抗癌剤の抗腫瘍活性を増強する方法
抗癌剤の抗腫瘍活性を増強する方法を提供する。この方法は、個体に抗癌剤とセレン化合物を投与することを含む。セレン化合物は、抗癌剤を投与する前、同時あるいは後に投与することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に癌治療の分野に関する。より詳しくは、化学療法剤の抗腫瘍活性を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学療法は、癌治療に対し、現在承認され広く用いられている方法である。癌の種類にもよるが、化学療法は多くの場合、治療の主要なコースである。例えば、化学療法は、単独でも、放射線治療(白血病、リンパ腫、肉腫、黒色腫、骨髄腫等だけでなく、卵巣、精巣、乳房、膀胱、大腸、頭部及び頸部の癌を含む様々な癌の放射線治療)のような他の治療との併用でも、広く用いられている。
【0003】
化学療法剤は、大きくいくつかのグループに分類できる。大多数の抗癌剤は細胞毒性作用を有する。これらの薬物はそのメカニズムに基づいて前記グループに分類される。化学療法剤は癌の治療に極めて有用であることが証明されているが、それらはほぼ全て、癌細胞だけでなく健康な細胞を殺す能力を持つため、大きな毒性効果を有している。抗癌剤が伴う毒性によって、しばしば治療の中断が余儀なくされる。治療の中断は、患者のコンディション及び臨床転帰の予後にネガティブな影響を与え、生活の質を損なう結果となり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
癌治療の分野では、現在もなお、新しい化学療法剤を同定する、あるいは既存の薬の効力を増強する必要性が存在している。最近、インビトロの研究で、セレン化合物によって抗癌剤の毒性問題を解決することが試みられているが(Steifel等,1999年,WO99/64018;Chen等,1986年,J. Nutrition, 116(12):2453-2465;Dobric等,1998年,J. Environ. Pathol. Toxicol Oncol.,17:291-299)、化学療法剤の抗腫瘍活性に対するセレンの効果は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明において、セレン化合物の投与が、抗癌剤の抗腫瘍活性を増強することが確認された。データは、異種移植片を有する動物を用いたインビボの研究から得られたものである。
【0006】
従って、本発明は、抗癌剤の抗腫瘍活性を増強する方法を開示する。当該方法は、腫瘍を有する個体に、抗腫瘍薬及びセレン化合物を投与することを含む。セレン化合物は、抗癌剤の投与前、投与中あるいは投与後に投与できる。ある実施形態では、セレン化合物は、化学療法の前に投与され、化学療法中及び化学療法後も継続される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
明細書中の「治療量」という語は、セレン化合物を同時投与しない場合の、毒性を考慮した上で臨床的に許容される範囲の治療薬の投与量を意味する。
【0008】
明細書中の「治癒」という語は、腫瘍の完全な消滅を意味する。触診で検出できなかった場合、腫瘍が完全に消失したとみなす。
【0009】
本発明は、抗癌剤の抗腫瘍活性を増強する方法を開示する。この方法は、そのような治療を必要としている個体に、一以上の抗癌剤及び一以上のセレン化合物を投与することを含む。セレン化合物は、抗癌剤を投与する前、同時、あるいは後に投与することができる。化学療法とセレン化合物の投与を併用することによって、化学療法剤の抗腫瘍毒性を増強することができる。
【0010】
本発明は、フルオロピリミジン、ピリミジン ヌクレオシド、プリン、白金類似体、アントラサイクリン、ポドフィロトキシン、カンプトテシン、ホルモン及びホルモン類似体、酵素、蛋白及び抗体、ビンカアルカロイド、タキサンを含む抗癌剤の抗腫瘍活性を増強するために用いることができる。本発明に用いられる抗癌剤は、一般に一以上の以下に示す機能別カテゴリーに分類される:抗ホルモン剤、葉酸代謝拮抗薬、微小管阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬、抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤及び抗ウイルス薬。
【0011】
本発明に有用なセレン化合物は、有機形であっても無機形であってもよい。毒性が少ないことが明らかにされているため、有機形のセレンを用いることが好ましい。有機形に分類される有用なセレン化合物として、例えばメチルセレノシステイン(MSC)及びセレノ-L-メチオニン(SLM)を挙げることができる。セレン化合物の投与量は、約200μg/ヒト〜約3.6mg/ヒトの範囲であり、1年あるいはそれ以上に渡って毎日投与することができる。一般に800μg/患者以下であれば、関連毒性がなく安全であると考えられている。
【0012】
本発明には、化学療法と、セレン投与とを併用するステップが含まれる。一以上の化学療法剤を、癌に対する化学療法剤の分野で良く知られている基準に従って使用することができる。化学療法剤の投与量及び投与計画は、当業者に十分に知られている。セレンの投与は、化学療法の開始前、化学療法中、あるいは化学療法休止後に開始することができる。化学療法の開始前に始めた場合、セレンの投与は、化学療法中、及び化学療法の休止後も継続することができる。同様に、化学療法中に開始した場合、セレンの投与は化学療法休止後も継続することができる。
【0013】
抗腫瘍活性を増強する本発明の方法は、いかなる化学療法剤にも適用可能であるが、代表的なものとして、イリノテカン、FU、タキソール、シスプラチン アドリアマイシン、オキサリプラチン、シクロホスファミド、タキソテール、EGF阻害薬、及びVGF阻害剤を挙げることができる。さらに、本発明は、放射線治療などの他の抗癌治療の抗腫瘍活性を増強するために使用することもできる。
【0014】
化学療法剤の毒性を減じるセレンの効果を実証するために、腫瘍を有するヌードマウスを用いて研究を行った。従前の研究は、インビトロにおいて、セレンがいくつかの抗癌剤の毒性(心毒性等)を減じることを報告したが、その研究では、抗癌剤の効力に対するセレンの効果は評価されていない。
【0015】
本発明の一実施態様において、メチルセレノシステイン(MSC)及びセレノ-L-メチオニン(SLM)が、抗癌剤の抗腫瘍活性を増強する有効な薬剤であると確認された。臨床的に認可された化合物から、5つの異なる類を代表する薬剤を選択した。選択されテストされた化学療法剤は、イリノテカン(トポイソメラーゼI阻害剤)、ドキソルビシン(トポイソメラーゼII阻害剤)、FU(DNA合成阻害剤)、タキソール及びタキソテール(微小管阻害剤)並びにシスプラチン及びオキサリプラチン(DNAアルキル化剤)であった。各化学療法剤に対して、2つのセレン含有化合物を、マウスの異種移植腫瘍で評価した。インビボにおける効果は、セレン含有化合物の無毒量を用いて観察した(約0.2mg/マウス/日、またはそれ未満)。
【0016】
注目すべきことに、セレン含有化合物、5-メチルセレノシステイン(MSC)及びセレノ-L-メチオニン(SLM)は、0.2mg/マウス/日で、28日間ノーマルヌードマウスに経口投与した場合も毒性を示さないことが見出され、また、抗癌剤によって誘発される毒性を効果的に調節する物質である。ある実施形態は、セレン含有化合物、MSC及びSLMが、薬剤感受性を有する異種移植片及び比較的耐性の腫瘍において、イリノテカンの治癒率を増強することを実証する。さらに、MSCは、頭部及び頸部腫瘍ヒトA253及びFaDu扁平上皮癌を有する異種移植片において、タキソール、シスプラチン(CDDP)、オキサリプラチン、シクロホスファミド、タキソテール及びドキソルビシン(Dox)の抗腫瘍活性を増強する。理論に拘束されるわけではないが、抗癌剤の効力を増強する作用は、抗腫瘍活性の増強及び毒性の低減と関連すると考えられる。
