説明

手書き入力表示装置及びホワイトボード共用システム

【目的】先に手書きされた描画情報の保護を図ると共に消去操作を容易にする手書き入力表示装置を提供すると共に、共用するホワイトボード上に他の利用者が手書きした描画情報を消去することのできるホワイトボード共用システムを提供する。
【構成】手書き入力表示装置は、設定自在なユーザIDを保持し、前記描画情報が前記描画情報記憶部に記憶される際に、前記描画情報を前記ユーザIDに関連付けて記憶せしめ、消去対象範囲入力に応じて、記憶された描画情報のうちで当該消去対象範囲に対応する描画情報であると共に、保持されているか又は新たに選択されたユーザIDに関連付けられた描画情報を消去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯式の手書き入力表示装置に関すると共に、ネットワーク上に設けられた電子黒板またはホワイトボートの如き仮想的な手書き媒体に対して、複数の操作者が各自の手書き入力表示装置を介して描画情報の編集を行うことによって互いに情報交換を行うホワイトボード共用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
手書き入力表示装置は、ノートツールとも称され、携帯端末として持ち歩くことで、何冊もの紙のノートを持ち歩くことなくメモリ容量の許す限り自由にメモを取ることができ、取った後のノートもルーズリーフのように自由に組み換えることができる利点がある。一方、複数の利用者が各々の手書き入力表示装置を利用して、電子ホワイトボートや電子黒板等を通信ネットワークを介して共用する技術が知られている。
【0003】
特許文献1は、発言権制御部が司会者入力装置からの指示に従って、1つの参加者入力装置のみに発言権を与え、他の参加者入力装置に発言権を与えないようにし、電子黒板表示部が発言権が与えられた参加者入力装置から入力された発言内容を電子黒板に表示することによって、電子黒板に勝手に発言内容を書き込むことができず、議事進行を円滑に行なうことかできるとしている。
【0004】
特許文献2は、選択されたレイヤを共有画面へ重畳表示するための手段と、情報端末ごとに対応させたレイヤ及びレイヤに関した情報を記憶する手段と、情報端末よりレイヤ情報取得要求がある場合に管理しているレイヤ情報を配信する手段とを有する構成により、指定レイヤに描画されている描画オブジェクトのみを選択表示させるため、アノテーションがどの端末から行われたものかの判別が容易になるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−243084号公報
【特許文献2】特開2008−245005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電子ホワイトボード等の手書き入力表示装置では、他の利用者か先に手書きした描画情報を誤って消去してしまう虞があり、描画情報の保護が十分ではないという問題がある。また、手書き入力表示装置では、従来の単色の描画情報の取捨選択が困難で、ホールドや記述情報の識別及び整理が困難であるという問題がある。また、消しゴム、黒板消しツールのようなもので一旦表示された描画情報を消去する場合は、記述した場所を再びなぞらなければならない手間もかかるし、一度で広い領域を消去できるように消去範囲を大きくすると意図しない領域まで誤消去する虞がある。逆に、消しゴムツールの消去領域を小さくした場合は消去のためになぞる回数が増えることになる。
【0007】
一方、複数の参加者が、かかる手書き入力表示装置を利用して電子ホワイトボートや電子黒板等をネットワークを介して共用する形態において、ある参加者が手書きできる権利すなわち発言権に係る制御技術は従来から提供されているものの、他の参加者が手書きした内容を消去する消去権にかかる制御技術は何ら提供されていなかった。
【0008】
