説明

戸建住宅用制振装置

【課題】戸建住宅の架構に作用する地震力や強風力を効果的に吸収して大きな制振能力を得ることのできる戸建住宅用制振装置を提供する。
【解決手段】プレート状に成形された粘弾性体20a〜20dと板状剛性部材21a〜21eとを交互に重合すると共に重合する表面同士を接着して形成された粘弾性ダンパー15と、粘弾性ダンパー15の両端部を戸建住宅の架構を補強する補強部材に連結する二つのダンパー連結具とを備えてなり、ダンパー連結具が板状剛性部材21a〜21eの一端部に形成された連結部211と嵌合する複数の連結溝22を有する戸建住宅用制振装置において、連結部211を板状剛性部材21a〜21eの両面から突出させて板状剛性部材21a〜21eの一端部に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造戸建住宅等に用いられる戸建住宅用制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
在来工法で築造される木造戸建住宅は、2×4工法やプレハブ工法で築造されるものと比較して地震力や強風力に対する耐力が弱いとされている。そこで、地震力や強風力に対する木造戸建住宅の耐力を向上させる技術として、木造戸建住宅の架構を補強する筋交の途中に制振ダンパーを組み込んで地震力や強風力に対する木造戸建住宅の向上させる技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されたものは、筋交の中央部分で片面同士が互いに対向する一対の木製板状剛性部材と、これら木製板状剛性部材の相対向する片面に両面が接着された粘弾性体とで制振ダンパーが構成されているため、大きな制振能力を得るためには、幅の広い板状剛性部材を用いて板状剛性部材と粘弾性体との接着面積を大きくする必要がある。このため、大きな制振能力を得ようとすると制振ダンパーが大型化し、筋交に組み込むことが難しくなる。
【0004】
そこで、戸建住宅の架構に組み込まれる制振装置として、図10に示すものが提案されている(特願2008−123996号明細書参照)。この制振装置は戸建住宅の土台11上に立設された柱12と柱13との間に筋交等の補強部材16,17を介して架設される粘弾性ダンパー15と、この粘弾性ダンパー15の両端部のうち一方の端部を土台11の上方に横架された梁等の横架材14と柱12との接合部近傍から斜め下方に延出する補強部材16の端部に連結する第1のダンパー連結具18と、粘弾性ダンパー15の他方の端部を土台11と柱13との接合部近傍から斜め上方に延出する補強部材17の端部に連結する第2のダンパー連結具19とを備えてなるものであり、粘弾性ダンパー15は、図11に示すように、プレート状に成形された粘弾性体20a,20b,20cと板状剛性部材21a,21b,21c,21dとを交互に重合すると共に重合する表面同士を接着して形成されている。そして、第1のダンパー連結具18と第2のダンパー連結具19には、板状剛性部材21a〜21dの一端部に形成された連結部211と嵌合する複数の連結溝22が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−110399号公報(図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10に示した戸建住宅用制振装置によると、粘弾性ダンパー15がプレート状に成形された粘弾性体20a〜20cと板状剛性部材21a〜21dとを交互に重合すると共に重合する表面同士を接着して形成されているため、ダンパーの大型化を招くことなく大きな制振能力を得ることができる。しかしながら、板状剛性部材21a〜21dの端部に形成された連結部211が連結溝22の深さ方向に対して左右非対称に形成されているため、補強部材16,17の長手方向に粘弾性ダンパー15を圧縮する外力が第1のダンパー連結具18や第2のダンパー連結具19を介して連結部211に作用すると、板状剛性部材21a〜21dが弓形に変形する。これにより、粘弾性ダンパー15の振動吸収能力が低下するため、図10及び図11に示した制振装置では、戸建住宅の架構に作用する地震力や強風力を効果的に吸収して大きな制振能力を得ることが難しいという問題があった。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、戸建住宅の架構に作用する地震力や強風力を効果的に吸収して大きな制振能力を得ることのできる戸建住宅用制振装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、戸建住宅の土台上に立設された二本の柱の間に前記戸建住宅の架構を補強する補強部材を介して架設される粘弾性ダンパーと、該粘弾性ダンパーの両端部のうち一方の端部を前記二本の柱のうち一方の柱と前記土台の上方に横架された横架材との接合部近傍から斜め下方に延出する補強部材の端部に連結する第1のダンパー連結具と、前記粘弾性ダンパーの両端部のうち他方の端部を前記二本の柱のうち他方の柱と前記土台との接合部近傍から斜め上方に延出する補強部