説明

投射型画像表示装置及び画像表示方法

【課題】光学式ウォブリング方式による画像表示において、液晶表示素子の表示エリア全体について良好な解像度特性を実現可能な投射型画像表示装置を提供する。
【解決手段】元画像に対して相補的なサンプリング点を持つ複数のフィールド画像を垂直走査により順次表示する液晶表示素子21Rと、液晶表示素子21Rからの変調光を投射する投射レンズ25と、液晶表示素子21Rに表示される複数のフィールド画像に対応して、液晶表示素子21Rからの変調光の光路を一括してシフトする光路シフト素子30と、液晶表示素子21Rの垂直走査における時間差により、光路のシフトに対応しないフィールド画像が表示されている液晶表示素子21Rの液晶表示素子の一部から射出された変調光を遮蔽するように、垂直走査に追従して投射レンズ25からの投射光を周期的に遮蔽する光遮蔽部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子の光学像を拡大投射して表示する投射型画像表示装置及び画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大画面・高品質な画像表示を可能とする表示装置として、光源装置と、該光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する表示素子と、表示素子からの光束を拡大投射する投射光学系とを備える投射型画像表示装置が広く用いられている。
【0003】
近年、フルハイビジョンや4K×2K(水平方向4096画素、垂直方向2160画素)等に代表されるように、より高画素数、高精細の画像に対する要求が高まっており、投射型画像表示装置の表示素子についても高画素数化、高精細化技術に大きな進展がみられる。
【0004】
しかしながら、投射型画像表示装置における表示素子の画素配列ピッチの縮小には限界があり、技術的に実現可能な最小画素ピッチを前提にした場合、画素数を増やすことによって素子サイズが大型化し、表示素子の歩留まり影響による表示素子そのもののコスト、及び光学系の大型化に伴うコスト増大が避けられない。また、表示画素数の増大に伴い、表示素子駆動にも画素数に比例した高速動作が要求されることから周辺駆動回路部の高コスト化も問題となる。
【0005】
この課題を解決するものとして、表示画像の画素位置を単位フィールド毎にシフト(以下、「画素シフト」ともいう。)させるとともに、サンプリング点がずれた画像をフィールド単位で時分割表示する、いわゆる光学ウォブリング方式による画像表示装置について開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
特許文献1では、1フレーム画像を空間的にサンプリング点がずれた複数のフィールド画像で構成し、投影画像上ではこれらのフィールド画像のサンプリング点のずれに相当するピッチで画素位置をずらして表示を行う。サンプリング点が補間関係にある複数のフィールド画像は人間の視覚特性の残像効果で積分され、高解像度の画像として知覚される。この結果、表示素子そのものの画素数の制限を越えた、より高精細な画像表示に対応することができる。
【0007】
また、表示素子に反射型液晶表示素子を用い、光学ウォブリング機能を有する光路変調素子(画素シフト素子)を偏光ビームスプリッタと投射レンズ間に配置し、高精細な表示を可能とした画像投射装置が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−113308号公報
【特許文献2】特開2003−5132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献2に開示されている反射型液晶表示素子を用いた光学ウォブリング方式による投射装置においては、偏光ビームスプリッタや色合成ダイクロイックプリズムなどの光学系構成要素の配置制約があり、画素シフト素子を表示素子からある程度の距離分、隔離して配置する必要がある。
【0010】
更に、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に表示素子を備え、各色の変調光を色合成手段で合成してカラー表示を行う投射装置を反射型液晶表示素子で構成する場合、色合成手段であるダイクロイックプリズム等の干渉性波長選択ミラー層には一般的に偏光方向依存性があるため、画素シフトを偏光スイッチ部材と複屈折板の組み合わせで実施する場合、画素シフト変調後の光偏光方向は時間的に交互に変化することから、ウォブリング動作によって合成光の波長に対する強度比率が変化し、フリッカーの原因なったり、画素シフト表示画像単位ごとに色が変動する、といった不都合が生じる。
