説明

手術支援装置、手術支援方法および手術支援プログラム

【課題】切除すべき異常領域を含む臓器のうち、切除する対象となる切除領域を適切に決定する。
【解決手段】異常領域51を内包する最小の内包体52を設定し、設定された内包体52に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する臓器部分を部分領域54として抽出し、取得した医用画像から臓器を支配する構造物の領域5を抽出し、抽出された構造物の領域内の所定の位置から異常領域を含む臓器部分側に延びる構造物の一部55により支配される、異常領域を含む臓器部分を支配領域56として抽出し、部分領域54と支配領域56のいずれかを所定の切除領域決定条件に基づいて切除領域として決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓・肺などの臓器の手術において、切除領域を決定する際に医師を支援するための手術支援装置、方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
肝臓・肺などの臓器において患部を切除する手術を行う場合には、手術前に画像診断によってその切除する部分を適切に決めておくことが必要である。この切除する部分を決定する際に、患部を含むように部分領域を設定し、かかる部分領域を切除領域として決定する方法と、臓器を支配する構造物に基づいて、すなわち、臓器に対し酸素や栄養分を供給することにより臓器の機能を正常に保つ構造物に基づいて、切除される構造物の部分に支配される支配領域を抽出し、この支配領域を切除領域として決定する方法が用いられている。
【0003】
患部を含む部分領域を切除領域として決定する方法として、特許文献1には、肝臓の病変領域と肝臓を走行する複数の脈管に基づいて、病変領域の中心又は重心から外側に向かって複数の脈管のいずれかに接するまで球状に領域を拡張し、拡張した球状の領域に接する略円錐領域を切除領域として決定する方法が開示されている。
【0004】
支配領域を切除領域として決定する方法として、特許文献2には、肝臓のX線CT画像から血管や肝臓実質、腫瘍部分を抽出し、抽出された血管の芯線の位置や血管径等に基づいて、抽出された腫瘍がどの血管の支配領域に属するかを特定することによって腫瘍に栄養を供給する血管を特定し、特定された血管の支配領域のうち血管と肝臓実質を構成する画素との相対距離が予め与えられた最大相対距離値より長い領域を、血管の圧排等により誤っている可能性がある灌流異常領域として表示する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4193201号公報
【特許文献2】特開2007−54147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、切除領域は、手術による患者負担および手術時間を低減できるように適切に決定されることが好ましい。例えば、切除領域は、手術による患者負担および手術時間の低減のために切除領域の切除される境界の面積ができるだけ小さいことが好ましく、患者の健康な臓器をできるだけ多く残せるよう切除領域の体積ができるだけ小さいことが好ましく、適切に構造物による支配の影響を配慮して決定することが好ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、常に部分領域を切除領域として決定するため、支配領域を切除領域とした場合よりも切除領域の体積や切除される表面積が大きくなる場合があるとともに構造物による支配の影響を配慮しておらず、支配領域と部分領域の適切な方を切除領域として決定することはできない。
【0008】
また、特許文献2に記載された方法では、常に支配領域を切除領域として決定するため、部分領域を切除領域とした場合よりも切除領域の体積や切除される表面積が大きくなる場合があるため、この方法でも支配領域と部分領域の適切な方を切除領域として決定することはできない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて、支配領域と部分領域のいずれかを切除領域として適切に決定する手術支援装置、方法およびプログラムを提供することを目的とするものである。さらには、適切な切除領域を医師に提示して、切除領域の設定が適切であるか否かの判断を容易にし、医師による診断を支援することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の手術支援装置は、臓器において、切除すべき異常領域を含む切除領域を決定する手術支援装置であって、前記臓器を表す医用画像を取得する医用画像取得手段と、取得した前記医用画像から前記臓器の領域を抽出する臓器領域抽出手段と、抽出した前記臓器領域から前記異常領域を抽出する異常領域抽出手段と、抽出された前記異常領域を内包する最小の内包体を設定する内包体設定手段と、設定された前記内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する臓器部分を部分領域として抽出する部分領域抽出手段と、取得した前記医用画像から前記臓器を支配する構造物の領域を抽出する構造物領域抽出手段と、前記抽出された構造物の領域内の所定の位置から前記異常領域を含む臓器部分側に延びる前記構造物の一部により支配される、前記異常領域を含む臓器部分を支配領域として抽出する支配領域抽出手段と、前記部分領域抽出手段に抽出された部分領域と前記支配領域抽出手段に抽出された支配領域のいずれかを所定の切除領域決定条件に基づいて前記切除領域として決定する切除領域決定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の手術支援方法は、臓器において、切除すべき異常領域を含む切除領域を決定する手術支援方法であって、前記臓器を表す医用画像を取得し、取得した前記医用画像から前記臓器の領域を抽出し、抽出した前記臓器領域から前記異常領域を抽出し、抽出された前記異常領域を内包する最小の内包体を設定し、設定された前記内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する臓器部分を部分領域として抽出し、取得した前記医用画像から前記臓器を支配する構造物の領域を抽出し、前記抽出された構造物の領域内の所定の位置から前記異常領域を含む臓器部分側に延びる前記構造物の一部により支配される、前記異常領域を含む臓器部分を支配領域として抽出し、前記部分領域抽出手段に抽出された部分領域と前記支配領域抽出手段に抽出された支配領域のいずれかを所定の切除領域決定条件に基づいて前記切除領域として決定することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の手術支援プログラムは、臓器において、切除すべき異常領域を含む切除領域を決定する手術支援プログラムであって、コンピュータを、前記臓器を表す医用画像を取得する医用画像取得手段と、取得した前記医用画像から前記臓器の領域を抽出する臓器領域抽出手段と、抽出した前記臓器領域から前記異常領域を抽出する異常領域抽出手段と、抽出された前記異常領域を内包する最小の内包体を設定する内包体設定手段と、設定された前記内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する臓器部分を部分領域として抽出する部分領域抽出手段と、取得した前記医用画像から前記臓器を支配する構造物の領域を抽出する構造物領域抽出手段と、前記抽出された構造物の領域内の所定の位置から前記異常領域を含む臓器部分側に延びる前記構造物の一部により支配される、前記異常領域を含む臓器部分を支配領域として抽出する支配領域抽出手段と、前記部分領域抽出手段に抽出された部分領域と前記支配領域抽出手段に抽出された支配領域のいずれかを所定の切除領域決定条件に基づいて前記切除領域として決定する切除領域決定手段として機能させることを特徴とするものである。
【0013】
本発明による医用画像は、前記臓器の構造を三次元的に表した3次元形態画像(3D Anatomical Image)であり、臓器の機能を評価するための評価値を臓器の形状に合わせて三次元的に配列した3次元機能画像(Functional Image)を併せて取得してもよい。具体的には、手術支援装置として機能するコンピュータに内蔵されるメモリ、ストレージのほか、そのコンピュータに直接またはネットワークを介して接続された外部ストレージから医用画像を取得する。3次元機能画像は、臓器が正常に機能しているか否かの評価に用いられる評価値(例えば、臓器の動きや生理的反応を示す値)をボクセルデータとするボリュームデータである。3次元形態画像は、臓器の解剖学的構造を表す値をボクセルデータとするボリュームデータである。
【0014】
