説明

抗微生物剤

細菌の活動、特にブドウ球菌又はプロピオン酸菌の活動によって発生、増悪、又は伝染する病状の局所的処置に使用されるベンゾキノン又はヒドロキノン。病状としては、皮膚又は皮膚構造の病状、例えばニキビが挙げられる。また、本発明によれば、こうした病状の処置のための医薬の製造における、ベンゾ−又はヒドロキノンの使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の化合物の抗微生物剤としての、特に抗菌剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚及び皮膚構造の病状の多くは、細菌活動によって発生又は増悪する。創傷感染はその例であり、他の例としてはニキビ、アトピー性湿疹、潰瘍、毛嚢炎、真菌症、及びその他の一次及び二次の皮膚及び皮膚構造の感染が挙げられる。
【0003】
また、ブドウ球菌感染は、皮膚に存在する細菌や、その他の鼻孔や耳等の内部の上皮に存在する細菌によっても発生し得る。これらの細菌の中には、一般に使用される抗生物質に耐性を示すことから、その処置や予防が極めて困難となっているものが存在する。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant S. aureus:MRSA)株はその例であり、適切な処置の発見が困難であることから、現在では特に病院において問題となっている。
【0004】
ニキビは、多数の人々が感染している一方で、その効果的な処置が極めて困難な皮膚病の例である。これは顔面及び上幹の毛嚢脂腺濾胞の多因子疾患であり、種々の炎症性及び非炎症性の病変、例えば丘疹、膿疱、小結節、並びに開放及び閉鎖の面皰等を特徴とする。これは、P.アクネスやP・グラニュローサム等の皮膚プロピオン酸菌の異常な増殖や代謝と関連している。現在知られている処置法として、抗生物質(これは通常、特に全身投与された場合に、細菌耐性や望ましくない副作用等の欠点を有する。)や、比較的強めの(harsh)抗菌剤として、例えば過酸化ベンゾイル等(これは皮膚刺激を誘発することが知られている。)が挙げられる。
【0005】
これまでのところ、安全であって、皮膚や潜在的に敏感な他の上皮への使用に適しているとともに、ブドウ球菌(特に抗生物質耐性ブドウ球菌)やプロピオン酸菌等の問題となる微生物に対して有効である抗菌剤を特定することは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的はこのような難点を解消し、又は少なくとも軽減するために使用可能な抗菌剤を提供すること、更には、従来のものとは異なる、そして通常はより優れた、局所使用のための抗菌製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、ベンゾキノン又はヒドロキノンの局所用抗菌剤としての使用が提供される。
【0008】
ベンゾ/ヒドロキノンは、皮膚又は皮膚構造の病状に関連する(例えば、発生、増悪、又は伝染させる)細菌に対する薬剤として使用されることが好ましい。中でも、ブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対して使用されることが好ましく、プロピオン酸菌に対して使用されることがより好ましい。
【0009】
特定のキノン、例えば2−t−ブチルヒドロキノン(TBHQ)等のアルキル置換ヒドロキノンは、抗酸化剤としての用途が既に知られている。また、TBHQ自体は、例えば食品、化粧品、更には接着剤等において、安定剤や保存料としても用いられている。更には、抗真菌剤としても認識されている(DE−44 34 312)。しかしながら、本発明者の知る限りでは、局所適用の対象となる皮膚やその他の外表面に存在する細菌に対する活性剤として用いられたことはなかった。
【0010】
ブラッククミンシード抽出物の構成成分の1つであるチモキノンは、天然由来のアルキル置換ベンゾキノンであって、(少なくとも黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対する)抗菌性と抗炎症性とを兼ね備えていることが知られており、また、マウスモデルにおいて抗痙攣剤(anti-convulsant)として働くことや、抗がん剤としても機能することが示されている。また、食品保存剤としての用途や、通常は抗酸化剤としての用途も知られている。Kahsai A W, Master's thesis, East Tennessee State University, 2002;Saxena AP and Vyas KM in J. Econ. Taxon. Bot, 1986(8): 291-9;De M, Krishna DA and Banerjee AB in Phytoether Res., 1999(13): 616-8;Hosseinzadeh H and Parvardeh S, Phytomedicine 2004, 11(1): 56-64;及びUS−6,218,434を参照のこと。また、発明者等の知る限りでは、チモキノンも、皮膚に存在する細菌、特に皮膚及び皮膚構造の病状に関連する細菌に対する活性剤として用いられたことはなかった。
【0011】
その他の様々な種類のキノンについても、抗微生物剤としての用途(JP−2003−267910、JP−09255547、及びUS−6,228,891を参照のこと)や、保存料としての用途(JP−02202804)が開示されている。しかしながら、発明者等の知る限りでは、これらのキノンも、皮膚及び皮膚構造の病状に関連する細菌に対して用いられたことはなかった。
【0012】
本発明によれば、ベンゾ/ヒドロキノンは、皮膚(特にヒトの皮膚)への局所適用、及び/又は、皮膚への接触に適した製剤に使用されることが好ましい。従って、前記ベンゾ/ヒドロキノンは、皮膚及び/又は他の上皮への適用及び/又は接触を安全に行なうことができるよう、医薬的に許容可能なビヒクル内に包含されることが好ましい。本製剤は、鼻孔、目、頭皮及び/又は膣等の領域への局所適用、及び/又は、耳及び/又は口腔内の組織領域への局所適用に適していることが理想的である。中でも、皮膚、鼻孔、及び耳内の組織への適用に適していることが最も好ましく、特に皮膚及び鼻孔が好ましい。
【0013】
局所適用「に適した(suitable for)」製剤は、局所適用に適合させた(adapted for)製剤であってもよい。
【0014】
好適なビヒクルは、局所用のスキンケア又は医薬調製剤を調製する分野において、当業者にはよく知られている。ビヒクルは通常は流体である。流体という語には、クリーム、ペースト、ゲル、ローション、軟膏、フォーム、又はその他の粘性又は半粘性の流体が含まれ、更には、スプレーとして(例えば鼻用に)使用されるもの等、より粘性の低い流体も含まれる。前記ベンゾ/ヒドロキノンは、溶液又は懸濁液の形態で存在してもよい。ここで「懸濁液(suspension)」という語には、乳濁液(emulsions)やその他の多相分散液(multi-phase dispersions)が含まれる。
【0015】
ベンゾ/ヒドロキノンは、標的化に適した、或いは目標部位における放出及び/又は投与時間の制御に適した、送達用ビヒクル(delivery vehicle)に担持されて(carried in or on)いてもよい。こうしたビヒクルとしては、リポゾーム及び他の封入物質(encapsulating entities)、例えばニオゾーム(niosomes)、アスパゾーム(aspasomes)、マイクロスポンジ(microsponges)、マイクロエマルジョン、ヒドロゲル、及び固体脂質ナノ粒子等が挙げられる。
【0016】
ベンゾキノンは、不飽和六員環に2つのC=O基を有するシクロヘキサジエン−ジオンである。残る4つの炭素原子は、1又は複数の置換基を有していてもよい。言い換えれば、ベンゾキノンは任意により置換されていてもよい。但し、「ベンゾキノン」という語は、二環式又は多環式のキノンを包含することを意図するものではない。
【0017】
ヒドロキノン(ヒドロキシキノンと呼ばれる場合もある)は、ベンゾキノンにおいて、C=O基のうち1つ又は2つ(通常は両方)の代わりにC−OH基を有するものである。言い換えれば、通常はジヒドロキシベンゼンであって、任意により、1又は複数の他の基によって置換されたものである。
【0018】
ベンゾキノンの少なくとも一部が、対応するヒドロキノンの形態で存在してもよく、またはその逆でもよい。また、何れについても、少なくともその一部が、C=O又はC−OH基のうち1つ又は複数がC−O*であるラジカルの形態で存在していてもよい。こうした化合物は、その局所環境(例えばpH)に一部依存して、例えばベンゾキノン及びその対応するヒドロキノン等、2種以上の種の平衡混合物の形態で存在していてもよい。例えば、アルカリ性pHの場合、本化合物はベンゾキノンの形態で存在する傾向が強いのに対して、酸性pHにおいては、ヒドロキノンの形態で存在する傾向が強い。また、酸化剤の存在によって、ヒドロキノンの少なくとも一部が対応するベンゾキノンへと変換される場合がある。即ち、本発明は、ベンゾキノン、ヒドロキノン、対応するラジカル、又はこうした種のうち2以上の混合物について、その使用を包含するものである。
【0019】
ベンゾ/ヒドロキノンが有する2つのC=O基又はC−OH基は、互いにオルト、メタ、又はパラの何れの位置に存在していてもよい。互いにオルトに位置する場合は、シクロヘキサジエン−1,2−ジオン又はo−ベンゾキノンとして、或いは、対応するヒドロキノンの場合には、カテコールとして知られる化合物となる。互いにメタに位置する場合には、シクロヘキサジエン−1,3−ジオン又はm−ベンゾキノンとして、或いは、対応するヒドロキノンの場合には、レゾルシノールとして知られる化合物となる。互いにパラに位置する場合には、シクロヘキサジエン−1,4−ジオン又はp−ベンゾキノンとして、或いは、パラ置換HO−Ph−OHの場合には、単にp−ヒドロキノンとして知られる化合物となる。
【0020】
これら2つのC=O基又はC−OH基は、互いにオルト又はパラに位置することが好ましく、パラに位置するのが最も好ましい。
【0021】
本発明で使用されるベンゾ/ヒドロキノンは、例えばアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ(−NO2)、及びアミン(−NR2、ここでRは各々独立に、水素又は炭化水素である)基から選択される1又は複数の他の基によって、置換されていてもよく、場合によっては置換されていることが好ましい。こうした基は、キノンのシクロヘキサジエン環内の炭素原子に結合することになる。
【0022】
一般に、アルキル置換基は、直鎖状及び分岐鎖状の何れのアルキル基であってもよい。また、シクロアルキル部分(moieties)を有していてもよい。その炭素原子の数は、例えば1から12、好ましくは1から10、より好ましくは1から8の範囲である。アルキル置換基はC1からC6のアルキル基であることが好ましく、C1からC5又はC1からC4のアルキル基であることが好ましい。第2級及び第3級アルキル基(例えばイソプロピル及びt−ブチル)が好ましい。従って、好適なアルキル基は、メチル、エチル、イソプロピル、及びt−ブチルから選択されるものである。
【0023】
アルコキシ置換基は、C1からC6アルコキシ基が好ましく、C1からC5、又はC1からC4、又はC1からC2アルコキシ基がより好ましく、メトキシが最も好ましい。
【0024】
ハロゲン置換基は、例えばフッ素、塩素、及び臭素から選択されるが、フッ素又は塩素が好ましく、塩素が最も好ましい。
アミン置換基としてはNH2が好ましい。
【0025】