【0011】
特許文献2には、上記反射型表示素子の3板式投射装置で、ダイクロイックプリズムの後段、投射レンズ入射部に画素シフト素子を配置する構成も開示されている。本構成では、前述のダイクロイックミラーの波長分離特性の偏光依存性の影響は回避できるが、表示素子と画素シフト素子間の配置間距離は、ダイクロイックプリズムの手前に配置する条件よりも更に大きくなる。
【0012】
特に、反射型表示素子が画素行を順次走査選択して各マトリックス配列画素部のスイッチで走査行単位で画像を表示させる一般的なアクティブマトリクス型表示素子である場合、交番表示する相互にサンプリング点がずれた画素シフト表示画像は垂直走査で表示更新されるため、有効表示エリアの上部から下部にかけて時間差をもって書き換わる。そのため、光学的な画素シフト制御を表示素子の垂直走査に対応して切り替わる様に一括でなくエリア毎に時間差をつけた制御が必要となり、これについては画素シフト素子を構成する偏光スイッチをエリア分割制御する技術が知られている。しかしながら、反射型液晶表示素子で、表示素子と画素シフト素子の距離は離れて配置される構成においては、表示画面の上部と下部から射出される画像情報を含む変調光の光束の広がり角度(F値)によって互いに重なり合う度合いが大きくなり、上記画素シフト素子のエリア分割制御が有効に機能しなくなる。という課題があった。
【0013】
その結果、表示素子上の走査による画像更新と光学的な画素シフト制御動作のタイミングの整合性が垂直走査方向の画面表示位置によって差を持つようになり、画面全体について良好な解像度向上効果が得られないとい課題がある。
【0014】
上記課題を鑑み、本発明では、光学式ウォブリング方式による画像表示において、液晶表示素子の表示エリア全体について良好な解像度特性を実現可能な投射型画像表示装置及び画像表示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、元画像に対して相補的なサンプリング点(P1,P2)を持つ複数のフィールド画像(A,B)を垂直走査により順次表示する液晶表示素子(21R,21G,21B)と、液晶表示素子(21R,21G,21B)からの変調光を投射する投射レンズ(25)と、液晶表示素子(21R,21G,21B)に表示される複数のフィールド画像(A,B)に対応して、投射レンズ(25)の入射側に配置され、液晶表示素子(21R,21G,21B)からの変調光の光路を一括してシフトする光路シフト素子(30)と、投射レンズ(25)の射出側に配置され、液晶表示素子(21R,21G,21B)の垂直走査における時間差により、光路のシフトに対応しないフィールド画像(A,B)が表示されている液晶表示素子(21R,21G,21B)の一部から射出された変調光を遮蔽するように、垂直走査に追従して投射レンズ(25)からの投射光を周期的に遮蔽する光遮蔽部(40)とを備える投射型画像表示装置が提供される。
【0016】
本発明の一態様において、光路シフト素子(30)は、液晶表示素子(21R,21G,21B)からの変調光の偏光方向を電圧のオン・オフ制御によって相対的に90度回転させる偏光部材(31)と、偏光部材(31)からの変調光の偏光方向に応じて、変調光を直進又は屈折させる複屈折部材(32)とを備えていても良い。
【0017】
本発明の一態様において、光遮蔽部(40)は、円盤放射状の複数の羽根(41)を有していても良い。
【0018】
本発明の一態様において、光遮蔽部(40)は、複数のエリア毎に異なるタイミングで開閉制御が可能な液晶部材(51)を有していても良い。
【0019】
