説明

抗炎症剤としてのヘテロ環式化合物

遊離または塩または溶媒和物形態の式IaまたはIbの化合物(式中、R、R、R、R、R、R20、R24、R25、X、YおよびZは、明細書中に示されている意味を有する)は、ALK−5および/またはALK−4受容体によって介在される疾患を処置するのに有用である。こうした化合物は、また、Pi3K受容体、JAK−2受容体およびTRK受容体によって介在される疾患の処置に有用である。こうした化合物を含む医薬組成物およびこうした化合物の製造方法もまた述べられている。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機化合物ならびに医薬としてのその使用、特に肺高血圧症のような炎症性または閉塞性気道疾患、肺線維症、肝線維症;癌;筋萎縮症および筋ジストロフィーのような筋疾患および骨粗鬆症のような全身性骨格系障害の処置のための医薬としての使用に関する。
【発明の概要】
【0002】
一つの局面では、本発明は、遊離または塩または溶媒和物の形態の、式IaまたはIb:
【化1】

[式中、
Xは、OまたはNHであり;
Yは、CR13またはNであり;
は、H、CN、ハロ、−C(O)NRおよび
【化2】

から選択され、
は、H、CN、モルホリノ、テトラゾール(所望によりC−Cアルキルによって置換されていることもある)、−S(O)NH、−C(O)NRおよびCHOHから選択される。
但し、RおよびRは、両方ともHであることはなく、そして、Rが、H以外である場合は、Rは、Hまたはハロであり;そして、RがH以外である場合は、Rは、Hであり;またはRおよびRは、それらが結合している炭素原子と一体となって、N、OおよびSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む6員ヘテロ環を形成し、このヘテロ環は、所望により、C−Cアルキルまたはオキソ基によって置換されていることもあり;
は、H、MeおよびCHOHから選択され;
は、HまたはC−Cアルキルであり;
は、Hまたはハロゲンであり;
は、HまたはC−Cアルキルであり;
は、独立して、H、C−Cアルキル、(CH)hetおよび(CH)NR10から選択されるか;または、
およびRは、それらが結合している窒素原子と一体となって、所望により、更にN、OおよびSから選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい、5員または6員ヘテロ環を形成し、この環は、所望により、C−CアルキルまたはNR1112によって置換されていることもあり;
、R10、R11およびR12は、それぞれ、独立して、HおよびC−Cアルキルから選択され;
13は、Hまたはハロであり;
mおよびnは、それぞれ、独立して、0、1または2であり;
hetは、N、OおよびSから選択される1個または2個のヘテロ原子を含む5員または6員ヘテロ環であり、この環は、所望により、C−Cアルキルによって置換されていることもあり;
Zは、NまたはCR26であり;
20は、H、シクロプロピルおよびR21から選択される。但し、ZがNである場合は、R20は、H以外であり;
21は、
【化3】

から選択され、
22およびR23は、それぞれ、独立して、HおよびC−Cアルキルから選択され;
24は、HおよびOHから選択され;
25は、H、OHおよびCHOHから選択される;但し、R24がHである場合は、R25は、OHまたはCHOHであり;そしてR24がOHである場合は、R25はHであり;そして、
26は、HおよびR21から選択される。但し、R20が、H以外である場合は、R26は、Hであり;そしてR20がHである場合は、R26はR21である]
の化合物を提供する。
【0003】
本明細書中で使用される用語は、次の意味を有する:
本明細書中で使用されている“所望により、一つ、二つまたは三つの位置で置換されていることもある”とは、言及されている基が、その前に列挙されている基の任意の一つまたは任意の組み合わせによって、一つまたは二つまたは三つの位置で置換されていてもよいことを意味する。
【0004】
本明細書で使用される“ハロ”または“ハロゲン”は、元素周期表の17族(以前はVII族)に属している元素を意味し、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であってよい。
【0005】
本明細書で使用される“C−C−アルキル”は、1〜8個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキルを意味する。異なる炭素原子数が特定されているならば、例えば、CまたはCこの定義は対応して改めるものとする。
【0006】
“4、5、または6員ヘテロ環基”は、窒素、酸素および硫黄から成る群から選択される少なくとも一つの環へテロ原子を含む4、5、または6員ヘテロ環基を意味し、それらは、飽和していても、部分的に飽和していてもよい。こうしたヘテロ環基の例としては、アゼチジン、ピロリジン、ピロリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジノン、モルホリン、オキサジン、エトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンおよび1,4−オキサチアンが含まれるが、これらに限定されない。このヘテロ環基は、非置換であっても、置換されていてもよい。
【0007】
“C−C10−シクロアルキル”は、3〜10個の環炭素原子を有する完全に飽和されている炭素環式環、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルのような単環式基、または、二環式基、例えば、ビシクロヘプチルまたはビシクロオクチルを意味する。異なる炭素原子数が特定されているならば、例えば、CまたはC、この定義は対応して改めるものとする。
【0008】
本明細書で使用される“C−C−ハロアルキル”は、1個以上のハロゲン原子、好ましくは1、2または3個のハロゲン原子により置換されている上記定義のC−C−アルキルを意味する。個別の炭素原子数が特定されているならば、例えば、CまたはC、この定義は対応して修正するものとする。
【0009】
本明細書で使用される“C−C−アルキルアミノ”および“ジ(C−C−アルキル)アミノ”は、上記定義の1または2個(同じでもまたは異なっていてもよい)のC−C−アルキル基によりそれぞれ置換されているアミノを意味する。異なる炭素原子数が特定されているならば、例えば、CまたはC、この定義は対応して改めるものとする。
【0010】
本明細書で使用される“C−C−アルコキシ”は、1〜8個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルコキシを意味する。異なる炭素原子数、が特定されているならば、例えば、CまたはC、この定義は対応して改めるものとする。
【0011】
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、文脈上他の解釈が必要でない限り、用語“含む”または“含み”もしくは“含んでなる”のような変形体は、記述した整数または工程または整数群もしくは工程群を含むが、他のいかなる整数もしくは工程また整数群もしくは工程群を排除するものではないことを意味することが理解されるべきである。
【0012】
上記の任意の場所に定義されている本発明の態様では、Rは、H、CN、ハロ、−C(O)NRおよび
【化4】

から選択され、そして、
は、H、CN、モルホリノ、テトラゾール(所望によりC−Cアルキルによって置換されていることもある)、−S(O)NH、−C(O)NRおよびCHOHから選択されるが、
但し、RおよびRは、両方ともHであることはなく、そして、Rが、H以外である場合は、Rは、Hであり;そして、RがH以外である場合は、Rは、Hである。
【0013】
上記の任意の場所に定義されている本発明の態様では、RはHまたはMeである。
上記の任意の場所に定義されている本発明の態様では、RはHまたはFである。
上記の任意の場所に定義されている本発明の態様では、RはHまたはMeである。
【0014】
上記の任意の場所に定義されている本発明の態様では、R13はHである。
上記の任意の場所に定義されている本発明の態様では、R24はHである。
【0015】
本発明の更なる態様では、式IaまたはIbによる化合物は、
4−(3−[2,4’]ビピリジニル−4−イル−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)−シクロヘキサノール;
4−{3−[2−(5−メチル−チオフェン−2−イル)−ピリジン−4−イル]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ}−シクロヘキサノール;
4−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール;
4−{3−[2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリジン−4−イル]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ}−シクロヘキサノール;
4−[3−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール;
4−[3−(2−シクロプロピル−ピリジン−4−イル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール;
4−[3−(3−ピラゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール;
4−[3−(4−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール;
{4−[3−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノール;
{4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−メタノン;
4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−N−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−ベンズアミド;
{4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−メタノン;
{4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−モルホリン−4−イル−メタノン;
{3−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンズアミド;
4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−N−(1−エチル−ピロリジン−2−イルメチル)−ベンズアミド;
4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンズアミド;
4−[6−(3−フルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−ベンゼンスルホンアミド;
4−[6−(3−フルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−ベンズアミド;
4−{6−[(RまたはS)−1−(3−フルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルアミノ]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル}−ベンゾニトリル;
3−{6−[(R)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチルアミノ]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル}−ベンゾニトリル;
{4−[6−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−メタノール;
および
テトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸{3−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−アミド
から選択される。
【0016】
式IaまたはIbに従って、本明細書中の任意の場所に定義されている本発明の態様は、独立してでも、集合して、あるいは、いかなる組み合わせで組み込まれてもよい。
【0017】
塩基性中心を含む式IaまたはIbの化合物は、酸付加塩、特に薬学的に許容される酸付加塩を形成することができる。式IaまたはIbの化合物の薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸、例えば、ハロゲン化水素酸、例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸;および有機酸、例えば、脂肪族モノカルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸および酪酸、カプリル酸、ジクロロ酢酸、馬尿酸、脂肪族ヒドロキシ酸、例えば、乳酸、クエン酸、酒石酸またはリンゴ酸、グルコン酸、マンデル酸、ジカルボン酸、例えば、マレイン酸またはコハク酸、アジピン酸、アスパラギン酸、フマル酸、グルタミン酸、マロン酸、セバシン酸、芳香族カルボン酸、例えば、安息香酸、p−クロロ−安息香酸、ニコチン酸、ジフェニル酢酸またはトリフェニル酢酸、芳香族ヒドロキシ酸、例えば、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸または3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸およびスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸またはベンゼンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸、(+)カンファー−10−スルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸の酸付加塩を含む。こうした塩は、公知の塩形成手順により、式IaまたはIbの化合物から製造することができる。薬学的に許容される溶媒和物は一般に水和物である。
【0018】
酸性の、例えばカルボキシル基を含む式IaまたはIbの化合物は、また、塩基、特に薬学的に許容される塩基、例えば、当技術分野でよく知られているものと塩を形成することもできる;適当なこうした塩は、金属塩、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム塩、またはアンモニアまたは薬学的に許容される有機アミンまたはヘテロ環式塩基、例えば、エタノールアミン、ベンジルアミンまたはピリジン、アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、ジエタノールアミン、4−(2−ヒドロキ−シエチル)モルホリン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、N−メチルグルタミン、ピペラジン、トリエタノール−アミンまたはトロメタミンとの塩を含む。こうした塩は、公知の塩形成法により、式Iの化合物から製造することができる。酸性の、例えば、カルボキシル基を含む式IaまたはIbの化合物は、また、四級アンモニウム中心を有する双性イオンとして存在することができる。
【0019】
式IaまたはIbの化合物の遊離形を従来方法で塩形に変換でき、その逆もまた同様である。遊離形態または塩形態でのこの化合物は、水和物または、結晶化のために使用した溶媒を含む溶媒和物形態で入手できる。式IaまたはIbの化合物を従来方法で反応混合物から回収し、精製できる。異性体、例えば、エナンチオマーは、従来方法、例えば、分別結晶、または対応して不斉置換された、例えば、光学活性な出発物質から不斉合成により得ることができる。
【0020】
本発明の多数の化合物は、少なくとも1個の不斉炭素原子を含み、従って、それらは個々の光学的に活性な異性体形またはそれらの混合物、例えば、ラセミ混合物として存在する。更なる不斉中心が存在する場合、本発明は、また、個々の光学的に活性な異性体および混合物、例えば、ジアステレオマー混合物をの両方を包含する。
【0021】
本発明は、すべてのこのような形態、特に純粋な異性体形態を含む。異なる異性体形態を、従来方法により互いに分離または分割することができ、または任意のある異性体を従来の合成方法、または;立体特異性もしくは不斉合成により得ることができる。本発明の化合物は医薬組成物における使用を意図しているので、それらは、それぞれ好ましくは実質的に純粋な形態、例えば、少なくとも60%純粋、より適当には少なくとも75%純粋、および好ましくは少なくとも85%、とりわけ少なくとも98%純粋(%は重量対重量ベースである)で提供されることが容易に理解されるであろう。化合物の不純な生成物を、医薬組成物において使用される、より純粋な形態を製造するために使用してもよく;こうした低純度の本化合物の生成物は、少なくとも1%、より適当には少なくとも5%および好ましくは10〜59%の本発明の化合物を含むべきである。
【0022】
本発明は、一個以上の原子が、原子番号は同一であるが、自然界に通常見出される原子質量または質量数と異なった原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられる、薬学的に許容される同位体標識した式IaまたはIbの化合物をすべて含む。本発明の化合物に含まれる適切な同位体の例としては、水素の同位体、例えば、HおよびH、炭素の同位体、例えば、11C、13Cおよび14C、塩素の同位体、例えば、36Cl、フッ素の同位体、例えば、18F、ヨウ素の同位体、例えば、123Iおよび125I、窒素の同位体、例えば、13Nおよび15N、酸素の同位体、例えば、15O、17Oおよび18O、および硫黄の同位体、例えば、35Sが含まれる。
【0023】
同位体標識した式IaまたはIbの化合物のあるもの、例えば、放射性同位体を取り込んでいるものは、医薬および/または基質の組織分布研究に有用である。放射性同位体トリチウム(H)および炭素−14(14C)は、取り込みの容易さおよび迅速な検出手段の観点からこうした目的に特に有用である。重水素(H)のようなより重い同位体を用いる置換は、大きな代謝安定性による一定の治療的利点、例えば、イン・ビボの半減期の増大あるいは必要用量の減少を提供し得て、それゆえ、ある状況下では好ましいであろう。ポジトロン放出同位体、例えば、11C、18F、15Oおよび13Nを用いる置換は、基質受容体占有率を試験するためのポジトロン放出断層撮影(PET)検討に有用でありうる。
【0024】
同位体標識した式IaまたはIbの化合物は、本技術分野の当業者に知られている従来の手法により、あるいは、以前に使用されていた非標識薬剤の代わりに適切な同位体標識した薬剤を用いて、付随する実施例中で述べられている方法に準じる方法によって、一般に調製することができる。
【0025】
本発明による薬学的に許容される溶媒和物には、結晶化の溶媒が同位体で置換されていてよい、例えば、DO、d−アセトンまたはd−DMSOである溶媒和物が含まれる。
本発明の具体的な特に好ましい化合物は、実施例において後記の化合物である。
【0026】
本発明は、また、遊離または塩または溶媒和物形態の式IaまたはIbの化合物の製造方法を提供する。これらは、
(i)(A)式IIa:
【化5】

[式中、Qは、上記の式IaおよびIbに定義されている該当する基を表し、すなわち:
【化6】

(ここで、X、R、R、R、R24およびR25は、上記の任意の場所の定義と同様である)であり、そしてXは、ハロである]
の化合物を、式IIIaまたはIIIb:
【化7】

[式中、Tは、上記の式IaおよびIb中に定義されている該当する基を表し、すなわち:
【化8】

(ここで、Y、Z、R、RおよびR20は、上記の任意の場所の定義と同様である)であり、そして、
およびRは、独立して、水素またはC−C−アルキルである]
の化合物と反応させ、
【0027】
(B)Qが窒素架橋基を含む式IaまたはIbの化合物の製造のために、
式IV:
【化9】

(式中、Tは、上記の定義と同様であり、そして、Xは、ハロである)の化合物を、
式V:
【化10】

[式中、Rは、上記のIaおよびIbで定義されている該当する基を表し、すなわち:
【化11】

(そしてここで、R、R、R、R24およびR25は、上記の任意の場所の定義と同様である)である]
の化合物と反応させ;
【0028】
(C)Qが窒素架橋基かまたは酸素架橋基を含み、そしてTが上記の定義と同様である式IaまたはIbの化合物の製造のために、
式VI:
【化12】

(式中、Qは、上記の定義と同様であり、Kは、6員芳香族ヘテロ環基であり、そしてXは、ハロである)の化合物を、式VIIaまたはVIIb:
【化13】

(式中、Uは、−R、−Rまたは−R20であり、そして、RおよびRは、独立して、水素またはC−C−アルキルである)の化合物と反応させるか;または、
【0029】
(D)Qが酸素連結基を含む式Iaの化合物の製造のために、式IV(ここで、Tは、上記の定義と同様であり、そしてXは、ハロである)の化合物を、
式VIII
【化14】