材の端部に連結する第2のダンパー連結具とを備えてなり、前記粘弾性ダンパーがプレート状に成形された複数の粘弾性体と板状剛性部材とを交互に重合すると共に重合する表面同士を接着して形成され、かつ前記板状剛性部材が前記粘弾性体と接着する薄板部を有するとともに、前記第1のダンパー連結具と前記第2のダンパー連結具が前記板状剛性部材の端部に形成された連結部と嵌合する複数の連結溝を有する戸建住宅用制振装置において、前記連結部が前記板状剛性部材の両面から突出するように前記連結溝の深さ方向に対して左右対称に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の戸建住宅用制振装置において、前記板状剛性部材が前記薄板部より厚さの厚い厚板部を前記薄板部と前記連結部との間に有することを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1または2記載の戸建住宅用制振装置において、前記板状剛性部材が前記粘弾性体の端面と対向するテーパ部を前記薄板部と前記厚板部との間に有することを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項記載の戸建住宅用制振装置において、前記連結溝の長手方向に沿って前記連結溝の底面中央部に形成されたピン係合凹部と該ピン係合凹部に対向して前記連結部に形成されたピン係合溝との間にガタツキ防止ピンを圧入して前記連結部を前記連結溝の底面から離間する方向に押圧したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明に係る戸建住宅用制振装置によると、第1のダンパー連結具と第2のダンパー連結具の連結溝に嵌合する板状剛性部材の連結部を板状剛性部材の両面から突出するように連結溝の深さ方向に対して左右対称に形成したことで、補強部材の長手方向に粘弾性ダンパーを圧縮する外力が第1のダンパー連結具や第2のダンパー連結具を介して連結部に作用しても板状剛性部材が弓形に変形し難くなる。これにより、板状剛性部材が弓形に変形することによって粘弾性ダンパーの振動吸収能力が低下することを防止できるので、戸建住宅の架構に作用する地震力や強風力を効果的に吸収して大きな制振能力を得ることができる。また、板状剛性部材の連結部を連結溝の深さ方向に対して左右対称に形成したことで、補強部材に作用する圧縮方向の地震力や強風力が第1のダンパー連結具や第2のダンパー連結具を介して板状剛性部材の連結部に左右均等に作用し、これにより、板状剛性部材が面外方向に変形し難くなるので、板状剛性部材が面外方向に変形することによって粘弾性ダンパーの振動吸収能力が低下することを防止することができる。
【0012】
請求項2の発明に係る戸建住宅用制振装置によると、板状剛性部材の連結部と薄板部との間に薄板部より厚さの厚い厚板部を形成したことで、補強部材の長手方向に粘弾性ダンパーを圧縮する外力が第1のダンパー連結具や第2のダンパー連結具を介して連結部に作用しても板状剛性部材が弓形により変形し難くなる。したがって、戸建住宅の架構に作用する地震力や強風力を効果的に吸収してより大きな制振能力を得ることができる。また、連結部と薄板部との間に形成された厚板部によって板状剛性部材の剛性が増大し、これにより、粘弾性ダンパーを補強部材の長手方向に圧縮する方向の地震力や強風力が補強部材を介して第1のダンパー連結具や第2のダンパー連結具に加わっても板状剛性部材が面外方向に変形し難くなるため、戸建住宅の架構に作用する地震力や強風力を効果的に吸収してより大きな制振能力を得ることができる。
【0013】
請求項3の発明に係る戸建住宅用制振装置によると、板状剛性部材の薄板部との厚板部との間に粘弾性体の端面と対向するテーパ部を形成したことで、補強部材の長手方向に粘弾性ダンパーを引っ張る外力が第1のダンパー連結具や第2のダンパー連結具を介して板状剛性部材に作用しても粘弾性体が板状剛性部材の厚板部と接触することがないので、厚板部との接触によって粘弾性体が損傷することを防止することができる。
【0014】
請求項4の発明に係る戸建住宅用制振装置によると、連結溝の長手方向に沿って連結溝の底面中央部に形成されたピン係合凹部と該ピン係合凹部に対向して連結部に形成されたピン係合溝との間にガタツキ防止ピンを圧入して連結部を連結溝の底面から離間する方向に押圧したことで、連結部が連結溝の深さ方向や幅方向にがたつくことがなく、これにより、粘弾性ダンパーの粘弾性体に振動エネルギーが効率よく伝わるため、戸建住宅の架構に作用する地震力や強風力を効果的に吸収して戸建住宅の揺れを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る戸建住宅用制振装置を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面を示す図である。
【図3】図1のB−B断面を示す図である。
【図4】図2に示す戸建住宅用制振装置の一部を示す図である。
【図5】図3に示す戸建住宅用制振装置の一部を示す図である。
【図6】図1のC−C断面を示す図である。