本発明の一態様において、元画像に対して相補的なサンプリング点(P1,P2)を持つ複数のフィールド画像(A,B)を、液晶表示素子(21R,21G,21B)が垂直走査により順次表示するステップと、液晶表示素子(21R,21G,21B)からの変調光を投射レンズ(25)を用いて投射するステップと、液晶表示素子(21R,21G,21B)に表示される複数のフィールド画像(A,B)に対応して、液晶表示素子(21R,21G,21B)からの変調光の光路を一括してシフトするステップと、液晶表示素子(21R,21G,21B)の垂直走査における時間差により、光路のシフトに対応しないフィールド画像(A,B)が表示されている液晶表示素子(21R,21G,21B)の一部から射出された変調光を遮蔽するように、垂直走査に追従して投射レンズ(25)からの投射光を周期的に遮蔽するステップとを含む画像表示方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光学式ウォブリング方式による画像表示において、液晶表示素子の表示エリア全体について良好な解像度特性を実現可能な投射型画像表示装置及び画像表示方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る投射型画像表示装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る液晶表示素子の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光路シフト素子の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る制御部の一例を示すブロック図である。
【図5】図5(a)は、本発明の実施の形態に係る奇数フィールドのサンプリング点を説明するための概略図である。図5(b)は、本発明の実施の形態に係る偶数フィールドのサンプリング点を説明するための概略図である。
【図6】図6(a)は、本発明の実施の形態に係る奇数フィールドの投影画像の画素位置を説明するための概略図である。図6(b)は、本発明の実施の形態に係る偶数フィールドの投影画像の画素位置を説明するための概略図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る投射型画像表示装置の一例を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る光遮蔽部の一例を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る投射型画像表示装置の画像表示方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図10】本発明の実施の形態の変形例に係る光遮蔽部の一例を示す概略図である。
【図11】本発明の実施の形態の変形例に係る偏光スイッチの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0023】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0024】
(投射型画像表示装置)
本発明の実施の形態に係る投射型画像表示装置として、反射型液晶表示素子を用いてカラー表示を行う投射型画像表示装置を一例として説明する。
【0025】
本発明の実施の形態に係る投射型画像表示装置は、図1に示すように、光源10と、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色に対応した液晶表示素子21R,21G,21Bと、光源10からの照明光を用いて液晶表示素子21R,21G,21Bを照明し、且つ液晶表示素子21R,21G,21Bから射出される変調光を投射する光学系1と、液晶表示素子21R,21G,21Bから射出される変調光の光路をシフトする光路シフト素子(「画素シフト素子」という。)30と、光学系1の射出側に配置された光遮蔽部40と、液晶表示素子21R,21G,21B及び光遮蔽部40を制御する制御部100を備える。
【0026】
光学系1は、集光レンズ11、フライアイレンズ対12、偏光変換光学素子(PCS)13、レンズ14,18R,18G,18B、ダイクロイックミラー15,17、折り返しミラー16,16B、偏光板19R,19B,19G、22R,22B,22G、ワイヤーグリッド偏光板20R,20B,20G、ダイクロイックプリズム23、1/2波長板24及び投射レンズ25を備える。
【0027】
光源10からの照明光は、集光レンズ11、フライアイレンズ対12、偏光変換光学素子(PCS)13、レンズ14を経て、ダイクロイックミラー15で青色光と黄色光に分解され、折り返しミラー16,16Bで各光路方向にそれぞれ折り返される。黄色光は、更にダイクロイックミラー17で緑色光と赤色光に分解される。赤色光、緑色光及び青色光のそれぞれは、レンズ18R,18G,18Bを介して偏光板19R,19B,19Gによって偏光の直線偏光度を向上した後、斜め45度配置したワイヤーグリッド偏光板20R,20B,20Gを透過し、各液晶表示素子21R,21G,21Bに入射する。