(式中、Rは、式Iaにより定義されている化合物に応じて置換されたベンジル基である)の化合物と反応させ;そして、
【0030】
(ii)得られた式IaまたはIbの化合物を、遊離または塩または溶媒和物形態で回収することを含んでなる方法によって製造することができる。
【0031】
製造法(A)は、ハロゲン化ヘテロ環基を、アリール/ヘテロアリールボロン酸と反応させるときの公知の手順を用いるか、あるいは、実施例に後記の手順に準じて行うことができる。この反応は、有機溶媒、例えば、ジオキサンと水の混合液中、好ましくは、触媒、例えば、パラジウムジクロリドビストリフェニルホスフィン(palladium dichloridebistriphenylphosphine)、そして無機塩基、例えば、炭酸ナトリウムの存在下で行うのが好都合である。適切な反応温度は、高温、例えば、100℃〜150℃であり、約100℃で、例えば、約120分間マイクロウェーブ処理することが好ましい。
【0032】
製造法(B)は、ハロゲン化物、特にハロ−置換ヘテロ環化合物を、アミンと反応させる公知の手順を用いるか、あるいは実施例に後記の手順に準じて行うことができる。この反応は、有機溶媒、例えば、N−メチル−ピロリジノン(NMP)を用い、所望により、無機塩基、例えば、炭酸ナトリウムの存在下で行うのが好都合である。適切な反応温度は、100℃〜250℃、好ましくは、120℃〜220℃、特に約180℃であり、例えば、マイクロウェーブ照射を用いて、例えば、約90分間加熱することによる。
【0033】
製造法(C)は、ハロゲン化ヘテロ環基をアリール/ヘテロアリールボロン酸と反応させる公知の手順を用いるか、または実施例に後記の手順に準じて行うことができる。この反応は、有機溶媒、例えば、ジオキサンと水の混合物中で、好ましくは、触媒、例えば、パラジウムジクロリドビストリフェニルホスフィン、および無機塩基、例えば、炭酸ナトリウムの存在下で行うのが好都合である。適切な反応温度は、高温であり、例えば、100℃〜150℃、好ましくは、約120℃で、例えば、約120分間マイクロウェーブ照射を用いる。
【0034】
製造法(D)は、ハロゲン化物、特にハロゲン化ヘテロ環基を、第一級アルコールと反応させる公知の手順を用いるか、または実施例に後記の手順に準じて行うことができる。この反応は、有機溶媒中、例えば、ジメチルホルムアミド中で、好ましくは、塩基、例えば、水素化ナトリウムの存在下で行うのが好都合である。適切な反応温度は、10℃〜40℃であるが、好ましくは室温である。
【0035】
式IIaの化合物は、式IX:
【化15】

(式中、XおよびXは、それぞれハロである)
の化合物を、式X:
【化16】

(式中、Qは、後記の定義と同様であるか、または後記の実施例中に述べられているものと同じである)の化合物と反応させることによって製造される。
【0036】
この反応は、有機溶媒中で、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で、好ましくは、無機塩基、例えば、重炭酸ナトリウム(NaHCO)の存在下で行うのが好都合である。適切な反応温度は、高温であり、例えば、100℃〜200℃、好ましくは、約180℃で、例えば、約40分間マイクロウェーブ照射を行う。
【0037】
式IIIaまたはIIIbの化合物は、商業上入手可能か、または公知の方法によって製造することができる。
【0038】
式IVの化合物は、式XI:
【化17】

(式中、XおよびXは、それぞれハロである)の化合物を、式IIIaまたはIIIb:
【化18】

(式中、Tは、上記の定義と同様であり、RおよびRは、独立して、水素またはC−C−アルキルであるか、または実施例に後記のものと同じである)の化合物と反応させることによって製造される。この反応は、有機溶媒中で、例えば、ジオキサンと水の混合物中で、好ましくは、触媒、例えば、パラジウムジクロリドビストリフェニルホスフィン、および無機塩基、例えば、炭酸ナトリウムの存在下で行うのが好都合である。適切な反応温度は、高温であり、例えば、100℃〜150℃、好ましくは、約100℃で、例えば、約120分間マイクロウェーブ照射をおこなう。
【0039】
式Vの化合物は、商業上入手可能か、または公知の方法によって製造することができる。
【0040】
式VIの化合物は、式IIa(ここで、Qは上記の定義と同様であり、そして、Xはハロである)の化合物を、式XIIaまたはXIIb:
【化19】

