説明

手持ち式建設機械用制振装置および土壌突き固め装置

【課題】 既存土壌突き固め装置など手持ち式建設機械の構造を全く変更する必要なく、ハンドル手元側の振動を大幅に低減できる手持ち式建設機械用制振装置を提供する。
【解決手段】 手持ち式建設機械に固定されるハウジング7内に、複数個の金属小球8からなるマス部材9を移動自在に収容し、ハウジング7の内面に弾性体10を被覆する。複数個の金属小球8がハウジング7の内面に衝突することによって振動が減衰されるため、作業者の手に伝わるのを低減できる。ハウジング7内面の弾性体10は金属小球8がハウジング7内面に衝突することによる異音発生を防止でき、接触反力を緩衝することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌突き固め装置、その他手持ち式建設機械に適用される制振装置、および該制振装置を備える土壌突き固め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌突き固め装置として、例えば、図7に示すように、略垂直な振動を行う内蔵駆動装置20と、案内ハンドル21とを備えていて、この案内ハンドル21が、枢支点22周りに枢動可能に突き固めヘッド23に接続されていると共に、作業者によって保持されるべく前記案内ハンドル21の一端部に設けられたグリップ部21aと、前記案内ハンドル21の他端部に前記枢支点22を超えて延出する延出部21bとが備えられている土壌突き固め装置において、前記枢支点22は、前記グリップ部21aから突き固め装置本体の長手方向軸芯Aへと延出する仮想垂線Lの上方に配置するか、または前記枢支点22を仮想分岐点として、前記案内ハンドル21が所定の質量分布式を満たすようにしたものがある(特許文献1参照。)
【0003】
また、土壌突き固め装置として、図8に示すように、ハンドル部材30が緩衝材31を介して本体32の両側部において取り付けられる土壌突き固め装置において、前記本体32の各側部にそれぞれ少なくとも2つの緩衝材31a,31bを所定間隔をおいて配置することによって、ハンドル部材30を把持する作業者に伝わる本体32の振動を低減するようにしたものもある(特許文献2参照。)
【0004】
【特許文献1】特許第2949475号公報
【特許文献2】特開平10−298913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記土壌突き固め装置では、案内ハンドル21の枢支点22を、グリップ部21aから突き固め装置本体の長手方向軸芯Aへと延出する仮想垂線Lの上方に配置するか、または枢支点22を仮想分岐点として、案内ハンドル21が所定の質量分布式を満たすようにするものであるため、既存土壌突き固め装置の構造を大きく変更する必要があり、また燃料タンク24をマス部材に利用しているので、揺れによる給油量が一定せず、土壌突き固め機能の低下を招き作業効率の低減を起こす可能性が大きいという問題がある。
【0006】
また、土壌突き固め装置の本体32の両側部に取り付けられる緩衝材31を各側部に少なくとも2つずつ設け、それぞれ所定間隔をおいて配置するという上記土壌突き固め装置においても、緩衝材31a、31bを本体32の各側部に少なくとも2つずつ所定間隔をおいて配置するにあたって大きな構造変更をしなければならず、また装置自体の重心と緩衝材31a,31bの弾性中心を一致させることが難しく、緩衝材31a,31bの配置による回転剛性が大きくなり、その方向の振動低減にはなるが、その分のせん断変形が大きくなるため、ハンドル手元側の制振としてはあまり好ましくないという問題がある。現状の土壌突き固め装置は、ハンドルの手元側よりも真向かい側の上下振動が前後振動や左右振動より大きいからである。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、既存土壌突き固め装置など手持ち式建設機械の構造を全く変更する必要なくして、ハンドルの手元側の振動を大幅に低減できる手持ち式建設機械用制振装置および土壌突き固め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の手持ち式建設機械用制振装置は、手持ち式建設機械に固定されるハウジング内に、複数個の金属小球からなるマス部材を移動自在に収容しており、前記ハウジングの内面に弾性体を被覆していることに特徴を有するものである。
