説明

把持機

【課題】形状の異なる多品種のワークを把持可能である汎用性の高い把持機を提供することを目的とする。
【解決手段】アクチュエータにより指部を開閉してワークを把持する把持機である汎用ハンド50であって、前記アクチュエータは、当該アクチュエータ自体を前記指部の開閉方向に揺動自在にフローティング支持するフローティング機構を有する。また、3つの前記アクチュエータである電動チャック8、16、24を備え、そのうち2つの電動チャック16、24は、それぞれ一対の指部を有するとともに各一対の指部の開閉方向が平行になるように配置され、残る1つの電動チャック8は、前記2つの電動チャック16、24が有する前記各一対の指部の開閉方向に対して直交する方向に、前記2つの電動チャック16、24を開閉することで、前記2つの電動チャック16、24が有する前記各一対の指部を前記直交する方向に開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大きさ、形状等が異なるワークを把持できる把持機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械部品等のワークを搬送する際に、ワークを把持する手段としてロボットハンドが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基部に固定された歯車と、この歯車と同軸上に揺動可能に取り付けられたリンクと、このリンクを揺動させる駆動装置からなるロボットハンドが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、比較的簡単な構成で、把持機構の構成を変更することなく、異種形状のワークを確実にしかも適正な姿勢で把持することができる把持装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−5392号公報
【特許文献2】特開平8−39473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際の製造現場で機械部品等を把持する場合を考えると、特許文献1に記載されたロボットハンドでは、1)指自体の位置が一定の配置しか取れないため、部品箱等に対応した任意の指配置が取れず、把持できない部品がある。2)リンク機構を採用しているため、アクチュエータ数も多く、機構や制御が複雑であり高価なものとなる。3)ハンド自体の位置が固定であるため、部品自体の位置ズレを許容できない。4)ハンドによって把持できる部品の大きさが所定大きさ以上に規定されるため、ハンドの規格よりも小さな部品を把持できない等の課題がある。
【0007】
さらに、特許文献2に記載された把持装置においても、1)円周方向への可動範囲が小さいため、任意の指配置が取れず、把持できない部品がある。2)各指に中心方向と円周方向に対応する2つのアクチュエータを有するため、制御が複雑であり高価なものとなり、保全性も悪い。3)中心方向へ各指を可動させて把持を行う方式であるため、指からはみ出るような細長い部品を安定して把持することが難しい等の課題がある。
【0008】
このように、従来のロボットハンドは、任意の指配置が取れないことにより、大きさ、形状等が異なるワークを把持する場合は、1つのハンドで対応することができない。そのため、大きさ、形状等が異なるワークを把持する場合、ワークの大きさ、形状等に合わせたロボットハンドに付け替える必要があり、多品種のワークなどを取扱う際には汎用性に欠けるものであった。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、形状の異なる多品種のワークを把持可能である汎用性の高い把持機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、
アクチュエータにより指部を開閉してワークを把持する把持機であって、
前記アクチュエータは、前記指部の開閉方向に前記アクチュエータ自体を摺動自在にフローティング支持するフローティング機構を有するものである。
【0012】
請求項2においては、
3つの前記アクチュエータを備え、
そのうち2つの前記アクチュエータは、それぞれ一対の指部を有するとともに各一対の指部の開閉方向が互いに平行になるように配置され、
