説明

投射光学系及びこれを用いた投射型表示装置

【課題】 DMDからの画像をスクリーンに拡大投射する、明るく、レンズ口径が小さく、コストが安く、小型の投射表示装置に最適な投射光学系を提供する。
【解決手段】 拡大側から順に、一つのミラー面の第1の光学系、拡大側から順に全体で負または正の屈折力の第1レンズ群及び全体で正の屈折力の第2レンズ群の第2の光学系から構成され、拡大側から順に、前記第1レンズ群は、全体で負の屈折力を有する第1aレンズ群及び全体で正の屈折力を有する第1bレンズ群で、前記第2レンズ群は、全体で負または正の屈折力を有する第2aレンズ群及び全体で正の屈折力を有する第2bレンズ群で、前記第1aレンズ群は、負、負、正、負のレンズを配し、前記第1bレンズ群は一枚または二枚の正レンズを配し、前記第2aレンズ群は、負、一又は二枚の正及び負のレンズを配し、前記第2bレンズ群は、一枚の正レンズか、正又は負レンズを配した後に正レンズを配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にDMDなどの光の反射方向を変えて画像を形成するライトバルブからの画像をスクリーンその他に拡大投射する投射光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ライトバルブとしてDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)等を用いた投射型表示装置が広く一般に使われるようになったが、学校をはじめとする教育関連用途を中心に、より短距離での投射能力を有する投射型表示装置が要望されている。例えば、80インチの投射サイズで使用する際に、スクリーン或いは壁面から3m程の離れた距離から投射する場合では、スクリーンの傍らで、説明する人にとっては頻繁に投射光学系からの光線を見て眩しい思いをしなければならないが、同じ80インチの投射サイズでも1m程度の短い距離から投射した場合には、殆ど投射光学系からの光線を見てしまうことが無くなるからである。しかしながら、このことは投射光学系に関して言えば、画角を大きくするということに他ならない。
【0003】
DMD等をライトバルブとして使用する場合、効率の良い明るさの投射型表示装置を実現しようとした場合、各々の画素から投射光学系への光線束の角度についての制約がある。一般的には主光線で表現されることが多いが、主光線が各々の画素から垂直に射出するのが理想的な光線束となる。この光線束は投射レンズから射出するときには、投射光学系によって、その画角に応じた角度を付与されるため、画角が大きい投射光学系ほど光線束が投射光学系を通過する際に角度の変化を大きくしなければならないことがわかる。したがって、歪曲収差などの軸外収差が飛躍的に増加し、この補正のためにレンズの枚数が増加する、レンズの枚数が増加することで、光軸上での光学系の厚さが増加することになり、このことは、拡大側に配置されるレンズ径を大きくすることにもなり、また、非球面などの屈折面を使用しなければならなくなるなどの要因も加わって、投射レンズのコストを大幅に上げてしまうこととなる。また、加えて投射光学系では、一般的に光軸を水平に保持しているときに、光軸より上に投射画面が映し出される仕組みが、採用されている。これは、投射光学系の光軸とDMDの中心をずらして配置することにより、実現することができ、所謂シフト光学系と呼ばれるものである。この、シフト光学系を採用すると、投射光学系に要求されるイメージサークルの大きさは、その半径が光軸と、DMDの光軸から一番離れて配置される角までの距離となるため、通常のカメラのような光軸と撮像素子の中心を一致させる光学系に比べて大きくならざるを得なくなり、コスト増加の一要因となっている。
【0004】
このように、画角の大きい投射光学系においては、特に全部がレンズで構成されているような光学系では、最も拡大側に配置され、殆どの場合拡大側に凸形状をした負レンズの屈折面に非球面形状を採用している。こうして増大した歪曲収差などの軸外収差を効率よく補正することが目的であるが、その目的に対しては、有効径の大きさが必要であるにも関わらず、最も補正能力の大きいガラス非球面レンズでは、コストが嵩んで採用することができず、樹脂材料による非球面レンズにて構成しているのが実情である。ところが樹脂材料によるレンズには、温度や湿度の変化による光学特性の変化が大きく、その採用にあたってはレンズに与えるパワーを大きく出来ないなどのデメリットがある。したがって、仕様にもよるが、一枚の非球面レンズでは良好な収差補正能力を確保することが出来ず、複数枚の非球面レンズを使用しているものも少なくない。
【0005】
一方で、投射距離を短くするために反射面を利用するものがある。リア型の投射型表示装置として採用されているものが多く、例えば特開2006−235516号公報(特許文献1)や、特開2008−250296号公報(特許文献2)に開示されているような投射光学系では、レンズ系の拡大側に非球面の反射面(凹面鏡)を配設し、加えてレンズ系と反射面の間の空間で、中間像を結像することにより、反射面を一面で構成することができコンパクトな光学系を可能としている。中間像を結像することはリア型のように、装置内部である場合には問題ないものの、フロント型に採用した場合には結像する部分が外部になるようなことが想定されるような用途としては、危険であるため避けなければならない。特開2010−217887号公報(特許文献3)に開示されている投射光学系は、フロント型に利用されるもので、レンズ系の拡大側に、非球面の反射面(凸面鏡)と、少なくとも一枚の大きな有効径を有する樹脂材料による非球面レンズとを配設することにより、中間像を結ばずに投射像を得る方法である。特開2004−226997号公報(特許文献4)に開示されている投射光学系は、本発明と同様な中間像を結像することなくスクリーンに投射する構成の光学系が開示されているが、透過型のライトバルブ用の光学系であり、バックフォーカスが短い等の問題があり、本発明のように反射型のライトバルブであるDMD用としては使用が出来ないか、或いは出来たとしても非球面レンズを使用していて、高価になってしまうとか、大型になってしまうとかの短所を持った製品となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−235516号公報
【特許文献2】特開2008−250296号公報
【特許文献3】特開2010−217887号公報
