説明

扁平形振動モータ

【課題】 偏心錘の固定位置合わせが容易で組立作業に不具合を生じさせることなく、且つ径方向の脱落を強固に防止することが可能な、扁平形振動モータの偏心錘の脱落防止構造を提供する。
【解決手段】 ロータフレーム32には、平板部32bから軸方向に立ち上げられた外周部32cが形成されており、ロータマグネット33及び偏心錘34の一部と当接している。平板部32bと外周部32cには、偏心錘34との当接部分の一部が切り欠かれて切り欠き部32dが形成されており、偏心錘34の一部が突出部34aとして切り欠き部32dから径方向外側に突出しており、偏心錘34には、引掛け部34bとしてロータフレーム32の外周部32cの切り欠き部32dの端面及び外周部32cの内周面に当接する段差部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は扁平形振動モータに関し、特に、偏心錘の脱落防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2004−147468に示すような扁平形振動モータでは、偏心錘の固定手段として、レーザー等の溶接で偏心錘をロータフレームに固定しているが、溶接固定の場合、溶接部の腐食、品質のばらつき、コスト高などの問題がある。そのため、接着剤による固着固定が用いられることがあるが、固着固定では溶接固定と比べ固定強度が弱く、偏心錘の脱落の恐れがあった。
【0003】
この問題を解決する為、例えば特開2004−25064のようにロータフレームと偏心錘を加締めたり、あるいは特開2006−192317のようにロータフレームに穴を形成し偏心錘にこの穴に対応する突起を形成して嵌め合わせることで、固着固定を補強する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−147468
【特許文献2】特開2004−25064
【特許文献3】特開2006−192317
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような加締めや嵌め合わせの構成では、偏心錘をロータフレームに固定する際の位置合わせに手間がかかり、組立作業に不具合が生じる恐れがあり、また、接着固定の補強という点ではまだ補強不足になる可能性もあった。
【0006】
そこで、上記問題に鑑み、本発明の課題は、扁平形振動モータにおいて、偏心錘の固定位置合わせが容易で組立作業に不具合を生じさせることなく、且つ径方向の脱落を強固に防止することで偏心錘の固着固定の固定強度をより一層補強することが可能な、偏心錘の脱落防止構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為、本発明に係る扁平形振動モータの偏心錘の脱落防止構造は、支軸の一端を支持するステータ部と、筒状部の開口がステータ部で塞がれて支軸の他端を支持するカバーケースと、支軸が貫通する軸受を介して回転自在に支持されておりロータマグネット及び偏心錘を持つロータフレームとを備える扁平形振動モータであって、ロータフレームは、平板部と、平板部から軸方向に立ち上がり、ロータマグネット及び偏心錘の外周面の一部と当接する外周部を持ち、偏心錘の固定箇所には平板部と外周部の一部が切り欠かれた切り欠き部が形成され、偏心錘は外周部の内周面に当接して径方向外側への抜けを止められるとともに一部が当該切り欠き部から径方向外側に突出しており、外周部又は偏心錘の外周部と当接する部分の少なくとも一方に、偏心錘の径方向の脱落を防止する引掛け部が形成されていることを特徴とする。偏心錘の引掛け部としては、ロータフレームの外周部の切り欠き部端部及び内周面に当接する段差部とすることができる。また、偏心錘には、ロータフレームの平板部の切り欠き部端面に当接する段差部を形成してもよい。また、ロータフレームには偏心錘を固定する加締め片を形成してもよく、この場合、偏心錘にはこの加締め片を受けるための凹部を形成するとよい。さらに、偏心錘は支軸側を円弧状に形成し、この円弧状部分にロータマグネットの外周面が当接する構造を採用することもできる。
【0008】
このような扁平形振動モータの偏心錘の脱落防止構造では、偏心錘はロータフレーム外周部の内周面に当接して径方向外側への抜けを止められるとともに、一部がロータフレームの切り欠き部から径方向外側に突出していることから、偏心錘の突出部とロータフレームの切り欠き部により容易に偏心錘の位置合わせが可能になり、また、偏心錘が突出する分、重心も径方向外側に移動するので、振動量を大きくすることができる。さらに、ロータフレームの外周部または偏心錘のロータフレーム外周部と当接する部分の少なくとも一方に、引掛け部を形成したので、偏心錘の径方向の脱落を防止し、偏心錘のロータフレームへの固着固定の固定強度を、より一層補強することが可能となる。
【0009】
偏心錘の引掛け部として、ロータフレームの外周部の切り欠き部端面及び内周面に当接する段差部を形成する構造を採用した場合は、偏心錘の位置決めと径方向外側への脱落防止の効果を同時に得ることができる。なお、段差部の構造を、ロータフレームの外周部の切り欠き端部を包容するような形状にした場合は、偏心錘の径方向内側への脱落も防止できる。
【0010】