この制振装置によれば、手持ち式建設機械が振動すると、この振動に伴って制振装置も振動するが、制振装置が振動すると複数個の金属小球がハウジングに対して相対的に移動し、これにより金属小球がハウジングの内面に衝突し、この衝突によるエネルギ損失によって振動が減衰されるため、作業者の手に伝わるのを低減できる。また、ハウジングの内面には弾性体を被覆しているので、金属小球がハウジングに衝突したときに発生する異音を吸収、低減でき、また金属小球の接触反力を緩衝することもできる。
【0009】
請求項2に記載の手持ち式建設機械用制振装置は、手持ち式建設機械に固定されるハウジング内に、複数個の金属小球からなるマス部材を移動自在に収容しており、前記金属小球の表面に弾性体を被覆していることに特徴を有するものである。
これにおいても、手持ち式建設機械から発生する振動は複数個の金属小球がハウジングの内面に衝突することによって減衰されるため、作業者の手に伝わるのを低減できる。また、金属小球の表面に弾性体を被覆しているので、金属小球のハウジング内面への接触や金属小球どうしの接触により発生する異音を吸収、低減できるとともに、接触反力を緩衝することもできる。
【0010】
請求項3に記載の手持ち式建設機械用制振装置は、請求項1又は2記載の手持ち式建設機械用制振装置において、マス部材が質量の異なる複数種の金属小球からなることに特徴を有するものである。この場合において、質量の異なる複数種の金属小球には、材質の異なるもの、同一材質で大きさが異なるものがある。
これによれば、小さい質量の金属小球で小さい振動を、大きい質量の金属小球で大きい振動をそれぞれ低減でき、振動低減可能な周波数域を広めることができる。
【0011】
請求項4に記載の手持ち式建設機械用制振装置は、請求項3記載の手持ち式建設機械用制振装置において、ハウジングの内部が複数室に区画され、各室に質量の異なる複数種の金属小球が種別毎に収容されていることに特徴を有するものである。
これによれば、質量の大小異なる複数種の金属小球が移動により混合することがないため、広範囲の周波数域に応じた振動の減衰作用を有効に発揮できる。
【0012】
請求項5に記載の土壌突き固め装置は、装置本体にハンドルを取り付けてなる土壌突き固め装置において、前記ハンドルの手元側に、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の手持ち式建設機械用制振装置を備え付けていることに特徴を有するものである。
この土壌突き固め装置によれば、装置本体から発生する振動は複数個の金属小球がハウジングの内面に衝突することによって減衰されるため、ハンドルを持つ作業者の手に伝わるのを低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数個の金属小球がハウジングの内面に衝突することによって振動が減衰されるため、作業者の手に伝わるのをよく低減でき、しかも、既存の土壌突き固め装置など手持ち式建設機械の構造に何ら特別な変更を加えることなく該機械のハンドル等所定箇所に単にハウジングを固定するだけの簡単な手段によって実施できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は手持ち式建設機械の一例である土壌突き固め装置の側面図、図2は図1の土壌突き固め装置の平面図、図3は図1の土壌突き固め装置に備え付けた制振装置の縦断側面図である。
【0015】
図1、図2において、1は土壌突き固め装置で、この土壌突き固め装置1それ自体の構造は周知の標準型のものと同じであり、装置本体2の上部にハンドル3を枢支し、装置本体2の下端部に輾圧板4を取り付けたものである。5は本発明に係る制振装置で、ハンドル3の枢支部6より長い手元側に有する把持部3aの両端(図2中、実線状態参照)、又は中央付近(図2中、二点鎖線状態参照)、そのほか把持部3aの近傍位置に備え付ける。
【0016】
制振装置5は、図3に示すように、円筒状、楕円筒状、あるいは多角形筒状などのハウジング7内に複数個の鋼球など金属小球8からなるマス部材9を移動自在に収容している。ハウジング7の内面には天然ゴムやウレタンゴムなど合成ゴムによる弾性体10を被覆している。なお、ハウジング7の内部空間には空気あるいはシリコンオイルのような粘性体を封入する。
【0017】
