説明

成形機の射出装置

【課題】シリンダ装置と他の駆動装置とによって好適に射出を行うことができる成形機の射出装置を提供する。
【解決手段】射出装置1は、プランジャ5と、シリンダ装置7と、駆動装置11と、着脱部13とを有する。プランジャ5は、キャビティ105に成形材料を押し出し可能である。シリンダ装置7は、プランジャ5と連結されたピストンロッド25を有する。駆動装置11は、被駆動部(ナット65等)を有し、ナット65等をピストンロッド25と平行な方向において駆動可能である。着脱部13は、ピストンロッド25とナット65等との連結及び当該連結の解除が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の射出装置に関する。成形機は、例えば、ダイカストマシンや射出成形機である。
【背景技術】
【0002】
成形材料を押し出すプランジャを液圧機器と他の駆動機器(例えば電動機)との組み合わせにより駆動する、いわゆるハイブリッド式の射出装置が知られている(例えば特許文献1)。また、シリンダ装置と、電動機により駆動されるボールねじ機構とを並列に配置して互いに接続したハイブリッド式の駆動機構が知られている(例えば特許文献2)。特許文献3では、ハイブリッド式の射出装置において、シリンダ装置とボールねじ機構とを並列に配置して互いに接続した駆動機構を用いている。そして、射出はボールねじ機構の駆動力により行われ、増圧・保圧はシリンダ装置により行われる。なお、増圧・保圧においては、ボールねじ機構の制御トルクがシリンダ装置の反力とならないようにボールねじ機構のトルク制御がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−84654号公報
【特許文献2】特開平07−137105号公報
【特許文献3】特開2006−887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3に開示されている技術では種々の不都合が生じる。例えば、射出速度は、ボールねじ機構の限界速度により制限される。また、プランジャのストロークと同等のストロークのボールねじ機構を設ける必要がある。
【0005】
本発明の目的は、シリンダ装置と他の駆動装置とによって好適に射出を行うことができる成形機の射出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る成形機の射出装置は、キャビティに成形材料を押し出すプランジャと、前記プランジャと連結されたピストンロッドを有するシリンダ装置と、被駆動部を有し、当該被駆動部を前記ピストンロッドと平行な方向において駆動可能な駆動装置と、前記ピストンロッドと前記被駆動部との連結及び当該連結の解除が可能な着脱部と、を有する。
【0007】
好適には、前記着脱部は、電磁石の励磁及び消磁により前記ピストンロッドと前記被駆動部との連結及び当該連結の解除を行う。
【0008】
好適には、前記着脱部は、係合部材のノッチへの係合及び係合解除により前記ピストンロッドと前記被駆動部との連結及び当該連結の解除を行う。
【0009】
好適には、前記駆動装置は、前記被駆動部から後退方向に前記ピストンロッドに平行に延びるガイドバーと、前記ガイドバーをその軸方向へ移動可能に案内するガイド部と、を有する。
【0010】
本発明の一態様に係る成形機の射出装置は、キャビティに成形材料を押し出すプランジャと、前記プランジャと連結されたピストンロッドと、当該ピストンロッドに固定されたピストンと、当該ピストンを収容するシリンダチューブとを有するシリンダ装置と、被駆動部を有し、当該被駆動部を前記ピストンロッドと平行な方向において駆動可能な駆動装置と、を有し、前記被駆動部は、前記ピストンロッドに固定された部材に対して前記シリンダチューブ外において前進方向へ当接可能であるとともに、その当接位置から前記ピストンロッドに対して相対的に後退可能である。
【0011】
好適には、前記射出装置は、低速射出においては、前記駆動装置の駆動力及び前記シリンダ装置の駆動力のうち前記駆動装置の駆動力のみにより前記プランジャを駆動し、高速射出、増圧及び製品押出追従においては、前記駆動装置の駆動力及び前記シリンダ装置の駆動力のうち前記シリンダ装置の駆動力のみにより前記プランジャを駆動するように、前記駆動装置及び前記シリンダ装置を制御する制御装置を更に有する。
【0012】
好適には、前記駆動装置は、回転式の電動機と、前記電動機の回転を並進運動に変換して前記被駆動部に伝達する伝達機構と、を有する。
【0013】
好適には、前記駆動装置は、双方向ポンプと、ピストンに隔てられた一方のシリンダ室が前記双方向ポンプの一方のポートに接続され、他方のシリンダ室が前記双方向ポンプの他方のポートに接続された駆動シリンダ装置と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリンダ装置と他の駆動装置とによって好適に射出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るダイカストマシンの射出装置の要部の構成を示す模式図。
【図2】図1の射出装置の動作を説明する図。
【図3】図3(a)〜図3(c)は駆動装置の他の例を示す図。
【図4】駆動装置の更に他の例を示す図。
【図5】図5(a)〜図5(c)はシリンダ装置と駆動装置との連結部分の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るダイカストマシンDC1の射出装置1の要部の構成を示す図である。
【0017】
射出装置1は、不図示の型締装置に保持された固定金型101及び移動金型103により形成されたキャビティ105に溶湯(溶融状態の金属材料)を射出・充填する装置である。
【0018】
射出装置1は、キャビティ105に連通するスリーブ3と、スリーブ3内において溶湯をキャビティ105へ押し出すプランジャ5と、プランジャ5を駆動するシリンダ装置7と、シリンダ装置7を作動液(例えば油)の供給により駆動するための液圧装置9と、プランジャ5を駆動する駆動装置11と、シリンダ装置7と駆動装置11との連結及びその解除を行う着脱部13と、これら各装置を制御する制御装置15を有している。
【0019】
以下、概ね上記の列挙順に詳細を説明する。
【0020】
スリーブ3は、例えば、固定金型101に挿通されるように設けられている。プランジャ5は、スリーブ3を摺動するプランジャチップ5aと、プランジャチップ5aに固定されたプランジャロッド5bとを有している。