残る1つの前記アクチュエータは、前記2つのアクチュエータが有する前記各一対の指部の開閉方向に対して直交する方向に、前記2つのアクチュエータを開閉することで、前記2つのアクチュエータが有する前記各一対の指部を前記直交する方向に開閉するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、形状の異なる多品種のワークを把持可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る汎用ハンドの全体構成を模式的に示す斜視図。
【図2】チャック動作の組合せによる指動作を示す説明図であり、(a)は電動チャック単体のチャック動作(指動作)を示す図、(b)は3つの電動チャックを組合せた汎用ハンドを示す図、(c)は3つの電動チャックを組合せた汎用ハンドにおける指動作を示す図。
【図3】フローティング機構を示す説明図であり、(a)はフローティング機構としてLMガイドを設けた電動チャックを示す図、(b)はLMガイドにより電動チャックがスライドした状態を示す図。
【図4】芯ズレした部品を電動チャックにより把持する動作を示す説明図であり、(a)は部品が電動チャックの中心からずれて載置されている状態を示す図、(b)は指を閉動作している図、(c)は一方の指に部品が当接した際に電動チャックがスライドしながら部品を把持することを示す図。
【図5】芯ズレ(横ズレ)した部品を汎用ハンドが有する4本の指により把持する動作を汎用ハンド上方から見た説明図であり、(a)は中心から横ズレした状態の部品を4本の指で把持する動作を示す図、(b)は一側の指が部品に当接した状態を示す図、(c)は部品を4本の指で把持した状態を示す図。
【図6】芯ズレ(縦ズレ)した部品を汎用ハンドが有する4本の指により把持する動作を汎用ハンド上方から見た説明図であり、(a)は指中心から縦ズレした状態の部品を2本の指で把持する動作を示す図、(b)は一方の指が部品に当接した状態を示す図、(c)は部品を2本の指で把持した状態を示す図。
【図7】汎用ハンドが様々な形状の部品に対応して把持可能であることを示す説明図。
【図8】汎用ハンドによる部品の把持動作を説明するための説明図。
【図9】本実施形態に係る汎用ハンドの具体的な適用例を示す模式図。
【図10】本実施形態に係る汎用ハンドの具体的な適用例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
先ず、本発明の実施形態に係る把持機である汎用ハンドの構成について図を用いて説明する。本実施形態に係る汎用ハンドは、多種類及び異なる形状のワーク(把持対象物)に対応可能な高い汎用性を有したハンドである。汎用ハンドは、例えば、工作機械等が有するワーク搬送装置や産業用ロボット等のロボットの手先に取り付けて使用可能である。
【0016】
汎用ハンド50は、アクチュエータにより指部を開閉してワークである部品7を把持する把持機であり、アクチュエータとして3つの電動チャックを備え、それぞれの電動チャックにはフローティング機構を有する。
【0017】
具体的には、汎用ハンド50は、図1に示すように、チャック本体の長手方向がX軸方向に沿って配置される1軸用電動チャック8と、チャック本体の長手方向がX軸方向に直交するY軸方向に沿って配置される2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24と、からなる3つの電動チャックを主に備える。そのうち2つの電動チャックの2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24は、それぞれ一対の指部である2軸用指18・18、3軸用指28・28を有するとともに2軸用指18・18、3軸用指28・28の開閉方向が互いに平行になるように配置され、残る1つの電動チャックである1軸用電動チャック8は、前記2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24が有する前記各一対の指部である2軸用指18・18、3軸用指28・28の開閉方向に対して直交する方向に、2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24自体を開閉することで、当該2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24のそれぞれが有する2軸用指18・18、3軸用指28・28を前記直交する方向に開閉することができる。
【0018】
次に、前記汎用ハンド50に適用されるアクチュエータである3つの電動チャック8、16、24の各構成について説明する。
