説明

抗アレルギー剤及びこれを含有する飲食品、外用剤、化粧料

【課題】アッサム雑種の茶葉特有の強い抗アレルギー性を有する物質を単離することを目的とし、得られたカテキン類、即ち、エピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(3,4−O−ジメチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(3,5−O−ジメチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(3,4,5−O−トリメチル)ガレート及びそれらのエピマー等を有効成分として含有する抗アレルギー剤及びこれを含有する飲食品、外用剤、化粧料を提供する。
【解決手段】下記の一般式(1)で示される組成物を抗アレルギー剤用組成物とした。
【化1】


[式中、R,R,Rは、それぞれ独立して水素原子、メチル基のどちらか一方の基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なカテキンを有効成分として含有する抗アレルギー剤及びこれを含有する飲食品、外用剤、化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、食生活やライフスタイルの多様化が進行すると同時に、アレルギー症状も多様化し、年々増加している。現在ではアレルギー患者は潜在的な患者を含めて3000万人と言われている。また、ステロイド等の薬剤の副作用が懸念され、アレルギー症状を自覚しているにもかかわらず薬剤の副作用を恐れ、積極的に治療に望むことができずに症状に悩む人々もいる。そのため、抗アレルギー作用を有する成分を手軽に、かつ安心して摂取し得る飲食品の開発への消費者の期待や関心は高い。
【0003】
緑茶に含まれているカテキン類、サポニン、フラボノイド、カフェインが抗アレルギー効果を持つこと(特許文献1、非特許文献1,2参照)、べにふうき、べにふじ、べにほまれ等のメチル化カテキン含有茶葉がI型アレルギー抑制効果・抗炎症効果をもつことが報告されてきた(特許文献2参照)。
【0004】
中でも、べにふうき、べにふじ、べにほまれ等アッサム雑種から製造した緑茶又は包種茶は、抗アレルギー作用・抗炎症作用を有し、その利用が図られてきたところである。しかし、これらの茶葉は、現時点では生産量が少なく、高価である割には、その効果には個人差があった。そのため、全ての人に効果が期待できる飲食品が求められてきた。
【0005】
【特許文献1】特開2001−253879号公報
【特許文献2】特開2000−159670号公報
【非特許文献1】Allergy,52,58 (1997), Fragrance J.,11,50 (1990)
【非特許文献2】Biol. Pharm. Bull., 20, 565 (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抗アレルギー活性を有するカテキン類として、エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、EGCG3”Meという)が知られている。しかしながら、このEGCG3”Meは他の茶葉にも含有されているが、EGCG3”Meの抗アレルギー活性だけでは上記アッサム雑種の茶葉抽出物の強い抗アレルギー活性を説明することができなかった。
【0007】
アッサム雑種の茶葉特有の高い抗アレルギー活性を有する物質を単離し、抗アレルギー剤として使用することができるようになれば全ての人に効果が期待できる飲食品を容易に製造することができるようになる。しかし、これまではアッサム雑種の茶葉特有の高い抗アレルギー活性を有する物質が何であるのかわかっていなかった。
【0008】
以上のような課題に鑑み本発明では、アッサム雑種の茶葉特有の強い抗アレルギー性を有する物質を単離することを目的とし、得られたカテキン類、即ち、エピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(3,4−O−ジメチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(3,5−O−ジメチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(3,4,5−O−トリメチル)ガレート及びそれらのエピマーを有効成分として含有する抗アレルギー剤及びこれを含有する飲食品、外用剤、化粧料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0010】
(1) 下記の一般式(1)で示される抗アレルギー剤製造用組成物。
【化1】