本発明の目的は、先に手書きされた描画情報の保護を図ると共に消去操作を容易にする手書き入力表示装置を提供すると共に、共用するホワイトボード上に他の利用者が手書きした描画情報を消去することのできるホワイトボード共用システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による手書き入力表示装置は、タブレット部に対する入力ペンの描画操作に応じて描画情報を取り込むペン入力部と、前記描画情報を記憶する描画情報記憶部と、前記描画情報を前記タブレット部に表示するタブレット表示部と、を備える手書き入力表示装置であって、設定自在なユーザIDを保持する保持手段と、前記描画情報が前記描画情報記憶部に記憶される際に、前記描画情報を前記ユーザIDに関連付けて記憶せしめる制御手段と、消去対象範囲入力に応じて、前記描画情報記憶部に記憶された描画情報のうちで前記消去対象範囲に対応すると共に、前記消去対象範囲入力の時点で保持されているユーザIDに関連付けられた描画情報を消去する消去手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明によるホワイトボード共用システムは、上記した手書き入力表示装置の複数と、前記手書き入力表示装置の各々の間で前記描画情報を、電子ホワイトボードに描画される描画情報として共用する描画情報共用手段と、前記電子ホワイトボードの描画情報の少なくとも1部を消去し得る編集権を前記手書き入力表示装置の何れかに与える編集権管理手段と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による手書き入力表示装置及びホワイトボード共用システムによれば、描画情報はユーザIDと関連付けられて記憶される。これにより、先に手書きされた描画情報の保護が図られると共に消去操作が容易になる。また、電子ホワイトボード上の描画情報を他の利用者と共用した場合にも、他の利用者が手書きした描画情報を消去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による第1の実施例を示し、ノートツールの外観を示す正面図である。
【図2】図1に示したノートツールの機能構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した描画情報記憶部及び設定情報保持部それぞれの内容例を示すブロック図である。
【図4】ノートツールの状態遷移及びモード遷移の様子を示す図である。
【図5】閉曲線と消去範囲との関係を示す図である。
【図6】手書き文字と補正された認識文字との関係を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施例を示し、ホワイトボード共用システムの全体構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示された通信端末の内部構成を示すブロック図である。
【図9】描画情報を共用する場合におけるノートツールの状態遷移及びモード遷移の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
<第1の実施例>
図1は、本発明による第1の実施例を示し、ノートツールの外観を示している。ノートツール30は、本発明による手書き入力表示装置に相当し、本体31と入力ペン32とからなる。本体31は、入力ペン32の操作によって描画された描画情報を取り込むと共に取り込んだ描画情報をそのまま表示するタブレット部317と、各種操作ボタンとからなる。
【0015】
各種操作ボタンは、装置電源をON/OFFするための電源ボタン33と、既に取り込まれた情報を補正するための補正ON/OFFボタン34と、外部の通信ネットワーク上に置かれた共有描画情報記憶部(図7参照)に対する編集送信権をON/OFFするための編集送信権ON/OFFボタン35と、描画情報を表示する際の色彩を指定するための色彩パレットボタン36と、文字カーソルを移動するための十字キーボタン37と、描画情報を表示する際にこれを拡大又は縮小するためのズームイン・アウトボタン38と、ペン入力される描線の幅を調整するための描線幅調整ボタン39と、一旦取り込まれて表示された描画情報を消去するための消去モードボタン310と、消去モードにおいて閉曲線内を消去するための内側消去ボタン311と、消去モードにおいて閉曲線外を消去するための外側消去ボタン312と、描画情報がページ単位に記憶された際に表示ページを移動するためのページ移動ボタン313と、現在表示中のページ番号を表示するページ表示部314と、直近の操作内容を撤回するためのキャンセルボタン315と、現在の表示内容を保持するためのホールド(HOLD)ボタン316と、直近の操作内容を確定するための確定ボタン318と、が備えられている。