【特許文献4】特開2004−226997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、投射距離を短くするために反射面を利用するものがある。リア型の投射型表示装置として採用されているものが多く、例えば特開2006−235516号公報(特許文献1)や、特開2008−250296号公報(特許文献2)に開示されているような投射光学系では、レンズ系の拡大側に非球面の反射面(凹面鏡)を配設し、加えてレンズ系と反射面の間の空間で、中間像を結像することにより、反射面を一面で構成することができコンパクトな光学系を可能としている。中間像を結像することはリア型のように、装置内部である場合には問題ないものの、フロント型に採用した場合には結像する部分が外部になるようなことが想定されるような用途としては、危険であるため避けなければならない。特開2010−217887号公報(特許文献3)に開示されている投射光学系は、フロント型に利用されるもので、レンズ系の拡大側に、非球面の反射面(凸面鏡)と、少なくとも一枚の大きな有効径を有する樹脂材料による非球面レンズとを配設することにより、中間像を結ばずに投射像を得る方法である。特開2004−226997号公報(特許文献4)に開示されている投射光学系は、本発明と同様な中間像を結像することなくスクリーンに投射する構成の光学系が開示されているが、透過型のライトバルブ用の光学系であり、バックフォーカスが短い等の問題があり、本発明のように反射型のライトバルブであるDMD用としては使用が出来ないか、或いは出来たとしても非球面レンズを使用していて、高価になってしまうとか、大型になってしまうとかの短所を持った製品となってしまう。
【0008】
しかしながら、特許文献1の提案では、この発明の実施例によれば非球面レンズを2枚使用しており、コスト面や生産性を考慮に入れると、製品を提供する上で全てに有効な設計手段にはならない。また特許文献4の提案では、これは撮影用のズームレンズとして広角化、高変倍化、明るい光学系が要望されているからであるが、ズームカムを使用前提として設計された同技術分野のズームレンズに勝るものとはなっていない。光学系とそれを保持し、フォーカスや変倍動作を実現する鏡枠機構を含めた範囲でコストを考えた場合、機構部品として高価なズームカムの必要のない光学補正型ズームレンズの採用は有利である。しかしながら、薄型投射装置への採用は、特許文献2の例では画角及びF値が達成できず、特許文献3の例では画角が達成できず、特許文献4の例ではF値が達成できない。また、前記各例を通じて、より高解像でなければ投射レンズとして採用できない。
【0009】
本発明は、前述した事情に鑑み、最も拡大側の光学要素として非球面の反射鏡を配置することによって、DMDなどの光の反射方向を変えて画像を形成するライトバルブの特性に適しており、ライトバルブからの画像をスクリーン上或いはその他の壁面等に拡大投射する用途において明るく広角で結像性能が高いコンパクトな単焦点レンズを非球面レンズを使用することなく実現し、コンパクトで明るく、小さな会議室等の限られたスペースでも大きな画面を投射可能で高画質でありながら安価な投射型表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における投射光学系は、拡大側から順に、第1の光学系及び第2の光学系から構成され、前記第1の光学系は一つのミラー面で構成され、前記第2の光学系は拡大側から順に全体で負または正の屈折力を有する第1レンズ群及び全体で正の屈折力を有する第2レンズ群から構成され、前記第1の光学系を構成する前記ミラー面は回転対称の非球面形状であり、前記第2の光学系を構成するレンズは、球面形状のレンズのみで構成され、前記ミラー面の回転対称の軸と前記第2の光学系の光軸とは一致しており、前記第1レンズ群のパワーに関して下記条件式(1)を満足し、前記第1レンズ群の最も拡大側の面の有効径の大きさが下記条件式(2)を満足し、前記ミラー面と前記第1レンズ群の最も拡大側の面までの光軸上の距離に関して下記条件式(3)を満足し、前記第1レンズ群の最も拡大側の面から像面までの光軸上の距離に関して下記条件式(4)を満足し、前記第2レンズ群の最も縮小側の面から像面までの光軸上の距離に関して下記条件式(5)を満足していることを特徴とする。(請求項1)
(1) −0.22 ≦ f/fI ≦ 0.25
(2) 0.97 ≦ hI1/him ≦ 1.20
(3) ML/f ≦ 10
(4) GL/f ≦ 15
(5) 3.0 ≦ b/f
ただし、
f :光学系全系の合成焦点距離
(設計基準距離にある投射面に合焦の状態)
I :第1レンズ群の合成焦点距離
I1 :第1レンズ群の最も拡大側面の有効径の半径
im :イメージサークルの半径
ML :ミラー面から第1レンズ群の最も拡大側の面までの光軸上の距離
GL :第1レンズ群の最も拡大側の面から像面までの光軸上の距離
(ただし、第3レンズ群及び平行平面のカバーガラス部分は空気換算距離)
:第2レンズ群の最も縮小側の面から像面までの光軸上の距離
(ただし、第3レンズ群及び平行平面のカバーガラス部分は空気換算距離)
【0011】
条件式(1)は、最も拡大側に配置される第1レンズ群のパワーに関する条件である。レトロフォーカスの原理からバックフォーカスを維持しつつ画角を大きくするためにはレンズの拡大側に負パワーを投入するのが良い。従がって、拡大側のレンズ群を負パワーとすることは広角化に有効である。しかしながら本発明の光学系においては周辺光量を確保するために第1レンズ群の縮小側では大きな正パワーを配置することを必要とする。したがって第1レンズ群のパワーはこれら要因のバランスによって決まり、全体としては負または正の弱い群パワーとなる。条件式(1)において上限を超えると、負パワーが不足し、画角を大きくすることが困難となり、逆に下限を超えると周辺光量の確保が出来ない。
条件式(2)は、第1レンズ群の最も拡大側面の有効径とイメージサークル径の大きさの関係に関するものである。条件式(2)は、第1レンズ群の最も拡大側の有効径について小型化に最適な範囲を示したものである。当該有効径が大きくなるとミラーで反射した投影画像を得る有効な光線束を遮ることになってしまい、このため次の条件式(3)に示すミラーと第1レンズ群の最も拡大側の面までの距離を大きくするなどをして対応しなければならず、当該有効径の大きさの変化のみならず、投射装置の大きさに大きな影響を及ぼしてしまう。条件式(2)の下限を超える設計では、周辺の光量が不足することになり、より値が小さくなると仕様に対する画角を維持することが出来なくなる。一方上限を超えると、前述のように小型化が困難となる。
続く条件式(3)は、ミラーと第1レンズ群の最も拡大側の面までの距離の制限を示すものである。ミラーと第1レンズ群の最も拡大側の面までの距離を条件式(3)のように小さい値で実現することは装置全体のコンパクト性を実現する上で重要であり、値が小さい程コンパクト性は良くなるが、前述のように条件式(2)の内容と間接的に連動して決まってしまうことが多い。上限を超えるような使用方法では、光学系が大型化してしまいコンパクトな投射装置を供給することは出来ない。
条件式(4)は、第2の光学系の全長に関する条件であり、すなわち小型化の条件となる。上限を超えると全長が大きくなり、したがってレンズが大口径になり、小型という特徴を損ねてしまう。逆に下限を超えると、諸収差のバランスを取ることが困難となる。条件式(5)は、第2レンズ群の縮小側に設定される空気間隔に関する条件である。いわゆるバックフォーカスに相当する部分であるがライトバルブを照明するための光学系との共用スペースである為、この間隔を確保することが必要となる。従って下限を超えると照明系の光学系を組み込むことが困難となる。
【0012】