【図7】図1のD−D断面を示す図である。
【図8】図1のE−E断面を示す図である。
【図9】図1のF−F断面を示す図である。
【図10】従来の戸建住宅用制振装置の一例を示す正面図である。
【図11】従来の戸建住宅用制振装置の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1〜図9は本発明の第1の実施形態を示す図であり、図1に示すように、第1の実施形態に係る戸建住宅用制振装置は粘弾性ダンパー15、第1のダンパー連結具18及び第2のダンパー連結具19を備えている。
粘弾性ダンパー15は戸建住宅の土台11上に立設された柱12と柱13との間に戸建住宅の架構を補強する補強部材16,17を介して架設されるものであって、図2及び図3に示すように、プレート状に成形された粘弾性体20a,20b,20c,20dと板状剛性部材21a,21b,21c,21d,21eとを交互に重合すると共に重合する表面同士を接着して形成されている。
【0017】
第1のダンパー連結具18は粘弾性ダンパー15の両端部のうち一方の端部を柱12と土台11の上方に横架された横架材14との接合部近傍から斜め下方に延出する補強部材16の端部に連結するものであって、アルミニウムまたはアルミニウム合金を押出成形して形成されている。また、第1のダンパー連結具18はプレート部181,182(図2参照)を有し、これらのプレート部181,182は片面同士を対向させて第1のダンパー連結具18に形成されている。
【0018】
第2のダンパー連結具19は粘弾性ダンパー15の両端部のうち他方の端部を柱13と土台11との接合部近傍から斜め上方に延出する補強部材17の端部に連結するものであって、第1のダンパー連結具18と同様にアルミニウムまたはアルミニウム合金を押出成形して形成されている。また、第2のダンパー連結具19はプレート部191,192(図3参照)を有し、これらのプレート部191,192は片面同士を対向させて第2のダンパー連結具19に形成されている。
【0019】
粘弾性ダンパー15の板状剛性部材21a〜21eは、アルミニウムまたはアルミニウム合金をプレート状に押出成形して形成されている。また、板状剛性部材21a〜21eは補強部材16,17の長手方向に沿って矩形状に形成されていると共に、第1のダンパー連結具18と第2のダンパー連結具19に形成された複数の連結溝22の一つと嵌合する連結部211(図2及び図3参照)を有している。この連結部211は板状剛性部材21a〜21eの一端部に形成され、板状剛性部材21a〜21eの両面から突出していると共に連結溝22の深さ方向に対して左右対称に形成されている。
【0020】
板状剛性部材21a〜21eは、また、厚さが2.5〜3.5mm程度の薄板部212(図2及び図3参照)を有し、この薄板部212の表面に粘弾性体20a〜20dの一つが接着されている。さらに、板状剛性部材21a〜21eは薄板部212より厚さが約2倍程度厚い厚板部213(図2及び図3参照)を有し、この厚板部213は連結部211と薄板部212との間に形成されている。さらにまた、板状剛性部材21a〜21eは粘弾性体20a〜20dの端面と対向するテーパ部214(図2及び図3参照)を有し、このテーパ部214は薄板部212と厚板部213との間に形成されている。
【0021】
補強部材16は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を中空状に押出成形して形成されていると共に互いに対向する内側面161,162(図2参照)を有している。これらの内側面161,162は第1のダンパー連結具18に形成されたプレート部181,182と嵌合しており、プレート部181,182は補強部材16の外側面から打ち込まれた複数のビス40によって補強部材16の内側面161,162に固定されている。
【0022】
補強部材17は、補強部材16と同様にアルミニウムまたはアルミニウム合金を中空状に押出成形して形成されていると共に、互いに対向する内側面171,172(図3参照)を有している。これらの内側面171,172は第2のダンパー連結具19に形成されたプレート部191,192と嵌合しており、プレート部191,192は補強部材17の外側面から打ち込まれた複数のビス41によって補強部材17の内側面171,172に固定されている。
【0023】
土台11は、図6〜図8に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金を中空状に押出成形して形成されている。また、土台11は上面に複数(例えば二つ)の連結溝111を有し、これらの連結溝111は土台11の長手方向に沿って形成されていると共に土台11の高さ方向に沿う断面が逆T字状に形成されている。さらに、土台11は複数(例えば二つ)の補強リブ112を有し、これらの補強リブ112は連結溝111の真上に位置するように土台11の内部に形成されている。
【0024】