汎用ハンド50が有する3つの電動チャック8、16、24は、一対のチャック基部(把持開閉部)を所定方向(本実施形態においては各電動チャック8、16、24の長手方向)に開閉するアクチュエータであり、それぞれ略同様の構成を有するものである。各電動チャック8、16、24は、当該各電動チャック8、16、24本体下部にそれぞれ配置され所定方向に開閉可能である一対のチャック基部5・5、15・15、25・25と、当該各一対のチャック基部5・5、15・15、25・25を所定方向に開閉するための駆動源である図示しないモータ(ステッピングモータやサーボモータ等)と、当該モータの回転駆動力を前記チャック基部5・5、15・15、25・25の直線方向の開閉動作に変換する図示しない駆動力変換機構と、当該駆動力変換機構と前記モータとを収納する筐体8a、16a、24aとから構成されている。
【0019】
また、3つの電動チャック8、16、24は、3つの電動チャック8、16、24を制御するための図示しない制御手段に接続されている。制御手段は、3つの電動チャック8、16、24が有する図示しない各モータをそれぞれ駆動制御して、3つの電動チャック8、16、24が有する各チャック基部5・5、15・15、25・25を所定の軸方向に開閉動作が可能である。
なお、本実施形態においては、前記各アクチュエータとして、モータ等の電動手段により一対のチャック部を直線方向に開閉可能な電動チャックを適用した例を説明するが、特に限定するものではない。例えば、前記各アクチュエータとして、空気圧等を利用したエア駆動手段により一対のチャック部を直線方向に開閉可能な空気圧駆動チャックを適用する場合であっても、本発明の効果を得ることができる。
【0020】
2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24が有するチャック基部15・15、25・25は、各筐体16a、24aの一側面部(本実施形態では、下面部)にそれぞれ配置されている。当該チャック基部15・15、25・25には、それぞれ一対からなる下方へ突出した棒状の指部である2軸用指18・18及び3軸用指28・28がそれぞれ取り付けられている。また、2軸用指18・18及び3軸用指28・28の周囲には、ウレタン等の弾性体が取り付けられている。また、2軸用指18・18及び3軸用指28・28は、図2(a)に示すように、制御手段によりそれぞれが有する駆動源である前記モータを駆動することでY軸方向に沿って開閉可能であるとともに、Y軸方向における規制された範囲内において任意の位置(例えば、2軸用指18・18及び3軸用指28・28を開状態もしくは閉状態とする等の任意の位置)に2軸用指18・18及び3軸用指28・28をそれぞれ独立して移動制御することが可能である。
【0021】
一方、1軸用電動チャック8が有するチャック基部5・5は、筐体8aの一側面部(本実施形態では、下面部)に配置されている。当該チャック基部5・5は、図1に示すように、後述する2軸用LMガイド19及び3軸用LMガイド29を介して2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24のそれぞれの上部(本実施形態では、当該上部における各2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24の長手方向中途部)に取り付けられる。チャック基部5・5は、制御手段により1軸用電動チャック8が有する駆動源である前記モータを駆動することで2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24の各本体をX軸方向に沿って開閉可能であるとともにX軸方向における規制された範囲内において任意の位置に移動制御可能である。すなわち、2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24が有する2軸用指18・18及び3軸用指28・28は、制御手段により1軸用電動チャック8を駆動することで、X軸方向に沿って開閉可能であるとともにX軸方向における規制された範囲内において任意の位置(例えば、2軸用指18・18及び3軸用指28・28を開状態もしくは閉状態とする等の任意の位置)に2軸用指18・18及び3軸用指28・28をそれぞれ独立して移動制御が可能である。
【0022】
以上の如く、1軸用電動チャック8、2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24は、それぞれを図2(b)のように組合せて連結し、構成することで、2軸用指18・18及び3軸用指28・28に図2(c)に白抜き矢印で示す方向に指動作を行わせることが可能となる。