[式中、R,R,Rは、それぞれ独立して水素原子、メチル基のどちらか一方の基である。]
【0011】
上述のように、カテキン類は、抗酸化作用、動脈硬化抑制作用、血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用、殺菌作用、抗菌作用、消臭作用等様々な効果を有する。本発明者らは一般式(1)で示される化合物、即ち、エピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、ECG3”Meという)、エピカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、ECG4”Meという)、エピカテキン−3−O−(3,4−O−ジメチル)ガレート(以下、ECG3”4”diMeという)、エピカテキン−3−O−(3,5−O−ジメチル)ガレート(以下、ECG3”5”diMeという)、エピカテキン−3−O−(3,4,5−O−トリメチル)ガレート(以下、ECG3”4”5”triMeという)及びそれらのエピマー(以下、CG3”Me、CG4”Me、CG3”4”diMe、CG3”5”diMe、CG3”4”5”triMeという)がアッサム雑種の茶葉特有の強い抗アレルギー性を有する物質であることを見出した。中でもECG3”Meが特に強い抗アレルギー性を有することを見出した。これらの物質は、茶葉を抽出する際にエピ化しやすいため、例えばクロマトグラフィーのような分離手段を用いた際に、他のメチル化カテキンと一緒に分離されてしまっていたのである。なお、R,R,Rの対応関係は以下の通りである。
【表1】