【0016】
図2は、図1に示されたノートツール30の機能構成を示している。ノートツール30は、各種制御ボタンの押下に応じて対応する動作を制御すると共に、描画情報を描画情報記憶部44に記憶する際に、当該描画情報をユーザIDに関連付けて記憶せしめる制御を行う動作制御部41と、手書き文字を認識して符号化された認識文字に変換する文字認識部42と、手書き文字のサイズに合わせて認識文字の表示サイズを補正したり描線の太さを補正したりする描画補正部43と、取り込んだ手書き文字や手書き描線と文字認識により得られた認識文字とを記憶する描画情報記憶部44と、利用者のユーザIDや標準表示仕様等の設定情報を保持する設定情報格納部45と、描画情報に付される入力時刻を生成する時計機能部46と、描画情報記憶部44に記憶された描画情報を表示するタブレット表示部47と、入力ペン32と協働して手書き情報を取り込むペン入力部48と、外部の通信端末やネットワークと接続するための入出力インタフェース49と、各部に電力を供給する電源410と、を含む。
【0017】
図3は、描画情報記憶部44及び設定情報格納部45それぞれの内容例を示している。
【0018】
描画情報記憶部44は、例えば、描画情報のページ番号、描画情報を構成する描線や文字毎の座標、色彩、補正可否のON/OFF設定、入力時刻、及びユーザIDを含む。ユーザIDは、描画情報が取り込まれる時点において設定情報格納部45に設定されている内容が用いられる。これにより、描画情報とユーザIDとが関連付けられる。
【0019】
設定情報格納部45は、標準的に使用される描線の色や描線の幅、描線及び文字補正のON/OFF設定、表示倍率、文字補正ONの場合の補正後の文字のフォント種別及びサイズ、ユーザID、及び編集送信権の有無を含む。ユーザIDは、利用者が予め任意に設定し得る識別情報である。編集送信権が有るとは、描画情報が複数のノートツールによって共用される場合において、共用される描画情報に対する編集権が自己のノートツールにあることを意味する。編集送信権の有無は動作制御部41によって時機に応じて設定される。例えば、動作制御部41は、編集送信権ON/OFFボタン35の押下に応じて外部の管理サーバ(図7参照)に編集権の付与を要求し、その結果に応じて編集送信権の有無を設定する。
【0020】
図4は、ノートツール30の状態遷移及びモード遷移の様子を示している。ここでは、ノートツール30は、単独で、すなわちスタンドアローン型装置として利用されるものとする。前提として、初期状態S1において、予めノートツール30の設定情報格納部45には、文字入力等の操作によって、利用者のユーザIDが任意に設定されているものとする。以下、ノートツール30動作について図1及び図2に示された構成要素を適宜参照して説明する。
【0021】
初期状態S1において、ノートツール30の電源ボタン33が押されると、ノートツール30は単独編集状態S2で起動される。この際、最初の起動では1ページ目がタブレット部317に表示されるが、既に描画情報が記憶されている場合には、例えば描画情報が存在する最終ページまたは白紙の次ページが表示される。単独編集状態S2において、利用者は任意の描画情報、例えば描線や文字を入力することができる。描画情報には、入力時刻と共に、設定情報格納部45に設定されたユーザIDが付与されて描画情報記憶部44に記憶される。ノートツール30の電源ボタン33が再度押されると電源OFFとなり初期状態S1に戻る。
【0022】
単独編集状態S2において、既に入力された内容を消去する場合は、利用者は消去モードボタン310を押す。消去モードボタン310が押されると、ノートツール30は消去対象となる色彩を選択するモードM1へと移行する。利用者は、黒のみ、赤のみ、黒と青または全色等の如く所望の色彩を色彩パレットボタン36によって選択して確定ボタン318を押す。これに応じて、ノートツール30は消去対象範囲を選択するモードM2へと移行する。確定ボタン318を押される前にキャンセルボタン315が押されれば、単独編集状態S2に戻る。