ベンゾ/ヒドロキノンは、こうした置換基を少なくとも1つ有していることが好ましく、その置換位置は、(少なくともメタ又はパラ置換ベンゾ/ヒドロキノンの場合)2位、又は(オルト置換化合物の場合)3位であることが好ましい。場合によっては、ベンゾ/ヒドロキノンは、こうした置換基2つにより置換されていてもよく、或いは3つ、更には4つ有していてもよい場合もある。ベンゾ/ヒドロキノンが有するこうした置換基の数は1つ又は2つであることが好ましく、場合によっては1つだけであることが好ましい。
【0026】
特に好ましい置換基としては、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、及びニトロ基から選択されるもの、或いはアルキル、アルコキシ、及びハロゲン基から選択されるもの、或いはアルキル及びハロゲン基から選択されるもの、或いはアルキル及びアルコキシ基から選択されるものが挙げられる。最も好ましい置換基はアルキル基であり、特にC1からC4アルキル基が好ましい。
【0027】
ベンゾ/ヒドロキノンは最高4つのアルキル基で置換されていてもよいが、モノ又はジアルキルベンゾ/ヒドロキノンであることが好ましい。
【0028】
ベンゾ/ヒドロキノンとしては、例えば1つのブチル基により置換されたものが挙げられ、そのブチル基は2位に存在することが好ましい。但し、2以上のブチル基、例えば2つのブチル基で置換されていてもよい。ブチル基としてはt−ブチル基が好ましい。
【0029】
ベンゾ/ヒドロキノンは2つのブチル基によって置換されていてもよい。これらが占める位置は、特にベンゾ/ヒドロキノンがパラ−ベンゾ/ヒドロキノンである場合、例えば2位及び5位が挙げられる。或いは、特にベンゾ/ヒドロキノンがオルト−ベンゾ/ヒドロキノンの場合には、3位及び5位が挙げられる。これらのブチルもt−ブチル基であることが好ましい。
【0030】
上記置換基に代わり、或いはそれらに加えて、ベンゾ/ヒドロキノンは1つのメチル基によって置換されていてもよい。このメチル基の存在位置は、2位又は5位であることが好ましい。但し、2以上のメチル、例えば2つ又は3つ、更には4つのメチルで置換されていてもよい。例えば、2つのメチル基で置換される場合、これらのメチル基の存在位置は2位及び3位であることが好ましい。2つのメチル基で置換される場合、その存在位置は2位、3位、及び5−位であることが好ましい。
【0031】
上記置換基に代わり、或いはそれらに加えて、ベンゾ/ヒドロキノンは1つのプロピル基で置換されていてもよい。このプロピル基は2位に存在することが好ましい。但し、ベンゾ/ヒドロキノンは2以上のプロピル基、例えば2つのプロピル基で置換されていてもよい。プロピルとしてはイソプロピル基が好ましい。
【0032】
上記置換基に代わり、或いはそれらに加えて、ベンゾ/ヒドロキノンは1つ、2つ、3つ、更には4つのエチル基で置換されていてもよい。エチル基の数は1つ又は2つが好ましく、1つがより好ましい。中でも、少なくとも1つのエチル基が2位を占めることが好ましい。
【0033】
また、多くの場合は好ましいことではないが、上記置換基に代わり、或いはそれらに加えて、ヒドロキノンのC−OH基の酸素原子に直接結合(し、これによりシクロヘキシル環上のヒドロキシル基の水素原子を置換)する置換基を、1つ又は2つ(好ましくは1つ)有していてもよい。例えば、これらの酸素原子のうち1つに、アルキル基が結合していてもよい。その好ましい例については上述した通りである。このアルキル基としては、例えば1−o−ヘキシル−2,3,5−トリメチルヒドロキノン(HTHQ)に見られるように、ヘキシルが挙げられる。
【0034】
ベンゾ/ヒドロキノンとして、特に、後述の実施例1及び3に列記されているものが挙げられる。より特定すると、TBHQ、チモキノン及びその誘導体、ジチモキノン及びチモヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチル−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2−メチル−p−ベンゾキノン、2−クロロ−p−ヒドロキノン、2−ブロモ−p−ヒドロキノン、2,5−ジクロロ−p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロ−p−ベンゾキノン、2,3−ジフルオロ−p−ベンゾキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2−クロロ−5−メチル−p−ベンゾキノン、並びにHTHQから選択されるものが挙げられる。
【0035】
ベンゾ/ヒドロキノンとしては、例えば、TBHQ、又はそれに対応する2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、或いは、2位をイソプロピル基で置換され、5位をメチル基で置換されたパラ−ベンゾキノンであるチモキノン、又はそれに対応するチモヒドロキノンが挙げられる。
【0036】
一般に、ベンゾ/ヒドロキノンは、無置換のベンゾキノンでも、無置換のヒドロキノンでもないことが好ましい。
【0037】
本発明で使用されるベンゾ/ヒドロキノン、特にチモキノン、ジチモキノン、又はチモヒドロキノンは、他の物質を多数含有する植物抽出物の一部として使用するよりも、単離されたキノン(天然由来でも合成由来でもよいが、後者が好ましい)の形態で使用するのが理想的である。
【0038】
ベンゾ/ヒドロキノンは、抗酸化剤として活性な種類であってもよい。
【0039】
場合によっては、キノンはヒドロキノンであることが好ましく、アルキル置換ヒドロキノンであることがより好ましい。勿論、TBHQが特に好ましい。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、ベンゾ/ヒドロキノンはブドウ球菌、特に黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対する薬剤として使用される。本実施形態で好ましいベンゾ/ヒドロキノンとしては:
【0041】
a)オルト又はパラ置換ベンゾ/ヒドロキノン、好ましくは後者;及び/又は、
【0042】
b)ヒドロキノン、又は、少なくともヒドロキノンと対応するベンゾキノンとの混合物であって、ヒドロキノンを50%超、より好ましくは60、又は70、又は80、又は90%w/w超の割合で含有する混合物;及び/又は、
【0043】
c)アルキル、アルコキシ、ハロゲン、及びニトロから選択される、1又は複数、例えば1つ又は2つの置換基(こうした基の好ましい例は上述の通りである)を有する化合物;及び/又は、
【0044】
d)1又は複数の、例えば1つ又は2つのアルキル置換基(好ましい例は上述の通りである)を有する化合物;及び/又は、
【0045】
e)少なくとも2位を置換されたもの、より好ましくはアルキル、アルコキシ、ハロゲン、及びニトロから選択される置換基(こうした基の好ましい例は上述の通りである)、最も好ましくはアルキル基で置換された化合物;及び/又は、
【0046】
f)ハロゲンやニトロ基等の電子求引基を置換基として3つ以上有さない化合物、より好ましくは、こうした基を置換基として2つ以上有さない化合物;及び/又は、
【0047】
g)カテコール又はレゾルシノールの場合、2つの置換基、好ましくはアルキル置換基を有する化合物;及び/又は、
【0048】
h)下記実施例1に列記されたキノン、より好ましくは、p−ヒドロキノン、p−ベンゾキノン、TBHQ、チモキノン、チモヒドロキノン、2−ブロモ−p−ヒドロキノン、デュロキノン(duroquinone:2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノン)、2,5−ジ−t−ブチル−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノン、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2−メチル−p−ベンゾキノン、2−クロロ−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−レゾルシノール、2,5−ジクロロ−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−カテコール、4−メチル−カテコール、トリメチル−p−ヒドロキノン、2−クロロ−p−ヒドロキノン、2−クロロ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロ−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジフルオロ−p−ヒドロキノン、2,5−ジブロモ−6−イソプロピル−3−メチル−p−ベンゾキノン、4,6−ジ−t−ブチル−レゾルシノール、及び1−o−ヘキシル−2,3,5−トリメチル−ヒドロキノン(HTHQ)から選択される化合物;及び/又は、
【0049】
i)TBHQ、チモキノン、チモヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチル−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノン、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−レゾルシノール、2,5−ジクロロ−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−カテコール、トリメチル−p−ヒドロキノン、2−クロロ−p−ヒドロキノン、2−クロロ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジフルオロ−p−ヒドロキノン、2,5−ジブロモ−6−イソプロピル−3−メチル−p−ベンゾキノン、4,6−ジ−t−ブチル−レゾルシノール、及びHTHQから選択される化合物;及び/又は、
【0050】
j)TBHQ、チモキノン、チモヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノン、3,5−ジ−t−ブチル−カテコール、トリメチル−p−ヒドロキノン、2−クロロ−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、2,5−ジブロモ−6−イソプロピル−3−メチル−p−ベンゾキノン、4,6−ジ−t−ブチル−レゾルシノール、及びHTHQから選択される化合物;及び/又は、
【0051】
k)TBHQ、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノン、3,5−ジ−t−ブチル−カテコール、トリメチル−p−ヒドロキノン、2−クロロ−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、2,5−ジブロモ−6−イソプロピル−3−メチル−p−ベンゾキノン、4,6−ジ−t−ブチル−レゾルシノール、及びHTHQから選択される化合物;及び/又は、
【0052】
l)2−ブロモ−p−ヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチル−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,5−ジクロロ−p−ヒドロキノン、2−クロロ−p−ヒドロキノン、2,6−ジクロロ−p−ヒドロキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジフルオロ−p−ヒドロキノン、及びp−ヒドロキノンから選択される化合物、任意により2,5−ジブロモ−6−イソプロピル−3−メチル−p−ベンゾキノンとの併用;及び/又は、
