説明

成形絶縁物およびその成形方法

【課題】 絶縁特性を向上させた加熱圧縮して成形する成形絶縁物を得る。
【解決手段】 第1のキャビティー1aが彫られた第1の金型1と、前記第1のキャビティー1aと組み合わされる第2のキャビティー2aが彫られた第2の金型2と、少なくとも一方のキャビティー2a(1a)内に充填されるタブレット化された絶縁材料11とを備え、前記第1の金型1と前記第2の金型2とを組み合わせ、前記第1のキャビティー1aおよび前記第2のキャビティー2a内で前記絶縁材料11を加熱圧縮して成形したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ポリエステル樹脂などの絶縁材料を加熱圧縮して成形する成形絶縁物に係り、特に、絶縁特性を向上し得る成形絶縁物およびその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂粉末などの絶縁材料を成形金型内で加熱圧縮して成形する成形絶縁物は、優れた電気的、機械的強度を有し、スイッチギヤのような開閉器に多用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この成形絶縁物の成形方法を示す図4において、第1の金型1(上型)と第2の金型2(下型)内には、それぞれ第1のキャビティー1a、および第2のキャビティー2aが彫られている。キャビティー1a、2a内には、埋め込み金具3、4が取り付け金具5、6によりそれぞれ取り付けられている。また、第1の金型1と第2の金型2には、互いの位置合わせをするためのガイドピン7とガイドピン7が嵌合するガイド穴8とが設けられている。
【0004】
そして、所定の重量に計量した絶縁材料9を一方のキャビティー2a(1a)内に充填し、第1の金型1と第2の金型2とを図示しないプレスで強固に締付ける。第1の金型1と第2の金型2は、例えば120℃に加熱されており、絶縁材料9がキャビティー1a、1b内で加熱圧縮される。これにより、絶縁材料9は溶解して硬化する。図4では、両端に埋め込み金具3、4を配置した樽状の支持がいしのような成形絶縁物を製造することができる。
【0005】
ここで、不飽和ポリエステル樹脂のような絶縁材料9であっては、ガラス繊維が充填されたフレーク状のものを、キャビティー2a(1a)内に充填できるように団子状に軽く丸めている。外観としては、密度の薄い綿状となる。
【特許文献1】特開2004−39507号公報 (第3ページ、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来の成形絶縁物においては、次のような問題がある。
【0007】
キャビティー1a、1b内でフレーク状の絶縁材料9が加熱圧縮されて溶解し、そして硬化するまでの過程において、絶縁材料9は空気を多量に巻き込んでいるので、ボイドが発生することがある。また、キャビティー1a、1b内で溶解した絶縁材料9がランダムに流動するので、樹脂の流れが同一方向に重なったところではウエルドマークが発生することがある。
【0008】
これは、絶縁的な欠陥であり、製造された成形絶縁物にクラックが発生したり、耐電圧特性不良を起こしたりする。このため、成形絶縁物の絶縁特性が低下し、開閉器などに使用することができなくなる。
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、絶縁特性を向上し得る成形絶縁物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の成形絶縁物は、第1のキャビティーが彫られた第1の金型と、前記第1のキャビティーと組み合わされる第2のキャビティーが彫られた第2の金型と、少なくとも一方のキャビティー内に充填されるタブレット化された絶縁材料とを備え、前記第1の金型と前記第2の金型とを組み合わせ、前記第1のキャビティーおよび前記第2のキャビティー内で前記絶縁材料を加熱圧縮して成形したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絶縁材料を圧縮して密度が増すようにタブレット化しているので、絶縁材料中に巻き込まれる空気量が低減され、成形された成形絶縁物内に絶縁的な欠陥が生じ難く、絶縁特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
先ず、本発明の実施例1に係る成形絶縁物を図1および図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る成形絶縁物の成形方法を説明する断面図、図2は、本発明の実施例1に係る成形絶縁物の成形手順を示すフローチャート図である。なお、各図において、従来と同様の構成部分については、同一符号を付した。
【0014】
図1に示すように、第1の金型1(上型)と第2の金型2(下型)内には、それぞれ第1のキャビティー1a、および第2のキャビティー2aが彫られている。キャビティー1a、2a内には、埋め込み金具3、4が取り付け金具5、6によりそれぞれ取り付けられている。また、第1の金型1と第2の金型2には、互いの位置合わせをするためのガイドピン7とガイドピン7が嵌合するガイド穴8とが設けられている。