また、偏心錘にロータフレームの平板部の切り欠き部端面に当接する段差部を形成した構造では、偏心錘の径方向内側への脱落を防止できる。
【0011】
また、ロータフレームに偏心錘を固定する加締め片を形成する構造では、偏心錘の径方向外側及び内側、さらに軸方向の脱落抑制を図ることができ、偏心錘にこの加締め片を受けるための凹部を形成すると、これらの効果をより一層高めることができる。
【0012】
さらに、偏心錘の支軸側を円弧状に形成し、この円弧状部分にロータマグネットの外周面を当接させた構造では、偏心錘の径方向内側への脱落を防止でき、ロータマグネットとロータフレームの外周部とで偏心錘を挟み込んで固定するため、径方向の脱落を一層強固に防止することができ、偏心錘の固着固定の固定強度をより一層補強することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の扁平形振動モータでは、偏心錘の固定位置合わせが容易で組立作業に不具合を生じさせることなく、且つ径方向の脱落を強固に防止することで偏心錘の固着固定の固定強度をより一層補強することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係る扁平形振動モータの縦断面図である。
【図2】(A)は同扁平形振動モータのロータ部を裏面から見た平面図、(B)は同ロータ部の縦断面図である。
【図3】同ロータ部の組立斜視図である。
【図4】(A)は本発明の他の実施例に係る扁平形振動モータのロータ部を裏面から見た平面図、(B)は(A)のa−a線に沿った縦断面図である。
【図5】同ロータ部の組立斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を、添付図面に基いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の実施例に係る扁平形振動モータの縦断面図、図2(A)は同扁平形振動モータのロータ部を裏面から見た平面図、(B)は同ロータ部の縦断面図、図3は同ロータ部の組立斜視図である。
【0017】
本発明の扁平形振動モータはブラシレスモータで、支軸1の一端を支持するプレート11とこのプレート11に重ね合わされた回路基板12を有し、回路基板12上には複数個の空芯コイル13や電子部品14が搭載されており、これらでステータ部10を形成している。
【0018】
また、支軸1の他端を支持する有底扁平円筒状のカバーケース20と、支軸1が貫通する軸受31を介して回転自在に支持されているロータ部30とを備えており、カバーケース20の開口部20aはステータ部10で塞がれている。
【0019】
ロータ部30は、軸受31と、軸受31を内嵌したバーリング部32aを有するロータフレーム32と、ロータフレーム32の平板部32bに接着剤等で固着固定されたロータマグネット33と、ロータマグネット33の外側で同じく平板部32bに接着剤等で固着固定された偏心錘34とからなる。
【0020】
ロータフレーム32は、平板部32bから軸方向に立ち上げられた外周部32cが形成されており、ロータマグネット33及び偏心錘34の一部と当接している。平板部32bと外周部32cには、偏心錘34との当接部分の一部が切り欠かれて切り欠き部32dが形成されており、偏心錘34の一部が突出部34aとして切り欠き部32dから径方向外側に突出している。
【0021】
偏心錘34には、引掛け部34bとしてロータフレーム32の外周部32cの切り欠き部32dの端面及び外周部32cの内周面に当接する段差部が形成されている。
【0022】
なお40は、軸受31の下端面を受けるように支軸1に貫通され、プレート11上に搭載されたワッシャーである。
【0023】
このようなロータフレーム32及び偏心錘34においては、偏心錘34の段差部34bがロータフレーム32の外周部32cの内周面に当接して径方向外側への脱落を止めるとともに、偏心錘34の突出部34aが切り欠き部32dから径方向外側に突出していることから、突出部34aと切り欠き部32dにより容易に偏心錘34のロータフレーム32への位置合わせが可能になる。また、突出部34aの分、偏心錘34の重心も径方向外側に移動するので、振動量を大きくすることができる。偏心錘34の径方向外側への脱落を防止することから、偏心錘34のロータフレーム32への接着剤等の固着固定の固定強度をより一層補強することが可能となり、溶接固定の不具合である、溶接部の腐食、品質のばらつき、コスト高などの問題が発生しない接着剤等の固着固定において、溶接固定に匹敵する十分な固定強度を得ることができる。
【0024】
なお、偏心錘34には、ロータフレーム32の平板部32bの切り欠き部32dの端面に当接する段差部である引掛け部34cを形成してもよい。引掛け部34cにより、偏心錘34の径方向内側への脱落を防ぐことができ、段差部34bと合わせると、偏心錘34の径方向外側及び内側双方の脱落を防止できることから、偏心錘34のロータフレーム32への接着剤等の固着固定の固定強度をさらに一層補強することが可能となる。
【0025】