【0012】
従って、この化合物を抗アレルギー剤製造用組成物として使用することによって、より即効性の高い抗アレルギー剤を提供することができる。また、この化合物は茶葉から抽出されたカテキン類の一種であるため、医薬品のような副作用の心配も少ない。
【0013】
ここで、「抗アレルギー剤」とは、ECG3”Me等を有効成分とし、アレルギー症状を抑制する効果を奏するものをいう。ECG3”Me等は、この抗アレルギー剤に十分な効果を奏すると判断される程度即ち、有効成分量含有されていればよい。従って、本発明において抗アレルギー剤とは、ECG3”Me単体及び、他のカテキン類や保存剤、防腐剤等を含有した混合物の両方が含まれる。
【0014】
(2) アッサム雑種の茶葉を原料とする緑茶又は包種茶の茶葉由来の成分である(1)に記載の抗アレルギー剤製造用組成物。
【0015】
一般式(1)で示されるECG3”Me等は、アッサム雑種の茶葉由来の組成物である。従って(2)の発明によれば、アッサム雑種の茶葉を原料とする緑茶又は包種茶としたことによって茶葉中のECG3”Me等の含有量を高めることができるため、抗アレルギー剤製造用組成物を効率よく製造することができる。
【0016】
(3) 前記アッサム雑種の茶葉は、べにふうきである(2)に記載の抗アレルギー剤製造用組成物。
【0017】
べにふうきはアッサム雑種系の茶葉の中でも特に抗アレルギー活性が強い。従って、(3)の発明によれば、べにふうきの茶葉を緑茶又は包種茶としたことによって茶葉中のECG3”Me等の含有量を高めることができるため、より効率よく単離することができる。なお、単離の際はリン酸溶液、酢酸溶液、クエン酸溶液、アスコルビン酸溶液を添加してもよい。リン酸溶液等の酸性溶液を添加することによって、ストリクチニンのような加水分解型タンニンの分解を防止することができる。更にカテキン類の抽出効率を向上させることができるためである。
【0018】
(4) 粒子径5μm、カラム長150mmのオクタデシルシリカカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーによる測定条件下において、溶離液を水、アセトニトリル、リン酸混合液、及びメタノールの混合液とし、移動相の流速が1ml/minのもと、ポリフェノール画分の37分から50分の溶出時間で移動する成分である(1)から(3)いずれかに記載の抗アレルギー剤製造用組成物。
【0019】
(4)の発明によれば、粒子径5μm、カラム長150mmのオクタデシルシリカカラム(ODS−C18カラム)を用いて溶離液を水、アセトニトリル、リン酸混合液、及びメタノールの混合液とし、移動相の流速が1ml/minのもと単離したものを抗アレルギー剤製造用組成物として用いたことによって、抗アレルギー剤製造用組成物を、より効率よく製造することができる。
【0020】
溶離液は、水、アセトニトリル、リン酸混合液、及びメタノールを全て所定の割合で混合させたものを用いる。例えば、水、アセトニトリル、リン酸をそれぞれ体積比400:10:1で混合させたものを溶離液Aとし、この溶離液Aとメタノールをそれぞれ体積比2:1で混合させたものを溶離液Bとして用いることが好ましい。
【0021】
(5) (1)から(4)いずれかに記載の抗アレルギー剤製造用組成物を、飲料100mlあたり0.08mgから80mg含有する飲料。
【0022】
(5)の発明によれば、飲料中の抗アレルギー剤製造用組成物の含有量を、上記の量としたことによって、カテキン類が飲料中で抗アレルギー作用を奏することが可能となる。含有量が0.08mg未満であると十分な抗アレルギー作用を奏することができない。また、含有量が80mgを越える場合は、風味が損なわれてしまう。
【0023】
なお、本発明における「飲料」とは、例えば緑茶、紅茶、中国茶等の茶飲料、果汁飲料、スポーツドリンク等の清涼飲料、コーヒー類、ココア、ジュース類、ミルク飲料、炭酸飲料、アルコール飲料、その他日本標準商品分類(総務庁)に掲載されている種々の飲料をいう。
【0024】
(6) 密閉容器詰飲料である(5)に記載の飲料。
【0025】
(6)の発明によれば、密閉容器入りの飲料としたことによって、いつでも手軽に摂取することができる。これにより茶を飲むという日常的な行為によりアレルギー症状を予防、又は軽減することができる。
【0026】
なお、本発明における「密閉容器詰飲料」とは、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等に充填されている飲料をいう。
【0027】
(7) (1)から(4)いずれかに記載の抗アレルギー剤製造用組成物を、食品100gあたり0.08mgから80mg含有する食品。
【0028】
(7)の発明によれば、食品中のアレルギー剤製造用組成物の含有量を、上記の量としたことによって、カテキン類が食品中で抗アレルギー作用を奏することが可能となる。含有量が0.08mg未満であると十分な抗アレルギー作用を奏することができない。また、含有量が80mgを越える場合は、風味が損なわれてしまう。
【0029】
なお、本発明における「食品」とは、本発明に係る抗アレルギー剤製造用組成物を含有することができるような形態のものであれば特に限定されるものではない。例えば、パン、クッキー、チョコレート、チューイングガム、シリアル、菓子、等の固形食品、ジャム、ヨーグルト、ゼリー、等のゲル状食品又は半固形食品等をいう。
【0030】
(8) (1)から(4)いずれかに記載の抗アレルギー剤製造用組成物を、抗アレルギー増強剤として使用する方法。
【0031】
(8)の発明によれば、抗アレルギー剤製造用組成物を、抗アレルギー増強剤として、例えばやぶきたのように、ECG3”Me等の含有量が高くない茶飲料や、穀物茶、混合茶の抗アレルギー作用を利用した食品の開発等にも添加することにより、これらの茶飲料が本来有している機能を損なうことなく、抗アレルギー効果を増強することができる。
【0032】
なお、本発明でいう「抗アレルギー増強剤」とは、一般式(1)で示される組成物が精製されたもの以外にも、例えばガロカテキンガレートやカテキン等を必要に応じて適宜組み合わせた混合物も含まれる。また、液体、粉末、粒状等形状は特に問わない。
【0033】
(9) アッサム雑種の茶葉を原料とする緑茶又は包種茶の茶葉粉末に、溶媒を添加して混合液を得る工程と、この混合液から下記の一般式(1)で示される抗アレルギー剤製造用組成物を抽出して高速液体クロマトグラフィーにて精製する工程と、を有する抗アレルギー剤製造用組成物の製造方法。
【化2】

[式中、R,R,Rは、それぞれ独立して水素原子、メチル基のどちらか一方の基である。]
【0034】
(10) 内径4.6mm、長さ150mm及び粒子径5μmのオクタデシルシリカカラムを、下記の一般式(1)で示される抗アレルギー剤製造用組成物を製造するために使用する方法。
【化3】

