説明

成膜用マスク、有機EL装置の製造装置

【課題】磁石との間に挟持された被成膜基板に対して優れた密着性を実現できる成膜用マスクおよびこれを備えた有機EL装置の製造装置を提供すること。
【解決手段】本適用例の有機EL装置の製造装置としての蒸着装置100は、少なくとも1つのチャンバー111と、チャンバー111内に設けられ、膜形成材料を蒸発させる蒸着源110と、蒸着源110に対向するように被成膜基板Wを保持する基板保持部113とを備え、被成膜基板Wは、基板保持部113において、磁石117と、被成膜基板Wの膜形成領域Eに対応する開口部50aを有すると共に磁石117の磁束密度に対して飽和磁化に到達する保磁力を有する成膜用マスク50との間に挟持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜用マスク、有機EL装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置として有機EL(エレクトロルミネセンス)装置は、発光層を含む機能層や機能層を覆う電極を基板上の膜形成領域に成膜することによって、白色やR(赤),G(緑),B(青)などの発光が得られる有機EL素子が形成される。
【0003】
これらの機能層や電極を形成する方法として、膜形成領域に対応した開口部を有する成膜用マスクを基板と密着させた状態で、真空蒸着法を用いて成膜する方法が挙げられる。
例えば、特許文献1には、有機膜の形成された被蒸着基板にメタルマスクを磁力により密着保持して該有機膜上に蒸着を行う際に、磁石によりメタルマスクを被蒸着基板に対して0.98kPa〜98kPaの吸着力で保持するマスク蒸着方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−75638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のマスク蒸着方法では、実施例として吸着力が29.4kPaとなった磁石やメタルマスクおよび被蒸着基板の構成が記載されているものの、有機膜に損傷を与えない0.98kPa〜98kPaの吸着力を実際にはどのようにして実現するのか、例えば吸着力の計測方法などの詳細な説明がなされていない。それゆえに、当業者は、磁石やメタルマスクの選定について試行錯誤しなければならないという課題がある。言い換えれば、より簡便な方法で磁石やメタルマスクを適正に選定可能な方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の成膜用マスクは、磁石との間に少なくとも被成膜基板を挟んで重ね合わされる成膜用マスクであって、前記磁石の磁束密度に対して飽和磁化に到達する保磁力を有していることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、磁石が有する磁束密度すなわち磁場によって成膜用マスクが飽和磁化に到達し、成膜用マスク自体が安定した磁気特性を示すので、磁石との間に挟まれた被成膜基板に成膜用マスクが確実に密着する。
【0009】
[適用例2]上記適用例の成膜用マスクにおいて、前記保磁力(単位;Oe;エルステッド)が前記磁石の磁束密度(単位;G;ガウス)の1/2以下であることが好ましい。
これによれば、磁石の磁場によって成膜用マスクを確実に飽和磁化に到達させることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例の成膜用マスクにおいて、前記磁石の磁束密度が2000G以下であって、前記保磁力が500Oe以下であることが好ましい。
これによれば、さほど強力な磁石を用いなくても、成膜用マスクを飽和磁化させることができる。
【0011】
[適用例4]上記適用例の成膜用マスクにおいて、前記成膜用マスクは、シリコンからなる第1層と、前記第1層に積層された強磁性材料を含む第2層とを少なくとも備えていることを特徴とする。
これによれば、被成膜基板に対して優れた密着性能を有する成膜用マスクとしてのシリコンマスクを提供することができる。
【0012】
[適用例5]上記適用例の成膜用マスクにおいて、前記第2層が非磁性金属材料を10at%以下で含有した強磁性材料からなることが好ましい。
強磁性材料に非磁性金属材料を添加することで、化学的に安定した物性が得られる。また、第2層において非磁性金属材料の含有率が増えるにつれて保磁力が上昇することが判明しており、飽和磁化に到達させるには強力な磁石が必要となってしまう。これによれば、第2層における非磁性金属材料の含有率を10at%以下とすることにより、さほど強力な磁石でなくても飽和磁化に到達する成膜用マスクとしてのシリコンマスクを実現できる。
【0013】