【0053】
m)2,5−ジ−t−ブチル−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2−クロロ−p−ヒドロキノン、及び2−エチル−p−ヒドロキノンから選択される化合物;及び/又は、
【0054】
n)2,5−ジ−t−ブチル−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2−クロロ−p−ヒドロキノン、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、及び2−エチル−p−ヒドロキノンから選択される化合物、任意によりTBHQとの併用が挙げられる。
【0055】
上述の好ましい例は、より一般的な場合、例えば、ベンゾ/ヒドロキノンがブドウ球菌以外の微生物に使用される場合にも該当する。
【0056】
本発明の他の実施形態によれば、ベンゾ/ヒドロキノンはプロピオン酸菌、特にP.アクネスに対して使用され、より具体的には、ニキビの処置に使用される。この場合、好ましいベンゾ/ヒドロキノンとしては:
【0057】
a)オルト又はパラ置換ベンゾ/ヒドロキノン、好ましくは後者;及び/又は、
【0058】
b)ベンゾキノン、又は、少なくともベンゾキノン及び対応するヒドロキノンとの混合物であって、ベンゾキノンを50%超、より好ましくは60、又は70、又は80、又は90%w/w超の割合で含有する混合物;及び/又は、
【0059】
c)アルキル、アルコキシ、ハロゲン、及びニトロから選択される、1又は複数、例えば1つ又は2つの置換基(こうした基の好ましい例は上述の通りである)を有する化合物;及び/又は、
【0060】
d)1又は複数の、例えば1つ又は2つのアルキル置換基(好ましい例は上述の通りである)を有する化合物;及び/又は、
【0061】
e)少なくとも2位を置換基により、より好ましくはアルキル、アルコキシ、ハロゲン、及びニトロから選択される基(こうした基の好ましい例は上述の通りである)により置換された化合物;及び/又は、
【0062】
f)ハロゲンやニトロ基等の電子求引基を置換基として3つ以上有さない化合物、より好ましくは、こうした基を置換基として2つ以上有さない化合物;及び/又は、
【0063】
g)特にパラ−ベンゾ/ヒドロキノンの場合、5位が無置換であるか、5位がメチル基で置換された化合物、より好ましくは前者;及び/又は、
【0064】
h)後述の実施例3に列記されたキノン、より好ましくは、p−ベンゾキノン、TBHQ、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、チモキノン、チモヒドロキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ベンゾキノン、2、5−ジブロモ−6−イソプロピル−3−メチル−p−ベンゾキノン、4,6−ジ−t−ブチル−レゾルシノール、テトラクロロ−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−カテコール、HTHQ、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−クロロ−p−ベンゾキノン、2−クロロ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジフルオロ−p−ヒドロキノン、2,5−ジメチル−レゾルシノール、及び2−エチル−p−ヒドロキノンから選択される化合物;及び/又は、
【0065】
i)TBHQ、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、チモキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジブロモ−6−イソプロピル−3−メチル−p−ベンゾキノン、4,6−ジ−t−ブチル−レゾルシノール、3,5−ジ−t−ブチル−カテコール、HTHQ、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−クロロ−p−ベンゾキノン、2−クロロ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジフルオロ−p−ヒドロキノン、2,5−ジメチル−レゾルシノール、及び2−エチル−p−ヒドロキノンから選択される化合物;及び/又は、
【0066】
j)TBHQ、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、チモキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ベンゾキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−クロロ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、及び2−エチル−p−ヒドロキノンから選択される化合物、任意により2,5−ジブロモ−6−イソプロピル−3−メチル−p−ベンゾキノンと併用;及び/又は、
【0067】
k)TBHQ、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、チモキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ベンゾキノン、及び2−クロロ−5−メチル−p−ベンゾキノンから選択される化合物が挙げられる。
【0068】
上述の好ましい例は、より一般的な場合にも、例えば、ベンゾ/ヒドロキノンがプロピオン酸菌以外の微生物に使用される場合にも該当する。
【0069】
上述した何れの場合においても、ベンゾ/ヒドロキノンは、各場合について特に明記された置換基の他には、置換基を有さないことが好ましい。
【0070】
場合によっては、特にブドウ球菌に対して使用する場合、とりわけ黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して使用する場合には、ベンゾ/ヒドロキノンはチモキノンではないことが好ましく、また、特定の場合には、チモキノン又はチモヒドロキノンの何れでもないことが好ましい。
【0071】
場合によっては、特に、プロピオン酸菌に対して用いられる場合、及び/又は、ニキビの処置に用いられる場合、及び/又は、ヒトの皮膚に適用される場合には、ベンゾ/ヒドロキノンは、無置換のp−ヒドロキノンではないことが好ましい。
【0072】
本発明の文脈において、抗細菌活性には、種々の細菌に対する活性が広く包含される。ここで細菌は、グラム陽性細菌かグラム陰性細菌かによらないが、前者が好ましい。本活性は増殖阻害活性であってもよいが、殺生物活性(即ち、関連生物に対する致死活性)であることがより好ましい。特に、皮膚感染又は皮膚媒介性感染に関する細菌に対する活性を有することが好ましい。更には、ブドウ球菌(そして場合により、他のグラム陽性球菌)、及び/又は、プロピオン酸菌、及び/又は、より好適には、皮膚又は皮膚構造の病状を発生、増悪、又は伝染させる他の細菌に対する活性を有することが、より一層好ましい。中でも本製剤は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)株又はプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)株に対する活性を有することが最も好ましい。
【0073】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、ベンゾ/ヒドロキノンは、ニキビに関連する細菌に対して、例えばP.アクネスや、場合によってはP.グラヌロサム(P. granulosum)に対して活性である。上記活性の代わりに、或いは上記活性に加えて、グラム陽性球菌、例えばブドウ球菌(例えば後述の実施例で列記するもの、特に黄色ブドウ球菌(S. aureus))や、連鎖球菌(Streptococcus:例えばS.ピオゲネス(S. pyogenes))、そして場合によっては、腸球菌(enterococcus:例えばE.フェカリス(E. faecalis)及び/又はE.フェシウム(E. faecium)、特に前者)に対して活性であってもよい。
【0074】
本発明の文脈において、特定種の微生物に対する活性とは、その種の株のうち、少なくとも1つの株、好ましくは2以上の株に対する活性の意味であると解してもよい。
【0075】
ベンゾ/ヒドロキノンは、1又は複数の抗生物質に、例えば臨床で一般に使用されている抗生物質に、全面的又は部分的な耐性を示す(wholly or partially resistant to)細菌に対して、特にブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対して、活性であることが好ましい。とりわけ、ベンゾ/ヒドロキノンは、1又は複数のエリスロマイシン耐性、クリンダマイシン耐性、及び/又は、テトラサイクリン耐性のP.アクネス菌株に対して、及び/又は、1又は複数のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株に対して、及び/又は、1又は複数のバンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌(vancomycin intermediate S. aureus:VISA)株に対して活性であることがより好ましい。中でも、1又は複数のエリスロマイシン耐性及び/又はテトラサイクリン耐性のP.アクネス株に対して、少なくとも活性であることが好ましい。
【0076】
抗細菌活性の測定は従来法で行なえばよい。例えば後述の実施例に記載された試験を用いることができる。一般に、活性試験は、関連微生物の培養物を候補抗菌化合物で処理する工程と、処理した培養物を、通常であれば微生物の増殖を補助する条件下で培養する工程と、候補化合物の存在下で増殖が生じた場合には、その増殖レベルを評価する工程とを含んでなる。
【0077】
本発明で使用されるベンゾ/ヒドロキノンは、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対して、150μg/ml未満、より好ましくは125又は100μg/ml未満、更に好ましくは70、又は50、又は40、又は30、更には20又は10μg/ml未満の、例えば0.5から100又は50μg/mlの範囲の最小阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)を有することが好ましい。これに対応する最小殺生物濃度(MBC)は、300μg/ml未満であることが好ましく、150μg/ml未満であることがより好ましく、100、又は70、又は50、又は40、又は30、更には20又は10μg/ml未満であることが一層好ましい。ベンゾ/ヒドロキノンのMICのMBCに対する比率は、0.125から1の範囲、理想的には0.5から1の範囲であることが好適である。
【0078】
MIC及びMBCの値は、従来のアッセイ法を用いて、例えば例えば後述の実施例に記載されたものを用いて行なえばよい。
【0079】
ベンゾ/ヒドロキノン例えば後述の実施例で試験したように、血清、脂質、及び塩(塩化ナトリウム)のうち、少なくとも1種、好ましくは2種以上の存在下で、抗微生物活性を保持することが好ましい。これらは皮膚の表面に存在する可能性がある化学種であり、よって本条件における性能は、局所用皮膚処置製剤の用途に対する適性を示す指標となり得る。脂質及び塩化ナトリウムの存在下での活性は、特にニキビの処置にとって重要である場合がある。また、血清及び塩化ナトリウムの存在下での活性は、特にブドウ球菌感染の処置又は予防にとって重要である場合がある。