また、前記第1レンズ群は、拡大側から順に全体で負の屈折力を有する第1aレンズ群及び全体で正の屈折力を有する第1bレンズ群から構成され、前記第1aレンズ群は、拡大側から順に拡大側に凸のメニスカス形状で負の屈折力を有するレンズ(以下負レンズ)、負レンズ、正の屈折力を有するレンズ(以下正レンズ)及び負レンズを配して構成され、前記第1bレンズ群は一枚または二枚の正レンズを配して構成され、前記第1aレンズ群及び前記第1bレンズ群のパワーに関して下記条件式(6)を満足していることが望ましい。(請求項2)
(6) −4.50 ≦ fIa/fIb ≦ −0.32
ただし、
Ia :第1aレンズ群の合成焦点距離
Ib :第1bレンズ群の合成焦点距離
【0013】
この条件式を満足することにより、前記第1aレンズ群には、光学系全体のパワーバランスを崩すことなく、フォーカス動作に必要な負のパワーを付与することができる。すなわち条件式(9)は、そのパワー比を表したものであり、上限を超えるということはバランス的に第1aレンズ群のパワーが小さくなることであり、フォーカス動作での移動量が大きくなるとともに収差変動も大きくなる。またレンズ系の広角化にも不利となる。逆に上限をこえる場合は広角化には有利であるが、プロジェクター用途としての目標の周辺光量を確保出来ない。
【0014】
また、前記第1レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズののパワーに関して下記条件式(7)を満足し、当該レンズの縮小側面の形状の特徴に関して下記条件式(8)を満足し、最も縮小側に配置されるレンズのパワーに関して下記条件式(9)を満足し、さらに当該レンズのレンズ形状の特徴に関して下記条件式(10)を満足していることが望ましい。(請求項3)
(7) −0.62 ≦ f/fI1 ≦ −0.25
(8) 0.75 ≦ f/rI2 ≦ 0.96
(9) 0.23 ≦ f/fI6 ≦ 0.42
(10) |rI12/rI11|≦ 3.50 (絶対値はrI12 ≦ 0のため)
ただし、
I1 :第1レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズの焦点距離
I2 :第1レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズの縮小側面の曲率半径
I6 :第1レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの焦点距離
I11 :第1レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの拡大側面の曲率半径
I12 :第1レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの縮小側面の曲率半径
【0015】
条件式(7)は、第1レンズ群の最も拡大側に配置されるレンズのパワーに関する条件である。第1レンズ群は、全体としては負又はアフォーカルに近い弱いパワーであるものの拡大側には大きな負パワーのレンズが配置されており、最も拡大側に配置されるレンズも大きな負のパワーを有している。このことは光学系に要求される画角とバックフォーカスに密接に関係しており、本発明の光学系でいえば第1レンズ群の最も拡大側に配置されるレンズの負パワーを増大することは、第2レンズ群とDMD等のライトバルブの構成部品であるカバーガラスCGとの空気間隔を確保した上で要求画角を実現し、かつ小型化に有効であるが、条件式(7)の上限を超えるとレンズの負パワーが強くなり色収差と像面湾曲が発生し、収差の補正が困難になり、下限を超えるとレンズの負パワーが弱くなり第2レンズ群とDMD等のライトバルブの構成部品であるカバーガラスCGとの空気間隔、いわゆるバックフォーカスに相当する部分を長く取ることが困難となる。
条件式(8)は、本光学系の歪曲収差とコマ収差補正のための条件式である。第1レンズ群の最も拡大側に配置されるレンズの縮小側の面形状に関するもので、強いパワーを持たせながら、拡大側の光線束に対して概ね同心的形状とすることで、根本的に収差の発生を抑えた形状としている。したがって上限を超えると、球面収差、コマ収差が補正不足となり、下限を超えると逆に補正過剰になる。
条件式(9)は、第1レンズ群の最も縮小側に配置される正レンズに付与されるパワーの条件に関するものである。拡大側レンズの有口径を小さくしたまま、画角を大きくし、尚且つ周辺光量を確保するためには、画面周辺に対する主光線の方向を大きく屈曲する必要があり、全体として大きな負パワーを有する第1レンズ群でも縮小側については大きな正パワーが必要になる。この役割を担っているのが当該レンズで、条件式(9)の下限を超えるとパワーが小さくなり必要とされる画角を維持したまま周辺光量を確保できない。逆に上限を超えると他のレンズ群とのパワーバランスが崩れるため諸収差が増大してしまう。
続く条件式(10)は、当該レンズのレンズ形状に関するものである。拡大側の強い負のパワーの影響で最後部レンズに入射する光束は強い発散光束であり、これを適度に収束させ、第1レンズ群として収差の発生を少なくするためには条件式(10)で示される制限が必要となる。上限を超えてしまうと当該レンズの拡大側面で過度に球面収差、コマ収差が補正され、良好な性能が得られない。
【0016】
また、前記第2レンズ群は、拡大側から順に全体で負または正の屈折力を有する第2aレンズ群及び全体で正の屈折力を有する第2bレンズ群から構成され、前記第2aレンズ群は、拡大側から順に負レンズ、一枚または二枚の正レンズ及び負レンズを配して構成され、前記第2bレンズ群は、少なくとも一枚の正レンズを配して構成されるか又は、拡大側に正又は負レンズを配した後に正レンズを配して構成され、前記第2aレンズ群及び前記第2bレンズ群のパワーに関して下記条件式(11)を満足していることが望ましい。(請求項4)
(11) −7.36 ≦ fIIa/fIIb ≦ 11.1
ただし、
IIa :第2aレンズ群の合成焦点距離
IIb :第2bレンズ群の合成焦点距離
【0017】
条件式(11)は全体として正の屈折力を有する第2レンズ群における拡大側と縮小側のパワー配分を示している。本発明における投射光学系において第2レンズ群として適したパワーがある一方で、投射レンズとして良好なテレセントリック性を実現するためには縮小側に大きな正のパワーを投入せざるを得ず、その結果第2aレンズ群においては、負または弱い正のパワーを有するレンズ系となるのが良い。したがって、上限を超えると縮小側の正パワーが不足して、テレセントリック性を良好に保つことが出来ず、逆に下限を超えるとレンズ系全体のパワーバランスが悪化し投射性能を良好に収差補正を行うことが難しくなる。
【0018】
また、前記第2レンズ群の有するパワーに関して下記条件式(12)を満足し、前記第2レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズの形状に関して下記条件式(13)を満足していることが望ましい。(請求項5)
(12) 0.20 ≦ f/fII ≦ 0.35
(13) −0.15 ≦ f/rII1 ≦ 0.40
ただし、
II :第2レンズ群の合成焦点距離
II1 :第2レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面の曲率半径