また、偏心錘34の支軸1側に円弧状部分34dを形成し、この円弧状部分34dにロータマグネット33の外周面が当接するようにしてもよい。偏心錘34の径方向内側への脱落を防止でき、さらにロータマグネット33とロータフレーム32の外周部32cとで偏心錘34を挟み込んで固定するため、径方向の脱落をより一層強固に防止することができる。
【実施例2】
【0026】
図4(A)は本発明の他の実施例に係る扁平形振動モータのロータ部を裏面から見た平面図、(B)は(A)のa−a線に沿った縦断面図、図5は同ロータ部の組立斜視図であり、このロータ部の構造以外は実施例1と同じである。実施例1と同構造の部分には同じ符号を使用し、その説明は省略する。
【0027】
本実施例のロータ部30’では、実施例1の構造に加え、ロータフレーム32’の外周部32cに加締め片32eが形成されており、偏心錘34’を加締め固定している。
【0028】
このようなロータフレーム32’及び偏心錘34’においては、実施例1の偏心錘脱落防止の効果に加え、加締め固定により偏心錘34’の径方向の脱落をさらに強固に防止できるとともに、軸方向の脱落防止を図ることができる。
【0029】
また、偏心錘34’には加締め片32eを受けるための凹部34eを形成してもよい。凹部34eに加締め片32eを加締めることで、加締め固定がより安定する。
【0030】
実施例2においても、偏心錘34’の支軸1側に円弧状部分34dを形成し、この円弧状部分34dにロータマグネット33の外周面が当接する構造を採用してもよく、偏心錘34’の径方向内側への脱落を防止でき、さらにロータマグネット33とロータフレーム32’の外周部32cとで偏心錘34’を挟み込んで固定することができる。
【0031】
なお、実施例1、2のいずれも、ロータマグネット33、偏心錘34(34’)、ロータフレーム32(32’)の外周部32cのそれぞれの当接面を接着剤等で固着固定することも可能であり、固着強度がより一層向上する。
【0032】
本発明では、軸固定型の扁平形振動モータの構造で説明を行ったが、本発明は軸回転型のモータ構造にも適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1…支軸
10…ステータ部
11…プレート
12…回路基板
13…空芯コイル
14…電子部品
20…カバーケース
20a…開口部
30、30’…ロータ部
31…軸受
32、32’…ロータフレーム
32a…バーリング部
32b…平板部
32c…外周部
32d…切り欠き部
32e…加締め片
33…ロータマグネット
34、34’…偏心錘
34a…突出部
34b、34c…引掛け部
34d…円弧状部分
34e…凹部
40…ワッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支軸の一端を支持するステータ部と、筒状部の開口が前記ステータ部で塞がれて前記支軸の他端を支持するカバーケースと、前記支軸が貫通する軸受を介して回転自在に支持されておりロータマグネット及び偏心錘を持つロータフレームとを備える扁平形振動モータであって、
前記ロータフレームは、平板部と、前記平板部から軸方向に立ち上がり、前記ロータマグネット及び前記偏心錘の外周面の一部と当接する外周部を持ち、前記偏心錘の固定箇所には前記平板部と前記外周部の一部が切り欠かれた切り欠き部が形成され、前記偏心錘は前記外周部の内周面に当接して径方向外側への抜けを止められるとともに一部が当該切り欠き部から径方向外側に突出しており、前記外周部又は前記偏心錘の前記外周部と当接する部分の少なくとも一方に、前記偏心錘の径方向の脱落を防止する引掛け部が形成されていることを特徴とする扁平形振動モータ。
【請求項2】
請求項1に記載の扁平形振動モータにおいて、前記偏心錘に形成される引掛け部は、前記ロータフレームの前記外周部の切り欠き部端面及び内周面に当接する段差部であることを特徴とする、扁平形振動モータ。
【請求項3】
請求項1及び2の何れかに記載の扁平形振動モータにおいて、前記偏心錘には、前記ロータフレームの前記平板部の切り欠き部端面に当接する段差部が形成されていることを特徴とする、扁平形振動モータ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の扁平形振動モータにおいて、前記ロータフレームには前記偏心錘を固定する加締め片が形成されていることを特徴とする、扁平形振動モータ。
【請求項5】
請求項4に記載の扁平形振動モータにおいて、前記偏心錘には、前記加締め片を受けるための凹部が形成されていることを特徴とする、扁平形振動モータ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の扁平形振動モータにおいて、前記偏心錘は、前記支軸側が円弧状に形成され、当該円弧状部分に前記ロータマグネットの外周面が当接することを特徴とする、扁平形振動モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−5294(P2012−5294A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139473(P2010−139473)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000177151)日本電産セイミツ株式会社 (143)
【Fターム(参考)】