【0023】
3つの電動チャック8、16、24が有するフローティング機構は、2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24が有する2軸用指18・18及び3軸用指28・28の開閉方向に各電動チャック8、16、24自体をそれぞれ摺動自在にフローティング支持する機構である。ここで、フローティング機構としては、例えば、本実施形態のようにLMガイド(LMガイドは登録商標。Linear Motion Guide:直線運動案内)を適用することが可能である。
【0024】
1軸用電動チャック8が有するフローティング機構は、2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24が有する2軸用指18・18及び3軸用指28・28の所定の開閉方向(本実施形態では、X軸方向)に前記1軸用電動チャック8自体を摺動自在にフローティング支持する1軸用LMガイド9である。当該1軸用LMガイド9は、直線ガイド部となる棒状の1軸ガイド部9aと、当該1軸ガイド部9aを挿通して1軸ガイド部9aに沿って(X軸に沿って)スライド自在であるとともにスライド範囲が規制される1軸フローティング支持部9bと、1軸ガイド部9aの一端を保持しロボットの手先に取り付けるロボット取付用ブラケット(図示せず)を上部に取り付け可能である正面視L字状のガイド保持部材9cと、から構成される。また、1軸フローティング支持部9bの下部、及びガイド保持部材9cの下端は、1軸用電動チャック8本体の一側面部(本実施形態では、上面部)に固定されている。
これにより、1軸用電動チャック8は、1軸用電動チャック8本体上部に取り付けられた1軸フローティング支持部9bが1軸ガイド部9aに沿ってフリーでスライド可能となり、2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24が有する2軸用指18・18及び3軸用指28・28の所定の開閉方向(本実施形態では、X軸方向)に摺動自在にフローティング支持される。
【0025】
また、2軸用電動チャック16が有するフローティング機構は、2軸用電動チャック16が有する2軸用指18・18の所定の開閉方向(本実施形態では、Y軸方向)に前記2軸用電動チャック16自体を摺動自在にフローティング支持する2軸用LMガイド19である。当該2軸用LMガイド19は、直線ガイド部となる棒状の2軸ガイド部19aと、当該2軸ガイド部19aを挿通して2軸ガイド部19aに沿って(Y軸に沿って)スライド自在であるとともにスライド範囲が規制される2軸フローティング支持部19bと、2軸ガイド部19aの一端を保持し1軸用電動チャック8の一方のチャック部5(本実施形態では、左側のチャック部5)を固定するための側面視L字状のガイド保持部材19cと、から構成される。また、2軸フローティング支持部19bの下部、及びガイド保持部材19cの下端は、2軸用電動チャック16本体の一側面部(本実施形態では、上面部)に固定されている。また、ガイド保持部材19cの上端面には、1軸用電動チャック8の一方のチャック基部5(図1においては左側のチャック基部5)が固定される。
これにより、2軸用電動チャック16は、当該2軸用電動チャック16本体上部に取り付けられた2軸フローティング支持部19bが2軸ガイド部19aに沿ってフリーでスライド可能となり(図3(a)(b)参照)、2軸用電動チャック16が有する2軸用指18・18の所定の開閉方向(本実施形態では、Y軸方向)に摺動自在にフローティング支持される。
【0026】
また、3軸用電動チャック24が有するフローティング機構は、3軸用電動チャック24が有する3軸用指28・28の所定の開閉方向(本実施形態では、Y軸方向)に前記3軸用電動チャック24自体を摺動自在にフローティング支持する3軸用LMガイド29である。当該3軸用LMガイド29は、直線ガイド部となる棒状の3軸ガイド部29aと、当該3軸ガイド部29aを挿通して3軸ガイド部29aに沿って(X軸に沿って)スライド自在であるとともにスライド範囲が規制される3軸フローティング支持部29bと、3軸ガイド部29aの一端を保持し1軸用電動チャック8の一方のチャック部5(本実施形態では、右側のチャック部5)を固定するための側面L字状のガイド保持部材29cと、から構成される。また、3軸フローティング支持部29bの下部、及びガイド保持部材29cの下端は、3軸用電動チャック24本体の一側面部(本実施形態では、上面部)に固定されている。また、ガイド保持部材29cの上端面には、1軸用電動チャック8の一方のチャック基部5(図1においては右側のチャック基部5)が固定される。