このように構成された制振装置5のハウジング7をハンドル3の手元側に備え付けておくと、土壌突き固め装置1から発生する振動は複数個の金属小球8がハウジング7の内面に衝突することによって減衰されるため、ハンドル3を持つ作業者の手に伝わる不快な振動を低減することができる。また、ハウジング7の内面には弾性体10を被覆しているため、金属小球8がハウジング7の内面に衝突することによる異音発生を防止できるとともに、接触反力を緩衝できる。
【0018】
上記のように金属小球8の接触による異音発生を無くするため、および接触反力の緩衝作用を働かせるためにハウジング7の内面にゴム状の弾性体10を被覆するが、図4に示すように金属小球8の個々に同じ弾性体10を被覆してもよい。この場合は、ハウジング7の内面に弾性体10を被覆する形態としても、被覆しない形態としてもよい。
【0019】
マス部材9としては、複数個の金属小球8が全て同じ質量のものからなるものに代えて、図5に示すように、同一材質で大きさの異なるものや異材質のものからなる質量の異なるものであってもよい。むしろ、このように質量の大小異なる複数種の金属小球8を使用することにより小さい質量の金属小球8で小さい振動を、大きい質量の金属小球8で大きい振動をそれぞれ減衰でき、広範囲にわたる周波数域で振動を効果的に減衰できる点で有利である。
【0020】
この場合、図6に示すように、ハウジング7の内部を隔壁11で複数室12,13,14・・・に区画して、各室12,13,14・・・に質量の大小異なる複数種の金属小球8が種別毎に収容するものとすることもできる。各室12,13,14・・・の内面及び/又は各金属小球8にゴム状の弾性体10を被覆する。
これによれば、質量の大小異なる複数種の金属小球8がハウジング7内で移動することにより混合するようなことがなくなるため、広範囲にわたる周波数域の振動の減衰作用を有効に発揮できる。
【0021】
上記制振装置5は土壌突き固め装置以外の手持ち式建設機械にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を示す土壌突き固め装置の側面図である。
【図2】図1の土壌突き固め装置の平面図である。
【図3】図1の土壌突き固め装置に取り付けた制振装置の縦断側面図である。
【図4】他の実施例の制振装置を図3に相応して示す縦断側面図である。
【図5】更に他の実施例の制振装置を図3に相応して示す縦断側面図である。
【図6】更に又、他の実施例の制振装置を図3に相応して示す縦断側面図である。
【図7】従来例の土壌突き固め装置の一部断面側面図である。
【図8】他の従来例の土壌突き固め装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 土壌突き固め装置
2 装置本体
3 ハンドル
5 制振装置
7 ハウジング
8 金属小球
9 マス部材
10 弾性体
12,13,14 複数室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式建設機械に固定されるハウジング内に、複数個の金属小球からなるマス部材を移動自在に収容しており、前記ハウジングの内面に弾性体を被覆していることを特徴とする、手持ち式建設機械用制振装置。
【請求項2】
手持ち式建設機械に固定されるハウジング内に、複数個の金属小球からなるマス部材を移動自在に収容しており、前記金属小球の表面に弾性体を被覆していることを特徴とする、手持ち式建設機械用制振装置。
【請求項3】
前記マス部材が質量の異なる複数種の金属小球からなる、請求項1又は2記載の手持ち式建設機械用制振装置。
【請求項4】
前記ハウジングの内部が複数室に区画され、各室に質量の異なる複数種の金属小球が種別毎に収容されている、請求項3記載の手持ち式建設機械用制振装置。
【請求項5】
装置本体にハンドルを取り付けてなる土壌突き固め装置において、前記ハンドルの手元側に、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の手持ち式建設機械用制振装置を備え付けていることを特徴とする、土壌突き固め装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−161492(P2006−161492A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357616(P2004−357616)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】