【0021】
スリーブ3に形成された給湯口3aから溶湯がスリーブ3内に供給された状態で、プランジャチップ5aがスリーブ3内をキャビティ105に向かって摺動する(前進する)ことにより、溶湯はキャビティ105に射出、充填される。
【0022】
(液圧式駆動系の構成:シリンダ装置7、液圧装置9等)
シリンダ装置7は、例えば、単動式のシリンダ装置により構成されており、シリンダチューブ21と、シリンダチューブ21の内部を摺動可能なピストン23と、ピストン23に固定され、シリンダチューブ21から延び出るピストンロッド25とを有している。
【0023】
シリンダチューブ21は、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。シリンダチューブ21の内部は、ピストン23により、ピストンロッド25が延び出る側のロッド側室21rと、その反対側のヘッド側室21hとに区画されている。ヘッド側室21hに作動液が供給されることにより、ピストン23は前進(プランジャ5側へ移動)可能であり、ロッド側室21rに作動液が供給されることにより、ピストン23は後退可能である。
【0024】
シリンダ装置7は、プランジャ5に対して同軸に配置され、ピストンロッド25は、プランジャ5に継手27を介して連結され、シリンダチューブ21は、不図示の型締装置などに対して固定的に設けられている。従って、ピストン23のシリンダチューブ21に対する移動により、プランジャ5はスリーブ3内を前進又は後退する。
【0025】
なお、プランジャ5及びピストンロッド25は同軸に連結されているから、「プランジャ5に平行」と「ピストンロッド25に平行」とを特に区別せずに言及することがあり、また、「プランジャ5に連結」と「ピストンロッド25に連結」とを特に区別せずに言及することがあるものとする。
【0026】
液圧装置9は、作動液を貯留するタンク29と、タンク29の作動液を送出するポンプ31と、ポンプ31を駆動するポンプ用電動機33と、シリンダ装置7に作動液を供給するアキュムレータ35と、を有している。
【0027】
タンク29は、例えば、開放タンクであり、大気圧下で作動液を保持している。タンク29は、シリンダ装置7から排出される作動液を受け入れ、また、ポンプ31を介してシリンダ装置7及びアキュムレータ35に作動液を供給する。
【0028】
ポンプ31は、歯車ポンプやベーンポンプ等のロータの回転により作動液を吐出するロータリポンプであってもよいし、アキシャル型のプランジャポンプやラジアル式のプランジャポンプ等のピストンの往復により作動液を吐出するプランジャポンプであってもよい。また、ポンプ31は、ロータやピストンの1周期の運動における吐出量が、固定された定容量ポンプであってもよいし、可変とされた可変容量ポンプであってもよい。ポンプ31は、1方向に作動液を吐出できれば十分であるが、双方向(2方向)ポンプと構造が同一であってもよい。
【0029】
ポンプ用電動機33は、直流モータでも交流モータでもよい。また、ポンプ用電動機33は、誘導モータや同期モータ等の適宜なモータにより構成されてよい。ポンプ用電動機33は、例えば、サーボモータとして構成されており、ポンプ用電動機33の回転を検出するエンコーダ37と、ポンプ用電動機33に電力を供給するサーボドライバ(サーボアンプ)39と共にサーボ機構を構成している。
【0030】
なお、後述する動作の説明において、ポンプ用電動機33が停止しているとき、ポンプ用電動機33は、トルクフリーの状態とされてもよいし、一定位置に停止するように制御されてもよいし、ブレーキを含んで構成され、ブレーキが使用されてもよい。射出装置の具体的な構成及びポンプ用電動機33が停止される状況に応じて適切な停止方法が選択されてよい。
【0031】
アキュムレータ35は、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式、プラダ式などの適宜な形式のアキュムレータにより構成されてよい。例えば、アキュムレータ35は、気体圧式、シリンダ式又はプラダ式のアキュムレータであり、アキュムレータ35内に保持されている気体(例えば空気若しくは窒素)が圧縮されることにより蓄圧され、その蓄圧された圧力により作動液を供給する。
【0032】
液圧装置9は、シリンダ装置7、タンク29、ポンプ31及びアキュムレータ35を互いに接続する複数の流路、及び、当該複数の流路における作動液の流れを制御する複数の弁を有している。複数の流路は、例えば、鋼管、可撓性のホース又は金属ブロックにより構成されている。液圧装置9は、具体的には、例えば、以下に述べる流路及び弁を有している。
【0033】
液圧装置9は、アキュムレータ35とヘッド側室21hとを接続する第1流路41と、ロッド側室21rとタンク29とを接続する第2流路43と、ロッド側室21rとヘッド側室21hとを接続する第3流路45とを有している。なお、第1流路41及び第3流路45は、ヘッド側室21h側の一部が互いに共用され、第2流路43及び第3流路45は、ロッド側室21r側の一部が互いに共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
【0034】
射出装置1は、アキュムレータ35から第1流路41を介してヘッド側室21hへ作動液を供給してピストン23を前進させることが可能である。また、射出装置1は、ピストン23の前進に伴ってロッド側室21rから押し出される作動液を第2流路43を介してタンク29に排出することが可能である。換言すれば、射出装置1は、ロッド側室21rの圧抜きが可能である。また、射出装置1は、ピストン23の前進に伴ってロッド側室21rから押し出される作動液を第3流路45を介してヘッド側室21hに還流させることも可能である。すなわち、第3流路45はランアラウンド回路を構成している。
【0035】
液圧装置9は、ポンプ31の吐出口とアキュムレータ35とを接続する第4流路47と、ポンプ31の吐出口とヘッド側室21hとを接続する第5流路49とを有している。なお、第4流路47のアキュムレータ35側の一部は第1流路41のアキュムレータ35側の一部と共用され、第5流路49のヘッド側室21h側の一部は第3流路45のヘッド側室21h側の一部と共用され、第4流路47及び第5流路49のポンプ31側の一部は互いに共用されている。ただし、これらは共用されていなくてもよい。
【0036】