[式中、R,R,Rは、それぞれ独立して水素原子、メチル基のどちらか一方の基である。]
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、アッサム雑種の茶葉から単離したECG3”Me等を抗アレルギー剤製造用組成物として使用したことによって、より即効性が高い抗アレルギー剤を提供することができる。また、この抗アレルギー剤製造用組成物は茶葉由来のものであるため、眠気などの副作用を誘発する心配も少ない。したがって誰でも安心して摂取することができる。
【0036】
また、飲食品に添加することによって、万人向けの風味を有する飲食品を提供することが可能となる。これにより、飲料を飲んだり、食品を食べたりという日常的に行われている行為により、アレルギー症状を予防することができる。
【0037】
更に、抗アレルギー増強剤として用いたことにより、抗アレルギー効果が低い茶飲料等が本来有している機能を損なうことなく、抗アレルギー効果を増強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明について詳しく説明するがこれに限定されるものではない。
【0039】
<茶葉抽出物の製造>
本発明に係る抗アレルギー剤製造用組成物の製造方法は、アッサム雑種の茶葉を原料とする緑茶又は包種茶、特に、べにふうき緑茶又はべにふうき包種茶の茶葉粉末に、溶媒を添加して混合液を得る工程と、この混合液から下記の一般式(1)で示される抗アレルギー剤製造用組成物を抽出して高速液体クロマトグラフィーにて精製する工程と、を有する。以下、べにふうき茶葉を使用した場合における各工程について順を追って説明する。
【化4】

[式中、R,R,Rは、それぞれ独立して水素原子、メチル基のどちらか一方の基である。]
【0040】
まず、混合液を得る工程において、べにふうき茶葉は、そのままの状態でもよいが、粉末物であることが好ましい。また、この粉砕物は均一な大きさであることが好ましいため、粉砕物をふるいにかけて用いてもよい。
【0041】
また、抽出溶剤としては毒性の無いものであればよく、水、低級アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等のエーテル類、例えばエチルエーテル、ジオキサン、アセトン等が挙げられるが、抽出物中のカテキン類の回収率を考慮すると、エタノールが含有されている溶剤を用いることがより好ましい。また、抽出時の温度は、溶媒の融点より高く、沸点より低い温度であれば、特に限定されるものではないが、水では10℃から100℃、エタノール及びメタノールでは10℃から40℃が望ましい。抽出時間は10秒から24時間の範囲とするのが好ましい。
【0042】
抽出は、最初に茶葉又は茶葉粉末250mgに溶媒を添加して混合液を得る。なおこのとき抽出効率を高めるために、リン酸溶液を添加してもよい。リン酸溶液の濃度は0.1%から5%であることが好ましく、0.8%であることが更に好ましい。次いで、この混合液にエタノールや水等の抽出溶剤を添加して、更に15分から120分、20℃から40℃でインキュベーションを行なう。
【0043】
<ECG3”Me等の単離>
高速液体クロマトグラフィーにて精製(単離)する工程は、上記方法により得られた混合液を、化学分離精製手法として一般的に用いられる方法にて単離する工程である。化学分離精製手法とは、例えば、液−液分配、薄層クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、分配カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、電気泳動や高速液体クロマトグラフィーなどを用いることができる。また、必要に応じこれらの分離精製手段を組み合わせて行なってもよい。このような手法により単離したECG3”Meやその異性化体と、保存剤や防腐剤等通常抗アレルギー剤に添加される物質を合わせて本発明に係る抗アレルギー剤とする。
【0044】
なお操作が簡便であること、分離能がよいことなどの観点から高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて単離することがより好ましい。この場合、以下のような手順で行なうことが好ましい。
【0045】
まず、上記の混合液を蒸留水でメスアップした後に攪拌し、数分静置した後に濾過する。なお、濾液はファルコンチューブに採取することが好ましい。この濾液を親水性フィルターで濾過し、エッペンチューブに採取する。更に、この上清を蒸留水で10倍に希釈する。次いで、これを以下の条件で単離した。
【0046】
溶離液A(移動相A)は、水、アセトニトリル、リン酸(HPO)をそれぞれ体積比で800:10:1から400:40:1となるように調製することが好ましく、400:10:1となるように調製することがより好ましい。一方、溶離液B(移動相B)はメタノールと溶離液Aを体積比で1:1から1:4となるよう調製することが好ましく、1:2となるように調製することがより好ましい。
【0047】
単離は次のような条件の下行なうことが好ましい。まず、移動相の流速を1ml/minとし、分離開始(測定開始)後3分まで溶離液Bを20質量%、30分までに溶離液Bを75質量%までリニアグラジエントさせる。次いでこれを測定開始後45分まで保持して、そのあと一気に溶離液Bを20質量%まで下降させる。
【0048】
カラムは通常市販されているカラムを用いるが、カラムは可能であれば新しいカラムである方が好ましい。表2に示すように、ECG3”Meやその異性化体は、カラムの劣化に伴い、GCG3”Meと一緒に単離されやすくなってしまうためである。
【表2】