【0028】
液晶表示素子21Rは、図2に示すように、駆動基板210と、駆動基板210に対向する対向基板211と、駆動基板210及び対向基板211の間にシール部材205で取り囲むように封入された液晶変調部材206を備える。駆動基板210は、シリコン基板201上にスイッチングトランジスタを含む画素回路202と絶縁膜203を介して反射電極204を含む画素を行列方向にマトリクス状に配列して構成される。対向基板211は、透明基板208と、透明基板208上に配置された共通電極207を備える。図2に示した液晶表示素子21Rは一般的にLCOS(Liquid Crystal on Silicon)と呼ばれる構造であり、反射型構造により画素の高密化、微細化が容易であり、高精細画像に対応した液晶表示素子として優れた特長を有する。図1に示した液晶表示素子21G,21Bも、液晶表示素子21Rと同様の部材を使用可能である。
【0029】
図1に示すように、各液晶表示素子21R,21G,21Bからの変調光は、45度配置のワイヤーグリッド偏光板20R,20B,20Gで反射され、偏光板22R,22B,22Gで不要な偏光成分を検光で除去した後、ダイクロイックプリズム23でカラー合成される。ダイクロイックプリズム23でカラー合成された射出光は、1/2波長板24を介して光路シフト素子30に入射し、投射レンズ25からスクリーン26に投射される。
【0030】
光路シフト素子30は、図3に示すように、前段に配置された偏光スイッチ31と、偏光スイッチ31の射出側に配置された複屈折板32を備える。偏光スイッチ31は、制御電圧(V)がオフレベルのとき、直線偏光の入射光の偏光方向を維持して射出し、制御電圧(V)がオンレベル電圧のとき入射光の偏光方向を90度回転させる。偏光スイッチ31としては、対向した透明電極基板に液晶を封入した液晶セルが使用可能である。液晶セルに電圧を印加すると、電圧に応じて分子の配列状態が変化し、特定の偏光方向成分の光について複屈折を示す。この複屈折による厚さd1の光路中での位相差が、入射光波長の1/2(180度)となるように制御すれば、射出光の偏光方向を90度回転した直線偏光として取り出すことができる。偏光スイッチ31に好適な液晶材料・動作モードとしては、例えばスイッチ速度が非常に高速な強誘電性液晶や、OCB(Optically Compensated Bend)モード液晶等が用いられる。
【0031】
複屈折板32としては、水晶板等の光学異方性を有する結晶材料が使用可能である。光学軸に対して常光線と異常光線の偏光成分を有する光を入射すると、常光線では屈折率が入射光の光学軸に対する角度に依存せず一定であるのに対して、異常光線では入射光の光学軸に対する角度によって変化し、光学軸との角度が垂直の条件で最大となる。これより、複屈折板32に入射する光の偏光を切り替えることで光の屈折状態が変化し、射出面でのビーム位置をシフトさせることができる。光路シフト素子30によるビーム変位量は屈折角と複屈折板32の厚みd2の関係で決まることから、複屈折板32の厚みd2を変えることで変位量を任意の値に設計することができる。
【0032】
図1に示すように、光路シフト素子30の前段部には、1/2波長板24が配置されている。1/2波長板24は、画素シフトを斜め45度方向とし、2つのフィールド画像で画素シフト表示を行う例において、複屈折板32の光学軸方向45度と偏光方向を合致させるためのものである。偏光スイッチ31に対して制御電圧(V)をオン、オフレベルで交番制御することで、光路シフト素子30を1組だけ使用して、投射画像の画素位置を斜め45度方向、水平垂直各0.5画素ピッチの画素シフトを精度よく制御できる。偏光スイッチ31を電圧で切り替えることにより、光軸がシフトし、投射レンズ25による投射画像上での画素位置をフィールド周期でずらすことができる。
【0033】
制御部100は、図4に示すように、フィールド画像生成部101、倍速処理部102及び表示制御部103を備える。
【0034】
フィールド画像生成部101は、図5(a)及び図5(b)にそれぞれ示すように、外部から入力された元画像データに対して、斜め45度、液晶表示素子21R,21G,21Bの画素ピッチに対して水平、垂直0.5画素分の補間関係にあるサンプリング点P1,P2でサンプリングした複数のフィールド画像を生成し、フィールド周期で交互に時分割で出力する。元画像(2m×2n画素)は、液晶表示素子21R,21G,21Bで表示可能な最大の有効画素数m×nに対して、水平、垂直とも2倍の画素情報を有する。