【0019】
条件式(12)は、第2レンズ群に求められる群パワーに関する条件である。第2レンズ群の内拡大側に配置される第2aレンズ群は弱い負のパワーを有しており、縮小側に配置される第2bレンズ群は強い正のパワーを有しており、これらのパワーを合成した結果として第2レンズ群は正のパワーを有している。レンズ系全体としは、画角が広く、バックフォーカスが大きい光学系の特徴としてレトロフォーカス型にならざるを得なく、第2bレンズ群が強い正のパワーを有するのはそのためである。これに対し第2aレンズ群が弱い負のパワーを有するのは、レンズ系の比較的細かな仕様によっての結果である。例えば周辺光量の仕様が緩和されるようなケースでは、第2bレンズ群の正のパワーを減ずることが可能で、その結果として第2aレンズ群が正のパワーを有することで全体のバランスをとる方がより良い結果をもたらすことは考えられる。いずれにせよ第2レンズ群としてのパワー配分は条件式(12)によるのが良い。条件式(12)で上限を超えるとパワー過大となり諸々の収差発生量が大きくなり性能を良好に保つことが出来ない。また下限を超えると仕様によるバックフォーカスが確保出来なくなる。さらに球面収差に着目すると、軸外主光線と光軸との交点に近いため条件式(13)を満足することで第1レンズ群からの略アフォーカルな光束を球面収差などをバランスをとって以降のレンズ群へと伝達することが可能となり、上限を超えると発生する球面収差がアンダー過ぎ、下限を超えるとオーバー過ぎることにより共に球面収差をバランス良く補正することが出来なくなる。
【0020】
また、前記第2aレンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの形状に関して下記条件式(14)を満足し、前記第2aレンズ群を構成する正レンズ及び前記第2aレンズ群を構成する負レンズの分散特性関して下記条件式(15)を満足し、前記第2aレンズ群において最も縮小側に配置されるレンズ及び当該レンズの拡大側隣に配置されるレンズの屈折率の特徴に関して各々下記条件式(16)を満足していることが望ましい。(請求項6)
(14) −1.00 ≦ f/rII5 ≦ −0.75
(15) 15 ≦ vIIaP−vIIaN
(16) 0.26 ≦ nII4−nII4S ≦ 0.40
ただし、
II5 :第2aレンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの拡大側面の曲率半径
IIaP:第2aレンズ群を構成する正レンズのアッベ数の平均値
IIaN:第2aレンズ群を構成する負レンズのアッベ数の平均値
II4 :第2aレンズ群において最も縮小側に配置されるレンズのd線に対する屈折率
II4S:第2aレンズ群において縮小側から二番目に配置されるレンズのd線に対する屈折率
【0021】
第2aレンズ群では、軸外の主光線が光軸と近傍で交わることと、軸上マージナル光線の光線高が高いことで、球面収差及びその色差に関して大きな影響を及ぼす。条件式(14)から条件式(16)に関しては、各々、形状的な条件、分散特性及び屈折率との関係においての制約条件となっている。下限を超えるとオーバーの球面収差を発生し過ぎ、上限を超えるとアンダーな球面収差を発生し過ぎることになり、いずれの場合もレンズ系全体としての球面収差補正を良好に行うことが出来なくなる。条件式(15)は、同様に球面収差の色差を制限するための条件であり、条件式(15)において下限を超えてしまうと、球面収差の色差及び軸上の色収差の良好な補正状態を実現することが出来なくなる。また、球面収差に関しては条件式(14)のみならず条件式(16)を満足することが重要で、貼り合わせ面の局率半径を小さくすることと、この面の前後の硝材の屈折率差を大きくとることは、条件式(14)と同様に、この面での球面収差補正能力を制御するのに重要である。条件式(16)の下限を超える場合には十分な球面収差補正能力を得ることが出来ず、逆に上限を超える場合には、球面収差補正能力はあるものの、他の軸外光線において収差発生を起こしてしまい、全体の性能バランスとして良くないものになってしまう。
【0022】
また、前記第2レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの形状に関して下記条件式(17)を満足していることが望ましい。(請求項7)
(17) −0.65 ≦ f/rII10 ≦ −0.30
ただし、
II10:第2レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの縮小側面の曲率半径
【0023】
条件式(17)は、第2レンズ群において最も縮小側に配置される面の形状に関するものである。当該面は本質的にレンズ系全体に於いても最も縮小側に位置することから軸外光束に関する諸々の特性に関しての影響が大きい。特に焦平面近傍におけるテレセントリック性を良好に保ちつつ、周辺光量を多く確保するためには、曲率半径を適切に選択する必要があり、上限を超えると面パワーとしては小さすぎて、周辺光量を確保することが難しくなる。逆に下限を超えるとテレセントリック性のコントロールが難しくなることと、レンズとしてのパワーも大きくなりがちとなり諸々の収差が悪化することに繋がる。
【0024】
このように本発明に投射光学系を投射型表示装置に搭載することにより高輝度で装置全体を小型化ことが可能となり、またコストを低く維持することにも効果がある。(請求項8)さらには使用時以外、例えば収納時や持ち運び時にはミラー部分を可動とし(図時せず)たたみこむことによって、より携帯に便利なコンパクトな投射型表示装置を提供することが可能となる。(請求項9)
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、DMDなどのライトバルブの特性に適した短距離でも大きな画面を投射でき、結像性能が高くコンパクトでコスト面でも有利な投射光学系を実現することができ、これを用いることで短距離でも大きな画面を投射でき、コンパクトで高画質の投射型表示装置を安価に提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による投射光学系の第1実施例の光学系構成図である。
【図2】第1実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図3】本発明による投射光学系の第2実施例の光学系構成図である。
【図4】第2実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図5】本発明による投射光学系の第3実施例の光学系構成図である。
【図6】第3実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図7】本発明による投射光学系の第4実施例の光学系構成図である。
【図8】第4実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図9】本発明による投射光学系の第5実施例の光学系構成図である。
【図10】第5実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図11】本発明による投射光学系の第6実施例の光学系構成図である。