【0017】
本発明は、腺癌、黒色腫、リンパ腫、肉腫、白血病、並びに、肺、乳房、卵巣、頭部及び/または頸部、前立腺、子宮頸部、子宮内膜、直腸結腸、胃、肝臓、卵管、食道、小腸、膵臓、腎臓、副腎、膣、外陰、脳、精巣の腫瘍のような様々な臓器の腫瘍を含む(これらに限定されない)腫瘍の治療に用いることができる。抗腫瘍薬とセレンの併用療法は、放射線、外科手術および免疫療法等の他の抗癌治療と共に用いられてもよい。本発明は、ヒト、マウス、ラット、犬などを含む哺乳類において抗腫瘍効果を目的として用いることができる。
【0018】
以下、実施例により本発明を説明する。実施例は説明を目的とするものであり、いかなる限定も意図しない。
【実施例1】
【0019】
本実施例は、実施例2〜7で使用するセレン化合物及び抗癌剤の投与スケジュールについて記載する。さらに、樹立した腫瘍異種移植片についても記述する。
【0020】
5-メチルセレノシステイン(MSC)
2つのスケジュールを評価した:
1)MSC(0.2mg/マウス/日×28)を、イリノテカンと併用した。イリノテカンは、週1度投与した。MSCは、イリノテカン投与を開始する7日間前から毎日経口投与し、28日間投与した。
2)MSC(0.2mg/マウス/日×14)を、タキソール,CDDP,Dox,タキソテール及びシクロホスファミドの単回静脈投与と併用した。MSCは、前記各薬剤の投与を開始する7日間前から毎日経口投与し、14日間投与した。
【0021】
抗癌剤投与
抗癌剤投与スケジュールは以下の通りである。
i. イリノテカン(CPT-11) 週に1度静脈投与×4週間
ii. タキソール 単回静脈投与
iii. シスプラチン(CDDP) 単回静脈投与
iv. ドキソルビシン(Dox) 単回静脈投与
v. シクロホスファミド 単回静脈投与
vi. オキサリプラチン 単回静脈投与
vii. タキソテール 単回静脈投与
【0022】
腫瘍異種移植片
腫瘍異種移植片(全ての腫瘍が約3日間の倍加時間を有する)は、最初に皮下に106培養細胞を移植することによって樹立され、治療前に50mg以上の非-壊死腫瘍組織を移植することによって数世代継代された。
以下の腫瘍異種移植片を樹立した。
i. HCT-8:低分化結腸癌、野生型p53を発現
ii. HT-29:高分化結腸癌、突然変異種p53を発現
iii. A253:高分化の、頭部及び頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、p53非発現
iv. FaDu:低分化の、頭部及び頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、突然変異種 p53発現
【実施例2】
【0023】
イリノテカンの抗腫瘍活性に対するセレン含有化合物の効果の評価
本実施例では、イリノテカンの抗腫瘍活性に対するセレンの効果を確認した。イリノテカンは、100mg/kg/週で4週間(最大耐容量)及び200mg/kg/週で4週間(中毒性)、単独で、並びに0.2mg/マウス/日MSCと併用で28日間、HCT-8大腸異種移植片を有するヌードマウスに投与された。結果を図1に示す。データから、MSCと併用した100mg/kg及び200mg/kgのイリノテカンに対するレスポンスのキネティクスは、ほぼ完全な腫瘍退縮(治療終了後1〜2週間内に達成される)であり、その一方、MSCはイリノテカンの致死量(200mg/kg)に対して完全な保護作用を示すことが分かる。イリノテカン単独で治療した動物の生存率が50%であるのに対し、MSCと併用したイリノテカンの治療では全ての動物が生き残った。すなわち、MSCは、治癒率を増加することによって及び毒性を減じることによって、イリノテカンの効力を増強する。
【0024】
図2のデータは、2つの結腸癌(HCT-8及びHT-29)並びに頭部及び頸部の扁平上皮癌(FaDu及びA253)の異種移植腫瘍において、様々な投与量のイリノテカン±MSCで治療した場合の、異種移植片の治癒をまとめたものである。イリノテカンの週間最大耐容量は4週間の場合、100mg/kg/週である。200mg/kg及び300mg/kgは、それぞれ、動物の50%及び100%が4週間生き残ることができなかった致死量である。100mg/kg/週×4週間のイリノテカン(最大耐容量)では、治癒率が、HCT-8異種移植片の場合20%から100%に、HT-29異種移植片の場合0%から20%に、FaDu異種移植片の場合30%から100%に、並びにA253異種移植片の場合20%から60%に増加した。図2のデータからはまた、HT-29(大腸)及びA253(SCCHN)腫瘍は、HCT-8及びFaDu腫瘍より、イリノテカンの最大耐容量に対する感受性が小さいが、イリノテカンの投与量が多いほど、治癒率も高くなり、200及び300mg/kg/週×4週間の場合、HT-29ではそれぞれ40%及び50%、A253腫瘍ではそれぞれ80%及び100%に達することが分かる。200mg/kgイリノテカンとMSCを併用した場合、毒性(死亡率)なく治癒率が増加した。300mg/kgイリノテカンとMSCを併用した場合、20%の死亡率を伴い、治癒率が増加した。これに対して、単独の200及び300mg/kgイリノテカンは50%及び100%死亡率を伴う。図2のデータはさらに、MSCがイリノテカンの最大耐容量に対し応答性が異なる複数のヒト異種移植腫瘍において、イリノテカンの治癒率を効果的に調節するということを実証する。
【実施例3】
【0025】
最大耐容量のイリノテカンと併用した際のMSC及びSLMの抗腫瘍活性の比較
本実施例は、セレン化合物が抗腫瘍薬の効果を高めるために使用できることを実証する。例として、MSC及びSLMをイリノテカンと併用で使用した。図3に示す結果は、イリノテカン(100mg/kg/週×4)の抗腫瘍活性に対するMSC及びSLM(0.2mg/マウス/日×28)の効果の比較評価を示す。A253及びFaDuの両方で、SLMはMSCと同程度に、イリノテカンの抗腫瘍活性を増強し、その効果がMSCに特異的ではないことを示した。
【実施例4】
【0026】
最大耐容量の2倍で投与したイリノテカンの抗腫瘍活性及び毒性に対する、選択的モジュレータとしてのMSC及びSLMの比較評価
本実施例は、セレン化合物が抗腫瘍薬の毒性を減じるため、抗腫瘍薬の投与量を増加できることを実証する。異種移植片においてイリノテカンとの併用で達成される治療の相乗効果がMSCに特異的かどうか決定するために、2つのセレン含有化合物(MSC及びSLM)と併用した場合、及び併用しない場合のイリノテカンの抗腫瘍活性を、A253(SCCHN)異種移植片において、最大耐容量(200mg/kg/週×4)で比較した。結果を図4に示す。データは、イリノテカン(200mg/kg/週×4)と併用した場合の、MSCとSLMの抗腫瘍活性を比較するものである。図4に示すように、MSC及びSLMは、イリノテカンの抗腫瘍活性を同程度に増強した(治療した動物の80%が毒性を示すことなく治癒された)。有意な致死性が、この量のイリノテカン単独で治療された動物の約50%で観察された。MSCあるいはSLMとイリノテカン(200mg/kg/週×4)の併用治療で生き残った動物の80%が治癒されたのに対し、イリノテカンの単独治療で生き残った動物50%のうち治癒されたのは40%であった。従って、MSC及びSLMは、イリノテカンの抗腫瘍活性の選択的調節に、同程度に効果的である。
【0027】
イリノテカンの抗腫瘍活性の増強作用におけるMSCの効果を表1にまとめる。
【0028】
【表1】
【0029】
