投影光学系
【課題】非軸光学系による斜め投影において、像トビの発生なしに、非軸光学系の特長を活かした非軸光学系独特のズーミングやフォーカシングを可能とする高性能でコンパクトな投影光学系と投影型画像表示装置を提供する。
【解決手段】表示素子面SGの画像をスクリーン面SL上に拡大投影する投影光学系POは、スクリーン面SLとスクリーン面SLへ入射する軸上主光線との成す角度が垂直でなく、偏芯配置された回転非対称な第1,第2曲面ミラーM1,M2を有する。投影光学系POは、ズーミングやフォーカシングのために、第1ミラーM1や第2曲面ミラーM2を含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により、全系の焦点距離を変化させる。
【解決手段】表示素子面SGの画像をスクリーン面SL上に拡大投影する投影光学系POは、スクリーン面SLとスクリーン面SLへ入射する軸上主光線との成す角度が垂直でなく、偏芯配置された回転非対称な第1,第2曲面ミラーM1,M2を有する。投影光学系POは、ズーミングやフォーカシングのために、第1ミラーM1や第2曲面ミラーM2を含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により、全系の焦点距離を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は投影光学系に関するものであり、例えば、液晶表示素子やデジタル・マイクロミラー・デバイス等の表示素子を備えた画像投影装置に搭載されて、表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系、その投影光学系を有する投影型光学機器(特に投影型画像表示装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
持ち運びの容易なコンピュータ(ノート型パーソナルコンピュータ等)が盛んに使用されるようになってきたことに伴い、オフィスでの会議やプレゼンテーションにおいて、コンピュータ上で作成された画像の拡大表示にフロントタイプのプロジェクターが広く用いられるようになってきている。また、デジタル放送等の映像情報配信の多様化及び高精細化に伴い、家庭においてもプロジェクターを用いて大画面での画像鑑賞が行われるようになってきている。しかし、従来のプロジェクターを大画面で使用する場合、それに十分な投影空間を中・小会議室や家庭等で確保することは困難である。つまり、十分な投影空間を確保できなければ、従来のプロジェクターで大画面の画像投影を行うことは困難である。
【0003】
必要とされる投影空間を縮小しつつ大画面化を達成する方法として、投影光学系内に反射面を導入することにより、投影される画像の結像に用いられる結像光束の光路を投影装置内に折り込む構成が知られている。その反射面として偏芯させた反射面を用い、いわゆる非軸光学系の配置をとれば、光路を折りたたむ効果をより一層向上させることが可能である。また、スクリーン面に対して入射する光束の入射角度を大きくすることによって、投影光学系からスクリーンまでの距離を短縮する構成も知られている。
【0004】
空間的に限られた範囲内でプロジェクターを使用する場合、投影光学系がズーミング機能を備えていれば、プロジェクターやスクリーンの位置をほぼ固定したまま投影倍率を変えることができるので、その場で即座に拡大・縮小を行うことができて大変便利である。このようなズーミング機能を有する投影光学系として非軸光学系を用いたものが、特許文献1〜3で提案されている。また、スクリーンが移動した場合のピント合わせを可能とし、使用の都度変化するスクリーン位置に対応したピント合わせを可能とするために、フォーカシング機能は投影光学系において必須である。このようなフォーカシング機能を有する投影光学系として非軸光学系を用いたものが、特許文献4,5で提案されている。
【0005】
特許文献1,2で提案されている投影光学系は、非軸光学系の構成になっているが、共軸部分を平行移動させて全系の焦点距離を変化させることによりズーミングを行うものである。特許文献3で提案されている投影光学系は、ミラーを平行移動させて全系の焦点距離を変化させることによりズーミングを行うものである。また、特許文献4,5で提案されている投影光学系は、非軸配置のミラーを平行移動させて全系の焦点距離を変化させることによりフォーカシングを行うものである。
【特許文献1】特開2004−295107号公報
【特許文献2】特開2005−121722号公報
【特許文献3】特開2005−189768号公報
【特許文献4】特開2005−106900号公報
【特許文献5】特開2006−184775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、非軸光学系を用いて光路を折りたためば、投影光学系を小さく構成することができる。しかし、軸上光線が1本の直線状にならないため、ズーミングやフォーカシングのために光学要素を移動させて焦点距離を変化させる場合、非軸光学系であることを考慮する必要がある。例えば、非軸光学系においてパワーを有する部分をただ単純に平行移動させると、投影光学系全体の焦点距離は変化するが、スクリーン面への射出光線が大きく移動してしまう。その結果、ズーミング中に画面中心が移動して、像トビの現象が現れることになる。例えば、特許文献5で提案されている投影光学系では、ミラーを平行移動させてフォーカシングを行う構成になっているが、フォーカシング中に軸上像点位置をほぼ一定にするための方法が開示されていないため、軸上位置をほぼ一定にしたフォーカシングの実現が困難である。
【0007】
特許文献1,2で提案されている投影光学系では、非軸光学系の共軸光学系部分の位置を変えることにより変倍が行われる。この変倍方法には、軸上の射出位置がズレないという利点がある。しかし、非軸配置されている部分の移動を伴わないため、非軸光学系の変倍を十分に実現しているとは言えない。また、物面と像面の一方又は両方が傾いた斜め投影光学系の場合、方向(例えば画面の縦横方向)に関係なく共軸部分の焦点距離を一律に変えると、ある焦点距離領域ではアナモフィック倍率の関係が崩れることになる。そのため、設計上の結像面(つまり、スクリーン面に相当する設計像面)と1次像点(つまり、共軸光学系での近軸像点に相当するピント位置)との関係を大きくずらすことにより、アナモフィックな倍率の関係を保つようにしている。しかし、この方法によると、設計上の結像面から1次像点が大きくずれている部分でデフォーカスの影響による性能の低下が生じてしまうため、高性能な投影光学系を実現することができない。
【0008】
特許文献3で提案されている投影光学系では、非軸配置のミラーがズーミング時に平行移動する構成になっており、特許文献4で提案されている投影光学系では、非軸配置のミラーがフォーカシング時に平行移動する構成になっている。非軸ミラーを移動させている点では、どちらも非軸光学系に適した変倍方法と言える。しかしながらこの方法では、移動させる非軸ミラーの構成部分に入射する軸上主光線と、移動させる非軸ミラーの構成部分から射出する軸上主光線と、を平行に設計しておくという、設計上の制約条件が必要になる。また、移動が軸上主光線に対して平行方向に行われるため、方向(例えば画面の縦横方向)によって、個々の焦点距離を自由に変化させることができない。その結果、特許文献1,2のように、ある焦点距離領域ではアナモフィック倍率の関係が崩れることになる。そのため、設計上の結像面と1次像点との関係を大きくずらすことにより、アナモフィックな倍率の関係を保つようにしている。しかし、この方法によると、設計上の結像面から1次像点が大きくずれている部分でデフォーカスの影響による性能の低下が生じてしまうため、高性能な投影光学系を実現することができない。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、非軸光学系による斜め投影において、像トビの発生なしに、非軸光学系の特長を活かした非軸光学系独特のズーミングやフォーカシングを可能とする高性能でコンパクトな投影光学系、及びそれを用いた投影型画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明の投影光学系は、表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させることを特徴とする。
【0011】
第2の発明の投影光学系は、上記第1の発明において、以下の条件式(1)を満たすことを特徴とする。
30<|θimg|<70 …(1)
ただし、
θimg:スクリーン面の画面法線とスクリーン面へ入射する軸上主光線とが成す角度(°)、
である。
【0012】
第3の発明の投影光学系は、上記第1又は第2の発明において、全系の焦点距離を変化させることにより、表示素子面とスクリーン面の位置をほぼ一定に保ったまま、拡大倍率を変化させるズーム光学系であることを特徴とする。
【0013】
第4の発明の投影光学系は、上記第3の発明において、全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、以下の条件式(2)を満たすことを特徴とする。
0.2<|θzmov/Zz|<5.0 …(2)
ただし、
θzmov:反射ミラーを含む光学素子群の回転角度(°)、
Zz=fz1/fz2、
fz1:拡大倍率の絶対値が最も小さいときの全系の焦点距離、
fz2:変倍後の全系の焦点距離、
である。
【0014】
第5の発明の投影光学系は、上記第3又は第4の発明において、全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、以下の条件式(3)を満たすことを特徴とする。
0.01<|Szmov/(Zz×fz1)|<5.0 …(3)
ただし、
Szmov:反射ミラーを含む光学素子群の平行移動の距離、
Zz=fz1/fz2、
fz1:拡大倍率の絶対値が最も小さいときの全系の焦点距離、
fz2:変倍後の全系の焦点距離、
である。
【0015】
第6の発明の投影光学系は、上記第3〜第5のいずれか1つの発明において、全系の焦点距離変化による変倍での任意の焦点距離状態において、以下の条件式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする。
-50<(Sz1st_ximg−Szx_design)/fzx<20 …(4)
-50<(Sz1st_yimg−Szy_design)/fzy<20 …(5)
ただし、物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイとし、表示素子面の画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向とし、x方向とz方向に垂直な方向をy方向とすると、
Sz1st_ximg:x方向光線の後側主点位置からx方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Szx_design:x方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
fzx:x方向の全系の焦点距離、
Sz1st_yimg:y方向光線の後側主点位置からy方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Szy_design:y方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
fzy:y方向の全系の焦点距離、
である。
【0016】
第7の発明の投影光学系は、上記第3〜第6のいずれか1つの発明において、前記ズーム光学系が、回転非対称な光学面を持つ光学要素の平行移動と回転移動により、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することを特徴とする。
【0017】
第8の発明の投影光学系は、上記第1又は第2の発明において、全系の焦点距離を変化させることにより、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することを特徴とする。
【0018】
第9の発明の投影光学系は、上記第8の発明において、全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、以下の条件式(6)を満たすことを特徴とする。
0.2<|θfmov/Zfoc|<8.0 …(6)
ただし、
θfmov:反射ミラーを含む光学素子群の回転角度(°)、
Zfoc=ff1/ff2、
ff1:最近接投影状態での全系の焦点距離、
ff2:フォーカス後の全系の焦点距離、
である。
【0019】
第10の発明の投影光学系は、上記第8又は第9の発明において、全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、以下の条件式(7)を満たすことを特徴とする。
0.05<|Sfmov/(Zfoc×ff1)|<7.0 …(7)
ただし、
Sfmov:反射ミラーを含む光学素子群の平行移動の距離、
Zfoc=ff1/ff2、
ff1:最近接投影状態での全系の焦点距離、
ff2:フォーカス後の全系の焦点距離、
である。
【0020】
第11の発明の投影光学系は、上記第8〜第10のいずれか1つの発明において、全系の焦点距離変化によるフォーカシングでの任意の焦点距離状態において、以下の条件式(8)及び(9)を満たすことを特徴とする。
-50<(Sf1st_ximg−Sfx_design)/ffx<20 …(8)
-50<(Sf1st_yimg−Sfy_design)/ffy<20 …(9)
ただし、物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイとし、表示素子面の画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向とし、x方向とz方向に垂直な方向をy方向とすると、
Sf1st_ximg:x方向光線の後側主点位置からx方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Sfx_design:x方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
ffx:x方向の全系の焦点距離、
Sf1st_yimg:y方向光線の後側主点位置からy方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Sfy_design:y方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
ffy:y方向の全系の焦点距離、
である。
【0021】
第12の発明の投影光学系は、表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、あるスクリーン位置に投影する状態と、その状態とは異なるスクリーン位置に投影する状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することを特徴とする。
【0022】
第13の発明の投影光学系は、表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、ある投影倍率状態と、その状態とは異なる別の投影倍率状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することを特徴とする。
【0023】
第14の発明の投影型画像表示装置は、2次元画像を形成する表示素子と、その表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系と、を備えた投影型画像表示装置であって、前記投影光学系が、上記第1〜第13のいずれか1つの発明に係る投影光学系であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により、全系の焦点距離が変化するので、投影光学系の高性能化とコンパクト化を達成しながら、非軸光学系による斜め投影において像トビの発生なしに、非軸光学系の特長を活かした非軸光学系独特のズーミングやフォーカシングを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る投影光学系の実施の形態等を、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る投影光学系は、表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させるものである。スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではない、いわゆる斜め投影光学系の構成を採用しているため、スクリーンの大画面化を達成しながら、投影光学系からスクリーンまでの距離を短縮することができる。また、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを用いて光路を折り曲げる構成を採用しているため、投影空間の縮小とスクリーンの大画面化を達成しながら、共軸光学系よりもはるかにコンパクトな投影光学系を実現することができる。
【0026】
さらに、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により、投影光学系の焦点距離を変化させる構成を採用しているため、像トビの発生がない、非軸光学系の特長を活かした非軸光学系独特のズーミングやフォーカシングが可能となる。投影光学系の焦点距離を変化させるために、上記光学素子群の回転移動が必要となる理由は、大きく分けて2つある。第1の理由は、非軸光学素子である反射ミラーの回転移動により、スクリーンへ向かう軸上主光線の位置と方向を変えずに、全系の焦点距離を変化させることができる点にある。第2の理由は、非軸光学素子である反射ミラー自身のパワー変化も、全系の焦点距離の変化に寄与させることができる点にある。これらの理由を、図18〜図23を用いて具体的に説明する。
【0027】
まず、第1の理由を説明する(図18〜図21)。説明を簡単にするため、投影光学系は平面対称であるものとし、その対称面上を軸上主光線が通過するものとする。また、対称面に対して垂直な方向をX方向とし、それに垂直な方向(つまり対称面に対して平行な方向)をY方向とする。図18〜図21において、M1,M2は偏芯配置された2枚の曲面ミラー、SLはスクリーン面であり、LAはスクリーン面SLへ向かう軸上主光線である。ズーミング又はフォーカシングのためにミラーM1,M2が移動し、その移動前の焦点距離状態Iから移動後の焦点距離状態IIへと全系の焦点距離が変化するものとする。図18〜図21において、破線は焦点距離状態IのミラーM1,M2の配置を示しており、太い実線は焦点距離状態IIのミラーM1,M2の配置を示している。また、一点鎖線は軸上主光線LAとミラーM1,M2との交点における面法線を示している。
【0028】
図18と図19は、2枚のミラーM1,M2を単純に平行移動させた場合の光路変化を示している。図18では、2枚のミラーM1,M2が同時に同じ方向に平行移動しており、図19では、2枚のミラーM1,M2が別々の方向に異なる量だけ平行移動している。両者とも、ミラーM2から射出する軸上主光線LAの位置と方向が、焦点距離状態Iと焦点距離状態IIとで異なっている。したがって、ズーミングやフォーカシングによってスクリーン面SL上で像面中心が移動してしまい、いわゆる像トビの現象が現れることになる。
【0029】
図20は、ミラーM2から射出する軸上主光線の位置と方向が変化しないように、2枚のミラーM1,M2を独立に平行移動だけさせた場合の光路変化を示している。この場合、各面のパワー(焦点距離の逆数で定義される量)は変わらず、投影光学系の焦点距離を変化させるのは面間距離の変化のみである。後で述べるが、非軸光学系の場合の焦点距離を変化させる方法では、共軸光学系の場合とは異なり、面間距離の変化だけではなく、その面自身のパワーの変化も投影光学系の焦点距離変化に寄与することが可能である。そうすることにより、非軸光学系のメリットを活かすことができる。また、非軸光学系では偏芯配置された光学素子(又は光学面)の焦点距離が方向により異なるため、ある面間距離を変化させた場合、全系の焦点距離の変化量は方向により異なる。投影光学系は有限系であるため、倍率の変化は方向(例えば、X方向とY方向)によって異なる。したがって、アナモ比をほぼ一定にした変倍は困難になる。特に物面や像面が傾いた斜め投影光学系の場合では、物面や像面の傾きの影響が倍率に及ぶため、アナモ比を一定にした変倍は更に困難になる。
【0030】
なお、上記のような変倍において、倍率のアナモ比を一定にするために、X方向とY方向とで1次結像位置と設計像面位置とを乖離させる方法により、倍率を制御する方法が知られている。しかし、収差がほぼ補正された高性能の投影光学系の場合、1次結像位置に最良のピント位置があるため、その最良ピント位置から設計像面位置をずらすことにより倍率を合わせると、結像性能が低くなってしまう。
【0031】
図21は、ミラーM1,M2の移動に回転移動を加えることにより、全系の焦点距離を変化させた場合の光路変化を示している。この場合、偏芯配置されたミラーM1,M2の平行移動と回転移動を行うことにより、スクリーンへ向かう軸上主光線LAを一定にしながら、各面のパワーと面間隔を変化させている。これにより全系の焦点距離が変化するので、投影倍率を所望の値へと変化させることができる。この方法を採用すると変倍の自由度が上がるため、高性能を維持しながら全系の焦点距離を変化させる変倍が可能となる。
【0032】
次に、第2の理由を説明する(図22,図23)。ここでは、非軸ミラーのパワーを1面の非軸光学面のパワーに代表させて考える。図22に示すように、非軸の光学面Srで屈折系が構成される場合を考えるが、反射系の場合はその特別の場合として屈折系と同様に考えることができる。物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイLBとし、光学面SrにベースレイLBが入射する前の媒質の屈折率をnとし、入射した後の媒質の屈折率をndとする。光学面SrへのベースレイLBの入射角度をθsとし、光学面SrからのベースレイLBの射出角度をθsdとする。また、ベースレイLBと光学面Srとの交点OsにおけるX方向の局所曲率をC11とし、Y方向の局所曲率をC22とする。また、{n・cos(θs)−nd・cos(θsd)}=Sとする。ベースレイLBと光学面Srとの交点OsにおけるX方向,Y方向のそれぞれのパワーφX,φYは、以下の式(Fr1),(Fr2)で表される。
