説明

成形装置

【課題】加熱された樹脂シートの金型表面への貼り付きが防止された成形装置を実現する。
【解決手段】 本発明による成形装置は、互いに対向する第1及び第2の金型(1,2)を有し、第1の金型の型面上に基材(3a,3b)が配置され、第1の金型と第2の金型との間に加熱軟化した樹脂シート(5)を配置する。第1の金型(1)には、前記基材と接触する型面の近傍に加熱手段(13)が埋設され、基材と接触しない型面(10a)の近傍には冷却手段を埋設する。成形時において、基材は加熱手段(13)適当な温度に加熱されるので、加熱軟化した樹脂シートは基材の表面に接着される。一方、樹脂シートの金型の型面と接触する部分は、金型により冷却されるので、接着性が低下し、金型の型面に接着しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形装置、特に成形される樹脂シートの金型への貼り付きが防止された成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金型上に基材を配置し、その上に加熱軟化した樹脂シートを配置し、型締め又は真空成形することにより基材の表面上に樹脂シートを成形する成形方法が実用化されている。この成形方法では、基材の表面上に樹脂シートを接着するため、基材の表面に接着剤を塗布し、その上に加熱軟化した樹脂シートを配置して型締めが行われている。しかし、樹脂シートの成形に先立って基材の表面上に接着剤を塗布するのでは、接着剤のコストがかかると共に接着剤を塗布する工程も必要となり、製造コストが高価になる欠点がある。
【0003】
上記の欠点を解消するため、加熱された樹脂シートの接着性能を利用して成形する方法が用いられている。例えば、樹脂シートとして、接着剤がプレコートされているポリプロピレンフォーム(PPF)を用いる場合、PPFを軟化点を超える温度まで加熱すると接着性が活性化され、PPFを基材上に成形することが可能である。
【0004】
しかしながら、成形金型の型面は、基材と接触しない領域も存在する。よって、金型の型面のうち基材が存在しない領域では、型締めした際加熱軟化した樹脂シートが金型の表面と直接接触することになり、樹脂シートが金型に貼り付く不具合が発生する。
【0005】
別の成形方法として、金型のキャビティ面の近傍の温度を制御しながら真空成形する方法が既知である(例えば、特許文献1参照)。この既知の真空成形技術では、互いに対向する2個の金型のうち、キャビティが形成されている金型の表面近傍に冷却用の冷配管と加熱用の温配管とを交互に設け、加熱軟化した樹脂シートが金型に押し付けられるまで温配管により金型を加熱し、真空成形の開始に伴い冷配管により金型が冷却されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−182035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、加熱された樹脂シートの接着性能を利用して樹脂シートを基材表面上に成形する方法は、製造コストが安価になる利点がある。しかしながら、金型の型面には基材が存在しない領域があるため、このような型面部分には加熱された樹脂シートが金型表面に直接接触するため、樹脂シートが貼り付く不具合がある。
【0008】
また、このような不具合を解消するため、特許文献1に記載の金型を用いても、金型の表面全体が一様に加熱及び冷却されるため、樹脂シートの貼り付きを有効に防止することはできない。
【0009】
本発明の目的は、加熱された樹脂シートの金型表面への貼り付きが防止された成形装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による成形装置は、互いに対向する第1及び第2の金型を有し、第1の金型の型面上に基材が配置され、第1の金型と第2の金型との間に加熱軟化した樹脂シートを配置し、型締めすることにより前記基材を含む成形品が製造される成形装置において、前記第1の金型には、前記基材と接触する型面の近傍に加熱手段が埋設され、基材と接触しない型面の近傍には冷却手段が埋設された構成とした。
【0011】
本発明では、基材が装着される第1の金型に加熱手段と冷却手段とを埋設する。加熱手段は、装着されている基材を加熱するように作用し、冷却手段は型面と接触した樹脂シートを冷却するように作用する。
【0012】
このように、基材が装着される金型の型面に、装着される基材に対応した温度分布を形成することにより、成形時において基材は加熱され、樹脂シートの基材への接着が促進される。
【0013】
他方において、金型の型面と直接接触した樹脂シートは、型締めした際金型により冷却されるので、樹脂シートの接着性が低下し、金型への貼り付きが防止される。
【0014】
本発明による成形装置の好適実施例は、第1の金型は、基材と接触する入れ子を有し、当該入れ子に前記加熱手段が設けられていることを特徴とする。このように、基材が装着される金型を入れ子構造とすれば、入れ子に加熱手段を設けることができ、成形される基材の形状等に対応した温度分布の形成が容易になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基材が装着される金型に加熱手段と冷却手段を設け、金型の型面に基材の形状に対応した温度分布を形成しているので、加熱軟化した樹脂シートは、加熱された基材の表面に接着される。他方において、樹脂シートの金型の型面と直接接触した部分は、金型により冷却され、樹脂シートの金型への貼り付きが有効に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る成形装置の成形前の状態を示す断面図である。