これにより、3軸用電動チャック24は、当該3軸用電動チャック24本体上部に取り付けられた3軸フローティング支持部29bが3軸ガイド部29aに沿ってフリーでスライド可能となり(図3(a)(b)参照)、3軸用電動チャック24が有する3軸用指28・28の所定の開閉方向(本実施形態では、Y軸方向)に摺動自在にフローティング支持される。
【0027】
つまり、フローティング機構である1軸用LMガイド9、2軸用LMガイド19及び3軸用LMガイド29は、1軸用電動チャック8、2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24のそれぞれをフローティング支持することにより、1軸用電動チャック8をX軸方向に沿って、かつ2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24をY軸方向に沿ってそれぞれ摺動可能にするための機構である。
なお、本実施形態においては、フローティング機構としてLMガイドを使用した例について説明しているが、特に限定するものではなく、1軸用電動チャック8、2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24をフローティング支持して、1軸用電動チャック8をX軸方向に沿って、かつ2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24をY軸方向に沿ってそれぞれ摺動可能に構成できればよい。
【0028】
また、汎用ハンド50は、1軸用LMガイド9上部にロボットの手先に取り付けるためのロボット取付用ブラケット(図示せず)を備えることで、当該ロボット取付用ブラケットを介してロボットの手先に取り付けられ、ロボットを駆動制御することにより汎用ハンド50を3次元方向(上下左右方向)における所定の位置に移動可能となる。
【0029】
また、1軸用電動チャック8、2軸用電動チャック16及び3軸用電動チャック24は、各電動チャック8、16、24が有するLMガイド9、19、29において、2軸用指18・18及び3軸用指28・28を全開にした際の原点出しをするための原点出しストッパ(図示せず)と、1軸フローティング支持部9b、2軸フローティング支持部19b及び3軸フローティング支持部29bを所定の位置で止めるためのブレーキユニット(図示せず)をそれぞれ備える。
【0030】
次に、以上のように構成された本実施形態に係る汎用ハンド50の動作について説明する。具体的には、上記汎用ハンド50をロボットの手先(ハンド)として適用し、仕切り板で囲われた部品箱中の1つの区画に収納されたワーク(本実施形態においては部品)を把持する動作について説明する。
【0031】
先ず、1軸フローティング支持部9b、2軸フローティング支持部19b及び3軸フローティング支持部29bを停止していたブレーキユニットを開放し、各フローティング支持部9b、19b、29bをそれぞれフリーに動ける状態にする。そして、3つの電動チャック8、16、24の各チャック部5・5,15・15、25・25を開き、4本の指である2軸用指18・18及び3軸用指28・28を全開にする。2軸用指18・18及び3軸用指28・28の開き端まで来ると、各フローティング支持部9b、19b、29bは原点出しストッパに接触し、各フローティング支持部9b、19b、29bが所定の中心位置に補正され、4本の指である2軸用指18・18及び3軸用指28・28の原点出しが完了する(図8(1)参照)。
なお、電動チャック(電動グリッパ)が、インクリメンタルタイプではなくアブソルートタイプの場合、原点出しは不要である。
【0032】
電動チャック8、16、24の各チャック基部5・5、15・15、25・25を閉じ、各部品の大きさ・納入形態に合わせて位置制御することにより2軸用指18・18及び3軸用指28・28を部品7上方に来るように配置し、挿入姿勢を取る(図8(2)参照)。
【0033】
汎用ハンド50本体を下降させ、部品7と仕切り板の隙間に2軸用指18・18及び3軸用指28・28を挿入する(図8(3)参照)。
【0034】