異常領域検出に利用できる技術は、臓器に内包される異常を検出する技術であれば周知の種々の技術を適用でき、具体的には、特開2003−225231号、特開2003−271924号、および、久保田等、「ヘリカルCT像を用いた肺がん計算機診断支援システムの評価」、電子情報通信学会、信学技報、pp.41-46、MI2001-41(2001-09)に示す肺がんを検出する技術、脇田等、「びまん性肺疾患の知的CAD」、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究"多次元医用画像の知的診断支援"、第4回シンポジウム論文集、pp. 45-54、2007に示すコンソリデーション、Ground-Glass Opacity(GGO)、Crazy-Paving、蜂巣状陰影、肺気腫陰影、粒状影等のびまん性肺疾患の検出技術、脇田等、「多時相腹部X線CT像の時相間濃度特徴計測に基づく肝臓がん検出」、コンピュータ支援画像診断学会論文誌、Vol.10、No.1、Mar 2007に示す肝臓がん検出技術、「正常構造の理解に基づく知的CAD」、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究"多次元医用画像の知的診断支援"、第4回シンポジウム論文集pp.55-60、2007に示す肝細胞がん、肝のう胞、肝血管種、肝臓領域における出血を検出する技術などを用いることができる。
【0015】
「内包体」とは、内部に一部の領域を完全に包みこんでいる、閉じた3次元の立体を意味する。内包体は、異常領域を完全に包みこんでいる閉じた3次元の立体であればいかなる形体であってもよいが、肝臓や肺などの異常領域は略球体形状で抽出されることが多いため、例えば、内包体を球体や楕円体などにすることが好ましい。
【0016】
「異常領域を内包する最小の内包体」とは、異常領域を内包するものであれば任意に定義でき、例えば、異常領域に外接する内包体を最小の内包体と定義してもよく、特許文献1に記載された方法のように異常領域を含み血管などの構造物に達するまで拡張した球体を最小の内包体と定義してもよい。
【0017】
「臓器を支配する」とは、その臓器に対し酸素や栄養分を供給することにより、臓器の機能を正常に保つことを意味する。例えば、肝臓であれば血管、肺であれば気管支、脳であれば脳動脈が、臓器を支配する構造物に相当する。
【0018】
「前記異常領域に存在する所定の点から前記臓器の表面までの距離」とは、異常領域の位置を表す、異常領域内の代表的な位置から臓器の表面までの距離を意味し、例えば、異常領域内部の重心から臓器の表面への最短距離であってもよく、異常領域の重心を通り臓器の表面の法線に平行な直線が表面と交差する点と異常領域の中心との距離でもよい。なお、異常領域に存在する所定の点は、複数の異常領域の群を1つの異常領域とみなして、その群からなる1つの異常領域の重心を所定の点として用いてもよい。なお、複数の異常領域の群を1つの異常領域とみなせる場合や、異常領域が細長い形状の場合など、異常領域の重心が異常領域外部に存在する場合もあり得る。このため、異常領域に存在する所定の点は、異常領域内に存在するものだけでなく、実質的に異常領域としてみなせる異常領域近傍の点も含む。
【0019】
また、臓器領域抽出、構造物抽出および支配領域は周知の方法で算出することができる。例えば、肝臓においては、肝臓領域内の血管を抽出し、ボロノイ図(Voronoi diagram)を用いて、肝臓領域内の血管以外の領域(肝臓実質等)がどの血管の支配領域に属するかを特定することによって、各血管の支配領域を肝区域として特定する方法等(特開2003−033349号公報や、R Beichel et al.、“Liver segment approximation in CT data for surgical resection planning”、Medical Imaging 2004: Image Processing. Edited by Fitzpatrick, J. Michael; Sonka, Milan、2004年、Proceedings of the SPIE, Volume 5370, pp. 1435-1446等参照)によって支配領域を取得することができる。
【0020】
さらに、例えば、肺野においては、次の方法を適用して支配領域を決定できる。まず、領域拡張法により気管支領域内の画素の集合を抽出し、抽出された気管支領域に対して細線化処理を行い、得られた気管支を表す細線の連結関係に基づいて細線上の各画素を端点・エッジ(辺)・分岐点に分類することによって、気管支を表す木構造データを得る(詳細については、小林 大祐、他5名、「血管形状記述のための枝ベース木構造モデル構築の試み」、[online]、2005年3月9日、理化学研究所、理研シンポジウム 生体形状情報の数値化及びデータベース構築研究、pp.84-92、[2010年1月6日検索]、インターネット〈URL:http://www.comp-bio.riken.jp/keijyo/products/2005_1_files/kobayashi_print.pdf〉、中村 翔、他4名、「木構造解析による胸部X線CT像からの肺動脈・肺静脈の自動分類」、電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像、日本、社団法人電子情報通信学会、2006年1月21日、Vol.105, No.580、pp.105-108、[2009年11月20日検索]、インターネット〈URL:http://www.murase.nuie.nagoya-u.ac.jp/~ide/res/paper/J05-kenkyukai-snaka-1.pdf〉等参照)。そして、得られた気管支構造を母点集合として3次元ボロノイ分割を行い、肺野領域内の各画素が気管支構造を構成する気管支のうちのどの気管支に最も近いか、すなわち、肺野領域内の各画素がどの気管支に支配されているかを求め、同じ気管支に支配されている領域をその気管支の支配領域に決定できる(詳細については、平野 靖、他5名、「3次元ボロノイ分割を用いた胸部CT像における肺葉収縮の定量化と腫瘤影鑑別への応用」、[online]、2001年7月、日本医用画像工学会第20回大会講演論文集、pp.315-316、[2009年11月20日検索]、インターネット〈URL:http://mase.itc.nagoya-u.ac.jp/~hirano/Papers/JAMIT2001.pdf〉等参照)。また、他の例として、肺野を抽出する技術について、特開2001−137230号、特開2008−253293号、肝臓を抽出する技術について特開2001−283191号、特開2002−345807号に記載された技術が適用できる。
【0021】
「支配領域」は、構造物領域内の所定の位置すなわち血管などの構造物の一部から、手術して切除しようとする患部を含む臓器部分側に延びる、構造物の一部により支配される、臓器領域である。一般的に、肝臓や肺などの血管や気管支などの特定の構造物に支配される臓器の切除手術を行う際、血管や気管支などの臓器を支配する構造物を結紮する位置を決定し、結紮する位置より患部側に延びる構造物の一部により支配される臓器部分を支配領域として切除する。ここでいう、構造物の領域内の所定の位置は、臓器を支配する構造物を結紮する位置に対応する。また、構造物の一部は、血管などの構造物を結紮する位置から、患部を含む臓器側、すなわち、血管などの構造物の枝端に向かって延びる構造物部分となる。
【0022】
また、構造物の領域内の所定の位置から前記患部を含む臓器部分側に延びる前記構造物の部分は、種々の周知の技術によって設定してよい。例えば、特開2001−283191号のような周知の技術によって設定してもよく、ディスプレイに構造物を表示し、ユーザのマニュアル操作による構造物上の所定の位置を受付け、所定の位置から患部を含む臓器側延びる領域として設定してもよい。
【0023】
本発明の手術支援装置において、切除領域決定条件は、切除領域を適切に決定しうる条件を規定するものであれば任意の条件を設定でき、また複数の任意の条件の組合せを設定するものであってよい。例えば、前記異常領域に存在する所定の点から前記臓器領域の表面までの距離が所定のしきい値以下である場合は、前記部分領域を優先的に重み付けして前記切除領域を決定し、前記異常領域から前記臓器領域の表面領域との距離が所定のしきい値より大きい場合は、前記支配領域を優先的に重み付けして前記切除領域を決定するものであってもよい。
【0024】
また、本発明の手術支援装置において、前記切除領域決定条件は、前記部分領域と前記支配領域の体積または表面積が小さい方を優先的に重み付けして前記切除領域を決定するものであってもよい。
【0025】
また、本発明の手術支援装置において、前記切除領域決定条件は、前記部分領域が前記構造物を内包する場合、前記支配領域を優先的に重み付けして前記切除領域を決定するものであってもよい。
【0026】
本発明の手術支援装置における前記部分領域抽出手段は、設定された前記内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する領域であって、体積または表面積が最小になる領域を前記部分領域として算出するものであることが好ましい。