【0080】
ベンゾ/ヒドロキノンは、血清、脂質、及び塩のうち、少なくとも1種、好ましくは2種以上の存在下で、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対するその抗微生物活性のうち、少なくとも一部の活性を保持することが理想的であり、少なくとも50、又は60、又は70、又は80、更には90%を保持することが好ましい。中でも、ベンゾ/ヒドロキノンの抗微生物活性、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対する活性は、血清、脂質、及び塩のうち少なくとも1種の存在下で、増強されることがより好ましい。特に、ベンゾ/ヒドロキノンの抗微生物活性は、脂質によって増強されることが最も好ましい。
【0081】
抗菌製剤中のベンゾ/ヒドロキノンの濃度は、0.05%w/v以上、好ましくは0.1 %w/v以上、より好ましくは0.5 %w/v以上が好適である。その濃度は最大5%w/v、好ましくは最大2.5%w/v、より好ましくは最大2%w/vである。
【0082】
本発明に係る用途における、ベンゾ/ヒドロキノンを含有する製剤は、ヒト又は動物の皮膚、特にヒトの皮膚に対する局所投与に適している(suitable for)ことが好ましく、こうした皮膚への局所投与に適合させたものである(adapted for)ことがより好ましい。また、例えば鼻孔、頭皮、耳、目、膣、及び口腔等の他の上皮、特に鼻孔及び耳に対する局所投与にも適している(suitable for)ことが好ましく、こうした上皮への局所投与に適合させたものである(adapted for)ことがより好ましい。その形態としては、ローション、クリーム、軟膏、フォーム、ペースト、又はゲルが挙げられ、また、局所投与について知られているその他の任意の物理的形態、例えば、製剤の局所投与を容易にするために、スポンジ、綿球(swab)、ブラシ、ティシュー、皮膚用パッチ(skin patch)、包帯、又は歯科用線維(dental fibre)等の担体に製剤を適用した形態、或いは適用し得るようにした形態が挙げられる。鼻腔用スプレーや、点眼薬又は点耳薬の形態であってもよい。また、例えば皮膚感染の処置やMRSA等の感染の予防等、(獣医薬を含む)医薬用途を目的としたものであってもよく、及び/又は、化粧品又は他の非医療用途(例えば、一般的な衛生又は洗浄等)を目的としたものであってもよい。
【0083】
ベンゾ/ヒドロキノンを包含するビヒクルとしては、局所適用に適した任意のビヒクル、又は複数のビヒクルの混合物が挙げられる。選択される種類は、目的とする適用の手法や部位によって異なる。こうしたビヒクルとしては、当業者に知られており、市場で入手可能なものが多数存在する。例としては、Williams著「Transdermal and Topical Drug Derivery」、Pharmaceutical Press、2003や、他の同様の参考文献に記載のものが挙げられる。また、局所薬物送達の方策の概説として、Date, A A et al, Skin Pharmacol. Physiol, 2006, 19(1): 2-16を参照されたい。
【0084】
上述したように、ビヒクルは、所望の部位を目標とするものであっても、及び/又は、製剤の送達時間を目標とするものであってもよい。例として、製剤を皮膚濾胞や毛嚢(skin or hair follicules)に送達するものでも、或いは前鼻孔に送達するものでもよい(後者は特に、MRSAやその他のブドウ球菌系の細菌に対する予防的な処置として、製剤を使用する場合に好適である。)。これにより、一定の時間にわたって、製剤の放出を遅延させるか、或いは制御することが可能である。ベンゾ/ヒドロキノンを、例えばリポゾーム等のマイクロカプセルに封入してもよい。局所用途の場合、とりわけ好適なリポゾームとしては、角質層脂質、例えばセラミド、脂肪酸、又はコレステロールからなるものが挙げられる。
【0085】
場合によっては、極性のビヒクルも好ましい。製剤が皮膚への使用を目的とする場合、特に皮膚及び皮膚構造の感染の処置を目的とする場合には、ビヒクルとしてはまず非水系のものが挙げられるが、抗ニキビ処置の場合には水系ビヒクルも使用できる。特に表面処理における使用を目的とする場合、例えば、特にブドウ球菌に対する器具や作業領域の洗浄を目的とする場合には、ビヒクルは表面活性であってもよい。場合により、ビヒクルはアルコール系やシリコン系であってもよい。
【0086】
本製剤は、医薬や獣医薬の製剤、特に局所用スキンケア製剤に使用されることが知られている、標準的な賦形剤やその他の添加剤を含有していてもよい。例としては、皮膚軟化剤、香料、抗酸化剤、保存料、及び安定剤が挙げられる。その他の例は、例えば上述のWilliams著「Transdermal and Topical Drug Delivery」に記載されている。
【0087】
本製剤は、更に、抗微生物剤等の追加の活性剤を含有していてもよい。本製剤が、皮膚への局所適用を目的とする場合、特に、皮膚及び皮膚構造の感染の処置、及び/又は、ニキビ又はアトピー性皮膚炎等の病状の処置を目的とする場合には、抗ニキビ剤、ケラトリース、面皰溶解剤、抗炎症剤、抗増殖剤、抗生物質、抗アンドロゲン剤、セボスタティック剤、痒み止め剤、免疫賦活剤、創傷治癒促進剤、及びそれらの混合物から選択される、1又は複数の薬剤を含有していてもよい。これらの代わりに、或いはこれらに加えて、本製剤は、日焼け防止剤、保湿剤、皮膚軟化剤、及びこれらの混合物から選択される、1又は複数の薬剤を含有していてもよい。一般的に、本発明に係る用途規定製剤(formulation for use)は、本発明に係る別の活性剤の活性を強化し、或いはそうした活性剤の副作用を低減し、或いは製剤の投与に対する患者の適応性を向上させる、1又は複数の薬剤を含有していてもよい。
【0088】
追加の抗微生物剤は、例えば、殺生物剤、消毒剤(disinfectants)、防腐剤(antiseptics)、抗生物質、抗菌活性を有する抗酸化剤、及びそれらの混合物からなる群より選択される。中でも、殺細菌剤としての活性、特にプロピオン酸菌及び/又はブドウ球菌に対する活性を有することが好ましい。また、抗真菌剤としての活性を有していてもよい。また、過酸化物、特に過酸化ベンゾイル等の過酸化ジアシルであってもよい。
【0089】
但し、前記の(1又は複数の)過酸化物及び(1又は複数の)ベンゾ/ヒドロキノンが、製剤中の唯一の活性剤であるか、少なくとも、唯一の抗菌性又は抗細菌性の活性剤であることが好ましい。
【0090】
本発明に係る使用に際して、ベンゾ/ヒドロキノンを含有する製剤は、生物組織以外の表面に対する使用、例えば、微生物レベルを低減するための、床又は壁(内部か外部かは問わない)、作業面又は器具の処理、コンタクトレンズの消毒、毛髪や歯や爪の洗浄等の用途に適している(suitable for)ことが好ましく、これらの用途に適合させた(adapted for)ものであることがより好ましい。好適な適用対象としては、成長期又は収穫期の作物、食品、無生物の組織(例えば保存料としての使用)、寝具類又は衣類(例えば生物・薬剤の汚染除去用)が挙げられる。これらの場合において、前記の過酸化物及びベンゾ/ヒドロキノンと共に含有される、賦形剤、ビヒクル、及び/又は他の添加剤は、局所用スキンケア製剤において含有されるものと異なっていてもよいが、こうした場合に使用できることが知られている従来のものであってもよい。
【0091】
本ベンゾ/ヒドロキノン含有製剤は、他の製品に組み込んでもよく、ひいては他の製品の形態で適用してもよい。他の製品としては、化粧品、スキンケア又はヘアケア用調製物、(獣医薬品を含む)医薬調製物、洗面用品(例えば入浴剤又はシャワー剤、又は洗浄用調製物)、洗濯又は他の繊維処理用品、又は、農業又は園芸用品等が挙げられる。
【0092】
本発明の第2の態様によれば、ベンゾキノン又はヒドロキノン、或いはベンゾ/ヒドロキノンを含有する製剤は、細菌活動、特にブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌の活動によって発生、増悪、又は伝染する病状の局所的処置に使用される。この病状は、皮膚又は皮膚構造の病状であることが好ましい。
【0093】
本発明において、病状の処置(treatment)には、ヒト又は動物における、そして特に皮膚における、伝染病又は非伝染病の治療的(therapeutic)処置と予防的(prophylactic)処置との双方が包含される。即ち、本製剤の殺微生物剤としての使用、好ましくは殺細菌剤としての使用、最も好ましくはブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対する使用が含まれるものとする。
【0094】
本発明に従って処置され得る皮膚及び皮膚構造の病状としては、ニキビ、感染性アトピー性湿疹、表在感染性(superficial infected)外傷性病変、創傷、火傷、潰瘍、毛嚢炎、真菌症、並びに、他の皮膚及び皮膚構造における一次又は二次的な表在感染が挙げられる。特に本製剤は、ニキビ又はニキビ関連病変の処置(例えばニキビによる瘢痕の低減)に使用できる。
【0095】
ニキビの処置には、ニキビに関連する病変及び/又は瘢痕の処置及び/又は予防が包含される。ニキビは顔面及び上幹の毛嚢脂腺濾胞の多因子疾患であり、種々の炎症性及び非炎症性の病変、例えば丘疹、膿疱、小結節、並びに開放及び閉鎖の面皰等を特徴とする。従ってその処置には、これらの症状のうち何れかの処置も包含され得る。
【0096】
一般的に、本発明におけるベンゾ/ヒドロキノンは、例えば、抗生物質等の他の活性剤によってニキビを処置した結果生じる感染等よりも、むしろ、ニキビを直接の原因とする症状の処理に使用されるであろう。
【0097】
本発明において「皮膚又は皮膚構造の病状(skin or skin structure condition)」とは、場合によっては、他の上皮、例えば鼻孔、頭皮、膣、目、耳、又は口腔内の上皮に影響を及ぼす病状も包含する。但し、多くの場合、皮膚又は皮膚構造の病状とは、皮膚又は皮膚構造に直接影響を及ぼす病状をいう。
【0098】
また、ベンゾ/ヒドロキノンは、身体の任意の領域(特に皮膚又は鼻孔)において、例えばMRSA関連性の感染や、湿疹性病変等の既存の病変における感染等を引き起こすおそれのある、ブドウ球菌に対する治療的又は予防的処置として用いてもよい。
【0099】
本発明の第5の態様に従って処置され得る病状の他の例としては、口腔、眼、耳、鼻、及び膣の病状が挙げられる。こうした病状の処置には、ヒト又は動物における(但し、特にヒトにおける)伝染病又は非伝染病の、治療的及び予防的処置の双方が包含される。特に、身体の任意の領域、特に皮膚又は鼻孔における微生物、とりわけ細菌の感染に対する予防的処置が包含される。
【0100】
病状の処置としては、病状の完全な又は部分的な根絶(eradication)、関連する症状の除去又は改善、その後の病状の進行の阻止、及び/又は、その後の病状の発生の予防又は発生の可能性の低減が含まれていてもよい。
【0101】
本発明の第3の態様によれば、細菌の活動、特にブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌の活動によって発生、増悪、又は伝染する病状、特に皮膚又は皮膚構造の病状を局所的に処置するための医薬の製造における、ベンゾキノン又はヒドロキノンの使用が提供される。こうした病状としては、例えばMRSA感染やニキビが挙げられる。
【0102】