【0015】
そして、所定の重量に計量し、所定の圧力で圧縮してタブレット化した絶縁材料11を一方のキャビティー2a(1a)内に充填し、成形絶縁物を得るようにしている。絶縁材料11は、フレーク状のガラス繊維を充填した不飽和ポリエステル樹脂を、キャビティー1a、2a内に収まる程度の大きさに常温下で圧縮しており、その圧縮する程度は密度が2倍となるようにしている。即ち、従来のものと比較して、密度を2倍(体積は1/2)としている。
【0016】
この密度は、1.5倍以上において、空気の巻き込みが低減され、ボイドやウエルドラインなどの欠陥を抑制することができる。また、密度を増すほど空気の巻き込みを低減できるが、3倍くらいまでが、加圧するプレスなどの設備が小型になるので好ましい。
【0017】
次に、タブレット化した絶縁材料11を用いた成形絶縁物の成形方法を図2を参照して説明する。
【0018】
図2に示すように、先ず、フレーク状の不飽和ポリエステル樹脂を所定の重量に計量する(st1)。これをキャビティー1a、2a内に収まる形状にするタブレット金型内に投入する(st2)。タブレット金型を加圧して圧縮し、密度を増す(タブレット化する工程)(st3)。これを取り出し(st4)、タブレット化された絶縁材料11を得る。
【0019】
成形においては、第1の金型1と第2の金型2に埋め込み金具3、4をセットする(st5)。そして、前記絶縁材料11を一方のキャビティー2a(1a)内に充填する(絶縁材料11を充填する工程)(st6)。その後、第1の金型1と第2の金型2とを図示しないプレスで強固に締付ける(st7)。
【0020】
第1の金型1と第2の金型2とは、例えば120℃に加熱されており、絶縁材料11はキャビティー1a、1b内で加熱圧縮される(絶縁材料11を加熱圧縮する工程)(st8)。すると、絶縁材料11は溶解し、例えば数十分間保持すると硬化する(st9)。硬化後、離型する(st10)。図1に示すものにおいては、従来と同様に、樽状の支持がいしを製造することができる。
【0021】
このようにして製造された成形絶縁物は、絶縁材料11の空気の巻き込みが少なく、埋め込み金具4、5を中心として放射状に樹脂が流れて加熱硬化するので、ボイドやウエルドラインの発生が抑制される。埋め込み金具4、5間を十数mmとした成形絶縁物においては、埋め込み金具4、5間で樹脂の流れが略平行となり、密度が高まって、破壊電圧特性が従来に比べて1.2倍程度上昇した。更には、大量製造した成形絶縁物においては、破壊電圧のバラツキが少なくなった。
【0022】
また、キャビティー2a(1a)内に絶縁材料11を充填し易くなり、成形の作業性を向上させることができた。
【0023】
上記実施例1の成形絶縁物によれば、キャビティー1a、2a内で加熱圧縮される絶縁材料11を、空気の巻き込みを低減したタブレット化しているので、ボイドやウエルドラインなどの絶縁的な欠陥の発生を抑制でき、絶縁特性を向上させることができる。
【0024】
上記実施例1では、絶縁材料11を不飽和ポリエステル樹脂で説明したが、成形用のエポキシ樹脂粉末においても、タブレット化して密度を増すと絶縁特性を向上させることができる。
【実施例2】
【0025】
次に、本発明の実施例2に係る成形絶縁物を図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例2に係る成形絶縁物の成形方法を説明する断面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、成形の金型である。図3において、図1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0026】
図3に示すように、第1の金型1には、第2の金型2と対向する一側面に第3の金型21が組み合わされるようになっている。この第3の金型21には、絶縁材料11を充填する凹状のポット22が設けられている。また、ポット22内の絶縁材料11を加熱圧縮できるように、ポット22内に嵌め込まれる凸状のプランジャー23を有する第4の金型24が組み合わされるようになっている。
【0027】
ポット22の底部と第1の金型1内に彫られた第1のキャビティー1aとは、複数本の貫通穴のゲート25で結ばれている。ここで、第1のキャビティー1aは、成形された絶縁物に突出したヒダが形成されるように、複数の環状の凹部1bが設けられた複雑な形状となっている。同様に、第2のキャビティー2aも複数の環状の凹部1bが設けられている。
【0028】
なお、埋め込み金具3、4などは、実施例1では、図示上下に配置されているが、この実施例2では、図示左右に配置されている。また、第1の金型1、第2の金型2、第3の金型21および第4の金型24には、互いの位置合わせをするためのガイドピン7とガイド穴8がそれぞれ設けられている。
【0029】