【0023】
モードM2において、利用者がペン入力によって閉曲線を表示画面に直接入力したとする。ノートツール30は、この閉曲線を構成する全座標を閉曲線データとして記憶する。この場合の閉曲線データは、太さ情報を含まない複数の座標点の集積であり、各座標点の上下左右斜め8方向の何れかに必ず隣接する座標点があるデータとして記録される。利用者の操作如何によっては書き始めと書き終わりで閉曲線からはみ出した部分が発生する可能性がある。この場合、はみ出した部分は当該閉曲線データから除外される(図5(a)参照)。キャンセルボタン315が押されれば、単独編集状態S2に戻る。
【0024】
利用者は、閉曲線を描いたら次に確定ボタン318を押すことで消去対象範囲を確定させる。この後、利用者が内側消去ボタン311または外側消去ボタン312を押すことで、消去条件に適合する描画情報に対して実際に消去がなされる。ここで、消去条件に適合する描画情報とは、選択された色彩や消去範囲に適合する描画情報であると共に、設定情報格納部45に設定されたユーザIDに一致するユーザIDが付された描画情報を意味する。次いで、元の単独編集状態S2に移行する。
【0025】
尚、色彩や消去範囲からなる消去条件を確定する操作が多いため、アンドゥー(undo)ボタンと通常称されるボタンを別途設けることで、1つ手前の消去条件が確定されていない状態に移行する仕組みがあってもよい。また、操作履歴をノートツール30内に蓄積しておくことで、単独編集状態S2における各操作を1つ手前の状態に戻す処理にこのアンドゥーボタンを利用できるようにしてもよい。
【0026】
図5は、閉曲線と消去範囲との関係を示している。閉曲線L1及びL2の各々によって画定される消去範囲には内側及び外側の2通りがあり得る。内側消去ボタン311ボタンが押された場合、閉曲線L1又はL2の内側及び線上にある座標の描画情報のうち、選択された色彩や設定されたユーザIDからなる消去条件に適合する描画情報が描画情報記憶部44から消去される。外側消去ボタン312ボタンが押された場合、閉曲線L1又はL2の外側にある座標の描画情報のうち、同様の消去条件に適合する描画情報が描画情報記憶部44から消去される。描画情報記憶部44からの消去結果、タブレット部317の表示からも当該描画情報が消されることになる。
【0027】
ある座標点が閉曲線L1またはL2の内側にあるか外側にあるかの判定方法については幾つかの手法が用いられ得る。例えば、閉曲線L2に含まれる各座標点毎に、当該座標点のY座標と隣り合うY座標に存在し且つ閉曲線L2に含まれる座標点の有無及び数を判定することよって行う。例えば、閉曲線L2上の座標点P1について見ると、座標点P1のY座標y1に対して隣に位置するY座標y2上に座標点P2及び座標点P3が存在する。この場合、座標点P2と座標点P3とに挟まれる領域と、それ以外の領域とが峻別される。以下、閉曲線L2に含まれる各座標点毎に、これを繰り返すことによって内側と外側の各領域が区別され得る。
【0028】
図6は、手書き文字と補正された認識文字との関係を示す図である。両者の関係について図2に示された構成要素を適宜参照して説明する。
【0029】
図6の(a)に示されるように、手書き入力された描画文字「販売促進」が描線によって表示されている。補正ON/OFFボタン34が押されると、ノートツール30の文字認識部42は、手書き文字「販売促進」を文字認識して、符号化された「販売促進」を認識文字として取得する。文字認識の手法については周知の技術が用いられ得る。描画補正部43は、手書き文字「販売促進」を構成する描画情報の各座標点のうち、Y座標の値を最大とし且つX座標の値を最小とずる座標点P1と、Y座標の値を最小とし且つX座標の値を最大とする座標点P2を認識する。
【0030】
図6の(b)に示されるように、次に、描画補正部43は、座標点P1と座標点P2との間の線分を対角線とする矩形A(すなわち、手書き領域)を画定し、この矩形A内に補正後の文字として認識文字「販売促進」を表示する。補正後の文字のフォント種別及びサイズは、設定情報格納部45に設定されたフォント種別及びサイズに従っても良いし、好ましくは補正後の文字のサイズを矩形Aのサイズに自動的に合わせる。