【図12】第6実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図13】本発明による投射光学系の第7実施例の光学系構成図である。
【図14】第7実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図15】本発明による投射光学系の第8実施例の光学系構成図である。
【図16】第8実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図17】本発明による投射光学系の第9実施例の光学系構成図である。
【図18】第9実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図19】本発明による投射光学系の第10実施例の光学系構成図である。
【図20】第10実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図21】本発明による投射光学系の第11実施例の光学系構成図である。
【図22】第11実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図23】本発明による投射光学系の第12実施例の光学系構成図である。
【図24】第12実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図25】本発明による投射光学系の第13実施例の光学系構成図である。
【図26】第13実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図27】本発明による投射光学系の第14実施例の光学系構成図である。
【図28】第14実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図29】本発明による投射光学系の第15実施例の光学系構成図である。
【図30】第15実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図31】本発明による投射光学系の第16実施例の光学系構成図である。
【図32】第16実施例の投射光学系の諸収差図である。
【図33】本発明による投射光学系の第17実施例の光学系構成図である。
【図34】第17実施例の投射光学系の諸収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、具体的な数値実施例について、本発明を説明する。以下の第1実施例から第15実施例の投射光学系では、拡大側から順に、第1の光学系(各図における光学系名称PG1)及び第2の光学系(光学系名称PG2)から構成され、前記第1の光学系PG1は一つのミラー面(面番号を001)で構成され、前記第2の光学系PG2は拡大側から順に全体で負または正の屈折力を有する第1レンズ群(レンズ群名称LG1)及び全体で正の屈折力を有する第2レンズ群(レンズ群名称LG2)から構成され、前記第1レンズ群LG1は、拡大側から順に全体で負の屈折力を有する第1aレンズ群(レンズ群名称LG1a)及び全体で正の屈折力を有する第1bレンズ群(レンズ群名称LG1b)から構成され、前記第2レンズ群LG2は、拡大側から順に全体で負または正の屈折力を有する第2aレンズ群(レンズ群名称LG2a)及び全体で正の屈折力を有する第2bレンズ群(レンズ群名称LG2b)から構成され、前記第1aレンズ群LG1aは、拡大側から順に拡大側に凸のメニスカス形状の負レンズ(レンズ名称をL11、拡大側面の面番号を101、縮小側面の面番号を102とする)、負レンズ(レンズ名称をL12、拡大側面の面番号を103、縮小側面の面番号を104とする)、正レンズ(レンズ名称をL13、拡大側面の面番号を105、縮小側面の面番号を106とする)及び負レンズ(レンズ名称をL14、拡大側面の面番号を107、縮小側面の面番号を108とする)を配して構成され、前記第1bレンズ群LG1bは一枚または二枚の正レンズ(一枚の場合はレンズ名称をL16、拡大側面の面番号を111、縮小側面の面番号を112とし、二枚の場合は拡大側レンズのレンズ名称をL15、拡大側面の面番号を109(ただし、その拡大側にあるレンズとの接合面である場合には面番号を108)、縮小側面の面番号を110とし、縮小側レンズのレンズ名称をL16、拡大側面の面番号を111、縮小側面の面番号を112とする)を配して構成され、前記第2aレンズ群LG2aは、拡大側から順に負レンズ(レンズ名称をL21、拡大側面の面番号を201、縮小側面の面番号を202とする)、一枚または二枚の正レンズ(一枚の場合はレンズ名称をL22、拡大側面の面番号を接合のため202、縮小側面の面番号を205とし、二枚の場合は拡大側レンズのレンズ名称をL22、拡大側面の面番号を接合のため202、縮小側面の面番号を203とし、縮小側レンズのレンズ名称をL23、拡大側面の面番号を204、縮小側面の面番号を205とする)及び負レンズ(レンズ名称をL24、拡大側面の面番号を接合のため205、縮小側面の面番号を206とする)を配して構成され、前記第2bレンズ群LG2bは、一枚の正レンズ(レンズ名称をL26、拡大側面の面番号を209、縮小側面の面番号を210とする)を配して構成されるか又は、拡大側に正又は負レンズ(レンズ名称をL25、拡大側面の面番号を207、縮小側面の面番号を208とする)を配した後に正レンズ(レンズ名称をL26、拡大側面の面番号を209(ただし、その拡大側にあるレンズとの接合面である場合には面番号を208)、縮小側面の面番号を210とする)を配して構成されており、前記第2レンズ群LG2の縮小側には、大きな空気間隔を設け、その後に照明光学系との関連において第3レンズ群(レンズ群名称LG3)を、正レンズ(レンズ名称をL31、拡大側面の面番号を301、縮小側面の面番号を302とする)にて構成しても良く、続いて前記第3レンズ群LG3の縮小側とライトバルブ面との間には僅かな空気間隔をおいて配置されるDMD等のライトバルブの構成部品であるカバーガラスCG(拡大側面をC01、縮小側面をC02)を配置し構成される。
【0028】
[実施例1]
本発明の投射光学系の第1実施例について数値例を表1に示す。また図1は、そのレンズ構成図、図2はその諸収差図である。
表の上段で、fは投射光学系全系の焦点距離、FnoはFナンバー、2ωは投射光学系の全画角(単位:度)を表し、dは001面と当該面の拡大側にある投射面までの設計基準距離を表し、hI1 は101面における有効径の半径を表し、himはイメージサークルの半径を表すものである。また下段のrは曲率半径、dはレンズ厚またはレンズ間隔、nはd線に対する屈折率、νはd線のアッベ数を示す。諸収差図中の球面収差図におけるCA1、CA2、CA3はそれぞれCA1=550nm、CA2=450nm、CA3=620nmの各波長における収差曲線である。非点収差図におけるSはサジタル、Mはメリディオナルを示している。また、全般に亘り特別に記載のない限り、諸値の計算に使用している波長はCA1=550.0nmであり、長さの単位はmmである。
【0029】
【表1】