【0049】
また本発明では、上記の方法により単離したECG3”Me等を、濃縮したものを抗アレルギー剤製造用組成物として用いてもよい。濃縮は通常行なわれている方法、例えば減圧下でロータリーエバポレータを用いて行なう。このときの温度は20℃から80℃であることが好ましく、60℃以下であることが更に好ましい。
【0050】
<飲食品の製造>
本発明に係る抗アレルギー剤製造用組成物は、単独又は他のカテキン類と混合した抗アレルギー剤として、飲料、医薬、食品等のような各種用途に用いることができる。食品としては、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品、健康食品などに食品添加物として配合することができる。添加対象の食品としては、各種食品に可能である。飲料としては、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品としての飲料やその他の栄養飲料、健康飲料、各種の健康茶、その他の飲料などに配合できる。他の食品としては、菓子類、パン、麺類、大豆加工品、乳製品、卵加工品、練り製品、油脂、調味料等が挙げられる。
【0051】
具体的な製造方法としては、公知の方法を用いて製造する。なお、製造工程において、茶葉そのものを粉砕した粉砕物を更に添加してもよい。また、生化学的に合成した他のメチル化カテキンを混合してもよい。
【0052】
ここでメチル化カテキンとは、メチル化されたカテキン及び精製の際の不可避成分をいう。本発明におけるメチル化カテキンは、エピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、ECG3”Meという)、エピカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、ECG4”Meという)、エピカテキン−3−O−(3,4−O−ジメチル)ガレート(以下、ECG3”4”diMeという)、エピカテキン−3−O−(3,5−O−ジメチル)ガレート(以下、ECG3”5”diMeという)、エピカテキン−3−O−(3,4,5−O−トリメチル)ガレート(以下、ECG3”4”5”triMeという)、カテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、CG3”Meという)、カテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、CG4”Meという)、カテキン−3−O−(3,4−O−ジメチル)ガレート(以下、CG3”4”diMeという)カテキン−3−O−(3,5−O−ジメチル)ガレート(以下、CG3”5”diMeという)、カテキン−3−O−(3,4,5−O−トリメチル)ガレート(以下、CG3”4”5”triMeという)以外にも、主としてエピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、EGCG3”Meという)、エピガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、EGCG4”Meという)、ガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、GCG3”Meという)、又は、ガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、GCG4”Meという)が該当する。
【0053】
また、本発明に係る抗アレルギー剤製造用組成物と他のカテキン類を混合して飲食品や外用剤に使用する際、(EGCG3”Me+GCG3”Me)/(ECG3”Me+CG3”Me)の値が、0.5から6を示すようにして混合することが好ましい。この数値が0.5未満であると十分な抗アレルギー効果を奏することができない。また、この数値が6を超える場合は風味を損なう場合があるためである。
【0054】
なお、飲料及び食品中で、上記の抗アレルギー剤製造用組成物が十分な抗アレルギー効果を奏するために酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合しても良い。
【0055】
例えば甘味料としては、砂糖、ぶどう糖、果糖、異性化液糖、グリチルリチン、ステビア、アスパルテーム、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。酸味料としては、天然成分から抽出した果汁類のほか、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、リン酸が挙げられる。クエン酸もしくはリンゴ酸を飲料中に0.1g/Lから5g/L、好ましくは0.5g/Lから2g/L含有するのがよい。酸化防止剤としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、があげられる。飲料中に、0.005質量%から0.5質量%、好ましくは0.01質量%から0.1質量%含有するのがよい。
【0056】
飲料に使用する容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などの通常の形態で提供することができる。
【0057】
また、上記の容器は例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた所定の殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度まで冷却して、容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。さらに、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【0058】
また、PETボトルのように透明容器に充填する際は、褐変防止のためにL−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウムなどの酸化防止剤を添加することが好ましい。
【0059】