(式中、Xは、ハロであり、Kは、上記の定義と同様であり、そしてRおよびRは、独立して、水素またはC−C−アルキルであるか、または実施例に後記のものと同じである)の化合物と反応させることによって製造される。
この反応は、有機溶媒中で、例えば、ジオキサンと水の混合物中で、好ましくは、触媒、例えば、パラジウムジクロリドビストリフェニルホスフィン、および無機塩基、例えば、炭酸ナトリウムの存在下で行うのが好都合である。適切な反応温度は、高温であり、例えば、100℃〜150℃、好ましくは、約100℃で、例えば、約120分間マイクロウェーブ照射を行う。
【0041】
式VIIaまたはVIIb、VIII、IX、X、XI、XIIaまたはXIIbの化合物は、商業上入手可能か、または公知の方法によって製造することができる。
【0042】
薬学的に許容される塩形態での式IaおよびIbの化合物は、以下では“本発明の薬剤”という。こうした化合物は、医薬として有用である。
【0043】
本発明の薬剤は、アクチビン様キナーゼ(“ALK”)−5阻害剤として作用する。少なくとも多数のこうした化合物はまた、ALK−4阻害剤としても作用する。
【0044】
TGF−β1は、1回膜貫通セリン/トレオニンキナーゼ受容体のファミリーを介してシグナル伝達する、TGF−β、アクチビン、インヒビン、骨形態形成タンパク質およびミュラー管抑制物質を含むサイトカインのファミリーの原型メンバーである。こうした受容体は2つのクラス、I型すなわちアクチビン様キナーゼ(ALK)受容体およびII型受容体に分けることができる。ALK受容体は、ALK受容体が(a)セリン/トレオニンが豊富な細胞内末端を欠き、(b)I型受容体の間できわめて相同であるセリン/トレオニンキナーゼドメインを有し、そして(c)グリシンおよびセリン残基が豊富な領域から構成されるGSドメインと呼ばれる共通の配列モチーフを共有するという点でII型受容体と区別される。GSドメインは、細胞内キナーゼドメインのアミノ末端であり、II型受容体による活性化に欠くことができない。TGF−βシグナル伝達にはALKおよびII型受容体の両方が必要であることが、いくつかの検討で示された。具体的にいうと、II型受容体は、TGF−βのI型受容体であるALK5のGSドメインをTGF−βの存在下でリン酸化する。次にALK5が、細胞質タンパク質であるsmad2およびsmad3を2つのカルボキシ末端セリンでリン酸化する。リン酸化smadタンパク質は、核に移行し、そして細胞外マトリックスの製造に寄与する遺伝子を活性化する。それ故、本発明の好ましい化合物は、I型受容体を阻害する点で選択的である。
【0045】
アクチビンはTGF−βと同様の方法でシグナルを伝達する。アクチビンはセリン/トレオニンキナーゼであるアクチビンII型受容体(ActRIIB)に結合し、そして活性化II型受容体がALK4のGS領域中のセリン/トレオニン残基を高リン酸化する。次いで活性化ALK4がSmad2およびSmad3をリン酸化する。その結果として起こるSmad4を含むヘテロ−Smad複合体の形成によって、アクチビンによって誘導される遺伝子転写調節に導かれる。
【0046】
TGF−β1軸の活性化および細胞外マトリックスの拡大は、慢性腎臓疾患および血管疾患の発症および進行の初期のおよび持続する寄与因子である。Border W.A., et al, N. Engl. J. Med., 1994; 331(19), 1286-92。更に、TGF−β1は、TGF−β1受容体のALK5によるSmad3リン酸化の作用を通して、硬化性沈着の成分フィブロネクチンおよびプラスミノーゲンアクチベーター阻害因子1の形成の役割を果たす。Zhang Y., et al, Nature, 1998; 394(6696), 909-13; Usui T., et al, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 1998; 39(11), 1981-9。
【0047】
腎臓および心血管系の進行性線維症は、罹患および死の主要な原因であり、そして医療費の重要な一因である。TGF−β1は多数の腎線維症と関連している。Border W.A., et al, N. Engl. J. Med., 1994; 331(19),1286-92。TGF−β1は急性および慢性糸球体腎炎(Yoshioka K., et al, Lab. Invest., 1993; 68(2),154-63)、糖尿病性腎症(Yamamoto, T., et al, 1993, PNAS 90, 1814-1818)、同種移植片拒絶反応、HIV腎症およびアンギオテンシン誘発腎症(Border W.A., et al, N. Engl. 5 J. Med., 1994; 331(19), 1286-92)において増大する。これらの疾患において、TGF−β1発現のレベルは細胞外マトリックスの産生と一致する。3つの証拠によれば、TGF−β1とマトリックス生産の間の因果関係が提案される。第1に、正常糸球体、メサンギウム細胞および非腎臓細胞は、細胞外マトリックスタンパク質の産生を誘導し、外因性TGF−β1によるプロテアーゼ活性をイン・ビトロで阻害することができる。第2に、TGF−β1に対する中和抗体は腎炎ラットの細胞外マトリックスの蓄積を予防することができる。第3に、TGF−β1トランスジェニックマウスまたはイン・ビボでのTGF−β1遺伝子の正常ラット腎臓へのトランスフェクションによって、糸球体硬化症を急速に発症させることになる。Kopp J.B., et al, Lab. Invest., 1996; 74(6), 991 1003。従って、TGF−β1活性の阻害は慢性腎臓疾患の治療的介入として指摘される。
【0048】
TGF−β1およびその受容体は、損傷血管中で増加し、そしてバルーン血管形成術後の内膜形成の兆しである。Saltis J., et al, Clin. Exp. Pharmacol. Physiol., 1996; 23(3), 193-200。加えて、TGF−β1はイン・ビトロでの平滑筋細胞(“SMC”)遊走の強力な刺激因子であり、動脈壁へのSMCの遊走はアテローム性動脈硬化症および再狭窄の病因における寄与因子である。更に、総コレステロールに対する内皮細胞生産物の多変量分析で、TGF−β受容体であるALK5は総コレステロール(P<0.001)と相関関係がある。Blann A.D., et al, Atherosclerosis, 1996; 120(1-2), 221-6。更に、ヒトアテローム性動脈硬化病変由来SMCはALK5/TGF−βII型受容体比を増加させる。TGF−β1が線維増殖性血管病変で過剰発現しているため、受容体−I変異細胞は、細胞外マトリックス成分を過剰生産しながら、ゆっくりしているが、非制御的に増殖する(McCaffrey T.A., et al, Jr., J. Clin.; Invest., 1995; 96(6), 2667-75)。TGF−β1は、活発なマトリックス合成がおこる場所であるアテローム性動脈硬化症病変で非泡沫状マクロファージに免疫局在化し、非泡沫状マクロファージがTGF−β依存メカニズムを介するアテローム動脈硬化症のリモデリングにおけるマトリックス遺伝子発現の調節に関与し得ることを示唆した。それ故、ALK5におけるTGF−β1の作用を阻害することは、また、アテローム性動脈硬化症および再狭窄において指示される。
【0049】
肝線維症は、多くの原因物質、例えば、B型肝炎およびC型肝炎ウイルス、アルコールまたは薬物、および自己免疫疾患により引き起こされる慢性肝臓損傷に対するアンバランスな創傷治癒応答の結果である。最終的に、肝線維症は生命を脅かす肝硬変症および肝臓癌に至り得る(Gressner et al (2006) J. Cell. Mol. Med. 2006, 10(1): 76-99によるレビュー文献参照)。
【0050】
いくつかの細胞シグナル経路が慢性肝臓損傷において変化することが知られている。TGFβシグナル伝達、その受容体および関連Smad−シグナル伝達タンパク質は、線維形成に関連する細胞型で存在することは、文書で十分に裏付けられている。TGFβの循環レベルは、肝線維症を含む線維症の多くの動物モデルで増加していることが判明している。TGFβ1の過剰発現を有するトランスジェニックマウスは、肝臓、腎臓、肺および心臓を含む多数の臓器における線維症を発症する。TGFβシグナル伝達の増加が肝線維症を含む線維症の種類のすべてに関連していることは明らかである。この概念は、更に線維症モデルにおいてTGFβ阻害剤を使用するいくつかの試験でその妥当性が実証されている。TGFβは2つのser/thrキナーゼ受容体のTGFβRIIおよびALK5に結合することによりシグナル伝達を仲介する。ドミナントネガティブTGFβRIIの発現は、ジメチルニトロサミン誘発肝線維症のラットモデルで有利な効果を示した(Qi et al (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. 96: 2345-9およびNakamura et al (2000) Hepatology 32: 247-55、参照)。アンチセンス方法を使用したTGFβ発現阻害は、また、胆管結紮により誘発される肝線維症を減少させた(Arias et al (2003) BMC Gastroenterol. 3: 29、参照)。最近、ALK5の小分子阻害剤であるGW6604は、これをラットに治療的に与えると、ジメチルニトロサミン誘発肝線維症の処置において有意な効果を有している。GW6604は死亡率を40%抑制(prevented)し、そして細胞外マトリックス沈着の60%を阻害する(線維症の場合の主要測定)ということは、極めて注目に値することである。GW6604での3週間の処置でなんら明白な副作用がなかったことを示したことは、重要である(De Gouville et al (2005) Br. J. Pharmacol. 145: 166-77、参照)。総合すれば、こうした試験は、TGFβシグナル伝達の阻害が、肝臓線維症に対する有効な処置になり得ることを示唆する。
【0051】
TGF−β1は、また、創傷修復において必要とされる。TGF−β1に対する中和抗体は、多くのモデルで使用されており、TGF−β1シグナル伝達を阻害することにより、治癒経過中に過剰な瘢痕形成を制限することにより損傷後の復元機能において有益であることが示されている。例えば、TGF−β1およびTGF−β2に対する中和抗体は、ラットにおいて単球およびマクロファージの数を減少させ、ならびに皮膚フィブロネクチンおよびコラーゲン沈着を減少させることにより、瘢痕形成を減少させ、新真皮の細胞構築を改善させた(Shah M., J. Cell. Sci., 1995,108, 985-1002)。更に、TGF−β抗体は、また、ウサギの角膜損傷の治癒を改善し(Moller-Pedersen T., Curr. Eye Res., 1998, 17, 736-747)、そしてラットの胃潰瘍の創傷治癒を加速する(Ernst H., Gut, 1996, 39, 172-175)。こうしたデータは、TGF−βの活性の制限が多数の組織で有益であることを強力に示唆し、そしてTGF−βの慢性的増加を伴うすべての疾患が、smad2およびsmad3シグナル伝達経路を阻害することにより利益を得るであろうことを示唆する。
【0052】
TGF−βは、また、腹膜癒着と関連している(Sand G.M., et al, Wound Repair Regeneration, 1999 Nov-Dec, 7(6), 504-510)。従って、ALK5の阻害剤は外科手術後の腹膜および皮下線維症性癒着の防止に有益である。
【0053】
TGF−βは、また、皮膚の光老化にも関連している(Fisher GJ. Kang SW. Varani J. Bata-Csorgo Z. Wan YS. Data S. Voorhees J J., Mechanisms of photoaging and chronological skin ageing, Archives of Dermatology, 138(11):1462- 1470, 2002 Nov. および Schwartz E. Sapadin AN. Kligman LH. “UItraviolet B radiation increases steady state mRNA levels for cytokines および integrins in hairless mouse skin- modulation by 25 topical tretinoin”, Archives of Dermatological Research, 290(3):137-144, 1998 Mar. 参照)。
【0054】
TGF−βシグナル伝達は、また、肺障害、特に肺高血圧および肺線維症の発症にも関連している(Morrell NW, Yang X, Upton PD, Jourdan KB, Morgan N, Sheares KK, Trembath RC., Altered growth responses of pulmonary artery smooth muscle cells from patients with primary pulmonary hypertension to transforming growth factor-beta(1) and bone morphogenetic proteins. Circulation. 2001 Aug 14;104(7):790-5。Bhatt N, Baran CP, Allen J, Magro C, Marsh CB., Promising pharmacologic innovations in treating pulmonary fibrosis. Curr Opin Pharmacol. 2006 Apr 28、参照)。
【0055】
TGF−β1レベルは、肺高血圧の動物モデルで増加している(Mata-Greenwood E, Meyrick B, Steinhorn RH, Fineman JR, Black SM. Alterations in TGF-beta1 expression in lambs with increased pulmonary blood flow and pulmonary hypertension. Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 2003 Jul; 285(1):L209-21)。他の研究では、肺内皮細胞由来TGF−β1が、肺高血圧を伴う個体の肺血管系で観察される筋肉形成(muscularisation)の増加の基礎となりうる、肺血管平滑筋細胞の増殖を刺激できることが示唆されている(Sakao S, Taraseviciene-Stewart L, Wood K, Cool CD, Norbert VF. Apoptosis of pulmonary microvascular endothelial cells stimulates vascular smooth muscle cell growth. Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 2006 Apr 14)。それ故、ALK5におけるTGF−β1の作用の阻害は、肺高血圧における治療的介入として指示される。
【0056】
更に、脱制御TGF−βシグナル伝達は、また、特発性肺線維症の発症にも関連している。ALK5の活性化は、Smad3活性化ならびに線維形成過程に関連する、例えば、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター−1、プロコラーゲン3A1および結合組織成長因子の遺伝子発現の下流調節をもたらす。TGF−β1およびその下流の前線維性メディエーターのレベルは、気管支肺胞洗浄で特発性肺線維症を有する患者(Hiwatari (Hiwatari N, Shimura S, Yamauchi K, Nara M, Hida W, Shirato K, Significance of elevated procollagen-III-peptide and transforming growth factor-beta levels of bronchoalveolar lavage fluids from idiopathic pulmonary fibrosis patients, Tohoku J. Exp. Med. 1997 Feb; 181(2): 285-95)および特発性肺線維症の動物モデル(Westergren-Thorsson G, Hernnas J, Sarnstrand B, Oldberg A, Heinegard D, Malmstrom, Altered expression of small proteoglycans, collagen, and transforming growth factor-beta 1 in developing bleomycin-induced pulmonary fibrosis in rats, J. Clin. Invest. 1993 Aug;92(2):632-7)から採取したものにおいて、上方制御されていることが証明されている。
【0057】
アデノウイルスベクター介在遺伝子導入を使用するマウス肺における活性TGF−β1の一過性過剰発現は、野生型マウスでは進行性肺線維症となり、一方、TGF−β1チャレンジ後28日間までSmad3ノックアウトマウスの肺で線維症は見られなかった(Khalil N, Parekh TV, O'Connor RN, Gold LI. Differential expression of transforming growth factor-beta type I and II receptors by pulmonary cells in bleomycin-induced lung injury: correlation with repair and fibrosis, Exp. Lung. Res. 2002 Apr-May; 28(3): 233-50)。従って、ALK5のTGF−β1活性化の阻害は、また、肺線維症に対しても指示される。
【0058】
アクチビンシグナル伝達およびアクチビンの過剰発現は、細胞外マトリックス蓄積および線維症(例えば、Matsuse, T. et al., Am. J. Respir Cell Mol. Biol. 13:17-24 (1995); Inoue, S. et al., Biochem. Biophys. Res. Comn. 205:441- 448 (1994); Matsuse, T. et al., Am. J. Pathol. 148:707-713 (1996); De Bleser et al., Hepatology 26:905-912 (1997); Pawlowski, J. E., et al., J. Clin. Invest. 100:639-648 (1997); Sugiyama, M. et al., Gastroenterology 114:550-558 (1998); Munz, B. et al., EMBO J. 18:5205-5215 (1999))、炎症応答(例えば、Rosendahl, A. et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 25:60-68 (2001)、悪液質または消耗(Matzuk7 M. M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:8817-8821 (1994); Coerver, K. A. et al., Mol. Endocrinol. 10:531 543 (1996); Cipriano, S. C. et al., Endocrinology 141:2319-2327 (2000))、中枢神経系の疾患または病的反応(例えば、Logan, A. et al., Eur. J. Neurosci. 11:2367 - 2374 (1999); Logan, A. et al., Exp. Neurol. 159:504-510 (1999); Masliah, E. et al., Neurochem. Int. 39:393-400 (2001); De Groot, C. J. A. et al., J. Neuropathol. Exp. Neural. 58:174-187 (1999); John, G. R. et al., Nat. Med. 8:1115-1121 (2002))および高血圧(例えば、Dahly, A. J. et al., Am. J. Physiol. Regul. Integr Comp. Physiol. 283: R757-767 (2002))を含む病的障害と関係している。研究では、TGF−βおよびアクチビンが相乗的に作用し、細胞外マトリックス産生を誘導できることが示されている(例えば、Sugiyama, M. et al., Gastroerterology 114; 550-558 (1998))。
【0059】
それ故、本発明の薬剤によるALK5および/またはALK4の、Smad2およびSmad3のリン酸化の阻害が、こうしたシグナル経路に関連する障害を処置および予防するために有用であり得ることとなる。
【0060】
アクチビンシグナル伝達は、また、肺障害、特に肺高血圧および肺線維症の発症に関わる。例えば、間質性肺線維症に罹患した患者に起源する肺サンプル中のアクチビンAの発現は、化生上皮、増殖性平滑筋細胞、剥離細胞および肺胞マクロファージでアクチビンAの強い発現を示した。原発性または続発性肺高血圧に罹患している患者に起源する肺動脈は、平滑筋細胞で豊富な免疫反応性アクチビンAを示した。こうした発見は、間質性肺線維症および肺高血圧に伴う肺組織リモデリングの病因における、この増殖因子であるアクチビンAの潜在的役割を示唆する(Matsuse T, Ikegami A, Ohga E, Hosoi T, Oka T, Kida K, Fukayama M, Inoue S, Nagase T, Ouchi Y. Expression of immunoreactive activin A タンパク質 in remodelling lesions associated with interstitial pulmonary fibrosis. Am. J. Pathol. 1996 Mar;148(3):707-13)。線維芽細胞および関連結合組織の増殖は肺線維症および肺高血圧の特徴である。アクチビンAは特に増殖および筋線維芽細胞への分化に対してヒト肺線維芽細胞(HFL1)活性を調節することを示し、従って、アクチビンAは肺線維芽細胞の増殖および筋線維芽細胞への分化の潜在的役割を有し、肺線維症および高血圧で観察される構造リモデリングに貢献し得る(Ohga E, Matsuse T, Teramoto S, Katayama H, Nagase T, Fukuchi Y, Ouchi Y. Effects of activin A on proliferation and differentiation of human lung fibroblasts, Biochem. Biophys. Res. Commun. 1996 Nov 12;228(2):391-6)。ラットのブレオマイシン投与が介在する肺線維症の誘発は、肺に浸潤したマクロファージでアクチビンAの上方制御発現をもたらし、線維性領域に蓄積した線維芽細胞中で検出された。アクチビンシグナル伝達のアンタゴニストであるホリスタチンのブレオマイシン処理ラットへの投与は、気管支肺胞洗浄中のマクロファージおよび好中球の数を有意に減少させ、またタンパク質含有量を減少させた。ホリスタチンは、浸潤細胞の数を著しく減少させ、肺構造の破壊を改善し、そして肺線維症を軽減した(Aoki F , Kurabayashi M, Hasegawa Y, Kojima I. Attenuation of bleomycin-induced pulmonary fibrosis by follistatin, Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2005 Sep 15 ; 172(6) :713-20)。
【0061】
それ故、ALK4阻害を介するアクチビンシグナル伝達の阻害は、また、肺線維症および肺高血圧の処置に有用であり得る。
【0062】