[適用例6]本適用例の有機EL装置の製造装置は、膜形成領域に対応した開口部を有する成膜用マスクと被成膜基板とを重ね合わせて前記被成膜基板の前記膜形成領域に有機EL素子を構成する機能膜を成膜する有機EL装置の製造装置であって、少なくとも1つのチャンバーと、前記チャンバー内に設けられ、膜形成材料を蒸発させる蒸着源と、前記蒸着源に対向するように前記被成膜基板を保持する基板保持部と、を備え、前記基板保持部は、磁石と、前記磁石の磁束密度に対して飽和磁化に到達する保磁力を有する前記成膜用マスクとの間に前記被成膜基板を挟持することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、磁石の磁場により成膜用マスクが飽和磁化となり、磁石によって引き付けられた成膜用マスクが安定した磁気特性を示して、磁石と成膜用マスクとの間に挟持された被成膜基板に確実に密着する。すなわち、成膜用マスクの密着不良に起因する成膜不良が低減され、歩留まりよく有機EL素子を形成可能な有機EL装置の製造装置を提供することができる。
【0015】
[適用例7]上記適用例の有機EL装置の製造装置において、前記成膜用マスクの前記保磁力(単位;Oe;エルステッド)が前記磁石の磁束密度(単位;G;ガウス)の1/2以下であることが好ましい。
この構成によれば、磁石の磁場によって成膜用マスクを確実に飽和磁化させることができる。
【0016】
[適用例8]上記適用例の有機EL装置の製造装置において、前記成膜用マスクの前記保磁力が500Oe以下であって、前記磁石の磁束密度が2000G以下であることが好ましい。
これによれば、磁石の磁場によって成膜用マスクを飽和磁化させると共に、磁束密度2000G以下とすることでチャンバー内の異物が被成膜基板に引き寄せられて成膜不良が発生することを低減することができる。
【0017】
[適用例9]上記適用例の有機EL装置の製造装置において、前記磁石と前記成膜用マスクとの間に働く引力が、単位面積当たりの前記被成膜基板および前記成膜用マスクの重量を力に置き換えた値よりも大きくなる磁束密度を有する前記磁石が用いられていることが好ましい。
この構成によれば、磁石と成膜用マスクとの間に働く引力が、被成膜基板および成膜用マスクの単位面積当たりの重量を力に置き換えた値よりも大きいので、例えば、被成膜基板の自重などによる反りで磁石との間に隙間が生じても、それを矯正して磁石と被成膜基板と成膜用マスクとを互いに密着させることができる。すなわち、成膜用マスクの密着不良に起因する成膜不良がより低減され、より歩留まりよく有機EL素子を形成可能な有機EL装置の製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】有機EL装置の構成を示す概略正面図。
【図2】有機EL装置の構造を示す要部断面図。
【図3】有機EL素子の構成を示す模式図。
【図4】(a)は有機EL装置の製造装置を示す概略断面図、(b)は被成膜基板と成膜用マスクの装着状態を示す概略拡大図。
【図5】(a)は成膜用マスクを示す概略平面図、(b)および(c)は開口部の形状の例を示す概略平面図。
【図6】成膜用マスクの要部断面図。
【図7】磁性材料の磁気特性を示す磁化曲線。
【図8】磁化曲線の測定系を示す模式図。
【図9】実施例1の成膜用マスク試料の磁気特性を示すグラフ。
【図10】実施例3の成膜用マスク試料の磁気特性を示すグラフ。
【図11】比較例1の成膜用マスク試料の磁気特性を示すグラフ。
【図12】実施例1〜実施例3および比較例1、比較例2の成膜評価をまとめた表。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態は、有機EL(エレクトロルミネセンス)装置の製造装置とこれに用いられる成膜用マスクを例に図面を参照して説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0020】
まず、有機EL装置について図1〜図3を参照して説明する。図1は有機EL装置の構成を示す概略正面図、図2は有機EL装置の構造を示す要部断面図、図3は有機EL素子の構成を示す模式図である。
【0021】
図1および図2に示すように、有機EL装置10は、それぞれの表示画素7に対応して有機EL素子12(図2参照)が設けられた素子基板1と、複数の有機EL素子12を封着する封着層35(図2参照)を介して素子基板1を封止する封止基板2とを備えている。
【0022】
素子基板1は、有機EL素子12を駆動する駆動素子を備えた回路部11(図2参照)を有している。そして、表示領域6において赤(R)、緑(G)、青(B)のうち同一の発光色が得られる表示画素7が、同一方向に配列する所謂ストライプ方式の構成となっている。なお、表示画素7は、実際には非常に微細なものであり、図示の都合上拡大している。
【0023】
素子基板1は、封止基板2よりも一回り大きく、額縁状に張り出した部分には、駆動素子であるTFT(Thin Film Transistor)素子8(図2参照)を駆動する2つの走査線駆動回路部3と1つのデータ線駆動回路部4が設けられている。素子基板1の端子部1aには、これらの駆動回路部3,4と外部駆動回路とを接続するためのフレキシブルな中継基板5が実装されている。
【0024】
図2に示すように、有機EL装置10において、有機EL素子12は、第1電極(あるいは画素電極)としての陽極31と、陽極31を区画する隔壁部33と、陽極31上に積層形成された有機膜からなる発光層を含む機能層32とを有している。また、機能層32を介して陽極31と対向するように形成された第2電極(あるいは共通電極)としての陰極34を有している。