【0027】
本発明の手術支援装置において、前記異常領域抽出手段が複数の異常領域を抽出可能なものであり、前記内包体設定手段が、抽出された複数の前記異常領域のうちのいずれかの複数の異常領域が所定の距離内に位置する場合に、前記所定の距離内に位置する前記複数の異常領域の全てを内包する1つの最小の内包体を設定するものであってもよい。
【0028】
本発明の手術支援装置は、前記抽出された部分領域内に前記構造物が有る場合に警告する警告手段をさらに備えてもよい。
【0029】
また、かかる警告手段による警告は、ユーザが認識できる警告であればいかなる警告でもよく、例えば、音による警告でもよく、画面上に警告表示を行ってもよい。例えば、前記部分領域内の構造物を識別表示してもよく、部分領域内の構造物領域の色を変える、点滅させる、輪郭を太くするなど部分領域内の構造物領域をその他部分と識別できる種々の識別方法を適用してよい。
【0030】
本発明の手術支援装置は、前記医用画像取得手段は、前記臓器の各位置における機能レベルを表した機能画像をさらに取得するものであり、前記支配領域決定手段は、前記医用画像における前記臓器の各部分と前記構造物の各部分との、最短経路上の各位置における機能レベルを重み付けした距離を用いて前記支配領域を決定するものであってもよい。
【0031】
上記「機能画像」は、先述した3次元機能画像を意味する。
【0032】
また、「前記臓器の各部分と前記構造物の各部分との、最短経路上の各位置における機能レベルを重み付けした距離を用いて」支配領域を決定するとは、臓器の各部分が、各臓器の部分と距離が最も小さくなる構造物(例えば血管)に支配されるように支配領域を決定する方法であって、かかる距離を、臓器の各部分と構造物の各部分との物理的な位置に基づく距離だけでなく、臓器の各部分と構造物の各部分との間の最短経路上に存在する臓器部分の機能レベルにより重み付けした距離とするものである。肝臓を例として説明すると、肝臓を走行する2つの血管がある場合、2つの血管の各部分から等距離にある肝臓実質中の位置が支配領域の境界として決定される。ここでいう、肝臓実質中の位置と一方の血管の一部分間の距離は、肝臓実質中の位置と一方の血管の一部分との物理的な最短距離に、一方の血管の一部分からかかる肝臓実質中の位置への最短距離をなす経路上に存在する肝臓実質の各部分の肝機能レベルを加味して重み付けして算出され、同肝臓実質中の位置と他方の血管の一部分間の距離は、肝臓実質中の位置と他方の血管の一部分との物理的な最短距離に、他方の血管の一部分からかかる肝臓実質中の位置への最短距離をなす経路上に存在する肝臓実質の各部分の肝機能レベルを加味して重み付けして算出される。
【0033】
本発明において、前記臓器が肝臓であり、前記構造物が血管であってもよく、前記臓器が肺であり、前記構造物が気管支であってもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の手術支援装置およびプログラムによれば、異常領域を内包する最小の内包体を設定し、設定された内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する臓器部分を部分領域として抽出し、取得した医用画像から臓器を支配する構造物の領域を抽出し、抽出された構造物の領域内の所定の位置から異常領域を含む臓器部分側に延びる構造物の一部により支配される、異常領域を含む臓器部分を支配領域として抽出し、部分領域抽出手段に抽出された部分領域と前記支配領域抽出手段に抽出された支配領域のいずれかを所定の切除領域決定条件に基づいて前記切除領域として決定するため、所定の切除領域決定条件に基づいて部分領域と支配領域のうちより適切な方を切除領域として決定できる。これにより、医師や放射線技師は、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【0035】
また、本発明の手術支援装置において、切除領域決定条件が、異常領域に存在する所定の点から臓器領域の表面までの距離が所定のしきい値以下である場合は、部分領域を優先的に重み付けして切除領域を決定し、異常領域から臓器領域の表面領域との距離が所定のしきい値より大きい場合は、支配領域を優先的に重み付けして切除領域を決定するものである場合には、異常領域から表面領域との距離に基づいて、部分領域と支配領域のうちより適切な方を切除領域として決定できる。これにより、医師や放射線技師は、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【0036】
また、本発明において、切除領域決定条件が、部分領域と支配領域の体積または表面積が小さい方を優先的に重み付けして切除領域を決定する場合には、部分領域と支配領域の体積または切除すべき境界面の小さい方を優先的に切除領域として決定するため、より小さい切除すべき境界面を有する切除領域を決定できる。これにより、手術の患者負担の軽減や手術時間の短縮化に適した、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【0037】
また、本発明において、切除領域決定条件は、部分領域が構造物を内包する場合、支配領域を優先的に重み付けして切除領域を決定するもの場合には、構造物を含む部分領域より構造物に支配される支配領域を優先的に切除領域として決定するため、意図せず構造物を切除してしまうことを抑制できる。これにより、適切な切除領域を自動的に設定することができ、医師や放射線技師は、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【0038】
また、本発明の手術支援装置において、部分領域抽出手段が、設定された内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する領域であって、体積または表面積が最小になる領域を部分領域として算出する場合には、部分領域が切除領域として決定された場合、より小さい体積またはより小さい切除すべき境界面を有する切除領域を切除領域として決定できる。これにより、医師や放射線技師は、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【0039】
また、本発明の手術支援装置において、異常領域抽出手段が複数の異常領域を抽出可能なものであり、内包体設定手段が、抽出された複数の異常領域のうちのいずれかの複数の異常領域が所定の距離内に位置する場合に、所定の距離内に位置する複数の異常領域の全てを内包する1つの最小の内包体を設定する場合には、個々に異常領域に対して切除領域を決定するよりも、切除すべき境界面を最小となるように部分領域を算出するため、部分領域が切除領域として決定された場合、より小さい切除すべき境界面を有する切除領域を決定できる。これにより、手術の患者負担の軽減や手術時間の短縮化に適した、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【0040】
また、本発明の手術支援装置が、抽出された部分領域内に構造物が有る場合に警告する警告手段をさらに備えた場合には、決定した切除領域によって、意図せず構造物が切除されることを医師に提示して、切除領域の設定が適切であるか否かの判断を容易にし、医師等による適当な切除領域の決定を支援する。
【0041】
また、本発明の手術支援装置において、医用画像取得手段が、臓器の各位置における機能レベルを表した機能画像をさらに取得するものであり、支配領域決定手段が、医用画像における臓器の各部分と構造物領域内の所定の位置から異常領域を含む臓器部分側に延びる構造物の部分との、最短経路上の各位置における機能レベルを重み付けした距離を用いて支配領域を決定する場合には、臓器の機能レベルに基づいて支配される支配領域を適切に設定できるため、支配領域を切除領域として決定した場合、より適切な切除領域を自動的に設定することができ、医師や放射線技師は、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態における手術支援装置の概略構成を示す図
【図2】本実施形態における内包体設定処理の概要を示す図
【図3】本実施形態による部分領域抽出処理を説明する図
【図4】本実施形態における支配領域抽出処理を説明する図
【図5】本実施形態における切除領域決定処理を説明する図
【図6】本実施形態における手術支援装置が実行する処理の流れを示す図
【図7】本実施形態の変形例における手術支援装置の概略構成を示す図
【図8】本実施形態の部分領域抽出処理の変形例を説明する図
【図9】本実施形態の内包体設定処理の変形例を説明する図
【図10】本実施形態の支配領域抽出処理の変形例を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の手術支援装置、手術支援プログラムおよび手術支援方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0044】