最近、エフェクターであるSmad3を介するTGF−βシグナル伝達の減少は、骨マトリックスの機械的特性およびミネラル濃度ならびに骨量を増加させ、骨が骨折に良好に耐えることができることが示されている。こうした結果は、TGF−βシグナル伝達の減少が、骨障害を処置するための治療標的として考えられ得ることを示唆する。(Balooch G, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 2005 Dec 27; 102(52): 18813-8)。従って、ALK5のTGF−β1活性化阻害は、また、骨のミネラル密度強度および含有量の増加に必要であり、例えば、骨減少症、骨粗鬆症、骨折および低骨ミネラル密度が疾患の顕著な特徴である他の障害を含む広範囲の状態を処置するのに利用することができる。
【0063】
ALK−5および/またはALK−4受容体のこうした阻害を参酌すると、本発明の薬剤はALK−5および/またはALK−4受容体が介在する状態の処置に有用である。本発明による処置は対症的あってもよいしまたは予防的であってもよい。
【0064】
それ故、更なる局面によれば、本発明は、ALK−5阻害またはALK−4阻害が介在する疾患または状態を処置または予防するための薬剤の製造における本発明の薬剤の使用を提供する。
【0065】
ALK−5阻害またはALK−4阻害が介在する疾患または状態には、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、狼瘡腎炎、高血圧誘発腎症、間質性腎線維症、薬剤暴露の合併症による腎線維症、HIV関連腎症、移植腎症、すべての病因による肝線維症、感染による肝機能障害、アルコール誘発肝炎、胆道系の障害、肺線維症、肺高血圧、急性肺損傷、成人呼吸窮迫症候群、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、感染または毒物による肺疾患、梗塞後心臓線維症、うっ血性心不全、拡張型心筋症、心筋炎、血管狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、眼性瘢痕、角膜瘢痕、増殖性硝子体網膜症、外傷または外科創傷による創傷治癒中に起こる皮膚の過剰または肥厚性の瘢痕またはケロイド形成、腹膜および皮下癒着、強皮症、線維化硬化症(fibrosclerosis)、進行性全身性硬化症、皮膚筋炎、多発性筋炎、関節炎、潰瘍、神経機能障害、男性の勃起機能障害、アルツハイマー病、レイノー症候群、線維性癌、腫瘍転移増殖、放射線誘発線維症、血栓症、および骨減少症および骨粗鬆症のようなカルシウム減少または再吸収の増加に関連して起こるか、または骨形成の刺激および骨におけるカルシウム固定が望ましい骨状態が含まれる。
【0066】
ALK−5阻害が介在する疾患または状態は、特に慢性腎臓疾患、急性腎臓疾患、創傷治癒、関節炎、骨粗鬆症、腎臓疾患、うっ血性心不全、炎症性または閉塞性気道疾患、肺高血圧、潰瘍(糖尿病性潰瘍、慢性潰瘍、胃潰瘍および十二指腸潰瘍を含む)、眼疾患、角膜損傷、糖尿病性腎症、神経機能障害、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、腹膜および皮下癒着、限定はしないが、腎線維症、肺線維症および肝線維症を含む線維症が主な要素であるすべての疾患、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、アルコール誘発肝炎、ヘモクロマトーシス、原発性胆汁性肝硬変、再狭窄、後腹膜線維症、腸間膜線維症、子宮内膜症、ケロイド、癌、異常骨機能、炎症障害、瘢痕および皮膚の光老化を含む。
【0067】
本発明が適用できる炎症性または閉塞性気道疾患は、内因性(非アレルギー性)喘息および外因性(アレルギー性)喘息の両方を含む、いかなるタイプもしくは起源の、喘息をも含む。喘息の処置は、例えば、年齢が4または5歳以下で、喘鳴症候群を示し、そして“喘鳴小児”と診断されるか、または診断できる主要な医学的懸念の確立された患者カテゴリーの、そして、またしばしば、初期のまたは早期の喘息としてみなされる患者の処置を包含すると理解されるべきである(便宜上、この特定の喘息状態は、“喘鳴小児症候群”と呼ぶ)。
【0068】
喘息の処置における予防効果は、症候発作、例えば、急性喘息または気管支収縮発作の頻度または重症度の減少、肺機能の改善または気道過反応性の改善により証明される。さらに、他の対症療法、すなわち症候発作を、それが起きたとき、制限もしくは中止するための、またはそれを意図した治療、例えば抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド)または気管支拡剤の必要性の減少により証明することができる。喘息における予防効果は、特に“モーニングディッピング(morning dipping)”になる傾向の対象において明らかになり得る。“モーニングディッピング”とは、喘息のかなりの割合に共通する、認識された喘息症候群であり、例えばおおよそ午前4−6の時間、すなわち、前に投与された何らかの喘息対症治療から通常相当離れた時間に起こる喘息発作により特徴付けられる。
【0069】
本発明が適用できる他の炎症性または閉塞性気道疾患および状態は、成人/急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、それらと関連する慢性気管支炎もしくは呼吸困難を含む慢性閉塞性肺、または気道疾患(COPDまたはCOAD)、気腫、ならびに他の薬剤治療、特に、他の吸入薬剤治療の結果生じる気道過反応性の悪化を含む。本発明はまた、急性、アラキジン性(arachidic)、カタール性、クループ性、慢性もしくは結核様(phthinoid)気管支炎を含む、いかなるタイプもしくは起源であれ、気管支炎の処置に適用できる。さらに本発明が適用できる炎症性または閉塞性気道疾患は、例えば、アルミニウム肺症、炭粉沈着症、石綿肺症、石肺症、羽毛肺症(ptilosis)、鉄沈着症、珪肺症、タバコ症および綿肺症を含む、いかなるタイプもしくは起源であれ、塵肺(しばしば気道の閉塞を伴い、慢性または急性であり、粉塵の繰り返し吸引により起こる、肺の炎症性の、一般に職業的な疾患)を含む。
【0070】
好ましくは、ALK−5阻害またはALK−4阻害が介在する疾患または状態は、肺高血圧、肺線維症、肝線維症または骨粗鬆症である。
【0071】
本発明に従って処置される肺高血圧は、原発性肺高血圧(PPH);続発性肺高血圧(SPH);家族性PPH;散発性PPH;前毛細管性肺高血圧;肺動脈性(pulmonary arterial)高血圧(PAH);肺動脈(pulmonary artery)高血圧;特発性肺高血圧;血栓性肺動脈症(TPA);多因性肺動脈症;機能クラスIからIVの肺高血圧;そして、左心室機能障害、僧帽弁膜症、収縮性心内膜炎、大動脈狭窄、心筋症、縦隔線維症、肺静脈還流異常、肺静脈の閉塞性疾患、膠原病性血管疾患、先天性心臓疾患、HIVウイルス感染、薬剤および毒物、例えば、フェンフルラミン、先天性心臓疾患、肺静脈高血圧、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、睡眠時呼吸障害、肺胞低換気障害、高地への慢性暴露、新生児の肺疾患、肺胞−毛細管異形成、鎌状赤血球症、他の凝血障害、慢性血栓塞栓症、結合組織疾患、狼瘡、住血吸虫症、サルコイドーシスまたは肺毛細血管腫症に付随する、関連するまたは、続発する肺高血圧を含む。
【0072】
本発明に従って処置される肺高血圧は、さらに特に、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、睡眠時呼吸障害、肺胞低換気障害、高度への慢性暴露、新生児の肺疾患および肺胞−毛細管異形成を含む、呼吸器系の障害を伴う肺高血圧および/または低酸素血症であり、とりわけ慢性閉塞性肺疾患である。
肺線維症には、特に特発性肺線維症が含まれる。
【0073】
本化合物は、また、筋萎縮症(例えば、廃用性)、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型ジストロフィー)、サルコペニアおよび悪液質を含む筋疾患を処置するために使用してもよい。
【0074】
筋疾患、例えば、筋萎縮およびジストロフィーの処置は、医学的要求が大きく満たされていない。様々な筋障害、主に癌誘発およびHIV筋萎縮または悪液質の範囲で使用するために認可された化合物はほんのわずかであり、さらに数種の薬剤がこれらの適応症に対して未認可で使用されている。加えて、これらの薬剤の大部分は体重減少にのみ取り組んでおり、特異的に筋肉成長および機能に影響しない。それ故、悪液質(例えば、癌、HIVおよびCOPDにおける)、廃用性萎縮、サルコペニアおよびジストロフィーに関連する筋疾患に伴う機能障害を処置するための有効な治療にニーズがある。
【0075】
形質転換成長因子β(TGFβ)のファミリーメンバーであるミオスタチンは、骨格筋量の重要な負の調節因子である。骨格筋肥大を有する筋肉二倍牛およびヒトにおいて、ミオスタチン遺伝子の異なる変異が検出された(McPherron et al (1997) Nature 387:83-90; Schuelke et al (2004) N. Engl. J. Med. 350:2682-2688)。骨格筋成長および障害に対するミオスタチンの重要な役割が広範囲なイン・ビボおよびイン・ビトロ試験で確認された。例えば、マウスにおいてミオスタチンの筋肉特異的過剰発現が筋肉量の喪失を引き起こし(Reisz-Porszasz et al (2003) AJP- Endo. 285:876-888)、一方ミオスタチンヌルマウスは骨格筋量が増加し、体脂肪が減少した(Lin et al (2002) Biochem. Biophys. Res. Comm. 291: 701-706)。ミオスタチンの全身投与によると、悪液質を誘発させ(Zimmers et al (2002) Science 296:1486-1488)、一方例えば、ミオスタチン中和抗体JA16によるミオスタチンの阻害は、野生型およびジストロフィーmdxマウスにおいて筋肉量および強度が増加する(Bogdanovich et al (2002) Nature 420: 418-421.2002; Wagner et al (2002) Ann. Neurol. 52: 832-836; Wolfman et al (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. 100(26): 15842-15846)。加えて、ミオスタチンレベルの増加は、実験および臨床の両方の筋萎縮、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、癌または肝硬変症ならびに高齢のサルコペニアに罹患している患者において、グルココルチコイド処置下で観察された(Ma et al (2003) Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 285: E363-371; Gonzales-Cadavid et al (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. 95: 14938-14943; Reisz-Porszasz et al (2003) AJP- Endo. 285:876-888 および Jespersen et al (2006) Scand. J. Med. Sci. Sports. 16: 74-82 も参照)。こうした知見は、ミオスタチン阻害剤が筋萎縮症およびジストロフィーのための処置剤として高い可能性があることを示す。
【0076】
ミオスタチンの作用方法は、依然としてまだ研究中である。ミオスタチンはSmad2/3を介してシグナル伝達することがかなり十分に確立している(Lee S. J. (2004) Ann. Rev. Dev. Biol. 20: 61-86)。その上、成熟ミオスタチンは、脂肪細胞中でアクチビンIIb型およびアクチビン受容体様キナーゼ(ALK)受容体を介して作用することが示されている(Rebbarpragada et al (2003) Mol. Cell. Biol. 23: 7230-7242)。しかしながら、骨格筋細胞におけるそれぞれの知見について記載はない。ミオスタチンは分化を阻害し、ALKシグナル伝達を介して萎縮を引き起こすと考えられている。その上、ALKシグナル伝達の阻害によって、skMC分化が促進され、そしてskMC肥大が引き起こされる。
【0077】
骨粗鬆症は、低骨量および骨組織の微細構造の劣化、その結果として生じる骨脆弱性および骨折の危険性の増加により特徴付けられる全身性骨格障害である。骨粗鬆症症候群は、原発性障害、例えば、閉経後または加齢性骨粗鬆症、および疾患状態または薬物療法に伴う続発性状態を含む多面的である。骨量および構造と共に骨マトリックスの機械的特性および組成が、骨が骨折に抵抗することができるかの重大な決定要因である。
【0078】
従って、更なる局面では、本発明は、カルシウム減少または再吸収の増加に関連した、あるいは骨形成を刺激すること、および骨中のカルシウムを固定することが望ましい、骨状態を防止または処置する方法であって、有効量の本発明の薬剤、またはその薬学的に許容されかつ薬学的に開裂可能なエステル、または酸付加塩を、こうした処置を必要とする患者に投与する方法を含む。
【0079】
更に別の局面では、本発明は、カルシウム減少のまたは再吸収の増加に関連した、あるいは骨形成を刺激すること、および骨中のカルシウムを固定することが望ましい、骨状態を防止または処置する医薬組成物であって、本発明の薬剤、またはその薬学的に許容されかつ薬学的に開裂可能なエステル、または酸付加塩と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を混合して含んでなる組成物を含む。
【0080】
本明細書の下記の実施例の化合物は、一般的に1μM未満のIC50値を有する。例えば、実施例1.1、1.2、1.3、1.4、1.6、および1.7の化合物は、それぞれ0.042、0.036、0.005、0.150、0.015および0.005μMのIC50値を有する。
【0081】
ALK5のキナーゼ活性は、一般的な基質であるカゼインへの放射線標識リン酸(radiolabelled phosphate)[33P]の取り込みを測定することにより評価する。ヒトALK5のキナーゼドメイン(アミノ酸200−503)をN末端ヒスチジンタグに融合させる。ALK5のキナーゼ活性は、アミノ酸204の点変異(トレオニンからアスパラギン酸へ改変、ALK5 T204D)を介して構成的になっており、該キナーゼ構築物を昆虫細胞中でバキュロウイルス発現構築物から発現されるように設計する。精製した、組み換え発現させたヒスチジンタグ付きALK5 T204Dタンパク質を、5.4mg/mlで50mM Tris−HCl pH8.0、150mM NaCl、5mM DTTに溶解させる。ALK5 T204Dをアッセイバッファー(アッセイバッファー:20mM Tris−HCl pH7.4、10mM MgCl、2mM MnCl)に、使用日に2.5μg/mlで溶解させる。
【0082】
試験化合物および参照化合物を、DTTを含まない5%(v/v)のDMSOを含むアッセイバッファーに溶解する。試験および参照化合物のストック溶液を4.5%(v/v)のDMSOを含むDTT(1.25mM)を加えたアッセイバッファーに希釈する。10μlの試験または参照化合物を96ウェルU底プレートの適切なウェルに加える。全酵素活性をALK5 T204D活性をALK5キナーゼ阻害剤参照化合物の非存在下で測定することにより決定する。非特異的結合(NSB)をALK5 T204Dの活性をALK5キナーゼ阻害剤参照化合物の存在下で測定することにより決定する。10μlの脱ホスホリル化カゼイン貯蔵溶液(脱ホスホリル化カゼインを20mg/mlでddHOに溶解させる)をウェルごとに加える(200μg/ウェル 最終アッセイ濃度)。20μlのALK5 T204D(2.5μg/ml 溶液)をウェルごとに加える(50ng/ウェル 最終アッセイ濃度)。プレートを室温で10分間インキュベートする。
【0083】
10μlのATP ミックス(mix)をウェルに加え、反応を開始する(0.66nMの[33P]ATP/1μM 非標識ATP/ウェル 最終アッセイ濃度)。ATP mixは下記のとおりに製造する、非標識ATP(3mM)をddHOに溶解し、そしてpH7.4に調節する。[33P]ATPの貯蔵濃度は10μCi/μlである。適切な量の[33P]ATPを、ウェルあたりの最終アッセイ濃度が0.1μCiとなるように、非標識ATP溶液に加える。ATP mixを加え、プレートを室温で50分間インキュベートする。キナーゼ反応を50μLの停止バッファー(Stop Buffer)(20mM Tris−HCl pH7.4、10mM EDTA)の添加により終了する。
【0084】
反応プレートから75μl/ウェルをMultiscreen-IPプレートに移す。MultiScreen-IPプレートはウェルあたり50μLの70%(v/v)エタノールを加え、5分間室温でインキュベートすることにより調製する。このエタノールをMultiScreen HTS Vaccum Manifold装置(Millipore,Cat no: MSVMHT500)を介して吸引により除去する。プレートを200μl/ウェルのddHOを加えることにより2回洗浄する)。MultiScreen-IPプレートを室温で30分間インキュベートし、カゼインをプレートに結合させる。MultiScreen-IPプレートを200μl/ウェルの100mMのリン酸溶液を加えることにより3回洗浄し、ガスケットをMultiScreen-IPプレートの裏側から注意深く除去し、プレートを30分間にわたり乾燥させる。MultiScreen-IPプレートをバックシールし(backsealed)、50μLのMicroscintTM20を加え、次にプレートをトップシールし(topsealed)、放射線標識カゼインを検出し、33Pシンチレーションプロトコールを使用するTopCountTMプレートリーダーで定量する。
【0085】
本発明の薬剤は、また他の薬物物質、例えば、抗炎症剤、気管支拡張、抗ヒスタミン剤、充血除去剤または鎮咳薬物物質と組み合わせて、特に前記したような閉塞性または炎症性気道疾患の処置において、例えば、こうした薬物の治療効果の増強剤として、またはこうした薬物の必要用量もしくは潜在的副作用を減少する手段として、使用するための共治療剤として有用である。本発明の薬剤は、1種以上の他の薬物物質と固定医薬製剤として混合されていてよく、あるいは、他の薬物物質の前に、他の薬物物質と同時にまたは後に、別々に投与してもよい。
【0086】
こうした抗炎症剤は、ステロイド、特にグルココルチコステロイド、例えば、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクラメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、シクレソニドまたはフロン酸モメタゾン、またはWO 02/88167、WO 02/12266、WO 02/100879、WO 02/00679[Novartis](とりわけ実施例3、11、14、17、19、26、34、37、39、51、60、67、72、73、90、99および101のもの)、WO 03/35668、WO 03/48181、WO 03/62259、WO 03/64445、WO 03/72592、WO 04/39827およびWO 04/66920に記載されているステロイド;非ステロイドのグルココルチコイド受容体アゴニスト、例えば、DE 10261874、WO 00/00531、WO 02/10143、WO 03/82280、WO 03/82787、WO 03/86294、WO 03/104195、WO 03/101932、WO 04/05229、WO 04/18429、WO 04/19935、WO 04/26248およびWO 05/05452に記載されているもの;LTB4アンタゴニスト、例えば、BIIL284、CP−195543、DPC11870、LTB4エタノールアミド、LY293111、LY255283、CGS025019C、CP−195543、ONO−4057、SB209247、SC−53228、および、US 5451700およびWO 04/108720に記載されているもの;LTD4アンタゴニスト、例えば、モンテルカスト、プランルルカスト、ザフィルカスト、アコレート、SR2640、Wy−48,252、ICI 198615、MK−571、LY−171883、Ro24−5913およびL−648051;ドーパミン受容体アゴニスト、例えば、カベルゴリン、ブロモクリプチン、ロピニロールおよび4−ヒドロキシ−7−[2−[[2−[[3−(2−フェニルエトキシ)−プロピル]スルホニル]エチル]アミノ]エチル]−2(3H)−ベンゾチアゾロンおよびそれらの薬学的に許容される塩(Viozan(登録商標)−AstraZenecaの塩酸塩);PDE4阻害剤、例えば、シロミラスト(Ariflo(登録商標) GlaxoSmithKline)、ロフルミラスト(Byk Gulden)、V−11294A(Napp)、BAY19−8004(Bayer)、SCH−351591(Schering-Plough)、アロフィリン(Almirall Prodesfarma)、PD189659/PD168787(Parke-Davis)、AWD−12−281(Asta Medica)、CDC−801(Celgene)、SelCID(TM)CC−10004(Celgene)、VM554/UM565(Vernalis)、T−440(田辺)、KW−4490(協和発酵工業)、GRC3886(Oglemilast、Glenmark)、WO 92/19594、WO 93/19749、WO 93/19750、WO 93/19751、WO 99/16766、WO 01/13953、WO 03/104204、WO 03/104205、WO 04/000814、WO 04/000839およびWO 04/005258(Merck)、WO 04018450、WO 04/018451、WO 04/018457、WO 04/018465、WO 04/018431、WO 04/018449、WO 04/018450、WO 04/018451、WO04/018457、WO 04/018465、WO 04/019944、WO 04/019945、WO 04/045607、WO 04/037805、WO 04/063197、WO 04/103998、WO 04/111044、WO 05012252、WO 05012253、WO 05/013995、WO 05/030212、WO 05/030725、WO 05/087744、WO 05/087745、WO 05/087749およびWO 05/090345ならびにWO 98/18796およびWO 03/39544に記載されているもの;A2aアゴニスト、例えば、EP 409595A2、EP 1052264、EP 1241176、WO 94/17090、WO 96/02543、WO 96/02553、WO 98/28319、WO 99/24449、WO 99/24450、WO 99/24451、WO 99/38877、WO 99/41267、WO 99/67263、WO 99/67264、WO 99/67265、WO 99/67266、WO 00/23457、WO 00/77018、WO 00/78774、WO 01/23399、WO 01/27130、WO 01/27131、WO 01/60835、WO 01/94368、WO 02/00676、WO 02/22630、WO 02/96462、WO 03/086408、WO 04/039762、WO 04/039766、WO 04/045618およびWO 04/046083に記載されているもの;およびA2bアンタゴニスト、例えば、WO 02/42298およびWO 03/042214に記載されているものを含む。
【0087】
このような気管支拡張剤は、β−2−アドレナリン受容体アゴニストを含む。適切なβ−2−アドレナリン受容体アゴニストは、アルブテロール(サルブタモール)、メタプロテレノール、テルブタリン、サルメテロール、フェノテロール、プロカテロール、および、とりわけ、フォルモテロール、カルモテロール、GSK159797およびそれらの薬学的に許容される塩、およびWO 00/75114(この文献は、引用によって本明細書に組み込まれる)の式Iの化合物(遊離または塩または溶媒和物形態)、好ましくはその実施例の化合物、とりわけ式:
【化20】