更に、本発明の第4の態様によれば、局所使用のための抗菌製剤の製造における、ベンゾキノン又はヒドロキノンの使用が提供される。
【0103】
第5の態様によれば、細菌微生物、とりわけブドウ球菌又はプロピオン酸菌の増殖を抑制するための方法であって、微生物に感染した領域、又は感染が疑われる領域、又は感染する可能性がある領域に、ベンゾキノン又はヒドロキノンを局所適用する工程を含んでなる方法が提供される。
【0104】
この場合において、微生物の「増殖を抑制する(controlling the growth)」という語には、増殖を完全又は部分的に阻害又は予防することに加えて、その生物の培養物を完全又は部分的に死滅させることが包含される。また、処置される領域において、その後その生物が増殖する可能性を低減することも包含される。即ち、本発明の方法は、現に生物が発生している状態の処置に使用してもよく、後の発生の可能性を予防するために使用してもよい。
【0105】
この場合も、ベンゾ/ヒドロキノンが適用される領域は、通常はヒト又は動物の生体における、ヒト又は動物組織、特に皮膚又は鼻孔等の表面が一般的である。ここで、ベンゾ/ヒドロキノンの適用の目的は、治療目的であってもよく、非治療(例えば純化粧品)目的であってもよい。また、適用対象の領域は、病院や食品調理領域等における無生物の表面であってもよい。例えば、本発明の第5の態様の方法は、作業面、手術器具やその他の器具、外科用インプラントやプロテーゼ、コンタクトレンズ、食品、作物、工業プラント、床や壁(内部及び外部の両方)、寝具、家具、衣類、及びその他の種々の表面の処理に使用することができる。
【0106】
本発明の第6の態様によれば、ヒト又は動物(通常はヒト)の患者において、細菌(好ましくはブドウ球菌性及び/又はプロピオン酸菌)の活動により発生、増悪、又は伝染する病状を処置するための方法であって、ベンゾキノン又はヒドロキノンの局所適用を含有する方法が提供される。この場合の病状も、皮膚又は皮膚構造の病状、好ましくはニキビであることが好適である。この病状はブドウ球菌感染であってもよい。ベンゾ/ヒドロキノンは皮膚に適用してもよく、場合によっては他の上皮、特に鼻孔等に適用してもよい。
【0107】
本発明の第6の態様の方法には、ヒト又は動物の患者体内又は体外における(in or on a human or animal patient)微生物の増殖を抑制するための方法が包含される。この微生物は通常、ブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌であり、その増殖の抑制は、通常は皮膚において、或いは場合により、その他の鼻孔等の上皮において行なわれる。
【0108】
処置又は抑制は、予防目的で実施してもよい。
【0109】
本発明の第2の態様及び続く態様における好ましい特徴は、他の態様との関連で記載した特徴と同様であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0110】
本発明のその他の特徴は、以下の実施例によって明らかになるであろう。概して、本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲及び図面を含む)に開示された特徴のうち、あらゆる新規の特徴、或いはあらゆる新規の特徴の組合せにも及ぶものとする。更に、別途記載しない限り、本明細書に開示された何れの特徴も、同一又は類似の目的を果たす同一又は類似の別の特徴と置換することができる。
【実施例】
【0111】
本発明の実施形態について、以下の実験例を用いて説明する。
【0112】
本発明に係るベンゾキノン又はヒドロキノン含有製剤の抗微生物活性を決定する実験を実施した。
【0113】
試験微生物
以下の試験微生物を用いた。
【0114】
1.黄色ブドウ球菌 − これらの試験で使用した主たるブドウ球菌系の試験微生物は、黄色ブドウ球菌ATCC29213である。この菌株は、最小阻止濃度(MIC)アッセイにおけるQC/QAの目的で、FDA認証団体である米国臨床及び研究室規格協会(US Clinical and Laboratory Standards Institute。旧NCCLS)によって推奨されているものである。黄色ブドウ球菌ATCC29213は、メチシリン等のβラクタム抗生物質や、現在世界中で臨床使用されている他の多くの抗生物質に対して、感受性を示す。
【0115】
後述の実施例2に記載のように、他のブドウ球菌株についても試験を行なった。その中には、特定の抗生物質耐性を有するブドウ球菌、例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株EMRSA−15及びEMRSA−16(何れもthe Central Public Health Laboratory(CPHL)(コリンデール、UK)から入手可能)が含まれる。これらの菌株は、全てのβラクタムに対して耐性であるのみならず、臨床に用いられる他の多数の抗生物質に対しても耐性を示し、それゆえにヒトの健康に対する深刻な脅威となっている。また、これらは英国におけるMRSA院内感染の大多数(>95%)の原因ともなっている。
【0116】
黄色ブドウ球菌(S. aureus)及び他のブドウ球菌は、広範な皮膚、皮膚構造及び創傷感染に共通に見られる原因となっている。黄色ブドウ球菌(S. aureus)自体は、湿疹を悪化させることでも知られている。
【0117】
2.又はプロピオン酸菌属(Propionibacterium spp.) − これらの試験で使用した主たるプロピオン酸菌種は、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)NCTC737である。これは前記属の基準菌種(the type strain of the genus)であり、抗生物質に対して十分な感受性を有する。
【0118】
プロピオン酸菌はニキビに関与していることから、臨床的に重要である。ニキビは大変よく見られる、複雑且つ多因子性の皮膚病であり、P.アクネスや他のプロピオン酸菌属(Propionibacterium spp.)(例えばP.グラニュローサム(P. granulosum)等)が重要な役割を果たしている。また、これらは易感染性宿主(compromised hosts)における日和見病原体でもある。
【0119】
後述の実施例4に示すように、他のプロピオン酸菌についても試験した。それらの中には、特定の抗生物質に耐性を有するプロピオン酸菌として、例えば、2種のP.アクネス菌株PRP−010及びPRP−053が含まれる。前者はマクロライド−リンコサミド−ストレプトグラミン−ケトライド(MLSK)に対して、後者はマクロライド−リンコサミド−ストレプトグラミン(MLS)及びテトラサイクリンに対して、それぞれ耐性を示す。言い換えれば、PRP−010はエリスロマイシン及びクリンダマイシンに対して、PRP−039はエリスロマイシン、クリンダマイシン及びテトラサイクリンに対して、それぞれ耐性を示す。
【0120】
更に、何れもニキビに関与する別のプロピオン酸菌である、P.グラニュローサム(P. granulosum)の特定の菌株と,P.アビダム(P. avidum)の基準株とについても、実施例8で試験を行なった。
【0121】
3.化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)ATCC12344 − これはグラム陽性の条件的好気性細菌である。A群β溶連菌(β-haemolytic streptococci)の一員であって、ヒト上気道に片利共生する場合がある(子供の10%。大人では被共生者は稀である。その主な発生原因は、扁桃炎の媒介因子としてである。)。皮膚感染に関しては、蜂巣炎、壊死性筋膜炎、膿痂疹、丹毒、創傷感染、及び猩紅熱の原因因子として、臨床的に重要である。ペニシリンやエリスロマイシンが、化膿連鎖球菌(S. pyogenes)を含む感染の標準的な処置である。しかし、特定の病状、とりわけ壊死性筋膜炎においては、こうした標準的な抗生物質処置に対する応答が見られない場合がある。また、化膿連鎖球菌(S. pyogenes)は、上気道感染の主原因でもある。
【0122】
4.エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)ATCC29212 − これは腸球菌属(エンテロコッカス属:the genus Enterococcus)に属するグラム陽性細菌である。腸球菌(Enterococci)は連鎖球菌(streptococci)と同様の性質を有するが、胆汁塩含有マッコンキー寒天(bile-salt containing MacConkey's Agar)での生育能力に違いがある。その主な生息場所は、哺乳類の消化管である。
【0123】
これらの菌は、多数の重要な感染を引き起こす。例えば心内膜炎、尿路感染、及び膿瘍が挙げられる。皮膚に関して言えば、創傷感染から単離される場合が多い。連鎖球菌とは異なり、腸球菌は広範なペニシリン耐性を発現している。更に近年では、E.フェカリス(E. faecalis)及びE.フェシウム(E. faecium)株が、バンコマイシン等の糖ペプチド抗生物質に対する耐性をも発現している。バンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin-Resistant Enterococci:VRE)は、E.フェシウム(E. faecium)の主たるvanA株であるが、現在では米国、日本及び欧州西部において、医療原因感染(healthcare−acquired infection)により深刻な脅威を引き起こしている。
【0124】
5.インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)ATCC49247 − ヘモフィルス属(the genus Haemophilus)の一員であり、好気条件又は嫌気条件で生育するが、実験室用培養液(laboratory culture)に特別な成分を補充した培地が必要なグラム陰性桿菌に属する。インフルエンザ菌(H. influenzae)株は被包性でも非被包性でもよい。被包株は、莢膜の抗原に基づいて、複数の血清型に分類される(b,c,d,e,fと呼ばれる)。インフルエンザ菌(H. influenzae)血清型b型は、ヒトにおける、特に幼児における侵襲的感染の重要な原因である。非被包株は通常、上気道に片利共生するが、b型株の健全保有者も存在する。皮膚及び局所的処置に関して言えば、インフルエンザ菌(H. influenzae)は、蜂巣炎及び耳炎(中耳炎感染)の原因となり得るが、これもやはり特に幼児に顕著である。
【0125】
インフルエンザ菌(H. influenzae)株の多くはβラクタマーゼを産生し、アンピシリン耐性を示す。近年まではクロラムフェニコールが一般的な処置であった。しかし、一部の国では、耐性菌が増加したため、現在ではセファロスポリン系抗生物質セフォタキシムが一次処置として用いられている。
【0126】
上述の微生物に対して観察される活性は、抗微生物活性、特にニキビを含む皮膚及び皮膚構造の感染原因となる微生物に対する活性を、定性的に予測するための適切な手段となることが期待される。
【0127】
ブドウ球菌及び腸球菌は、pH7.2のミューラー−ヒントン(Mueller−Hinton)培地(寒天及びブロス)上で培養・維持した。37℃で24時間、好気的に培養した。
【0128】
プロピオン酸菌属(Propionibacterium spp.)生物は、pH6.0のウィルキンス−チャルグレンアナエロブ(Wilkins-Chalgren Anaerobe)培地(寒天及びブロス)上で培養・維持した。培養物を37℃で72時間、嫌気的に培養した。