以下に示す各実施形態において、手術支援装置1は、一台のコンピュータに、各実施形態の手術支援プログラムをインストールしたものである。コンピュータは、診断を行う医師が直接操作するワークステーションやパソコンでもよいし、もしくは、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。手術支援プログラムは、DVD,CD−ROM等の記録メディアに格納されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。もしくは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、あるいはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて医師が使用するコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。
【0045】
図1は、ワークステーションに手術支援プログラムをインストールすることにより実現された手術支援装置1の概略構成を示す図である。同図が示すように、手術支援装置1は、不図示のCPU、不図示のメモリを含む標準的なワークステーションの構成であり、ストレージ2を備えている。また、手術支援装置1には、ディスプレイ3と、マウス4等の入力装置が接続されている。
【0046】
ストレージ2には、三次元形態画像7として、CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置が出力したスライスデータから再構成されたボリュームデータ、MS(Multi Slice)CT装置やコーンビームCT装置が出力したボリュームデータ等が記憶されている。ボリュームデータは、被検体を所定の時間間隔をおいて複数回撮影することにより得られたものであり、ストレージ2には、被検体ごとに、またモダリティごとに、複数の時系列なボリュームデータが記憶されている。
【0047】
また、ストレージ2には、三次元機能画像8として、単一光子放射断層撮影(SPECT: Single Photon Emission Computed Tomography)装置が出力したSPECT画像、MSCT装置等が出力したボリュームデータを解析することにより生成された機能画像8等が記憶されている。
【0048】
また、メモリには、手術支援プログラムと手術支援プログラムが参照するデータ(処理パラメータ等)が記憶されている。手術支援プログラムは、CPUに実行させる処理として、医用画像取得処理、臓器領域抽出処理、異常領域抽出処理、内包体設定処理、部分領域抽出処理、構造物領域抽出処理、支配領域抽出処理、切除領域決定処理および表示制御処理を規定している。そして、CPUがプログラムに従いこれらの処理を実行することで、汎用のワークステーションは、医用画像取得手段11、臓器領域抽出手段12、異常領域抽出手段13、内包体設定手段14、部分領域抽出手段15、構造物領域抽出手段18、支配領域抽出手段19、切除領域決定手段16および表示制御手段17として機能することになる。
【0049】
図1は、手術支援装置の機能ブロック図である。以下、各機能ブロックについて説明する。
【0050】
医用画像取得手段11は、切除すべき患部を含む臓器を表す医用画像を取得する。本実施形態においては、被検体の肝臓を撮影したX線CT画像を処理対象画像として用いる。その被検体に対し複数種類の検査(例えばCT検査とSPECT検査)が行われ、その結果ストレージ2に三次元形態画像7と三次元機能画像8の両方が記憶されていた場合には、2種類の画像がメモリにロードされる。一方、三次元形態画像しか記憶されていない場合には、三次元形態画像のみがロードされる。
【0051】
臓器領域抽出手段12は、取得した医用画像から臓器領域を抽出する。本実施形態では、臓器領域抽出手段12は、三次元形態画像を構成する各ボクセルデータの値について、肝臓の輪郭らしさを表す特徴量を算出し、算出した特徴量を機械学習により予め取得された評価関数に基づいて評価することで、そのボクセルデータが肝臓の輪郭を表すものであるか否かを判断する。この判断を繰り返すことにより、肝臓全体の輪郭を表すボクセルデータが抽出される。本実施形態では、評価関数の取得にアダブーストアルゴリズムを用いている。なお、肝臓領域5の抽出には、臓器の抽出が行えるものであれば種々の周知の方法を用いることができ、他のマシンラーニング法や統計解析法、例えば線形判別法やニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等を用いて行ってもよい。
【0052】
異常領域抽出手段13は、医用画像に含まれる臓器領域から異常陰影等の臓器の異常領域を抽出する。異常領域抽出手段13は、医用画像に含まれる臓器領域から異常陰影等の臓器の異常領域を抽出することができれば周知の種々の方法を適用できる。本実施形態では、3次元形態画像をディスプレイに表示し、ユーザのマウス等による領域の指定を受け付けて、指定された領域を異常領域51として抽出する。
【0053】
異常領域検出に利用できる技術は、臓器に内包される異常を検出する技術であれば周知の種々の技術を適用でき、具体的には、特開2003−225231号、特開2003−271924号、および、久保田等、「ヘリカルCT像を用いた肺がん計算機診断支援システムの評価」、電子情報通信学会、信学技報、pp.41-46、MI2001-41(2001-09)に示す肺がんを検出する技術、脇田等、「びまん性肺疾患の知的CAD」、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究"多次元医用画像の知的診断支援"、第4回シンポジウム論文集、pp. 45-54、2007に示すコンソリデーション、Ground-Glass Opacity(GGO)、Crazy-Paving、蜂巣状陰影、肺気腫陰影、粒状影等のびまん性肺疾患の検出技術、脇田等、「多時相腹部X線CT像の時相間濃度特徴計測に基づく肝臓がん検出」、コンピュータ支援画像診断学会論文誌、Vol.10、No.1、Mar 2007に示す肝臓がん検出技術、「正常構造の理解に基づく知的CAD」、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究"多次元医用画像の知的診断支援"、第4回シンポジウム論文集pp.55-60、2007に示す肝細胞がん、肝のう胞、肝血管種、肝臓領域における出血を検出する技術などを用いることができる。
【0054】
内包体設定手段14は、異常領域51を内包する最小の内包体52を設定する。図2は、本実施形態における内包体52を設定する処理の概要を示す図である。図2に示すように、本実施形態においては、異常領域51を内包する最小の半径を有する外接球を周知の方法により算出し、算出された球体を内包体52として設定する。また、設定した内包体52の中心52aの座標と半径rをメモリに記憶する。
【0055】
本実施形態において、部分領域抽出手段15は、設定された内包体52に外接する回転放物面の内側に属する臓器部分を部分領域54として抽出する。図3は、本実施形態における部分領域54を抽出する処理の概要を示す図である。図3に示すように、本実施形態では内包体52である球体を内包する回転放物面53を算出し、この回転放物面の内側に属する部分を部分領域54として抽出する。
【0056】
また、部分領域抽出手段15は、内包体52である球体を内包する回転放物面53を複数算出し、設定された内包体52に外接する回転放物面の内側に属する領域であって、体積または表面積が最小になる領域を部分領域54として算出する。ここでは、内包体52に外接する複数の回転放物面を下記の式(1)の定数aを変化させることにより複数算出し、それぞれの回転放物面ごとに回転放物面の内側に属する臓器部分の体積を算出する。そして、算出された複数の回転放物面53の内側に属する領域の体積が最小になるものを部分領域54として決定する。また、決定した部分領域54に対応する回転放物面の軸53aや回転放物面と臓器表面との交点のうち回転放物面の内側の点53bなどの回転放物面を特定するデータをメモリに記憶する。なお、球体に外接する回転放物面は以下の式(1)で表される。また、式(1)において、内包体52である球体の中心52aを回転放物面の原点とし、内包体である球の半径をrとし、原点である内包体52の中心52aから臓器表面に向かう方向をy軸正方向とする。
【数1】

【0057】
なお、回転放物面の軸53aは、ユーザのマニュアル操作により入力または修正可能にすることが好ましい。
【0058】
構造物領域抽出手段18は、取得した医用画像Vから臓器を支配する構造物の領域6を抽出する。医用画像Vから抽出された肝臓領域5を対象として、血管領域抽出処理および木構造検出処理を実行する。まず、肝臓領域5内の局所領域ごとに、3×3のヘシアン(Hessian)行列の固有値を算出することにより線状構造の探索を行う。線状構造が含まれる領域では、ヘシアン行列の3つの固有値のうち1つは0に近い値となり、他の2つは相対的に大きな値となる。また、値が0に近い固有値に対応する固有ベクトルは、線状構造の主軸方向を示すものとなる。構造物領域抽出手段18は、この関係を利用して、局所領域ごとに、ヘシアン行列の固有値に基づいて線状構造らしさを判定し、線状構造が識別された局所領域については、その中心点を候補点として検出する。