【0030】
[実施例2]
本発明の投射光学系の第2実施例について数値例を表2に示す。また図3は、そのレンズ構成図、図4はその諸収差図である。
【0031】
【表2】

【0032】
[実施例3]
本発明の投射光学系の第3実施例について数値例を表3に示す。また図5は、そのレンズ構成図、図6はその諸収差図である。
【0033】
【表3】

【0034】
[実施例4]
本発明の投射光学系の第4実施例について数値例を表4に示す。また図7は、そのレンズ構成図、図8はその諸収差図である。
【0035】
【表4】

【0036】
[実施例5]
本発明の投射光学系の第5実施例について数値例を表5に示す。また図9は、そのレンズ構成図、図10はその諸収差図である。
【0037】
【表5】

【0038】
[実施例6]
本発明の投射光学系の第6実施例について数値例を表6に示す。また図11は、そのレンズ構成図、図12はその諸収差図である。
【0039】
【表6】

【0040】
[実施例7]
本発明の投射光学系の第7実施例について数値例を表7に示す。また図13は、そのレンズ構成図、図14はその諸収差図である。
【0041】
【表7】

【0042】
[実施例8]
本発明の投射光学系の第8実施例について数値例を表8に示す。また図15は、そのレンズ構成図、図16はその諸収差図である。
【0043】
【表8】

【0044】
[実施例9]
本発明の投射光学系の第9実施例について数値例を表9に示す。また図17は、そのレンズ構成図、図18はその諸収差図である。
【0045】
【表9】

【0046】
[実施例10]
本発明の投射光学系の第10実施例について数値例を表10に示す。また図19は、そのレンズ構成図、図20はその諸収差図である。
【0047】
【表10】

【0048】
[実施例11]
本発明の投射光学系の第11実施例について数値例を表11に示す。また図21は、そのレンズ構成図、図22はその諸収差図である。
【0049】
【表11】

【0050】
[実施例12]
本発明の投射光学系の第12実施例について数値例を表12に示す。また図23は、そのレンズ構成図、図24はその諸収差図である。
【0051】
【表12】

【0052】
[実施例13]
本発明の投射光学系の第13実施例について数値例を表13に示す。また図25は、そのレンズ構成図、図26はその諸収差図である。
【0053】
【表13】

【0054】
[実施例14]
本発明の投射光学系の第14実施例について数値例を表14に示す。また図27は、そのレンズ構成図、図28はその諸収差図である。
【0055】
【表14】

【0056】
[実施例15]
本発明の投射光学系の第15実施例について数値例を表15に示す。また図29は、そのレンズ構成図、図30はその諸収差図である。
【0057】
【表15】

【0058】
[実施例16]
本発明の投射光学系の第16実施例について数値例を表16に示す。また図31は、そのレンズ構成図、図32はその諸収差図である。
【0059】
【表16】

【0060】
[実施例17]
本発明の投射光学系の第17実施例について数値例を表17に示す。また図33は、そのレンズ構成図、図34はその諸収差図である。
【0061】
【表17】

