグル取付部に取り付けるので、プーリケースとガイドレールとを嵌合させる必要がなく、ガイドレールを短縮化することができる。また、ガイドレールを可動金型の取付面側から挿入されたボルトを用いて可動ダイプレートに締結するので、プーリケースとガイドレールと可動ダイプレートとを一体に締結する場合に比べて、ボルトの短縮化することができる。さらに、プーリケースの開口端側に取付フランジを形成する必要がないので、押出しプレートにおけるエジェクトピンを取り付け取り外しするための作業スペースを拡大することができる。
【0013】
本発明は第2に、前記第1のエジェクト装置において、前記プーリケースの外面に、前記トグル取付部に連結するためのボスを一体に形成するという構成にした。
【0014】
かかる構成によると、プーリケースの外面に所要のボスを一体に形成するので、部品点数の減少及び組立工数の減少による低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る成形機のエジェクト装置は、プーリケースをトグル取付部に取り付けると共に、ガイドレールを可動金型の取付面側から挿入されたボルトを用いて可動ダイプレートに締結するので、ガイドレールを短縮化できると共に、ガイドレールを可動ダイプレートに締結するボルトを短縮化できて、小型、軽量かつ低コストに製造することができる。また、プーリケースの開口端側に取付フランジを形成する必要がないので、押出しプレートにおけるエジェクトピンを取り付け取り外しするための作業スペースを拡大することができて、装置のメンテナンス性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係るエジェクト装置の一部断面した側面図である。
【図2】実施形態に係るエジェクト装置のベルトカバーを取り外した状態の正面図である。
【図3】実施形態に係るエジェクト装置の一部断面した平面図である。
【図4】実施形態に係るエジェクト装置の背面図である。
【図5】従来例に係るエジェクト装置の一部断面した側面図である。
【図6】従来例に係るエジェクト装置のベルトカバーを取り外した状態の正面図である。
【図7】従来例に係るエジェクト装置の一部断面した平面図である。
【図8】従来例に係るエジェクト装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るエジェクト装置の実施形態を、図1乃至図4を用いて説明する。本例のエジェクト装置も、基本的には図5乃至図8に示した従来例に係るエジェクト装置と同じであり、エジェクト用電動サーボモータ1と、該モータ1によって回転駆動されるプーリ2と、該プーリ2に連結されたネジ軸3と、該ネジ軸3に螺合され、該ネジ軸3の回転に伴って可動ダイプレート4に接近する方向又は可動ダイプレート4から離隔する方向に直線往復移動するナット体5と、該ナット体5に取り付けられた押出しプレート6と、該押出しプレート6をネジ軸3に沿って案内するガイドレール7と、押出プレート6に取り付けられたエジェクトピン8とから主に構成されており、可動ダイプレート4には、トグル取付部9が一体に形成されている。プーリ2は、軸受10を介してプーリケース11の内部に回転可能に収納され、エジェクト用電動サーボモータ1は、プーリケース11の外面から外向きに突設されたモータ取付プレート12の先端部にボルト13を用いて締結される。
【0018】
図1及び図2に示すように、プーリケース11の外面には、トグル取付部9に連結するためのボス31が一体に形成されている。ボス31は、トグル取付部9の内面に突き当てられるように長さが設定されており、その外面には、ネジ穴32が開設されている。一方、トグル取付部9のこれと対応する位置には、ボルト貫通孔33が開設される。プーリケース11は、ネジ穴32とボルト貫通孔33とを合致した後、ボルト貫通孔33内に挿通されたボルト34を、ネジ穴32に螺合することによってトグル取付部9に締結される。このように、プーリケース11の外面に、プーリケース11をトグル取付部9に連結するためのボス31を一体に形成すると、プーリケース11とトグル取付部9とを連結するための特別の部材を必要としないので、部品点数の減少及び組立工数の減少による低コスト化を図ることができる。なお、プーリケース11の開口側の端部には、取付フランジが設けられておらず、該部は単純な円筒形に形成されている。
【0019】
ガイドレール7は、円柱状に形成されており、その一端側の中心部には、ネジ穴37が開設されている。一方、可動ダイプレート4のガイドレール設定部には、ガイドレール7の一端部を嵌合可能な凹部19が形成され、該凹部19の底面中央部には、ボルト貫通孔35が開設されている。ガイドレール7は、可動ダイプレート4のガイドレール設定部に形成された凹部19内に一端部を嵌合した後、可動ダイプレート4の可動金型取付面側からボルト貫通孔35に挿通されたボルト36を、ガイドレール7の一端部に開設されたネジ穴37に螺合することによって可動ダイプレート4に締結される。
【0020】
その他については、図5乃至図8に示した従来例に係る成形機のエジェクト装置と同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0021】
上述のように、実施形態に係る成形機のエジェクト装置は、プーリケース11を可動ダイプレート4と一体に形成されたトグル取付部9に取り付けるので、プーリケース11とガイドレール7とを嵌合させる必要がなく、ガイドレール7を短縮化することができる。また、ガイドレール7を可動金型の取付面側から挿入されたボルト36を用いて可動ダイプレート4に締結するので、プーリケース11とガイドレール7と可動ダイプレート4とを一体に締結する場合に比べて、ボルトの短縮化することができる。よって、エジェクト装置の小型化、軽量化及び低コスト化を図ることができる。さらに、実施形態に係る成形機のエジェクト装置は、プーリケース11の開口端側に取付フランジを形成する必要がないので、押出しプレート6におけるエジェクトピン8の取り付け取り外しをするための作業スペースを拡大することができて、そのメンテナンス性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、射出成形機やダイカストマシンなどの成形機からの成形品の取り出しに利用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 エジェクト用電動サーボモータ
2 プーリ
3 ネジ軸
4 可動ダイプレート
5 ナット体
6 押出しプレート
7 ガイドレール
8 エジェクトピン
9 トグル取付部
10 軸受
11 プーリケース
12 モータ取付プレート
13 ボルト
14 タイミングベルト
15 ベルトカバー
31 ボス
32 ネジ穴
33 ボルト貫通孔
34 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エジェクト用電動サーボモータによって回転駆動されるプーリと、前記プーリに連結されたネジ軸と、前記ネジ軸に螺合され、前記ネジ軸の回転に伴って可動ダイプレートに接近する方向又は可動ダイプレートから離隔する方向に直線往復移動するナット体と、前記ナット体に取り付けられた押出しプレートと、前記押出しプレートを前記ネジ軸に沿って案内するガイドレールと、前記押出プレートに取り付けられたエジェクトピンと、前記可動ダイプレートに形成されたトグル取付部とを備えた成形機のエジェクト装置において、
前記プーリを回転可能に保持するプーリケースを前記トグル取付部に取り付けると共に、前記ガイドレールを可動金型の取付面側から挿入されたボルトを用いて前記可動ダイプレートに締結したことを特徴とする成形機のエジェクト装置。
【請求項2】
前記プーリケースの外面に、前記トグル取付部に連結するためのボスを一体に形成したことを特徴とする請求項1に記載の成形機のエジェクト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−240676(P2010−240676A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90284(P2009−90284)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】