【0059】
そして、探索により検出された候補点を、所定のアルゴリズムに基づいて連結する。これにより、候補点および候補点同士を連結する血管枝(エッジ)からなる木構造6Aが構築される。検出された複数の候補点の座標情報や、血管枝の方向を示すベクトル情報は、候補点や血管枝の識別子とともにメモリに記憶される。続いて、検出された候補点ごとに、周辺のボクセルの値(CT値)に基づき、血管経路に垂直な断面において、血管の輪郭(血管の外壁)を識別する。形状の識別は、Graph-Cutsに代表される公知のセグメンテーション手法を用いて行う。以上の処理により、抽出された血管領域の特定に必要な情報が生成され、メモリに記憶される。
【0060】
支配領域抽出手段19は、抽出された構造物の領域内の所定の位置から異常領域51を含む臓器部分側に延びる構造物の一部により支配される、異常領域51を含む臓器部分を支配領域56として抽出する。以後、本明細書中では、構造物領域内の所定の位置から患部を含む臓器部分側に延びる構造物の一部を構造物部分と場合により称し、該構造物部分により支配される、臓器の支配領域を「構造物部分に支配される支配領域」と称する。
【0061】
図4は、本実施形態における部分領域54を抽出する処理の概要を示す図である。図4に示すように、支配領域抽出手段19は、まず、抽出された臓器領域5および抽出された構造物領域6に基づいて、構造物に支配される支配領域を決定する。支配領域の決定方法には、本実施形態では、特開2003−033349号公報による肝臓領域内の血管を抽出し、ボロノイ図(Voronoi diagram)を用いて、肝臓領域内の血管以外の領域(肝臓実質等)がどの血管の支配領域に属するかを特定する。なお、支配領域を決定できる方法であれば、他の種々の周知の方法を用いることができる。
【0062】
そして、支配領域抽出手段19は、切除すべき患部を含む臓器の部分を支配する構造物の一部を設定する。かかる設定された構造物部分領域55は、周知の種々の方法によって設定してよく、本実施形態では、ディスプレイに構造物を表示し、マウス等の入力装置によりユーザのマニュアル操作による血管上の位置の指定を受付け、指定された指定位置55aから患部を含む臓器側に延びる領域を構造物部分領域55として設定する。なお、構造物部分領域の設定は、特開2001−283191号のような周知の技術によって自動的に設定してもよい。
【0063】
そして、支配領域抽出手段19は、決定した構造物部分に支配される支配領域に基づいて、構造物部分領域55に支配される支配領域56を決定する。
【0064】
切除領域決定手段16は、異常領域51内部に存在する所定の点から臓器領域の表面までの距離が所定のしきい値以下である場合は、部分領域を切除領域として優先的に決定し、異常領域51の中心と臓器領域の表面領域との距離が所定のしきい値より大きい場合は、支配領域を切除領域として優先的に決定する切除領域決定条件に基づいて切除領域を決定する。図5は、本実施形態における部分領域を抽出する処理の概要を示す図である。図5のC1は、異常領域51の中心から臓器領域の表面までの距離Lが所定のしきい値以下である場合を示している。かかる場合には、図5のC1に示すように、切除領域決定手段16は、切除領域決定条件に基づいて部分領域54を切除領域として決定する。また、図5のC2は、異常領域51の中心から臓器領域の表面までの距離Lが所定のしきい値より大きい場合を示している。かかる場合には、図5のC2に示すように、切除領域決定手段16は、切除領域決定条件に基づいて支配領域56を切除領域として決定する。
【0065】
なお、ここでは、距離Lの算出のために、内包体52の中心52aを異常領域51内部に存在する所定の点として用い、内包体52の中心52aと回転放物面53の軸と臓器表面との交点53bとの距離を距離Lとしている。距離Lは、切除すべき異常領域の、(切除する側からの)臓器表面からの深さを表す距離であれば、どのように距離Lを設定してもよい。また、所定のしきい値は、医師等によって適宜設定可能である。また、異常領域51内部に存在する所定の点は、異常領域内の代表的な位置にある点であればいかなる点でもよく、異常領域51内部に存在するものであれば任意に設定できる。例えば、異常領域51内部に存在する所定の点として、異常領域の中心を用いることができる。また、「異常領域51内部に存在する所定の点と臓器表面との距離」を、内包体52の中心52aと回転放物面53の軸と臓器表面との交点53bとの距離Lと内包体の半径rとを加算した距離としてもよい。かかる場合には、異常領域51内部に存在する所定の点と臓器表面との距離が、異常領域を切除する際の臓器領域からの切除すべき深さを概ね表すものとなるため、切除すべき深さに基づいて適切に部分領域を抽出することができる。
【0066】
表示制御手段17は、設定した切除領域を識別可能にディスプレイ3に表示させる。本実施形態では、切除領域を半透明とするような所定の透明度を設定し、非対象領域からマージン領域を除く領域を不透明な色彩を付して表示する。また、上記各手段によって設定または抽出された異常領域51、内包体52、部分領域54、支配領域56についても、例えば色分け表示するなど、識別可能にディスプレイ3に表示する。
【0067】
図6は、本実施形態の手術支援処理の流れを説明するフローチャートである。図6に従って、本実施形態による手術支援処理を以下に説明する。
【0068】
まず、医用画像取得手段11は、選択メニューにおいて本実施形態による手術支援機能が選択されたことを検出すると、被検体のIDの一覧を表示する。手術支援装置1は、ユーザによる選択操作を検出すると、選択された被検体に関連する画像ファイルをメモリにロードする(S01)。
【0069】
次いで、臓器領域抽出手段12は、三次元形態画像である医用画像Vをメモリにロードすると、まず、その医用画像Vを対象に、肝臓領域5を抽出する(S02)。そして、抽出された肝臓領域5は、表示制御手段17により、ディスプレイ3に表示される。
【0070】
次に、異常領域抽出手段13は、肝臓領域5から異常領域51を抽出する(S03)。本実施形態では、選択メニューユーザが異常領域入力モードの選択操作を行い、表示された画像上の肝臓領域に含まれる異常領域51を入力部4で指定する。異常領域抽出手段13は、かかるユーザの入力部4の操作を検出して、検出された領域を異常領域51として抽出する。
【0071】
次いで、内包体設定手段14は、異常領域51を内包する最小の内包体を設定する(S04)。本実施形態では、図3に示すように、異常領域51を内包する最小の半径を有する球体52を設定し、かかる球体の中心52aと半径rをメモリに保存する。
【0072】
そして、部分領域抽出手段15は、記憶された球体の中心52aと半径rに基づいて、式(1)により、設定された内包体52に外接する複数の回転放物面53を算出し(S05)、複数の回転放物面ごとに楕円放物面内に存在する肝臓の部分を算出し、このうち最小の体積となる肝臓の部分を部分領域54として抽出する(S06)。
【0073】
一方、構造物領域抽出手段18は、取得した医用画像Vから臓器を支配する構造物の領域6を抽出する(S07)。本実施形態では、肝臓を支配する血管領域6が抽出される。そして、支配領域抽出手段19は、抽出された血管領域6の血管枝からなる木構造を構築する(S08)。なお、手術支援装置1は、S02からS05からなる医用画像Vの臓器領域抽出処理と部分領域抽出処理を実行中に、S07からS09からなる支配領域抽出処理を、並列に実行してもよい。
【0074】
次に、支配領域抽出手段19は、抽出された肝臓領域5と抽出された血管領域6に基づいて血管領域6を構成する各血管枝によって支配される支配領域をそれぞれ抽出する(S09)。
【0075】
そして、切除領域決定手段16は、異常領域51の中心から臓器領域の表面までの距離Lが所定のしきい値以下である場合は、部分領域54を切除領域として優先的に決定し、異常領域51から臓器領域の表面領域との距離Lが所定のしきい値より大きい場合は、支配領域56を優先的に切除領域として決定する切除領域決定条件に基づいて切除領域を決定する(S10)。
【0076】
切除領域決定手段16は、その後、決定した切除領域をメモリおよびストレージ2に記憶することを含め、表示装置に対する出力(モニタ表示)、プリンタ装置への出力(プリントアウト)、データ記録装置に対する出力(メディアへの記録)等、各出力を行う。
【0077】