【0062】
次に第1実施例から第17実施例に関して条件式(1)から条件式(17)に対応する値を、まとめて表18に示す。
【表18】

【0063】
表18から明らかなように、第1実施例から第17実施例の各実施例に関する数値は条件式(1)から条件式(17)の条件式を満足しているとともに、各実施例における収差図からも明らかなように、各収差とも良好に補正されている。
【0064】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
請求項1記載の発明は、投射光学系において、拡大側から順に、第1の光学系及び第2の光学系から構成され、前記第1の光学系は一つのミラー面で構成され、前記第2の光学系は拡大側から順に全体で負または正の屈折力を有する第1レンズ群及び全体で正の屈折力を有する第2レンズ群から構成され、前記第1の光学系を構成する前記ミラー面は回転対称の非球面形状であり、前記第2の光学系を構成するレンズは、球面形状のレンズのみで構成され、前記ミラー面の回転対称の軸と前記第2の光学系の光軸とは一致しており、前記第1レンズ群のパワーに関して下記条件式(1)を満足し、前記第1レンズ群の最も拡大側の面の有効径の大きさが下記条件式(2)を満足し、前記ミラー面と前記第1レンズ群の最も拡大側の面までの光軸上の距離に関して下記条件式(3)を満足し、前記第1レンズ群の最も拡大側の面から像面までの光軸上の距離に関して下記条件式(4)を満足し、前記第2レンズ群の最も縮小側の面から像面までの光軸上の距離に関して下記条件式(5)を満足していることを特徴とする。
(1) −0.22 ≦ f/fI ≦ 0.25
(2) 0.97 ≦ hI1/him ≦ 1.20
(3) ML/f ≦ 10
(4) GL/f ≦ 15
(5) 3.0 ≦ b/f
ただし、
f :光学系全系の合成焦点距離
(設計基準距離にある投射面に合焦の状態)
I :第1レンズ群の合成焦点距離
I1 :第1レンズ群の最も拡大側面の有効径の半径
im :イメージサークルの半径
ML :ミラー面から第1レンズ群の最も拡大側の面までの光軸上の距離
GL :第1レンズ群の最も拡大側の面から像面までの光軸上の距離
(ただし、第3レンズ群及び平行平面のカバーガラス部分は空気換算距離)
:第2レンズ群の最も縮小側の面から像面までの光軸上の距離
(ただし、第3レンズ群及び平行平面のカバーガラス部分は空気換算距離)
【0065】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の投射光学系において、前記第1レンズ群は、拡大側から順に全体で負の屈折力を有する第1aレンズ群及び全体で正の屈折力を有する第1bレンズ群から構成され、前記第1aレンズ群は、拡大側から順に拡大側に凸のメニスカス形状で負の屈折力を有するレンズ(以下負レンズ)、負レンズ、正の屈折力を有するレンズ(以下正レンズ)及び負レンズを配して構成され、前記第1bレンズ群は一枚または二枚の正レンズを配して構成され、前記第1aレンズ群及び前記第1bレンズ群のパワーに関して下記条件式(6)を満足していることを特徴とする。
(6) −4.50 ≦ fIa/fIb ≦ −0.32
ただし、
Ia :第1aレンズ群の合成焦点距離
Ib :第1bレンズ群の合成焦点距離
【0066】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の投射光学系において、前記第1レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズのパワーに関して下記条件式(7)を満足し、当該レンズの縮小側面の形状の特徴に関して下記条件式(8)を満足し、最も縮小側に配置されるレンズのパワーに関して下記条件式(9)を満足し、さらに当該レンズのレンズ形状の特徴に関して下記条件式(10)を満足していることを特徴とする。
(7) −0.62 ≦ f/fI1 ≦ −0.25
(8) 0.75 ≦ f/rI2 ≦ 0.96
(9) 0.23 ≦ f/fI6 ≦ 0.42
(10) |rI12/rI11|≦ 3.50 (絶対値はrI12 ≦ 0のため)
ただし、
I1 :第1レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズの焦点距離
I2 :第1レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズの縮小側面の曲率半径
I6 :第1レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの焦点距離
I11 :第1レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの拡大側面の曲率半径
I12 :第1レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの縮小側面の曲率半径
【0067】
請求項4記載の発明は、請求項1に記載の投射光学系において、前記第2レンズ群は、拡大側から順に全体で負または正の屈折力を有する第2aレンズ群及び全体で正の屈折力を有する第2bレンズ群から構成され、前記第2aレンズ群は、拡大側から順に負レンズ、一枚または二枚の正レンズ及び負レンズを配して構成され、前記第2bレンズ群は、一枚の正レンズを配して構成されるか又は、拡大側に正又は負レンズを配した後に正レンズを配して構成され、前記第2aレンズ群及び前記第2bレンズ群のパワーに関して下記条件式(11)を満足していることを特徴とする。
(11) −7.36 ≦ fIIa/fIIb ≦ 11.1
ただし、
IIa :第2aレンズ群の合成焦点距離
IIb :第2bレンズ群の合成焦点距離
【0068】
請求項5記載の発明は、請求項1に記載の投射光学系において、前記第2レンズ群の有するパワーに関して下記条件式(12)を満足し、前記第2レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズの形状に関して下記条件式(13)を満足していることを特徴とする。
(12) 0.20 ≦ f/fII ≦ 0.35
(13) −0.15 ≦ f/rII1 ≦ 0.40
ただし、
II :第2レンズ群の合成焦点距離
II1 :第2レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面の曲率半径
【0069】
請求項6記載の発明は、請求項4に記載の投射光学系において、前記第2aレンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの形状に関して下記条件式(14)を満足し、前記第2aレンズ群を構成する正レンズ及び前記第2aレンズ群を構成する負レンズの分散特性関して下記条件式(15)を満足し、前記第2aレンズ群において最も縮小側に配置されるレンズ及び当該レンズの拡大側隣に配置されるレンズの屈折率の特徴に関して各々下記条件式(16)を満足していることを特徴とする。
(14) −1.00 ≦ f/rII5 ≦ −0.75
(15) 15 ≦ vIIaP−vIIaN
(16) 0.26 ≦ nII4−nII4S ≦ 0.40
ただし、
II5 :第2aレンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの拡大側面の曲率半径
IIaP:第2aレンズ群を構成する正レンズのアッベ数の平均値
IIaN:第2aレンズ群を構成する負レンズのアッベ数の平均値
II4 :第2aレンズ群において最も縮小側に配置されるレンズのd線に対する屈折率
II4S:第2aレンズ群において縮小側から二番目に配置されるレンズのd線に対する屈折率
【0070】
請求項7記載の発明は、請求項1に記載の投射光学系において、前記第2レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの形状に関して下記条件式(17)を満足していることを特徴とする。
(17) −0.65 ≦ f/rII10 ≦ −0.30
ただし、
II10:第2レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの縮小側面の曲率半径
【0071】
請求項8記載の発明は、投射型表示装置において、請求項1乃至請求項7の少なくともいずれかの一項に記載される投射光学系を搭載していることを特徴とする。