【0129】
化膿連鎖球菌(S. pyogenes)株は、5%v/vのウマ脱線維素血液入りミューラー−ヒントン(Mueller−Hinton)培地(寒天及びブロス)上で培養・維持し、5%溶解ウマ血液(lysed horse blood:NCCLS M7-A6 Vol.23 No.2の記載に従い調製した)を加えたミューラー−ヒントン(Mueller−Hinton)ブロス中で増殖させた。培養物を37℃で24時間、好気的に培養した。
【0130】
インフルエンザ菌(H. influenzae)株は、ヘモフィラス試験培地(Haemophilus Test Medium:HTM)寒天/ブロス(組成はNCCLS M7-A6 Vol.23 No.2に記載の通り)上で培養・維持した。培養物をCO2雰囲気下、37℃で24時間培養した。
【0131】
これらの生物に対する抗微生物活性を評価するため、以下の試験を行なった。
【0132】
(a)最小阻止濃度(MIC)アッセイ
これは、液体培地中の化合物の抗微生物活性を定量的に評価するための、国際的な標準法である。本方法には、各ウェルに約200μlの液体を保持し得る、96ウェルのマイクロタイタープレートを使用した。これらのウェルに液体培地を入れ、関連する試験化合物を2倍ずつ段階希釈して、希薄側に広がる濃度分布を作成した(例えば、1000、500、250、125...μg/ml等、最小値1.95μg/ml)。培地については、関連する試験生物毎に上述した通りである。
【0133】
これらのウェルに、新たに増殖させた微生物の懸濁液を接種し、上述した条件下で培養した。培養後、マイクロタイタープレートを(ライトボックス(light box)を用いて)目視で観察し、ウェル内の細胞ペレット、及び/又は、ウェルの濁化を、微生物の増殖の指標とした。微生物の増殖を抑制するのに必要な試験化合物の最小濃度、即ち、ウェル内の液体を清澄に維持するための最小濃度を、MIC値として記録した。
【0134】
アッセイは二重に実施し、更に負の対照(培地のみ)及び正の対照(培地、希釈溶媒及び接種材料)双方を含めた。
【0135】
微生物細胞の抑制は必ずしも微生物細胞の死滅を表わす訳ではなく、肉眼で視認し得る増殖が抑制されたことを表わすに過ぎない場合もある。よって、更なる試験(後述するMBCアッセイ)を行なうことにより、試験生物を死滅させるのに必要な試験化合物の濃度を確認することが望ましい。
【0136】
(b)最小殺細菌濃度(MBC)アッセイ
本アッセイは通常、MICアッセイの後に、試験対象の微生物を死に至らしめる化合物の最小濃度を決定するために実施される。
【0137】
MICアッセイの後、正の増殖を示した最初のマイクロタイターウェルと、それに続く、増殖を示さなかった全てのウェルとから、5μlのサンプルを採取した。続いて、これらのサンプルを上述した培養条件下、非選択的寒天培地で個別に継代培養した。培養後、細菌の増殖を目視で調べた。増殖を示さなかった培養サンプルにおける試験化合物の最小濃度をMBCとした。
【0138】
MICのMBCに対する比率は、できるだけ1に近いことが理想的である。これによって、可能な限り最小の試験化合物の有効濃度を、容易に選択することができるとともに、耐性を促進する可能性、或いは、天然の(即ち生得的な)抗菌耐性によって克服される可能性のある、亜致死濃度を選択してしまうおそれを減らすことができる。
【0139】
(c)ディスク拡散アッセイ(Disc Diffusion Assay:DDA)
これは、化合物の抗微生物活性を定性的に評価するための、国際的に認められている標準法である。
【0140】
無菌の紙ディスクに試験化合物のサンプルを含浸させ、最短でも30分かけて溶媒を可能な限り蒸発させた。その後、試験微生物を培養しておいた寒天プレート上にディスクを載置した。次いで、プレートを上述の条件下で培養した後、細菌増殖の徴候を目視で調べた。試験化合物が抗微生物活性を有する場合には、ディスク周囲に円状の非増殖領域が生じる筈である。この「抑制(inhibition)」領域の直径を、ProtoCOL(登録商標)自動ゾーンサイザー(automated zone sizer:Synbiosis(ケンブリッジ、UK)社製)を用いて測定した。一般には、抑制領域の直径及び/又は面積が大きいほど、関連する試験化合物における抗微生物活性が大きいことを示している。但し、寒天ゲル中における試験化合物の可動性等の他の因子も、結果に影響を与える可能性がある。
【0141】
抑制領域の面積は、測定された領域の半径(D)から、式π(D/2)2によって算出される。
【0142】
(d)補充ディスク拡散アッセイ(Supplemented Disc Diffusion Assay)
DDA又はSDDA試験のうち一方を、血液、脂質及び/又は塩を補充した寒天ゲルを用いて実施することにより、ヒトの皮膚に存在する主要成分の一部を刺激するとともに、試験化合物について観察される抗微生物活性がそれらの物質によって低減されるか否かを評価してもよい。これらの条件下における性能は、局所適用における活性についての、より信頼性の高い指標を提供し得る。黄色ブドウ球菌(S. aureus)株を用いてアッセイを行なう場合、補充成分は、例えばウマ脱線維素血液(5%v/v)及び塩化ナトリウム(100mM)等とした。プロピオン酸菌属(Propionibacterium spp.)株を用いてアッセイを行なう場合、補充成分は、脂質(Tween(登録商標)80を1%v/v)及び塩化ナトリウム(100mM)等とした。
【0143】
実施例1 − 黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC29213に対する活性
【0144】
以下の実験では何れも、黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC29213を試験生物として使用した。
【0145】
一連の各種ベンゾキノン及びヒドロキノンを用いて、上述したMIC、MBC、及びDDAアッセイを実施した。また、塩、脂質、及び血液の存在下における補充DDAアッセイも実施した。
【0146】
殆どの(S)DDAアッセイでは、各化合物200μgを各ディスクに加えた。例外として、チモキノンのためのアッセイでは、ベンゾキノンを50μgのみ使用し、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノンのためのアッセイでは、関連するベンゾキノンを100μg使用した。使用した溶媒は、エタノール(TBHQ、チモキノン、デュロキノン、p−ヒドロキノン、p−ベンゾキノン、チモヒドロキノン用)と、DMSO(他の全ての試験化合物用)であった。
【0147】
MIC及びMBCの結果を以下の表1に、DDAの結果を以下の表2に示す。何れの結果も数回の実験から収集されたものである。
【0148】
【表1】

【0149】
【表2】

【0150】
【表3】

【0151】
【表4】

【0152】
表1及び2のデータは、各キノンが黄色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC29213対して活性を示し、中にはその活性が強いものも存在することを示している(特に、TBHQ、2,5−ジブロモ−6−イソプロピル−3−メチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、チモキノン、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノン、2,5,6−トリメチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、チモヒドロキノン、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、及び2,5,6−トリメチル−p−ヒドロキノン。これらは、MICが7.8μg/ml以下、又は、成分無添加ミューラー−ヒントン(Mueller-Hinton)寒天上の領域直径が50mm以上であった。)。
【0153】
皮膚のブドウ球菌感染への使用において最も興味深いと思われるベンゾ/ヒドロキノンは、その活性が血清及び塩の存在によって最小限の影響しか受けないものである(例えば、領域サイズの減少が何れも50%以下のもの)。その例としては、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−カテコール、及び2−クロロ−p−ヒドロキノン等が挙げられる。
【0154】
実施例2 − 他のブドウ球菌に対する活性
【0155】
抗生物質耐性が知られているものを含む、他のブドウ球菌株に対するアルキル置換ヒドロキノンTBHQの活性について、試験を行なった。これらの株の各々について、MIC、MBC、及びDDAアッセイを実施した。
【0156】
DDAアッセイでは、TBHQ200μgを各ディスクに加えた。TBHQに使用した溶媒はエタノールであった。
【0157】
結果を後述の表3に示す。何れも数回の実験から収集した。表は各試験菌株の耐性表現型(resistance phenotype)を示している。中には、一般に使用される抗生物質の多くに耐性を示す菌株もある。
【0158】
【表5】

【0159】
[略称:American Type Culture Collection(ATCC)、Central Public Health Laboratory UK(CPHL)、National Collection of Type Cultures (NCTC)、メチシリン(Met)、バンコマイシン(Van)、テイコプラニン(Tec)、未決定(ND)、流行性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(EMRSA)、バンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌(VISA)、糖ペプチド耐性黄色ブドウ球菌(GISA)]
他に特定されていない抗生物質耐性が存在する可能性もある。
【0160】
表3は、このヒドロキノンが一連の各種ブドウ球菌株に対して活性を有し、ブドウ球菌感染の処置又は予防に有用であることを示している。これらの結果は特に、抗生物質耐性の試験菌株について、臨床的な価値を有する可能性が高い。
【0161】
実施例3 − P.アクネスNCTC737に対する活性
【0162】
以下の実験では、何れもP.アクネスNCTC737を試験生物として用いた。
【0163】
BP及び一連の各種ベンゾキノン及びヒドロキノンを用いて、上述したように、MIC、MBC、及びDDAアッセイを実施した。また、塩及び脂質の存在下における補充DDAアッセイも実施した。
【0164】
殆どのDDAアッセイでは、各化合物200μgを各ディスクに加えた。例外として、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノンのアッセイでは、ベンゾキノンを100μgしか使用しなかった。使用した溶媒は、(TBHQ、チモキノン、p−ベンゾキノン、及びチモヒドロキノンについては)エタノール、及び、他の全ての試験化合物についてはDMSOであった。
【0165】
MIC及びMBCの結果を後述の表4に、DDAの結果を表5に示す。何れの結果も数回の実験から収集した。
【0166】
【表6】

【0167】
【表7】

【0168】
【表8】

【0169】
【表9】

【0170】