そして、表示制御手段17は、図5に示すように、切除領域をディスプレイ3に識別可能に表示する(S11)。図5のC1の例では、部分領域54が切除領域として決定されているため、識別表示される。図5のC2の例では、支配領域56が切除領域として決定されているため、識別表示される。また、図5では、切除領域、内包体52、部分領域54、支配領域56、肝臓5のうち切除領域でない領域である、非切除領域をそれぞれ異なる色彩を付すとともに、切除領域、内包体52、部分領域54、支配領域56を半透明に、非切除領域を不透明に表示している。
【0078】
上記実施形態によれば、所定の切除領域決定条件に基づいて部分領域と支配領域のうちより適切な方を切除領域として決定できる。これにより、医師や放射線技師は、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【0079】
また、本実施形態による切除領域決定条件は、異常領域に存在する所定の点から表面領域の距離に基づいて、部分領域と支配領域のうちより適切な方を切除領域として決定するものである。ここで、臓器表面からの臓器の切除すべき深さが深い場合には、部分領域を切除した場合に表面積が大きくなるとともに、部分領域に含まれる臓器部分が複数の血管等の構造物に支配される影響が大きくなると考えられる。また、臓器表面などの患部が臓器内で血管などの臓器を支配する構造物が比較的少なく、かつ、比較的離れた位置にある場合には、臓器を支配する構造物の影響が比較的小さいと考えられる。このため、臓器表面からの臓器の切除すべき深さが所定値より大きい場合には、支配領域を切除領域として決定することが好ましく、臓器表面からの臓器の切除すべき深さが所定値以下である場合には、臓器を支配する構造物の影響が比較的小さいため部分領域を切除領域として決定することが好ましい。よって、本実施形態によれば、異常領域に存在する所定の点から表面領域の距離に基づいて、部分領域と支配領域のうちより適切な方を切除領域として決定できる。このため、医師や放射線技師は、(切除を行う側からの)臓器表面からの臓器の切除すべき深さに基づいて、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【0080】
また、本実施形態において、部分領域抽出手段15が、設定された内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する領域であって、体積が最小になる領域を部分領域として算出するため、部分領域が切除領域として決定された場合、より小さい体積または切除すべき境界面を有する切除領域を切除領域として決定できる。これにより、医師や放射線技師は、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。また、設定された内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する領域を複数算出し、そのうち、内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する領域と臓器の他の領域との境界の表面積が最小になるものを部分領域として算出した場合も同じ効果が得られる。
【0081】
また、本発明で特徴的な点として、異常領域の大きさと位置のみに基づいて、異常領域を内包する内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する領域を抽出している。そして、楕円放物面または円錐面の内側に属する領域を複数算出して、このうち表面積または体積が最小となるものを部分領域として抽出している。このことにより、異常領域の大きさと位置のみに基づいて表面積または体積が最小となるものを切除すべき部分領域として抽出できる。このように、異常領域の大きさと位置のみに基づいて異常領域を内包する内包体を設定し、該内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する領域を部分領域として抽出するため、特許文献1のように血管に当接する位置を部分領域の境界とする場合よりも、切除すべき部分領域の表面積または体積を小さくできる可能性が高い。また、部分領域決定条件は、楕円放物面または円錐面の内側に属する領域のうち、血管などの構造物を含むものについては、部分領域として抽出しないように、優先度を低く設定するように重み付けをすることが好ましい。かかる場合、特許文献1のように血管等の構造物を含まない領域を部分領域として抽出できるとともに、特許文献1のように血管に当接する位置を部分領域の境界とする場合よりも、切除すべき部分領域の表面積または体積を小さくできる可能性が高い。
【0082】
また、本実施形態によれば、決定した切除領域を識別可能に表示装置に表示させる表示制御手段17をさらに備えるため、切除すべき臓器の領域を容易に捉えることができる。また、設定した切除領域を医師に提示して、切除領域の設定が適切であるか否かの判断を容易にし、医師等による適当な切除領域の決定を支援する。
【0083】
以下、本実施形態の変形例について説明する。以下の各変形例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を加えることができ、さらに、それぞれ任意に組み合わせることができる。
【0084】
また、本実施形態の変形例として切除領域決定条件は、切除領域を適切に決定しうる条件を規定するものであれば、任意の条件を設定でき、また複数の任意の条件の組合せを設定してもよい。ここで、切除領域は、手術による患者負担および手術時間を低減できるように適切に決定されることが好ましい。例えば、切除領域の切除される境界の面積ができるだけ小さいように決定されることが好ましく、患者の健康な臓器をできるだけ多く残せるよう切除領域の体積ができるだけ小さいように決定されることが好ましく、血管などの臓器を支配する構造物の支配による影響を適切に評価して決定されることが好ましい。このため、例えば、切除領域決定条件が、部分領域と支配領域の体積または表面積が小さい方を優先的に重み付けして切除領域を決定するものであってもよい。また、異常領域51の体積や内包体52の半径が大きい場合など、異常領域51または内包体52の大きさが大きい場合には、臓器表面からの切除すべき深さが深くなると予想される。このため、切除領域決定条件は、常領域51または内包体52の大きさが大きい場合に支配領域を優先的に重み付けして切除領域を決定するものであってもよい。かかる場合には、部分領域と支配領域の体積または切除すべき境界面の小さい方を優先的に切除領域として決定でき、より小さい切除すべき境界面を有する切除領域を決定できる。これにより、手術の患者負担の軽減や手術時間の短縮化に適した、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【0085】
また、本実施形態の変形例として切除領域決定条件は、図5のC2のように、部分領域が構造物を内包する場合、支配領域を優先的に重み付けして切除領域を決定してもよい。かかる場合には、構造物を含む部分領域より構造物に支配される支配領域を優先的に切除領域として決定でき、意図せず構造物を切除してしまうことを抑制できる。これにより、適切な切除領域を自動的に設定することができ、医師や放射線技師は、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【0086】
また、図5のC2のように抽出された部分領域54内に構造物の部分55Aがある場合に、楕円放物面や円錐面の軸53aの傾きを変化させて部分領域を再度抽出するようにしてもよい。意図せず構造物を切除してしまうことを抑制できる。
【0087】
図7は、本実施形態の手術支援装置1の変形例の概略図である。図5のC2のように抽出された部分領域内に構造物55Aがある場合に、手術支援装置1は、図7に示すように、警告する警告手段20をさらに備えることが好ましい。警告手段20は、表示制御手段17に警告メッセージを画面上に表示させることにより警告を行うことが考えられる。なお、警告を外部に出力する方法は、上記の方法の他、警告音や音声を出力する方法であってもよいし、警告メッセージの重畳表示と警告音等の出力の両方を行ってもよい。また、警告手段20が、構造物の一部55Aを表す木構造の指標を点滅させるとともに構造物の一部55Aを表す木構造の指標の色を識別可能な色に変化させるよう表示制御手段17に指示するようにしてもよい。
【0088】
上記の場合、例えば、内包体設定手段14は、決定した部分領域54に含まれる構造物部分の一部55Aを検出する。そして、既出の部分領域抽出処理、構造物領域抽出処理によりすでに抽出された部分領域54および血管領域6に基づいて、内包体設定手段14は、部分領域54に含まれる血管領域6の一部55Aを検出する。例えば、図5のC2に示す部分領域54のように、部分領域54に血管領域の一部55Aが含まれている場合、表示制御手段17が、この血管領域の一部を表す指標をディスプレイ3に識別可能に表示する。具体的には、部分領域54に属する血管領域の一部55Aの色を識別可能な色に変化させる。
【0089】
上記の場合、決定した切除領域によって、意図せず構造物領域6が切除されることを医師に提示して、切除領域の設定が適切であるか否かの判断を容易にし、医師等による適当な切除領域の決定を支援する。