φX=−S・C11 …(Fr1)
φY=−S・C22/{cos(θs)・cos(θsd)} …(Fr2)
【0033】
反射系の場合、Sの計算において、n=ndとし、θs=−θsdとすれば、S=2cos(θs)となる。さらに、φYの分母がcos(θs)の2乗になる。光学面Srの平行移動と回転移動により、θsとθsdの値を変化させることができ、さらに、ベースレイLBと光学面Srとの交点Osが変化するため、X方向,Y方向の局所曲率C11,C22を変化させることができる。それにより、その光学面Srでのパワーを自由に変化させることができる。
【0034】
さらに、2面の非軸光学面の合成パワーを考える。図23に示すように、第1の光学面のX方向,Y方向のパワーをそれぞれφ1X,φ1Yとし、第2の光学面のX方向,Y方向のパワーをそれぞれφ2X,φ2Yとする。第1の光学面に関する入射角度,射出角度をそれぞれθ1,θ1Pとし、第2の光学面に関する入射角度,射出角度をそれぞれθ2,θ2Pとする。また、ベースレイLBに沿って測った第1の光学面の後側主点と第2の光学面の前側主点との間隔を、X方向にd2Xとし、Y方向にd2Yとする。Y―Z面に関して対称な光学系の場合、d2Xは各光学面の主光線との交点間の軸上主光線に沿って測った距離と等しくなる。それに対してY方向では、光学面と主光線との交点、及び主点位置は、屈折系の場合は通常一致せず、反射面の場合は一致する。したがって、2つの光学面の合成パワーを、X方向についてφ(1+2)Xとし、Y方向についてφ(1+2)Yとすると、合成パワーφ(1+2)X,φ(1+2)Yは、以下の式(Fr3),(Fr4)でそれぞれ表される(n2:2面間の屈折率)。
φ(1+2)X=φ1X+φ2X−(d2X/n2)・φ1X・φ2X …(Fr3)
φ(1+2)Y={cos(θ2)/cos(θ2P)}φ1Y+{cos(θ1P)/cos(θ1)}φ2Y−(d2Y/n2)φ1Y・φ2Y …(Fr4)
【0035】
共軸光学系の場合は光学素子間の間隔変化のみがパワーの変化となるが、非軸光学系の場合は上記式(Fr3),(Fr4)より、各面のパワー変化の寄与も効果的であることが分かる。特に、面の傾き(つまり回転角度)を変化させることにより、Y方向のパワーを変化させることが可能であることが分かる。したがって、光学面を回転させることにより、倍率のアナモ比を補正することが容易になる。また、ズーミング,フォーカシングのために軸上主光線の入射光線と射出光線を平行にするという制約が必要なく、設計の自由度が増すとともに、非軸光学系の光路の折りたたみ効果を最大限に利用した設計が可能となる。したがって、薄型の光学系を実現することができる。
【0036】
また、屈折系の場合と比較すると、用いる光学面の曲率が同じでも、反射面を用いた場合の方がそのパワーを2〜4倍強くすることができる。さらに、大きくパワーを変化させる場合、屈折系の場合は色収差が大きく発生するため、その補正のための光学素子が必要になり、かえって光学系が大型化してしまう。特に、非軸対称な色収差の補正はかなり複雑であるため、高性能を維持しながら焦点距離を大きく変化させるには反射面を用いるのが望ましい。
【0037】
ここでは、説明を簡単にするため、Y−Z面対称の場合を例に挙げたが、面対称でない場合(いわゆるねじれの場合)でもその考え方は同じである。ただし、ねじれがある場合には、ねじれのある面での入射面の回転の影響を回転行列で与えて対角化する演算を行えば、その光学面での入射面とそれに垂直な方向で1次量が極値をとることになる。1次量は、入射面の回転という形をとりながら各面を移行していく。したがって、非軸ミラーを含む光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させることが、非軸斜め投影光学系の変倍を行う上で非常に有効である。
【0038】
上記観点から、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有する投影光学系にあっては、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させることが好ましい。この構成により、高性能かつコンパクトな構成でありながら、非軸光学系による斜め投影において、像トビの発生なしにズーミングやフォーカシングを行うことが可能となる。このように非軸光学系の部分に特徴のある投影光学系において、更なる性能向上,小型化等を達成する上で望ましい条件、その他の有効な構成を以下に説明する。なお、投影光学系の全体において基準とする座標系は直交座標系(x,y,z)とし、特に断らない限り、各方向を以下のようにとる。z方向は、表示素子面の画面法線方向とする。x方向は、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向とする。y方向は、x方向とz方向に垂直な方向とする。
【0039】
斜め投影による効果を得る上で、以下の条件式(1)を満たすことが望ましい。
30<|θimg|<70 …(1)
ただし、
θimg:スクリーン面の画面法線とスクリーン面へ入射する軸上主光線とが成す角度(°)、
である。
【0040】
投影光学系を薄型化するには、スクリーン面を傾けることが効果的である。条件式(1)の下限を下回ると、斜め投影度合いが弱まり、薄型化の効果が小さくなる。逆に、条件式(1)の上限を上回ると、斜め投影度合いが強くなりすぎて、投影光学系の実質的な画角が広くなり、歪曲や像面湾曲の補正が困難になる。
【0041】
本発明に係る投影光学系は、前述したように全系の焦点距離を変化させることにより、表示素子面とスクリーン面の位置をほぼ一定に保ったまま、拡大倍率を変化させるズーム光学系であることが望ましい。先に説明したように、非軸光学要素の一部又は全部(つまり、偏芯配置された回転非対称な反射ミラー又はそれを含む光学素子群)を平行移動及び回転移動させることにより、スクリーンへ向かう軸上主光線の位置と方向を変えずに、投影光学系全体の焦点距離を変化させることができる。スクリーンを一定の位置で固定した場合に、全系の焦点距離を変化させることにより投影倍率を変えても、スクリーンへ向かう軸上主光線の位置と方向が変わらないため、軸上の像が移動する(つまり位置を変える)ことはない。
【0042】
例えば、1次像点位置上にスクリーン面がある場合を考える。全系の焦点距離が変化する前と後の状態をそれぞれ焦点距離状態I,IIとする。表示素子面の画面法線と、表示素子面から射出する軸上主光線と、が成す角度をθobjとし、スクリーン面の画面法線と、スクリーン面へ入射する軸上主光線と、が成す角度をθimgとする。偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む光学素子群の平行移動と回転移動を行う方法によれば、焦点距離状態Iと焦点距離状態IIとで、これらの角度θobj,θimgが変わらないように焦点距離を変化させることが可能である。
【0043】
ある方向、例えばy方向について考える。焦点距離状態Iの場合のy方向の焦点距離をfyIとし、表示素子面から投影光学系全体の前側焦点まで軸上主光線に沿って測った距離をXyIとする。また、焦点距離状態IIの場合のy方向の焦点距離をfyIIとし、表示素子面から投影光学系全体の前側焦点まで軸上主光線に沿って測った距離をXyIIとする。このとき、焦点距離状態I,IIでのy方向の投影倍率βyI,βyIIは、以下の式(Fr5),(Fr6)でそれぞれ表される。
βyI=(-1)×fyI/XyI×(cos(θimg)/cos(θobj)) …(Fr5)
βyII=(-1)×fyII/XyII×(cos(θimg)/cos(θobj)) …(Fr6)
【0044】
式(Fr5),(Fr6)から分かるように、全系の焦点距離を変化させることにより、スクリーンを一定にしたまま変倍を行うことが可能である。スクリーンを一定にしたまま変倍が可能であると、一時的に拡大投影する場合や空間が限定された部屋でプロジェクターを使用する場合(例えば、スクリーン位置、プロジェクター位置、スクリーンとプロジェクターとの間隔等が制約を受けている場合)にも、所望の拡大倍率を実現することができる。
【0045】
全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、以下の条件式(2)を満たすことが望ましい。
0.2<|θzmov/Zz|<5.0 …(2)
ただし、
θzmov:反射ミラーを含む光学素子群の回転角度(°)、
Zz=fz1/fz2、
fz1:拡大倍率の絶対値が最も小さいときの全系の焦点距離、
fz2:変倍後の全系の焦点距離、
である。
【0046】
条件式(2)は、変倍のために回転移動させる光学素子群の回転角度の大きさについて、好ましい条件範囲を規定している。条件式(2)の上限を越えて回転角度が大きくなると、回転機構が大きくなり、画像投影装置の大型化を招いてしまう。また、光学素子群における面の使用範囲が大きくなるため、その光学素子の有効径が大きくなって大型化とコストアップを招いてしまう。逆に、条件式(2)の下限を越えて回転角度が小さくなりすぎると、回転角度に対する焦点距離の変化の感度が高くなるため、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む光学素子群の製作が困難になる。特に、角度の誤差による軸上主光線の変化が大きくなると、位置制御機構の精度を上げる必要がでてくるため、移動の機構も高価になる。例えば、位置検出用にセンサーを用いたり、バックラッシュの少ない回転機構が必要になる。バックラッシュがあった場合は、拡大側への変倍時と縮小側への変倍時とで軸上主光線位置が違う軌跡を描くため、変倍時に像のゆれが起こり、不快な映像が形成されることになる。また、位置制御精度を上げることによりチャタリングを起こす可能性もあり、これを防ぐための機構対策、(回路,ソフト等による)制御対策等が必要となるため、画像投影装置は非常に高価なものとなってしまう。
【0047】
全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、以下の条件式(3)を満たすことが望ましい。
0.01<|Szmov/(Zz×fz1)|<5.0 …(3)
ただし、
Szmov:反射ミラーを含む光学素子群の平行移動の距離、
Zz=fz1/fz2、
fz1:拡大倍率の絶対値が最も小さいときの全系の焦点距離、
fz2:変倍後の全系の焦点距離、
である。
【0048】
条件式(3)は、変倍のために平行移動させる光学素子群の移動量の大きさについて、好ましい条件範囲を規定している。条件式(3)の上限を越えて移動量が大きくなりすぎると、移動のために大きなスペースが必要となるため、投影光学系全体がコンパクトにならなくなる。逆に、条件式(3)の下限を越えて移動量が小さくなりすぎると、変倍に対する感度が高くなりすぎるため、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む光学素子群の製作が困難になる。
【0049】
以下の条件式(3a)を満たすことが更に望ましい。
0.5<|Szmov/(Zz×fz1)|<4.0 …(3a)
この条件式(3a)は、上記条件式(3)が規定している条件範囲のなかでも、上記観点等に基づいた更に好ましい条件範囲を規定している。
【0050】
全系の焦点距離変化による変倍での任意の焦点距離状態において、以下の条件式(4)及び(5)を満たすことが望ましい。
-50<(Sz1st_ximg−Szx_design)/fzx<20 …(4)
-50<(Sz1st_yimg−Szy_design)/fzy<20 …(5)
ただし、物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイとし、表示素子面の画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向とし、x方向とz方向に垂直な方向をy方向とすると、
Sz1st_ximg:x方向光線の後側主点位置からx方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Szx_design:x方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
fzx:x方向の全系の焦点距離、
Sz1st_yimg:y方向光線の後側主点位置からy方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Szy_design:y方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
fzy:y方向の全系の焦点距離、
である。
【0051】
ある任意の倍率状態でのx方向,y方向の焦点距離を、それぞれfx,fyとする。その状態において、各方向の前側焦点から表示素子面までの、軸上主光線に沿った距離を、それぞれΔx,Δyとする。それぞれの方向の後側主点位置から軸上主光線に沿って測ったそれぞれの方向の1次像点位置までの距離を、それぞれS1st_ximg,S1st_yimgとする。また、その状態において、それぞれの方向の後側主点位置から設計像面までの距離を、それぞれSx_design,Sy_designとする。
【0052】
今、表示素子面とスクリーン面が、Y−Z断面に沿って傾いている(つまり、x軸回りに回転した状態にある)ものとする。表示素子面の画面法線と、表示素子面から射出する軸上主光線と、の成す角度をθobjとし、スクリーン面の画面法線と、スクリーン面へ入射する軸上主光線と、の成す角度をθimgとする。また、表示素子面からの軸上主光線の射出角度をθyとし、スクリーン面への軸上主光線の入射角度をθ'yとする。このとき、x方向,y方向の投影倍率βx,βyは、以下の式(Fr7),(Fr8)でそれぞれ表される。
βx=(fx/Δx)・(Sx_design/S1st_ximg) …(Fr7)
βy=(fy/Δy)・(Sy_design/S1st_yimg)・(cosθy/cosθ'y) …(Fr8)
【0053】
投影倍率のアナモ比は、βx/βyで表される。通常、ズーミング中のアナモ比は一定であることが望ましい。ズーミング中に設計像面(つまり、スクリーン面に相当する設計上の結像面)がほぼ1次像面(つまり、共軸光学系での近軸像面に相当するピント位置)上にある場合、ズーミングにおける投影倍率の変化では焦点距離fxと焦点距離fyの変化が支配的である。しかしながら、表示素子面の傾きとスクリーン面の傾きが、y方向の投影倍率に影響を与えることになる。例えば、x方向の焦点距離とy方向の焦点距離が同じだけ変化した場合、表示素子面とスクリーン面の傾きの影響がy方向のみにかかり、このためアナモ比が大きく変化することになる。したがって、アナモ比を一定にしたズーミングを行うためには、設計像面の位置を1次像面の位置からずらす必要がある。つまり、1次像面の位置を変化させることにより、アナモ比を一定にすることができる。しかしながら、1次像面位置と設計像面位置が大きく乖離していると、ピント位置がズレて性能が低下してしまう。条件式(4),(5)は、1次像面位置と設計像面位置とのズレの許容できる範囲を規定している。条件式(4),(5)で規定している条件範囲を外れて、設計像面が1次像面位置から大きく外れると、ピントのズレが生じて性能が低下することになる。
【0054】
本発明に係る投影光学系は、前記ズーム光学系として、回転非対称な光学面を持つ光学要素の平行移動と回転移動により、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することが望ましい。一般に光学系では、以下の式(Fr9)で表される倍率関係が成り立つ。ただし、ΔX'は後側焦点から像面までの距離、ΔXは前側焦点から物体までの距離、fは光学系の焦点距離である。
ΔX'=−f2/ΔX …(Fr9)
【0055】
通常の投影系では、スクリーン位置が変化したとき、ΔXを変化させてΔX'の値を変化させることにより、ピント位置が調整される。上記式(Fr9)は、それと同時に、光学系の焦点距離fを変化させることにより、ΔX'の値を変化させることが可能であることを示している。前述したように、偏芯した非回転対称な光学素子(例えば反射ミラー)を移動させることにより、非軸光学系全体の焦点距離を変化させることが可能である。また、全系の焦点距離を変化させるだけであれば、共軸系の部分を移動させればよい。しかしながら、フォーカシングにはズーミングで移動させている部分を用いることが好ましい。ズーミングで移動させている部分を移動させてフォーカシングにも利用すれば、フォーカシングのために新たな移動機構を必要とせず、コストを低く抑えることが可能となるからである。
【0056】
前記ズーム光学系に限らず、本発明に係る投影光学系は、全系の焦点距離を変化させることにより、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することが望ましい。今、x方向の光線についてのフォーカシングを考える。あるスクリーン面位置に対するフォーカス投影状態(状態IIIとする。)において、全系の焦点距離をfxIII、前側焦点から表示素子面までの距離をΔXxIII、後側焦点からスクリーン面位置までの距離をΔX'xIIIとする。スクリーン面位置に1次像点があるとき、以下の式(Fr10)が成り立つ。
ΔX'xIII=−fxIII2/ΔXxIII …(Fr10)
【0057】
次に、スクリーン面位置を変化させてピントを合わせたときのフォーカス投影状態(状態IVとする。)において、全系の焦点距離をfxIV、前側焦点から表示素子面までの距離をΔXxIV、後側焦点からスクリーン面位置までの距離をΔX'xIVとする。このとき、以下の式(Fr11)が成り立つ。
ΔX'xIV=−fxIV2/ΔXxIV …(Fr11)
【0058】
上記状態IVのときもスクリーン面位置に1次像点があると考えると、スクリーン面を状態IIIから状態IVに変化させた場合でもピントが合っているためには、通常、ΔX'xIVがスクリーン面位置にくるようにΔX'xを変化させればよい。しかしながら、非軸光学系の場合には、焦点距離fxを変化させることによってこれを実現することができる。つまり、焦点距離を変化させることによってピント合わせが可能となる。ΔX'xを変化させるために光学系全体を移動させるよりも、焦点距離を変化させるように非軸光学要素の一部を移動させる方が、重量的にもより移動させやすい。また、表示素子面から射出する軸上主光線と、スクリーン面へ入射する軸上主光線と、が平行でない場合、全体を移動させると像の中心が移動してしまうため、像トビのような現象を起こる。前述したように、非軸光学要素の一部又は全部(つまり、偏芯配置された回転非対称な反射ミラー又はそれを含む光学素子群)を平行移動及び回転移動させる方法によれば、像の中心を移動させずに全系の焦点距離を変化させることが可能である。さらに、投影光学系全体を大きく移動させず、光学系の一部を移動させるだけで済むというメリットもある。したがって、全系の焦点距離を変化させてフォーカシングを行う構成が望ましい。
【0059】
全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、以下の条件式(6)を満たすことが望ましい。
0.2<|θfmov/Zfoc|<8.0 …(6)
ただし、
θfmov:反射ミラーを含む光学素子群の回転角度(°)、
Zfoc=ff1/ff2、
ff1:最近接投影状態での全系の焦点距離、
ff2:フォーカス後の全系の焦点距離、
である。
【0060】
条件式(6)は、フォーカシングのために回転移動させる光学素子群の回転角度の大きさについて、好ましい条件範囲を規定している。条件式(6)の上限を越えて回転角度が大きくなると、回転機構が大きくなり、画像投影装置の大型化を招いてしまう。また、光学素子群における面の使用範囲が大きくなるため、その光学素子の有効径が大きくなって大型化とコストアップを招いてしまう。逆に、条件式(6)の下限を越えて回転角度が小さくなりすぎると、回転角度に対する焦点距離の変化の感度が高くなるため、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む光学素子群の製作が困難になる。特に、角度の誤差による軸上主光線の変化が大きくなると、位置制御機構の精度を上げる必要がでてくるため、移動の機構も高価になる。例えば、位置検出用にセンサーを用いたりして、位置ズレを小さくする必要がある。そのため、画像投影装置は非常に高価なものとなってしまう。
【0061】
全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、以下の条件式(7)を満たすことが望ましい。
0.05<|Sfmov/(Zfoc×ff1)|<7.0 …(7)
ただし、
Sfmov:反射ミラーを含む光学素子群の平行移動の距離、
Zfoc=ff1/ff2、
ff1:最近接投影状態での全系の焦点距離、
ff2:フォーカス後の全系の焦点距離、
である。
【0062】
条件式(7)は、フォーカシングのために平行移動させる光学素子群の移動量の大きさについて、好ましい条件範囲を規定している。条件式(7)の上限を越えて移動量が大きくなりすぎると、移動のために大きなスペースが必要となるため、投影光学系全体がコンパクトにならなくなる。逆に、条件式(7)の下限を越えて移動量が小さくなりすぎると、フォーカシングに対する感度が高くなりすぎるため、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む光学素子群の製作が困難になる。
【0063】
以下の条件式(7a)を満たすことが更に望ましい。
0.5<|Sfmov/(Zfoc×ff1)|<3.0 …(7a)
この条件式(7a)は、上記条件式(7)が規定している条件範囲のなかでも、上記観点等に基づいた更に好ましい条件範囲を規定している。
【0064】