柱12の下端部は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を逆T字状に押出成形してなる固定用金具24(図6参照)により土台11の上面に固定されている。この固定用金具24は柱12の下端部に形成されたほぞ溝25に嵌合する垂直プレート部241を有し、この垂直プレート部241に穿設されたドリフトピン挿通孔にドリフトピン26を柱12の外面から水平に差し込むことによって柱12の下端部が固定用金具24に固定されるようになっている。また、固定用金具24は土台11の上面に載置される水平プレート部242を有し、この水平プレート部242の下面部に形成された複数(例えば二つ)の固定用突起部243が土台11の上面に形成された連結溝111に嵌合することによって柱12の下端部が土台11の上面に固定されるようになっている。
【0025】
柱13の下端部は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を逆T字状に押出成形してなる固定用金具27(図7参照)により土台11の上面に固定されている。この固定用金具27は柱13の下端部に形成されたほぞ溝28に嵌合する垂直プレート部271を有し、この垂直プレート部271に穿設されたドリフトピン挿通孔にドリフトピン29を柱13の外面から水平に差し込むことによって柱13の下端部が固定用金具27に固定されるようになっている。また、固定用金具27は土台11の上面に載置される水平プレート部272を有し、この水平プレート部272の下面部に形成された複数(例えば二つ)の固定用突起部273が土台11の上面に形成された連結溝111に嵌合することによって柱13の下端部が土台11の上面に固定されるようになっている。
【0026】
補強部材16の上端部は、アルミニウムまたはアルミニウム合金をL字状に押出成形してなる固定用金具30,31(図9参照)により柱12の側面上面と横架材14の下面に固定されている。これらの固定用金具30,31のうち固定用金具30は複数の固定用ねじ32により補強部材16の右側面と横架材14の下面に固定され、固定用金具31は複数の固定用ねじ33により補強部材16の左側面と柱12の側面上部に固定されている。
【0027】
一方、補強部材17の下端部は、図8に示すように、固定用金具27の垂直プレート部271に穿設された複数のボルト挿通孔にボルト34を補強部材17の内側から挿入し、ボルト34をナット35で締め付けることによって固定用金具27の垂直プレート部271に固定されている。
連結溝22の底面中央部には、ピン係合凹部37(図4及び図5)が連結溝22の長手方向に沿って形成されている。このピン係合凹部37は板状剛性部材21a〜21eの連結部211に形成されたピン係合溝36と対向しており、板状剛性部材21a〜21eの連結部211はピン係合溝36とピン係合凹部37との間に連結溝22の両端側から圧入された二本のガタツキ防止ピン38によって連結溝22の底面から離間する方向に押圧されている。
【0028】
上述した第1の実施形態では、板状剛性部材21a〜21eの連結部211を板状剛性部材21a〜21eの両面から突出するように連結溝22の深さ方向に対して左右対称に形成したことで、補強部材16,17の長手方向に粘弾性ダンパー15を圧縮する外力が第1のダンパー連結具18や第2のダンパー連結具19を介して連結部211に作用しても板状剛性部材21a〜21eが弓形に変形し難くなる。これにより、板状剛性部材21a〜21eが弓形に変形することによって粘弾性ダンパー15の振動吸収能力が低下することを防止できるので、戸建住宅の架構に作用する地震力や強風力を効果的に吸収して大きな制振能力を得ることができる。
【0029】
また、板状剛性部材21a〜21eの連結部211を連結溝22の深さ方向に対して左右対称に形成したことで、補強部材16,17に作用する圧縮方向の地震力や強風力が第1のダンパー連結具18や第2のダンパー連結具19を介して板状剛性部材21a〜21eの連結部211に左右均等に作用し、これにより、板状剛性部材21a〜21eが面外方向に変形し難くなるので、板状剛性部材21a〜21eが面外方向に変形することによって粘弾性ダンパー15の振動吸収能力が低下することを防止することができる。
【0030】
また、板状剛性部材21a〜21eの連結部211と薄板部212との間に薄板部212より厚さの厚い厚板部213を形成したことで、補強部材16,17の長手方向に粘弾性ダンパー15を圧縮する外力が第1のダンパー連結具18や第2のダンパー連結具19を介して連結部211に作用しても板状剛性部材21a〜21eが弓形により変形し難くなるので、戸建住宅の架構に作用する地震力や強風力を効果的に吸収してより大きな制振能力を得ることができる。
【0031】
また、連結部211と薄板部212との間に形成された厚板部213によって板状剛性部材21a〜21eの剛性が増大し、これにより、粘弾性ダンパー15を補強部材16,17の長手方向に圧縮する方向の地震力や強風力が補強部材16,17を介して第1のダンパー連結具18や第2のダンパー連結具19に加わっても板状剛性部材21a〜21eが面外方向に変形し難くなるため、戸建住宅の架構に作用する地震力や強風力を効果的に吸収してより大きな制振能力を得ることができる。
【0032】