【0090】
また、本実施形態における内包体設定処理の変形例として、内包体設定手段14は、必要に応じて内包体52に外接する円錐面または楕円放物面所定にマージン領域Mを付加して部分領域54を抽出してもよい。図8は、本実施形態の部分領域決定処理の変形例を説明する図である。図8に示すように、例えば、内包体52に外接する円錐面または楕円放物面53にマージン領域Mを付加した楕円放物面53Mに基づいて、楕円放物面53Mに属する臓器の領域を部分領域54とすることが考えられる。なお、マージン領域とは、実際に切除したい所望の領域を切除する際に、領域に少し余裕を持たせて、所望の領域に付加する若干の余分の領域を意味する。なお、マージン領域は、切除すべき腫瘍の種類、術者となる医師ごとに異なる。
【0091】
また、表示された切除領域、異常領域51、内包体52、部分領域54、支配領域56および切除後の肝臓の残余部分となる非切除領域の各体積のうち、任意の組合せで体積の表示を行ってもよい。また、非切除領域が肝臓全体の1/3となるときに警告を提示してもよい。一般に、切除後の肝臓の残余部分を肝臓全体の1/3以上にすることが好ましいため、切除領域の体積を適切な範囲で設定する目安を提示でき、ユーザの適切な切除領域の設定を支援できる。
【0092】
図9は、本実施形態の内包体設定処理の変形例を示す図である。図9に示すように、異常領域抽出手段13が複数の異常領域51を抽出可能なものであり、内包体設定手段14が、抽出された複数の異常領域51のうちのいずれかの複数の異常領域51が所定の距離内に位置する場合に、所定の距離内に位置する複数の異常領域51の全てを内包する1つの最小の内包体を設定してもよい。図9に示すように、複数の異常領域の全てを内包する最小の球体を算出し、算出された最小の球体の半径が所定の値以下であれば、算出された球体を最小の内包体として算出することが考えられる。
【0093】
上記のように、内包体設定手段14が、抽出された複数の異常領域51のうちのいずれかの複数の異常領域51が所定の距離内に位置する場合に、所定の距離内に位置する複数の異常領域51の全てを内包する1つの最小の内包体を設定するものである場合には、この場合、個々に異常領域51に対して切除領域を決定するよりも、切除すべき境界面を最小となるように部分領域を算出するため、部分領域が切除領域として決定された場合、より小さい切除すべき境界面を有する切除領域を決定できる。これにより、手術の患者負担の軽減や手術時間の短縮化に適した、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【0094】
なお、図5に示すように、部分領域抽出手段15による部分領域抽出処理の変形例として、例えば、設定された内包体52に外接する楕円放物面53の内側に属する臓器部分を部分領域として抽出してもよく、設定された内包体52に外接する円錐面53Aの内側に属する臓器部分を部分領域として抽出してもよく、設定された内包体52に外接する楕円放物面53の内側に属する臓器部分と円錐面53Aの内側に属する臓器部分をそれぞれ算出し、算出された臓器部分のいずれかを部分領域として抽出してもよい。
【0095】
上記のように、設定された内包体52に外接する楕円放物面53の内側に属する臓器部分と円錐面53Aの内側に属する臓器部分をそれぞれ算出し、算出された臓器部分のいずれかを部分領域として抽出する場合、部分領域抽出手段15は、設定された内包体52に外接する楕円放物面53または円錐面53Aの内側に属する領域であって、体積または表面積が最小になる領域を部分領域54として算出してもよい。内包体52に外接する複数の楕円放物面53および円錐面53Aを周知の方法により算出し、それぞれの楕円放物面53または円錐面53Aごとに楕円放物面53または円錐面53Aの内側に属する臓器部分の体積(または回転放物面の内側に属する臓器部分の回転放物面との境界面の面積)を算出する。そして、算出された楕円放物面53または円錐面53Aの内側に属する臓器部分の体積が最小になる臓器部分を部分領域54として決定することが考えられる。かかる場合には、円錐面53Aに基づいて決定した部分領域と楕円放物面53に基づいて決定した部分領域のうち、より臓器部分の体積(または回転放物面の内側に属する臓器部分の回転放物面との境界面の面積)の小さい方を部分領域54として決定することができる。
【0096】
図10は、本実施例の支配領域抽出処理の変形例を説明する図である。また、本実施例の支配領域決定処理の変形例として、例えば、本出願人の特願2010−180143号に記載された方法のように、医用画像取得手段11が、臓器の各位置における機能レベルを表した機能画像をさらに取得するものであり、支配領域決定手段が、医用画像における臓器の各部分と構造物領域内の所定の位置から異常領域51を含む臓器部分側に延びる構造物の部分との、最短経路上の各位置における機能レベルを重み付けした距離を用いて支配領域を決定するものであってもよい。
【0097】
本出願人の特願2010−180143号に記載された方法によれば、医用画像取得手段11は、三次元形態画像7と三次元機能画像8の両方を取得し、支配領域抽出手段は、まず、三次元形態画像7と三次元機能画像8との間で位置合わせ処理を実行する。以下、肝臓を例に説明する。公知の剛体または非剛体レジストレーションを用いて、三次元形態画像7と三次元機能画像8との間で、肝臓領域の位置合わせを行い、それらの画像間での各画素の移動方向・移動量を求め、三次元機能画像8で抽出された肝臓領域の座標値をその移動方向・移動量を用いて変換する。これにより、それらの画像が、同一座標値において、それぞれ肝臓領域の同一位置における情報を表すものとすることができる。
【0098】
続いて、支配領域抽出手段19は、血管により支配される領域(支配領域)を決定する。この際に、肝臓領域内の血管以外の領域(肝臓実質)中の各点が、その点からの最短経路上の各位置における機能レベルを重み付けした距離が最も小さくなる血管に支配されていると判定することによって、肝臓内部に存在する各血管により支配される肝臓の支配領域を求める。
【0099】
以下、図10を参照して、支配領域抽出手段19により、隣接する2本の血管A、Bの支配領域の境界を決定する方法について具体的に説明する。ここでは、理解を容易にするため、2本の血管A、Bが平行する同一径の血管である場合を例示している。この場合、血管AとBの主軸方向に垂直方向の各経路an〜bn(n=1、2、3、・・・)において、血管A、Bの支配領域の境界となる点cnを、次の式(2)により求める。ここで、αは最短経路上の各位置における機能レベルである。この処理により求められた複数の境界点は血管A、Bの支配領域の境界線Cを表すものとなる。
【数2】

【0100】
図10では、領域61の各位置における機能レベルαを1、領域62での機能レベルαが1/3、領域63での機能レベルαを2とし、その経路上の各位置における機能レベルの分布が異なる3つの経路an〜bn(n=1、2、3)において決定した境界点cnの具体例を示す。図10に示すように、支配領域の幅(血管の中心線からその支配領域の境界までの距離)は、その近傍における機能レベルの分布に依存する。すなわち、その近傍において機能レベルαが低い部分が有するところでは大きくなり、その近傍において機能レベルαが高い部分が有するところでは小さくなる。
【0101】
上記処理により支配領域の境界線が定まることにより、同図に示すとおり、臓器内部に存在する構造物により支配される支配領域が決定される。ここで得られた処理結果はメモリに保存される。
【0102】
上記の場合、臓器の機能レベルに基づいて支配される支配領域を適切に設定できるため、支配領域を切除領域として決定した場合、より適切な切除領域を自動的に設定することができ、医師や放射線技師は、実際切除すべき臓器の領域を容易に設定できる。
【0103】
また、上記各実施形態の手術支援装置1において、臓器領域抽出手段12は、抽出した臓器領域を表示装置の画面に表示し、その画面に対して行われたユーザの操作を検出し、検出された操作に基づいて臓器領域を更新することが好ましい。構造物領域抽出手段18は、抽出した構造物領域を表示装置の画面に表示し、その画面に対して行われたユーザの操作を検出し、検出された操作に基づいて抽出した構造物領域を修正することが好ましい。また、部分領域抽出手段15も、抽出した部分領域を表示装置の画面に表示し、その画面に対して行われたユーザの操作を検出し、検出された操作に基づいて抽出した部分領域を修正することが好ましい。また、支配領域抽出手段19も、抽出した支配領域を表示装置の画面に表示し、その画面に対して行われたユーザの操作を検出し、検出された操作に基づいて抽出した支配領域を修正することが好ましい。また、切除領域決定手段16は、決定した切除領域を表示装置の画面に表示し、その画面に対して行われたユーザの操作を検出し、検出された操作に基づいて切除領域を更新することが好ましい。また、臓器領域、構造物領域、部分領域または支配領域の修正が行われたときには、切除領域決定手段16は、修正された臓器領域または構造物領域に基づいて、切除領域および非切除領域を決定することが好ましい。三次元形態画像の画質が悪く、コンピュータでは正確な抽出あるいは推定ができないこともあるからである。