表4及び5のデータは、各キノンがP.アクネスNCTC737に対して活性であり、中にはその活性が強いものもある(特にTBHQ、2,5−ジブロモ−6−イソプロピル−3−メチル−p−ベンゾキノン、3,5−ジ−t−ブチルカテコール、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、4,6−ジ−t−ブチルレゾルシノール、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ベンゾキノン、2−クロロ−5−メチル−p−ベンゾキノン、テトラクロロ−p−ヒドロキノン、p−ベンゾキノン、2−クロロ−p−ベンゾキノン、テトラフルオロ−p−ヒドロキノン、テトラフルオロ−p−ベンゾキノン、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、及び2−エチル−p−ヒドロキノン。これらは、MICが7.8μg/ml以下、又は、成分無添加ウィルキンス−チャルグレン(Wilkins-Chalgren)寒天上での領域直径が30mm以上であった。)。ヒトの皮膚環境の特に重要な成分である塩及び脂質の存在下でも、本活性は殆どの場合において、少なくともある程度は維持されていた。
【0171】
ベンゾ/ヒドロキノンのうち特定のものは、脂質によって増強される(即ち、その存在によってベンゾ/ヒドロキノンの抗微生物活性が増大する)ように見える。例としては、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、チモキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、2−クロロ−p−ベンゾキノン、及びテトラフルオロ−p−ベンゾキノンが挙げられる。こうした化合物は特に、皮膚及び皮膚構造の病状の処置、特に皮膚の脂質レベルを上昇させ得るニキビ等の病状の処置に、有用である可能性が高い。
【0172】
実施例4 − 他のプロピオン酸菌に対する活性
【0173】
抗生物質耐性が知られているものを含む他のプロピオン酸菌種(Propionibacterium spp.)の菌株に対する、TBHQの活性について試験を行なった。各菌株について、上述のようにMIC、MBC、及びDDAアッセイを実施した。
【0174】
DDAアッセイでは、TBHQ200μgを各ディスク上に加えた。TBHQに使用した溶媒はエタノールであった。
【0175】
結果を後述の表6に示す。何れも数回の実験から収集した。表6には試験菌株の各々の耐性表現型を示している。
【0176】
【表10】

【0177】
[略称:American Type Culture Collection(ATCC)、National Collection of Type Cultures(NCTC)、Propionibacterial Panel Number(PRP)、テトラサイクリン(Tet)、エリスロマイシン(Ery)、クリンダマイシン(Clin)、マクロライド−リンコサミド−ストレプトグラミン(MLS)、マクロライド−リンコサミド−ストレプトグラミン−ケトライド(MLSK)]
【0178】
表6は、これらのヒドロキノンが一連の各種プロピオン酸菌株に対して活性であることを示している。この結果は、こうした細菌に関連する感染、特にニキビの処置又は予防における有用性を示すものである。この結果は特に、抗生物質耐性の試験株について、臨床的価値を有する可能性が高い。
【0179】
実施例5 − 他の生物に対する活性
【0180】
他の3種の細菌株に対するTBHQの活性を、上述したMIC、MBC、及びDDAアッセイを用いて解析した。DDAアッセイでは、各ディスクに200μgのTBHQを加え、エタノールを溶媒として使用した。
【0181】
結果を後述の表7に示す。
【0182】
【表11】

【0183】
表7は、TBHQをブドウ球菌及びプロピオン酸菌以外の種、特に他のグラム陽性球菌に対する抗菌剤として使用し得ることを示している。
【0184】
実施例6 − 局所用抗ニキビ製剤
【0185】
実施例1から4の結果は、ベンゾキノン又はヒドロキノンがブドウ球菌及びプロピオン酸菌に対して効果的な抗微生物剤となり得ることを示している。また、塩、脂質及び/又は血清の存在下でも活性が維持されることから、こうした化合物が局所適用、特に皮膚に対する適用に適していることは明らかである。従って、ベンゾキノン又はヒドロキノンは、ブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌が感染源として関与している可能性がある任意の場合において、予防又は治療用途における局所用抗微生物製剤の調製に有用である。
【0186】
ニキビの処置に使用される局所用製剤は、例えば、ベンゾキノン又はヒドロキノン、特にTBHQ等のアルキル置換ベンゾ/ヒドロキノンを、好適な流体ビヒクル中で、任意により従来の添加剤と共に、製剤化することによって調製される。こうしたビヒクル及び添加剤は、例えばWilliams著「Transdermal and Topical Drug Delivery」、Pharmaceutical Press、2003や、他の同様の参考文献、及び/又は、Rolland A et al., "Site-specific drug delivery to pilosebaceous structures using polymeric microspheres", Pharm. Res. 1993; 10: 1738-44、Mordon S et al., "Site-specific methylene blue delivery to pilosebaceous structures using highly porous nylon microspheres: an experimental evaluation", Lasers Surg. Med. 2003; 33: 119-25、及び、Alvarez-Roman R et al, "Skin penetration and distribution of polymeric nanoperticules", J. Controlled Release 2004; 99: 53-62等に挙げられている。
【0187】
製剤の調製及び投与は、既知の手法を用いて行なうことができる。例えば、クリーム、ローション、又はゲルの形態とすることができる。その適用は、皮膚の感染領域に、及び/又は、後に感染し易い領域に対して、病状の性質や重症度、並びに製剤中のキノン及び他の活性剤の濃度に応じた頻度で、例えば1日1回又は2回ずつ行なえばよい。
【0188】
ベンゾ/ヒドロキノンの濃度は、上述した範囲内であればよい。この濃度は、目的とする製剤の用途、目的とする投与の態様、及び、具体的に選択した活性剤の活性に基づいて決定されるであろう。
【0189】
実施例7 − 抗ブドウ球菌感染用の局所用製剤
【0190】
黄色ブドウ球菌(S. aureus)又は他のブドウ球菌の対する用途の製剤は、過酸化ベンゾイル等の過酸化物を、抗ニキビ製剤について上述したのと同様の手法で製剤化することにより、調製することができる。この場合における上記成分の製剤形態としては、例えば、作業面や手術用器具に対する適用用途であれば、スプレーが挙げられ、手洗い用途であれば、クレンジングジェル又はローションが挙げられ、前鼻孔に対する適用用途であれば、鼻腔用スプレーが挙げられ、他にも多くの適切な形態が挙げられる。こうした製剤は、特に予防的に、例えば、MRSAや同様の感染が発生するおそれを低減するために使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌活動(bacterial activity)によって発生、増悪、又は伝染する病状の局所的処置に使用されるベンゾキノン又はヒドロキノン。
【請求項2】
前記病状が、ブドウ球菌(staphylococcal)及び/又はプロピオン酸菌(propionibacterial)の活動によって発生、増悪、又は伝染するものである、請求項1記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン(benzo/hydroquinone for use)。
【請求項3】
前記病状が皮膚又は皮膚構造の病状である、請求項1又は請求項2に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項4】
前記病状が、ニキビ、感染性アトピー性湿疹、表在感染性(superficial infected)外傷性病変、創傷、火傷、潰瘍、毛嚢炎、真菌症、並びに、一次及び二次の皮膚及び皮膚構造の表在感染から選択される、請求項3記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項5】
前記病状がニキビである、請求項4記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項6】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、ブドウ球菌の予防に使用される、請求項2から5の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項7】
前記病状が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)又はプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)の1又は複数の株によって発生、増悪、又は伝染するものである、請求項2から6の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項8】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが皮膚に局所的に投与される、請求項1から7の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項9】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが鼻孔に局所的に投与される、請求項1から7の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項10】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが有する2つのC=O基又はC−OH基が互いにオルト又はパラに位置する、請求項1から9の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項11】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが有する2つのC=O基又はC−OH基が、互いにパラに位置する、請求項10記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項12】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ(−NO2)、及びアミン(−NR2、ここで各Rは独立に、水素又は炭化水素の何れかである)基から選択される1又は複数の基によって置換されてなる、請求項1から11の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項13】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが一置換又は二置換されてなる、請求項12記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項14】
前記ベンゾ/ヒドロキノンの少なくとも2位が置換されてなる、請求項12又は請求項13記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項15】