データは、ヒト腫瘍の異種移植片に対する、単独及びMSCと併用した場合のイリノテカンの抗腫瘍活性(治癒率)を示す。4つの腫瘍全てにおいて、MSCはイリノテカンの抗腫瘍活性を有意に増強する。死亡率のせいで、イリノテカンの中毒量(200及び300mg/kg/週×4)に対する腫瘍応答を正確に評価することはできなかったため、多量のイリノテカンを送達するイリノテカンの中毒量に対し、正常組織を保護するMSCの能力を実証した。結果として、評価した4つのヒト腫瘍異種移植片で治癒率が増加した。イリノテカン300mg/kg/週×4投与では、死亡率100%という結果だったのに対し、MSCと併用した場合、死亡率は20%に減少した。
【実施例5】
【0030】
ヒト腫瘍を有するマウスにおける、MSCによる抗癌剤の抗腫瘍活性の調節
本実施例は、セレン化合物が、広範囲に渡る抗腫瘍薬の抗腫瘍活性を増強するために使用できることを実証する。MSCによるイリノテカンの治療効果及び治癒の調節が、薬剤選択的であるかどうかを決定するために、ヒトA253及びFaDu(SCCHN)腫瘍の異種移植片において、異なる類に属し異なる作用メカニズムを有する薬剤の抗腫瘍活性を、薬剤単独で、並びに無毒の量及び日程のMSC(0.2mg/マウス/日×14)と併用して評価した(図5)。図5に示すデータは、最大耐容量のシスプラチン(8mg/kg×1)、シクロホスファミド(100mg/kg×1)、タキソール(35mg/kg×1)及びドキソルビシン(10mg/kg×1)の使用を表す。結果から、MSCは、A253及びFaDu腫瘍の異種移植片において、各薬剤の抗腫瘍活性を増強することが分かる。MSCは、これらの臨床的に重要な化学療法剤に関し、毒性を増加させずに、抗腫瘍活性を増強した。図5のデータは、MSCの持つ、抗癌剤の抗腫瘍活性に対する調節作用が、広範囲の抗癌剤をカバーすることを明確に示す。
【実施例6】
【0031】
進行性ウォード(ward)癌を有するラット、並びに、頭部及び頸部のヒト扁平上皮癌A253及びFaDuの異種移植片を有するヌードマウスにおける、オキサリプラチンの抗腫瘍活性に対するセレンの効果
本実施例は、セレンが広範囲の抗腫瘍薬の抗腫瘍活性を高めることをさらに実証する。本実施例では、オキサリプラチン及びドキソルビシンの抗腫瘍活性に対するセレンの効果を、以下のようにテストした。セレンの効果は、進行性ウォード直腸結腸癌(3000mg)を有するラットにおけるオキサリプラチンの抗腫瘍活性で確認した。ラットには、5及び10mg/kgのオキサリプラチンを単回静脈注射で投与する14日前から経口で毎日MSC(0.75mg/ラット/日)あるいは生理食塩水を投与し、オキサリプラチン投与後引き続き7日間投与した(すなわち、計21日間MSCを投与した)。オキサリプラチンは生理食塩水及びMSCによる治療後14日目に投与された。データは、5及び10mg/kgのオキサリプラチンが同程度の抗腫瘍活性(腫瘍増殖阻害)を示すこと、及び、オキサリプラチンとMSCを併用して治療したラットは、全ての動物が約20〜24日目に腫瘍が検出できなかったため(すなわち、治癒した)、腫瘍増殖阻害効果が有意に増強されたことを示す(図6)。興味深いことに、最大治癒率は、オキサリプラチンの単回静脈投与後約3週間経たないと検出されなかった(遅延性抗腫瘍効果)。さらに、5(最大耐容量)及び10mg/kgが同程度の治癒率をもたらしたので(図7)、オキサリプラチンによる用量反応がないことは確実である。さらに、10mg/kgのオキサリプラチンは、単独では毒性を示したが、MSCとの併用(高い治癒率を示す)では、検出可能な毒性(体重減少及び下痢)をなんら示さなかった。それゆえ、MSCは、高い選択性を有し、オキサリプラチンと併用してラットウォード直腸結腸腫瘍を治療した場合、相乗効果を示した。
【0032】
この実施形態における他の例として、オキサリプラチン及びドキソルビシンの抗腫瘍活性に対するセレンの効果を、ヒト扁平上皮癌異種移植片でテストした。図8に示すデータは、ドキソルビシン(10mg/kg×1)及びオキサリプラチン(15mg/kg×1)を単独で、並びにMSCと併用して治療した場合の、異種移植腫瘍(A253/FaDu)の抗腫瘍反応のキネティクスをグラフで示すものである。マウスに、薬剤の単回静脈投与前の7日間、MSC(0.2mg/マウス/日)を経口で毎日先行投与し、さらに7日間継続投与した(すなわち計14日のMSC治療)。結果から、MSCがA253及びFaDu異種移植片の両方で、両方の薬剤の抗腫瘍活性を増強したことが分かる(図8及び図9)。MSCは、オキサリプラチン及びドキソルビシンの抗腫瘍活性を増加したが、なんら毒性を伴わなかった。それゆえ、MSCは、A253及びFaDu腫瘍の異種移植片において、高度選択的に、オキサリプラチン及びドキソルビシンの抗腫瘍活性を増強する。
【0033】
単独及びMSCと併用した場合のオキサリプラチンとドキソルビシンの最大耐容量を比較すると、薬剤の最大耐容量(MTD)が、MSCと併用した場合により高いことが分かる。これはMSCが、薬剤の毒性から、正常組織を保護するためである。これらの結果を表2にまとめる。
【0034】
【表2】
【実施例7】
【0035】
本実施例は、セレンが別の抗癌剤(タキソテール)の抗腫瘍活性を増強することを実証する。タキソテールの効果を、単独で、及びMSC(0.2mg/マウス/日×14)と併用して、ヒトA253及びFaDu(SCCHN)腫瘍の異種移植片で評価した。タキソテールは単回静脈注射で投与し、MSCは、タキソテール治療の7日前に先行投与を開始し、14日間毎日経口投与した。結果(図10)は、両方の腫瘍がタキソテールの最大耐容量(60mg/kg)に非感受性であったにもかかわらず、MSCとタキソテールを併用した場合、腫瘍が治癒した動物の数が、A253異種移植片で60%、FaDu異種移植片で80%に増加したことを示す。これらの結果は、MSCがタキソテールの抗腫瘍活性を増強すること、及びこれらの腫瘍のタキソテール抵抗性を回復する能力があることを示す。
【0036】
さらに、セレンが、タキソテールが誘発する毒性に対し、保護作用を有することも分かった。タキソテールは単回静脈注射によって、ヌードマウスに、非毒性量(60mg/kg)あるいは中毒量(100mg/kg)で投与し、MSCは、タキソテール治療前に先行投与を開始し、14日間毎日経口的に投与した。平均体重に対する結果を図11に示す。100mg/kgのタキソテールが、総体重の約15%を減少させたのに対し、MSCと併用した場合、体重減少はわずかであり、未処置の動物と同程度であった。生存効果を図12に示す。100mg/kgのタキソテールでは死亡率40%という結果になったが、MSCと併用した場合、100mg/kgのタキソテールで治療した動物の100%が、毒性の兆候を示さず生き残った(図12)
【0037】
これらの結果から、セレン化合物が抗癌剤の抗腫瘍活性を増強することが明白に示される。セレン化合物はまた、抗腫瘍薬の毒性を減じ、それによって、抗腫瘍薬の最大耐容量を増加する。
【0038】
当業者は、明細書の開示に基づいて、多少の修正が容易に行われることを認識するであろう。そのような修正は本発明の範囲内に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、HCT-8大腸異種移植片を有するヌードマウスにおける、イリノテカン(CPT-11)の抗腫瘍活性に対するセレンの効果を示すグラフである。イリノテカンは、週1回の静脈投与で4週間投与し、メチルセレノシステイン(MSC)は経口投与(p.o.)で、イリノテカンの投与前7日間の先行投与を含めて28日間毎日投与した。
【図2】図2は、イリノテカン単独で、あるいはMSC(0.2mg/マウス/日×42日)と併用して4週間投与したときの、結腸癌、並びに頭部及び頸部扁平上皮癌の異種移植腫瘍における、イリノテカンの抗腫瘍活性に対するセレン化合物の効果を示すグラフである。イリノテカンは静脈(i.v.)投与によって投与した。イリノテカンはMSC投与の開始後7日目から投与した。*,**及び***は、50%,100%及び20%死亡率の中毒量を示す。イリノテカンの中毒量を生き延びた動物は、腫瘍効果を計算するために使用した。