【0025】
隔壁部33は、フェノールまたはポリイミドなどの絶縁性を有する感光性樹脂からなり、表示画素7を構成する陽極31の周囲を一部覆って、複数の陽極31をそれぞれ区画するように設けられている。
【0026】
陽極31は、素子基板1上に形成されたTFT素子8の3端子のうちの1つに接続しており、例えば、透明電極材料であるITO(Indium Tin Oxide)を厚さ100nm程度に成膜した電極である。なお、図示省略したが、陽極31の下層(平坦化層28側)に、絶縁層を介してAlからなる反射層が設けられている。当該反射層は、機能層32における発光を封止基板2側に反射するものである。また、当該反射層はAlに限定されず、発光を反射する機能(反射面)を有していればよい。例えば、絶縁性の有機材料あるいは無機材料を用いて凹凸を有する反射面を形成する方法、陽極31自体を反射機能を有する導電材料で構成し、表面層にITO膜を形成する方法などが挙げられる。
【0027】
陰極34は、同じく、ITOなどの透明電極材料により形成されている。
【0028】
封止基板2は、透明なガラス等からなる基板を用いている。有機EL素子12に面する側には、表示画素7の配置に対応した赤(R)、緑(G)、青(B)、3色のフィルターエレメント36R,36G,36Bとこれを区画する遮光部37が設けられている。
【0029】
有機EL装置10は、いわゆるトップエミッション型の構造となっており、陽極31と陰極34との間に駆動電流を流して機能層32で発光した白色光を上記反射層で反射させ、フィルターエレメント36R,36G,36Bを介して封止基板2側から取り出す構成となっている。トップエミッション型の構造であるため、素子基板1は、透明基板および不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0030】
素子基板1には、有機EL素子12を駆動する回路部11が設けられている。すなわち、素子基板1の表面にはSiO2を主体とする下地保護層21が下地として形成され、その上にはシリコン層22が形成されている。このシリコン層22の表面には、SiO2および/またはSiNを主体とするゲート絶縁層23が形成されている。
【0031】
また、シリコン層22のうち、ゲート絶縁層23を挟んでゲート電極26と重なる領域がチャネル領域22aとされている。なお、このゲート電極26は、図示しない走査線の一部である。一方、シリコン層22を覆い、ゲート電極26を形成したゲート絶縁層23の表面には、SiO2を主体とする第1層間絶縁層27が形成されている。
【0032】
また、シリコン層22のうち、チャネル領域22aのソース側には、低濃度ソース領域および高濃度ソース領域22cが設けられる一方、チャネル領域22aのドレイン側には低濃度ドレイン領域および高濃度ドレイン領域22bが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain)構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域22cは、ゲート絶縁層23と第1層間絶縁層27とにわたって開孔するコンタクトホール25aを介して、ソース電極25に接続されている。このソース電極25は、電源線(図示せず)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域22bは、ゲート絶縁層23と第1層間絶縁層27とにわたって開孔するコンタクトホール24aを介して、ソース電極25と同一層からなるドレイン電極24に接続されている。
【0033】
ソース電極25およびドレイン電極24が形成された第1層間絶縁層27の上層には、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする平坦化層28が形成されている。この平坦化層28は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもので、TFT素子8やソース電極25、ドレイン電極24などによる表面の凹凸をなくすために形成された公知のものである。
【0034】
そして、陽極31が、この平坦化層28の表面上に形成されると共に、該平坦化層28に設けられたコンタクトホール28aを介してドレイン電極24に接続されている。すなわち、陽極31は、ドレイン電極24を介して、シリコン層22の高濃度ドレイン領域22bに接続されている。陰極34は、GNDに接続されている。したがって、スイッチング素子としてのTFT素子8により、上記電源線から陽極31に供給され陰極34との間で流れる駆動電流を制御する。これにより、回路部11は、所望の有機EL素子12を発光させカラー表示を可能としている。
【0035】
なお、有機EL素子12を駆動する回路部11の構成は、これに限定されるものではない。
【0036】
図3に示すように、有機EL素子12は、陽極31と陰極34とに挟まれた機能層32を有する。機能層32は、例えば、正孔輸送層(HTL)32h、各色の発光層32LR,32LB,32LG、電子輸送層(ETL)32eと呼ばれる複数の薄膜層からなり、素子基板1上の陽極31側からこの順で積層されている。