の化合物およびその薬学的に許容される塩、ならびにWO 04/16601の式IまたはWO 04/087142の式Iの化合物(遊離または塩または溶媒和物形態)を含む。更に、適切なβ−2−アドレナリン受容体アゴニストは、EP 147719、EP 1440966、EP 1460064、EP 1477167、EP 1574501、JP 05025045、JP 2005187357、US 2002/0055651、US 2004/0242622、US 2004/0229904、US 2005/0133417、US 2005/5159448、US 2005/5159448、US 2005/171147、US 2005/182091、US 2005/182092、US 2005/209227、US 2005/256115、US 2005/277632、US 2005/272769、US 2005/239778、US 2005/215542、US 2005/215590、US 2006/19991、US 2006/58530、WO 93/18007、WO 99/64035、WO 01/42193、WO 01/83462、WO 02/66422、WO 02/70490、WO 02/76933、WO 03/24439、WO 03/42160、WO 03/42164、WO 03/72539、WO 03/91204、WO 03/99764、WO 04/16578、WO 04/22547、WO 04/32921、WO 04/33412、WO 04/37768、WO 04/37773、WO 04/37807、WO 04/39762、WO 04/39766、WO 04/45618、WO 04/46083、WO 04/80964、WO 04/087142、WO 04/89892、WO 04/108675、WO 04/108676、WO 05/33121、WO 05/40103、WO 05/44787、WO 05/58867、WO 05/65650、WO 05/66140、WO 05/70908、WO 05/74924、WO 05/77361、WO 05/90288、WO 05/92860、WO 05/92887、WO 05/90287、WO 05/95328、WO 05/102350、WO 06/56471、WO 06/74897またはWO 06/8173に記載されているもの、およびまたその化合物のような化合物を含む。
【0088】
こうした気管支拡張剤は、また、他の抗コリン剤または抗ムスカリン性薬剤、特にイプラトロピウムブロマイド、オキシトロピウムブロマイド、チオトロピウム塩、グリコピロレート、CHF4226(Chiesi)およびSVT−40776、ならびに、EP424021、US3714357、US5171744、US2005/171147、US2005/182091、WO 01/04118、WO 02/00652、WO 02/51841、WO 02/53564、WO 03/00840、WO 03/33495、WO 03/53966、WO 03/87094、WO 04/18422、WO 04/05285、WO 04/96800、WO 05/77361およびWO 06/48225に記載されているものを含む。
【0089】
適切なデュアル抗炎症および気管支拡張剤は、デュアルβ−2アドレナリン受容体アゴニスト/ムスカリンアンタゴニスト、例えば、US 2004/0167167、US 2004/0242622、US 2005/182092、US 2005/256114、US 2006/35933、WO 04/74246、WO 04/74812、W04/89892およびWO 06/23475に開示されているものを含む。
【0090】
適切な抗ヒスタミン薬物物質は、塩酸セチリジン、レボセチリジン、アセトアミノフェン、フマル酸クレマスチン、プロメタジン、ロラチジン、デスロラチジン、ジフェンヒドラミンおよび塩酸フェキソフェナジン、アクリバスチン(activastine)、アステミゾール、アゼラスチン、ジメチンデン、エバスチン、エピナスチン、レボカバスチン、ミゾラスチン、およびテルフェナジン(terfenadine)ならびにWO 03/099807WO 04/026841およびJP 2004107299に開示されているものを含む。
【0091】
本発明の更なる態様によっては、本発明の薬剤は、補助剤または他の治療のアジュバントとして、例えば、骨吸収阻害剤を使用する治療、例えば、骨粗鬆症治療として、特にカルシウム、エルカトニン(ealeitonin)またはそれらの類似体もしくは誘導体、例えば、サケ、ウナギまたはヒトカルシトニン、ステロイドホルモン、例えば、エストロゲン、部分的エストロゲンアゴニストまたはエストロゲン−ゲスターゲン組合せ剤、SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)、例えば、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、TSE−424、FC1271、チボロン(Livial A)、ビタミンDまたはそれらの類似体またはPTH、PTH断片またはPTH誘導体、例えば、PTH(1−84)、PTH(1−34)、PTH(1−36)、PTH(1−38)、PTH(1−31)NH2またはPTS893を使用する治療に使用してもよい。
【0092】
前述に従って、本発明は、また、閉塞性または炎症性気道疾患の処置法であって、それを必要とする対象、特にヒト対象に、本発明の薬剤またはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物を投与することを含んでなる方法を提供する。別の局面においては、本発明は、閉塞性または炎症性気道疾患の処置用薬剤の製造における使用のための、上記に述べられている本発明の薬剤またはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物を提供する。
【0093】
本発明の薬剤は、任意の適切な経路で、例えば、経口で、例えば、錠剤またはカプセルの形で;非経腸的に、例えば、静脈内に;例えば、乾癬の処置で皮膚に局所的に;例えば、枯草熱の処置で経鼻で;または、好ましくは、閉塞性または炎症性気道疾患の処置で吸入により投与してもよい。特に、本発明の薬剤は、COPDおよび喘息の処置のために吸入可能製剤として提供されてもよい。
【0094】
更なる局面において、本発明はまた、遊離形または薬学的に許容される塩形または溶媒和物形の本発明の薬剤を、所望により、その薬学的に許容される希釈剤または担体と一緒に含んでなる医薬組成物を提供する。このような組成物は従来用いられている希釈剤または賦形剤およびガレヌス分野で公知の技術を使用して製造され得る。従って、経口投与形態は、錠剤およびカプセルを含んでもよい。局所投与用製剤は、クリーム、軟膏、ゲルまたは経皮送達システム、例えば、パッチの形であってもよい。吸入用組成物は、エアロゾルもしくは他の噴霧可能製剤または乾燥粉末製剤を含んでもよい。
【0095】
活性成分の吸入可能形がエアロゾル組成物であるとき、吸入デバイスは計量、例えば、10〜100μl、例えば、25〜50μlの組成物を送達するように適応させたバルブを備えたエアロゾルバイアル、すなわち計量吸入器として知られているデバイスであってもよい。適切なこのようなエアロゾルバイアルおよびエアロゾル組成物をその中に圧力下で入れる方法は吸入治療の本技術分野の当業者によく知られている。例えば、エアロゾル組成物は、例えば、EP−A−0642992に記載されている被覆された缶から投与してもよい。活性成分の吸入可能な形態が噴霧可能水性、有機性または水性/有機性分散体であるとき、吸入デバイスは公知の噴霧器、例えば、1〜50ml、一般に1〜10mlの分散体を含んでもよい、例えば、慣用の含気性噴霧器、例えば、エアージェット噴霧器、または超音波噴霧器;または慣用の噴霧器よりも非常に少量の噴霧量、例えば、10〜100μlを可能とする、ソフト・ミストまたはソフト・スプレー吸入器として呼ばれることもある携帯型噴霧器、例えば、電子的に制御されたデバイス、例えば、AERx(Aradigm、US)またはAerodose(Aerogen)、または機械デバイス、例えば、RESPIMAT(Boehringer Ingelheim)噴霧器であってよい。活性成分の吸入可能形態が微粉砕された粒子状形であるとき、吸入デバイスは、例えば、投与単位の(A)および/または(B)を含む乾燥粉末を含むカプセルまたはブリスターから乾燥粉末を送達するために適用される乾燥粉末吸入デバイス、または例えば、作動あたり投与単位の(A)および/または(B)を含む3−25mgの乾燥粉末を送達するように適応されている複数投与用の乾燥粉末吸入(MDPI)デバイスであってもよい。乾燥粉末組成物は好ましくは希釈剤または担体、例えば、ラクトース、および水分による生成物の性能低下に対する保護に役立つ化合物、例えば、ステアリン酸マグネシウムを含む。適切なこのような乾燥粉末吸入デバイスは、US 3991761(AEROLIZERTMデバイスを含む)、WO 05/113042、WO 97/20589(CERTIHALERTMデバイスを含む)、WO 97/30743(TWISTHALERTMデバイスを含む)およびWO 05/37353(GYROHALERTMデバイスを含む)に開示されているデバイスを含む。
【0096】
本発明は、また(A)吸入可能な形態の遊離形態の本発明の薬剤、またはその薬学的に許容される塩または溶媒和物;(B)こうした吸入可能な形態の化合物を、吸入可能な形態の薬学的に許容される担体と共に含んでなる吸入可能な形態の薬物;(C)こうした吸入可能な形態の化合物を、吸入デバイスと組み合わせて含んでなる医薬生成物;および(D)吸入可能な形態のこうした化合物を含む吸入デバイスを含む。
【0097】
本発明を実施する際に使用される本発明の薬剤の投与量は、もちろん、例えば、処置される特定の状態、所望の効果および投与形式に依存して変化する。一般に、吸入による投与の適切な1日用量は、患者あたり0.0001〜30mg/kg、一般に0.01〜10mgであり、一方、経口投与の適切な1日用量は、0.01〜100mg/kgである。
【0098】
まったく予測できないことに、また式IaおよびIbの化合物が、有利な薬理学的特性を有し、そしてチロシンキナーゼの活性を阻害することも見出した。
【0099】
様々な受容体チロシンキナーゼ阻害剤が、癌の処置に有用であることは、十分に確立されているが、しかしながら、どんな特定の化合物が、どんな特定のタイプの癌の処置にどんな特定のチロシンキナーゼ受容体で適合するかは明らかではない。TRK受容体(NTRK遺伝子)は、受容体またはそのリガンド(ニューロトロフィン NGF、BDNF、またはNT3/4)の量の増加を介して癌の発症および進行と相関関係にある。TRKの高発現が、ウイルムス腫瘍、前立腺癌および膵臓癌に見出される。TRKCの高発現は、癌の顕著な特徴である。神経芽細胞腫では、高TRKB発現は、侵攻的な治療不可能な腫瘍に関連があり、そして標準的な細胞障害性療法に対する抵抗力を示すことに関連がある。癌転移のマウスモデルにおいて、NTRK2遺伝子(TRKBタンパク質)は、転移を誘発し、そしてこの遺伝子を取り除くと、転移の可能性を戻す。証拠の大部分が、TRK酵素を阻害すると、TRKが関連している様々な癌の増殖および広がりを阻止するであろうことを示唆している。更に、TRKの活性化変異は、7%の癌に存在する。従って、TRKの阻害剤である本発明の化合物は、癌、特に上記に言及されている特定の癌の処置に有用である。
【0100】
更なる研究により、受容体の酵素活性の部分的喪失につながるヒトのTRKBにおける変異が発見された。この遺伝子障害は、食欲の増加および肥満(過食肥満)をもたらす。同様な結果は、マウスモデルで得られ、従って、TRKB活性を低下させると、摂食行動を調節するのに役立ち、そして、拒食症のような障害の処置に有用であろうという仮説を強化する。
【0101】
まったく意外なことに、また式IaおよびIbの化合物は、急性リンパ系癌およびグリア芽腫に対する癌療法の有用な標的でもあるFLT−3およびROSを阻害するということが見出された。
【0102】
いくつかの証拠によれば、NTRK1(TrkA)とその密接に関連しているファミリーメンバーNTRK2(TrkB)およびNTRK3(TrkC)は、おそらく、受容体、そのリガンド(Nerve Growth Factor, Brain Derived Neurotropic Factor, Neurotrophins)のいずれか、あるいは両方の上方制御によって、癌の発症および進行に関わっている。従って、本発明の化合物は、癌の発症および/または進行を阻害することによって癌の処置に有用である。
【0103】
Trkファミリーキナーゼ受容体が腫瘍形成を進展させるメカニズムは、一部しか理解されていない。Trkキナーゼ受容体は、腫瘍細胞増殖および生存ならびに分化、遊走および転移を制御することができるということが示されている。最近になって、NTRK2は、アノイキス(細胞のそのマトリックスへの接着喪失によって誘発されるアポトーシス)の強力な阻害剤であるということが示されている。ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ/タンパク質キナーゼBシグナル伝達経路を活性化することによって、NTRK2は、3次元培養において非形質転換上皮細胞の生存を促進し、そして免疫無防備状態のマウスのこうした細胞の腫瘍形成および転移を誘発することが示された。
【0104】
いくつかの研究によれば、Trkファミリーメンバー、殊に膵臓癌におけるNTRK1およびNTRK2の役割を示唆している;i)Trkファミリーおよびこれらの同族リガンドの高発現が、膵臓癌に罹患している患者からの組織サンプル中に示された。ii)NTRK2過剰発現は、膵臓癌の悪性の、高い転移性の表現型につながりがあることが最近になって示された。(iii)NTRK1/NGFの高発現は、増殖の増大、浸潤する挙動、および膵臓癌患者における疼痛と相関関係にあった。(iv)神経成長因子は、膵臓癌細胞株の浸潤可能性を増大することが示されている。最近の研究によって、膵臓癌のTrkAの過剰発現は、TrkAのプロモーター領域中の負に制御されたAP−1部位のメチル化によって引き起こされるはずであることが示唆された。
【0105】
NTRK1を含む遺伝子再構成は、乳頭様甲状腺癌の一部の顕著な特徴である。甲状腺特異的TRK癌遺伝子は、NTRK1遺伝子を、三つの異なった活性遺伝子、すなわち、TPR、TPM3、およびTFGで再構成することによって発生する。
【0106】
TrkA中のいくつかの機能喪失型変異は、疼痛感覚の欠如および無汗によって特徴付けられる障害である先天的無汗無痛症(CIPA)の要因である。より最近になって、アンタゴニストTrkA抗体は、炎症性および神経障害性疼痛動物モデルにおいて有効であることが示されている。加えて、TrkAおよびNGFは、癌関連疼痛を引き起こすのに関連している。NGFは、腫瘍細胞によって分泌され、そして腫瘍浸潤マクロファージは、末梢の疼痛線維上に位置しているTrkAを直接的に刺激するNGFを分泌することが示された。マウスとラットの両方の様々な腫瘍モデルを用いて、NGFを、モノクローナル抗体を用いて無力化させれば、癌関連疼痛が最大耐量のモルフィンと同様かまたはより優れた程度まで抑制されることが示された。それ故、TrkAの選択的阻害剤は、癌に伴う疼痛の処置に使用することができる。
Trk阻害剤の他の非腫瘍適応症には、アトピー性皮膚炎および乾癬が含まれる。
【0107】
本発明の化合物は、Tel(ETV6)転写因子の二量化ドメインおよび全長のrTrkAおよびmNGFを共発現するBa/F3細胞と融合させることによって、BaF3細胞と比較して、活性化TrkA、B、またはCを発現する親Ba/F3細胞の細胞増殖を選択的に阻害する能力を測定するためにアッセイする。
【0108】
細胞TrkA/B/C依存性増殖の阻害
ルシフェラーゼを発現するBa/F3マウス前B細胞を、Tel−TrkA/B/CまたはTrkA/NGFで形質転換する。細胞は、ペニシリン50μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mLおよびL−グルタミン200mMを補充したRPMI/10%ウシ胎子血清(RPMI/FCS)中で保存する。非形質転換Ba/F3細胞は、マウス組み換えIL3を加えて、同様に保存する。細胞は、384−ウェルプレートフォーマットに、50μLの培地中、5000細胞/ウェルで分配する。本発明の化合物を溶解し、そしてジメチルスルホキシド(DMSO)中に希釈する。12点1:3階段希釈をDMSO中に行い、一般に10mM〜0.05μMの範囲の濃度勾配を作製する。細胞を、50nLの希釈化合物と共に加え、そして細胞培養インキュベーター中で48時間インキュベートする。蛍光シグナルを、Bright glo(登録商標)(Promega)ルシフェラーゼ基質を加えた後、測定する。IC50値を、12点の濃度でのそれぞれの化合物の阻害パーセンテージの直線回帰分析によって計算する。
【0109】
Upstate KinaseProfilerTM−放射−酵素フィルター結合アッセイ(Radio-enzymatic filter binding assay)
本発明の化合物を、一団のキナーゼの個々のメンバー(一部であり、非制限的なキナーゼリストには、次のものが含まれる:Abl、オーロラ、cSrc、TPR−Met、Tie2、MET、FGFR3、Axl、Bmx、BTK、c−kit、CHK2、Flt3、MST2、p70S6K、PDGFR、PKB、PKCα、Raf、ROCK−II、Rsk1、SGK、TrkA、TrkBおよびTrkC)を阻害する能力の有無を評価する。化合物は、この一般的なプロトコールに従い、最終濃度10μMで2回テストされる。このキナーゼバッファー組成物および基質は、“Upstate KinaseProfilerTM”パネル中に含まれている異なるキナーゼに対して変わる。化合物は、この一般的なプロトコールの後、最終濃度10μMで2回テストされる。キナーゼバッファー(2.5μL、10×(必要に応じてMnClを含む))、活性キナーゼ(0.001−0.01 Units;2.5μL)、キナーゼバッファー中の、特異的またはポリ(Glu4−Tyr)ペプチド(5−500μMまたは.01mg/ml)およびキナーゼバッファー(50μM;5μL)を、氷上でエッペンドルフ中で混合する。Mg/ATPmix(10μL;67.5(または33.75)mMMgCl、450(または225)μ MATPおよび1μCi/μl[γ−32P]−ATP(3000Ci/mmol))を加え、そしてこの反応物を約30℃で約10分間インキュベートする。この反応混合物を、2cm×2cmP81(ホスホセルロース、正の電荷を持つペプチド基質のため)またはWhatman No.1(ポリ(Glu4−Tyr)ペプチド基質のため)ペーパースクエアにスポット(20μL)する。このアッセイ・スクエアを、それぞれ5分間、0.75%リン酸で4回洗浄し、そして5分間アセトンで一度洗浄する。このアッセイ・スクエアを、シンチレーションバイアルに移し、5mlのシンチレーションカクテルを加え、そしてこのペプチド基質に対する32P取り込み(cpm)をベックマンシンチレーションカウンターで定量化する。阻害%をそれぞれの反応に対して計算する。
実施例3.1〜3.7の化合物は、例えば、すべてが1μM未満のIC50を示す。
【0110】
まったく意外なことには、また式IaおよびIbの化合物は、有利な薬理学的特性を有し、そして脂質キナーゼ、例えば、PI3−キナーゼおよび/またはPI3−キナーゼ関連タンパク質キナーゼファミリーのメンバー(これらは、PIKKともよばれ、そしてDNA−PK、ATM、ATR、hSMG−1およびmTORを含む)、例えば、DNAタンパク質キナーゼの活性を阻害し、そして前記キナーゼの活性に依存している疾患または障害を処置するのに用いることができる。
【0111】
ホスファチジルイノシトール−3’−OHキナーゼ(PI3K)経路は、細胞周期の進行、増殖、運動性、代謝および生存を含む多数の細胞機能にその影響を及ぼす中枢シグナル伝達経路の一つである。受容体チロシンキナーゼが活性化されると、PI3Kは、ホスファチジルイノシトール−(4,5)−二リン酸をリン酸化し、その結果膜結合ホスファチジルイノシトール−(3,4,5)−三リン酸に達する。後者は、ホスファチジルイノシトール−(3,4,5)−三リン酸を、キナーゼのプレクステリン相同(PH)ドメインと結合させることによって、様々なタンパク質キナーゼの細胞質から細胞膜への移転を促進する。PI3Kのキーポイントになる下流の標的であるキナーゼは、ホスホイノシチド−依存性キナーゼ1(PDK1)およびAKT(これは、またタンパク質キナーゼBとも呼ばれている)を含む。次いでこうしたキナーゼのリン酸化は、GSK3、mTOR、PRAS40、FKHD、NF−κB、BAD、カスパーゼ−9などのようなメディエーターを含む、多数の他の経路の活性化または非活性化を可能にする。PI3K経路の重要な負のフィードバックメカニズムは、PTENであり、ホスファチジルイノシトール−(3,4,5)−三リン酸の脱リン酸化に触媒作用を及ぼし、ホスファチジルイノシトール−(4,5)−二リン酸をリン酸化するホスファターゼである。すべての固形癌の60%以上は、PI3K経路の構造的活性化を可能にする、PTENが突然変異して不活性な形に至るものである。ほとんどの癌は固形癌であるので、こうした結果は、P13K自体、あるいはP13K経路中のそれぞれの下流のキナーゼを標的にすれば、多くの癌における異常調節を軽減するか、または消滅しさえし、従って正常な細胞機能および挙動を回復するための見込みのあるアプローチを提供するという証拠を提供している。しかしながら、このことによって、他のメカニズムが、本発明の薬剤のようなP13K活性を修正する薬剤の有効な効果が要因でありうるということを排除しない。
【0112】
遊離または薬学的に許容される塩形態での式IaおよびIbの化合物は、ホスファチジルイノシトール 3−キナーゼ酵素に対するそれらの阻害効果を参酌すると、一種以上のPI3キナーゼファミリーメンバー、特にPI3キナーゼ酵素の活性(正常な活性または特に過活性を含む)によって介在される状態、例えば、増殖性、炎症性またはアレルギー性状態、閉塞性気道疾患および/または、移植に関連して一般に起こる状態の処置に有用である。
【0113】
本発明に従って、“処置”は、治療的、例えば、対症的であってもよいし、および/または予防的であってもよい。温血相物、特にヒトの処置が好ましい。
【0114】
本発明の局面は、良性または悪性腫瘍、脳腫瘍、腎臓癌、肝臓癌、副腎癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、胃腫瘍、卵巣癌、結大腸癌、直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、膣癌または甲状腺癌、肉腫、グリア芽腫、多発性骨髄腫、または胃腸癌、特に、結大腸癌または結腸直腸腺腫または頚頭腫瘍、表皮過剰増殖、乾癬、前立腺肥大、新生組織形成、表皮性状(epithelial character)の新生組織形成、リンパ腫、乳癌または白血病から選択される増殖性疾患の処置における使用またはその使用のための式IaまたはIbの化合物を提供する。他の疾患には、コーデン症候群、レルミット・デュクロ病(Lhermitte-Dudos disease)およびバナヤン−ゾナナ症候群(Bannayan-Zonana syndrome)、またはPI3K/PK3経路が異常に活性化されている疾患が含まれる。
【0115】
本発明による化合物は、また炎症性または閉塞性気道(呼吸管)疾患の処置に有益であり、この結果、例えば、組織損傷、気道炎症、気管支過敏症、リモデリングまたは疾患の進行の減少に至る。本発明が適用できる炎症性または閉塞性気道疾患には、内因性(非アレルギー性)喘息および外因性(アレルギー性)喘息の両方を含む、いかなるタイプもしくは起源であれ、喘息が含まれ、例えば、軽度喘息、中度喘息、重度喘息、気管支喘息、運動誘発性喘息、職業性喘息、および細菌感染後に誘発される喘息がある。喘息の処置は、また、主要な医学的懸念の確立された患者カテゴリーであり、現在、しばしば初期のまたは早期の喘息として同定される、喘鳴症状を示し、“喘鳴小児”と診断されるまたは診断可能である対象、例えば、4または5歳以下の対象の処置を包含すると理解されるべきである(便宜上、この特定の喘息状態は、“喘鳴小児症候群”と呼ぶ)。
【0116】
喘息の処置における予防有効性は、症候発作、例えば、急性喘息または気管支収縮発作の頻度または重症度の減少、肺機能の改善または気道反応亢進の改善により証明されうる。更に、他の対症療法、すなわち症候発作を、それが起きたとき、制限もしくは中止するための、またはそれを意図した治療、例えば抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド)または気管支拡張剤の必要性の減少により証明することができる。喘息における予防利益は、特に“モーニングディッピング(morning dipping)”になる傾向の対象において明らかになり得る。“モーニングディッピング”とは、喘息のかなりの割合に共通する、認識された喘息症候群であり、例えばおおよそ午前4〜6時の間、すなわち、前に投与された何らかの喘息対症治療から通常相当離れた時間に起こる喘息発作により特徴付けられる。