【図3】図3は、A253及びFaDu腫瘍の異種移植片の抗腫瘍活性の増強における、MSC及びSLCの有効性を示すグラフである。イリノテカンは濃度100mg/kgで使用した。
【図4】図4は、イリノテカンの抗腫瘍活性に対する2つのセレン化合物の有効性を示す別のグラフである。イリノテカンは濃度200mg/kgで使用した。
【図5】図5は、A253及びFaDu腫瘍における、薬剤(シスプラチン、タキソール、シクロホスファミド及びドキソルビシン)の抗腫瘍活性に対するMSCの効果を示すグラフである。●はコントロール、▲は薬剤単独、■は薬剤+MSCを示す。
【図6】図6は、コントロール、オキサリプラチン単独、あるいはオキサリプラチンとMSCの併用で治療した場合の、進行性ウォード(Ward)直腸結腸癌を有するラットの平均腫瘍重量に対するセレンの効果を示すグラフである。オキサリプラチンは単回静脈注射で投与し、MSC(0.75mg/ラット/日)は経口経路によって、オキサリプラチン処理前14日間の先行投与を含む計21日間毎日投与した。各グループは2つの独立した実験から得られた8匹のラットから構成される。
【図7】図7は、進行性直腸結腸癌を有するラットにおける、オキサリプラチンの抗腫瘍活性に対するセレンの効果を示すグラフである。データは、オキサリプラチン単独及びオキサリプラチンとMSCを併用した際のものである。オキサリプラチンは単回静脈注射で投与し、MSC(0.75mg/ラット/日)は経口経路によって、オキサリプラチン投与開始14日前からの先行投与を含む21日間毎日投与した。各グループは2つの独立した実験から得られた8匹のラットから構成される。
【図8】図8は、コントロール、薬物単独及び薬物とMSCを併用した際の、ヒトA253並びにFaDu頭部及び頸部異種移植片における、薬物(ドキソルビシン及びオキサリプラチン)の抗腫瘍活性に対するMSCの効果を示すグラフである。各グループは2つの独立した実験から得られた10匹のラットから構成される。
【図9】図9は、A253及びFaDu腫瘍におけるドキソルビシンあるいはオキサリプラチンの抗腫瘍活性に対するMSCの効果を示す別のグラフである。ドキソルビシンは単回静脈注射により、オキサリプラチンは、週1回・4週間の静脈投与により、投与された。MSC(0.2mg/マウス/日)は、ドキソルビシンとの併用では14日間、及びオキサリプラチンとの併用では28日間毎日、経口投与によって投与され、先行投与は化学療法の7日前から開始した。各グループは2つの独立した実験から得られた10匹のラットから構成される。
【図10】図10は、コントロール、薬物単独及びMSCと薬物を併用した際の、ヒトA253並びにFaDu頭部及び頸部異種移植片における、タキソテールの抗腫瘍活性に対するMSCの効果を示すグラフである。
【図11】図11は、単独投与あるいはタキソテールと併用投与した際の、ヌードマウスの平均体重に対するセレンの影響を示すものであって、時間を関数とするグラフである。タキソテールは単回静脈注射によって投与し、MSCはタキソテールによる治療の7日前に先行投与を開始し、14日間毎日、経口投与により、0.2mg/マウス/日で投与した。
【図12】図12は、ラットでの、タキソテール誘発毒性に対するセレンの効果を生存者の割合として算出したグラフである。タキソテールは単独あるいはMSCと併用で、表示量投与した。MSCはタキソテールによる治療の7日前に先行投与を開始し、14日間毎日、経口投与により投与した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に癌治療の分野に関する。より詳しくは、化学療法剤の抗腫瘍活性を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学療法は、癌治療に対し、現在承認され広く用いられている方法である。癌の種類にもよるが、化学療法は多くの場合、治療の主要なコースである。例えば、化学療法は、単独でも、放射線治療(白血病、リンパ腫、肉腫、黒色腫、骨髄腫等だけでなく、卵巣、精巣、乳房、膀胱、大腸、頭部及び頸部の癌を含む様々な癌の放射線治療)のような他の治療との併用でも、広く用いられている。
【0003】
化学療法剤は、大きくいくつかのグループに分類できる。大多数の抗癌剤は細胞毒性作用を有する。これらの薬物はそのメカニズムに基づいて前記グループに分類される。化学療法剤は癌の治療に極めて有用であることが証明されているが、それらはほぼ全て、癌細胞だけでなく健康な細胞を殺す能力を持つため、大きな毒性効果を有している。抗癌剤が伴う毒性によって、しばしば治療の中断が余儀なくされる。治療の中断は、患者のコンディション及び臨床転帰の予後にネガティブな影響を与え、生活の質を損なう結果となり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
癌治療の分野では、現在もなお、新しい化学療法剤を同定する、あるいは既存の薬の効力を増強する必要性が存在している。最近、インビトロの研究で、セレン化合物によって抗癌剤の毒性問題を解決することが試みられているが(Steifel等,1999年,WO99/64018;Chen等,1986年,J. Nutrition, 116(12):2453-2465;Dobric等,1998年,J. Environ. Pathol. Toxicol Oncol.,17:291-299)、化学療法剤の抗腫瘍活性に対するセレンの効果は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明において、セレン化合物の投与が、抗癌剤の抗腫瘍活性を増強することが確認された。データは、異種移植片を有する動物を用いたインビボの研究から得られたものである。
【0006】
従って、本発明は、抗癌剤の抗腫瘍活性を増強する方法を開示する。当該方法は、腫瘍を有する個体に、抗腫瘍薬及びセレン化合物を投与することを含む。セレン化合物は、抗癌剤の投与前、投与中あるいは投与後に投与できる。ある実施形態では、セレン化合物は、化学療法の前に投与され、化学療法中及び化学療法後も継続される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
明細書中の「治療量」という語は、セレン化合物を同時投与しない場合の、毒性を考慮した上で臨床的に許容される範囲の治療薬の投与量を意味する。
【0008】
明細書中の「治癒」という語は、腫瘍の完全な消滅を意味する。触診で検出できなかった場合、腫瘍が完全に消失したとみなす。
【0009】
本発明は、抗癌剤の抗腫瘍活性を増強する方法を開示する。この方法は、そのような治療を必要としている個体に、一以上の抗癌剤及び一以上のセレン化合物を投与することを含む。セレン化合物は、抗癌剤を投与する前、同時、あるいは後に投与することができる。化学療法とセレン化合物の投与を併用することによって、化学療法剤の抗腫瘍毒性を増強することができる。
【0010】
本発明は、フルオロピリミジン、ピリミジン ヌクレオシド、プリン、白金類似体、アントラサイクリン、ポドフィロトキシン、カンプトテシン、ホルモン及びホルモン類似体、酵素、蛋白及び抗体、ビンカアルカロイド、タキサンを含む抗癌剤の抗腫瘍活性を増強するために用いることができる。本発明に用いられる抗癌剤は、一般に一以上の以下に示す機能別カテゴリーに分類される:抗ホルモン剤、葉酸代謝拮抗薬、微小管阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬、抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤及び抗ウイルス薬。
【0011】
本発明に有用なセレン化合物は、有機形であっても無機形であってもよい。毒性が少ないことが明らかにされているため、有機形のセレンを用いることが好ましい。有機形に分類される有用なセレン化合物として、例えばメチルセレノシステイン(MSC)及びセレノ-L-メチオニン(SLM)を挙げることができる。セレン化合物の投与量は、約200μg/ヒト〜約3.6mg/ヒトの範囲であり、1年あるいはそれ以上に渡って毎日投与することができる。一般に800μg/患者以下であれば、関連毒性がなく安全であると考えられている。