射出装置1は、ポンプ31から第4流路47を介してアキュムレータ35に作動液を供給することにより、アキュムレータ35を蓄圧することが可能である。また、射出装置1は、後述するように駆動装置11によりピストン23を前進させるときには、その前進に伴って容積が拡大するヘッド側室21hに対して、ポンプ31から第5流路49を介して作動液を補給することが可能である。なお、ヘッド側室21hへの作動液の補給は、ヘッド側室21hの容積拡大に伴う負圧を利用して、タンク29から適宜な流路を介してヘッド側室21hに作動液が供給されることにより行われてもよい。
【0037】
液圧装置9は、第2流路43及び第3流路45のロッド側室21r側の共用部分に設けられたサーボバルブ51を有している。サーボバルブ51は、入力された電圧に応じた開口度で開くことにより、流量を無段階で調整可能である。また、サーボバルブ51は、開口度に応じた信号を出力可能であり、その信号に基づいてフィードバック制御がなされることによりサーボ機構を構成する。サーボバルブ51は、例えば、圧力補償付の流量制御弁により構成されている。サーボバルブ51は、ロッド側室21rから排出される作動液の流量を制御してシリンダ装置7の動作(速度)を制御可能であり、いわゆるメータアウト回路を構成している。
【0038】
液圧装置9は、第1逆止弁VLA〜第4逆止弁VLDを有している。これらは、例えば、パイロット圧力が導入されて制御されるものである。パイロット圧力としては、例えば、不図示の液圧回路を介してアキュムレータ35の圧力が利用される。第1逆止弁VLA〜第4逆止弁VLDの配置及び機能は、具体的には以下のとおりである。
【0039】
第1逆止弁VLAは、第1流路41に設けられている。第1逆止弁VLAは、パイロット圧力が導入されていないときは、アキュムレータ35側からヘッド側室21h側への作動液の流れを禁止し、その反対方向の流れを許容する。また、第1逆止弁VLAは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを許容する(開かれる)。
【0040】
第2逆止弁VLBは、第2流路43に設けられている。第2逆止弁VLBは、パイロット圧力が導入されていないときは、ロッド側室21r側からタンク29側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第2逆止弁VLBは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
【0041】
第3逆止弁VLCは、第3流路45に設けられている。第3逆止弁VLCは、パイロット圧力が導入されていないときは、ロッド側室21r側からヘッド側室21h側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第3逆止弁VLCは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
【0042】
第4逆止弁VLDは、第4流路47に設けられている。第4逆止弁VLDは、パイロット圧力が導入されていないときは、ポンプ31側からアキュムレータ35側への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、第4逆止弁VLDは、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する(閉じられる)。
【0043】
上記の他、液圧装置9は、ポンプ31の作動液を中子用のシリンダ装置等の適宜な装置に送出するための流路及び制御弁を有していてもよい。
【0044】
(電動式駆動系の構成:駆動装置11、着脱部13等)
駆動装置11は、低速用電動機53と、低速用電動機53の駆動力をプランジャ5(ピストンロッド25)に伝達する伝達機構55と、その伝達の過程でピストンロッド25を傾斜させるモーメントが発生することを抑制するための案内機構57とを有している。なお、駆動装置11からピストンロッド25(着脱部13)への運動の出力は、具体的には、伝達機構55と案内機構57とを連結する連結部材71を介して行われる。
【0045】
低速用電動機53は、例えば、回転式の電動機であり、特に図示しないが、界磁及び電機子の一方を構成するステータと、界磁及び電機子の他方を構成し、ステータに対して回転可能なロータとを有している。なお、低速用電動機53は、ポンプ用電動機33と同様に、直流モータでも交流モータでもよいし、誘導モータでも同期モータでもよい。低速用電動機53は、シリンダ装置7に対して並列に配置されている。すなわち、ロータの回転軸や出力軸53aはピストンロッド25に対して平行である。
【0046】
低速用電動機53は、例えば、サーボモータとして構成されており、低速用電動機53の回転を検出するエンコーダ59と、低速用電動機53に電力を供給するサーボドライバ61と共にサーボ機構を構成している。
【0047】
低速用電動機53は、ブレーキ付きの電動機であることが好ましい。例えば、特に図示しないが、低速用電動機53は、ロータと共にステータに対して回転するディスクと、ステータに対して回転不可能なディスクと、これら2枚のディスクを当接させるばね力を生じるばねと、ばね力に抗して2枚のディスクを離間させることが可能なアーマチュアとを有している。
【0048】
なお、後述する動作の説明において、低速用電動機53が停止しているとき、射出装置の具体的な構成及び低速用電動機53が停止される状況に応じて適切な停止方法が選択されてよいことは、ポンプ用電動機33と同様である。
【0049】
伝達機構55は、低速用電動機53の回転を並進運動に変換してプランジャ5に伝達する。伝達機構55は、例えば、ねじ機構により構成され、低速用電動機53により回転駆動されるねじ軸63と、ねじ軸63に螺合されたナット65とを有している。
【0050】
ねじ軸63は、例えば、ピストンロッド25に平行に、低速用電動機53に対して同軸に配置され、低速用電動機53の出力軸53aとカップリングを介して連結されている。換言すれば、伝達機構55は、ピストンロッド25に対して並列に配置されている。また、ねじ軸63は、シリンダチューブ21等に対して回転可能に且つ軸方向に移動不可能に支持されている。ナット65は、後述するように案内機構57によりねじ軸63回りの回転が規制されている。
【0051】
そして、ねじ軸63が低速用電動機53により回転駆動されると、ねじ軸63に螺合したナット65は、ねじ軸63の軸方向に移動する。すなわち、ナット65は、ピストンロッド25に対して平行に駆動される。
【0052】