ブレーキユニットを開放し、各フローティング支持部9b、19b、29bをフリーに動ける状態にして、電動チャック8、16、24の各チャック基部5・5、15・15、25・25を閉じることで、2軸用指18・18及び3軸用指28・28により部品7を把持する(図8(4)参照)。このとき、制御手段は、電動チャック8、16、24の把持力制御を行い、部品7に接触した指と当該指と連結された電動チャックからフローティングし始め、最終的に全ての2軸用指18・18及び3軸用指28・28が部品形状にならい部品7を把持する。部品7把持中は把持力制御により、把持力は一定に保持される。
【0035】
ロボットは、汎用ハンド50本体を部品移載位置まで移動させ、2軸用指18・18及び3軸用指28・28を開いて部品7を載置する(図8(5)参照)。
【0036】
続いて、ブレーキユニットを開放し、全ての2軸用指18・18及び3軸用指28・28を全開にして(図8(6)参照)、各フローティング支持部9b、19b、29bの原点出しをする(図8(1)参照)。このようにして、図8で示す(1)〜(6)の動作を繰り返して、連続的に部品7の把持及び移載を行うことができる。
【0037】
以上により、汎用ハンド50は、2軸用指18・18及び3軸用指28・28をx−y軸における任意の位置に配置できる(図2参照)。
【0038】
また、汎用ハンド50は、図3(a)(b)にて示したフローティング機構のフローティング作用により、ワーク(部品)の位置ズレを許容して把持することができる。すなわち、例えば、図4では、芯ズレした部品7を電動チャック16(24)により把持する動作を示している。電動チャック16(24)の中心からずれて載置されている部品7を把持する場合、指18(28)を矢印方向に閉動作していくと(図4(a))、一方(図4においては左側)の指18(28)が部品7の一端に当接する(図4(b))。このように指18(28)が部品7に当接した際に一方の指18(28)と当該一方の指18(28)と連結された電動チャック16(24)がフローティング機構によりフローティングし始め(スライドし始め)、他方(図4においては右側)の指18(28)が部品7に近接し、最終的に両方の指18(28)が部品7の形状にならい部品7を把持する。また、図6は、図4で示した電動チャック16(24)により把持する動作を、電動チャック16(24)上方から見た状態を示したものであり、芯ズレ(縦ズレ:図6においては、2本の指中心から部品7が下方にずれている)した部品7を電動チャック16(24)が有する2本の指である2軸用指18・18もしくは3軸用指28・28により把持する動作を示している。
【0039】
また、図5では、芯ズレ(横ズレ:図5においては、4本の指中心から右方にずれている)した部品7を電動チャック16・24が有する4本の指である2軸用指18・18及び3軸用指28・28により把持する動作を示している。電動チャック16・24の中心からずれて載置されている部品7を把持する場合、指18・28を白抜き矢印方向に閉動作していくと(図5(a))、一側(図5においては右側)の指28・28が部品7の一端に当接する。このように指28・28が部品7に当接した際に一側の指28・28と当該一側の指28・28を有する電動チャック24と連結された1軸電動チャック8がフローティングし始め(スライドし始め)、他側(図5においては左側)の指18・18が部品7に近接し、最終的に両側の2軸用指18・18及び3軸用指28・28が部品7形状にならい部品7を把持する。
【0040】
以上のように本実施形態に係る汎用ハンド50は、部品7を把持することが可能であるため、汎用ハンド50の部品7までの移動は、ラフティーチでよく、汎用ハンド50の位置を補正するための位置補正用ビジョン(位置補正用カメラ)をロボットの手先に設けることも不要である。
また、3つの電動チャック8、16、24とフローティング機構であるLMガイド9、19、29とを組合せることにより、部品を把持する際には上述したようにフローティング機構のフローティング作用が働き、部品形状に汎用ハンド50の2軸用指18・18及び3軸用指28・28がならうことができる。このため、図7に示すようなあらゆる形状の部品を把持することが可能となる。つまり、汎用ハンド50によれば、形状の異なる多品種のワークを把持可能である。
また、LMガイド9、19、29を各電動チャック8、16、24の上部に設ける構成としたことで、各電動チャック8、16、24に直接モーメントがかからない。
また、ワークが当接する部分である2軸用指18・18及び3軸用指28・28の先端にウレタン等の弾性体を取り付けることで、ワーク把持力が向上するとともに、部品7への傷付きを回避できる。
【0041】