【0037】
正孔輸送層(HTL)32hとしては、例えば、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等が挙げられる。
【0038】
発光層32LR,32LB,32LGの形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。例えば、発光層32LRを形成する材料としては、Alq3(トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム)をホストとしてアシストドーパントであるルブレンと赤色ドーパントであるDCM2(ジアノメチレンピラン誘導体)とを含む発光材料が挙げられる。発光層32LBを形成する材料としては、BH215をホストとして青色ドーパントであるBD102を含む発光材料が挙げられる。発光層32LGを形成する材料としては、BH215をホストとして緑色ドーパントであるGD206を含む発光材料が挙げられる。本構成は、いわゆる「ドーパント法」に基づく3色の発光層を備え、白色発光を可能としている。ホストであるBH215、ドーパントであるBD102、GD206は、いずれも出光興産製の公知材料である。
【0039】
電子輸送層(ETL)32eの形成材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体等が挙げられる。
【0040】
これらの正孔輸送層(HTL)32h、発光層32LR,32LB,32LG、電子輸送層(ETL)32eの形成材料は所謂低分子系材料であり、真空蒸着法により成膜することができる。
【0041】
このような有機EL素子12を有する素子基板1は、透明な熱硬化型エポキシ樹脂等を封着部材として用いた封着層35を介して透明な封止基板2と隙間なくベタ封止されている。
【0042】
有機EL装置10は、後述する本実施形態の有機EL装置の製造装置を用いて製造されており、発光層を含む機能層32が所望の膜厚に対して膜厚のばらつきが少なく、異物等が付着していない状態で歩留まりよく成膜されている。それゆえに機能層32における発光特性が安定し、所望の輝度特性が得られる。
【0043】
なお、有機EL装置10は、トップエミッション型に限定されず、陰極34を反射機能を有する不透明なAl等の導電材料を用いて成膜し、有機EL素子12の発光を陰極34で反射させて、素子基板1側から取り出すボトムエミッション型の構造としてもよい。
【0044】
<有機EL装置の製造装置>
次に、有機EL装置の製造装置について図4を参照して説明する。図4(a)は有機EL装置の製造装置を示す概略断面図、同図(b)は被成膜基板と成膜用マスクの装着状態を示す概略拡大図である。
【0045】
図4(a)に示すように、有機EL装置の製造装置としての蒸着装置100は、チャンバー111と、チャンバー111の底部に設けられ、膜形成材料を収納して蒸発させる蒸着源110と、蒸着源110に対向して設けられ、被成膜基板Wをほぼ水平な状態に保持する基板保持部113とを有している。また、蒸着源110から蒸発する膜形成材料の蒸着速度を測定する膜厚測定手段としての水晶振動子112が蒸着源110の上方に配設された構造となっている。なお、この他にも、例えばチャンバー111内を所定の真空度に減圧する減圧装置を備えているが図4(a)では図示省略している。
【0046】
基板保持部113は、外縁側に保持部114を有する支持体115と、支持体115に設けられ、支持体115をチャンバー111内において吊設する回転軸116とを備えている。
【0047】
保持部114はクランプ状の形態となっており、順に重ね合わされた成膜用マスク50、ワークとしての被成膜基板W、磁石117からなる積層体の周辺部を保持している。
【0048】
より具体的には、図4(b)に示すように、被成膜基板Wである素子基板1において、隔壁部33により陽極31を含んで区画された領域が膜形成領域Eであって、成膜用マスク50は、膜形成領域Eに対応した開口部50aを有している。膜形成領域Eが開口するように素子基板1と成膜用マスク50とが位置決めされて重ね合わされ、保持部114によって素子基板1が磁石117と成膜用マスク50との間に挟持される。
成膜用マスク50は、磁石117により引き付けられる構成となっており、素子基板1の隔壁部33と密着している。成膜用マスク50の詳しい構成については後述する。
【0049】
磁石117は、無駄なエネルギーを使わずに安定した磁場が得られ、基板保持部113の構造が複雑にならない等の観点から電磁石よりも自発的に磁気(磁束)を生ずる永久磁石が好ましい。磁石117としては、例えばアルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石などが挙げられる。また、これらの磁石粉を樹脂等に混ぜて成型したゴム磁石などでもよい。
【0050】