案内機構57は、ピストンロッド25に平行に配置されたガイドバー67と、ガイドバー67をその軸方向に案内するガイド部69とを有している。ガイドバー67は、例えば、断面円形の軸状部材であり、ガイド部69は、ガイドバー67が軸方向に摺動可能に挿入される孔部を有する部材である。
【0053】
ガイド部69は、特に図示しないが、シリンダ装置7のシリンダチューブ21を支持する部材に固定されることなどによりシリンダチューブ21に対して固定されている。ガイドバー67は、ガイド部69に挿入されることにより、シリンダチューブ21に対する、軸に直交する方向の移動及び軸の傾斜が規制されるとともに、軸方向への移動が許容されている。
【0054】
なお、ガイド部69の孔部は、ガイドバー67に対する摺動抵抗を低減しつつガイドバー67の傾斜を好適に抑制できるように、貫通方向において比較的長く形成されるとともに、貫通方向の中央側において拡径して内周面がガイドバー67から離間していることが好ましい。
【0055】
連結部材71は、伝達機構55のナット65と、案内機構57のガイドバー67とを連結している。連結部材71は、例えば、ナット65の周囲を囲み、ナット65に固定された基部71aと、基部71aからナット65の径方向に延び出てガイドバー67の一端に固定された延在部71bとを有している。ガイドバー67は、連結部材71からプランジャ5の後退方向(シリンダ装置7側)へ延びている。
【0056】
なお、ナット65に連結された案内機構57は、ナット65のねじ軸63回りの回転を規制する回り止め機構としても機能している。従って、案内機構57及び連結部材71は、伝達機構55の一部と捉えられてもよい。
【0057】
着脱部13は、例えば、電磁石の励磁及び消磁によって着脱を行うクランプ機構により構成されている。着脱部13は、例えば、コイル等を含む電磁石73と、電磁石73にクランプされる金属等の磁性体75とを有している。なお、電磁石73は、コイルに通電されている間において励磁が維持されるものであってもよいし、永久磁石等を含み、通電されることにより励磁及び消磁がなされる、励磁が維持されている間の通電が不要なものであってもよい。
【0058】
電磁石73及び磁性体75の一方(本実施形態では磁性体75)は、ピストンロッド25に対して固定され、他方(本実施形態では電磁石73)は、ナット65(駆動装置11の被駆動部)に固定される。そして、ピストンロッド25に固定された部材(磁性体75)に対してナット65に固定された部材(電磁石73)が後方に位置して、これらの部材は、ピストンロッド25の移動方向において互いに当接可能に対向している。すなわち、ナット65は、着脱部13を介してピストンロッド25を前方へ押すことが可能である。
【0059】
より具体的には、例えば、プランジャ5とピストンロッド25とを連結する継手27は、ピストンロッド25の半径方向に延び出る延在部27aを有し、磁性体75は、延在部27aの後側に固定されている。なお、磁性体75は、延在部27aの一部と捉えられてもよい。また、電磁石73は、例えば、ナット65とガイドバー67とを連結する連結部材71の延在部71bの前側に固定されている。なお、電磁石73は、連結部材71の一部と捉えられてもよい。電磁石73、磁性体75及びガイドバー67は、例えば、シリンダ装置7と伝達機構55との間においてシリンダ装置7に平行な同一線上に配置されている。
【0060】
(制御系)
制御装置15は、例えば、CPU77、ROMやRAM等のメモリ79、入力回路81、及び、出力回路83を含んで構成されている。CPU77は、メモリ79に記憶されたプログラムを実行し、入力回路81を介して入力される入力信号に基づいて、各部を制御するための制御信号を出力回路83を介して出力する。
【0061】
入力回路81に信号を入力するのは、例えば、ユーザの入力操作を受け付ける入力装置85、エンコーダ37及び59、ピストンロッド25の位置を検出する第1位置センサ89、ガイドバー67の位置を検出する第2位置センサ91、サーボバルブ51、ヘッド側室21hの圧力を検出するヘッド圧力センサ93、ロッド側室21rの圧力を検出するロッド圧力センサ95、及び、アキュムレータ35の圧力を検出するアキュムレータ圧力センサ97である。
【0062】
出力回路83が信号を出力するのは、例えば、ユーザに情報を表示する表示器87、サーボドライバ39及び61、サーボバルブ51、及び、各種の弁へのパイロット圧力の導入を制御する不図示の液圧回路である。
【0063】
第1位置センサ89は、シリンダチューブ21に対するピストンロッド25の位置を検出するものであり、プランジャ5の位置を間接的に検出するものである。第1位置センサ89は、例えば、ピストンロッド25に固定され若しくは形成され、ピストンロッド25の軸方向に延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、第1位置センサ89、又は、制御装置15は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
【0064】
第2位置センサ91は、ガイド部69に対するガイドバー67の位置を検出するものであり、駆動装置11の被駆動部(ナット65や連結部材71)の位置を間接的に検出するものである。第2位置センサ91は、例えば、ガイドバー67に固定され若しくは形成され、ガイドバー67の軸方向に延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、第2位置センサ91、又は、制御装置15は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
【0065】
ヘッド圧力センサ93及びロッド圧力センサ95は、ヘッド側室21h及びロッド側室21rの圧力を検出することにより、プランジャ5が溶湯に加える圧力を間接的に検出するものである。また、アキュムレータ圧力センサ97は、アキュムレータ35の充填完了などの判定に利用される。
【0066】
(射出装置の動作)
図2は、射出装置1の動作を説明する図である。図2において、横軸は時間を示している。また、実線Lvは射出速度の変化を示し、実線Lpは射出圧力の変化を示している。実線Lv及びLpが描かれたグラフにおいて、縦軸は射出速度及び射出圧力の大きさを示している。また、当該グラフの下方においては、ピストン23、低速用電動機53、着脱部13、サーボバルブ51、ポンプ用電動機33及びアキュムレータ35の動作を示している。なお、サーボバルブ51のON/OFFは、開口度が制御されている状態/開口度が制御されずに開かれている若しくは閉じられている状態を示している。