【0117】
式IaおよびIbの化合物は、本発明が適応できる他の炎症性または閉塞性気道疾患および状態に有用であり得、そして慢性気管支炎またはそれに伴う呼吸困難、肺気腫、ならびに他の薬物治療、特に他の吸入薬物治療の結果として起こる気道過敏症の悪化を含むそして急性肺傷害(ALI)、成人/急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺、気道または肺疾患(COPD、COADまたはCOLD)を含む。
【0118】
本発明は、また、例えば、急性、アラキジン性(arachidic)、カタール性、クループ性、慢性もしくは結核様(phthinoid)気管支炎を含む、いかなるタイプもしくは起源であれ、気管支炎の処置に適用できる。更に本発明が適用できる炎症性または閉塞性気道疾患は、例えば、アルミニウム肺症、炭粉沈着症、石綿肺症、石肺症、羽毛肺症、鉄沈着症、珪肺症、タバコ症および綿肺症を含む、いかなるタイプもしくは起源であれ、塵肺(しばしば気道の閉塞を伴い、慢性でも、急性でも、そして粉塵の繰り返し吸引により引き起こされる、肺の炎症性の、一般に職業的な疾患)を含む。
【0119】
本発明化合物は、抗炎症活性、特に、好酸球活性の阻害に関連して考慮すると、また、気道および/または肺を襲う過好酸球増加症、ならびに例えば、レフラー症候群の結果として起こるか、同時に起こる気道の好酸球関連疾患、好酸球肺炎、寄生虫(特に後生動物)の侵入(熱帯性好酸球増多症を含む)、気管支肺アスペルギルス症、結節性多発動脈炎(チャーグ・ストラウス症候群を含む)、好酸球性肉芽腫、および薬物反応によって引き起こされる気道を冒す好酸球関連疾患を含む、好酸球関連疾患、例えば、好酸球増多症、特に、気道の好酸球関連疾患(例えば、肺組織の病的な好酸球浸潤を含む)の処置に有用である。
【0120】
本発明の化合物は、また、皮膚の炎症性またはアレルギー性状態、例えば、乾癬、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、多形滲出性紅斑、ジューリング疱疹状皮膚炎、強皮症、白斑、過敏性血管炎、じんましん、水庖性類天疱瘡、紅斑性狼瘡、天疱瘡、後天性表皮水疱症、および他の皮膚の炎症性またはアレルギー性状態の処置に有用である。
【0121】
本発明の化合物は、また、他の疾患または状態の処置のために使用することができ、例えば、炎症性要素を有している疾患または状態、例えば、結膜炎、乾燥性角結膜炎および春季結膜炎のような眼の疾患および状態、アレルギー性鼻炎を含む鼻を襲う疾患、そして自己免疫反応が関連するか、または自己免疫要素または原因を有している炎症性疾患の処置のために使用することができ、これには、自己免疫血液学的疾患(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球貧血および特発性血小板減少性紫斑病)、全身性エリスマトーデス、多発性軟骨炎、スクレドーマ、ウェゲナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、ステーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病)、内分泌性眼症状、グレブス病、サルコイドーシス、肺胞炎、慢性過敏性肺臓炎、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、ブドウ膜炎(前部および後部)、乾燥性核結膜炎、および春季角結膜炎、間質性肺線維症、乾癬性関節炎および糸球体腎炎(ネフローゼ症候群、例えば、特発性ネフローゼ症候群または微小変化型ネフロパシーを伴うかまたは伴わない)が含まれる。
【0122】
更に、本発明は、増殖性疾患、炎症性疾患、閉塞性呼吸器疾患、または移植に関連して一般に起こる疾患を処置するための薬剤を製造するための、本明細書中の定義による化合物、またはその薬学的に許容される塩、または水和物もしくは溶媒和物の使用を提供する。
【0123】
本発明は、上記または下記に言及されている疾患であり、その疾患が、PI3−キナーゼ−関連タンパク質キナーゼファミリーの一種以上のキナーゼ、とりわけPI3キナーゼ(PI3K)の阻害に応答し(有益な方法で、例えば、一種以上の症状を、完全な治癒または寛解まで、一部または完全に取り除くことによって)、殊にキナーゼが、不適切に高い活性を示すか、またはより好ましくは通常の(例えば、構造性の)活性に比較してより高い活性を示す(他の制御メカニズムに関連して)、一種以上の疾患の処置における、特に、式IaまたはIbの化合物(または、式IaまたはIbの化合物を含んでなる医薬組成物)の使用に関連する。
【0124】
“使用”または“使用される”という用語はどこに言及されていても、これは、温血動物、特にヒトの疾患、好ましくは上記または下記に言及されている一種以上の疾患の予防的および/または治療的処置において使用するための式IaまたはIbの化合物、式IaまたはIbの化合物を上記および下記に言及されている疾患の予防的および/または治療的処置に有効な量でこうした処置を必要とするヒトに投与することを含んでなる使用方法または処置方法、そのような処置に直ぐに使用できるようにすること(例えば、添付文書(例えば、パッケージリーフレットなど)、製剤、適当な調製物、特異的使用への適合、カスタマイズなど)を含み、特に式IaまたはIbの化合物(治療的に活性成分として)を、少なくとも一つの薬学的に許容される担体物質と混和することを含む、上記および下記に言及されている疾患の予防的および治療的処置における使用のための、医薬製剤/調製物の調製または製造方法、およびこうした製剤のための式IaまたはIbの化合物の使用、および/または上記または下記に言及されている他の予防的または治療的使用のすべてを含んでいることを意図している。こうした局面のすべては、本発明の態様である。
【0125】
PI3キナーゼ阻害剤としての式IaまたはIbの化合物およびその塩の有効性は、次のように示される:
キナーゼ反応は、ハーフエリアCOSTAR、96プレートのウェルあたり最終容量50μL中で行われる。このアッセイでATPおよびホスファチジルイノシトールの最終濃度は、それぞれ、5μMおよび6μg/mLである。この反応は、PI3キナーゼp110βを添加することによって開始される。このアッセイの構成要素は、ウェルあたり以下のとおりである:
・カラム2−1のウェルあたり5%DMSO中に試験化合物10μL。
・全活性は、カラム1の最初の4ウェルおよびカラム12の最後の4ウェル中で、10μLの5%(vol/vol)DMSOを加えることによって決定される。
・バックグラウンド値は、カラム1の最後の4ウェルおよびカラム12の最初の4ウェルに10μMの対照化合物を加えることによって決定される。
・2mLの‘アッセイミックス’は、プレートあたり調製される:
1.912mLのHEPESアッセイバッファー
ウェルあたり5μMの最終濃度を付与するATPの3mMストック 8.33μL
ウェルあたり、0.05μCiを付与する活性日における1μLの[33P]ATP
ウェルあたり、6μg/mLの最終濃度を付与する1mg/mL PIストック 30μL
ウェルあたり、1mMの最終濃度を付与する1Mストック MgCl 5μL
・20μLのアッセイミックスがウェルあたり加えられる。
・2mLの‘酵素ミックス’が、プレートあたり調製される(xμL PI3キナーゼ p110β(2mLのキナーゼバッファー中))。この‘酵素ミックス’は、アッセイプレートに添加する間、氷上に置いておく。
・20μLの‘酵素ミックス’を、ウェルあたり加え、反応を開始させる。
・次いでこのプレートを室温で90分間インキュベートする。
・この反応は、ウェルあたり、50μLのWGA−SPAビーズ(小麦胚芽凝集素被覆シンチレーション近接アッセイプレートビーズ)懸濁液を加えることによって終了する。
・このアッセイプレートを、ポリスチレンマイクロプレート用TopSeal−S ヒートシール(PerkinElmer LAS (Deutschland) GmbH, Rodgau, Germany)を用いて密封し、そして室温で少なくとも60分間インキュベートする。
・次いでこのアッセイプレートを、1500rpmで2分間、Jouan bench top centrifuge (Jouan Inc., Nantes, France)を用いて遠心分離する。
・このアッセイプレートをPackard TopCountを用いてカウントする。各ウェルは、20秒間十分にカウントされる。
酵素量は、使用するバッチの酵素活性によって左右される。
【0126】
化合物のいくつかは、異なったパラログPI3Kアルファ、ベータ、ガンマおよびデルタに対して一定のレベルの選択性を示す。
【0127】
DNA−PKの有無の生物化学的アッセイの説明
このアッセイは、精製酵素調製物および細胞核抽出物中で、DNA依存性タンパク質キナーゼ活性を定量化する、PromegaからのキットV7870(SignaTECT(登録商標) DNA-Dependent Protein Kinase Syste, comprises DNA-PK, biotinylated peptide substrate end further ingredients, Promega, Madison, Wisconsin, USA)を用いて行われる。DNA−PKは、活性のために二本鎖DNA(dsDNA)を必要とする核セリン/トレオニンタンパク質キナーゼである。dsDNAの酵素への結合は、活性な酵素を形成することになり、そしてまた、基質を酵素のより近くに移動し、リン酸化反応を進展させる。
【0128】
DNA−PK X5反応バッファー(250mM HEPES、500mM KCl、50mM MgCl、1mM EGTA、0.5mM EDTA、5mM DTT、pH KOHを加え7.5に)を、脱イオン水中に1/5希釈し、そしてBSA(ストック=10mg/ml)を加えて、最終濃度0.1mg/mlにする。
【0129】
活性化バッファーは、対照バッファー(10mM トリス−HCl(pH7.4)、1mM EDTA(pH8.0))中100μg/mlの子牛胸腺DNAから作られる。管あたり、この反応ミックスは、次のものによって構成されている:2.5μl活性化または対照バッファー、5μlの×5反応バッファー、2.5μlのp53−由来ビオチン化ペプチド基質(ストック=4mM)、0.2μlのBSA(10mg/mlでストック)および5μlの[γ−32P]ATP(5μlの0.5mM 冷却ATP+0.05μlのRedivue[γ−32P]ATP=Amersham AA0068−250μCi、3000Ci/mmol、10μCi/μl(現在、GE Healthcare Biosciences AB, Uppsala, Sweden)。
【0130】
DNA−PK酵素(Promega V5811、濃度=100U/μL)を、X1反応バッファー中に1/10希釈し、使用の直前まで氷上に置いておく。10.8μlの希釈酵素を、100μM化合物(純DMSO中の10mMストックから水中に1/100希釈する)1.2μlと共に、10分間、室温でインキュベートする。この間、パースペックスガラス越しに、15.2μlの反応ミックスを、ねじふたをした管に加える。次いで9.8μlの酵素を、反応ミックスを含んでいる管に移し、そして5分間、30℃でインキュベーションした後、この反応を12.5μlの終了バッファー(7.5M グアニジン・塩酸塩)を加えることによって停止させる。
【0131】
十分混合した後、各管の10μl分量を、SAM2(登録商標)ビオチン捕捉膜(Promega, Madison, Wisconsin, USA)上にスポットし、これを数分間乾燥させる。次いでこの膜を広範囲に洗浄し、過剰の遊離の[γ−32P]ATPおよび非ビオチン化タンパク質を取り除く:2M NaCl 200ml中30秒間で1回、2M NaCl 200mlで、それぞれ2分間で3回、1%HPO中の2M NaCl中で、それぞれ2分間で4回、そして脱イオン水100ml中、それぞれ30秒間で2回。この膜は、引き続き、室温で30〜60分間空気乾燥させる。
【0132】
それぞれの膜スクエアを、かん子(forceps)およびはさみを使用して、分離し、そしてシンチレーションバイアル中に置き、その後、8mlのシンチレーション液体(Perkin-ElmerからのFlo-Scint 6013547)を加える。次いでDNA−PKビオチン化ペプチド基質中に取り込まれた32Pの量を、液体シンチレーションカウンティングによって決定する。
【0133】
本発明の化合物のPI3K/PKB経路の活性を遮断する際の有効性は、次のとおりの細胞設定において証明できる:
【0134】
エライザ法によるU87MG細胞中のphospho−PKBの検証のためのプロトコール:
U87MG細胞(ヒトグリア芽細胞腫、ATCC No.HTB−14)を、トリプシン処理し、CASYセルカウンター(Schaerffe systems, Goettingen, Germany)でカウントし、ウェルあたり、4×10個の細胞を含む150μlの細胞懸濁液を充填するために新鮮な完全DMEM高グルコース培地中に希釈し、そして試験プレートを18時間インキュベートする。並行して、50μLの被覆抗体が、PBS/O中、所望の濃度で、エライザプレートの各ウェル中に充填されており、そしてプレートを室温で2時間維持する。このエライザアッセイは、プレートシーラー(Costar-Corning, Ref: 3095)で密封されている黒色の平底96ウェルプレート中で行われる(MicrotestTM, Falcon Becton-Dickinson, Ref: 353941)。プレート中の培地を捨て、そして0.1%DMSOか、またはDMSO中、10mM〜0.156mMの力価(7)の0.1%阻害剤のどちらかを含んでいる完全DMEM高グルコース培地に置換する。30分間の接触後、この培地をすばやく吸引によって取り除き、次いでプレートを、氷上に置き、そしてすぐに70μlの溶解バッファーを用いて細胞溶解する。並行して、被覆抗体(1/250 希釈(PBS/O中)Akt1 C-20, ヤギ, Santa-Cruz-1618, Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, California, USA)で調製された96ウェルプレートを、1分間で3回、0.05%ツイーン20および0.1%Top-Block(登録商標)(表面上の非特異的な結合部位をブロックするゼラチン誘導体;Sigma-Aldrich, Fluka, Buchs, Switzerland, Ref.: 37766)を含んでいるPBS/Oで洗浄し、そして残存するタンパク質結合部位を、Top-Block(登録商標)3%を含む200μLのPBSとの非特異的な相互反応を阻止して、室温で2時間、ブロックする。ウェル内容物を、処理細胞からの50μLのサンプルで置換し、そしてプレートを、4℃で3時間インキュベートする。このエライザアッセイは、常に、6複製で次の対照群と並行して行われる:U87MG(無処理対照)または溶解バッファーのみ(LB)。3×15分間洗浄後、ウェルに、すべて、50μLの二次抗体(1/250 希釈(3% top block中) Anti-S473P-PKB, ウサギ, Cell Signaling-9271, Cell Signaling Technologies, Inc., Danvers, Massachusetts, USA))を入れ、そして4℃で16時間インキュベートする。3回洗浄後、プレートを第三のコンジュゲートした抗体(1/1000希釈(3% top block中)抗ウサギ(HRP) Jackson Immuno Research 111-035-144)と共に、室温で2時間インキュベートする。最後に、この免疫複合体をPBS/O/ツイーン20/top blockで15秒間、2回、200μLの水で1回洗浄し、そして最後に200μLの水をそれぞれの試験ウェル中に残しておき、その後、暗所で45分間インキュベーションする。次いでこのプレートを、(SuperSignal(登録商標)ELISA pico Chemiluminescent substrate, Pierce, Ref: 27070, Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, Illinois, USA)を用いてアッセイする。100μLの基質を加え、そしてプレートを1分間振とうさせる。直ちにこの蛍光をTop-Count NXT(Packard Bioscience)ルミノメーターで読み取る。
【0135】
実施例化合物1.5、1.8および1.9は、それぞれ、0.106、0.666および0.753μMのIC50値を有することが判明した。
【0136】
式(I)の化合物のイン・ビボにおける抗腫瘍活性を示すことができる実験もある。
例えば、ヒトグリア芽腫U87MG腫瘍を皮下移植された雌性Harlan(Indianapolis, Indiana, USA)無胸腺nu/nuマウスが、PI3キナーゼ阻害剤の抗腫瘍活性を決定するのに使用することができる。0日目に、経口Forene(登録商標)(1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、Abbot, Wiesbaden, Germany)のもとで昏睡状態にある動物を用いて、約25mgの腫瘍断片を、動物の左わき腹の皮膚下に置き、そしてこの小さな切り傷をクリップ縫合して閉じる。腫瘍が、100mmの体積に達した時、このマウスをランダムに6−8匹の群に分け、そして処置を開始する。この処置は、適切なビヒクル中の式(I)の化合物を規定の投与量で、経口、静脈内または腹腔内投与を毎日1回(またはより少ない頻度で)、2−3週間行う。この腫瘍を、ノギスで1週間に2回測定し、そして腫瘍の体積を計算する。
【0137】
細胞株U87MGの代わりに、他の細胞株もまた同様な方法で使用することができる。例えば、
・MDA-MB 468乳腺癌細胞株(ATCC No. HTB 132;In Vitro 14, 911-15 [1978]も参照);
・MDA-MB 231乳癌細胞株(ATCC No. HTB-26;In Vitro 12, 331 [1976]も参照);
・MDA-MB 453乳癌細胞株(ATCC No.HTB-131);
・Colo 205結大腸癌細胞株(ATCC No. CCL 222; Cancer Res. 38, 1345-55 [1978]も参照);
・DU145前立腺癌細胞株DU 145 (ATCC No. HTB 81; Cancer Res. 37, 4049-58 [1978]も参照);
・PC-3前立腺癌細胞株PC-3(特に好ましい; ATCC No. CRL 1435; Cancer Res. 40, 524-34 [1980]も参照)およびPC-3M前立腺癌細胞株;
・A549ヒト肺腺癌(ATCC No. CCL 185; Int. J. Cancer 17, 62-70 [1976]も参照);
・NCI-H596細胞株(ATCC No. HTB 178; Science 246, 491-4 [1989]も参照);
・膵臓癌細胞株SUIT-2(Tomioka et al., Cancer Res. 61, 7518-24 [2001]参照)。
【0138】
本発明の化合物は、また、JAK−2およびJAK−3キナーゼを含む、ヤヌスキナーゼのチロシンキナーゼ活性ならびにホスホイノシチド3−キナーゼの脂質キナーゼ活性の阻害剤としても有用である。この結果として、この化合物は、腫瘍疾患、白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、および骨髄様化生を伴う骨髄線維症のような増殖性疾患の治療に有効であり得る。JAK−3キナーゼの阻害を介して、本発明の化合物は、また、免疫抑制剤として、例えば、臓器移植拒絶反応、狼瘡、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、皮膚炎、クローン病、I型糖尿病およびI型糖尿病合併症のような疾患の処置のために有用性を有する。
【0139】
上記のとおり、本発明の化合物は、単独もしくは一種以上の他の治療剤と組み合わせて投与することができ、可能性のある組み合わせ治療は、固定した組み合わせの形態をとることもあるし、または本発明化合物と一種以上の他の治療薬の投与に時間差を設けるか、またはお互いに独立してか、または固定した組み合わせ物と1種以上の他の治療剤を組み合わせて投与してもよい。
【0140】
こうしたヤヌスキナーゼ阻害活性に関連して、更にまたは加えて、式IaまたはIbの化合物は、特に腫瘍治療のために、化学療法、放射線療法、免疫療法、外科介入、またはこれらの組合せと組み合わせて、投与することができる。上記のとおり、他の処置戦略の状況における補助療法であるので、長期治療も同様に可能である。他の可能性のある処置は、腫瘍退行後の患者の状況を維持するための治療、または更に、例えば、リスクのある患者における化学的予防療法ですらある。
【0141】
可能性のある組合せのための治療剤は、特に一種以上の、抗増殖性、細胞増殖抑制性または細胞障害性化合物であり、例えば、一つまたはいくつかの薬剤、ポリアミン生合成阻害剤、タンパク質キナーゼ阻害剤、特にセリン/トレオニンタンパク質キナーゼ阻害剤、例えば、タンパク質キナーゼC、またはチロシンタンパク質キナーゼ、例えば、EGF受容体チロシンキナーゼ、例えば、イレッサ(登録商標)、VEGF受容体チロシンキナーゼ、例えば、PTK787またはアバスチン(登録商標)、またはPDEF受容体チロシンキナーゼの阻害剤、例えば、STI571(グリベック(登録商標))、サイトカイン、負の成長調節因子、例えば、TGF−βまたはIFN−β、アロマターゼ阻害剤、例えば、レトロゾール(フェマーラ(登録商標))またはアナストロゾール、SH2ドメインのリン酸化たんぱく質との相互作用阻害剤、抗エストロゲン、トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、イリノテカン、トポイソメラーゼII阻害剤、微小管活性剤、例えば、パクリタキセルまたはエポシロン、アルキル化剤、抗増殖性代謝拮抗剤、例えば、ゲムシタビンまたはカペシタビン、白金化合物、例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン、ビスホスホネート、例えば、アレディア(登録商標)またはゾメタ(登録商標)、およびモノクローナル抗体、トラスツズマブのような例えば、HER2に対する抗体を含む群から選択される1種または数種の薬剤であるが、これらに限定されない。
【0142】
コード番号、一般名または商標名によって特定化される活性剤の構造は、標準的な一覧概要の現時点で存在している版“メルク・インデックス”から、あるいはデータベース、例えば、Patents International(例えば、IMS World Publications)から取り込むことができる。その対応する内容は、引用によって本明細書に組み込まれる。
【0143】
JAK/TYK−キナーゼファミリープロファイリングアッセイ
本発明の化合物のJAK/TYK−キナーゼ活性阻害剤としての有効性は、次によって示すことができる:
【0144】
JAK/TYK−キナーゼファミリーの四つのキナーゼすべてが、活性のあるキナーゼドメインを含む、精製組み換えGST融合タンパク質として使用された。GST-JAK1(866-1154)、GST-JAK3(811-1124)、およびGST-TYK2(888-1187)は発現され、そしてEPK biology unitでアフィニティークロマトグラフィーによって精製された。GST-JAK2(808-1132)は、Invitrogen (Carlsbad, USA, #4288)から購入された。
【0145】
このキナーゼアッセイは、LabChip 3000システムを用いる、キャリパー・モビリティ・シフトアッセイに基づく。このテクノロジーは、キャピラリー電気泳動に類似しており、そして基質の荷電誘導分離およびマイクロ流体チップ中の製品を使用する。
【0146】
キナーゼ反応のすべては、全反応容量18μl中、384ウェルのマイクロタイタープレート中で行われた。このアッセイプレートは、段落“化合物希釈の調製”のもとに述べられている適切な試験濃度で、ウェルあたり0.1μlの試験化合物を加えて調製された。この反応は、9μlの基質ミックス(ペプチドおよびATPから構成されている)を9μlのキナーゼ希釈液と混ぜ合わせることによって開始された。この反応液を30℃で60分間インキュベートさせて、そして70μlの停止バッファー(100mM Hepes、5%DMSO,0.1%コーティング剤、10mM EDTA,0.015%Brij35)を加えることによって停止させた。
【0147】
蛍光的に標識された合成ペプチドが反応のすべてに基質として使用された。IRS−1の配列から誘導されるペプチド(IRS−1ペプチド、FITC-Ahx-KKSRGDYMTMQIG-NH2)が、JAK1およびTYK2の場合に使用され、そしてJAK2およびJAK3の場合には、JAK3tideという名前のペプチド(FITC-GGEEEEYFELVKKKK-NH2)が使用された。特定のアッセイ条件が表1に述べられている:
【0148】
【表1】