【0035】
図4に示した倍速処理部102は、フィールド画像生成部101から出力された複数のフィールド画像を倍速化し、同一フィールド画像を2回ずつ出力する。フィールド倍速駆動により、液晶表示素子21R,21G,21Bの垂直リフレッシュレートを高めることで画像の明るい部分でのちらつきを低減するとともに、同一画像情報をもとに液晶駆動電圧の正負極性反転を良好な対称性で実現できることから、直流電圧成分の影響による液晶材料の信頼性を高めることができる。
【0036】
表示制御部103は、複数のフィールド画像を交互に選択し、対応する信号電圧を液晶表示素子21R,21G,21Bに供給することにより、液晶表示素子21R,21G,21Bを駆動・制御する。液晶表示素子21R,21G,21Bは、表示制御部103からの信号電圧に応じて、複数のフィールド画像を垂直走査により順次表示する。
【0037】
光路シフト素子30は、液晶表示素子21R,21G,21Bに表示されるフィールド画像に対応し、偏光スイッチ31による偏光切り替え制御を行い、図6(a)及び図6(b)のそれぞれに示すように、スクリーン26上に投射された複数のフィールド画像(斜線で表示)の画素位置を、サンプリング点P1,P2のずれに相当した画素位置P,Qにシフトする。
【0038】
このように、液晶表示素子21R,21G,21Bによる複数のフィールド画像の順次表示と、光路シフト素子30による画素シフトを連動させる光学ウォブリング方式による画像表示を行うことで、液晶表示素子21R,21G,21Bの画素数以上の高解像度画像表示を実現することができる。
【0039】
光遮蔽部40は、図7に示すように、投射型画像表示装置本体60に取り付けた回転機構42と、回転機構42を軸として回転可能な円盤放射状の複数の羽根(回転円盤シャッタ)41を有する。複数の羽根41は、投射レンズ25からの投射光の一部又は全部を周期的に遮蔽可能な長さ、幅及び枚数を有する。複数の羽根41の形状は特に限定されず、投射レンズ26からの投射光をより略垂直走査方向に遮蔽できるような曲線状のエッジを有していても良い。
【0040】
光遮蔽部40は、図8に示すように、回転機構42に接続されたモータ43と、モータ43を制御する光遮蔽制御部44を更に備える。光遮蔽制御部44は、図1に示した制御部100に備えられていても良い。
【0041】
光遮蔽制御部44は、同期回路45、回転検出部46、位相比較部47及びモータ駆動部48を備える。同期回路45は、制御部100から入力された垂直走査基準信号を同期信号として出力する。回転検出部46は、モータ43の回転数及び回転角を検出する。位相比較部47は、同期回路45からの同期信号と、回転検出部46からのモータ43の回転数及び回転角に基づいて、同期信号とモータ43の回転位相がロックするような基準信号を出力する。モータ駆動部48は、位相比較部47から出力された基準信号に基づいてモータ43を制御する制御信号を出力する。
【0042】
(画像表示方法)
次に、本発明の実施の形態に係る投射型画像表示装置を用いた画像表示方法の一例を、図9のタイミングチャートを用いて説明する。ここでは、図9の左上に模式的に示すように、元画像に対して左上、右下でサンプリングした2つのフィールド画像(A)、(B)を時分割表示する場合を説明する。
【0043】
図9の最上段は、外部からフィールド画像生成部101に入力される垂直同期信号VDの変化の態様を示す。図9(a)に示すように、フィールド画像生成部101が、垂直同期信号VDに同期して、フィールド画像生成部101から出力されたフィールド画像(A)、(B)を生成し、時分割で出力する。
【0044】
図9(b)に示すように、倍速処理部102が、フィールド画像(A)、(B)を倍速化し、同一のフィールド画像(A)、(B)を2回ずつ出力する。
【0045】
図9(c)は、光路シフト素子30による画素シフトに対応するフィールド画像(A)、(B)の変化の態様を示す。光路シフト素子30は、フィールド画像(A)、(B)に対応して液晶表示素子21R,21G,21Bから射出された変調光の光路をシフトし、スクリーン26上の投射画像の画素位置を互いにずれた位置にシフトする。
【0046】