蒸着源110には、前述した機能層32を構成する正孔輸送層(HTL)32h、発光層32LR,32LB,32LG、電子輸送層(ETL)32eのうちいずれかの膜形成材料が収納され加熱されることにより蒸発する。これらの膜形成材料が蒸着する間に回転軸116が回転することにより基板保持部113に保持された被成膜基板Wが回転する。これにより、素子基板1の膜形成領域Eには、各層の膜厚ばらつきが低減された状態で機能層32を成膜することが可能となっている。
【0051】
このような有機EL装置10の製造装置としての蒸着装置100および有機EL装置10の製造方法において、歩留まりよく機能層32を成膜するには、蒸着源110と被成膜基板Wとの間の距離が安定していること、また成膜用マスク50が確実に被成膜基板Wと密着していることが重要である。
【0052】
例えば、被成膜基板Wである素子基板1における隔壁部33の高さは必ずしも一定ではなく、ばらつきを有している。隔壁部33と成膜用マスク50との間において、部分的に隙間を有した状態で密着していると、該隙間から蒸発した膜形成材料が隣接する膜形成領域Eに回り込み、膜形成領域Eごとの機能層32の膜厚がばらつくおそれがある。
一方、磁石117の磁束密度が大きく成膜用マスク50を引き付ける力が強いときには、素子基板1と成膜用マスク50とが強固に密着する。すると成膜後に成膜用マスク50を素子基板1から外すときに、有機膜からなる隔壁部33が成膜用マスク50に付着して剥がれてしまい、画素欠陥を引き起こすおそれがある。
また、磁石117の磁束密度が大きいと、蒸着中にチャンバー111内の異物を引き寄せて成膜されることにより、同じく画素欠陥を引き起こすおそれがある。
【0053】
本実施形態の蒸着装置100では、磁石117および成膜用マスク50がそれぞれ適正な磁気特性を有するように設定されているため、上記のような不具合が低減され歩留まりよく機能層32を成膜することができる。以降、成膜用マスク50と磁石117との関係について詳しく説明する。
【0054】
<成膜用マスク>
成膜用マスクについて図5を参照して説明する。図5(a)は成膜用マスクを示す概略平面図、同図(b)および同図(c)は開口部の形状の例を示す概略平面図、図6は成膜用マスクの要部断面図である。
【0055】
図5(a)に示すように、成膜用マスク50は、基材51に対してマトリクス状に配置された複数のマスク領域52と、基材51の四隅に配置された4つのアライメントマーク53とを有している。1つのマスク領域52は、1つの有機EL装置10に対応するものであって、マスク領域52には、成膜用パターンすなわち膜形成領域Eに対応した開口部50aが形成されている。すなわち、本実施形態の成膜用マスク50は、複数の素子基板1が面付けされたマザー基板を被成膜基板Wとして機能層32を成膜するときに用いられるものである。
【0056】
成膜用マスク50に設けられた開口部50aは、例えば同図(b)に示すように、1つの表示画素7(図1参照)に対応するように開口したものである。被成膜基板W(素子基板1)との重ね合わせ精度を考慮して膜形成領域Eよりもやや大きな開口面積を有している。また、これに限らず、例えば同図(c)に示すように、同色の発光が得られる複数の表示画素7からなる列に対応してスリット状に開口したものも有り得る。
【0057】
本実施形態では、精細な表示画素7に対応して高精度に開口部50aを形成可能であることからシリコン基板を用いて成膜用マスク50を構成した。以降、成膜用マスク50をシリコンマスクと呼ぶこともある。
【0058】
図6に示すように、本実施形態の成膜用マスク50は、シリコンからなる第1層54と、第1層54の一方の表面に積層された磁性体層である第2層55とを有する。すなわち、所定の厚み(例えば、10〜30μm)のシリコン基板に強磁性材料を含む磁性体層を形成し、それをフォトリソグラフィ法によりエッチング加工することにより、開口部50aを形成した。
【0059】
第2層55を形成する磁性体としては、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)などの強磁性材料やこれらの混合物、また、これらの強磁性材料に非磁性金属材料を含有するものが用いられる。非磁性金属材料を含有することで磁性体層としての物理的、化学的な安定を図ることができる。非磁性金属材料としては、例えばZn(亜鉛)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Re(レニウム)、Pt(白金)などが挙げられる。
【0060】
磁性体層である第2層55の厚みは、用いられる磁性材料にもよるがおよそ0.4〜0.8μmである。
【0061】
このような磁性体層である第2層55を有する成膜用マスク50は、基板保持部113における磁石117の磁場の影響を受け、第2層55の材料構成などによって固有の磁気特性を有するものである。
【0062】
図7は磁性材料の磁気特性を示す磁化曲線である。図7に示すように、一般に、磁性材料の磁束密度Bと磁場Hとは比例関係になく、しかも磁化の強さが以前の履歴に従うヒステリシス現象を伴う。
【0063】