そして、第1の金型1と第2の金型2および第3の金型21を組み合わせ、ポット22内に絶縁材料11を充填し(絶縁材料11を充填する工程)、プランジャー23でポット22内の絶縁材料11を図示しないプレスで加熱圧縮する(絶縁材料11を加熱圧縮する工程)。このような動作は、例えば第4の金型24を固定し、第1の金型1、第2の金型2および第3の金型21を図示上下方向に移動する移動型とすればよい。
【0030】
すると、溶解した絶縁材料11がゲート25からキャビティー1a、2a内に注入される(絶縁材料を注入する工程)。そして、ポット22内の絶縁材料11をプランジャー23で押し切る程度まで加圧すると、キャビティー1a、2a内の溶解した絶縁材料11も加圧される。加圧を例えば数十分間保持すると、加熱硬化し、両端に埋め込み金具3、4を配置したヒダを有する樽状の支持がいしを製造することができる。
【0031】
このようにゲート25から溶解した絶縁材料11を注入するのもでは、材料の流れを良好にすることができ、凸凹状の複雑な形状の絶縁物を成形することができる。また、埋め込み金具3、4に大きな圧力が加わることを抑制できるので、変形を防止することができる。
【0032】
上記実施例2の成形絶縁物によれば、実施例1による効果のほかに、埋め込み金具3、4の変形を抑制し、複雑な形状の成形絶縁物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1に係る成形絶縁物の成形方法を説明する断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る成形絶縁物の成形手順を示すフローチャート図。
【図3】本発明の実施例2に係る成形絶縁物の成形方法を説明する断面図。
【図4】従来の成形絶縁物の成形方法を説明する断面図。
【符号の説明】
【0034】
1 第1の金型
1a 第1のキャビティー
1b、2b 凹部
2 第2の金型
2a 第2のキャビティー
3、4 埋め込み金具
5、6 取り付け金具
7 ガイドピン
8 ガイド穴
9、11 絶縁材料
21 第3の金型
22 ポット
23 プランジャー
24 第4の金型
25 ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のキャビティーが彫られた第1の金型と、
前記第1のキャビティーと組み合わされる第2のキャビティーが彫られた第2の金型と、
少なくとも一方のキャビティー内に充填されるタブレット化された絶縁材料とを備え、
前記第1の金型と前記第2の金型とを組み合わせ、前記第1のキャビティーおよび前記第2のキャビティー内で前記絶縁材料を加熱圧縮して成形したことを特徴とする成形絶縁物。
【請求項2】
第1のキャビティーが彫られた第1の金型と、
前記第1のキャビティーと組み合わされる第2のキャビティーが彫られた第2の金型と、
前記第1のキャビティーとゲートで結ばれるポットを有する第3の金型と、
前記ポット内に充填されるタブレット化された絶縁材料と、
前記ポット内に嵌め込まれるプランジャーを有する第4の金型とを備え、
前記第1の金型、前記第2の金型および前記第3の金型を組み合わせ、前記ポットと前記プランジャーとで前記絶縁材料を加熱圧縮し、前記ゲートから前記第1のキャビティー内と前記第2のキャビティー内とに前記絶縁材料を注入して成形したことを特徴とする成形絶縁物。
【請求項3】
前記絶縁物は、外形形状が複雑で、埋め込み金具が埋め込まれていることを特徴とする請求項2に記載の成形絶縁物。
【請求項4】
前記絶縁材料は、圧縮して密度を増した不飽和ポリエステル樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の成形絶縁物。
【請求項5】
フレーク状の絶縁材料を圧縮してタブレット化する工程と、
第1の金型および第2の金型に彫られたキャビティー内の少なくとも一方に前記絶縁材料を充填する工程と、
前記第1の金型と前記第2の金型とを締付け、前記キャビティー内で前記絶縁材料を加熱圧縮する工程とを備えたことを特徴とする成形絶縁物の成形方法。
【請求項6】
フレーク状の絶縁材料を圧縮してタブレット化する工程と、
第3の金型に設けられたポット内に前記絶縁材料を充填する工程と、
第4の金型に設けられたプランジャーで前記ポット内の前記絶縁材料を加熱圧縮する工程と、
前記ポット内で溶解した前記絶縁材料をゲートで結ばれた第1の金型および第2の金型に彫られたキャビティー内に注入する工程とを備えたことを特徴とする成形絶縁物の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−341553(P2006−341553A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171104(P2005−171104)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(595019599)芝府エンジニアリング株式会社 (40)
【Fターム(参考)】