図9(d),(f),(h)は、各液晶表示素子21R,21G,21Bの表示エリアを画面上部、画面中央部、画面下部に分割し、それぞれにおけるフィールド画像(A)、(B)の表示タイミングを示す。図9(d),(f),(h)に示すように、液晶表示素子21R,21G,21Bに表示されるフィールド画像(A)、(B)は、画面上部から画面下部にわたって垂直走査により時間差を持って順次更新される。この垂直走査による時間差のため、垂直走査方向において表示するフィールド画像(A)、(B)にずれが生じる。
【0047】
即ち、図9(f)に示した画面中央部に表示されるフィールド画像(A)、(B)は、図9(c)に示した画素シフトと対応している。しかしながら、図9(d)に示した画面上部に表示されるフィールド画像(A)、(B)は画面中央部よりも更新が早いため、期間T11,T12,T13において図9(c)に示した画素シフトに対応していない。一方、図9(h)に示した画面下部に表示されるフィールド画像(A)、(B)は、画面中央部よりも更新が遅いため、期間T21,T22,T23,T24において図9(c)に示した画素シフトに対応していない。このように、画素シフト制御と表示する画像のサンプリング条件が合わない期間の画像を表示すると、ウォブリングの解像度向上効果が低減する。
【0048】
そこで、光遮蔽部40が、図9(e),(g),(i)の斜線部で示すように、図9(d)に示した期間T11,T12,T13において画面上部から射出された変調光と、図9(h)に示した期間T21,T22,T23,T24において画面下部から射出された変調光を遮蔽するように、投射レンズ25からの投射光を垂直走査に追従して周期的に遮蔽する。この結果、画面全体にわたってフィールド表示画像間のクロストーク影響を低減し、良好な解像度特性を得ることができる。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る投射画像表示装置及び画像表示方法によれば、光学式ウォブリング方式による画像表示において、液晶表示素子21R,21G,21Bと光路シフト素子30の配置間距離が大きい条件であっても、液晶表示素子21R,21G,21Bの表示エリア全体について良好な解像度特性を実現することができる。
【0050】
(変形例)
本発明の実施の形態の変形例として、光遮蔽部40の他の一例を説明する。本発明の実施の形態の変形例に係る光遮蔽部50は、図10に示すように、偏光スイッチ51と、偏光スイッチ51の射出側に配置された偏光板52とを備える。偏光スイッチ51としては、図3に示した偏光スイッチ31と同様の部材が使用可能である。
【0051】
図3に示した偏光スイッチ31及び複屈折板32を有する光路シフト素子30による画素シフトでは、射出する変調光の偏光方向が相対的に0又は90度となるように時分割駆動されるので、図10に示すように画素シフト条件(A)と画素シフト条件(B)で入射光の偏光方向が異なる。そのため、入射側には偏光板を配置せず、射出側のみの配置とし、入射光の偏光に応じて偏光スイッチ51のオン・オフ電圧関係を逆転することで、それぞれの画素シフト期間で不要期間の遮光を実現する。
【0052】
更に、図11に示すように、偏光スイッチ51の液晶セルの駆動電極が配置されている領域を、垂直走査方向において短冊状にエリアV1,V2,V3に分割し、エリアV1,V2,V3毎に個別にオン・オフ制御する。これにより、素子垂直走査の時間差に追従した開閉制御を実現することができる。
【0053】
なお、図11において偏光スイッチ51の液晶セル駆動電極が配置されている領域をエリアV1,V2,V3に3分割しているが、分割数は任意に選択することができる。
【0054】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0055】
例えば、本発明の実施の形態においては、3板式の液晶表示素子21R,21G,21Bを用い、ダイクロイックプリズム23で合成してから光路シフト素子30でウォブリングする場合を説明したが、3板式の液晶表示素子21R,21G,21Bのそれぞれの射出側に光路シフト素子30をそれぞれ配置して、個別にウォブリングをしても良い。また、3板式に代えて、単板式の液晶表示素子21R,21G,21Bを用いても良い。
【0056】
また、元画像データを2つのフィールド画像に時分割する場合を説明したが、更に複数(3つ、4つ)のフィールド画像に時分割しても良い。その場合、複数(3つ、4つ)のフィールド画像に対応して画素シフトが可能なシフト素子を配置すれば良い。