【0031】
変形例として、図2に示された描画補正部43は、入力ペン操作よって描画された手書き描線を、補正ON/OFFボタン34の操作に応じて、座標始点及び座標終点からなる直線情報に変換する機能を備えてもよい。描画情報記憶部44は、かかる直線情報を表示されるべき描画情報として記憶する。ここで、描画補正部43は、当該手書き描線と当該手書き描線の座標始点と座標終点との間を結ぶ補間直線との偏差が所定閾値内にあることを条件として、当該手書き描線を直線情報に変換する。
【0032】
以上の第1の実施例において、複数の色彩や描線の太さを指定できる携帯可能なノートツールが手書き入力表示装置として提供される。手書き入力表示装置は、また、消去モードボタンを操作することにより、閉曲線の内側または外側のデータを纏めて消去することができる。手書き入力表示装置は、さらに、手書きの文字に対して文字認識を行い該当領域に指定したフォントで手書き領域の大きさに合わせたフォントサイズで認識文字を表示することができる。これにより、描画情報の多彩な表示や消去操作における直感的な操作が可能となる。
【0033】
<第2の実施例>
図7は、本発明の第2の実施例を示し、ホワイトボード共用システムの全体構成を示している。ここで、通信端末20a及び20bを各々利用してTV会議を行う利用者が併せてノートツール30a及び30bを各々利用してホワイトボードを共用する形態が示されている。通信端末20a及び20b並びにノートツール30a及び30bは2台ずつしか図示されていないが最大許容数を制限するものではない。通信端末20a及び20bは、IPプロトコルを利用したインターネットや企業内のイントラネット等である通信ネットワーク50に接続されている。通信端末20a及び20bは、TV会議サービスの提供を受けることができる通常の通信端末である。通信ネットワーク50には、ホワイトボード共用サービスを提供するサービス運営事業者網10が接続されている。
【0034】
サービス運営事業者網10は、利用者にホワイトボード共用を行う領域として共用描画情報記憶部13と、共用描画情報記憶部13に対する各利用者の編集送信権を管理する管理サーバ11と、を含む。利用者の編集送信権は、1つの仮想的なホワイトボードに対して新たな書き込みをなす書込権と共に、自身が書いた描画情報のみならず他の利用者が書いた描画情報に対する変更権や消去権を含む。サービス運営事業者網10は、ホワイトボード共用サービスの運営主体が保守及び管理を行うネットワークである。共用描画情報記憶部13は、世界に単独あるいは地域毎に設置されても良いし、負荷分散や災害時対策等のため複数台の装置に分散設置されてもよい。管理サーバ11は、共用描画情報記憶部13に対する各利用者の編集送信権を管理するために編集権管理テーブル12を含む。管理サーバ11は、編集権管理テーブル12に現在時点で編集送信権を有する利用者を特定するユーザIDを設定する。
【0035】
管理サーバ11による編集送信権の割り当ては、例えば、通信端末20a及び20bを用いてなされ得るTV会議システムサービスにおける発言権の割り当てに一致させてもよい。また、通信端末20a及び20bの何れか先に編集送信権ON/OFFボタン35を押した方の通信端末に編集送信権を与えて、当該通信端末が再び編集送信権ON/OFFボタン35を押して編集送信権を放棄する迄、当該通信端末に編集送信権を維持するようにしてもよい。
【0036】
また、管理サーバ11は、編集送信権のうちで前記電子ホワイトボードの描画情報の全体の書込権、変更権及び消去権を分離して管理してもよいし、及び/又は入力者自身を含む特定の利用者が入力した内容に対する書込権、変更権及び消去権を分離して管理してもよい。例えば、特定のユーザIDに関連付けられた描画情報について消去権を制限するようにしてもよい。
【0037】
複数のノートツール30a及び30bの各々は、通信端末20a及び20bの各々に接続され、上記した仮想的な1つのホワイトボードをそのタブレット部に表示すると共に入力ペンを用いてホワイトボードに描画することができる。ノートツール30a及び30bには、このホワイトボードに描画された同一の描画情報が同時に表示される。