全系の焦点距離変化によるフォーカシングでの任意の焦点距離状態において、以下の条件式(8)及び(9)を満たすことが望ましい。
-50<(Sf1st_ximg−Sfx_design)/ffx<20 …(8)
-50<(Sf1st_yimg−Sfy_design)/ffy<20 …(9)
ただし、物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイとし、表示素子面の画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向とし、x方向とz方向に垂直な方向をy方向とすると、
Sf1st_ximg:x方向光線の後側主点位置からx方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Sfx_design:x方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
ffx:x方向の全系の焦点距離、
Sf1st_yimg:y方向光線の後側主点位置からy方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Sfy_design:y方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
ffy:y方向の全系の焦点距離、
である。
【0065】
ある任意のフォーカス投影状態でのx方向,y方向の焦点距離を、それぞれfx,fyとする。その状態において、各方向の前側焦点から表示素子面までの、軸上主光線に沿った距離を、それぞれΔx,Δyとする。それぞれの方向の後側主点位置から軸上主光線に沿って測ったそれぞれの方向の1次像点位置までの距離を、それぞれS1st_ximg,S1st_yimgとする。また、その状態において、それぞれの方向の後側主点位置から設計像面までの距離を、それぞれSx_design,Sy_designとする。
【0066】
今、表示素子面とスクリーン面が、Y−Z断面に沿って傾いている(つまり、x軸回りに回転した状態にある)ものとする。表示素子面の画面法線と、表示素子面から射出する軸上主光線と、の成す角度をθobjとし、スクリーン面の画面法線と、スクリーン面へ入射する軸上主光線と、の成す角度をθimgとする。また、表示素子面からの軸上主光線の射出角度をθyとし、スクリーン面への軸上主光線の入射角度をθ'yとする。このとき、x方向,y方向の投影倍率βx,βyは、以下の式(Fr7),(Fr8)でそれぞれ表される。
βx=(fx/Δx)・(Sx_design/S1st_ximg) …(Fr7)
βy=(fy/Δy)・(Sy_design/S1st_yimg)・(cosθy/cosθ'y) …(Fr8)
【0067】
投影倍率のアナモ比は、βx/βyで表される。通常、フォーカシング中のアナモ比は一定であることが望ましい。フォーカシング中に設計像面(つまり、スクリーン面に相当する設計上の結像面)がほぼ1次像面(つまり、共軸光学系での近軸像面に相当するピント位置)上にある場合、フォーカシングの投影倍率の変化では焦点距離fxと焦点距離fyの変化が支配的である。しかしながら、表示素子面の傾きとスクリーン面の傾きが、y方向の投影倍率に影響を与えることになる。例えば、x方向の焦点距離とy方向の焦点距離が同じだけ変化した場合、表示素子面とスクリーン面の傾きの影響がy方向のみにかかり、このためアナモ比が大きく変化することになる。したがって、アナモ比を一定にしたフォーカシングを行うためには、設計像面の位置を1次像面の位置からずらす必要がある。つまり、1次像面の位置を変化させることにより、アナモ比を一定にすることができる。しかしながら、1次像面位置と設計像面位置が大きく乖離していると、ピント位置がズレて性能が低下してしまう。条件式(8),(9)は、1次像面位置と設計像面位置のずれの許容できる範囲を規定している。条件式(8),(9)で規定している条件範囲を外れて、設計像面が1次像面位置から大きく外れると、ピントのズレが生じて性能が低下することになる。
【0068】
回転非対称な反射ミラーを平行移動及び回転移動させることにより、異なるスクリーン位置にフォーカスすることが可能であり、また、異なる投影倍率で用いるためにズーミングさせることも可能であることは、すでに述べた通りである。これらのことから、本発明に係る投影光学系を、2つ以上のスクリーン位置に対し別々に単焦点の投影光学系として用いることが可能であり、また、2つ以上の投影倍率で別々に単焦点の投影光学系として用いることが可能であることは明らかである。
【0069】
例えば、異なる2つのスクリーン位置に拡大投影する仕様の投影光学系が必要となる場合や異なる2つの投影倍率の投影光学系が必要となる場合には、通常、2つの投影光学系が必要である。しかしながら、本発明に係る投影光学系を用いれば、2つの投影光学系は不要であり、1つの投影光学系で十分である。そして、それらの仕様を満たすには、少なくとも1面の偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群を平行移動及び回転移動させればよい。そのような調整を行うことにより、1つの投影光学系で異なった仕様の画像投影装置に対応することが可能となる。したがって、大幅なコストダウンが可能となる。また、実際の画像投影装置を個々に微調整する際にも上記光学素子群の平行移動及び回転移動を利用することができる。
【0070】
したがって、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、あるスクリーン位置に投影する状態と、その状態とは異なるスクリーン位置に投影する状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することにより、少なくとも2つのスクリーン位置に拡大投影する仕様に対応したりその微調整を行ったりすることが可能となる。また、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、ある投影倍率状態と、その状態とは異なる別の投影倍率状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することにより、少なくとも2つの投影倍率で拡大投影する仕様に対応したりその微調整を行ったりすることが可能となる。
【0071】
次に、本発明に係る投影光学系の具体的な光学構成を、第1〜第4の実施の形態を例に挙げて説明する。図1〜図4に、第1〜第4の実施の形態における表示素子面SGからスクリーン面SLまでの投影光路全体の光学構成(光学配置,投影光路等)を、表示素子面SGの画面長辺方向に沿って見たときの光学断面(短辺側断面)でそれぞれ示す。また、図1〜図4に示す光学構成の要部(表示素子面SGから第2曲面ミラーM2まで)を、それぞれ図5〜図8に拡大して示す。図1(A)ではズーミングにおける広角端,フォーカシングにおける最近接投影状態での光学配置を示しており、図1(B)ではズーミングにおける望遠端,フォーカシングにおける最近接投影状態での光学配置を示している。図2ではズーミングにおける広角端,フォーカシングにおける最近接投影状態での光学配置を示しており、図3及び図4では、フォーカシングにおける最近接投影状態での光学配置を示している。なお、図1〜図8では、表示素子面SGの画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向、それらと垂直な方向をy方向とする直交座標系(x,y,z)において、第1〜第4の実施の形態の光学構成をy−z断面で示している。なお、各実施の形態では、x方向は表示素子面SGの画面短辺方向、y方向は表示素子面SGの画面長辺方向と一致している。
【0072】
第1,第2の実施の形態の投影光学系POは、フォーカシング機能とズーミング機能を有するズーム光学系であり、縮小側(表示素子面SG側)から拡大側(スクリーン面SL側)にかけて順に、複数の第iレンズLi(i=1,2,3,...)等で構成された屈折光学系LGと、第1曲面ミラーM1と、第2曲面ミラーM2と、平面ミラーMFと、から成っている。また、第1曲面ミラーM1と第2曲面ミラーM2との間の空間には中間像が形成され、スクリーン面SLとスクリーン面SLへ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではない、いわゆる斜め拡大投影が行われる構成になっている。
【0073】
第3,第4の実施の形態の投影光学系POは、フォーカシング機能を有する光学系であり、縮小側(表示素子面SG側)から拡大側(スクリーン面SL側)にかけて順に、複数の第iレンズLi(i=1,2,3,...)等で構成された屈折光学系LGと、第1曲面ミラーM1と、第2曲面ミラーM2と、から成っている。また、第1曲面ミラーM1と第2曲面ミラーM2との間の空間には中間像が形成され、スクリーン面SLとスクリーン面SLへ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではない、いわゆる斜め拡大投影が行われる構成になっている。
【0074】
第1〜第4の実施の形態において、第1曲面ミラーM1と第2曲面ミラーM2は、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーであり、その反射面形状は自由曲面から成っている。投影光学系POはyz平面に関して面対称になっている。また、第1,第2曲面ミラーM1,M2の反射面形状は面対称であり、その対称面はyz平面である。第1〜第4の実施の形態の投影光学系POは、全系の焦点距離を変化させることにより、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有している。さらに第1,第2の実施の形態の投影光学系POは、全系の焦点距離を変化させることにより、表示素子面とスクリーン面の位置をほぼ一定に保ったまま、拡大倍率を変化させるズーミング機能を有している。そして、フォーカシング,ズーミングのうちの少なくとも一方を行う際、全系の焦点距離を変化させるために、少なくとも第1,第2曲面ミラーM1,M2がそれぞれ平行移動と回転移動を行う構成になっている。
【0075】
第1の実施の形態では、ズーミングにおいて、第1〜第4レンズL1〜L4と、第5〜第7レンズL5〜L7と、がそれぞれ平行移動を行い、第8レンズL8と、第1曲面ミラーM1と、第2曲面ミラーM2と、がそれぞれ平行移動と回転移動を行う。また、フォーカシングにおいては、第8レンズL8が平行移動と回転移動を行う。第2の実施の形態では、ズーミングにおいて、第1〜第4レンズL1〜L4と、第5〜第7レンズL5〜L7と、がそれぞれ平行移動を行い、第8レンズL8と、第1曲面ミラーM1と、第2曲面ミラーM2と、がそれぞれ平行移動と回転移動を行う。また、フォーカシングにおいては、第1曲面ミラーM1と、第2曲面ミラーM2と、がそれぞれ平行移動と回転移動を行う。第3の実施の形態では、フォーカシングにおいて、第5レンズL5が平行移動を行い、第2曲面ミラーM2が平行移動と回転移動を行う。第4の実施の形態では、フォーカシングにおいて、第1曲面ミラーM1が平行移動と回転移動を行う。
【0076】
上記のように第1〜第4の実施の形態では、少なくとも第1曲面ミラーM1又は第2曲面ミラーM2の平行移動と回転移動により全系の焦点距離が変化するので、投影光学系の高性能化とコンパクト化を達成しながら、非軸光学系による斜め投影において像トビの発生なしにズーミングやフォーカシングを行うことができる。第1,第2曲面ミラーM1,M2は、それぞれが偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む光学素子群であり、各光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させるが、各実施の形態から分かるように、全系の焦点距離を変化させる際には、第1,第2曲面ミラーM1,M2以外の光学素子群(レンズ群等)を移動させてもよい。つまり、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群を移動群の1つとして、少なくともその平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させる構成であればよい。
【0077】
各実施の形態の投影光学系POでは、表示素子面SGからスクリーン面SLまでの間に、第1,第2曲面ミラーM1,M2や平面ミラーMFで構成された反射面が配置されている。各実施の形態のように、表示素子面からスクリーン面までの間に1面又は2面の反射面を有することが望ましい。反射面で光路を折り曲げることにより、投影光学系をコンパクトにすることができる。反射面の枚数を多くすれば、投影光学系をより一層コンパクトにすることが可能である。したがって、投影光学系は反射面を2面以上有することが望ましい。反射面を2面以上有することにより、投影光学系をスクリーン面に対して略平行な方向に折り曲げることができる。これにより、スクリーンの奥行き方向に投影光学系のサイズを小さくすることが可能となり、投影光学系の投影空間を縮小することが可能となる。投影光学系中に反射面を追加して光路を折り曲げ、スクリーンの高さ方向に投影光学系のサイズを縮小することも可能である。
【0078】
すべての反射面がパワーを有することが望ましい。反射面にパワーを持たせることによって反射面での収差補正が可能となり、投影光学系全体の収差を補正することが可能となる。したがって、すべての反射面にパワーを持たせることにより、より高い光学性能を得ることが可能となる。
【0079】
パワーを有する反射面は自由曲面形状を有することが望ましい。自由曲面形状には、設計の自由度が高いため光線の偏向方向を設定する自由度が高い、というメリットがある。また、自由曲面形状を用いることにより、像面の倒れや非点収差等の収差を良好に補正することができる。さらに、反射面に用いる自由曲面は1面の対称面を有することが望ましい。対称面を有する自由曲面には、製造や評価における難易度が低いというメリットがある。
【0080】
投影光学系中の最もスクリーン面に近い位置に反射面を設置することが望ましい。スクリーン面に近い位置に反射面を設置して光路を折り曲げることにより、画像の投影に必要な空間をコンパクトにすることができる。また、反射面に入射する各画角の光束が分離しているので、そこに自由曲面形状を有する反射面を配置することにより、高い収差補正効果を得ることができる。
【0081】
自由曲面を含むミラーの基盤や屈折レンズはプラスチック材料から成ることが望ましい。自由曲面を含む光学素子(ミラー,レンズ等)の構成材料としてプラスチックを使用することにより、光学素子のコストダウンを達成することが可能となる。例えば、後述する実施例3,4の第8レンズL8はアナモフィック非球面を有するガラスレンズであるが、それをプラスチックレンズに代えることができる。
【0082】
各実施の形態の投影光学系POは、パワーを有する屈折光学素子から成る屈折光学系LGを有している。各実施の形態のように、投影光学系はパワーを有する屈折光学素子を少なくとも1つ有することが望ましい。パワーを有する屈折光学素子を用いることにより、色合成プリズムで発生する色収差等、反射面のみでは補正できない収差を補正することが可能となる。なお、本発明の特徴的構成は、屈折光学素子を有する投影光学系に適用する場合に限らず、ミラーのみを有する投影光学系に適用する場合でも、同様にその効果を発揮することができる。
【0083】
屈折面として、x軸方向とy軸方向とでパワーの異なる面(つまりアナモフィック非球面)を用いることが望ましい。x軸方向とy軸方向とでパワーの異なる屈折面を用いることにより、x軸方向とy軸方向とで非対称な収差を補正することができる。x軸方向とy軸方向とでパワーの異なる屈折面は、スクリーン面に近い面として用いることが好ましい。ただし、最もスクリーン面に近い面では各画角の光束が分離しているため、高い収差補正の効果を得るために、自由曲面形状を有する反射面を配置することが望ましい。
【0084】
ズーミング時には、2面の偏芯配置された非回転対称な反射面を移動させることが、ズーミングによる収差変動を良好に補正できるため好ましい。また、フォーカシング時には、1面又は2面の偏芯配置された非回転対称な反射面を移動させることが、フォーカシングによる収差変動を良好に補正できるため好ましい。また、2面の偏芯配置された非回転対称な透過面を有する光学素子を移動させることが、フォーカシングによる収差変動を良好に補正できるため好ましい。さらに、フォーカシング時には1つの反射光学素子と1つの屈折光学素子との合計2つの光学素子を移動させることが、フォーカシングによる収差変動を良好に補正できるため好ましい。もちろん、反射光学素子のみ又は屈折光学素子のみを用いて、フォーカシングを行うことも可能である。
【0085】
投影光学系内でいったん中間像を形成した後、その中間像を反射面でスクリーン面上に結像させることが望ましい。中間像よりもスクリーン面側に位置する光学素子で発生する歪曲を相殺するように、中間像に収差を与えることによって、広角な投影光学系でありながらスクリーン面上で良好な光学性能を得ることが可能となる。また、中間像を形成することにより、反射面の大きさを小さくすることができるので、反射面の製造が容易になる。
【0086】
最もスクリーン面に近い反射面は凹面であることが望ましい。最もスクリーン面に近い反射面として凹面反射面を用いることにより、凹面反射面のパワーによって中間像を結像させることができる。したがって、中間像の収差を用いて、歪曲や像面の傾き等、投影光学系全体の収差を補正することが可能となる。最もスクリーン面に近い反射面が凸面反射面である場合、いったん形成した中間像をスクリーン面上で結像させるために、凸面ミラーのほかに正パワーの光学素子が必要となる。このため、中間像を形成する構成ではコンパクト化が困難になる。したがって、最もスクリーン面に近い反射面が凸面反射面であり、中間像を形成しない場合には、収差補正のために自由曲面形状の屈折光学素子や反射光学素子を追加することが望ましい。
【0087】
第1〜第4の実施の形態は、表示画像をスクリーン面SL上に拡大投影する、画像投影装置用の投影光学系POである。したがって、表示素子面SGは光強度の変調等により2次元画像を形成する画像形成面に相当し、スクリーン面SLはその投影像面に相当する。各実施の形態では表示素子としてデジタル・マイクロミラー・デバイスを想定しているが、表示素子はこれに限らず、各実施の形態の投影光学系POに適した他の非発光・反射型(又は透過型)の表示素子(例えば液晶表示素子)を用いても構わない。表示素子としてデジタル・マイクロミラー・デバイスを用いた場合、その表示素子面SGを照明光学系で照明すると、表示素子面SGに入射した光は、ON/OFF状態(例えば±12°の傾き状態)の各マイクロミラーで反射されることにより空間的に変調される。その際、ON状態のマイクロミラーで反射した光のみが投影光学系POに入射してスクリーン面SLに投射される。
【0088】
以上の説明から分かるように、上述した各実施の形態や後述する各実施例には以下の投影光学系及び画像投影装置の構成が含まれている。その構成によると、前述したように、投影光学系の高性能化とコンパクト化を達成しながら、非軸光学系による斜め投影において像トビの発生なしにズーミングやフォーカシングを行うことが可能である。
【0089】
(T1) 表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群を移動群として、少なくとも前記光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させることを特徴とする投影光学系。
【0090】
(T2) 前記条件式(1)を満たすことを特徴とする上記(T1)記載の投影光学系。
【0091】
(T3) 全系の焦点距離を変化させることにより、表示素子面とスクリーン面の位置をほぼ一定に保ったまま、拡大倍率を変化させるズーム光学系であることを特徴とする上記(T1)又は(T2)記載の投影光学系。
【0092】
(T4) 全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、前記条件式(2),(3),(3a)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする上記(T3)記載の投影光学系。
【0093】
(T5) 全系の焦点距離変化による変倍での任意の焦点距離状態において、前記条件式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする上記(T3)又は(T4)記載の投影光学系。
【0094】
(T6) 前記ズーム光学系が、回転非対称な光学面を持つ光学要素の平行移動と回転移動により、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することを特徴とする上記(T3)〜(T5)のいずれか1項に記載の投影光学系。
【0095】
(T7) 全系の焦点距離を変化させることにより、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することを特徴とする上記(T1)又は(T2)記載の投影光学系。
【0096】
(T8) 全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、前記条件式(6),(7),(7a)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする上記(T7)記載の投影光学系。
【0097】
(T9) 全系の焦点距離変化によるフォーカシングでの任意の焦点距離状態において、前記条件式(8)及び(9)を満たすことを特徴とする上記(T7)又は(T8)記載の投影光学系。
【0098】
(T10) 表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、あるスクリーン位置に投影する状態と、その状態とは異なるスクリーン位置に投影する状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することを特徴とする投影光学系。
【0099】