【0072】
請求項9記載の発明は、請求項8に記載の投射型表示装置において、前記第1の光学系の前記ミラー面の非球面の対称軸と前記第2の光学系の光軸とが使用時以外は一致しないことを特徴とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大側から順に、第1の光学系及び第2の光学系から構成され、前記第1の光学系は一つのミラー面で構成され、前記第2の光学系は拡大側から順に全体で負または正の屈折力を有する第1レンズ群及び全体で正の屈折力を有する第2レンズ群から構成され、前記第1の光学系を構成する前記ミラー面は回転対称の非球面形状であり、前記第2の光学系を構成するレンズは、球面形状のレンズのみで構成され、前記ミラー面の回転対称の軸と前記第2の光学系の光軸とは一致しており、前記第1レンズ群のパワーに関して下記条件式(1)を満足し、前記第1レンズ群の最も拡大側の面の有効径の大きさが下記条件式(2)を満足し、前記ミラー面と前記第1レンズ群の最も拡大側の面までの光軸上の距離に関して下記条件式(3)を満足し、前記第1レンズ群の最も拡大側の面から像面までの光軸上の距離に関して下記条件式(4)を満足し、前記第2レンズ群の最も縮小側の面から像面までの光軸上の距離に関して下記条件式(5)を満足していることを特徴とする投射光学系。
(1) −0.22 ≦ f/fI ≦ 0.25
(2) 0.97 ≦ hI1/him ≦ 1.20
(3) ML/f ≦ 10
(4) GL/f ≦ 15
(5) 3.0 ≦ b/f
ただし、
f :光学系全系の合成焦点距離
(設計基準距離にある投射面に合焦の状態)
I :第1レンズ群の合成焦点距離
I1 :第1レンズ群の最も拡大側面の有効径の半径
im :イメージサークルの半径
ML :ミラー面から第1レンズ群の最も拡大側の面までの光軸上の距離
GL :第1レンズ群の最も拡大側の面から像面までの光軸上の距離
(ただし、第3レンズ群及び平行平面のカバーガラス部分は空気換算距離)
:第2レンズ群の最も縮小側の面から像面までの光軸上の距離
(ただし、第3レンズ群及び平行平面のカバーガラス部分は空気換算距離)
【請求項2】
前記第1レンズ群は、拡大側から順に全体で負の屈折力を有する第1aレンズ群及び全体で正の屈折力を有する第1bレンズ群から構成され、前記第1aレンズ群は、拡大側から順に拡大側に凸のメニスカス形状で負の屈折力を有するレンズ(以下負レンズ)、負レンズ、正の屈折力を有するレンズ(以下正レンズ)及び負レンズを配して構成され、前記第1bレンズ群は一枚または二枚の正レンズを配して構成され、前記第1aレンズ群及び前記第1bレンズ群のパワーに関して下記条件式(6)を満足していることを特徴とする請求項1に記載の投射光学系。
(6) −4.50 ≦ fIa/fIb ≦ −0.32
ただし、
Ia :第1aレンズ群の合成焦点距離
Ib :第1bレンズ群の合成焦点距離
【請求項3】
前記第1レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズのパワーに関して下記条件式(7)を満足し、当該レンズの縮小側面の形状の特徴に関して下記条件式(8)を満足し、最も縮小側に配置されるレンズのパワーに関して下記条件式(9)を満足し、さらに当該レンズのレンズ形状の特徴に関して下記条件式(10)を満足していることを特徴とする請求項1に記載の投射光学系。
(7) −0.62 ≦ f/fI1 ≦ −0.25
(8) 0.75 ≦ f/rI2 ≦ 0.96
(9) 0.23 ≦ f/fI6 ≦ 0.42
(10) |rI12/rI11|≦ 3.50 (絶対値はrI12 ≦ 0のため)
ただし、
I1 :第1レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズの焦点距離
I2 :第1レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズの縮小側面の曲率半径
I6 :第1レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの焦点距離
I11 :第1レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの拡大側面の曲率半径
I12 :第1レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの縮小側面の曲率半径
【請求項4】
前記第2レンズ群は、拡大側から順に全体で負または正の屈折力を有する第2aレンズ群及び全体で正の屈折力を有する第2bレンズ群から構成され、前記第2aレンズ群は、拡大側から順に負レンズ、一枚または二枚の正レンズ及び負レンズを配して構成され、前記第2bレンズ群は、一枚の正レンズを配して構成されるか又は、拡大側に正又は負レンズを配した後に正レンズを配して構成され、前記第2aレンズ群及び前記第2bレンズ群のパワーに関して下記条件式(11)を満足していることを特徴とする請求項1に記載の投射光学系。
(11) −7.36 ≦ fIIa/fIIb ≦ 11.1
ただし、
IIa :第2aレンズ群の合成焦点距離
IIb :第2bレンズ群の合成焦点距離
【請求項5】
前記第2レンズ群の有するパワーに関して下記条件式(12)を満足し、前記第2レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズの形状に関して下記条件式(13)を満足していることを特徴とする請求項1に記載の投射光学系。
(12) 0.20 ≦ f/fII ≦ 0.35
(13) −0.15 ≦ f/rII1 ≦ 0.40
ただし、
II :第2レンズ群の合成焦点距離
II1 :第2レンズ群において最も拡大側に配置されるレンズの拡大側面の曲率半径
【請求項6】
前記第2aレンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの形状に関して下記条件式(14)を満足し、前記第2aレンズ群を構成する正レンズ及び前記第2aレンズ群を構成する負レンズの分散特性関して下記条件式(15)を満足し、前記第2aレンズ群において最も縮小側に配置されるレンズ及び当該レンズの拡大側隣に配置されるレンズの屈折率の特徴に関して各々下記条件式(16)を満足していることを特徴とする請求項4に記載の投射光学系。
(14) −1.00 ≦ f/rII5 ≦ −0.75
(15) 15 ≦ vIIaP−vIIaN
(16) 0.26 ≦ nII4−nII4S ≦ 0.40
ただし、
II5 :第2aレンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの拡大側面の曲率半径
IIaP:第2aレンズ群を構成する正レンズのアッベ数の平均値
IIaN:第2aレンズ群を構成する負レンズのアッベ数の平均値
II4 :第2aレンズ群において最も縮小側に配置されるレンズのd線に対する屈折率
II4S:第2aレンズ群において縮小側から二番目に配置されるレンズのd線に対する屈折率
【請求項7】
前記第2レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの形状に関して下記条件式(17)を満足していることを特徴とする請求項1に記載の投射光学系。
(17) −0.65 ≦ f/rII10 ≦ −0.30
ただし、
II10:第2レンズ群において最も縮小側に配置されるレンズの縮小側面の曲率半径
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の少なくともいずれかの一項に記載される投射光学系を搭載していることを特徴とする投射型表示装置。
【請求項9】
前記第1の光学系の前記ミラー面の非球面の対称軸と前記第2の光学系の光軸とが使用時以外は一致しないことを特徴とする請求項8に記載の投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2013−76792(P2013−76792A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215834(P2011−215834)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】