【0038】
図8は、図7に示された通信端末20の内部構成を示している。ここで、通信端末20は、汎用コンピュータ本体21と、ディスプレイ、プロジェクタ、スピーカまたはプリンタ等である出力装置29と、キーボード、マウスまたはマイク等である入力装置210と、からなる。汎用コンピュータ本体21は、通常の構成として、電源22と、メモリ23と、処理部(CPU)24と、ハードディスクドライブ等の情報格納装置25と、システムバス、メモリバス、入出力バスまたは拡張バスであるバス26と、入出力インタフェース27と、通信インタフェース28とを備える。ノートツール30とは入出力インタフェース27を介して接続されている。これにより、ノートツール30は、通信端末20及び通信ネットワーク50を介してサービス運営事業者網10内の管理サーバ11及び共用描画情報記憶部13にアクセスすることができる。
【0039】
図9は、描画情報を共用する場合におけるノートツール30の状態遷移及びモード遷移の様子を示している。ここでは、ノートツール30は、TV会議におけるホワイトボードとして、共有描画情報記憶部の内容と自己の描画情報記憶部との同期を取り、同一の描画情報を他のノートツールと共用する。以下、ノートツール30動作について図1、図2及び図7に示された構成要素を適宜参照して説明する。
【0040】
初期状態S1において、ノートツール30の電源ボタン33が押されると、ノートツール30は単独編集状態S2で起動される。この際、最初の起動では1ページ目がタブレット部に表示されるが、既に描画情報が存在する場合は、例えば描画情報の存在する最終ページまたは白紙の次ページが表示される。単独編集状態S2において、利用者は任意の描画情報、例えば描線や文字を入力することができる。
【0041】
単独編集状態S2にあるノートツール30が接続された通信端末20において、TV会議のセッションが確立されると、ノートツール30は表示専用状態S3に移行する。このとき、例えば、単独編集状態S2での起動ページに何らかの情報が記録されている場合はその次のページが表示される。一方、何も記録されていない場合には、例えば、単独編集状態S2での起動ページがそのまま会議用のホワイトボードとして利用される。
【0042】
TV会議のセッションの確立手順は、例えば、SIP(Session Initiation Protocol)/IMS(Information Management System)におけるカンファレンスコールのコールシーケンスに準じる。ここで、コールシーケンスに引き続いて、音声信号及び映像信号のためのRTP(Real-time Transport Protocol)セッションが確立されると共に、ホワイトボードを共有するための専用RTPセッションが別ポート番号にて確立される。
【0043】
表示専用状態S3において、ノートツール30は、デジタルホワイトボードの内容をデフォルト設定として設定情報格納部45の設定内容に従って表示する。デフォルト設定の内容は、例えば、描線の色を黒とし、描線の幅を標準とし、描線及び文字補正OFFとし、表示倍率100%(すなわち、全画面表示)とし、文字補正ONの場合の補正後の文字のフォント種別及びサイズを各々ゴシック及び10ptとし、セション開始時点では「編集送信権」が無いとする。デフォルト設定の内容を会議に参加する利用者全員のノートツールにおいて一致させることにより、利用者全員が全く同一の表示形態でホワイトボードを視認することができる。
【0044】
表示専用状態S3において、ノートツール30は、他の利用者による編集内容を一方的に受信し、編集された描画情報を自身の描画情報記憶部44に蓄積すると共にタブレット部317に表示する。座標点が重複する描画情報が存在する場合、最も新しい時刻情報を有する描画情報を画面レイヤ上で最上位に表示する。また、編集送信権がONとなっている他のノートツールからページ移動コマンドを直接又は管理サーバ11経由で受信し、これに応じて自動的に表示するページを移動してもよい。
【0045】