磁化されていない磁性材料を磁化すると、その磁束密度Bは「0」から増加して行き飽和点P1に達する。そのときの磁束密度Bmaxは飽和磁束密度と呼ばれている。次に磁場Hを減少させて行くと、先の増加曲線0−P1をたどらずに曲線P1−P2に沿って行き、点P2に到達し磁場Hが「0」になっても磁束密度Bは「0」にはならず、残留磁束密度(あるいは残留磁気)Brが残る。さらに磁場Hを負の方向に増加させて行くと、曲線P2−P3に沿って磁束密度Bが減少しやがて点P3に到達して「0」となる。このときの磁場Hcは保磁力と呼ばれている。さらに磁場Hを負の方向に増やして行くと磁束密度Bは負の飽和点P4に達する。そして、磁場Hを正の方向に増やして行くと、磁束密度Bは、曲線P4−P5−P6をたどって再び飽和点P1に戻る。このような磁性材料の磁気特性は磁化曲線あるいは磁気ヒステリシス曲線と呼ばれている。
【0064】
成膜用マスク50は、前述したように第2層55の構成により固有な磁気特性を有するため、同様の構成を有する試料を作製し、その磁化曲線を調べることにより該成膜用マスク50の磁気特性を知ることができる。
【0065】
図8は磁化曲線の測定系を示す模式図である。図8に示すように磁化測定装置200は、一定の方向に外部磁場を発生させる一対のコイルからなる電磁石201と、該一対のコイル間に設けられた同じく一対の検知コイル202とを備えている。電磁石201の端子201a,201bには直流電源が接続され、外部磁場を発生させることができると共に、端子201a,201b間の極性を変えることにより外部磁場の方向を逆にすることができる。すなわち、磁場を正と負とに切り替えることができる。検知コイル202の端子202a,202bには、例えば磁束計やオシロスコープが接続される。
【0066】
一定の大きさの外部磁場の中に試料(磁性体そのもの、あるいは磁性体層を有する試料)を配置し、外部磁場の方向と直交する方向において所定の周期で振動させる。外部磁場によって試料が磁化されると試料磁場が発生し、試料の振動に伴って検知コイル202を通過する磁束が変化する。その磁束の変化により検知コイル202には磁化の大きさに比例した誘導起電力が発生する。この誘導起電力Vcoilは、次の数式(1)によって導かれる。
【0067】
coil=2πfCmAsin(2πft)・・・・・(1)
fは振動数、Cは定数、mは磁化、Aは振幅、tは時間。
検知コイル202の端子202a,202b間に生じた誘導起電力Vcoilを測定することにより、磁化mを調べることができる。
このような磁化測定装置200は、VSM(Vibration-Sample-Magnetometer)と呼ばれている。
【0068】
以下、成膜用マスク50と磁石117との関係について実施例と比較例を上げて説明する。図9は実施例1の成膜用マスク試料の磁気特性を示すグラフ、図10は実施例3の成膜用マスク試料の磁気特性を示すグラフ、図11は比較例1の成膜用マスク試料の磁気特性を示すグラフである。いずれも上記磁化測定装置200を用いて測定されたものである。
【0069】
(実施例1)
実施例1における成膜用マスク試料の材料構成は、およそ5mm角のシリコン基板に非磁性金属材料であるPt(白金)を7at%で含有した強磁性材料であるCo(コバルト)をおよそ0.5μmの厚さで成膜したものである。
【0070】
そして、磁化測定装置200において実施例1の成膜用マスク試料をおよそ80Hz、振幅0.5mm程度で上下に振動させ、その磁化を測定した。
【0071】
図9に示すように、実施例1の成膜用マスク試料は、保磁力Hcがおよそ245Oe(エルステッド)、残留磁束密度Brがおよそ188emu/cm3であった。およそ500Oe(エルステッド)の磁場Hによって飽和磁化に到達する。
なお、磁束密度Bは、次の数式(2)で与えられ、μは真空中の透磁率であり、CGSガウス単位系では、μ=1として扱うことができる。
B=μH・・・・・・(2)
【0072】
よって、成膜用マスク試料と同じ材料構成を有する成膜用マスク50を磁石117によって安定的に引き付けるには、磁石117の磁束密度Bが成膜用マスク50の保磁力Hcのおよそ2倍である500Gが必要である。言い換えれば、成膜用マスク50の保磁力Hcは、磁石117の磁束密度Bの1/2以下であることが好ましい。
【0073】
さらに、磁石117によって成膜用マスク50を引き付け、被成膜基板Wと成膜用マスク50とを確実に密着させるには、引き付けられた成膜用マスク50によって被成膜基板Wを押圧し磁石117に密着させることが望ましい。これにより、例えば被成膜基板Wがその自重などにより反った状態で基板保持部113に保持されていたとしても、磁石117により成膜用マスク50を引き付けることにより、相互に密着させることができる。
【0074】
例えば、被成膜基板Wを厚みが0.5mmのホウケイ酸ガラスであるとすると、被成膜基板Wの単位面積当たりの重量は、およそ0.125gである。成膜用マスク50においてシリコンである第1層54の厚みをおよそ30μmとして成膜用マスク50の単位面積当たりの重量を求めると、およそ0.00699gである。両方を足した値は、0.13199gであって、これを張力に置き換えるとおよそ130dynとなる。
すなわち、磁石117と成膜用マスク50との間に働く力Fが130dyn以上であれば、成膜用マスク50は磁石117により引き付けられ、被成膜基板Wを押圧して相互に密着することができる。
【0075】