【0067】
射出装置1は、概観すると、低速射出、高速射出、及び、増圧(昇圧)を順に行う。すなわち、射出装置1は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速でプランジャ5を前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速でプランジャ5を前進させる。その後、射出装置1は、成形品のヒケをなくすために、プランジャ5の前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧する。具体的には、以下のとおりである。
【0068】
(低速射出:t0〜t1)
低速射出の開始直前において、射出装置1は、図1に示す状態となっている。すなわち、ピストン23及びナット65は、後退限等の初期位置に位置している。この初期位置において、着脱部13の電磁石73と磁性体75とは互いに当接しており、クランプ可能となっている。低速用電動機53及びポンプ用電動機33は停止している。アキュムレータ35は蓄圧が完了している。サーボバルブ51及び第1逆止弁VLA〜第4逆止弁VLDは、アキュムレータ35からの作動液の放出が禁止されている限り適宜な状態とされてよいが、例えば、サーボバルブ51は閉じられ、第1逆止弁VLAはパイロット圧力が導入されずに自閉しており、第2逆止弁VLB〜第4逆止弁VLDはパイロット圧力が導入されて閉じられている。
【0069】
固定金型101及び移動金型103の型締が終了し、溶湯がスリーブ3に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置15は、着脱部13をクランプ状態とするとともに、ナット65を前進させる方向にねじ軸63が回転するように低速用電動機53を駆動する。これにより、ナット65に連結されたプランジャ5及びピストンロッド25が前進する。すなわち、駆動装置11の駆動力によって低速射出が行われる。
【0070】
このとき、サーボバルブ51は例えば全開とされ、第3逆止弁VLCはパイロット圧力の導入が停止される。従って、ピストン23の前進に伴ってロッド側室21rから排出される作動液は、ピストン23の前進に伴って容積が拡大するヘッド側室21hに供給される。
【0071】
ロッド側室21rとヘッド側室21hとのピストン23の受圧面積の相違によるヘッド側室21hにおける作動液の不足分は、上述したように、ポンプ31若しくはタンク29からの作動液の供給により補われる。なお、ポンプ31により補給される場合、その作動液の供給量は、ヘッド側室21hに負圧が生じることを抑制する程度であり、実質的に低速射出は駆動装置11の駆動力のみによって行われる。
【0072】
プランジャ5の速度は、低速用電動機53の回転数の調整により制御される。具体的には、制御装置15は、第2位置センサ91(第1位置センサ89でもよい)により検出されるプランジャ5の速度に基づいて、低速用電動機53の回転数をフィードバック制御する。
【0073】
なお、図2では、低速射出速度が一定の場合を例示しているが、低速射出速度は適宜に変速されてよい。
【0074】
(高速射出:t1〜t2)
制御装置15は、第2位置センサ91(第1位置センサ89でもよい)の検出値に基づくプランジャ5の位置が所定の高速切換位置に到達すると、着脱部13をアンクランプ状態とするとともに、低速用電動機53を停止する。また、制御装置15は、第1逆止弁VLAに開くパイロット圧力を導入するとともに、サーボバルブ51を適宜な開度に調整する。
【0075】
これにより、アキュムレータ35から第1逆止弁VLAを介してヘッド側室21hに作動液が供給され、ピストン23、ピストンロッド25及びプランジャ5は比較的高速で前進する。このとき、駆動装置11はプランジャ5等との連結が解除されているから、プランジャ5等の前進を妨げる負荷とはならない。なお、駆動装置11の被駆動部(連結部材71、ナット65及びガイドバー67)は、シリンダチューブ21に対して停止するので、シリンダチューブ21に対して前進するプランジャ5等に対しては、相対的に、後方に移動する。そして、プランジャ5によりスリーブ3内の溶湯がキャビティ105に高速に射出される。
【0076】
プランジャ5の速度は、サーボバルブ51の開口度の調整により制御される。なお、制御装置15は、第1位置センサ89により検出されるプランジャ5の速度に基づいて、サーボバルブ51の開口度をフィードバック制御してもよい。
【0077】
(駆動装置の被駆動部の後退:t2〜t5)
制御装置15は、高速射出開始後から後述するプランジャ5の後退完了までの期間内の適宜な期間において、低速用電動機53を低速射出時とは逆方向に回転させる。すなわち、制御装置15は、駆動装置11の被駆動部(ナット65、連結部材71及びガイドバー67)を後退させ、初期位置に復帰させる。なお、本実施形態では、低速用電動機53を逆回転させる期間として、高速射出が開始される時点t1から少し経過した時点t2から、後述する保圧が開始される時点t6よりも少し前の時点t5までの期間を例示している。
【0078】
(減速射出:t3〜t4)
溶湯がキャビティ105にある程度充填されると、プランジャ5は、その充填された溶湯から反力を受けて減速され、その一方で、射出圧力は、急激に上昇していく。なお、各部の動作は、高速射出時と同様である。ただし、充填時の衝撃を緩和するために、プランジャ5が所定の減速位置に到達するなど所定の減速開始条件が満たされたときにサーボバルブ51の開口度を小さくするなど、適宜な減速制御がなされてもよい。
【0079】
(増圧:t4〜t6)
所定の増圧開始条件が満たされると、制御装置15は、第2逆止弁VLBへの閉じるパイロット圧力の導入を停止する。増圧開始条件は、例えば、ヘッド圧力センサ93及びロッド圧力センサ95により検出される射出圧力の検出値が所定の値に到達したこと、又は、第1位置センサ89により検出されるプランジャ5の検出位置が所定の位置に到達したことである。
【0080】
第2逆止弁VLBへの閉じるパイロット圧力の導入が停止されることにより、ロッド側室21rはタンク圧とされる。そして、ヘッド側室21hの圧力はアキュムレータ35の圧力と同等となるまで上昇し、射出圧力は終圧に到達する。また、射出速度は、キャビティ105に溶湯が完全に充填されることにより0となる。なお、第3逆止弁VLCは、ロッド側室21rがタンク圧とされることによって自閉するが、閉じるパイロット圧力が導入されてもよい。
【0081】
(保圧:t6〜t7)