表示専用状態S3において、操作者が編集送信権ON/OFFボタン35を押下すると、ノートツール30は会議編集状態S4に移行する。会議編集状態S4において、編集権の与えられた利用者は任意の描画情報、例えば描線や文字を入力することができる。編集内容は、一旦自己の描画情報記憶部44に記憶されると共に、ホワイトボードを共有するための専用RTPセッションを介して共用描画情報記憶部13に反映される。共用描画情報記憶部13の内容は専用RTPセッションを介して他の利用者のノートツールに反映される。共用描画情報記憶部13に記憶される描画情報には、描画情報の内容のみならず編集したユーザIDが含まれる。これにより、利用者を指定した描画情報の消去が可能となる。
【0046】
会議編集状態S4において、表示された内容を消去する場合は、利用者は消去モードボタン310を押す。消去モードボタン310が押されると、ノートツール30は消去対象となる色彩を選択するモードM1へと移行する。利用者は、黒のみ、赤のみ、黒と青または全色等の如く所望の色彩を色彩パレットボタン36によって選択して確定ボタン318を押す。これに応じて、ノートツール30は消去対象ユーザを選択するモードM2へと移行する。確定ボタン318を押される前にキャンセルボタン315が押されれば、単独編集状態S2に戻る。確定ボタン318が押される前にキャンセルボタン315が押されれば、会議編集状態S4に戻る。
【0047】
消去対象ユーザを選択するモードM2においては、タブレット部317の入力用画面に会議中のユーザ一覧が表示されるので、消去対象としたいユーザを選択した後確定ボタン318を押すことで確定する。これに応じて、ノートツール30は消去対象範囲を選択するモードM3へと移行する。確定ボタン318が押される前にキャンセルボタン315が押されれば、会議編集状態S4に戻る。
【0048】
消去対象範囲を選択するモードM3以降の動作は、第1の実施例において説明された動作と同様であることから説明を省略する。表示専用状態S3や会議編集状態S4でTV会議セッションが切断されると、ノートツール30は単独編集状態S2に復帰する。単独編集状態S2、表示専用状態S3及び会議編集状態S4においで電源ボタン33が再度押されると電源OFFとなり初期状態S1に戻る。
【0049】
以上の第2の実施例において、複数の利用者が描画情報入力表示装置であるノートツールを各々用いてホワイトボードを共有するホワイトボード共用システムが提供される。これにより、TV会議等の多数の参加者が1つのホワイトボートを介して会議が可能となると共に、時機よって任意の利用者のノートツールに、ホワイトボートに既に書かれた描画情報を消去し得る編集送信権を与えることより、会議の円滑な遂行が可能となる。
【0050】
以上の第2の実施例においては、共用描画情報記憶部が外部のネットワーク上に配置されて、共用された描画情報がサーバ・クライアント方式で配信される形態が示されたが、本発明にかかる限定はなく、複数のノートツールの各々間でピア・トゥー・ピア方式で描画情報を直接交換することで、実質的に同一の内容の描画情報を複数のノートツールが共有するようにしてもよい。
【0051】
また、以上の第2の実施例においては、利用者が通信端末を用いてTV会議に参加しつつ、ノートツールを用いてホワイトホードを共用する形態が示されたが、本発明にかかる限定はなく、利用者は、ネットワーク通信機能備えるノートツールを用いて、通信端末を用いることなく、ホワイトホードを共用する形態も可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 サービス運営事業者網
11 管理サーバ
12 編集権管理テーブル
13 共用描画情報記憶部
20、20a、20b 通信端末
30 30a、30b ノートツール
31 本体
32 入力ペン
33 電源ボタン
34 補正ON/OFFボタン
35 編集送信権ON/OFFボタン
36 色彩パレットボタン
37 十字キーボタン
38 ズームイン・アウトボタン
39 描線幅調整ボタン
310 消去モードボタン
311 内側消去ボタン
312 外側消去ボタン
313 ページ移動ボタン
314 ページ表示ボタン
315 キャンセルボタン
316 ホールドボタン