【0012】
本発明には、化学療法と、セレン投与とを併用するステップが含まれる。一以上の化学療法剤を、癌に対する化学療法剤の分野で良く知られている基準に従って使用することができる。化学療法剤の投与量及び投与計画は、当業者に十分に知られている。セレンの投与は、化学療法の開始前、化学療法中、あるいは化学療法休止後に開始することができる。化学療法の開始前に始めた場合、セレンの投与は、化学療法中、及び化学療法の休止後も継続することができる。同様に、化学療法中に開始した場合、セレンの投与は化学療法休止後も継続することができる。
【0013】
抗腫瘍活性を増強する本発明の方法は、いかなる化学療法剤にも適用可能であるが、代表的なものとして、イリノテカン、FU、タキソール、シスプラチン アドリアマイシン、オキサリプラチン、シクロホスファミド、タキソテール、EGF阻害薬、及びVGF阻害剤を挙げることができる。さらに、本発明は、放射線治療などの他の抗癌治療の抗腫瘍活性を増強するために使用することもできる。
【0014】
化学療法剤の毒性を減じるセレンの効果を実証するために、腫瘍を有するヌードマウスを用いて研究を行った。従前の研究は、インビトロにおいて、セレンがいくつかの抗癌剤の毒性(心毒性等)を減じることを報告したが、その研究では、抗癌剤の効力に対するセレンの効果は評価されていない。
【0015】
本発明の一実施態様において、メチルセレノシステイン(MSC)及びセレノ-L-メチオニン(SLM)が、抗癌剤の抗腫瘍活性を増強する有効な薬剤であると確認された。臨床的に認可された化合物から、5つの異なる類を代表する薬剤を選択した。選択されテストされた化学療法剤は、イリノテカン(トポイソメラーゼI阻害剤)、ドキソルビシン(トポイソメラーゼII阻害剤)、FU(DNA合成阻害剤)、タキソール及びタキソテール(微小管阻害剤)並びにシスプラチン及びオキサリプラチン(DNAアルキル化剤)であった。各化学療法剤に対して、2つのセレン含有化合物を、マウスの異種移植腫瘍で評価した。インビボにおける効果は、セレン含有化合物の無毒量を用いて観察した(約0.2mg/マウス/日、またはそれ未満)。
【0016】
注目すべきことに、セレン含有化合物、5-メチルセレノシステイン(MSC)及びセレノ-L-メチオニン(SLM)は、0.2mg/マウス/日で、28日間ノーマルヌードマウスに経口投与した場合も毒性を示さないことが見出され、また、抗癌剤によって誘発される毒性を効果的に調節する物質である。ある実施形態は、セレン含有化合物、MSC及びSLMが、薬剤感受性を有する異種移植片及び比較的耐性の腫瘍において、イリノテカンの治癒率を増強することを実証する。さらに、MSCは、頭部及び頸部腫瘍ヒトA253及びFaDu扁平上皮癌を有する異種移植片において、タキソール、シスプラチン(CDDP)、オキサリプラチン、シクロホスファミド、タキソテール及びドキソルビシン(Dox)の抗腫瘍活性を増強する。理論に拘束されるわけではないが、抗癌剤の効力を増強する作用は、抗腫瘍活性の増強及び毒性の低減と関連すると考えられる。
【0017】
本発明は、腺癌、黒色腫、リンパ腫、肉腫、白血病、並びに、肺、乳房、卵巣、頭部及び/または頸部、前立腺、子宮頸部、子宮内膜、直腸結腸、胃、肝臓、卵管、食道、小腸、膵臓、腎臓、副腎、膣、外陰、脳、精巣の腫瘍のような様々な臓器の腫瘍を含む(これらに限定されない)腫瘍の治療に用いることができる。抗腫瘍薬とセレンの併用療法は、放射線、外科手術および免疫療法等の他の抗癌治療と共に用いられてもよい。本発明は、ヒト、マウス、ラット、犬などを含む哺乳類において抗腫瘍効果を目的として用いることができる。
【0018】
以下、実施例により本発明を説明する。実施例は説明を目的とするものであり、いかなる限定も意図しない。
【実施例1】
【0019】
本実施例は、実施例2〜7で使用するセレン化合物及び抗癌剤の投与スケジュールについて記載する。さらに、樹立した腫瘍異種移植片についても記述する。
【0020】
5-メチルセレノシステイン(MSC)
2つのスケジュールを評価した:
1)MSC(0.2mg/マウス/日×28)を、イリノテカンと併用した。イリノテカンは、週1度投与した。MSCは、イリノテカン投与を開始する7日間前から毎日経口投与し、28日間投与した。
2)MSC(0.2mg/マウス/日×14)を、タキソール,CDDP,Dox,タキソテール及びシクロホスファミドの単回静脈投与と併用した。MSCは、前記各薬剤の投与を開始する7日間前から毎日経口投与し、14日間投与した。
【0021】
抗癌剤投与
抗癌剤投与スケジュールは以下の通りである。
i. イリノテカン(CPT-11) 週に1度静脈投与×4週間
ii. タキソール 単回静脈投与
iii. シスプラチン(CDDP) 単回静脈投与
iv. ドキソルビシン(Dox) 単回静脈投与
v. シクロホスファミド 単回静脈投与
vi. オキサリプラチン 単回静脈投与
vii. タキソテール 単回静脈投与
【0022】
腫瘍異種移植片
腫瘍異種移植片(全ての腫瘍が約3日間の倍加時間を有する)は、最初に皮下に106培養細胞を移植することによって樹立され、治療前に50mg以上の非-壊死腫瘍組織を移植することによって数世代継代された。
以下の腫瘍異種移植片を樹立した。
i. HCT-8:低分化結腸癌、野生型p53を発現
ii. HT-29:高分化結腸癌、突然変異種p53を発現
iii. A253:高分化の、頭部及び頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、p53非発現
iv. FaDu:低分化の、頭部及び頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、突然変異種 p53発現
【実施例2】
【0023】
イリノテカンの抗腫瘍活性に対するセレン含有化合物の効果の評価
本実施例では、イリノテカンの抗腫瘍活性に対するセレンの効果を確認した。イリノテカンは、100mg/kg/週で4週間(最大耐容量)及び200mg/kg/週で4週間(中毒性)、単独で、並びに0.2mg/マウス/日MSCと併用で28日間、HCT-8大腸異種移植片を有するヌードマウスに投与された。結果を図1に示す。データから、MSCと併用した100mg/kg及び200mg/kgのイリノテカンに対するレスポンスのキネティクスは、ほぼ完全な腫瘍退縮(治療終了後1〜2週間内に達成される)であり、その一方、MSCはイリノテカンの致死量(200mg/kg)に対して完全な保護作用を示すことが分かる。イリノテカン単独で治療した動物の生存率が50%であるのに対し、MSCと併用したイリノテカンの治療では全ての動物が生き残った。すなわち、MSCは、治癒率を増加することによって及び毒性を減じることによって、イリノテカンの効力を増強する。
【0024】
図2のデータは、2つの結腸癌(HCT-8及びHT-29)並びに頭部及び頸部の扁平上皮癌(FaDu及びA253)の異種移植腫瘍において、様々な投与量のイリノテカン±MSCで治療した場合の、異種移植片の治癒をまとめたものである。イリノテカンの週間最大耐容量は4週間の場合、100mg/kg/週である。200mg/kg及び300mg/kgは、それぞれ、動物の50%及び100%が4週間生き残ることができなかった致死量である。100mg/kg/週×4週間のイリノテカン(最大耐容量)では、治癒率が、HCT-8異種移植片の場合20%から100%に、HT-29異種移植片の場合0%から20%に、FaDu異種移植片の場合30%から100%に、並びにA253異種移植片の場合20%から60%に増加した。図2のデータからはまた、HT-29(大腸)及びA253(SCCHN)腫瘍は、HCT-8及びFaDu腫瘍より、イリノテカンの最大耐容量に対する感受性が小さいが、イリノテカンの投与量が多いほど、治癒率も高くなり、200及び300mg/kg/週×4週間の場合、HT-29ではそれぞれ40%及び50%、A253腫瘍ではそれぞれ80%及び100%に達することが分かる。200mg/kgイリノテカンとMSCを併用した場合、毒性(死亡率)なく治癒率が増加した。300mg/kgイリノテカンとMSCを併用した場合、20%の死亡率を伴い、治癒率が増加した。これに対して、単独の200及び300mg/kgイリノテカンは50%及び100%死亡率を伴う。図2のデータはさらに、MSCがイリノテカンの最大耐容量に対し応答性が異なる複数のヒト異種移植腫瘍において、イリノテカンの治癒率を効果的に調節するということを実証する。