(T11) 表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、ある投影倍率状態と、その状態とは異なる別の投影倍率状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することを特徴とする投影光学系。
【0100】
(U1) 2次元画像を形成する表示素子と、その表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系と、を備えた画像投影装置であって、前記投影光学系が、上記(T1)〜(T11)のいずれか1項に記載の投影光学系であることを特徴とする画像投影装置。
【0101】
(U2) 2次元画像を形成する表示素子と、その表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系と、を備え、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではない画像投影装置であって、前記投影光学系が、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群を移動群として、少なくとも前記光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させることを特徴とする画像投影装置。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施した投影光学系等を、コンストラクションデータ等を挙げて更に具体的に説明する。ここで挙げる実施例1〜4は、前述した第1〜第4の実施の形態にそれぞれ対応する数値実施例であり、第1〜第4の実施の形態の光学構成を表す光路図(図1〜図4,図4〜図8)は、対応する実施例1〜4の光学配置,投影光路等をそれぞれ示している。
【0103】
表1〜表27に、実施例1〜4のコンストラクションデータを示す。表1,表7,表13,表19に示す基本的な光学構成では(実施例1,2では広角端,最近接投影状態、実施例3,4では最近接投影状態を基本配置としている。)、縮小側の表示素子面SG(S0:表示素子の画像表示面であり、物面に相当する。)から拡大側のスクリーン面SL(像面に相当する。)までを含めた系において、Si(面番号:i=0,1,2,3,...)が縮小側から数えてi番目の面であり、ri(i=0,1,2,3,...)が面Siの曲率半径(mm)である。また、di(i=0,1,2,3,...)は面Siと面Si+1との間の軸上面間隔(mm,ただし、偏心面間隔の場合には偏心データとして、又は偏芯データとあわせて記載する。)であり、Ni(i=0,1,2,3,...),νi(i=0,1,2,3,...)は軸上面間隔diに位置する光学材料のd線に対する屈折率(Nd),アッベ数(νd)をそれぞれ示している。
【0104】
偏心した面については面Siの対応する欄*にAを付して示し、その偏心データを表2,表8,表14,表20に示す。偏心データは右手系の直交座標系(X,Y,Z)に基づいて表現されており、その直交座標系(X,Y,Z)では座標基準とする面Siの中心位置を原点(0,0,0)とする面頂点座標(X,Y,Z)={X軸方向の平行偏心位置(mm),Y軸方向の平行偏心位置(mm),Z軸方向の平行偏心位置(mm)}で、平行偏心した面の位置を表すとともに、その面の面頂点を中心とする各軸周りの回転角度(X回転,Y回転,Z回転)で面の傾き(°)を表す。なお、座標基準とする面Siが表示素子面S0である場合、表示素子面S0の画面法線方向をz方向とし、表示素子面S0の画面短辺方向をy方向とし、表示素子面S0の画面長辺方向をx方向とする直交座標系(x,y,z)が、座標基準とする面Siの直交座標系(X,Y,Z)であり、各光路図(図1〜図8)において、X軸方向は紙面に対して垂直方向であり(紙面の裏面方向を正とし、紙面に向かって反時計回りをX回転の正とする。)、Y軸方向はX軸とZ軸により右手系をなす方向(紙面と平行)である。
【0105】
ズーミングにより移動する面については面Siの対応する欄*にBを付して示し、そのズームデータを表3,表9に示す(フォーカス投影状態は最近接投影状態であり、ズームポジションPOSは、広角端W,ミドル(中間焦点距離状態)M及び望遠端Tである。)。ズームデータは軸上面間隔diと右手系の直交座標系(X,Y,Z)に基づいて表現されており、その直交座標系(X,Y,Z)では座標基準とする面Siの中心位置を原点(0,0,0)とする面頂点座標(X,Y,Z)={X軸方向の平行移動位置(mm),Y軸方向の平行移動位置(mm),Z軸方向の平行移動位置(mm)}で、平行移動した面の位置を表すとともに、その面の面頂点を中心とする各軸周りの回転角度(X回転,Y回転,Z回転)で面の傾き(°)を表す。なお、座標基準とする面Siが表示素子面S0である場合、表示素子面S0の画面法線方向をz方向とし、表示素子面S0の画面短辺方向をy方向とし、表示素子面S0の画面長辺方向をx方向とする直交座標系(x,y,z)が、座標基準とする面Siの直交座標系(X,Y,Z)であり、各光路図(図1〜図8)において、X軸方向は紙面に対して垂直方向であり(紙面の裏面方向を正とし、紙面に向かって反時計回りをX回転の正とする。)、Y軸方向はX軸とZ軸により右手系をなす方向(紙面と平行)である。
【0106】
フォーカシングにより移動する面については面Siの対応する欄*にCを付して示し、そのズームデータを表4,表10,表15,表21に示す(最近接投影状態から遠距離投影状態へとフォーカシングが行われ、ズームポジションPOSは、広角端W,ミドル(中間焦点距離状態)M及び望遠端Tである。)。フォーカスデータは軸上面間隔diと右手系の直交座標系(X,Y,Z)に基づいて表現されており、その直交座標系(X,Y,Z)では座標基準とする面S0の中心位置を原点(0,0,0)とする面頂点座標(X,Y,Z)={X軸方向の平行移動位置(mm),Y軸方向の平行移動位置(mm),Z軸方向の平行移動位置(mm)}で、平行移動した面の位置を表すとともに、その面の面頂点を中心とする各軸周りの回転角度(X回転,Y回転,Z回転)で面の傾き(°)を表す。ただし、フォーカシングにより変化しないデータに関しては記載を省略する。なお、座標基準とする表示素子面S0の直交座標系(X,Y,Z)において、表示素子面S0の画面法線方向がZ方向、表示素子面S0の画面短辺方向がY方向、表示素子面S0の画面長辺方向がX方向であり、各光路図(図1〜図8)において、X軸方向は紙面に対して垂直方向であり(紙面の裏面方向を正とし、紙面に向かって反時計回りをX回転の正とする。)、Y軸方向はX軸とZ軸により右手系をなす方向(紙面と平行)である。
【0107】
回転対称な非球面から成る面Siについては、面Siの対応する欄#にAを付して示す。回転対称な非球面から成る面Siは、その面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x,y,z)を用いた以下の式(AS)で定義される。表5,表11,表16,表22に、各実施例の非球面データを示す。ただし、表記の無い項の係数は0であり、すべてのデータに関してE−n=×10-nである。
z=(c・h2)/[1+√{1−(1+K)・c2・h2}]+A・h4+B・h6+C・h8+D・h10+E・h12+F・h14+G・h16+H・h18+J・h20 …(AS)
ただし、式(AS)中、
z:高さhの位置でのz軸方向の変位量(面頂点基準)、
h:z軸に対して垂直な方向の高さ(h2=x2+y2)、
c:面頂点での曲率(=1/ri)、
K:円錐係数、
A,…,J:非球面係数、
である。
【0108】
アナモフィック非球面から成る面Siについては、面Siの対応する欄#にBを付して示す。アナモフィック非球面から成る面Siは、その面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x,y,z)を用いた以下の式(BS)で定義される。表17,表23に、実施例3,4のアナモフィック非球面データを示す。ただし、表記の無い項の係数は0であり、すべてのデータに関してE−n=×10-nである。
z=(CUX・x2+CUY・y2)/[1+√{1−(1+KX)・CUX2・x2−(1+KY)・CUY2・y2}]+AR・{(1−AP)・x2+(1+AP)・y2}2+BR・{(1−BP)・x2+(1+BP)・y2}3+CR・{(1−CP)・x2+(1+CP)・y2}4+DR・{(1−DP)・x2+(1+DP)・y2}5 …(BS)
ただし、式(BS)中、
x,y:z軸に対して垂直な平面内での直交座標、
z:座標(x,y)の位置でのz軸方向の変位量(面頂点基準)、
CUX:面頂点でのx軸方向の曲率、
CUY:面頂点でのy軸方向の曲率、
KX:x軸方向の円錐係数、
KY:y軸方向の円錐係数、
AR,BR,CR,DR:円錐からの4次,6次,8次,10次の変形係数の回転対称成分、
AP,BP,CP,DP:円錐からの4次,6次,8次,10次の変形係数の非回転対称成分、
である。
【0109】
自由曲面から成る面Siについては、面Siの対応する欄#にCを付して示す。自由曲面から成る面Siは、その面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x,y,z)を用いた以下の式(CS)で定義される。表6,表12,表18,表24に、各実施例の多項式自由曲面データを示す。ただし、表記の無い項の係数は0であり、すべてのデータに関してE−n=×10-nである。
【0110】
【数1】
…(CS)
【0111】
ただし、式(CS)中、
z:高さhの位置でのz軸方向の変位量(面頂点基準)、
h:z軸に対して垂直な方向の高さ(h2=x2+y2)、
c:近軸曲率(=1/ri)、
k:円錐係数、
Cj:多項式自由曲面係数、
であり、自由曲面項は以下の式(CF)で表される。
【0112】
【数2】
…(CF)
【0113】
表25に、ズーミングにおいて一体的に移動する光学素子群と、フォーカシングにおいて一体的に移動する光学素子群と、について、平行移動の移動量ΔS(mm)及び移動方向φ(°)と、回転移動の回転角度θ(°)を示す。平行移動の移動方向φは、図24(A)に示すようにz軸を基準とした左回りを正とし、回転移動の回転角度θは、図24(B)に示すように左回りを正とする。また、フォーカシングは最近接投影状態から遠距離投影状態へと行われ(ズーム光学系のフォーカシングの場合、ズームポジションは望遠端T)、ズーミングは最近接投影状態で広角端Wから望遠端Tへと行われる。
【0114】
表26に全系の投影倍率(画面長辺方向の投影倍率βxと画面短辺方向の投影倍率βyとの平均値)を示し、表27に表示素子面SG(物面S0)の有効エリアのサイズ(mm)、表示素子側のNA(numerical aperture)及び絞り半径(mm)を示す。また表28〜表32に、各条件式の対応データを各実施例について示す。
【0115】
各実施例の光学性能を、スポットダイアグラム(図9〜図17)で示す。図9は実施例1の広角端W,最近接投影状態でのスポットダイアグラム、図10は実施例1のミドルM,最近接投影状態でのスポットダイアグラム、図11は実施例1の望遠端T,最近接投影状態でのスポットダイアグラム、図12は実施例1の広角端W,遠距離投影状態でのスポットダイアグラム。図13は実施例1のミドルM,遠距離投影状態でのスポットダイアグラム、図14は実施例1の望遠端T,遠距離投影状態でのスポットダイアグラム、図15は実施例2の広角端W,最近接投影状態でのスポットダイアグラム、図16は実施例3の最近接投影状態でのスポットダイアグラム、図17は実施例4の最近接投影状態でのスポットダイアグラムである。各スポットダイアグラムは、スクリーン面SLでの結像特性(mm)をC線(波長656.3nm),d線(波長587.6nm)及びg線(波長435.8nm)の3波長について示しており、各スポットのフィールドポジションは表示素子面SG(物面S0)上の座標(x,y)を示している。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
【表5】
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】
【0125】
【表10】
【0126】
【表11】
【0127】
【表12】
【0128】
【表13】
【0129】
【表14】
【0130】
【表15】
【0131】
【表16】
【0132】
【表17】
【0133】
【表18】
【0134】
【表19】
【0135】
【表20】
【0136】
【表21】
【0137】
【表22】
【0138】
【表23】
【0139】
【表24】
【0140】
【表25】
【0141】
【表26】
【0142】
【表27】
【0143】
【表28】
【0144】
【表29】
【0145】
【表30】
【0146】
【表31】
【0147】
【表32】
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】第1の実施の形態(実施例1)のスクリーン面までの光学構成を示す光路図。
【図2】第2の実施の形態(実施例2)のスクリーン面までの光学構成を示す光路図。
【図3】第3の実施の形態(実施例3)のスクリーン面までの光学構成を示す光路図。
【図4】第4の実施の形態(実施例4)のスクリーン面までの光学構成を示す光路図。
【図5】第1の実施の形態(実施例1)の第2曲面ミラーまでの光学構成を示す光路図。
【図6】第2の実施の形態(実施例2)の第2曲面ミラーまでの光学構成を示す光路図。
【図7】第3の実施の形態(実施例3)の第2曲面ミラーまでの光学構成を示す光路図。
【図8】第4の実施の形態(実施例4)の第2曲面ミラーまでの光学構成を示す光路図。
【図9】実施例1の広角端,最近接投影状態でのスポットダイアグラム。
【図10】実施例1のミドル,最近接投影状態でのスポットダイアグラム。
【図11】実施例1の望遠端,最近接投影状態でのスポットダイアグラム。
【図12】実施例1の広角端,遠距離投影状態でのスポットダイアグラム。
【図13】実施例1のミドル,遠距離投影状態でのスポットダイアグラム。
【図14】実施例1の望遠端,遠距離投影状態でのスポットダイアグラム。
【図15】実施例2の広角端,最近接投影状態でのスポットダイアグラム。
【図16】実施例3の最近接投影状態でのスポットダイアグラム。
【図17】実施例4の最近接投影状態でのスポットダイアグラム。
【図18】2枚のミラーを同時に同じ方向に平行移動させた場合の光路変化を説明するための模式図。
【図19】2枚のミラーを別々の方向に異なる量だけ平行移動させた場合の光路変化を説明するための模式図。
【図20】射出する軸上主光線の位置と方向が変化しないように2枚のミラーを独立に平行移動だけさせた場合の光路変化を説明するための模式図。
【図21】ミラー移動に回転を加えて全系の焦点距離を変化させた場合の光路変化を説明するための模式図。
【図22】1面の非軸光学面でのパワー変化を説明するための模式図。
【図23】2面の非軸光学面でのパワー変化を説明するための模式図。
【図24】反射ミラーの平行移動と回転移動の方向を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0149】
SG 表示素子面
SL スクリーン面
PO 投影光学系(ズーム光学系)
M1 第1曲面ミラー(反射ミラー,光学素子群)
M2 第2曲面ミラー(反射ミラー,光学素子群)
MF 平面ミラー
LG 屈折光学系
L1〜L8 第1〜第8レンズ
ST 絞り
【技術分野】
【0001】
本発明は投影光学系に関するものであり、例えば、液晶表示素子やデジタル・マイクロミラー・デバイス等の表示素子を備えた画像投影装置に搭載されて、表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系、その投影光学系を有する投影型光学機器(特に投影型画像表示装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
持ち運びの容易なコンピュータ(ノート型パーソナルコンピュータ等)が盛んに使用されるようになってきたことに伴い、オフィスでの会議やプレゼンテーションにおいて、コンピュータ上で作成された画像の拡大表示にフロントタイプのプロジェクターが広く用いられるようになってきている。また、デジタル放送等の映像情報配信の多様化及び高精細化に伴い、家庭においてもプロジェクターを用いて大画面での画像鑑賞が行われるようになってきている。しかし、従来のプロジェクターを大画面で使用する場合、それに十分な投影空間を中・小会議室や家庭等で確保することは困難である。つまり、十分な投影空間を確保できなければ、従来のプロジェクターで大画面の画像投影を行うことは困難である。
【0003】
必要とされる投影空間を縮小しつつ大画面化を達成する方法として、投影光学系内に反射面を導入することにより、投影される画像の結像に用いられる結像光束の光路を投影装置内に折り込む構成が知られている。その反射面として偏芯させた反射面を用い、いわゆる非軸光学系の配置をとれば、光路を折りたたむ効果をより一層向上させることが可能である。また、スクリーン面に対して入射する光束の入射角度を大きくすることによって、投影光学系からスクリーンまでの距離を短縮する構成も知られている。
【0004】
空間的に限られた範囲内でプロジェクターを使用する場合、投影光学系がズーミング機能を備えていれば、プロジェクターやスクリーンの位置をほぼ固定したまま投影倍率を変えることができるので、その場で即座に拡大・縮小を行うことができて大変便利である。このようなズーミング機能を有する投影光学系として非軸光学系を用いたものが、特許文献1〜3で提案されている。また、スクリーンが移動した場合のピント合わせを可能とし、使用の都度変化するスクリーン位置に対応したピント合わせを可能とするために、フォーカシング機能は投影光学系において必須である。このようなフォーカシング機能を有する投影光学系として非軸光学系を用いたものが、特許文献4,5で提案されている。
【0005】
特許文献1,2で提案されている投影光学系は、非軸光学系の構成になっているが、共軸部分を平行移動させて全系の焦点距離を変化させることによりズーミングを行うものである。特許文献3で提案されている投影光学系は、ミラーを平行移動させて全系の焦点距離を変化させることによりズーミングを行うものである。また、特許文献4,5で提案されている投影光学系は、非軸配置のミラーを平行移動させて全系の焦点距離を変化させることによりフォーカシングを行うものである。
【特許文献1】特開2004−295107号公報
【特許文献2】特開2005−121722号公報
【特許文献3】特開2005−189768号公報
【特許文献4】特開2005−106900号公報
【特許文献5】特開2006−184775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、非軸光学系を用いて光路を折りたためば、投影光学系を小さく構成することができる。しかし、軸上光線が1本の直線状にならないため、ズーミングやフォーカシングのために光学要素を移動させて焦点距離を変化させる場合、非軸光学系であることを考慮する必要がある。例えば、非軸光学系においてパワーを有する部分をただ単純に平行移動させると、投影光学系全体の焦点距離は変化するが、スクリーン面への射出光線が大きく移動してしまう。その結果、ズーミング中に画面中心が移動して、像トビの現象が現れることになる。例えば、特許文献5で提案されている投影光学系では、ミラーを平行移動させてフォーカシングを行う構成になっているが、フォーカシング中に軸上像点位置をほぼ一定にするための方法が開示されていないため、軸上位置をほぼ一定にしたフォーカシングの実現が困難である。
【0007】
特許文献1,2で提案されている投影光学系では、非軸光学系の共軸光学系部分の位置を変えることにより変倍が行われる。この変倍方法には、軸上の射出位置がズレないという利点がある。しかし、非軸配置されている部分の移動を伴わないため、非軸光学系の変倍を十分に実現しているとは言えない。また、物面と像面の一方又は両方が傾いた斜め投影光学系の場合、方向(例えば画面の縦横方向)に関係なく共軸部分の焦点距離を一律に変えると、ある焦点距離領域ではアナモフィック倍率の関係が崩れることになる。そのため、設計上の結像面(つまり、スクリーン面に相当する設計像面)と1次像点(つまり、共軸光学系での近軸像点に相当するピント位置)との関係を大きくずらすことにより、アナモフィックな倍率の関係を保つようにしている。しかし、この方法によると、設計上の結像面から1次像点が大きくずれている部分でデフォーカスの影響による性能の低下が生じてしまうため、高性能な投影光学系を実現することができない。
【0008】
特許文献3で提案されている投影光学系では、非軸配置のミラーがズーミング時に平行移動する構成になっており、特許文献4で提案されている投影光学系では、非軸配置のミラーがフォーカシング時に平行移動する構成になっている。非軸ミラーを移動させている点では、どちらも非軸光学系に適した変倍方法と言える。しかしながらこの方法では、移動させる非軸ミラーの構成部分に入射する軸上主光線と、移動させる非軸ミラーの構成部分から射出する軸上主光線と、を平行に設計しておくという、設計上の制約条件が必要になる。また、移動が軸上主光線に対して平行方向に行われるため、方向(例えば画面の縦横方向)によって、個々の焦点距離を自由に変化させることができない。その結果、特許文献1,2のように、ある焦点距離領域ではアナモフィック倍率の関係が崩れることになる。そのため、設計上の結像面と1次像点との関係を大きくずらすことにより、アナモフィックな倍率の関係を保つようにしている。しかし、この方法によると、設計上の結像面から1次像点が大きくずれている部分でデフォーカスの影響による性能の低下が生じてしまうため、高性能な投影光学系を実現することができない。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、非軸光学系による斜め投影において、像トビの発生なしに、非軸光学系の特長を活かした非軸光学系独特のズーミングやフォーカシングを可能とする高性能でコンパクトな投影光学系、及びそれを用いた投影型画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明の投影光学系は、表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させることを特徴とする。