また、板状剛性部材21a〜21eの薄板部212との厚板部213との間に粘弾性体20a〜20dの端面と対向するテーパ部214を形成したことで、補強部材16,17の長手方向に粘弾性ダンパー15を引っ張る外力が第1のダンパー連結具18や第2のダンパー連結具19を介して板状剛性部材21a〜21eに作用しても粘弾性体20a〜20dが板状剛性部材21a〜21eの厚板部213と接触することがないので、厚板部213との接触によって粘弾性体20a〜20dが損傷することを防止することができる。
【0033】
また、連結溝22の長手方向に沿って連結溝22の底面中央部に形成されたピン係合凹部37とピン係合凹部37に対向して連結部211に形成されたピン係合溝36との間にガタツキ防止ピン38を圧入して連結部211を連結溝22の底面から離間する方向に押圧したことで、連結部211が連結溝22の深さ方向や幅方向にがたつくことがなく、これにより、粘弾性ダンパー15の粘弾性体20a〜20dに振動エネルギーが効率よく伝わるため、戸建住宅の架構に作用する地震力や強風力を効果的に吸収して戸建住宅の揺れを抑えることができる。
【0034】
なお、上述した第1の実施形態では、戸建住宅の架構を補強する補強部材としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を中空状に押出成形して形成されたものを例示したが、これに限られるものではなく、戸建住宅の架構を補強する補強部材は例えば木材から形成されていてもよい。
また、戸建住宅の土台としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を中空状に押出成形して形成されたものを例示したが、これに限られるものではなく、土台は例えば木材から形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
11…土台、12,13…柱、14…横架材、15…粘弾性ダンパー、16,17…補強部材、18…第1のダンパー連結具、19…第2のダンパー連結具、20a,20b,20c,20d…粘弾性体、21a,21b,21c,21d,21e…板状剛性部材、211…板状剛性部材の連結部、212…板状剛性部材の薄板部、213…板状剛性部材の厚板部、214…板状剛性部材のテーパ部、22…連結溝、24,27,30,31…固定用金具、26,29…ドリフトピン、36…ピン係合溝、37…ピン係合凹部、38…ガタツキ防止ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸建住宅の土台上に立設された二本の柱の間に前記戸建住宅の架構を補強する補強部材を介して架設される粘弾性ダンパーと、該粘弾性ダンパーの両端部のうち一方の端部を前記二本の柱のうち一方の柱と前記土台の上方に横架された横架材との接合部近傍から斜め下方に延出する補強部材の端部に連結する第1のダンパー連結具と、前記粘弾性ダンパーの両端部のうち他方の端部を前記二本の柱のうち他方の柱と前記土台との接合部近傍から斜め上方に延出する補強部材の端部に連結する第2のダンパー連結具とを備えてなり、前記粘弾性ダンパーがプレート状に成形された複数の粘弾性体と板状剛性部材とを交互に重合すると共に重合する表面同士を接着して形成され、かつ前記板状剛性部材が前記粘弾性体と接着する薄板部を有するとともに、前記第1のダンパー連結具と前記第2のダンパー連結具が前記板状剛性部材の端部に形成された連結部と嵌合する複数の連結溝を有する戸建住宅用制振装置において、
前記連結部が前記板状剛性部材の両面から突出するように前記連結溝の深さ方向に対して左右対称に形成されていることを特徴とする戸建住宅用制振装置。
【請求項2】
前記板状剛性部材が前記薄板部より厚さの厚い厚板部を前記薄板部と前記連結部との間に有することを特徴とする請求項1記載の戸建住宅用制振装置。
【請求項3】
前記板状剛性部材が前記粘弾性体の端面と対向するテーパ部を前記薄板部と前記厚板部との間に有することを特徴とする請求項1または2記載の戸建住宅用制振装置。
【請求項4】
前記連結溝の長手方向に沿って前記連結溝の底面中央部に形成されたピン係合凹部と該ピン係合凹部に対向して前記連結部に形成されたピン係合溝との間にガタツキ防止ピンを圧入して前記連結部を前記連結溝の底面から離間する方向に押圧したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の戸建住宅用制振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−38312(P2011−38312A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186387(P2009−186387)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【出願人】(502444733)日軽金アクト株式会社 (107)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】