【0057】
また、図9(f)に示した画面中央部における画像表示と、図9(c)に示した画素シフトが一致している場合を説明したが、図9(d)に示した画面上部又は図9(h)に示した画面下部における画像表示と、図9(c)に示した画素シフトとが一致していても良い。その場合、画面中央部において画像表示が画素シフトと対応しない期間が発生するので、光遮蔽部40がその期間の画面中央部からの変調光を遮蔽するように制御すれば良い。
【0058】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0059】
1…光学系
10…光源
11…集光レンズ
12…フライアイレンズ対
14,18R,18G,18B…レンズ
15,17…ダイクロイックミラー
16,16B…折り返しミラー
19R,19B,19G,22R,22B,22G,52…偏光板
20R,20B,20G…ワイヤーグリッド偏光板
21R,21G,21B…液晶表示素子
23…ダイクロイックプリズム
24…波長板
25…投射レンズ
26…スクリーン
30…光路シフト素子
31,51…偏光スイッチ
32…複屈折板
40…光遮蔽部
41…羽根
42…回転機構
43…モータ
44…光遮蔽制御部
45…同期回路
46…回転検出部
47…位相比較部
48…モータ駆動部
60…本体
100…制御部
101…フィールド画像生成部
102…倍速処理部
103…表示制御部
201…シリコン基板
202…画素回路
204…反射電極
205…シール部材
206…液晶変調部材
207…共通電極
208…透明基板
210…駆動基板
211…対向基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
元画像に対して相補的なサンプリング点を持つ複数のフィールド画像を垂直走査により順次表示する液晶表示素子と、
前記液晶表示素子からの変調光を投射する投射レンズと、
前記投射レンズの入射側に配置され、前記液晶表示素子に表示される前記複数のフィールド画像に対応して、前記液晶表示素子からの変調光の光路を一括してシフトする光路シフト素子と、
前記投射レンズの射出側に配置され、前記液晶表示素子の垂直走査における時間差により、前記光路のシフトに対応しない前記フィールド画像が表示されている前記液晶表示素子の一部から射出された変調光を遮蔽するように、前記垂直走査に追従して前記投射レンズからの投射光を周期的に遮蔽する光遮蔽部
とを備えることを特徴とする投射型画像表示装置。
【請求項2】
前記光路シフト素子は、
前記液晶表示素子からの変調光の偏光方向を電圧のオン・オフ制御によって相対的に90度回転させる偏光部材と、
前記偏光部材からの変調光の偏光方向に応じて、前記変調光を直進又は屈折させる複屈折部材
とを備えることを特徴とする請求項1に記載の投射型画像表示装置。
【請求項3】
前記光遮蔽部は、円盤放射状の複数の羽根を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の投射型画像表示装置。
【請求項4】
前記光遮蔽部は、複数のエリア毎に異なるタイミングで開閉制御が可能な液晶部材を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の投射型画像表示装置。
【請求項5】
元画像に対して相補的なサンプリング点を持つ複数のフィールド画像を、液晶表示素子が垂直走査により順次表示するステップと、
前記液晶表示素子に表示される前記複数のフィールド画像に対応して、前記液晶表示素子からの変調光の光路を一括してシフトするステップと、
前記光路シフト素子からの変調光を投射レンズを用いて投射するステップと、
前記液晶表示素子の垂直走査における時間差により、前記光路のシフトに対応しない前記フィールド画像が表示されている前記液晶表示素子の前記液晶表示素子の一部から射出された変調光を遮蔽するように、前記垂直走査に追従して前記投射レンズからの投射光を周期的に遮蔽するステップ
とを含むことを特徴とする画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−50627(P2013−50627A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189214(P2011−189214)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】