また、本発明に係る抗アレルギー剤製造用組成物を有効成分とする医薬としては、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息、蕁麻疹や高脂血症、肥満症、肝疾患、高血圧症の治療目的に使用するものが挙げられる。
【0060】
<抗アレルギー増強剤としての使用>
本発明に係る抗アレルギー剤製造用組成物は、例えばやぶきた茶のようにECG3”Me等の含有量が高くない茶飲料や、穀物茶、混合茶等にも抗アレルギー増強剤として添加することができる。これにより当該茶飲料等に含有されているカテキン類の抗アレルギー効果をより増強させることが可能となる。
【0061】
やぶきた茶に添加する場合の具体的な製法としては、上述の方法で茶葉抽出物を製造し、そこからECG3”Me等を単離する。その後単離した抗アレルギー剤製造用組成物をやぶきた茶に添加する。好ましい添加量としては、飲料100mlあたり0.08mgから80mgであることが好ましく、飲料100mlあたり0.4mgから40mg含有することが更に好ましい。
【0062】
<医薬品の製造>
医薬に関しては、本発明に係る抗アレルギー剤製造用組成物をそのまま、あるいは水等で希釈して、経口的に投与できる。もしくはこれを公知の医薬用担体と共に製剤化することにより調製される。例えば、シロップ剤等の経口液状製剤として、またはエキス、粉末などに加工して、薬学的に許容される担体と配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの経口固形製剤として投与できる。薬学的に許容できる担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、液状製剤における溶剤、賦形剤、懸濁化剤、結合剤などとして配合される。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色料、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
【0063】
上記の内服薬以外にも軟膏剤、ジェル剤、ゲル剤、クリーム、パック剤、乳液などの半固形物や、ローション剤、化粧水等の液体、パウダー等の固形物等に添加して外用剤として使用することもできる。これらの外用剤の製造方法としては、従来公知の方法を用いて製造することができるが、基剤と本発明に係る抗アレルギー剤製造用組成物を混合する際の温度は、20℃から80℃であることが好ましく、50℃以下であることが更に好ましい。また、抗アレルギー剤製造用組成物の添加量としては、0.1質量%から3質量%であることが好ましく、0.2質量%から2質量%であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0064】
<抗アレルギー剤の製造>
予め水分含有量を測定したべにふうき茶葉粉末250mg(水分含有量3%)に、2%リン酸溶液10mlを添加して茶葉分散液を得た。次いで、この茶葉分散液にエタノール10mlを添加して攪拌し、更に30℃で60分インキュベーションを行なった。次いで、蒸留水でメスアップした後に攪拌し、5分ほど静置した後に濾過した。なお、濾液は15mlファルコンチューブに10ml採取した。この濾液を0.45μmの親水性フィルター(ADVANTEC社:DISMIC−13HP, PTFE non−sterile)で濾過し、1.5mlエッペンチューブに採取した。更に、この上清を蒸留水で10倍に希釈した(1.5mlエッペンチューブに900μlの蒸留水と上清100μl)。次いで、これをオートインジェクタチューブに約100μl採り、以下の条件でECG3”Meを単離し、本発明に係る抗アレルギー剤とした。
【0065】
なお、図1の下段に、ECG3”Meを単離したときのクロマトグラフィーのチャートを示す。図中、上段のチャートは、ECG3”Me等の含有量が少ない茶葉の茶葉分散液のチャートである。これより、ECG3”Me等が単離されていることが示された。
【0066】
移動相A・・・・水、アセトニトリル、リン酸混合液(体積比 400:10:1)
移動相B・・・・メタノール、移動相A混合液(体積比 1:2)
カラム・・・・・和光純薬製(Wakopak Navi C18−5 (4.6×150) 5μm)
ガードカラム・・和光純薬製(Wakopak Navi C18−5 (4.6×10) 5μm)
オートサンプラ・4℃
カラム温度・・・40℃、注入量:20μl、流速:1ml/min
検出波長・・・・272nm(UV−VISもしくはPDA検出器で検出する)
【0067】
<ECG3”Meのヒスタミン遊離抑制効果の検討>
上記の方法で得られた抗アレルギー剤のヒスタミン遊離抑制効果を検討した。また、比較として他のカテキン類、エピガロカテキン−3−O−ガレート(以下、EGCGという)、エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、EGCG3”Meという)を単離したものを用いた。
【0068】
抗アレルギー活性(I型アレルギー)の判定法として、マウスマスト細胞からのヒスタミン遊離抑制作用を指標とした。ヒスタミン遊離抑制効果は、マウス骨髄由来培養マスト細胞(BMMC)を用い、10%非働化FBS(牛胎児血清)を3ng/ml、インターロイキン−3(IL−3)、5mMグルタミン酸Naを50μM、2−メルカプトエタノール添加RPMI1640培地で培養した。
【0069】
細胞(1×10cells/mL)は、抗DNP−マウスIgE抗体で一晩感作した後、翌日Tyrode液に浮遊させて被検試料とともに10分インキュベート後、DNP−HSA(抗原)を添加して脱顆粒を誘発し(20分)、上清中のヒスタミン量を液体クロマトグラフ法で測定した。
【0070】
測定機器は、島津製作所LC−10Aを用い、カラムはShodex ODP 50−4Eを用いた。流速は、0.5ml/minであり、注入量は20μl、カラムオーブン温度は37℃、検出器はRF(ex.330nm,em.430nm)、の条件でイソクラティック分析を行った。抗アレルギー性はコントロールである蒸留水との相対値の低いものほど高いと判断した。
【0071】
その結果を表3に示す。これより本発明に係る抗アレルギー剤製造用組成物が、他のカテキン類と比べてより強いヒスタミン遊離抑制効果を奏することが示された。
【表3】