317 タブレット部
318 確定ボタン
41 動作制御部
42 文字認識部
43 描画補正部
44 描画情報記憶部
45 設定情報格納部
46 時計機能部
47 タブレット表示部
48 ペン入力部
49 入出力インタフェース
410 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タブレット部に対する入力ペンの描画操作に応じて描画情報を取り込むペン入力部と、前記描画情報を記憶する描画情報記憶部と、前記描画情報を前記タブレット部に表示するタブレット表示部と、を備える手書き入力表示装置であって、
設定自在なユーザIDを保持する保持手段と、
前記描画情報が前記描画情報記憶部に記憶される際に、前記描画情報を前記ユーザIDに関連付けて記憶せしめる制御手段と、
消去対象範囲入力に応じて、前記描画情報記憶部に記憶された描画情報のうちで前記消去対象範囲に対応すると共に、前記消去対象範囲入力の時点で保持されているユーザIDに関連付けられた描画情報を消去する消去手段と、
を含むことを特徴とする手書き入力表示装置。
【請求項2】
前記描画情報記憶部に記憶される描画情報を、通信ネットワークを介して他の手書き入力表示装置と共用する描画情報共用手段をさらに含み、前記消去手段は、前記消去対象範囲に対応する描画情報のうちで、前記保持手段によって保持されているユーザIDに関わりなく、新たに選択入力されたユーザIDに関連付けられた描画情報を消去することを特徴とする請求項1記載の手書き入力表示装置。
【請求項3】
消去対象の色彩を選択する色彩選択手段をさらに含み、前記消去手段は、当該選択された色彩の描画情報を消去することを特徴とする請求項1又は2記載の手書き入力表示装置。
【請求項4】
前記前記消去手段は、前記入力ペンの描画操作よって描画された閉曲線によって前記消去対象範囲を画定することを特徴とする請求項1又は2記載の手書き入力表示装置。
【請求項5】
前記入力ペン操作よって描画された手書き文字を符号化された認識文字に変換する文字認識手段をさらに含み、前記描画情報記憶部は、前記認識文字を前記描画情報として記憶することを特徴とする請求項1又は2記載の手書き入力表示装置。
【請求項6】
前記認識文字の表示サイズを前記手書き文字の描画サイズに合わせる描画補正手段をさらに含むことを特徴とする請求項5記載の手書き入力表示装置。
【請求項7】
前記入力ペン操作よって描画された手書き描線を、座標始点及び座標終点からなる直線情報に変換する直線認識手段をさらに含み、前記描画情報記憶部は、前記直線情報を前記描画情報として記憶することを特徴とする請求項1又は2記載の手書き入力表示装置。
【請求項8】
前記直線認識手段は、前記手書き描線と前記手書き描線の座標始点と座標終点との間を結ぶ補間直線との偏差が所定閾値内にあることを条件として、前記手書き描線を前記直線情報に変換することを特徴とする請求項7記載の手書き入力表示装置。
【請求項9】
請求項1記載の手書き入力表示装置の複数と、前記手書き入力表示装置の各々の間で前記描画情報を、電子ホワイトボードに描画される描画情報として共用する描画情報共用手段と、前記電子ホワイトボードの描画情報の少なくとも1部を消去し得る編集権を前記手書き入力表示装置の何れかに与える編集権管理手段と、を含むことを特徴とするホワイトボード共用システム。
【請求項10】
前記編集権管理手段は、前記電子ホワイトボードの描画情報の全体の書込権、変更権及び消去権を分離して管理するか、及び/又は入力者自身を含む特定の利用者が入力した内容に対する書込権、変更権及び消去権を分離して管理することを特徴とする請求項9記載のホワイトボード共用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−239469(P2010−239469A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86282(P2009−86282)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(308033722)株式会社OKIネットワークス (165)
【Fターム(参考)】