制御装置15は、射出圧力が終圧となっている状態を維持する。この間に、溶湯は冷却されて凝固する。溶湯が凝固すると、制御装置15は、サーボバルブ51を閉じ、第1逆止弁VLAへの開くパイロット圧力の導入を停止し、第2逆止弁VLBに閉じるパイロット圧力を導入する。これにより、アキュムレータ35からヘッド側室21hへの液圧の供給及びロッド側室21rからタンク29への作動液の排出が停止され、保圧は終了する。
【0082】
なお、制御装置15は、適宜に溶湯が凝固したか否かを判定する。例えば、制御装置は、終圧が得られた時点等の所定の時点から所定の時間が経過したか否かにより、溶湯が凝固したか否か判定する。
【0083】
(押出追従:t8〜t9)
保圧終了後、制御装置15は、不図示の型締装置に型開きを行わせるとともに、不図示の押出装置により固定金型101から成形品を押し出す。このとき、制御装置15は、ポンプ用電動機33を駆動して、ポンプ31からヘッド側室21hに作動液を供給するとともに、ロッド側室21rの作動液をタンク29に排出可能とし、プランジャ5によりビスケットを押し出す。
【0084】
なお、ポンプ31からヘッド側室21hへの作動液の供給は、例えば、第3逆止弁VLCへのパイロット圧力の導入を停止して、第5流路49を介して行われる。また、この際、ロッド側室21rから排出される作動液は、例えば、サーボバルブ51を開くことによって射出時と同様に、第3流路を介してヘッド側室21hに還流される。ロッド側室21rの作動液は、第5流路49と第2流路43との連通を遮断することにより第2流路43を介してタンク29に排出されてもよい。
【0085】
(プランジャ後退:t10〜t11)
制御装置15は、ポンプ用電動機33を駆動してポンプ31からロッド側室21rに作動液を供給するとともに、ヘッド側室21hの作動液をタンク29に排出可能とし、ピストン23を後退させ、ひいては、プランジャ5を後退させる。
【0086】
なお、ポンプ31からロッド側室21rへの作動液の供給は、例えば、サーボバルブ51を開くことにより、第5流路49のポンプ31側部分と、第3流路45のロッド側室21r側部分とを介して行われる。また、ヘッド側室21hからタンク29への作動液の排出は、例えば、ヘッド側室21hとタンク29とを接続する不図示の流路に設けられた不図示の弁が開かれることにより行われる。
【0087】
(アキュムレータ充填:t12〜t13)
制御装置15は、第4逆止弁VLDへの閉じるパイロット圧力の導入を停止し、ポンプ用電動機33を駆動する。一方、第2逆止弁VLB及び第3逆止弁VLCは、パイロット圧力が導入されて閉じられ、また、サーボバルブ51も閉じられる。従って、ポンプ31から第4流路47を介してアキュムレータ35に作動液が供給され、アキュムレータ35の蓄圧が行われる。なお、第1逆止弁VLAは自閉する。
【0088】
アキュムレータ圧力センサ97の検出圧力が所定の蓄圧完了圧力に到達するなど、アキュムレータ35の蓄圧の完了条件が満たされると、制御装置15は、ポンプ用電動機33を停止し、第4逆止弁VLDへ閉じるパイロット圧力を導入する。なお、プランジャ5(ピストン23)の後退と、アキュムレータ充填とは、順番が逆であってもよい。
【0089】
以上の実施形態によれば、射出装置1は、プランジャ5と、シリンダ装置7と、駆動装置11と、着脱部13とを有する。プランジャ5は、キャビティ105に成形材料を押し出し可能である。シリンダ装置7は、プランジャ5と連結されたピストンロッド25を有する。駆動装置11は、被駆動部(ナット65等)を有し、ナット65等をピストンロッド25と平行な方向において駆動可能である。着脱部13は、ピストンロッド25とナット65等との連結及び当該連結の解除が可能である。
【0090】
別の観点では、射出装置1は、プランジャ5と、シリンダ装置7と、駆動装置11とを有する。プランジャ5は、キャビティに成形材料を押し出し可能である。シリンダ装置7は、プランジャ5と連結されたピストンロッド25と、ピストンロッド25に固定されたピストン23と、ピストン23を収容するシリンダチューブ21とを有する。駆動装置11は、被駆動部(ナット65、電磁石73等)を有し、ナット65等をピストンロッド25と平行な方向において駆動可能である。ナット65等の被駆動部は、ピストンロッド25に固定された部材(継手27及び磁性体75)に対して前進方向へ当接可能であるとともに、その当接位置からピストンロッド25に対して相対的に後退可能である。
【0091】
従って、駆動装置11のシリンダ装置7に対する連結(当接)及びその解除を行うことにより、シリンダ装置7と駆動装置11とによる射出を好適に行うことができる。
【0092】
例えば、シリンダ装置7は、駆動装置11に動作を制限されることなくプランジャ5を高速に駆動可能となる。その結果、例えば、位置制御や速度制御の精度が高い電動式の駆動装置11により低速射出を行い、高い速度及び大きな駆動力を得やすいシリンダ装置7により高速射出及び増圧を行うことにより、低速用電動機53を小型化しつつ、高精度且つ高速な射出及び高い鋳造圧力を実現できる。
【0093】
また、例えば、駆動装置11は、プランジャ5のストロークと同等の大きさのストロークで被駆動部を駆動可能である必要性が無くなる。その結果、ねじ軸63を短くするなど、駆動装置11の小型化が図られる。
【0094】
さらに、駆動装置11は、シリンダチューブ21の外部にてピストンロッド25と連結(当接)されるだけであるので、シリンダ装置7自体の構成は変更する必要が無い。その結果、既設の射出装置への適用も容易である。
【0095】
着脱部13は、電磁石73の励磁及び消磁によりプランジャ5とナット65等との連結及び当該連結の解除を行う。従って、後述する変形例に比較して、連結及びその解除を制御することが容易であり、また、連結及びその解除が迅速且つ強固に行われると期待される。
【0096】
駆動装置11は、被駆動部(ナット65等)から後退方向にピストンロッド25に平行に延びるガイドバー67と、ガイドバー67をその軸方向へ移動可能に案内するガイド部69と、を有する。
【0097】
従って、プランジャ5が傾斜することが抑制される。また、被駆動部はピストンロッド25よりもストロークが短いから、ガイドバー67は、ピストンロッド25に固定される場合に比較して、短くされることができる。更に、後方に延びてシリンダ装置7と並列になるので、射出装置1の小型化が容易になる。
【0098】