【実施例3】
【0025】
最大耐容量のイリノテカンと併用した際のMSC及びSLMの抗腫瘍活性の比較
本実施例は、セレン化合物が抗腫瘍薬の効果を高めるために使用できることを実証する。例として、MSC及びSLMをイリノテカンと併用で使用した。図3に示す結果は、イリノテカン(100mg/kg/週×4)の抗腫瘍活性に対するMSC及びSLM(0.2mg/マウス/日×28)の効果の比較評価を示す。A253及びFaDuの両方で、SLMはMSCと同程度に、イリノテカンの抗腫瘍活性を増強し、その効果がMSCに特異的ではないことを示した。
【実施例4】
【0026】
最大耐容量の2倍で投与したイリノテカンの抗腫瘍活性及び毒性に対する、選択的モジュレータとしてのMSC及びSLMの比較評価
本実施例は、セレン化合物が抗腫瘍薬の毒性を減じるため、抗腫瘍薬の投与量を増加できることを実証する。異種移植片においてイリノテカンとの併用で達成される治療の相乗効果がMSCに特異的かどうか決定するために、2つのセレン含有化合物(MSC及びSLM)と併用した場合、及び併用しない場合のイリノテカンの抗腫瘍活性を、A253(SCCHN)異種移植片において、最大耐容量(200mg/kg/週×4)で比較した。結果を図4に示す。データは、イリノテカン(200mg/kg/週×4)と併用した場合の、MSCとSLMの抗腫瘍活性を比較するものである。図4に示すように、MSC及びSLMは、イリノテカンの抗腫瘍活性を同程度に増強した(治療した動物の80%が毒性を示すことなく治癒された)。有意な致死性が、この量のイリノテカン単独で治療された動物の約50%で観察された。MSCあるいはSLMとイリノテカン(200mg/kg/週×4)の併用治療で生き残った動物の80%が治癒されたのに対し、イリノテカンの単独治療で生き残った動物50%のうち治癒されたのは40%であった。従って、MSC及びSLMは、イリノテカンの抗腫瘍活性の選択的調節に、同程度に効果的である。
【0027】
イリノテカンの抗腫瘍活性の増強作用におけるMSCの効果を表1にまとめる。
【0028】
【表1】
【0029】
データは、ヒト腫瘍の異種移植片に対する、単独及びMSCと併用した場合のイリノテカンの抗腫瘍活性(治癒率)を示す。4つの腫瘍全てにおいて、MSCはイリノテカンの抗腫瘍活性を有意に増強する。死亡率のせいで、イリノテカンの中毒量(200及び300mg/kg/週×4)に対する腫瘍応答を正確に評価することはできなかったため、多量のイリノテカンを送達するイリノテカンの中毒量に対し、正常組織を保護するMSCの能力を実証した。結果として、評価した4つのヒト腫瘍異種移植片で治癒率が増加した。イリノテカン300mg/kg/週×4投与では、死亡率100%という結果だったのに対し、MSCと併用した場合、死亡率は20%に減少した。
【実施例5】
【0030】
ヒト腫瘍を有するマウスにおける、MSCによる抗癌剤の抗腫瘍活性の調節
本実施例は、セレン化合物が、広範囲に渡る抗腫瘍薬の抗腫瘍活性を増強するために使用できることを実証する。MSCによるイリノテカンの治療効果及び治癒の調節が、薬剤選択的であるかどうかを決定するために、ヒトA253及びFaDu(SCCHN)腫瘍の異種移植片において、異なる類に属し異なる作用メカニズムを有する薬剤の抗腫瘍活性を、薬剤単独で、並びに無毒の量及び日程のMSC(0.2mg/マウス/日×14)と併用して評価した(図5)。図5に示すデータは、最大耐容量のシスプラチン(8mg/kg×1)、シクロホスファミド(100mg/kg×1)、タキソール(35mg/kg×1)及びドキソルビシン(10mg/kg×1)の使用を表す。結果から、MSCは、A253及びFaDu腫瘍の異種移植片において、各薬剤の抗腫瘍活性を増強することが分かる。MSCは、これらの臨床的に重要な化学療法剤に関し、毒性を増加させずに、抗腫瘍活性を増強した。図5のデータは、MSCの持つ、抗癌剤の抗腫瘍活性に対する調節作用が、広範囲の抗癌剤をカバーすることを明確に示す。
【実施例6】
【0031】
進行性ウォード(ward)癌を有するラット、並びに、頭部及び頸部のヒト扁平上皮癌A253及びFaDuの異種移植片を有するヌードマウスにおける、オキサリプラチンの抗腫瘍活性に対するセレンの効果
本実施例は、セレンが広範囲の抗腫瘍薬の抗腫瘍活性を高めることをさらに実証する。本実施例では、オキサリプラチン及びドキソルビシンの抗腫瘍活性に対するセレンの効果を、以下のようにテストした。セレンの効果は、進行性ウォード直腸結腸癌(3000mg)を有するラットにおけるオキサリプラチンの抗腫瘍活性で確認した。ラットには、5及び10mg/kgのオキサリプラチンを単回静脈注射で投与する14日前から経口で毎日MSC(0.75mg/ラット/日)あるいは生理食塩水を投与し、オキサリプラチン投与後引き続き7日間投与した(すなわち、計21日間MSCを投与した)。オキサリプラチンは生理食塩水及びMSCによる治療後14日目に投与された。データは、5及び10mg/kgのオキサリプラチンが同程度の抗腫瘍活性(腫瘍増殖阻害)を示すこと、及び、オキサリプラチンとMSCを併用して治療したラットは、全ての動物が約20〜24日目に腫瘍が検出できなかったため(すなわち、治癒した)、腫瘍増殖阻害効果が有意に増強されたことを示す(図6)。興味深いことに、最大治癒率は、オキサリプラチンの単回静脈投与後約3週間経たないと検出されなかった(遅延性抗腫瘍効果)。さらに、5(最大耐容量)及び10mg/kgが同程度の治癒率をもたらしたので(図7)、オキサリプラチンによる用量反応がないことは確実である。さらに、10mg/kgのオキサリプラチンは、単独では毒性を示したが、MSCとの併用(高い治癒率を示す)では、検出可能な毒性(体重減少及び下痢)をなんら示さなかった。それゆえ、MSCは、高い選択性を有し、オキサリプラチンと併用してラットウォード直腸結腸腫瘍を治療した場合、相乗効果を示した。
【0032】
この実施形態における他の例として、オキサリプラチン及びドキソルビシンの抗腫瘍活性に対するセレンの効果を、ヒト扁平上皮癌異種移植片でテストした。図8に示すデータは、ドキソルビシン(10mg/kg×1)及びオキサリプラチン(15mg/kg×1)を単独で、並びにMSCと併用して治療した場合の、異種移植腫瘍(A253/FaDu)の抗腫瘍反応のキネティクスをグラフで示すものである。マウスに、薬剤の単回静脈投与前の7日間、MSC(0.2mg/マウス/日)を経口で毎日先行投与し、さらに7日間継続投与した(すなわち計14日のMSC治療)。結果から、MSCがA253及びFaDu異種移植片の両方で、両方の薬剤の抗腫瘍活性を増強したことが分かる(図8及び図9)。MSCは、オキサリプラチン及びドキソルビシンの抗腫瘍活性を増加したが、なんら毒性を伴わなかった。それゆえ、MSCは、A253及びFaDu腫瘍の異種移植片において、高度選択的に、オキサリプラチン及びドキソルビシンの抗腫瘍活性を増強する。
【0033】
単独及びMSCと併用した場合のオキサリプラチンとドキソルビシンの最大耐容量を比較すると、薬剤の最大耐容量(MTD)が、MSCと併用した場合により高いことが分かる。これはMSCが、薬剤の毒性から、正常組織を保護するためである。これらの結果を表2にまとめる。