磁石117と成膜用マスク50との間に働く力Fは、次の数式(3)で与えられる。
F=kmH・・・・・・・(3)
kは定数で100/2π、mは成膜用マスクの単位面積当たりの磁化量(emu/cm2)、Hは磁石の磁場(G;ガウス)である。単位面積当たりの磁化量mは、磁石117の磁束密度Bの下限を決める観点で重要なため、磁化後の成膜用マスク50の残留磁束密度Br(emu/cm3)に磁性体の厚みを乗じた値とする。
【0076】
前述したように、実施例1の成膜用マスク試料の残留磁束密度Brが188emu/cm3であり、磁性体層の厚みが0.5μmである。したがって、上記数式(3)において、Fを130dynとして磁石117の磁場Hを求めると、およそ868Gとなる。
したがって、磁石117の磁場Hと成膜用マスク50の保磁力とを比較すると、成膜用マスク50の保磁力は、磁石117のおよそ1/3.5である。
【0077】
実施例1の構成を適用した成膜用マスク50を実際に蒸着装置100に装着して用いるにあたり、蒸発した膜形成材料は被成膜基板Wの膜形成領域Eに成膜されるだけでなく、成膜用マスク50自体にも膜形成材料が蒸着され、成膜用マスク50の重量が増えることが考えられる。また、複数の成膜用マスク50を用意して蒸着を行うことも考えられる。したがって、複数の成膜用マスク50の重量のばらつきや保磁力Hcのばらつきを考慮すると、磁石117の磁場Hの大きさすなわち磁束密度Bは、成膜用マスク50の保磁力Hcに対して4倍程度の値とすることがさらに好ましい。そこで、実施例1では、磁石117の磁束密度Bを1000Gとして蒸着装置100に装着して蒸着を行った。
【0078】
(実施例2)
実施例2では、実施例1に対して磁石117の磁束密度Bを2000Gとして蒸着装置100に装着して蒸着を行った。
【0079】
(実施例3)
実施例3の成膜用マスク試料の材料構成は、およそ5mm角のシリコン基板に強磁性材料であるNi(ニッケル)を34at%で含有した同じく強磁性材料であるFe(鉄)をおよそ0.5μmの厚さで成膜したものである。
【0080】
図10に示すように、実施例3の成膜用マスク試料を実施例1と同様にして磁化測定装置200により測定した磁化曲線によれば、保磁力Hcが12Oe(エルステッド)、残留磁束密度Brがおよそ1050emu/cm3であった。およそ30Oe(エルステッド)の磁場Hによって飽和磁化に到達する。
【0081】
実施例1と同様にして、磁石117に求められる磁場Hを上記数式(3)に基づいて算出すると、およそ155Gとなる。そこで、実施例3では上記材料構成の成膜用マスク50と磁束密度Bが200Gの磁石117とを蒸着装置100に装着して蒸着を行った。
【0082】
(比較例1)
比較例1の成膜用マスク試料の材料構成は、およそ5mm角のシリコン基板に非磁性金属材料であるPtを22at%で含有した同じく強磁性材料であるCoをおよそ0.5μmの厚さで成膜したものである。
【0083】
図11に示すように、比較例1の成膜用マスク試料を実施例1と同様にして磁化測定装置200により測定した磁化曲線によれば、保磁力Hcが921Oe(エルステッド)、残留磁束密度Brがおよそ350emu/cm3であった。およそ10000Oe(エルステッド)の磁場Hによって飽和磁化に到達する。
【0084】
実施例1と同様にして、磁石117に求められる磁場Hを上記数式(3)に基づいて算出すると、およそ466Gとなる。そこで、比較例1では上記材料構成の成膜用マスク50と磁束密度Bが1000Gの磁石117を蒸着装置100に装着して蒸着を行った。
【0085】
(比較例2)
比較例2では、比較例1の上記材料構成の成膜用マスク50と磁束密度Bが10000Gの磁石117を蒸着装置100に装着して蒸着を行った。
【0086】
図12は実施例1〜実施例3および比較例1、比較例2の成膜評価をまとめた表である。
【0087】
図12に示すように、実施例1〜実施例3では成膜用マスク50が磁石117によっていずれも飽和磁化に到達して、被成膜基板Wと成膜用マスク50とが確実に密着し、成膜不良はほとんど発生しなかった。すなわち被成膜基板Wとのマスク密着性は良好であった。実施例2は実施例1や実施例3と比較すると、被成膜基板Wに対して異物の付着がやや多い傾向が認められたものの、成膜歩留まりへの影響はわずかであった。
【0088】
これに対して、比較例1では、成膜用マスク50が磁石117によって飽和磁化に達せず、被成膜基板Wに対する成膜用マスク50の密着性が不十分で成膜不良が発生した。比較例2では、磁石117によって成膜用マスク50が飽和磁化に到達し、被成膜基板Wと成膜用マスク50との密着性は確保されたものの、密着力が強すぎて成膜用マスク50の剥離がうまく行かず画素欠陥が発生した。すなわち、マスク密着性に問題が生じた。また、磁石117の磁束密度Bが強力であったため、チャンバー111内において異物を引き付け、被成膜基板Wへの付着が顕著であった。
【0089】
実施例1〜実施例3および比較例1、比較例2によれば、成膜用マスク50としてのシリコンマスクとしては、蒸着装置100において異物の付着が抑制される磁束密度Bが2000G以下の磁石117に対して飽和磁化に到達し、安定したマスク密着性が得られる500Oe以下の保磁力Hcを有することが好ましい。