【0011】
第2の発明の投影光学系は、上記第1の発明において、以下の条件式(1)を満たすことを特徴とする。
30<|θimg|<70 …(1)
ただし、
θimg:スクリーン面の画面法線とスクリーン面へ入射する軸上主光線とが成す角度(°)、
である。
【0012】
第3の発明の投影光学系は、上記第1又は第2の発明において、全系の焦点距離を変化させることにより、表示素子面とスクリーン面の位置をほぼ一定に保ったまま、拡大倍率を変化させるズーム光学系であることを特徴とする。
【0013】
第4の発明の投影光学系は、上記第3の発明において、全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、以下の条件式(2)を満たすことを特徴とする。
0.2<|θzmov/Zz|<5.0 …(2)
ただし、
θzmov:反射ミラーを含む光学素子群の回転角度(°)、
Zz=fz1/fz2、
fz1:拡大倍率の絶対値が最も小さいときの全系の焦点距離、
fz2:変倍後の全系の焦点距離、
である。
【0014】
第5の発明の投影光学系は、上記第3又は第4の発明において、全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、以下の条件式(3)を満たすことを特徴とする。
0.01<|Szmov/(Zz×fz1)|<5.0 …(3)
ただし、
Szmov:反射ミラーを含む光学素子群の平行移動の距離、
Zz=fz1/fz2、
fz1:拡大倍率の絶対値が最も小さいときの全系の焦点距離、
fz2:変倍後の全系の焦点距離、
である。
【0015】
第6の発明の投影光学系は、上記第3〜第5のいずれか1つの発明において、全系の焦点距離変化による変倍での任意の焦点距離状態において、以下の条件式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする。
-50<(Sz1st_ximg−Szx_design)/fzx<20 …(4)
-50<(Sz1st_yimg−Szy_design)/fzy<20 …(5)
ただし、物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイとし、表示素子面の画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向とし、x方向とz方向に垂直な方向をy方向とすると、
Sz1st_ximg:x方向光線の後側主点位置からx方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Szx_design:x方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
fzx:x方向の全系の焦点距離、
Sz1st_yimg:y方向光線の後側主点位置からy方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Szy_design:y方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
fzy:y方向の全系の焦点距離、
である。
【0016】
第7の発明の投影光学系は、上記第3〜第6のいずれか1つの発明において、前記ズーム光学系が、回転非対称な光学面を持つ光学要素の平行移動と回転移動により、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することを特徴とする。
【0017】
第8の発明の投影光学系は、上記第1又は第2の発明において、全系の焦点距離を変化させることにより、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することを特徴とする。
【0018】
第9の発明の投影光学系は、上記第8の発明において、全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、以下の条件式(6)を満たすことを特徴とする。
0.2<|θfmov/Zfoc|<8.0 …(6)
ただし、
θfmov:反射ミラーを含む光学素子群の回転角度(°)、
Zfoc=ff1/ff2、
ff1:最近接投影状態での全系の焦点距離、
ff2:フォーカス後の全系の焦点距離、
である。
【0019】
第10の発明の投影光学系は、上記第8又は第9の発明において、全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、以下の条件式(7)を満たすことを特徴とする。
0.05<|Sfmov/(Zfoc×ff1)|<7.0 …(7)
ただし、
Sfmov:反射ミラーを含む光学素子群の平行移動の距離、
Zfoc=ff1/ff2、
ff1:最近接投影状態での全系の焦点距離、
ff2:フォーカス後の全系の焦点距離、
である。
【0020】
第11の発明の投影光学系は、上記第8〜第10のいずれか1つの発明において、全系の焦点距離変化によるフォーカシングでの任意の焦点距離状態において、以下の条件式(8)及び(9)を満たすことを特徴とする。
-50<(Sf1st_ximg−Sfx_design)/ffx<20 …(8)
-50<(Sf1st_yimg−Sfy_design)/ffy<20 …(9)
ただし、物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイとし、表示素子面の画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向とし、x方向とz方向に垂直な方向をy方向とすると、
Sf1st_ximg:x方向光線の後側主点位置からx方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Sfx_design:x方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
ffx:x方向の全系の焦点距離、
Sf1st_yimg:y方向光線の後側主点位置からy方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Sfy_design:y方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
ffy:y方向の全系の焦点距離、
である。
【0021】
第12の発明の投影光学系は、表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、あるスクリーン位置に投影する状態と、その状態とは異なるスクリーン位置に投影する状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することを特徴とする。
【0022】
第13の発明の投影光学系は、表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、ある投影倍率状態と、その状態とは異なる別の投影倍率状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することを特徴とする。
【0023】
第14の発明の投影型画像表示装置は、2次元画像を形成する表示素子と、その表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系と、を備えた投影型画像表示装置であって、前記投影光学系が、上記第1〜第13のいずれか1つの発明に係る投影光学系であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により、全系の焦点距離が変化するので、投影光学系の高性能化とコンパクト化を達成しながら、非軸光学系による斜め投影において像トビの発生なしに、非軸光学系の特長を活かした非軸光学系独特のズーミングやフォーカシングを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る投影光学系の実施の形態等を、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る投影光学系は、表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させるものである。スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではない、いわゆる斜め投影光学系の構成を採用しているため、スクリーンの大画面化を達成しながら、投影光学系からスクリーンまでの距離を短縮することができる。また、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを用いて光路を折り曲げる構成を採用しているため、投影空間の縮小とスクリーンの大画面化を達成しながら、共軸光学系よりもはるかにコンパクトな投影光学系を実現することができる。
【0026】
さらに、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により、投影光学系の焦点距離を変化させる構成を採用しているため、像トビの発生がない、非軸光学系の特長を活かした非軸光学系独特のズーミングやフォーカシングが可能となる。投影光学系の焦点距離を変化させるために、上記光学素子群の回転移動が必要となる理由は、大きく分けて2つある。第1の理由は、非軸光学素子である反射ミラーの回転移動により、スクリーンへ向かう軸上主光線の位置と方向を変えずに、全系の焦点距離を変化させることができる点にある。第2の理由は、非軸光学素子である反射ミラー自身のパワー変化も、全系の焦点距離の変化に寄与させることができる点にある。これらの理由を、図18〜図23を用いて具体的に説明する。
【0027】
まず、第1の理由を説明する(図18〜図21)。説明を簡単にするため、投影光学系は平面対称であるものとし、その対称面上を軸上主光線が通過するものとする。また、対称面に対して垂直な方向をX方向とし、それに垂直な方向(つまり対称面に対して平行な方向)をY方向とする。図18〜図21において、M1,M2は偏芯配置された2枚の曲面ミラー、SLはスクリーン面であり、LAはスクリーン面SLへ向かう軸上主光線である。ズーミング又はフォーカシングのためにミラーM1,M2が移動し、その移動前の焦点距離状態Iから移動後の焦点距離状態IIへと全系の焦点距離が変化するものとする。図18〜図21において、破線は焦点距離状態IのミラーM1,M2の配置を示しており、太い実線は焦点距離状態IIのミラーM1,M2の配置を示している。また、一点鎖線は軸上主光線LAとミラーM1,M2との交点における面法線を示している。
【0028】
図18と図19は、2枚のミラーM1,M2を単純に平行移動させた場合の光路変化を示している。図18では、2枚のミラーM1,M2が同時に同じ方向に平行移動しており、図19では、2枚のミラーM1,M2が別々の方向に異なる量だけ平行移動している。両者とも、ミラーM2から射出する軸上主光線LAの位置と方向が、焦点距離状態Iと焦点距離状態IIとで異なっている。したがって、ズーミングやフォーカシングによってスクリーン面SL上で像面中心が移動してしまい、いわゆる像トビの現象が現れることになる。
【0029】
図20は、ミラーM2から射出する軸上主光線の位置と方向が変化しないように、2枚のミラーM1,M2を独立に平行移動だけさせた場合の光路変化を示している。この場合、各面のパワー(焦点距離の逆数で定義される量)は変わらず、投影光学系の焦点距離を変化させるのは面間距離の変化のみである。後で述べるが、非軸光学系の場合の焦点距離を変化させる方法では、共軸光学系の場合とは異なり、面間距離の変化だけではなく、その面自身のパワーの変化も投影光学系の焦点距離変化に寄与することが可能である。そうすることにより、非軸光学系のメリットを活かすことができる。また、非軸光学系では偏芯配置された光学素子(又は光学面)の焦点距離が方向により異なるため、ある面間距離を変化させた場合、全系の焦点距離の変化量は方向により異なる。投影光学系は有限系であるため、倍率の変化は方向(例えば、X方向とY方向)によって異なる。したがって、アナモ比をほぼ一定にした変倍は困難になる。特に物面や像面が傾いた斜め投影光学系の場合では、物面や像面の傾きの影響が倍率に及ぶため、アナモ比を一定にした変倍は更に困難になる。
【0030】
なお、上記のような変倍において、倍率のアナモ比を一定にするために、X方向とY方向とで1次結像位置と設計像面位置とを乖離させる方法により、倍率を制御する方法が知られている。しかし、収差がほぼ補正された高性能の投影光学系の場合、1次結像位置に最良のピント位置があるため、その最良ピント位置から設計像面位置をずらすことにより倍率を合わせると、結像性能が低くなってしまう。
【0031】
図21は、ミラーM1,M2の移動に回転移動を加えることにより、全系の焦点距離を変化させた場合の光路変化を示している。この場合、偏芯配置されたミラーM1,M2の平行移動と回転移動を行うことにより、スクリーンへ向かう軸上主光線LAを一定にしながら、各面のパワーと面間隔を変化させている。これにより全系の焦点距離が変化するので、投影倍率を所望の値へと変化させることができる。この方法を採用すると変倍の自由度が上がるため、高性能を維持しながら全系の焦点距離を変化させる変倍が可能となる。
【0032】
次に、第2の理由を説明する(図22,図23)。ここでは、非軸ミラーのパワーを1面の非軸光学面のパワーに代表させて考える。図22に示すように、非軸の光学面Srで屈折系が構成される場合を考えるが、反射系の場合はその特別の場合として屈折系と同様に考えることができる。物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイLBとし、光学面SrにベースレイLBが入射する前の媒質の屈折率をnとし、入射した後の媒質の屈折率をndとする。光学面SrへのベースレイLBの入射角度をθsとし、光学面SrからのベースレイLBの射出角度をθsdとする。また、ベースレイLBと光学面Srとの交点OsにおけるX方向の局所曲率をC11とし、Y方向の局所曲率をC22とする。また、{n・cos(θs)−nd・cos(θsd)}=Sとする。ベースレイLBと光学面Srとの交点OsにおけるX方向,Y方向のそれぞれのパワーφX,φYは、以下の式(Fr1),(Fr2)で表される。
φX=−S・C11 …(Fr1)
φY=−S・C22/{cos(θs)・cos(θsd)} …(Fr2)
【0033】
反射系の場合、Sの計算において、n=ndとし、θs=−θsdとすれば、S=2cos(θs)となる。さらに、φYの分母がcos(θs)の2乗になる。光学面Srの平行移動と回転移動により、θsとθsdの値を変化させることができ、さらに、ベースレイLBと光学面Srとの交点Osが変化するため、X方向,Y方向の局所曲率C11,C22を変化させることができる。それにより、その光学面Srでのパワーを自由に変化させることができる。
【0034】
さらに、2面の非軸光学面の合成パワーを考える。図23に示すように、第1の光学面のX方向,Y方向のパワーをそれぞれφ1X,φ1Yとし、第2の光学面のX方向,Y方向のパワーをそれぞれφ2X,φ2Yとする。第1の光学面に関する入射角度,射出角度をそれぞれθ1,θ1Pとし、第2の光学面に関する入射角度,射出角度をそれぞれθ2,θ2Pとする。また、ベースレイLBに沿って測った第1の光学面の後側主点と第2の光学面の前側主点との間隔を、X方向にd2Xとし、Y方向にd2Yとする。Y―Z面に関して対称な光学系の場合、d2Xは各光学面の主光線との交点間の軸上主光線に沿って測った距離と等しくなる。それに対してY方向では、光学面と主光線との交点、及び主点位置は、屈折系の場合は通常一致せず、反射面の場合は一致する。したがって、2つの光学面の合成パワーを、X方向についてφ(1+2)Xとし、Y方向についてφ(1+2)Yとすると、合成パワーφ(1+2)X,φ(1+2)Yは、以下の式(Fr3),(Fr4)でそれぞれ表される(n2:2面間の屈折率)。
φ(1+2)X=φ1X+φ2X−(d2X/n2)・φ1X・φ2X …(Fr3)
φ(1+2)Y={cos(θ2)/cos(θ2P)}φ1Y+{cos(θ1P)/cos(θ1)}φ2Y−(d2Y/n2)φ1Y・φ2Y …(Fr4)
【0035】
共軸光学系の場合は光学素子間の間隔変化のみがパワーの変化となるが、非軸光学系の場合は上記式(Fr3),(Fr4)より、各面のパワー変化の寄与も効果的であることが分かる。特に、面の傾き(つまり回転角度)を変化させることにより、Y方向のパワーを変化させることが可能であることが分かる。したがって、光学面を回転させることにより、倍率のアナモ比を補正することが容易になる。また、ズーミング,フォーカシングのために軸上主光線の入射光線と射出光線を平行にするという制約が必要なく、設計の自由度が増すとともに、非軸光学系の光路の折りたたみ効果を最大限に利用した設計が可能となる。したがって、薄型の光学系を実現することができる。
【0036】
また、屈折系の場合と比較すると、用いる光学面の曲率が同じでも、反射面を用いた場合の方がそのパワーを2〜4倍強くすることができる。さらに、大きくパワーを変化させる場合、屈折系の場合は色収差が大きく発生するため、その補正のための光学素子が必要になり、かえって光学系が大型化してしまう。特に、非軸対称な色収差の補正はかなり複雑であるため、高性能を維持しながら焦点距離を大きく変化させるには反射面を用いるのが望ましい。
【0037】
ここでは、説明を簡単にするため、Y−Z面対称の場合を例に挙げたが、面対称でない場合(いわゆるねじれの場合)でもその考え方は同じである。ただし、ねじれがある場合には、ねじれのある面での入射面の回転の影響を回転行列で与えて対角化する演算を行えば、その光学面での入射面とそれに垂直な方向で1次量が極値をとることになる。1次量は、入射面の回転という形をとりながら各面を移行していく。したがって、非軸ミラーを含む光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させることが、非軸斜め投影光学系の変倍を行う上で非常に有効である。
【0038】
上記観点から、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有する投影光学系にあっては、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させることが好ましい。この構成により、高性能かつコンパクトな構成でありながら、非軸光学系による斜め投影において、像トビの発生なしにズーミングやフォーカシングを行うことが可能となる。このように非軸光学系の部分に特徴のある投影光学系において、更なる性能向上,小型化等を達成する上で望ましい条件、その他の有効な構成を以下に説明する。なお、投影光学系の全体において基準とする座標系は直交座標系(x,y,z)とし、特に断らない限り、各方向を以下のようにとる。z方向は、表示素子面の画面法線方向とする。x方向は、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向とする。y方向は、x方向とz方向に垂直な方向とする。
【0039】
斜め投影による効果を得る上で、以下の条件式(1)を満たすことが望ましい。
30<|θimg|<70 …(1)
ただし、
θimg:スクリーン面の画面法線とスクリーン面へ入射する軸上主光線とが成す角度(°)、
である。
【0040】
投影光学系を薄型化するには、スクリーン面を傾けることが効果的である。条件式(1)の下限を下回ると、斜め投影度合いが弱まり、薄型化の効果が小さくなる。逆に、条件式(1)の上限を上回ると、斜め投影度合いが強くなりすぎて、投影光学系の実質的な画角が広くなり、歪曲や像面湾曲の補正が困難になる。
【0041】
本発明に係る投影光学系は、前述したように全系の焦点距離を変化させることにより、表示素子面とスクリーン面の位置をほぼ一定に保ったまま、拡大倍率を変化させるズーム光学系であることが望ましい。先に説明したように、非軸光学要素の一部又は全部(つまり、偏芯配置された回転非対称な反射ミラー又はそれを含む光学素子群)を平行移動及び回転移動させることにより、スクリーンへ向かう軸上主光線の位置と方向を変えずに、投影光学系全体の焦点距離を変化させることができる。スクリーンを一定の位置で固定した場合に、全系の焦点距離を変化させることにより投影倍率を変えても、スクリーンへ向かう軸上主光線の位置と方向が変わらないため、軸上の像が移動する(つまり位置を変える)ことはない。
【0042】
例えば、1次像点位置上にスクリーン面がある場合を考える。全系の焦点距離が変化する前と後の状態をそれぞれ焦点距離状態I,IIとする。表示素子面の画面法線と、表示素子面から射出する軸上主光線と、が成す角度をθobjとし、スクリーン面の画面法線と、スクリーン面へ入射する軸上主光線と、が成す角度をθimgとする。偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む光学素子群の平行移動と回転移動を行う方法によれば、焦点距離状態Iと焦点距離状態IIとで、これらの角度θobj,θimgが変わらないように焦点距離を変化させることが可能である。
【0043】
ある方向、例えばy方向について考える。焦点距離状態Iの場合のy方向の焦点距離をfyIとし、表示素子面から投影光学系全体の前側焦点まで軸上主光線に沿って測った距離をXyIとする。また、焦点距離状態IIの場合のy方向の焦点距離をfyIIとし、表示素子面から投影光学系全体の前側焦点まで軸上主光線に沿って測った距離をXyIIとする。このとき、焦点距離状態I,IIでのy方向の投影倍率βyI,βyIIは、以下の式(Fr5),(Fr6)でそれぞれ表される。
βyI=(-1)×fyI/XyI×(cos(θimg)/cos(θobj)) …(Fr5)
βyII=(-1)×fyII/XyII×(cos(θimg)/cos(θobj)) …(Fr6)
【0044】