【0149】
終了した反応液は、キャリパーLabChip 3000リーダーに移し、そしてそれぞれの反応の変換率を、基質/生成物率を決定することにより測定された。
実施例化合物、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6および2.7は、それぞれ、0.016、0.008、0.014、0.020、0.021、0.011および0.013μMのJAK2 IC50の値を有していることが判明する。
【0150】
化合物希釈液の調製
試験化合物を、DMSO(10mM)に溶解し、そしてそれぞれの化合物のハブによる特有の2Dマトリックスチップを持つ1.4mLの平底またはV形マトリックス管に移した。これらのチップの番号は、個々の化合物の識別番号に特徴的にリンクさせた。ストック溶液を、すぐに使用しない場合は、−20℃で保存した。試験手順の場合には、バイアルを解凍し、そしてスキャナーにより同定し、これにより、作業工程を導くワーキングシートを作成する。化合物希釈液は、96ウェルプレート中で作製された。この形式は、4個の参照化合物を含む最大40の個々の試験化合物を、8種類の濃度(シングルポイント)でアッセイを可能とした。この希釈プロトコールは、プレ希釈用プレート、マスタープレートおよびアッセイプレートの製造を含んでいた。
【0151】
プレ希釈用プレート:96ポリプロピレンウェルプレートが、プレ希釈用プレートとして使用された。全部で4個のプレ希釈用プレートが用意され、プレートポジションA1−A10にそれぞれ10種類の試験化合物、A11に一つの標準化合物、そしてA12に一つのDMSO対照を含んでいた。希釈ステップは、すべてHamiltonSTARロボットで行われた。
【0152】
マスタープレート:標準化合物および4個の“プレ希釈用プレート”の対照群を含む100μlの個々の化合物希釈液を、次の濃度を含んでいる384“マスタープレート”中に移した:それぞれDMSO 90%中、1’820、564、182、54.6、18.2、5.46、1.82および0.546μM。
【0153】
アッセイプレート:次いで同一のアッセイプレートをマスタープレートの化合物希釈液のそれぞれに100nLを、384ウェル“アッセイプレート”中にそれぞれ100nMずつピペッティングすることによって調製された。次に化合物を、9μlのアッセイ成分と、最終濃度、それぞれ10、3.0、1.0、0.3、0.1、0.03、0.01および0.003μMを可能にする1:181希釈工程に対応する9μLの酵素と混和する。マスタープレートの調製は、Matrix PlateMate Plus robotおよびHummingBird robotによるアッセイプレートの複製によって対処された。
【0154】
こうした検討に基づいて、本発明の化合物は、特にタンパク質キナーゼに依存する疾患に対して、特にJAK/TYK キナーゼ活性によって介在される増殖性疾患に対して治療的有効性を示す。
【0155】
本発明は、次の実施例によって説明される。
実施例において使用されている略語は、次の意味を有している。
【表2】