【0034】
【表2】
【実施例7】
【0035】
本実施例は、セレンが別の抗癌剤(タキソテール)の抗腫瘍活性を増強することを実証する。タキソテールの効果を、単独で、及びMSC(0.2mg/マウス/日×14)と併用して、ヒトA253及びFaDu(SCCHN)腫瘍の異種移植片で評価した。タキソテールは単回静脈注射で投与し、MSCは、タキソテール治療の7日前に先行投与を開始し、14日間毎日経口投与した。結果(図10)は、両方の腫瘍がタキソテールの最大耐容量(60mg/kg)に非感受性であったにもかかわらず、MSCとタキソテールを併用した場合、腫瘍が治癒した動物の数が、A253異種移植片で60%、FaDu異種移植片で80%に増加したことを示す。これらの結果は、MSCがタキソテールの抗腫瘍活性を増強すること、及びこれらの腫瘍のタキソテール抵抗性を回復する能力があることを示す。
【0036】
さらに、セレンが、タキソテールが誘発する毒性に対し、保護作用を有することも分かった。タキソテールは単回静脈注射によって、ヌードマウスに、非毒性量(60mg/kg)あるいは中毒量(100mg/kg)で投与し、MSCは、タキソテール治療前に先行投与を開始し、14日間毎日経口的に投与した。平均体重に対する結果を図11に示す。100mg/kgのタキソテールが、総体重の約15%を減少させたのに対し、MSCと併用した場合、体重減少はわずかであり、未処置の動物と同程度であった。生存効果を図12に示す。100mg/kgのタキソテールでは死亡率40%という結果になったが、MSCと併用した場合、100mg/kgのタキソテールで治療した動物の100%が、毒性の兆候を示さず生き残った(図12)
【0037】
これらの結果から、セレン化合物が抗癌剤の抗腫瘍活性を増強することが明白に示される。セレン化合物はまた、抗腫瘍薬の毒性を減じ、それによって、抗腫瘍薬の最大耐容量を増加する。
【0038】
当業者は、明細書の開示に基づいて、多少の修正が容易に行われることを認識するであろう。そのような修正は本発明の範囲内に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、HCT-8大腸異種移植片を有するヌードマウスにおける、イリノテカン(CPT-11)の抗腫瘍活性に対するセレンの効果を示すグラフである。イリノテカンは、週1回の静脈投与で4週間投与し、メチルセレノシステイン(MSC)は経口投与(p.o.)で、イリノテカンの投与前7日間の先行投与を含めて28日間毎日投与した。
【図2】図2は、イリノテカン単独で、あるいはMSC(0.2mg/マウス/日×42日)と併用して4週間投与したときの、結腸癌、並びに頭部及び頸部扁平上皮癌の異種移植腫瘍における、イリノテカンの抗腫瘍活性に対するセレン化合物の効果を示すグラフである。イリノテカンは静脈(i.v.)投与によって投与した。イリノテカンはMSC投与の開始後7日目から投与した。*,**及び***は、50%,100%及び20%死亡率の中毒量を示す。イリノテカンの中毒量を生き延びた動物は、腫瘍効果を計算するために使用した。
【図3】図3は、A253及びFaDu腫瘍の異種移植片の抗腫瘍活性の増強における、MSC及びSLCの有効性を示すグラフである。イリノテカンは濃度100mg/kgで使用した。
【図4】図4は、イリノテカンの抗腫瘍活性に対する2つのセレン化合物の有効性を示す別のグラフである。イリノテカンは濃度200mg/kgで使用した。
【図5】図5は、A253及びFaDu腫瘍における、薬剤(シスプラチン、タキソール、シクロホスファミド及びドキソルビシン)の抗腫瘍活性に対するMSCの効果を示すグラフである。●はコントロール、▲は薬剤単独、■は薬剤+MSCを示す。
【図6】図6は、コントロール、オキサリプラチン単独、あるいはオキサリプラチンとMSCの併用で治療した場合の、進行性ウォード(Ward)直腸結腸癌を有するラットの平均腫瘍重量に対するセレンの効果を示すグラフである。オキサリプラチンは単回静脈注射で投与し、MSC(0.75mg/ラット/日)は経口経路によって、オキサリプラチン処理前14日間の先行投与を含む計21日間毎日投与した。各グループは2つの独立した実験から得られた8匹のラットから構成される。
【図7】図7は、進行性直腸結腸癌を有するラットにおける、オキサリプラチンの抗腫瘍活性に対するセレンの効果を示すグラフである。データは、オキサリプラチン単独及びオキサリプラチンとMSCを併用した際のものである。オキサリプラチンは単回静脈注射で投与し、MSC(0.75mg/ラット/日)は経口経路によって、オキサリプラチン投与開始14日前からの先行投与を含む21日間毎日投与した。各グループは2つの独立した実験から得られた8匹のラットから構成される。
【図8】図8は、コントロール、薬物単独及び薬物とMSCを併用した際の、ヒトA253並びにFaDu頭部及び頸部異種移植片における、薬物(ドキソルビシン及びオキサリプラチン)の抗腫瘍活性に対するMSCの効果を示すグラフである。各グループは2つの独立した実験から得られた10匹のラットから構成される。
【図9】図9は、A253及びFaDu腫瘍におけるドキソルビシンあるいはオキサリプラチンの抗腫瘍活性に対するMSCの効果を示す別のグラフである。ドキソルビシンは単回静脈注射により、オキサリプラチンは、週1回・4週間の静脈投与により、投与された。MSC(0.2mg/マウス/日)は、ドキソルビシンとの併用では14日間、及びオキサリプラチンとの併用では28日間毎日、経口投与によって投与され、先行投与は化学療法の7日前から開始した。各グループは2つの独立した実験から得られた10匹のラットから構成される。
【図10】図10は、コントロール、薬物単独及びMSCと薬物を併用した際の、ヒトA253並びにFaDu頭部及び頸部異種移植片における、タキソテールの抗腫瘍活性に対するMSCの効果を示すグラフである。
【図11】図11は、単独投与あるいはタキソテールと併用投与した際の、ヌードマウスの平均体重に対するセレンの影響を示すものであって、時間を関数とするグラフである。タキソテールは単回静脈注射によって投与し、MSCはタキソテールによる治療の7日前に先行投与を開始し、14日間毎日、経口投与により、0.2mg/マウス/日で投与した。
【図12】図12は、ラットでの、タキソテール誘発毒性に対するセレンの効果を生存者の割合として算出したグラフである。タキソテールは単独あるいはMSCと併用で、表示量投与した。MSCはタキソテールによる治療の7日前に先行投与を開始し、14日間毎日、経口投与により投与した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、タキソール、イリノテカン、オキサリプラチン、タキソテール及びドキソルビシンからなる群から選択される抗癌剤の抗腫瘍活性を増強する方法であって、腫瘍を有する個体に、治療的有効量の抗癌剤及び抗癌剤の抗腫瘍活性を増強するセレン化合物を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