式(Fr5),(Fr6)から分かるように、全系の焦点距離を変化させることにより、スクリーンを一定にしたまま変倍を行うことが可能である。スクリーンを一定にしたまま変倍が可能であると、一時的に拡大投影する場合や空間が限定された部屋でプロジェクターを使用する場合(例えば、スクリーン位置、プロジェクター位置、スクリーンとプロジェクターとの間隔等が制約を受けている場合)にも、所望の拡大倍率を実現することができる。
【0045】
全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、以下の条件式(2)を満たすことが望ましい。
0.2<|θzmov/Zz|<5.0 …(2)
ただし、
θzmov:反射ミラーを含む光学素子群の回転角度(°)、
Zz=fz1/fz2、
fz1:拡大倍率の絶対値が最も小さいときの全系の焦点距離、
fz2:変倍後の全系の焦点距離、
である。
【0046】
条件式(2)は、変倍のために回転移動させる光学素子群の回転角度の大きさについて、好ましい条件範囲を規定している。条件式(2)の上限を越えて回転角度が大きくなると、回転機構が大きくなり、画像投影装置の大型化を招いてしまう。また、光学素子群における面の使用範囲が大きくなるため、その光学素子の有効径が大きくなって大型化とコストアップを招いてしまう。逆に、条件式(2)の下限を越えて回転角度が小さくなりすぎると、回転角度に対する焦点距離の変化の感度が高くなるため、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む光学素子群の製作が困難になる。特に、角度の誤差による軸上主光線の変化が大きくなると、位置制御機構の精度を上げる必要がでてくるため、移動の機構も高価になる。例えば、位置検出用にセンサーを用いたり、バックラッシュの少ない回転機構が必要になる。バックラッシュがあった場合は、拡大側への変倍時と縮小側への変倍時とで軸上主光線位置が違う軌跡を描くため、変倍時に像のゆれが起こり、不快な映像が形成されることになる。また、位置制御精度を上げることによりチャタリングを起こす可能性もあり、これを防ぐための機構対策、(回路,ソフト等による)制御対策等が必要となるため、画像投影装置は非常に高価なものとなってしまう。
【0047】
全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、以下の条件式(3)を満たすことが望ましい。
0.01<|Szmov/(Zz×fz1)|<5.0 …(3)
ただし、
Szmov:反射ミラーを含む光学素子群の平行移動の距離、
Zz=fz1/fz2、
fz1:拡大倍率の絶対値が最も小さいときの全系の焦点距離、
fz2:変倍後の全系の焦点距離、
である。
【0048】
条件式(3)は、変倍のために平行移動させる光学素子群の移動量の大きさについて、好ましい条件範囲を規定している。条件式(3)の上限を越えて移動量が大きくなりすぎると、移動のために大きなスペースが必要となるため、投影光学系全体がコンパクトにならなくなる。逆に、条件式(3)の下限を越えて移動量が小さくなりすぎると、変倍に対する感度が高くなりすぎるため、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む光学素子群の製作が困難になる。
【0049】
以下の条件式(3a)を満たすことが更に望ましい。
0.5<|Szmov/(Zz×fz1)|<4.0 …(3a)
この条件式(3a)は、上記条件式(3)が規定している条件範囲のなかでも、上記観点等に基づいた更に好ましい条件範囲を規定している。
【0050】
全系の焦点距離変化による変倍での任意の焦点距離状態において、以下の条件式(4)及び(5)を満たすことが望ましい。
-50<(Sz1st_ximg−Szx_design)/fzx<20 …(4)
-50<(Sz1st_yimg−Szy_design)/fzy<20 …(5)
ただし、物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイとし、表示素子面の画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向とし、x方向とz方向に垂直な方向をy方向とすると、
Sz1st_ximg:x方向光線の後側主点位置からx方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Szx_design:x方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
fzx:x方向の全系の焦点距離、
Sz1st_yimg:y方向光線の後側主点位置からy方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Szy_design:y方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
fzy:y方向の全系の焦点距離、
である。
【0051】
ある任意の倍率状態でのx方向,y方向の焦点距離を、それぞれfx,fyとする。その状態において、各方向の前側焦点から表示素子面までの、軸上主光線に沿った距離を、それぞれΔx,Δyとする。それぞれの方向の後側主点位置から軸上主光線に沿って測ったそれぞれの方向の1次像点位置までの距離を、それぞれS1st_ximg,S1st_yimgとする。また、その状態において、それぞれの方向の後側主点位置から設計像面までの距離を、それぞれSx_design,Sy_designとする。
【0052】
今、表示素子面とスクリーン面が、Y−Z断面に沿って傾いている(つまり、x軸回りに回転した状態にある)ものとする。表示素子面の画面法線と、表示素子面から射出する軸上主光線と、の成す角度をθobjとし、スクリーン面の画面法線と、スクリーン面へ入射する軸上主光線と、の成す角度をθimgとする。また、表示素子面からの軸上主光線の射出角度をθyとし、スクリーン面への軸上主光線の入射角度をθ'yとする。このとき、x方向,y方向の投影倍率βx,βyは、以下の式(Fr7),(Fr8)でそれぞれ表される。
βx=(fx/Δx)・(Sx_design/S1st_ximg) …(Fr7)
βy=(fy/Δy)・(Sy_design/S1st_yimg)・(cosθy/cosθ'y) …(Fr8)
【0053】
投影倍率のアナモ比は、βx/βyで表される。通常、ズーミング中のアナモ比は一定であることが望ましい。ズーミング中に設計像面(つまり、スクリーン面に相当する設計上の結像面)がほぼ1次像面(つまり、共軸光学系での近軸像面に相当するピント位置)上にある場合、ズーミングにおける投影倍率の変化では焦点距離fxと焦点距離fyの変化が支配的である。しかしながら、表示素子面の傾きとスクリーン面の傾きが、y方向の投影倍率に影響を与えることになる。例えば、x方向の焦点距離とy方向の焦点距離が同じだけ変化した場合、表示素子面とスクリーン面の傾きの影響がy方向のみにかかり、このためアナモ比が大きく変化することになる。したがって、アナモ比を一定にしたズーミングを行うためには、設計像面の位置を1次像面の位置からずらす必要がある。つまり、1次像面の位置を変化させることにより、アナモ比を一定にすることができる。しかしながら、1次像面位置と設計像面位置が大きく乖離していると、ピント位置がズレて性能が低下してしまう。条件式(4),(5)は、1次像面位置と設計像面位置とのズレの許容できる範囲を規定している。条件式(4),(5)で規定している条件範囲を外れて、設計像面が1次像面位置から大きく外れると、ピントのズレが生じて性能が低下することになる。
【0054】
本発明に係る投影光学系は、前記ズーム光学系として、回転非対称な光学面を持つ光学要素の平行移動と回転移動により、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することが望ましい。一般に光学系では、以下の式(Fr9)で表される倍率関係が成り立つ。ただし、ΔX'は後側焦点から像面までの距離、ΔXは前側焦点から物体までの距離、fは光学系の焦点距離である。
ΔX'=−f2/ΔX …(Fr9)
【0055】
通常の投影系では、スクリーン位置が変化したとき、ΔXを変化させてΔX'の値を変化させることにより、ピント位置が調整される。上記式(Fr9)は、それと同時に、光学系の焦点距離fを変化させることにより、ΔX'の値を変化させることが可能であることを示している。前述したように、偏芯した非回転対称な光学素子(例えば反射ミラー)を移動させることにより、非軸光学系全体の焦点距離を変化させることが可能である。また、全系の焦点距離を変化させるだけであれば、共軸系の部分を移動させればよい。しかしながら、フォーカシングにはズーミングで移動させている部分を用いることが好ましい。ズーミングで移動させている部分を移動させてフォーカシングにも利用すれば、フォーカシングのために新たな移動機構を必要とせず、コストを低く抑えることが可能となるからである。
【0056】
前記ズーム光学系に限らず、本発明に係る投影光学系は、全系の焦点距離を変化させることにより、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することが望ましい。今、x方向の光線についてのフォーカシングを考える。あるスクリーン面位置に対するフォーカス投影状態(状態IIIとする。)において、全系の焦点距離をfxIII、前側焦点から表示素子面までの距離をΔXxIII、後側焦点からスクリーン面位置までの距離をΔX'xIIIとする。スクリーン面位置に1次像点があるとき、以下の式(Fr10)が成り立つ。
ΔX'xIII=−fxIII2/ΔXxIII …(Fr10)
【0057】
次に、スクリーン面位置を変化させてピントを合わせたときのフォーカス投影状態(状態IVとする。)において、全系の焦点距離をfxIV、前側焦点から表示素子面までの距離をΔXxIV、後側焦点からスクリーン面位置までの距離をΔX'xIVとする。このとき、以下の式(Fr11)が成り立つ。
ΔX'xIV=−fxIV2/ΔXxIV …(Fr11)
【0058】
上記状態IVのときもスクリーン面位置に1次像点があると考えると、スクリーン面を状態IIIから状態IVに変化させた場合でもピントが合っているためには、通常、ΔX'xIVがスクリーン面位置にくるようにΔX'xを変化させればよい。しかしながら、非軸光学系の場合には、焦点距離fxを変化させることによってこれを実現することができる。つまり、焦点距離を変化させることによってピント合わせが可能となる。ΔX'xを変化させるために光学系全体を移動させるよりも、焦点距離を変化させるように非軸光学要素の一部を移動させる方が、重量的にもより移動させやすい。また、表示素子面から射出する軸上主光線と、スクリーン面へ入射する軸上主光線と、が平行でない場合、全体を移動させると像の中心が移動してしまうため、像トビのような現象を起こる。前述したように、非軸光学要素の一部又は全部(つまり、偏芯配置された回転非対称な反射ミラー又はそれを含む光学素子群)を平行移動及び回転移動させる方法によれば、像の中心を移動させずに全系の焦点距離を変化させることが可能である。さらに、投影光学系全体を大きく移動させず、光学系の一部を移動させるだけで済むというメリットもある。したがって、全系の焦点距離を変化させてフォーカシングを行う構成が望ましい。
【0059】
全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、以下の条件式(6)を満たすことが望ましい。
0.2<|θfmov/Zfoc|<8.0 …(6)
ただし、
θfmov:反射ミラーを含む光学素子群の回転角度(°)、
Zfoc=ff1/ff2、
ff1:最近接投影状態での全系の焦点距離、
ff2:フォーカス後の全系の焦点距離、
である。
【0060】
条件式(6)は、フォーカシングのために回転移動させる光学素子群の回転角度の大きさについて、好ましい条件範囲を規定している。条件式(6)の上限を越えて回転角度が大きくなると、回転機構が大きくなり、画像投影装置の大型化を招いてしまう。また、光学素子群における面の使用範囲が大きくなるため、その光学素子の有効径が大きくなって大型化とコストアップを招いてしまう。逆に、条件式(6)の下限を越えて回転角度が小さくなりすぎると、回転角度に対する焦点距離の変化の感度が高くなるため、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む光学素子群の製作が困難になる。特に、角度の誤差による軸上主光線の変化が大きくなると、位置制御機構の精度を上げる必要がでてくるため、移動の機構も高価になる。例えば、位置検出用にセンサーを用いたりして、位置ズレを小さくする必要がある。そのため、画像投影装置は非常に高価なものとなってしまう。
【0061】
全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、以下の条件式(7)を満たすことが望ましい。
0.05<|Sfmov/(Zfoc×ff1)|<7.0 …(7)
ただし、
Sfmov:反射ミラーを含む光学素子群の平行移動の距離、
Zfoc=ff1/ff2、
ff1:最近接投影状態での全系の焦点距離、
ff2:フォーカス後の全系の焦点距離、
である。
【0062】
条件式(7)は、フォーカシングのために平行移動させる光学素子群の移動量の大きさについて、好ましい条件範囲を規定している。条件式(7)の上限を越えて移動量が大きくなりすぎると、移動のために大きなスペースが必要となるため、投影光学系全体がコンパクトにならなくなる。逆に、条件式(7)の下限を越えて移動量が小さくなりすぎると、フォーカシングに対する感度が高くなりすぎるため、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む光学素子群の製作が困難になる。
【0063】
以下の条件式(7a)を満たすことが更に望ましい。
0.5<|Sfmov/(Zfoc×ff1)|<3.0 …(7a)
この条件式(7a)は、上記条件式(7)が規定している条件範囲のなかでも、上記観点等に基づいた更に好ましい条件範囲を規定している。
【0064】
全系の焦点距離変化によるフォーカシングでの任意の焦点距離状態において、以下の条件式(8)及び(9)を満たすことが望ましい。
-50<(Sf1st_ximg−Sfx_design)/ffx<20 …(8)
-50<(Sf1st_yimg−Sfy_design)/ffy<20 …(9)
ただし、物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイとし、表示素子面の画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向とし、x方向とz方向に垂直な方向をy方向とすると、
Sf1st_ximg:x方向光線の後側主点位置からx方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Sfx_design:x方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
ffx:x方向の全系の焦点距離、
Sf1st_yimg:y方向光線の後側主点位置からy方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Sfy_design:y方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
ffy:y方向の全系の焦点距離、
である。
【0065】
ある任意のフォーカス投影状態でのx方向,y方向の焦点距離を、それぞれfx,fyとする。その状態において、各方向の前側焦点から表示素子面までの、軸上主光線に沿った距離を、それぞれΔx,Δyとする。それぞれの方向の後側主点位置から軸上主光線に沿って測ったそれぞれの方向の1次像点位置までの距離を、それぞれS1st_ximg,S1st_yimgとする。また、その状態において、それぞれの方向の後側主点位置から設計像面までの距離を、それぞれSx_design,Sy_designとする。
【0066】
今、表示素子面とスクリーン面が、Y−Z断面に沿って傾いている(つまり、x軸回りに回転した状態にある)ものとする。表示素子面の画面法線と、表示素子面から射出する軸上主光線と、の成す角度をθobjとし、スクリーン面の画面法線と、スクリーン面へ入射する軸上主光線と、の成す角度をθimgとする。また、表示素子面からの軸上主光線の射出角度をθyとし、スクリーン面への軸上主光線の入射角度をθ'yとする。このとき、x方向,y方向の投影倍率βx,βyは、以下の式(Fr7),(Fr8)でそれぞれ表される。
βx=(fx/Δx)・(Sx_design/S1st_ximg) …(Fr7)
βy=(fy/Δy)・(Sy_design/S1st_yimg)・(cosθy/cosθ'y) …(Fr8)
【0067】
投影倍率のアナモ比は、βx/βyで表される。通常、フォーカシング中のアナモ比は一定であることが望ましい。フォーカシング中に設計像面(つまり、スクリーン面に相当する設計上の結像面)がほぼ1次像面(つまり、共軸光学系での近軸像面に相当するピント位置)上にある場合、フォーカシングの投影倍率の変化では焦点距離fxと焦点距離fyの変化が支配的である。しかしながら、表示素子面の傾きとスクリーン面の傾きが、y方向の投影倍率に影響を与えることになる。例えば、x方向の焦点距離とy方向の焦点距離が同じだけ変化した場合、表示素子面とスクリーン面の傾きの影響がy方向のみにかかり、このためアナモ比が大きく変化することになる。したがって、アナモ比を一定にしたフォーカシングを行うためには、設計像面の位置を1次像面の位置からずらす必要がある。つまり、1次像面の位置を変化させることにより、アナモ比を一定にすることができる。しかしながら、1次像面位置と設計像面位置が大きく乖離していると、ピント位置がズレて性能が低下してしまう。条件式(8),(9)は、1次像面位置と設計像面位置のずれの許容できる範囲を規定している。条件式(8),(9)で規定している条件範囲を外れて、設計像面が1次像面位置から大きく外れると、ピントのズレが生じて性能が低下することになる。
【0068】
回転非対称な反射ミラーを平行移動及び回転移動させることにより、異なるスクリーン位置にフォーカスすることが可能であり、また、異なる投影倍率で用いるためにズーミングさせることも可能であることは、すでに述べた通りである。これらのことから、本発明に係る投影光学系を、2つ以上のスクリーン位置に対し別々に単焦点の投影光学系として用いることが可能であり、また、2つ以上の投影倍率で別々に単焦点の投影光学系として用いることが可能であることは明らかである。
【0069】
例えば、異なる2つのスクリーン位置に拡大投影する仕様の投影光学系が必要となる場合や異なる2つの投影倍率の投影光学系が必要となる場合には、通常、2つの投影光学系が必要である。しかしながら、本発明に係る投影光学系を用いれば、2つの投影光学系は不要であり、1つの投影光学系で十分である。そして、それらの仕様を満たすには、少なくとも1面の偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群を平行移動及び回転移動させればよい。そのような調整を行うことにより、1つの投影光学系で異なった仕様の画像投影装置に対応することが可能となる。したがって、大幅なコストダウンが可能となる。また、実際の画像投影装置を個々に微調整する際にも上記光学素子群の平行移動及び回転移動を利用することができる。
【0070】
したがって、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、あるスクリーン位置に投影する状態と、その状態とは異なるスクリーン位置に投影する状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することにより、少なくとも2つのスクリーン位置に拡大投影する仕様に対応したりその微調整を行ったりすることが可能となる。また、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、ある投影倍率状態と、その状態とは異なる別の投影倍率状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することにより、少なくとも2つの投影倍率で拡大投影する仕様に対応したりその微調整を行ったりすることが可能となる。
【0071】
次に、本発明に係る投影光学系の具体的な光学構成を、第1〜第4の実施の形態を例に挙げて説明する。図1〜図4に、第1〜第4の実施の形態における表示素子面SGからスクリーン面SLまでの投影光路全体の光学構成(光学配置,投影光路等)を、表示素子面SGの画面長辺方向に沿って見たときの光学断面(短辺側断面)でそれぞれ示す。また、図1〜図4に示す光学構成の要部(表示素子面SGから第2曲面ミラーM2まで)を、それぞれ図5〜図8に拡大して示す。図1(A)ではズーミングにおける広角端,フォーカシングにおける最近接投影状態での光学配置を示しており、図1(B)ではズーミングにおける望遠端,フォーカシングにおける最近接投影状態での光学配置を示している。図2ではズーミングにおける広角端,フォーカシングにおける最近接投影状態での光学配置を示しており、図3及び図4では、フォーカシングにおける最近接投影状態での光学配置を示している。なお、図1〜図8では、表示素子面SGの画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向、それらと垂直な方向をy方向とする直交座標系(x,y,z)において、第1〜第4の実施の形態の光学構成をy−z断面で示している。なお、各実施の形態では、x方向は表示素子面SGの画面短辺方向、y方向は表示素子面SGの画面長辺方向と一致している。
【0072】
第1,第2の実施の形態の投影光学系POは、フォーカシング機能とズーミング機能を有するズーム光学系であり、縮小側(表示素子面SG側)から拡大側(スクリーン面SL側)にかけて順に、複数の第iレンズLi(i=1,2,3,...)等で構成された屈折光学系LGと、第1曲面ミラーM1と、第2曲面ミラーM2と、平面ミラーMFと、から成っている。また、第1曲面ミラーM1と第2曲面ミラーM2との間の空間には中間像が形成され、スクリーン面SLとスクリーン面SLへ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではない、いわゆる斜め拡大投影が行われる構成になっている。