射出装置1の制御装置15は、低速射出においては、駆動装置11の駆動力及びシリンダ装置7の駆動力のうち駆動装置11の駆動力のみによりプランジャ5を駆動し、高速射出、増圧及び製品押出追従においては、駆動装置11の駆動力及びシリンダ装置7の駆動力のうちシリンダ装置7の駆動力のみによりプランジャ5を駆動するように、駆動装置11及びシリンダ装置7を制御する。なお、ここでいうシリンダ装置7の駆動力は、シリンダ装置7に作動液が供給されることにより生じる駆動力である。
【0099】
従って、大きな駆動力を必要とする工程において低速用電動機53は使用されず、低速用電動機53の小型化が図られる。また、その結果、ピストンロッド25を傾斜させるモーメントも小さく、案内機構57は小型化や簡素化が可能となる。例えば、大きなモーメントを受けるスライドテーブルのような大型な案内機構を設ける必要性が低減される。
【0100】
(駆動装置の変形例)
図3(a)〜図3(c)は、駆動装置の変形例を示す模式図である。
【0101】
図3(a)の駆動装置211は、第1の実施形態のねじ機構からなる伝達機構55に代えて、ラック・ピニオン機構からなる伝達機構255を有している。伝達機構255は、低速用電動機53(図3(a)では不図示)により回転されるピニオン263と、ピニオン263に噛み合い、ピニオン263の回転によってピストンロッド25(図3(a)では不図示)に平行に移動するラック265とを有している。なお、ラック265は、例えば、ガイドバー267に設けられている。
【0102】
図3(b)の駆動装置311は、低速用電動機53及び伝達機構55に代えて、電動シリンダ312を有している。電動シリンダ312は、外観は液圧式のシリンダ装置に類似しており、電動機の駆動力により軸状若しくは筒状の部材をピストンロッド25に対して平行にストローク運動させる。電動シリンダ312は、例えば、回転式の電動機とその回転を並進運動に変換する伝達機構とを内蔵してユニット化されたアクチュエータである。
【0103】
図3(c)の駆動装置311は、低速用電動機53及び伝達機構55に代えて、ハイブリッドシリンダ412を有している。ハイブリッドシリンダ412は、液圧式のシリンダ装置463と、シリンダ装置463に作動液を供給するポンプ464と、ポンプ464を駆動する電動機465とを含んでユニット化されたアクチュエータである。ポンプ464は、例えば、双方向ポンプであり、シリンダ装置463のピストンに隔てられた一方のシリンダ室がポンプ464の一方のポートに接続され、他方のシリンダ室がポンプ464の他方のポートに接続されている。そして、ポンプ464の回転方向の切り換えによってピストンの前進及び後退の切り換えが制御される。
【0104】
図4の駆動装置711では、伝達機構55がシリンダ装置7に対して並列に配置されておらず、シリンダ装置7に対して直交するように配置されている。そして、ナット65とガイドバー67とは、スコット・ラッセル機構771により連結されている。ナット65の並進運動は、スコット・ラッセル機構771により、その並進運動に直交する並進運動に変換され、ガイドバー67に伝達される。
【0105】
(着脱部の変形例)
図5(a)〜図5(c)は、着脱部の変形例を示す図である。
【0106】
図5(a)の着脱部513は、部材の嵌合及び摩擦を利用してピストンロッド25と駆動装置11の被駆動部(ナット65等)との連結及びその解除を行うものである。
【0107】
具体的には、着脱部513は、ナット65に固定された連結部材71の延在部71bに設けられた突状部材573と、ピストンロッド25に固定された継手27の延在部27aに設けられ、突状部材573が挿入される凹状部材575とを有している。突状部材573は先が細くなるテーパ状に形成されており、凹状部材575の凹部は奥が狭くなるテーパ状に形成されている。
【0108】
射出後のピストンロッド25の後退時、若しくは、低速射出の開始時において、突状部材573は凹状部材575に挿入され、嵌合される(連結される)。嵌合状態において、突状部材573は、凹状部材575を押圧可能である。また、これらの部材は、その嵌合により軸に直交する方向等の移動が規制され、また、摩擦力によって抜けが抑制される。そして、突状部材573が前進し、低速射出が行われる。
【0109】
低速射出から高速射出への切り換え時において、アキュムレータ35からヘッド側室21hへの作動液の供給によりピストンロッド25(凹状部材575)が前進し、低速用電動機53の停止によりナット65(突状部材573)が停止すると、凹状部材575が突状部材573から離間しようとする力が摩擦力を上回り、これらの部材の連結は解除される。
【0110】
図5(b)の着脱部613は、ばね力を利用してピストンロッド25と駆動装置11の被駆動部(ナット65等)との連結及びその解除を行うものである。
【0111】
具体的には、着脱部613は、延在部71bに設けられた突状部材673と、延在部27aに設けられた支持部材674と、支持部材674に保持されるとともに突状部材673のノッチ673rに対して進退可能な係合部材675と、係合部材675をノッチ673r側へ付勢するばね676とを有している。ノッチ673rは、後方が進退方向(図4の紙面左右方向)に直角に形成され、前方が傾斜面とされている。
【0112】
射出後のピストンロッド25の後退時、若しくは、低速射出の開始時において、係合部材675はばね67の付勢力によってノッチ673rに一部が挿入され、ノッチ673rの後方に係合する。すなわち、着脱部613は連結状態となる。
【0113】
低速射出から高速射出への切り換え時において、ピストンロッド25が前進し、ナット65が停止されると、係合部材675は、ノッチ673rの前方の傾斜面を摺動することによってノッチ673rの外側へ押し上げられる。これにより、着脱部613の連結は解除される。
【0114】
図5(c)の変形例は、特に着脱部を設けず、単に駆動装置11の被駆動部(ナット65や連結部材71)をピストンロッド25に固定された部材(継手27)に対して直接又は間接に前進方向へ当接させるだけとしたものである。なお、この変形例においては、ピストンロッド25の傾斜を抑制するための部材(ガイドバー等)は、駆動装置11側ではなく、ピストンロッド25側に設けられている必要がある。
【0115】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0116】
上述した実施形態及び変形例は、適宜に組み合わされてよい。例えば、図3及び図4に示した駆動装置の変形例は、図5に示した着脱部の変形例のいずれと組み合わされてもよい。