【表3】

【実施例】
【0156】
実施例
本発明の実施例は、式IIb:
【化21】

(式中、QおよびTは、下記の表1、2および3に示す通りである)の化合物を含む。製造方法を、以下に記載する。
【0157】
表1
【表4】

【表5】

【0158】
表2
【表6】

【0159】
表3
【表7】

【0160】
LCMSは、Agilent 1100 LC systemで記録する:Waters Xterra MS C18 4.6×100 5μM カラム[アセトニトリル中5−95%10mM 炭酸水素アンモニウム水溶液で2.5分間にわたり(陰イオンエレクトロスプレーイオン化)溶出するか、あるいは、アセトニトリル中5−95%水+0.1%TFA(陽イオンエレクトロスプレーイオン化)で溶出する。質量分析は、また、陽/陰イオンスプレーイオン化条件の下で、LCグラジエント溶出を0.1%ギ酸の存在下で5%〜95%のアセトニトリル−水で行って、得られる。[M+H]および[M−H]は、モノアイソトピック質量を意味する。Biotage OptimizerTMマイクロウェーブシンセサイザーおよびEmryOptimizerマイクロウェーブオーブンは、提供される標準の構成で使用される。
【0161】
中間体および最終化合物の製造
実施例1.1
4−(3−[2,4’]ビピリジニル−4−イル−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)−シクロヘキサノール
工程1:6−クロロ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン
ジメトキシエタン(200ml)中のブロモアセトアルデヒド(2当量、101mmol、12g)の溶液に、3−アミノ−6−クロロ−ピリダジン(1当量、51mmol、7g)を室温で加える。この反応を24時間撹拌する。この粗生成物をろ過によって回収し、そして水(15ml)に溶解する。次いでこの水溶性溶液を、重炭酸ナトリウムで処理してpH=8とし、一晩冷却し、その後この生成物、6−クロロ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジンをろ過によって回収する。
H nmr(MeOD) 8.15 (1H, s), 8.05 (1H, d, J = 9.58 Hz), 7.80 (1H, s) および7.32 (1H, d, J = 9.58 Hz)。
【0162】
工程2:3−ブロモ−6−クロロ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン
不活性雰囲気下で、酢酸(10ml)中の6−クロロ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン(1当量、17mmol、2.4g)に、臭素(1当量、17mmol、0.82ml)を滴下する。室温で4時間撹拌後、この反応混合物をろ過し、真空下で乾燥させて、3−ブロモ−6−クロロ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジンを得る。
H nmr(MeOD) 8.42 (1H, d, J = 9.81 Hz), 8.07 (1H, s) および 7.91 (1H, d, J = 9.48 Hz)。
【0163】
工程3:4−(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)−シクロヘキサノール
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(2ml)中のトランス−4−アミノシクロヘキサノール(5当量、2.5g、21.5mmol)およびNaHCO(1当量、361mg、4.3mmol)の溶液に、3−ブロモ−6−クロロ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン(1当量、1.0g、4.3mmol)を加える。この反応物を、180℃で40分間マイクロウェーブ中で加熱する。この混合物を、水(20ml)で希釈し、そしてEtOAcで抽出する。合わせた有機部分を塩水で洗浄し、次いで乾燥させ(MgSO)、真空下で濃縮する。フラッシュクロマトグラフィー(10%EtOAc/MeOH)によって精製すると、4−(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)−シクロヘキサノールを得る。
【0164】
工程4:4−[3−(2−クロロ−ピリジル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール
不活性雰囲気下で、ジオキサン(6.0ml)および水(3ml)中の4−(3−ブロモ−イミダゾ{1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)シクロヘキサノール(1当量、8.7mmol、2.7g)、3−クロロピリド−4−イルボロン酸(1.5当量、13mmol、2.05g)、NaCO(2当量、17.4mmol、1.84g)の溶液に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(0.1当量、0.87mmol、609mg)を加える。この反応混合物を、マイクロウェーブ中、80℃で2時間加熱する。この混合物を、HO(50ml)で希釈し、そしてEtOAcで抽出する。集めた有機部分を、塩水で洗浄し、次いで乾燥させ(MgSO)、そして真空下で濃縮する。この残渣をメタノール中の2−10%をEtOAc用いて溶出するシリカクロマトグラフィーによって精製して、所望の最終化合物、4−[3−(2−クロロ−ピリジル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノールを得る;[M+H] 345, 347。
【0165】
工程5:4−(3−[2,4’]ビピリジニル−4−イル−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)−シクロヘキサノール
ジオキサン(1ml)およびHO(0.33ml)中の4−[3−(2−クロロ−ピリジン−4−イル)−イミダゾ[1,2−b]−ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール(1当量、100mg、0.29mmol)4−ピリジルボロン酸(1.5当量、0.43mmol、54mg)、NaCO(2当量、0.58mmol、62mg)に、不活性雰囲気下で、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(0.1当量、0.029mmol、21mg)を加える。この反応物を、マイクロウェーブ中、80℃で2時間加熱する。この混合物を、HO(5ml)で希釈し、そしてEtOAcで抽出する。合わせた有機部分を、塩水で洗浄し、次いで乾燥させ(MgSO)、そして、真空下で濃縮する。この残渣をメタノール中の20%EtOAcを用いて溶出するシリカクロマトグラフィーにより精製して、最終化合物、4−(3−[2,4’]ビピリジニル−4−イル−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)−シクロヘキサノールを得る;[M+H] 387。
【0166】
実施例1.2〜1.4
これらの化合物、すなわち、
4−{3−[2−(5−メチル−チオフェン−2−イル)−ピリジン−4−イル]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ}−シクロヘキサノール(実施例1.2)、
4−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール(実施例1.3)
および
4−{3−[2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリジン−4−イル]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ}−シクロヘキサノール(実施例1.4)を、実施例1.1の化合物を製造するのに使用したものに準じる手順を用いて製造する。
【0167】
実施例1.5
4−[3−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール
4−(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)−シクロヘキサノール(150mg;0.463mmol)(実施例1.1工程3)を、DMF(3ml)中に溶解し、そして室温で[4−(1H−ピラゾール−1−イル)フェニル]ボロン酸(137mg;0.649mmol)、炭酸カリウム(1M溶液(水中);2.1ml)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)パラジウムジクロリド(16.6mg;0.023mmol)で、アルゴン雰囲気下で処理する。暗黄色反応混合物を、120℃で20分間、EmryOptimizerマイクロウェーブオーブン(300W)中で撹拌する。この暗褐色懸濁液から減圧下で溶媒を取り除き、そしてクロマトグラフィー(40g Redisep, ISCO Sg-100;CHCl/CHOH 95:5で溶出する)、続くEtOAcからの再結晶により精製して、表題化合物を白色結晶として得る;[M+H] 375。
【0168】
実施例1.6〜1.7
これらの実施例、すなわち、
4−[3−(2−シクロプロピル−ピリジン−4−イル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール(実施例.1.6)
および
4−[3−(3−ピラゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール(実施例1.7)は、実施例1.5の化合物を製造するのに使用したもの準じる手順を用いて製造する。
【0169】
実施例1.8
4−[3−(4−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール
工程1:4−[3−(4−フルオロ−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール
この化合物は、[4−(1H−ピラゾール−1−イル)フェニル]ボロン酸に代えて4−フルオロ−ボロン酸を用いることによって実施例1.5に準じて製造される。
[M+H]327。
【0170】
工程2:4−[3−(4−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール
4−[3−(4−フルオロ−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール(65.3mg;0.2mmol)をDMF(5ml)中に溶解し、そして1H−[1,2,4]トリアゾール(28mg;0.2mmol)および炭酸カリウム(56mg;0.2mmol)で処理する。この混合物を、EmryOptimizerマイクロウェーブオーブン(300W)中で220℃に加熱する。室温に冷却後、EtOAc(50ml)を加え、そして有機物を水で2回洗浄する。この有機層から溶媒を減圧下で取り除く。精製をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル[0.040−0.063mm]Merck 1.09.385.1000];94:6 CHCl/CHOHを用いて溶出する)によって行い、続いてジオキサンから凍結乾燥して、オフホワイトの粉末として表題化合物を得る;[M+H] 376。
【0171】
実施例1.9
{4−[3−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノール
工程1:[4−(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)−シクロヘキシル]−メタノール
この化合物は、トランス−4−アミノシクロヘキサノールの代わりに(4−アミノ−シクロヘキシル)−メタノールを用いて、4−(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)−シクロヘキサノール(実施例1.1工程3)に準じて製造される;[M+H] 327。
【0172】
工程2:4−[3−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノール
この表題化合物は、4−(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)−シクロヘキサノール(実施例1.1工程3)の代わりに、[4−(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)−シクロヘキシル]−メタノール(実施例1.9工程1)を用いて、実施例1.5に準じて製造される;[M+H] 389。
【0173】
実施例2.1
{4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−メタノン
工程1:(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イル)−(2,5−ジフルオロ−ベンジル)−アミン
3−ブロモ−6−クロロ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン(1.00g、4.30mmol)[実施例1.1工程2]および2,5−ジフルオロベンジルアミン(1.03ml、8.60mmol)の懸濁液に、室温でKF(2.50g、43.0mmol)を加える。この反応混合物を、1時間、180℃に加熱する。室温に冷却後、この反応混合物を、EtOAcで希釈し、そして飽和NaCO水溶液(3×)および飽和NaCl水溶液(1×)で洗浄する。有機層を乾燥し(NaSO)、ろ過し、そして、減圧下で濃縮する。得られる固体を、EtOAcでトリチュレートして、表題化合物をオフホワイト固体として得る。MS-ES: [M+H] 341。
【0174】
工程2:4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−安息香酸
DME(5ml)中の(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イル)−(2,5−ジフルオロ−ベンジル)−アミン(400mg、1.14mmol)、4−カルボキシフェニルボロン酸(240mg、1.37mmol)、およびKCO(2.00ml、4.00mmol、2M(水中))の懸濁液に、室温、アルゴン雰囲気下でPdCl(PPh)(41mg、0.06mmol)を加える。この反応混合物を、20分間、150℃にマイクロウェーブオーブン中で加熱する。室温に冷却後、この反応混合物を、Florisil padでろ過する。このパッドをEtOAcで洗浄し、そしてろ液を捨てる。次いで、このパッドをMeOHで洗浄し、そしてこのろ液を減圧下で濃縮すると、粗表題化合物(純度70%)がオフホワイト固形物として生じ、これは、更に精製することなく、次の工程に使用する。MS-ES: [M+H] 381。
【0175】
工程3:{4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−メタノン
DMF(2ml)中の4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−安息香酸(54mg、0.100mmol、純度70%)の溶液に、室温でHATU(50mg、0.130mmol)およびNMM(28μl、0.250mmol)を加える。5分間撹拌後、1−メチルピペラジン(13μl、0.110mmol)を加え、そしてこの混合物を、さらに2時間撹拌する。この反応混合物を、EtOAcで希釈し、そして飽和NaHCO水溶液(2×)および飽和NaCl水溶液(1×)で洗浄する。有機層を乾燥させ(NaSO)、ろ過し、そして、減圧下で濃縮する。この残渣を逆相分取HPLC(Waters)によって精製して、表題化合物(実施例1)を、白色固体として得る(TFA塩)。MS-ES: [M+H] 463。
【0176】
実施例2.2〜2.7
これらの実施例、すなわち、
4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−N−(2−モルホリン−4−イル−エチル)ベンズアミド(実施例2.2)、
{4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−メタノン(実施例2.3)、
{4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−モルホリン−4−イル−メタノン(実施例2.4)、
{3−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンズアミド(実施例2.5)、
4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−N−(1−エチル−ピロリジン−2−イルメチル)−ベンズアミド(実施例2.6)および
4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンズアミド(実施例2.7)
を、工程2において適切なカルボキシフェニルボロン酸および工程3において適切なアミンを用いて、実施例2.1に準じて得る。
【0177】
実施例3.1
4−[6−(3−フルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−ベンゼンスルホンアミド
工程1:(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イル)−(3−フルオロ−ベンジル)−アミン
密閉管内で、NMP(16.5ml)中の3−ブロモ−6−クロロ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン(3.7g、15.9mmol)[実施例1.1工程B]と3−フルオロベンジルアミン(4.54ml、39.8mmol)の混合物を、180℃で加熱し、そして3時間撹拌する。この反応混合物を、室温に冷却し、水(300ml)に注ぎ、そしてEtOAcで抽出する。集められた有機フラクションをNaSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾固する。残存残渣を、Combi-FlashCompanion(TM)(Isco Inc.)カラムクロマトグラフィー(SiO;グラジエント溶出、DCM/[DCM/MeOH−NH 9:1]95:5→3:7)によって精製して、表題化合物を白色固体として得る。MS-ES [M+H]+=321.0。
【0178】
工程2:4−[6−(3−フルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−ベンゼンスルホンアミド
密閉管内で、DME(1ml)中の(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イル)−(3−フルオロ−ベンジル)−アミン(50mg、0.156mmol)、4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ベンゼンスルホンアミド(52.9mg、0.187mmol)、PdCl(PPh)(5.5mg、0.008mmol)および2M NaCO水溶液(0.27ml)の混合物を、150℃で、17分間マイクロウェーブオーブン中で加熱する。この反応混合物を、室温に冷却し、ろ過し、そしてろ過ケーキをDCMで洗浄する。このろ液を蒸発乾燥し、そして残存残渣を逆相分取HPLC(Waters system)によって精製して、表題化合物を白色粉末として得る。MS-ES[M+H]+=398。
【0179】
実施例3.2〜3.5
これらの実施例、すなわち、
4−[6−(3−フルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−ベンズアミド
(実施例3.2)、
4−{6−[(RまたはS)−1−(3−フルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルアミノ]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル}−ベンゾニトリル(実施例3.3)、
3−{6−[(R)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチルアミノ]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル}−ベンゾニトリル
(実施例3.4)、
{4−[6−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−メタノール
(実施例3.5)
を、工程1において適切なベンジル型アミンまたはベンジル型アルコールおよび工程2において適切なボロン酸またはエステルを用いて、実施例3.1に準じて得る。
【0180】
実施例3.6(上記の表にはない)
(3−フルオロ−ベンジル)−{3−[4−(2−メチル−2H−テトラゾール−5−イル)−フェニル]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イル}−アミン
工程1:4−[6−(3−フルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−ベンゾニトリル
密閉管内で、DME(10ml)中の(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イル)−(3−フルオロ−ベンジル)−アミン(300mg、0.934mmol)[実施例3.1工程A]、4−シアノフェニルボロン酸(165mg、1.12mmol)、PdCl(PPh)(32.8mg、0.047mmol)および2M NaCO水溶液(1.6ml)の混合物を、150℃で、30分間、マイクロウェーブオーブン中で加熱する。この反応混合物を、室温に冷却し、AcOEt(100ml)で希釈し、そして水(30ml)および塩水(30ml)で洗浄する。この有機フラクションを、NaSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾固する。残存する残渣を、Combi-Flash Companion(TM)(Isco Inc.)カラムクロマトグラフィー(SiO;グラジエント溶出、DCM/[DCM/MeOH 1:1]98:2→9:1)によって精製すると、表題化合物(257mg、0.748mmol、80%)が白色固体として生じる。MS-ES [M+1]=344。
【0181】
工程2:(3−フルオロ−ベンジル)−{3−[4−(2H−テトラゾール−5−イル)−フェニル]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イル}−アミン
密閉管内で、DMF(4ml)中の4−[6−(3−フルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−ベンゾニトリル(257mg、0.748mmol)、NHCl(134mg、2.25mmol)およびNaN(146mg、2.25mmol)の混合物を、100℃で加熱し、そして24時間撹拌する。この反応混合物を室温に冷却し、DCM中に希釈し、そしてろ過する。このろ液を、濃縮乾固し、そして残存残渣をMeOHでトリチュレートする。得られる固体をろ過によって回収し、EtOで洗浄し、そして真空下で乾燥させて、粗表題化合物をベージュ色固体として得る。MS-ES [M+H]=387。
【0182】
工程3:(3−フルオロ−ベンジル)−{3−[4−(2−メチル−2H−テトラゾール−5−イル)−フェニル]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イル}−アミン
密閉管内で、DMF(1ml)中の(3−フルオロ−ベンジル)−{3−[4−(2H−テトラゾール−5−イル)−フェニル]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イル}−アミン(70mg、0.18mmol)、CsCO(89.4mg、0.27mmol)およびヨウ化メチル(0.028ml、0.45mmol)の混合物を、50℃で加熱し、2時間撹拌する。この反応混合物を室温に冷却し、EtOAc中に希釈し、そして水で洗浄する。有機層をNaSOで乾燥させ、ろ過し、そして濃縮乾固する。残存する残渣を逆相分取HPLC(Waters system)によって精製して、表題化合物を白色粉末として得る。MS-ES [M+H]=401。
【0183】
実施例3.7(上記の表にはない)
テトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸{3−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−アミド
工程A:[3−(3−アミノ−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イル]−(2,5−ジフルオロ−ベンジル)−アミン
密閉管内で、DME(8ml)中の(3−ブロモ−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イル)−(2,5−ジフルオロ−ベンジル)−アミン(433mg、1.28mmol)[実施例2.1工程1]、3−アミノフェニルボロン酸(210mg、1.53mmol)、Pd(PPh)(73.7mg、0.064mmol)および2M NaCO水溶液(2.2ml)の混合物を、150℃で17分間、マイクロウェーブオーブン中で加熱する。この反応混合物を、室温に冷却し、EtOAc(100ml)で希釈し、そして2M NaCO水溶液および塩水で洗浄する。有機層をNaSOで乾燥し、ろ過し、そして蒸発乾固する。残存残渣をCombi-Flash Companion(TM)(Isco Inc.)カラムクロマトグラフィー(SiO;グラジエント溶出、DCM/[DCM/MeOH−NH 9:1]95:5→7:3)によって精製すると、表題化合物が、オレンジ色の固体として生じる。MS-ES [M+H]=352。
【0184】
工程B:テトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸{3−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−アミド
DMF(0.5ml)中の[3−(3−アミノ−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イル]−(2,5−ジフルオロ−ベンジル)−アミン(50mg、0.14mmol)およびテトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸(22mg、0.17mmol)の溶液に、NMM(0.078ml、0.71mmol)およびHATU(82mg、0.21mmol)を、室温で順に加える。この反応混合物を、室温で3時間撹拌し、次いで直接逆相分取HPLC(Waters system)による精製に付して、表題化合物を白色粉末として得る。MS-ES [M+H]=464。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離または塩または溶媒和物の形態の、式(Ia)または(Ib):
【化1】

[式中、
Xは、OまたはNHであり;
Yは、CR13またはNでありs;
は、H、CN、ハロ、−C(O)NRおよび
【化2】

から選択され、
は、H、CN、モルホリノ、テトラゾール(所望によりC−Cアルキルによって置換されていることもある)、−S(O)NH、−C(O)NRおよびCHOHから選択される。
但し、RおよびRは、両方ともHであることはなく、そして、Rが、H以外である場合は、Rは、Hまたはハロであり;そして、RがH以外である場合は、Rは、Hであり;またはRおよびRは、それらが結合している炭素原子と一体となって、N、OおよびSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む6員ヘテロ環を形成し、このヘテロ環は、所望により、C−Cアルキルまたはオキソ基によって置換されていることもあり;
は、H、MeおよびCHOHから選択され;
は、HまたはC−Cアルキルであり;
は、Hまたはハロゲンであり;
は、HまたはC−Cアルキルであり;
は、独立して、H、C−Cアルキル、(CH)hetおよび(CH)NR10から選択されるか;または、
およびRは、それらが結合している窒素原子と一体となって、所望により、更にN、OおよびSから選択されるヘテロ原子を含んでいることもある、5員または6員ヘテロ環を形成し、この環は、所望により、C−CアルキルまたはNR1112によって置換されていることもあり;
、R10、R11およびR12は、それぞれ、独立して、HおよびC−Cアルキルから選択され;
13は、Hまたはハロであり;
mおよびnは、それぞれ、独立して、0、1または2であり;
hetは、N、OおよびSから選択される1個または2個のヘテロ原子を含む5員または6員ヘテロ環であり、この環は、所望により、C−Cアルキルによって置換されていることもあり;
Zは、NまたはCR26であり;
20は、H、シクロプロピルおよびR21から選択され、但し、ZがNである場合は、R20は、H以外であり;
21は、
【化3】

から選択され、
22およびR23は、それぞれ、独立して、HおよびC−Cアルキルから選択され;
24は、HおよびOHから選択され;
25は、H、OHおよびCHOHから選択される;但し、R24がHである場合は、R25は、OHまたはCHOHであり;そしてR24がOHである場合は、R25はHであり;そして、
26は、HおよびR21から選択される;但し、R20が、H以外である場合は、R26は、Hであり;そしてR20がHである場合は、R26はR21である]
の化合物。
【請求項2】
が、H、CN、ハロ、−C(O)NRおよび
【化4】

から選択され、
が、H、CN、モルホリノ、テトラゾール(所望によりC−Cアルキルによって置換されていることもある)、−S(O)NH、−C(O)NRおよびCHOHから選択されるが、但し、RおよびRは、両方ともHであることはなく、そして、Rが、H以外である場合は、Rは、Hであり;そして、RがH以外である場合は、Rは、Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がHまたはMeである請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
がHまたはFである請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
が、HまたはMeである請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
13がHである請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
4−(3−[2,4’]ビピリジニル−4−イル−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ)−シクロヘキサノール;
4−{3−[2−(5−メチル−チオフェン−2−イル)−ピリジン−4−イル]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ}−シクロヘキサノール;
4−[3−(2−フラン−3−イル−ピリジン−4−イル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール;
4−{3−[2−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリジン−4−イル]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ}−シクロヘキサノール;
4−[3−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール;
4−[3−(2−シクロプロピル−ピリジン−4−イル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール;
4−[3−(3−ピラゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール;
4−[3−(4−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキサノール;
{4−[3−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−イルアミノ]−シクロヘキシル}−メタノール;
{4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−メタノン;
4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−N−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−ベンズアミド;
{4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−メタノン;
{4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−モルホリン−4−イル−メタノン;
{3−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンズアミド;
4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−N−(1−エチル−ピロリジン−2−イルメチル)−ベンズアミド;
4−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−N−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ベンズアミド;
4−[6−(3−フルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−ベンゼンスルホンアミド;
4−[6−(3−フルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−ベンズアミド;
4−{6−[(RまたはS)−1−(3−フルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルアミノ]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル}−ベンゾニトリル;
3−{6−[(R)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチルアミノ]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル}−ベンゾニトリル;
4−{6−[(R)−2−(3−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル}−ベンゾニトリル;
{4−[6−(3−フルオロ−ベンジルオキシ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−メタノール;および
テトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸 {3−[6−(2,5−ジフルオロ−ベンジルアミノ)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]−フェニル}−アミド
から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
医薬として使用するための請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、充血除去剤または鎮咳性の薬剤物質である別の薬剤物質と組み合わせる請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
活性成分として請求項1〜7のいずれかに記載の化合物と、適切な薬学的に許容される賦形剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項11】
ALK−5、Pi3K、TRKおよびJAK2の1種以上によって介在される状態を処置する薬剤の製造のための、請求項1〜7のいずれかに記載の式IaまたはIbの化合物の使用。
【請求項12】
ALK−4受容体によって介在される状態を処置する薬剤の製造のための請求項1〜7のいずれかに記載の式IaまたはIbの化合物の使用。
【請求項13】
肺高血圧症、慢性腎疾患、急性腎疾患、創傷治癒、関節炎、骨粗鬆症、腎疾患、鬱血性心不全、潰瘍、眼疾患、角膜損傷、糖尿病性腎症、神経学的機能障害、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、腹膜および皮下癒着、腎線維症、肺線維症および肝線維症、B型肝炎、C型肝炎、アルコール性肝炎、癌、ヘモクロマトーシス、原発性胆汁性肝硬変、再狭窄、後腹膜線維化症、腸間膜線維症、子宮内膜症、ケロイド、癌、骨機能異常、炎症性疾患、皮膚瘢痕化および光老化を処置する薬剤の製造のための、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項14】
肺高血圧症または肺線維症を処置する薬剤の製造のための請求項1〜7のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項15】
骨粗鬆症を処置する薬剤の製造のための請求項1〜7のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項16】
請求項1に記載の式IaまたはIbの化合物の製造方法であって、
(i)(A)式IIa:
【化5】

[式中、Qは、
【化6】

(X、R、R、R、R24およびR25は、請求項1中の定義と同様である)であり、そしてXは、ハロである]の化合物を、式IIIaまたはIIIb:
【化7】

[式中、Tは、
【化8】

(Y、Z、R、RおよびR20は、請求項1の定義と同様である)であり、そして、
およびRは、独立して、水素またはC−C−アルキルである]の化合物と反応させ、
(B)Qが窒素架橋基を含む式IaおよびIbの化合物の製造のために、
式IV:
【化9】

(式中、Tは、上記の定義と同様であり、そして、Xは、ハロである)の化合物を、
式V:
【化10】

[式中、Rは、
【化11】

(R、R、R、R24およびR25は、請求項1の定義と同様である)である]の化合物と反応させ、
(C)Qが窒素または酸素架橋基を含み、そしてTは、上記の定義と同様である式IaおよびIbの化合物の製造のために
式VI:
【化12】

(式中、Qは、上記の定義と同様であり、Kは、6員芳香族ヘテロ環基であり、そしてXは、ハロである)の化合物を、式VIIaまたはVIIb:
【化13】

(式中、Uは、−R、−Rまたは−R20であり、そして、RおよびRは、独立して、水素またはC−C−アルキルである)の化合物と反応させるか;または、
(D)Qが酸素架橋基を含む式Iaの化合物の製造のために、式IV(ここで、Tは、上記の定義と同様であり、そしてXは、ハロである)の化合物を、
式VIII
【化14】

(式中、Rは、請求項1に定義されている化合物に応じる置換ベンジル基である)の化合物と反応させ;そして、
(ii)得られた式IaまたはIbの化合物を、遊離または塩または溶媒和物形態で回収することを含んでなる、方法。

【公表番号】特表2010−508315(P2010−508315A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535015(P2009−535015)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009382
【国際公開番号】WO2008/052734
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】