特に、適正な保磁力Hcを実現でき、物理的、化学的な安定性が得られる点では、非磁性金属材料の含有量を10at%以下とした強磁性材料を磁性体層である第2層55の材料構成として適用することが好ましい。
また、強力な磁石117を用いなくてもマスク密着性を確保できる点では、実施例3のようなFe−Ni系の磁性体層を有するものが好ましい。
【0090】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0091】
(変形例1)上記実施形態において、成膜用マスク50は、シリコンマスクに限定されない。例えば、強磁性材料を含むメタルマスクにおいても、材料構成やこれに伴う保磁力Hcに基づいて磁石117の磁束密度Bの設定を適用することができる。上記メタルマスクとしては、インバー(Fe−36wt%Ni;50μm)やNi−15wt%Co;36μmなどの材料を用いたものが挙げられる。前者の保磁力Hcはおよそ85Oeであり、およそ500Gの磁場Hで飽和磁化に到達する。また、後者の保磁力Hcはおよそ38.6Oeであり、およそ650Gの磁場Hで飽和磁化に到達する。
【0092】
(変形例2)上記実施形態の成膜用マスク50および磁石117を装着する有機EL装置の製造装置は、蒸着装置100に限定されない。例えば、成膜が行われる複数のチャンバーが連結されたインライン方式の成膜装置であっても適用可能である。
【0093】
(変形例3)上記実施形態の成膜用マスク50および磁石117を装着する製造装置は、有機EL装置の製造装置に限定されない。例えば、プラズマ装置、液晶装置などの製造装置であって、成膜用マスクを用いて選択的に機能膜を成膜する蒸着装置、スパッタ装置、イオンプレーティング装置、CVD装置などに適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
12…有機EL素子、32…機能層、50…成膜用マスク、50a…開口部、54…シリコンからなる第1層、55…強磁性材料を含む第2層、100…有機EL装置の製造装置としての蒸着装置、110…蒸着源、111…チャンバー、113…基板保持部、117…磁石、B…磁束密度、E…膜形成領域、W…被成膜基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石との間に少なくとも被成膜基板を挟んで重ね合わされる成膜用マスクであって、
前記磁石の磁束密度に対して飽和磁化に到達する保磁力を有していることを特徴とする成膜用マスク。
【請求項2】
前記保磁力(単位;Oe;エルステッド)が前記磁石の磁束密度(単位;G;ガウス)の1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の成膜用マスク。
【請求項3】
前記磁石の磁束密度が2000G以下であって、前記保磁力が500Oe以下であることを特徴とする請求項2に記載の成膜用マスク。
【請求項4】
前記成膜用マスクは、シリコンからなる第1層と、前記第1層に積層された強磁性材料を含む第2層とを少なくとも備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜用マスク。
【請求項5】
前記第2層が非磁性金属材料を10at%以下で含有した強磁性材料からなることを特徴とする請求項4に記載の成膜用マスク。
【請求項6】
膜形成領域に対応した開口部を有する成膜用マスクと被成膜基板とを重ね合わせて前記被成膜基板の前記膜形成領域に有機EL素子を構成する機能膜を成膜する有機EL装置の製造装置であって、
少なくとも1つのチャンバーと、
前記チャンバー内に設けられ、膜形成材料を蒸発させる蒸着源と、
前記蒸着源に対向するように前記被成膜基板を保持する基板保持部と、を備え、
前記基板保持部は、磁石と、前記磁石の磁束密度に対して飽和磁化に到達する保磁力を有する前記成膜用マスクとの間に前記被成膜基板を挟持することを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項7】
前記成膜用マスクの前記保磁力(単位;Oe;エルステッド)が前記磁石の磁束密度(単位;G;ガウス)の1/2以下であることを特徴とする請求項6に記載の有機EL装置の製造装置。
【請求項8】
前記成膜用マスクの前記保磁力が500Oe以下であって、前記磁石の磁束密度が2000G以下であることを特徴とする請求項7に記載の有機EL装置の製造装置。
【請求項9】
前記磁石と前記成膜用マスクとの間に働く引力が、単位面積当たりの前記被成膜基板および前記成膜用マスクの重量を力に置き換えた値よりも大きくなる磁束密度を有する前記磁石が用いられていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−209441(P2010−209441A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59058(P2009−59058)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】