【0104】
また、上記各実施形態では、手術支援装置1は、一台のコンピュータに各プログラムを組み込んだものであったが、複数台のコンピュータに各プログラムを分散して組み込むことにより、手術支援装置1と同等の機能を実現する手術支援システムを構築してもよい。
【0105】
また、上記各実施形態において、手術支援装置1は、表示出力のほか、プリント出力、データ出力(CD−R、DVDなどのメディアへの記録もしくはネットワークを介した転送)を行う手段を備えるものとしてもよい。すなわち、本発明において、指標値の出力形態は表示出力に限定されない。
【0106】
また、上記各実施形態は、いずれも臓器が肝臓で、主要分枝が門脈の場合の処理を例示したものであるが、本発明は肝臓の手術支援に限らず、肺等他の臓器の手術支援にも応用することができる。
【0107】
なお、本実施形態に記載された装置を構造物領域抽出部18、支配領域抽出手段19を備えない装置とした場合、切除領域決定手段16は、部分領域抽出手段15により抽出された部分領域を支配領域として決定する。
【0108】
このように、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0109】
1 手術支援装置、 2 ストレージ、 3 ディスプレイ、 4 入力装置
5 臓器、 6 構造物、
11 医用画像取得手段
12 臓器領域抽出手段
13 異常領域抽出手段
14 内包体設定手段
15 部分領域抽出手段
16 切除領域決定手段
17 表示制御手段
18 構造物領域抽出手段
19 支配領域抽出手段
20 警告手段
51 異常領域
52 内包体
53 楕円放物面
53a 楕円放物面の軸
53b 交点
54 部分領域
55 構造物部分領域
55a 所定の点
56 支配領域
r 内包体の半径
L 異常領域の内部に存在する点から臓器表面までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器において、切除すべき異常領域を含む切除領域を決定する手術支援装置であって、
前記臓器を表す医用画像を取得する医用画像取得手段と、
取得した前記医用画像から前記臓器の領域を抽出する臓器領域抽出手段と、
抽出した前記臓器領域から前記異常領域を抽出する異常領域抽出手段と、
抽出された前記異常領域を内包する最小の内包体を設定する内包体設定手段と、
設定された前記内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する臓器部分を部分領域として抽出する部分領域抽出手段と、
取得した前記医用画像から前記臓器を支配する構造物の領域を抽出する構造物領域抽出手段と、
前記抽出された構造物の領域内の所定の位置から前記異常領域を含む臓器部分側に延びる前記構造物の一部により支配される、前記異常領域を含む臓器部分を支配領域として抽出する支配領域抽出手段と、
前記部分領域抽出手段に抽出された部分領域と前記支配領域抽出手段に抽出された支配領域のいずれかを所定の切除領域決定条件に基づいて前記切除領域として決定する切除領域決定手段とを備えたことを特徴とする手術支援装置。
【請求項2】
前記切除領域決定条件は、前記異常領域に存在する所定の点から前記臓器領域の表面までの距離が所定のしきい値以下である場合は、前記部分領域を優先的に重み付けして前記切除領域を決定し、前記異常領域から前記臓器領域の表面領域との距離が所定のしきい値より大きい場合は、前記支配領域を優先的に重み付けして前記切除領域を決定するものであることを特徴とする請求項1記載の手術支援装置。
【請求項3】
前記切除領域決定条件は、前記部分領域と前記支配領域の体積または表面積が小さい方を優先的に重み付けして前記切除領域を決定するものであることを特徴とする請求項1または2項記載の手術支援装置。
【請求項4】
前記切除領域決定条件は、前記部分領域が前記構造物を内包する場合、前記支配領域を優先的に重み付けして前記切除領域を決定するものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の手術支援装置。
【請求項5】
前記部分領域抽出手段は、設定された前記内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する領域であって、体積または表面積が最小になる領域を前記部分領域として算出するものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の手術支援装置。
【請求項6】
前記異常領域抽出手段が複数の異常領域を抽出可能なものであり、
前記内包体設定手段が、抽出された複数の前記異常領域のうちのいずれかの複数の異常領域が所定の距離内に位置する場合に、前記所定の距離内に位置する前記複数の異常領域の全てを内包する1つの最小の内包体を設定するものであることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の手術支援装置。
【請求項7】
前記抽出された部分領域内に前記構造物が有る場合に警告する警告手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の手術支援装置。
【請求項8】
前記医用画像取得手段は、前記臓器の各位置における機能レベルを表した機能画像をさらに取得するものであり、
前記支配領域決定手段は、前記医用画像における前記臓器の各部分と前記前記構造物領域内の所定の位置から前記異常領域を含む臓器部分側に延びる前記構造物の部分との、最短経路上の各位置における機能レベルを重み付けした距離を用いて前記支配領域を決定するものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の手術支援装置。
【請求項9】
前記臓器が肝臓であり、前記構造物が血管であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の手術支援装置。
【請求項10】
前記臓器が肺であり、前記構造物が気管支であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の手術支援装置。
【請求項11】
臓器において、切除すべき異常領域を含む切除領域を決定する手術支援方法であって、
前記臓器を表す医用画像を取得し、
取得した前記医用画像から前記臓器の領域を抽出し、
抽出した前記臓器領域から前記異常領域を抽出し、
抽出された前記異常領域を内包する最小の内包体を設定し、
設定された前記内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する臓器部分を部分領域として抽出し、
取得した前記医用画像から前記臓器を支配する構造物の領域を抽出し、
前記抽出された構造物の領域内の所定の位置から前記異常領域を含む臓器部分側に延びる前記構造物の一部により支配される、前記異常領域を含む臓器部分を支配領域として抽出し、
前記部分領域抽出手段に抽出された部分領域と前記支配領域抽出手段に抽出された支配領域のいずれかを所定の切除領域決定条件に基づいて前記切除領域として決定することを特徴とする手術支援方法。
【請求項12】
臓器において、切除すべき異常領域を含む切除領域を決定する手術支援プログラムであって、
コンピュータを、
前記臓器を表す医用画像を取得する医用画像取得手段と、
取得した前記医用画像から前記臓器の領域を抽出する臓器領域抽出手段と、
抽出した前記臓器領域から前記異常領域を抽出する異常領域抽出手段と、
抽出された前記異常領域を内包する最小の内包体を設定する内包体設定手段と、
設定された前記内包体に外接する楕円放物面または円錐面の内側に属する臓器部分を部分領域として抽出する部分領域抽出手段と、
取得した前記医用画像から前記臓器を支配する構造物の領域を抽出する構造物領域抽出手段と、
前記抽出された構造物の領域内の所定の位置から前記異常領域を含む臓器部分側に延びる前記構造物の一部により支配される、前記異常領域を含む臓器部分を支配領域として抽出する支配領域抽出手段と、
前記部分領域抽出手段に抽出された部分領域と前記支配領域抽出手段に抽出された支配領域のいずれかを所定の切除領域決定条件に基づいて前記切除領域として決定する切除領域決定手段として機能させることを特徴とする手術支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−165910(P2012−165910A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29774(P2011−29774)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】