【0073】
第3,第4の実施の形態の投影光学系POは、フォーカシング機能を有する光学系であり、縮小側(表示素子面SG側)から拡大側(スクリーン面SL側)にかけて順に、複数の第iレンズLi(i=1,2,3,...)等で構成された屈折光学系LGと、第1曲面ミラーM1と、第2曲面ミラーM2と、から成っている。また、第1曲面ミラーM1と第2曲面ミラーM2との間の空間には中間像が形成され、スクリーン面SLとスクリーン面SLへ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではない、いわゆる斜め拡大投影が行われる構成になっている。
【0074】
第1〜第4の実施の形態において、第1曲面ミラーM1と第2曲面ミラーM2は、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーであり、その反射面形状は自由曲面から成っている。投影光学系POはyz平面に関して面対称になっている。また、第1,第2曲面ミラーM1,M2の反射面形状は面対称であり、その対称面はyz平面である。第1〜第4の実施の形態の投影光学系POは、全系の焦点距離を変化させることにより、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有している。さらに第1,第2の実施の形態の投影光学系POは、全系の焦点距離を変化させることにより、表示素子面とスクリーン面の位置をほぼ一定に保ったまま、拡大倍率を変化させるズーミング機能を有している。そして、フォーカシング,ズーミングのうちの少なくとも一方を行う際、全系の焦点距離を変化させるために、少なくとも第1,第2曲面ミラーM1,M2がそれぞれ平行移動と回転移動を行う構成になっている。
【0075】
第1の実施の形態では、ズーミングにおいて、第1〜第4レンズL1〜L4と、第5〜第7レンズL5〜L7と、がそれぞれ平行移動を行い、第8レンズL8と、第1曲面ミラーM1と、第2曲面ミラーM2と、がそれぞれ平行移動と回転移動を行う。また、フォーカシングにおいては、第8レンズL8が平行移動と回転移動を行う。第2の実施の形態では、ズーミングにおいて、第1〜第4レンズL1〜L4と、第5〜第7レンズL5〜L7と、がそれぞれ平行移動を行い、第8レンズL8と、第1曲面ミラーM1と、第2曲面ミラーM2と、がそれぞれ平行移動と回転移動を行う。また、フォーカシングにおいては、第1曲面ミラーM1と、第2曲面ミラーM2と、がそれぞれ平行移動と回転移動を行う。第3の実施の形態では、フォーカシングにおいて、第5レンズL5が平行移動を行い、第2曲面ミラーM2が平行移動と回転移動を行う。第4の実施の形態では、フォーカシングにおいて、第1曲面ミラーM1が平行移動と回転移動を行う。
【0076】
上記のように第1〜第4の実施の形態では、少なくとも第1曲面ミラーM1又は第2曲面ミラーM2の平行移動と回転移動により全系の焦点距離が変化するので、投影光学系の高性能化とコンパクト化を達成しながら、非軸光学系による斜め投影において像トビの発生なしにズーミングやフォーカシングを行うことができる。第1,第2曲面ミラーM1,M2は、それぞれが偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む光学素子群であり、各光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させるが、各実施の形態から分かるように、全系の焦点距離を変化させる際には、第1,第2曲面ミラーM1,M2以外の光学素子群(レンズ群等)を移動させてもよい。つまり、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群を移動群の1つとして、少なくともその平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させる構成であればよい。
【0077】
各実施の形態の投影光学系POでは、表示素子面SGからスクリーン面SLまでの間に、第1,第2曲面ミラーM1,M2や平面ミラーMFで構成された反射面が配置されている。各実施の形態のように、表示素子面からスクリーン面までの間に1面又は2面の反射面を有することが望ましい。反射面で光路を折り曲げることにより、投影光学系をコンパクトにすることができる。反射面の枚数を多くすれば、投影光学系をより一層コンパクトにすることが可能である。したがって、投影光学系は反射面を2面以上有することが望ましい。反射面を2面以上有することにより、投影光学系をスクリーン面に対して略平行な方向に折り曲げることができる。これにより、スクリーンの奥行き方向に投影光学系のサイズを小さくすることが可能となり、投影光学系の投影空間を縮小することが可能となる。投影光学系中に反射面を追加して光路を折り曲げ、スクリーンの高さ方向に投影光学系のサイズを縮小することも可能である。
【0078】
すべての反射面がパワーを有することが望ましい。反射面にパワーを持たせることによって反射面での収差補正が可能となり、投影光学系全体の収差を補正することが可能となる。したがって、すべての反射面にパワーを持たせることにより、より高い光学性能を得ることが可能となる。
【0079】
パワーを有する反射面は自由曲面形状を有することが望ましい。自由曲面形状には、設計の自由度が高いため光線の偏向方向を設定する自由度が高い、というメリットがある。また、自由曲面形状を用いることにより、像面の倒れや非点収差等の収差を良好に補正することができる。さらに、反射面に用いる自由曲面は1面の対称面を有することが望ましい。対称面を有する自由曲面には、製造や評価における難易度が低いというメリットがある。
【0080】
投影光学系中の最もスクリーン面に近い位置に反射面を設置することが望ましい。スクリーン面に近い位置に反射面を設置して光路を折り曲げることにより、画像の投影に必要な空間をコンパクトにすることができる。また、反射面に入射する各画角の光束が分離しているので、そこに自由曲面形状を有する反射面を配置することにより、高い収差補正効果を得ることができる。
【0081】
自由曲面を含むミラーの基盤や屈折レンズはプラスチック材料から成ることが望ましい。自由曲面を含む光学素子(ミラー,レンズ等)の構成材料としてプラスチックを使用することにより、光学素子のコストダウンを達成することが可能となる。例えば、後述する実施例3,4の第8レンズL8はアナモフィック非球面を有するガラスレンズであるが、それをプラスチックレンズに代えることができる。
【0082】
各実施の形態の投影光学系POは、パワーを有する屈折光学素子から成る屈折光学系LGを有している。各実施の形態のように、投影光学系はパワーを有する屈折光学素子を少なくとも1つ有することが望ましい。パワーを有する屈折光学素子を用いることにより、色合成プリズムで発生する色収差等、反射面のみでは補正できない収差を補正することが可能となる。なお、本発明の特徴的構成は、屈折光学素子を有する投影光学系に適用する場合に限らず、ミラーのみを有する投影光学系に適用する場合でも、同様にその効果を発揮することができる。
【0083】
屈折面として、x軸方向とy軸方向とでパワーの異なる面(つまりアナモフィック非球面)を用いることが望ましい。x軸方向とy軸方向とでパワーの異なる屈折面を用いることにより、x軸方向とy軸方向とで非対称な収差を補正することができる。x軸方向とy軸方向とでパワーの異なる屈折面は、スクリーン面に近い面として用いることが好ましい。ただし、最もスクリーン面に近い面では各画角の光束が分離しているため、高い収差補正の効果を得るために、自由曲面形状を有する反射面を配置することが望ましい。
【0084】
ズーミング時には、2面の偏芯配置された非回転対称な反射面を移動させることが、ズーミングによる収差変動を良好に補正できるため好ましい。また、フォーカシング時には、1面又は2面の偏芯配置された非回転対称な反射面を移動させることが、フォーカシングによる収差変動を良好に補正できるため好ましい。また、2面の偏芯配置された非回転対称な透過面を有する光学素子を移動させることが、フォーカシングによる収差変動を良好に補正できるため好ましい。さらに、フォーカシング時には1つの反射光学素子と1つの屈折光学素子との合計2つの光学素子を移動させることが、フォーカシングによる収差変動を良好に補正できるため好ましい。もちろん、反射光学素子のみ又は屈折光学素子のみを用いて、フォーカシングを行うことも可能である。
【0085】
投影光学系内でいったん中間像を形成した後、その中間像を反射面でスクリーン面上に結像させることが望ましい。中間像よりもスクリーン面側に位置する光学素子で発生する歪曲を相殺するように、中間像に収差を与えることによって、広角な投影光学系でありながらスクリーン面上で良好な光学性能を得ることが可能となる。また、中間像を形成することにより、反射面の大きさを小さくすることができるので、反射面の製造が容易になる。
【0086】
最もスクリーン面に近い反射面は凹面であることが望ましい。最もスクリーン面に近い反射面として凹面反射面を用いることにより、凹面反射面のパワーによって中間像を結像させることができる。したがって、中間像の収差を用いて、歪曲や像面の傾き等、投影光学系全体の収差を補正することが可能となる。最もスクリーン面に近い反射面が凸面反射面である場合、いったん形成した中間像をスクリーン面上で結像させるために、凸面ミラーのほかに正パワーの光学素子が必要となる。このため、中間像を形成する構成ではコンパクト化が困難になる。したがって、最もスクリーン面に近い反射面が凸面反射面であり、中間像を形成しない場合には、収差補正のために自由曲面形状の屈折光学素子や反射光学素子を追加することが望ましい。
【0087】
第1〜第4の実施の形態は、表示画像をスクリーン面SL上に拡大投影する、画像投影装置用の投影光学系POである。したがって、表示素子面SGは光強度の変調等により2次元画像を形成する画像形成面に相当し、スクリーン面SLはその投影像面に相当する。各実施の形態では表示素子としてデジタル・マイクロミラー・デバイスを想定しているが、表示素子はこれに限らず、各実施の形態の投影光学系POに適した他の非発光・反射型(又は透過型)の表示素子(例えば液晶表示素子)を用いても構わない。表示素子としてデジタル・マイクロミラー・デバイスを用いた場合、その表示素子面SGを照明光学系で照明すると、表示素子面SGに入射した光は、ON/OFF状態(例えば±12°の傾き状態)の各マイクロミラーで反射されることにより空間的に変調される。その際、ON状態のマイクロミラーで反射した光のみが投影光学系POに入射してスクリーン面SLに投射される。
【0088】
以上の説明から分かるように、上述した各実施の形態や後述する各実施例には以下の投影光学系及び画像投影装置の構成が含まれている。その構成によると、前述したように、投影光学系の高性能化とコンパクト化を達成しながら、非軸光学系による斜め投影において像トビの発生なしにズーミングやフォーカシングを行うことが可能である。
【0089】
(T1) 表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群を移動群として、少なくとも前記光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させることを特徴とする投影光学系。
【0090】
(T2) 前記条件式(1)を満たすことを特徴とする上記(T1)記載の投影光学系。
【0091】
(T3) 全系の焦点距離を変化させることにより、表示素子面とスクリーン面の位置をほぼ一定に保ったまま、拡大倍率を変化させるズーム光学系であることを特徴とする上記(T1)又は(T2)記載の投影光学系。
【0092】
(T4) 全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、前記条件式(2),(3),(3a)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする上記(T3)記載の投影光学系。
【0093】
(T5) 全系の焦点距離変化による変倍での任意の焦点距離状態において、前記条件式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする上記(T3)又は(T4)記載の投影光学系。
【0094】
(T6) 前記ズーム光学系が、回転非対称な光学面を持つ光学要素の平行移動と回転移動により、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することを特徴とする上記(T3)〜(T5)のいずれか1項に記載の投影光学系。
【0095】
(T7) 全系の焦点距離を変化させることにより、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することを特徴とする上記(T1)又は(T2)記載の投影光学系。
【0096】
(T8) 全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、前記条件式(6),(7),(7a)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする上記(T7)記載の投影光学系。
【0097】
(T9) 全系の焦点距離変化によるフォーカシングでの任意の焦点距離状態において、前記条件式(8)及び(9)を満たすことを特徴とする上記(T7)又は(T8)記載の投影光学系。
【0098】
(T10) 表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、あるスクリーン位置に投影する状態と、その状態とは異なるスクリーン位置に投影する状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することを特徴とする投影光学系。
【0099】
(T11) 表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、ある投影倍率状態と、その状態とは異なる別の投影倍率状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することを特徴とする投影光学系。
【0100】
(U1) 2次元画像を形成する表示素子と、その表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系と、を備えた画像投影装置であって、前記投影光学系が、上記(T1)〜(T11)のいずれか1項に記載の投影光学系であることを特徴とする画像投影装置。
【0101】
(U2) 2次元画像を形成する表示素子と、その表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系と、を備え、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではない画像投影装置であって、前記投影光学系が、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群を移動群として、少なくとも前記光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させることを特徴とする画像投影装置。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施した投影光学系等を、コンストラクションデータ等を挙げて更に具体的に説明する。ここで挙げる実施例1〜4は、前述した第1〜第4の実施の形態にそれぞれ対応する数値実施例であり、第1〜第4の実施の形態の光学構成を表す光路図(図1〜図4,図4〜図8)は、対応する実施例1〜4の光学配置,投影光路等をそれぞれ示している。
【0103】
表1〜表27に、実施例1〜4のコンストラクションデータを示す。表1,表7,表13,表19に示す基本的な光学構成では(実施例1,2では広角端,最近接投影状態、実施例3,4では最近接投影状態を基本配置としている。)、縮小側の表示素子面SG(S0:表示素子の画像表示面であり、物面に相当する。)から拡大側のスクリーン面SL(像面に相当する。)までを含めた系において、Si(面番号:i=0,1,2,3,...)が縮小側から数えてi番目の面であり、ri(i=0,1,2,3,...)が面Siの曲率半径(mm)である。また、di(i=0,1,2,3,...)は面Siと面Si+1との間の軸上面間隔(mm,ただし、偏心面間隔の場合には偏心データとして、又は偏芯データとあわせて記載する。)であり、Ni(i=0,1,2,3,...),νi(i=0,1,2,3,...)は軸上面間隔diに位置する光学材料のd線に対する屈折率(Nd),アッベ数(νd)をそれぞれ示している。
【0104】
偏心した面については面Siの対応する欄*にAを付して示し、その偏心データを表2,表8,表14,表20に示す。偏心データは右手系の直交座標系(X,Y,Z)に基づいて表現されており、その直交座標系(X,Y,Z)では座標基準とする面Siの中心位置を原点(0,0,0)とする面頂点座標(X,Y,Z)={X軸方向の平行偏心位置(mm),Y軸方向の平行偏心位置(mm),Z軸方向の平行偏心位置(mm)}で、平行偏心した面の位置を表すとともに、その面の面頂点を中心とする各軸周りの回転角度(X回転,Y回転,Z回転)で面の傾き(°)を表す。なお、座標基準とする面Siが表示素子面S0である場合、表示素子面S0の画面法線方向をz方向とし、表示素子面S0の画面短辺方向をy方向とし、表示素子面S0の画面長辺方向をx方向とする直交座標系(x,y,z)が、座標基準とする面Siの直交座標系(X,Y,Z)であり、各光路図(図1〜図8)において、X軸方向は紙面に対して垂直方向であり(紙面の裏面方向を正とし、紙面に向かって反時計回りをX回転の正とする。)、Y軸方向はX軸とZ軸により右手系をなす方向(紙面と平行)である。
【0105】
ズーミングにより移動する面については面Siの対応する欄*にBを付して示し、そのズームデータを表3,表9に示す(フォーカス投影状態は最近接投影状態であり、ズームポジションPOSは、広角端W,ミドル(中間焦点距離状態)M及び望遠端Tである。)。ズームデータは軸上面間隔diと右手系の直交座標系(X,Y,Z)に基づいて表現されており、その直交座標系(X,Y,Z)では座標基準とする面Siの中心位置を原点(0,0,0)とする面頂点座標(X,Y,Z)={X軸方向の平行移動位置(mm),Y軸方向の平行移動位置(mm),Z軸方向の平行移動位置(mm)}で、平行移動した面の位置を表すとともに、その面の面頂点を中心とする各軸周りの回転角度(X回転,Y回転,Z回転)で面の傾き(°)を表す。なお、座標基準とする面Siが表示素子面S0である場合、表示素子面S0の画面法線方向をz方向とし、表示素子面S0の画面短辺方向をy方向とし、表示素子面S0の画面長辺方向をx方向とする直交座標系(x,y,z)が、座標基準とする面Siの直交座標系(X,Y,Z)であり、各光路図(図1〜図8)において、X軸方向は紙面に対して垂直方向であり(紙面の裏面方向を正とし、紙面に向かって反時計回りをX回転の正とする。)、Y軸方向はX軸とZ軸により右手系をなす方向(紙面と平行)である。
【0106】
フォーカシングにより移動する面については面Siの対応する欄*にCを付して示し、そのズームデータを表4,表10,表15,表21に示す(最近接投影状態から遠距離投影状態へとフォーカシングが行われ、ズームポジションPOSは、広角端W,ミドル(中間焦点距離状態)M及び望遠端Tである。)。フォーカスデータは軸上面間隔diと右手系の直交座標系(X,Y,Z)に基づいて表現されており、その直交座標系(X,Y,Z)では座標基準とする面S0の中心位置を原点(0,0,0)とする面頂点座標(X,Y,Z)={X軸方向の平行移動位置(mm),Y軸方向の平行移動位置(mm),Z軸方向の平行移動位置(mm)}で、平行移動した面の位置を表すとともに、その面の面頂点を中心とする各軸周りの回転角度(X回転,Y回転,Z回転)で面の傾き(°)を表す。ただし、フォーカシングにより変化しないデータに関しては記載を省略する。なお、座標基準とする表示素子面S0の直交座標系(X,Y,Z)において、表示素子面S0の画面法線方向がZ方向、表示素子面S0の画面短辺方向がY方向、表示素子面S0の画面長辺方向がX方向であり、各光路図(図1〜図8)において、X軸方向は紙面に対して垂直方向であり(紙面の裏面方向を正とし、紙面に向かって反時計回りをX回転の正とする。)、Y軸方向はX軸とZ軸により右手系をなす方向(紙面と平行)である。
【0107】
回転対称な非球面から成る面Siについては、面Siの対応する欄#にAを付して示す。回転対称な非球面から成る面Siは、その面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x,y,z)を用いた以下の式(AS)で定義される。表5,表11,表16,表22に、各実施例の非球面データを示す。ただし、表記の無い項の係数は0であり、すべてのデータに関してE−n=×10-nである。
z=(c・h2)/[1+√{1−(1+K)・c2・h2}]+A・h4+B・h6+C・h8+D・h10+E・h12+F・h14+G・h16+H・h18+J・h20 …(AS)
ただし、式(AS)中、
z:高さhの位置でのz軸方向の変位量(面頂点基準)、
h:z軸に対して垂直な方向の高さ(h2=x2+y2)、
c:面頂点での曲率(=1/ri)、
K:円錐係数、
A,…,J:非球面係数、
である。
【0108】
アナモフィック非球面から成る面Siについては、面Siの対応する欄#にBを付して示す。アナモフィック非球面から成る面Siは、その面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x,y,z)を用いた以下の式(BS)で定義される。表17,表23に、実施例3,4のアナモフィック非球面データを示す。ただし、表記の無い項の係数は0であり、すべてのデータに関してE−n=×10-nである。