前記抗癌剤が5-フルオロウラシルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗癌剤がシクロホスファミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗癌剤がタキソールである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗癌剤がイリノテカンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗癌剤オキサリプラチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗癌剤がドキソルビシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗癌剤がタキソテールである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記セレン化合物がセレノ-L-メチオニンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記セレン化合物がメチルセレノシステインである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記セレン化合物が、抗癌剤の投与前、抗癌剤の投与中、抗癌剤の投与後及びそれらの組み合わせからなる群から選択される時間に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記腫瘍が、腺癌、黒色腫、リンパ腫、肉腫、肺癌、乳癌、卵巣癌、頭部癌、頸部癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮体癌、直腸結腸癌、胃癌、肝臓癌、卵管癌、食道癌、小腸癌、膵臓癌、腎臓癌、副腎癌、膣癌、外陰癌、脳腫瘍および精巣癌からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記個体が、外科手術、放射線及び免疫療法からなる群から選択される治療を受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記個体が人間である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記個体がマウスあるいはラットである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
治療が必要な個体に、治療量より多量のタキソテール、及びセレン化合物を投与するステップを含み、セレン化合物の投与により、タキソテールの毒性を減じ且つ抗腫瘍活性を増強させる、タキソテールを治療量より多量で使用する方法。
【請求項17】
前記セレン化合物がセレノ-L-メチオニンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記セレン化合物がメチルセレノシステインである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記セレン化合物が、タキソテールの投与前、タキソテールの投与中、タキソテールの投与後及びそれらの組み合わせからなる群から選択される時間に投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項1】
5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、タキソール、イリノテカン、オキサリプラチン、タキソテール及びドキソルビシンからなる群から選択される抗癌剤の抗腫瘍活性を増強する方法であって、腫瘍を有する個体に、治療的有効量の抗癌剤及び抗癌剤の抗腫瘍活性を増強するセレン化合物を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
前記抗癌剤が5-フルオロウラシルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗癌剤がシクロホスファミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗癌剤がタキソールである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗癌剤がイリノテカンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗癌剤オキサリプラチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗癌剤がドキソルビシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗癌剤がタキソテールである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記セレン化合物がセレノ-L-メチオニンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記セレン化合物がメチルセレノシステインである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記セレン化合物が、抗癌剤の投与前、抗癌剤の投与中、抗癌剤の投与後及びそれらの組み合わせからなる群から選択される時間に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記腫瘍が、腺癌、黒色腫、リンパ腫、肉腫、肺癌、乳癌、卵巣癌、頭部癌、頸部癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮体癌、直腸結腸癌、胃癌、肝臓癌、卵管癌、食道癌、小腸癌、膵臓癌、腎臓癌、副腎癌、膣癌、外陰癌、脳腫瘍および精巣癌からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記個体が、外科手術、放射線及び免疫療法からなる群から選択される治療を受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記個体が人間である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記個体がマウスあるいはラットである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
治療が必要な個体に、治療量より多量のタキソテール、及びセレン化合物を投与するステップを含み、セレン化合物の投与により、タキソテールの毒性を減じ且つ抗腫瘍活性を増強させる、タキソテールを治療量より多量で使用する方法。
【請求項17】
前記セレン化合物がセレノ-L-メチオニンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記セレン化合物がメチルセレノシステインである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記セレン化合物が、タキソテールの投与前、タキソテールの投与中、タキソテールの投与後及びそれらの組み合わせからなる群から選択される時間に投与される、請求項16に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−528696(P2006−528696A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533068(P2006−533068)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/015140
【国際公開番号】WO2004/103355
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(593108772)ヘルス リサーチ インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Health Research,Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/015140
【国際公開番号】WO2004/103355
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(593108772)ヘルス リサーチ インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Health Research,Inc.
【Fターム(参考)】
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