【0072】
<ECG3”Meの添加量がヒスタミン遊離抑制効果に及ぼす影響の検討>
次いで、上記のカテキン類の添加量を変えてヒスタミン遊離抑制効果を検討した。ECG3”Meを1ml当たり2μg,10μg含有する飲料をそれぞれ試料1,2とした。また、EGCGを1ml当たり2μg,10μg含有する飲料をそれぞれ比較試料1,2とした。EGCG3”Meを1ml当たり2μg,10μg含有する飲料をそれぞれ比較試料3,4とした。これらの試料のヒスタミン遊離抑制効果を図2に示す。これより、本発明に係る抗アレルギー剤製造用組成物がEGCG3”Meと比べて約1.5倍のヒスタミン遊離抑制効果を奏することが示された。
【0073】
<EGCG3”MeとECG3”Meの混合比と、ヒスタミン遊離抑制効果の関係の検討>
次いで、EGCG3”MeとECG3”Meの混合比とヒスタミン遊離抑制効果との関係を検討した。また、べにふうきを熱水で抽出した抽出液の抗アレルギー活性も併せて検討した。試料中のカテキン含有量が下記の表4となるように調製し、ヒスタミン遊離抑制効果を検討した。その結果を図3に示す。EGCG3”MeとECG3”Meの混合物において、抗アレルギー活性の強度は1.5から2.5であることが推定された。また、それぞれ物質単体よりべにふうき緑茶熱水抽出液の方が、強い活性を示した。
【表4】