z=(CUX・x2+CUY・y2)/[1+√{1−(1+KX)・CUX2・x2−(1+KY)・CUY2・y2}]+AR・{(1−AP)・x2+(1+AP)・y2}2+BR・{(1−BP)・x2+(1+BP)・y2}3+CR・{(1−CP)・x2+(1+CP)・y2}4+DR・{(1−DP)・x2+(1+DP)・y2}5 …(BS)
ただし、式(BS)中、
x,y:z軸に対して垂直な平面内での直交座標、
z:座標(x,y)の位置でのz軸方向の変位量(面頂点基準)、
CUX:面頂点でのx軸方向の曲率、
CUY:面頂点でのy軸方向の曲率、
KX:x軸方向の円錐係数、
KY:y軸方向の円錐係数、
AR,BR,CR,DR:円錐からの4次,6次,8次,10次の変形係数の回転対称成分、
AP,BP,CP,DP:円錐からの4次,6次,8次,10次の変形係数の非回転対称成分、
である。
【0109】
自由曲面から成る面Siについては、面Siの対応する欄#にCを付して示す。自由曲面から成る面Siは、その面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x,y,z)を用いた以下の式(CS)で定義される。表6,表12,表18,表24に、各実施例の多項式自由曲面データを示す。ただし、表記の無い項の係数は0であり、すべてのデータに関してE−n=×10-nである。
【0110】
【数1】
…(CS)
【0111】
ただし、式(CS)中、
z:高さhの位置でのz軸方向の変位量(面頂点基準)、
h:z軸に対して垂直な方向の高さ(h2=x2+y2)、
c:近軸曲率(=1/ri)、
k:円錐係数、
Cj:多項式自由曲面係数、
であり、自由曲面項は以下の式(CF)で表される。
【0112】
【数2】
…(CF)
【0113】
表25に、ズーミングにおいて一体的に移動する光学素子群と、フォーカシングにおいて一体的に移動する光学素子群と、について、平行移動の移動量ΔS(mm)及び移動方向φ(°)と、回転移動の回転角度θ(°)を示す。平行移動の移動方向φは、図24(A)に示すようにz軸を基準とした左回りを正とし、回転移動の回転角度θは、図24(B)に示すように左回りを正とする。また、フォーカシングは最近接投影状態から遠距離投影状態へと行われ(ズーム光学系のフォーカシングの場合、ズームポジションは望遠端T)、ズーミングは最近接投影状態で広角端Wから望遠端Tへと行われる。
【0114】
表26に全系の投影倍率(画面長辺方向の投影倍率βxと画面短辺方向の投影倍率βyとの平均値)を示し、表27に表示素子面SG(物面S0)の有効エリアのサイズ(mm)、表示素子側のNA(numerical aperture)及び絞り半径(mm)を示す。また表28〜表32に、各条件式の対応データを各実施例について示す。
【0115】
各実施例の光学性能を、スポットダイアグラム(図9〜図17)で示す。図9は実施例1の広角端W,最近接投影状態でのスポットダイアグラム、図10は実施例1のミドルM,最近接投影状態でのスポットダイアグラム、図11は実施例1の望遠端T,最近接投影状態でのスポットダイアグラム、図12は実施例1の広角端W,遠距離投影状態でのスポットダイアグラム。図13は実施例1のミドルM,遠距離投影状態でのスポットダイアグラム、図14は実施例1の望遠端T,遠距離投影状態でのスポットダイアグラム、図15は実施例2の広角端W,最近接投影状態でのスポットダイアグラム、図16は実施例3の最近接投影状態でのスポットダイアグラム、図17は実施例4の最近接投影状態でのスポットダイアグラムである。各スポットダイアグラムは、スクリーン面SLでの結像特性(mm)をC線(波長656.3nm),d線(波長587.6nm)及びg線(波長435.8nm)の3波長について示しており、各スポットのフィールドポジションは表示素子面SG(物面S0)上の座標(x,y)を示している。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
【表5】
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】
【0125】
【表10】
【0126】
【表11】
【0127】
【表12】
【0128】
【表13】
【0129】
【表14】
【0130】
【表15】
【0131】
【表16】
【0132】
【表17】
【0133】
【表18】
【0134】
【表19】
【0135】
【表20】
【0136】
【表21】
【0137】
【表22】
【0138】
【表23】
【0139】
【表24】
【0140】
【表25】
【0141】
【表26】
【0142】
【表27】
【0143】
【表28】
【0144】
【表29】
【0145】
【表30】
【0146】
【表31】
【0147】
【表32】
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】第1の実施の形態(実施例1)のスクリーン面までの光学構成を示す光路図。
【図2】第2の実施の形態(実施例2)のスクリーン面までの光学構成を示す光路図。
【図3】第3の実施の形態(実施例3)のスクリーン面までの光学構成を示す光路図。
【図4】第4の実施の形態(実施例4)のスクリーン面までの光学構成を示す光路図。
【図5】第1の実施の形態(実施例1)の第2曲面ミラーまでの光学構成を示す光路図。
【図6】第2の実施の形態(実施例2)の第2曲面ミラーまでの光学構成を示す光路図。
【図7】第3の実施の形態(実施例3)の第2曲面ミラーまでの光学構成を示す光路図。
【図8】第4の実施の形態(実施例4)の第2曲面ミラーまでの光学構成を示す光路図。
【図9】実施例1の広角端,最近接投影状態でのスポットダイアグラム。
【図10】実施例1のミドル,最近接投影状態でのスポットダイアグラム。
【図11】実施例1の望遠端,最近接投影状態でのスポットダイアグラム。
【図12】実施例1の広角端,遠距離投影状態でのスポットダイアグラム。
【図13】実施例1のミドル,遠距離投影状態でのスポットダイアグラム。
【図14】実施例1の望遠端,遠距離投影状態でのスポットダイアグラム。
【図15】実施例2の広角端,最近接投影状態でのスポットダイアグラム。
【図16】実施例3の最近接投影状態でのスポットダイアグラム。
【図17】実施例4の最近接投影状態でのスポットダイアグラム。
【図18】2枚のミラーを同時に同じ方向に平行移動させた場合の光路変化を説明するための模式図。
【図19】2枚のミラーを別々の方向に異なる量だけ平行移動させた場合の光路変化を説明するための模式図。
【図20】射出する軸上主光線の位置と方向が変化しないように2枚のミラーを独立に平行移動だけさせた場合の光路変化を説明するための模式図。
【図21】ミラー移動に回転を加えて全系の焦点距離を変化させた場合の光路変化を説明するための模式図。
【図22】1面の非軸光学面でのパワー変化を説明するための模式図。
【図23】2面の非軸光学面でのパワー変化を説明するための模式図。
【図24】反射ミラーの平行移動と回転移動の方向を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0149】
SG 表示素子面
SL スクリーン面
PO 投影光学系(ズーム光学系)
M1 第1曲面ミラー(反射ミラー,光学素子群)
M2 第2曲面ミラー(反射ミラー,光学素子群)
MF 平面ミラー
LG 屈折光学系
L1〜L8 第1〜第8レンズ
ST 絞り
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させることを特徴とする投影光学系。
【請求項2】
以下の条件式(1)を満たすことを特徴とする請求項1記載の投影光学系;
30<|θimg|<70 …(1)
ただし、
θimg:スクリーン面の画面法線とスクリーン面へ入射する軸上主光線とが成す角度(°)、
である。
【請求項3】
全系の焦点距離を変化させることにより、表示素子面とスクリーン面の位置をほぼ一定に保ったまま、拡大倍率を変化させるズーム光学系であることを特徴とする請求項1又は2記載の投影光学系。
【請求項4】
全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、以下の条件式(2)を満たすことを特徴とする請求項3記載の投影光学系;
0.2<|θzmov/Zz|<5.0 …(2)
ただし、
θzmov:反射ミラーを含む光学素子群の回転角度(°)、
Zz=fz1/fz2、
fz1:拡大倍率の絶対値が最も小さいときの全系の焦点距離、
fz2:変倍後の全系の焦点距離、
である。
【請求項5】
全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、以下の条件式(3)を満たすことを特徴とする請求項3又は4記載の投影光学系;
0.01<|Szmov/(Zz×fz1)|<5.0 …(3)
ただし、
Szmov:反射ミラーを含む光学素子群の平行移動の距離、
Zz=fz1/fz2、
fz1:拡大倍率の絶対値が最も小さいときの全系の焦点距離、
fz2:変倍後の全系の焦点距離、
である。
【請求項6】
全系の焦点距離変化による変倍での任意の焦点距離状態において、以下の条件式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の投影光学系;
-50<(Sz1st_ximg−Szx_design)/fzx<20 …(4)
-50<(Sz1st_yimg−Szy_design)/fzy<20 …(5)
ただし、物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイとし、表示素子面の画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向とし、x方向とz方向に垂直な方向をy方向とすると、
Sz1st_ximg:x方向光線の後側主点位置からx方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Szx_design:x方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
fzx:x方向の全系の焦点距離、
Sz1st_yimg:y方向光線の後側主点位置からy方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Szy_design:y方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
fzy:y方向の全系の焦点距離、
である。
【請求項7】
前記ズーム光学系が、回転非対称な光学面を持つ光学要素の平行移動と回転移動により、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の投影光学系。
【請求項8】
全系の焦点距離を変化させることにより、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することを特徴とする請求項1又は2記載の投影光学系。
【請求項9】
全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、以下の条件式(6)を満たすことを特徴とする請求項8記載の投影光学系;
0.2<|θfmov/Zfoc|<8.0 …(6)
ただし、
θfmov:反射ミラーを含む光学素子群の回転角度(°)、
Zfoc=ff1/ff2、
ff1:最近接投影状態での全系の焦点距離、
ff2:フォーカス後の全系の焦点距離、
である。
【請求項10】
全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、以下の条件式(7)を満たすことを特徴とする請求項8又は9記載の投影光学系;
0.05<|Sfmov/(Zfoc×ff1)|<7.0 …(7)
ただし、
Sfmov:反射ミラーを含む光学素子群の平行移動の距離、
Zfoc=ff1/ff2、
ff1:最近接投影状態での全系の焦点距離、
ff2:フォーカス後の全系の焦点距離、
である。
【請求項11】
全系の焦点距離変化によるフォーカシングでの任意の焦点距離状態において、以下の条件式(8)及び(9)を満たすことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の投影光学系;
-50<(Sf1st_ximg−Sfx_design)/ffx<20 …(8)
-50<(Sf1st_yimg−Sfy_design)/ffy<20 …(9)
ただし、物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイとし、表示素子面の画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向とし、x方向とz方向に垂直な方向をy方向とすると、
Sf1st_ximg:x方向光線の後側主点位置からx方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Sfx_design:x方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
ffx:x方向の全系の焦点距離、
Sf1st_yimg:y方向光線の後側主点位置からy方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Sfy_design:y方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
ffy:y方向の全系の焦点距離、
である。
【請求項12】
表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、あるスクリーン位置に投影する状態と、その状態とは異なるスクリーン位置に投影する状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することを特徴とする投影光学系。
【請求項13】
表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、ある投影倍率状態と、その状態とは異なる別の投影倍率状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することを特徴とする投影光学系。
【請求項14】
2次元画像を形成する表示素子と、その表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系と、を備えた投影型画像表示装置であって、前記投影光学系が、請求項1〜13のいずれか1項に記載の投影光学系であることを特徴とする投影型画像表示装置。
【請求項1】
表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動により全系の焦点距離を変化させることを特徴とする投影光学系。
【請求項2】
以下の条件式(1)を満たすことを特徴とする請求項1記載の投影光学系;
30<|θimg|<70 …(1)
ただし、
θimg:スクリーン面の画面法線とスクリーン面へ入射する軸上主光線とが成す角度(°)、
である。
【請求項3】
全系の焦点距離を変化させることにより、表示素子面とスクリーン面の位置をほぼ一定に保ったまま、拡大倍率を変化させるズーム光学系であることを特徴とする請求項1又は2記載の投影光学系。
【請求項4】
全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、以下の条件式(2)を満たすことを特徴とする請求項3記載の投影光学系;
0.2<|θzmov/Zz|<5.0 …(2)
ただし、
θzmov:反射ミラーを含む光学素子群の回転角度(°)、
Zz=fz1/fz2、
fz1:拡大倍率の絶対値が最も小さいときの全系の焦点距離、
fz2:変倍後の全系の焦点距離、
である。
【請求項5】
全系の焦点距離変化による、絶対値の最も小さい拡大倍率から任意の拡大倍率への変倍において、以下の条件式(3)を満たすことを特徴とする請求項3又は4記載の投影光学系;
0.01<|Szmov/(Zz×fz1)|<5.0 …(3)
ただし、
Szmov:反射ミラーを含む光学素子群の平行移動の距離、
Zz=fz1/fz2、
fz1:拡大倍率の絶対値が最も小さいときの全系の焦点距離、
fz2:変倍後の全系の焦点距離、
である。
【請求項6】
全系の焦点距離変化による変倍での任意の焦点距離状態において、以下の条件式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の投影光学系;
-50<(Sz1st_ximg−Szx_design)/fzx<20 …(4)
-50<(Sz1st_yimg−Szy_design)/fzy<20 …(5)
ただし、物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイとし、表示素子面の画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向とし、x方向とz方向に垂直な方向をy方向とすると、
Sz1st_ximg:x方向光線の後側主点位置からx方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Szx_design:x方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
fzx:x方向の全系の焦点距離、
Sz1st_yimg:y方向光線の後側主点位置からy方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Szy_design:y方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
fzy:y方向の全系の焦点距離、
である。
【請求項7】
前記ズーム光学系が、回転非対称な光学面を持つ光学要素の平行移動と回転移動により、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の投影光学系。
【請求項8】
全系の焦点距離を変化させることにより、異なるスクリーン面位置にピントを合わせるフォーカシング機能を有することを特徴とする請求項1又は2記載の投影光学系。
【請求項9】
全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、以下の条件式(6)を満たすことを特徴とする請求項8記載の投影光学系;
0.2<|θfmov/Zfoc|<8.0 …(6)
ただし、
θfmov:反射ミラーを含む光学素子群の回転角度(°)、
Zfoc=ff1/ff2、
ff1:最近接投影状態での全系の焦点距離、
ff2:フォーカス後の全系の焦点距離、
である。
【請求項10】
全系の焦点距離変化による、スクリーン面に最も近づく最近接投影状態から任意のフォーカス投影状態へのフォーカシングにおいて、以下の条件式(7)を満たすことを特徴とする請求項8又は9記載の投影光学系;
0.05<|Sfmov/(Zfoc×ff1)|<7.0 …(7)
ただし、
Sfmov:反射ミラーを含む光学素子群の平行移動の距離、
Zfoc=ff1/ff2、
ff1:最近接投影状態での全系の焦点距離、
ff2:フォーカス後の全系の焦点距離、
である。
【請求項11】
全系の焦点距離変化によるフォーカシングでの任意の焦点距離状態において、以下の条件式(8)及び(9)を満たすことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の投影光学系;
-50<(Sf1st_ximg−Sfx_design)/ffx<20 …(8)
-50<(Sf1st_yimg−Sfy_design)/ffy<20 …(9)
ただし、物体中心から絞り中心を通り設計像面中心に至る軸上主光線をベースレイとし、表示素子面の画面法線方向をz方向とし、スクリーンへ向かう軸上主光線とスクリーン面の法線が成す平面に垂直な方向をx方向とし、x方向とz方向に垂直な方向をy方向とすると、
Sf1st_ximg:x方向光線の後側主点位置からx方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Sfx_design:x方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
ffx:x方向の全系の焦点距離、
Sf1st_yimg:y方向光線の後側主点位置からy方向光線の1次像点位置までのベースレイに沿って測った距離、
Sfy_design:y方向の後側主点位置から設計像面までのベースレイに沿って測った距離、
ffy:y方向の全系の焦点距離、
である。
【請求項12】
表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、あるスクリーン位置に投影する状態と、その状態とは異なるスクリーン位置に投影する状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することを特徴とする投影光学系。
【請求項13】
表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系であって、スクリーン面とスクリーン面へ入射する軸上主光線との成す角度が垂直ではなく、偏芯配置された回転非対称な反射ミラーを有し、ある投影倍率状態と、その状態とは異なる別の投影倍率状態と、のいずれか一方で用いるために、前記反射ミラーを含む少なくとも1つの光学素子群の平行移動と回転移動が可能な構成を有することを特徴とする投影光学系。
【請求項14】
2次元画像を形成する表示素子と、その表示素子面の画像をスクリーン面上に拡大投影する投影光学系と、を備えた投影型画像表示装置であって、前記投影光学系が、請求項1〜13のいずれか1項に記載の投影光学系であることを特徴とする投影型画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−242025(P2008−242025A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81678(P2007−81678)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
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