【0117】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、射出装置は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出であってもよい。作動液は、油に限定されず、例えば水でもよい。
【0118】
シリンダ装置は、単動式のものに限定されず、増圧式のものであってもよい。例えば、シリンダ装置は、小径部と大径部とを有するシリンダチューブと、ピストンロッドに固定され、小径部を摺動する射出ピストンと、その後方にて小径部と大径部とを摺動する増圧ピストンとを有するものであってもよい。
【0119】
液圧装置は、適宜に構成することができ、種々の流路の接続及び共用、並びに、種々の弁の配置は、適宜に変更可能である。作動液の流れを制御する弁としてパイロット式の逆止弁を多用したが、逆止弁に代えて、方向切換弁等の他の制御弁が用いられてもよい。ランアラウンド回路は設けられなくてもよいし、メータアウト回路に代えて若しくは追加してメータイン回路が構成されてもよい。
【0120】
駆動装置は、好適には電動機を含むものである。ただし、駆動装置は、必ずしも電動機を含むものに限定されず、駆動力を生じる種々の方式のものとされてよい。また、電動機は、回転式のものに限定されず、リニアモータであってもよい。なお、リニアモータの場合には、伝達機構を介さずに、リニアモータの駆動力が直接に移動ロッドに伝達されてもよい。また、駆動装置は、2以上設けられてもよい。
【0121】
着脱部は、実施形態等において例示したものに限定されず、制御装置等による着脱部の制御により(実施形態参照)、若しくは、制御装置等によるシリンダ装置及び駆動装置の制御により(変形例参照)、成形サイクル中において連結及びその解除が可能なものであればよい。例えば、着脱部は油圧駆動若しくは電動駆動のハーフナットであってもよい。
【0122】
ピストンロッドの傾斜を抑制するための案内機構(ガイドバー等)は省略されてもよい。また、案内機構は、スライドテーブル等の他の機構により構成されてもよい。案内機構は、ねじ軸等の伝達機構よりも外側に配置されてもよいし、シリンダ装置に対してプランジャ側に配置されてもよい。
【0123】
各部材は、一体的に形成されてもよいし、複数の部材から構成されてもよい。例えば、ナット65、連結部材71及びガイドバー67は、これらの2つ以上が一体的に形成されてもよい。また、例えば、被駆動部が当接する、ピストンロッドに固定された部材(磁性体75等)は、継手又はピストンロッドと一体的に形成された部材であってもよい。
【符号の説明】
【0124】
1…射出装置、5…プランジャ、7…シリンダ装置、9…液圧装置、11…駆動装置、13…着脱部、25…ピストンロッド、65…ナット(被駆動部)、105…キャビティ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティに成形材料を押し出すプランジャと、
前記プランジャと連結されたピストンロッドを有するシリンダ装置と、
被駆動部を有し、当該被駆動部を前記ピストンロッドと平行な方向において駆動可能な駆動装置と、
前記ピストンロッドと前記被駆動部との連結及び当該連結の解除が可能な着脱部と、
を有する成形機の射出装置。
【請求項2】
前記着脱部は、電磁石の励磁及び消磁により前記ピストンロッドと前記被駆動部との連結及び当該連結の解除を行う
請求項1に記載の成形機の射出装置。
【請求項3】
前記着脱部は、係合部材のノッチへの係合及び係合解除により前記ピストンロッドと前記被駆動部との連結及び当該連結の解除を行う
請求項1に記載の成形機の射出装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、
前記被駆動部から後退方向に前記ピストンロッドに平行に延びるガイドバーと、
前記ガイドバーをその軸方向へ移動可能に案内するガイド部と、を有する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。
【請求項5】
キャビティに成形材料を押し出すプランジャと、
前記プランジャと連結されたピストンロッドと、当該ピストンロッドに固定されたピストンと、当該ピストンを収容するシリンダチューブとを有するシリンダ装置と、
被駆動部を有し、当該被駆動部を前記ピストンロッドと平行な方向において駆動可能な駆動装置と、
を有し、
前記被駆動部は、前記ピストンロッドに固定された部材に対して前記シリンダチューブ外において前進方向へ当接可能であるとともに、その当接位置から前記ピストンロッドに対して相対的に後退可能である
成形機の射出装置。
【請求項6】
低速射出においては、前記駆動装置の駆動力及び前記シリンダ装置の駆動力のうち前記駆動装置の駆動力のみにより前記プランジャを駆動し、
高速射出、増圧及び製品押出追従においては、前記駆動装置の駆動力及び前記シリンダ装置の駆動力のうち前記シリンダ装置の駆動力のみにより前記プランジャを駆動するように、
前記駆動装置及び前記シリンダ装置を制御する制御装置を更に有する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。
【請求項7】
前記駆動装置は、
回転式の電動機と、
前記電動機の回転を並進運動に変換して前記被駆動部に伝達する伝達機構と、を有する
請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。
【請求項8】
前記駆動装置は、
双方向ポンプと、
ピストンに隔てられた一方のシリンダ室が前記双方向ポンプの一方のポートに接続され、他方のシリンダ室が前記双方向ポンプの他方のポートに接続された駆動シリンダ装置と、を有する
請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形機の射出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−232330(P2012−232330A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102954(P2011−102954)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【特許番号】特許第4790869号(P4790869)
【特許公報発行日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】