【0074】
<EGCG3”Me及びECG3”Meの添加量と、ヒスタミン遊離抑制効果の関係の検討>
また、抗アレルギー効果の低い、やぶきたの熱水抽出物に、EGCG3”Me又はECG3”Meを、それぞれ最終添加濃度が0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml、50μg/mlとなるように添加したときのヒスタミン遊離抑制効果を検討した結果を図4に示す。これより、EGCG3”MeよりECG3”Meの方が、抗アレルギー活性を高めることができることが示された。このように、アッサム雑種より抽出したECG3”Me誘導体は、抗アレルギー効果の少ない茶葉に添加することで抗アレルギー作用を付与することが可能であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る抗アレルギー剤を、クロマトグラフィーを用いて単離した結果を示した図である。
【図2】カテキン類の添加量を変えてヒスタミン遊離抑制効果を検討した結果を示した図である。
【図3】EGCG3”MeとECG3”Meの混合比とヒスタミン遊離抑制効果の関係を示した図である。
【図4】EGCG3”MeとECG3”Meの添加量とヒスタミン遊離抑制効果の関係を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で示される抗アレルギー剤製造用組成物。
【化1】

[式中、R,R,Rは、それぞれ独立して水素原子、メチル基のどちらか一方の基である。]
【請求項2】
アッサム雑種の茶葉を原料とする緑茶又は包種茶の茶葉由来の成分である請求項1に記載の抗アレルギー剤製造用組成物。
【請求項3】
前記アッサム雑種の茶葉は、べにふうきである請求項2に記載の抗アレルギー剤製造用組成物。
【請求項4】
粒子径5μm、カラム長150mmのオクタデシルシリカカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーによる測定条件下において、
溶離液を水、アセトニトリル、リン酸混合液、及びメタノールの混合液とし、
移動相の流速が1ml/minのもと、ポリフェノール画分の37分から50分の溶出時間で移動する成分である請求項1から3いずれかに記載の抗アレルギー剤製造用組成物。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載の抗アレルギー剤製造用組成物を、飲料100mlあたり0.08mgから80mg含有する飲料。
【請求項6】
密閉容器詰飲料である請求項5に記載の飲料。
【請求項7】
請求項1から4いずれかに記載の抗アレルギー剤製造用組成物を、食品100gあたり0.08mgから80mg含有する食品。
【請求項8】
請求項1から4いずれかに記載の抗アレルギー剤製造用組成物を、抗アレルギー増強剤として使用する方法。
【請求項9】
アッサム雑種の茶葉を原料とする緑茶又は包種茶の茶葉粉末に、溶媒を添加して混合液を得る工程と、
この混合液から下記の一般式(1)で示される抗アレルギー剤製造用組成物を抽出して高速液体クロマトグラフィーにて精製する工程と、
を有する抗アレルギー剤製造用組成物の製造方法。
【化2】

[式中、R,R,Rは、それぞれ独立して水素原子、メチル基のどちらか一方の基である。]

【請求項10】
内径4.6mm、長さ150mm及び粒子径5μmのオクタデシルシリカカラムを、下記の一般式(1)で示される抗アレルギー剤製造用組成物を製造するために使用する方法。
【化3】

[式中、R,R,Rは、それぞれ独立して水素原子、メチル基のどちらか一方の基である。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−186462(P2007−186462A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6521(P2006−6521)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(596126465)アサヒ飲料株式会社 (84)
【Fターム(参考)】