前記置換基が、アルキル、アルコキシ、及びハロゲン基から選択される、請求項12から14の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項16】
前記置換基がアルキル基から選択される、請求項15記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項17】
前記アルキル基が、メチル、エチル、イソプロピル、及びt−ブチルから選択される、請求項12から16の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項18】
前記アルコキシ基がメトキシである、請求項12から15又は17の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項19】
前記ハロゲンが塩素である、請求項12から15、17又は18の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項20】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、TBHQ、チモキノン及びその誘導体、例えばジチモキノン及びチモヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチル−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメトキシ−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2−メチル−p−ベンゾキノン、2−クロロ−p−ヒドロキノン、2−ブロモ−p−ヒドロキノン、2,5−ジクロロ−p−ヒドロキノン、2,6−ジクロロ−p−ヒドロキノン、2,3−ジフルオロ−p−ヒドロキノン、2−エチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2−クロロ−5−メチル−p−ベンゾキノン、並びにHTHQから選択される、請求項1から19の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項21】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、TBHQ、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2,3−ジメチル−p−ヒドロキノン、チモキノン、及びチモヒドロキノンから選択される、請求項20記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項22】
前記ベンゾ/ヒドロキノンがTBHQである、請求項21記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項23】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、抗ブドウ球菌剤として使用されるとともに、TBHQ、2,5−ジ−t−ブチル−p−ヒドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2−クロロ−p−ヒドロキノン、2,6−ジメチル−p−ヒドロキノン、及び2−エチル−p−ヒドロキノンから選択される、請求項1から22の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項24】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、抗プロピオン酸菌剤として使用されるとともに、TBHQ、3,5−ジ−t−ブチル−o−ベンゾキノン、チモキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2−t−ブチル−p−ベンゾキノン、2−メチル−p−ベンゾキノン、2−クロロ−p−ベンゾキノン、及び2−クロロ−5−メチル−p−ベンゾキノンから選択される、請求項1から22の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項25】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、1又は複数の抗生物質に全面的又は部分的な耐性を示す(wholly or partially resistant to)1又は複数の細菌に対して活性である、請求項1から24の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項26】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、1又は複数のエリスロマイシン耐性、クリンダマイシン耐性及び/又はテトラサイクリン耐性のP.アクネスの菌株に対して活性である、請求項25記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項27】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが、1又は複数のメチシリン耐性ブドウ球菌(methicillin-resistant S. aureus:MRSA)の菌株に対して活性である、請求項25又は請求項26に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項28】
最小殺生物濃度(minimum biocidal concentration:MBC)が、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対して、50μg/ml未満である、請求項1から27の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項29】
血清、脂質、及び塩化ナトリウムのうち少なくとも1つの存在下、少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対して抗細菌活性を保持する、請求項1から28の何れか一項に記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項30】
少なくともブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対する前記ベンゾ/ヒドロキノンの抗細菌活性が、血清、脂質、及び塩化ナトリウムのうち少なくとも1つによって増強される、請求項29記載の用途規定ベンゾ/ヒドロキノン。
【請求項31】
本願明細書に実質的に記載されている、細菌活動によって発生、増悪、又は伝染する病状の局所的処置に使用されるベンゾキノン又はヒドロキノン。
【請求項32】
細菌活動によって発生、増悪、又は伝染する病状の局所的処置に用いられる医薬の製造における、ベンゾキノン又はヒドロキノンの使用。
【請求項33】
前記病状が、ブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌の活動によって発生、増悪、又は伝染するものである、請求項32記載の使用。
【請求項34】
前記病状が皮膚又は皮膚構造の病状である、請求項32又は請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記病状がニキビである、請求項34記載の使用。
【請求項36】
前記病状がブドウ球菌性感染である、請求項32から34の何れか一項に記載の使用。
【請求項37】
前記医薬が、前記ベンゾ/ヒドロキノンを0.1から2.5%w/vの範囲の濃度で含有する抗微生物製剤を含んでなる、請求項32から36の何れか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記医薬が、皮膚への局所投与に好適な抗微生物製剤を含んでなる、請求項32から37の何れか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記医薬が、鼻孔への局所投与に好適な抗微生物製剤を含んでなる、請求項32から38の何れか一項に記載の使用。
【請求項40】
前記医薬が、抗微生物剤、抗ニキビ剤、ケラトリース(keratolyses)、コメドリティック(comedolytics)、抗炎症剤、抗増殖剤、抗生物質、抗アンドロゲン剤、セボスタティック剤(sebostatic agents)、痒み止め剤、免疫賦活剤、及び、創傷治癒を促進する薬剤から選択される1又は複数の薬剤を更に含有する、請求項32から39の何れか一項に記載の使用。
【請求項41】
前記医薬が、化粧品、スキンケア又はヘアケア用調製剤、(獣医薬を含む)医薬調製剤、洗面用品、洗濯又は他の繊維処理用品、又は、農業又は園芸用品に組み込まれてなる、請求項32から40の何れか一項に記載の使用。
【請求項42】
細菌活動によって発生、増悪、又は伝染する病状の局所的処置のための医薬の製造におけるベンゾキノン又はヒドロキノンの使用であって、本願明細書に実質的に開示されている使用。
【請求項43】
局所使用の抗微生物製剤の製造における、ベンゾキノン又はヒドロキノンの使用。
【請求項44】
ブドウ球菌性細菌又はプロピオン酸菌の増殖を抑制する方法であって、微生物に感染した領域、又は感染が疑われる領域、又は感染する可能性がある領域に、ベンゾキノン又はヒドロキノンを適用する工程を含んでなる方法。
【請求項45】
前記ベンゾ/ヒドロキノンが無生物の(non-living)表面に適用される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
ブドウ球菌性細菌又はプロピオン酸菌の増殖を抑制する方法であって、本願明細書に実質的に開示されている方法。
【請求項47】
ヒト又は動物の患者において、微生物活性によって発生、増悪、又は伝染する病状を処置するための方法であって、ベンゾキノン又はヒドロキノンの医薬的又は獣医薬的有効量を、前記患者に局所適用する工程を含む方法。
【請求項48】
前記病状が、ブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌の活動によって発生、増悪、又は伝染するものである、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記病状が皮膚又は皮膚構造の病状である、請求項47又は請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記病状がニキビである、請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記病状がブドウ球菌性感染である、請求項47から49の何れか一項に記載の方法。
【請求項52】
ベンゾキノン又はヒドロキノンの局所抗菌剤としての使用。
【請求項53】
ブドウ球菌及び/又はプロピオン酸菌に対する、請求項52記載の使用。
【請求項54】
プロピオン酸菌に対する、請求項53記載の使用。

【公表番号】特表2008−535814(P2008−535814A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502480(P2008−502480)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001077
【国際公開番号】WO2006/100496
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507314707)シントピックス リミティド (2)
【Fターム(参考)】