図9は、本実施形態に係る汎用ハンド50の具体的な適用例を示したものである。図9に示すロボットは、汎用ハンド50をロボットの手先に取り付け、当該ロボットを制御する図示しない制御手段が手先を動作させて汎用ハンド50を所定の位置に移動させることが可能であるとともに、制御手段が汎用ハンド50のアクチュエータである電動チャック8、16、24のそれぞれを駆動して、前述したように4本の指部である2軸用指18・18及び3軸用指28・28を開閉可能である。また、ロボットは、部品箱の搬送手段終点部と部品の移載部との間に位置するように配置されている。このように構成されたロボットは、汎用ハンド50を用いて部品箱から部品を把持して取り出し、規定の位置に移載することができる。
また、製造現場において、図9に示すように、仕切り板により区分けされた区画に製造に用いる部品を収納可能な部品箱がよく用いられる。図9では、当該部品箱に部品を収納した状態を示しているが、仕切り板の中に収納された各部品の位置は、不揃いで、不安定である。このように、部品箱等に収められた位置決めがラフな部品を、汎用ハンド50により部品箱から把持して取り出し、規定の位置に移載可能である。本実施形態に係る汎用ハンド50によれば、仕切り板の中で位置が不安定な部品であっても、汎用ハンド50が位置ズレを許容して把持することができる。
【0042】
図10は、本実施形態に係る汎用ハンド50の具体的な適用例をさらに示したものである。図10に示すロボットは、図9で示したロボットと同様に、汎用ハンド50をロボットの手先に取り付け、当該ロボットを制御する図示しない制御手段が手先を動作させて汎用ハンド50を所定の位置に移動させることが可能であるとともに、制御手段が汎用ハンド50のアクチュエータである電動チャック8、16、24のそれぞれを駆動して、前述したように4本の指部である2軸用指18・18及び3軸用指28・28を開閉可能である。また、ロボットは、複数の部品箱の搬送手段終点部に対して部品搬送方向と直交する方向に沿って配置された走行軸上を移動可能である。このように構成されたロボットは、汎用ハンド50を用いて部品箱から部品を把持して取り出し、規定の位置に移載するものである。図10では、複数の多種形状の部品を部品箱に収納した状態を模式的に示しているが、各部品箱の中に収納された各部品の大きさや形状は不揃いである。このように、多種形状部品を、汎用ハンド50により部品箱から把持して取り出し、規定の位置に移載可能である。本実施形態に係る汎用ハンド50によれば、各部品の大きさや形状が不揃いであっても、汎用ハンド50が各部品の大きさや形状に合わせて把持するため、ツールチェンジせずに把持できる。
【0043】
上記の如く、本発明の把持機は、部品・移載の装置に適用可能であり、フローティング機構を有した電動チャック等のチャック機構を備えることにより、形状の異なる多種類の部品を、ツールチェンジ無しに把持することを可能にするものである。
【符号の説明】
【0044】
7 部品
8 1軸用電動チャック
9 1軸用LMガイド
16 2軸用電動チャック
19 2軸用LMガイド
18 2軸用指
24 3軸用電動チャック
28 3軸用指
29 3軸用LMガイド
50 汎用ハンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータにより指部を開閉してワークを把持する把持機であって、
前記アクチュエータは、前記指部の開閉方向に前記アクチュエータ自体を摺動自在にフローティング支持するフローティング機構を有することを特徴とする把持機。
【請求項2】
3つの前記アクチュエータを備え、
そのうち2つの前記アクチュエータは、それぞれ一対の指部を有するとともに各一対の指部の開閉方向が互いに平行になるように配置され、
残る1つの前記アクチュエータは、前記2つのアクチュエータが有する前記各一対の指部の開閉方向に対して直交する方向に、前記2つのアクチュエータを開閉することで、前記2つのアクチュエータが有する前記各一対の指部を前記直交する方向に開閉することを特徴とする請求項1に記載の把持機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−139765(P2012−139765A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293565(P2010−293565)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】