【図2】同成形装置の成形時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明による成形装置の一例を示す図である。成形装置は、互いに対向する第1及び第2の金型1及び2を有する。第1の金型(下型)1の型面上には2個の基材3a及び3bを配置する。本例では、基材3a及び3bはポリプロピレンの硬質樹脂材料で構成する。
【0018】
第1の金型1と第2の金型(上型)2との間に、把持枠4により把持され、加熱軟化した樹脂シート5を配置する。本例では、樹脂シート5として、表皮(TPO)とポリプロピレンフォーム(PPF)とが積層された樹脂シート(TPO/PPF)を用い、加熱軟化したPPFの接着性を利用して樹脂シート5を基材3a及び3b上に成形し、基材を含む成形品を製造する。
【0019】
第1の金型1は、ベース金型10と、ベース金型10に装着された2個の入れ子11及び12を有する。基材3aは入れ子11の型面上に配置され、基材3bは入れ子12の型面上に配置する。従って、入れ子11及び12の型面は基材3a及び3bの裏面とだけ接触する。一方、ベース金型10の型面10a上には基材が存在しないため、成形時において樹脂シート5がベース金型の型面10aと接触する。
【0020】
入れ子11の型面の近傍には、基材を加熱する加熱手段として機能する複数のヒータ13が埋設され、入れ子12の型面の近傍にも複数のヒータ13を埋設する。これらのヒータ13は、基材を高温に加熱する作用を果たすものではなく、成形時に樹脂シートの接着性が良好に発揮されるように基材を加熱し、基材が例えば50℃以上の温度に保温されるように加熱する。従って、成形時において、基材3a及び3bは、入れ子に埋設されているヒータから発生し、入れ子との型面を介して伝導する熱により保温された状態に維持される。
【0021】
ベース金型10の型面10aの近傍には、型面10aを冷却するための冷却手段14を設ける。冷却手段として、例えば冷流体が流れる冷配管で構成する。従って、金型1の型面の基材が配置されず、型締めした際樹脂シートが直接接触する領域は、局所的に冷却される。
【0022】
各入れ子11及び12の底部とベース金型10との間に断熱プレート15及び16をそれぞれ配置し、入れ子の熱がベース金型に伝導するのを防止する。また、入れ子11の側部とベース金型10との間並びに入れ子12の側部とベース金型との間にはクリアランスを設けて空気層を形成する。このように、入れ子の周囲に断熱材を配置すると共に空気層を形成することにより、入れ子で生じた熱がベース金型に伝導するのが防止され、ベース金型の樹脂シートと接触する型面が昇温するのが防止される。
【0023】
第2の金型2は真空成形金型で構成する。すなわち、第2の金型2の型面には全面にわたって真空吸引孔が形成され、真空吸引孔は真空引き管(図示せず)を介して真空ポンプに接続する。また、第2の金型の型面には微細な凹凸絞形状が形成され、成形時に樹脂シート5に転写される。
【0024】
成形に際し、第1の金型1に基材3a及び3bを装着する。これら基材は、第1の金型の入れ子に埋設されているヒータ13により加熱され、所定の温度に維持される。一方、第1の金型の基材が存在しない型面の領域は、冷却手段14により冷却され、周囲よりも低い温度に維持される。続いて、加熱軟化した樹脂シート5を第1の金型1と第2の金型2との間に配置する。
【0025】
その後、第2の金型を下降させて第1の金型と第2の金型とを型締めする。続いて、真空引きを開始する。この際、基材3a及び3bはヒータ14により加熱されているので、加熱軟化した樹脂シート5の基材の表面と接触する部分は基材3a及び3bの表面に良好に接着する。一方、第1の金型の型面1aは冷却手段により冷却されているので、樹脂シートの型面1aと接触した部分は、第1の金型により冷却され、樹脂シートの接着性が大幅に低下し、第1及び第2の金型の型面に接着しない。また、成形中に、第2の金型の真空吸引により、第2の金型の型面に形成された微細な凹凸絞形状は樹脂シート5の表面に転写される。
【符号の説明】
【0026】
1 第1の金型
2 第2の金型
3a,3b 基材
4 把持枠
5 樹脂シート
10 ベース金型
11,12 入れ子
13 ヒータ
14 冷却手段
15,16 断熱プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1及び第2の金型を有し、第1の金型の型面上に基材が配置され、第1の金型と第2の金型との間に加熱軟化した樹脂シートを配置し、型締めすることにより前記基材を含む成形品が製造される成形装置において、
前記第1の金型には、前記基材と接触する型面の近傍に加熱手段が埋設され、基材と接触しない型面の近傍には冷却手段が埋設されていることを特徴とする成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成形装置において、前記第1の金型は、前記基材と接触する入れ子を有し、当該入れ子に前記加熱手段が設けられていることを特徴とする成形装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成形装置において、前記第2の金型は型面に凹凸絞形状が形成された真空成形金型とし、当該第2の金型の型面に形成された凹凸絞形状は前記樹脂シートに転写されることを特徴とする成形装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−25618(P2011−25618A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175970(P2009−175970)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】