説明

抗真菌剤の標的としてのジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼおよびそのキナゾリノン系阻害剤

真菌のDHODHタンパク質(別名PyrE、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ、EC: 1.3.99.11)を標的とする抗真菌剤の同定方法であって、候補物質を真菌のDHODHタンパク質と接触させること、および該候補物質がDHODHタンパク質を結合または調節するかどうかを判定することを含み、結合または調節は該候補物質が抗真菌剤であることを示す、方法。具体的な例は、Aspergillus fumigatusおよびCandida albicansのDHODHタンパク質に関するものである。キナゾリノン母核を有するDHODH阻害剤もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗真菌剤の標的であるジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(dihydroorotate dehydrogenase)(DHODH)、DHODH阻害剤のスクリーニング方法、特定の群のDHODH阻害剤、および抗真菌性化合物としてのその使用、その阻害剤を含む医薬組成物、ならびに医療、特に真菌感染症にかかりやすいか、または該感染症を患っている個体の治療におけるその阻害剤の使用、に関する。具体的には、該化合物は、例えばAspergillus属の種およびCandida属の種の真菌によって引き起こされる、全身性または局所性の真菌感染症の治療における用途が見出される。
【背景技術】
【0002】
(序論)
真菌の病原体
侵襲性真菌感染症は、免疫無防備状態の宿主の疾患として十分に認識されている。この20年間に真菌感染症の記録された実例数が著しく増大している(Grollら, 1996, J Infect 33, 23〜32)。これは一つには真菌感染症の認知度の増大および診断の向上によるものである。しかしながら、この発生率の増大の主要な原因は、感染しやすい個体の数が大きく増大したことである。このことは、新規の積極的免疫抑制療法、集中治療における生存の増大、移植手術数の増大、および世界中での抗生物質の使用の拡大を含めたいくつかの要因による。
【0003】
ある種の患者の群で真菌感染症は高頻度で起こっており、肺移植のレシピエントは20%までのコロニー形成頻度を有し、同種造血幹(hoemopoetic stem)移植のレシピエントの真菌生物による感染および真菌感染症は、15%もの高さになっている(Ribaudら, 1999, Clin Infect Dis. 28:322〜30)。
【0004】
現在、4つの種類の抗真菌剤だけが全身性真菌感染症を治療するために利用できる。これらはポリエン(例えばアムホテリシンB)、アゾール(例えばケトコナゾールまたはイトラコナゾール)、エキノカンジン(例えばカスポフンギン)、およびフルシトシンである。
【0005】
ポリエンは、1950年代に最初に導入された最も古い種類の抗真菌剤である。正確な作用機構は依然として不明のままであるが、ポリエンはその外膜にステロールを含む生物に対して有効であるに過ぎない。アムホテリシンBは、膜ステロールと相互作用し、細孔を生じさせ、細胞質成分を漏出させ、その後に続いて細胞を死滅させることが提唱されている。
【0006】
アゾールは、シトクロムP450に依存する機構を通じて14α-デメチラーゼを抑制することによって機能する。このことは、膜ステロールのエルゴステロールの枯渇、およびステロール前駆体の蓄積をもたらし、変化した流動性および構造を有する細胞膜を生じさせる。
【0007】
エキノカンジンは、細胞壁合成酵素のβ-グルカンシンターゼを抑制することによって作用し、異常な細胞壁の形成、異常な浸透圧感受性、および細胞溶解をもたらす。
【0008】
フルシトシンは、細胞のピリミジン代謝、ならびにDNA、RNA、およびタンパク質の合成を妨げるピリミジン類縁体である。しかしながらフルシトシンに対する広範な耐性によりそれを治療上使用することは制限される。
【0009】
現在までのところ、現在利用できる抗真菌剤は、主として2つの細胞内標的のみ、すなわち膜ステロール(ポリエンおよびアゾール)ならびにβ-グルカンシンターゼ(エキノカンジン)のみに対して作用することを理解することができる。
【0010】
アゾールおよびポリエンの双方に対する耐性が広く報告されており、近年導入されたエキノカンジンのみが侵襲性真菌感染症と闘うこととなっている。エキノカンジンの使用が増大するにつれて、真菌における耐性が必然的に生じることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、将来患者に肯定的な治療結果を保証するために、新規な作用機構を有する新たな種類の抗真菌剤を同定することが必要とされている。
【0012】
DHODH
ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHODH;PyrE)は、ピリミジンのデノボ合成にかかわっており、ジヒドロオロト酸のオロト酸への酸化を触媒する。アミノ酸配列の差異に基づき2つの種類のDHODHが記述されており、クラスIIのDHODHは、大抵の真菌(A. fumigatusおよびC. albicansを含む)、動物、植物、グラム陰性細菌、および古細菌に見出される。これらは補助因子としてFMN分子を使用しており、ヒトおよび真菌の場合、このFMN分子は、呼吸鎖に由来するキノン補助因子を介した酸化によって再利用される。このヒトおよび真菌のタンパク質は、N末端の膜貫通ドメインによって、ミトコンドリア内膜と非共有結合している。キノン結合ポケットは、酵素の触媒部位に近接しているが、該部位とは別個のものである。クラスIの酵素は、グラム陽性細菌、トリパノソーマ、Saccharomyces cerevisiae、および近縁の真菌、例えばSaccharomyces属の他のメンバーなど、に見出される。
【0013】
レドキサール、ブレキナル、レフルノミド、A771726、およびアトバクオンを含めて、多数のヒトDHODH阻害剤が報告されている。場合によっては、阻害剤と複合体を形成したDHODHタンパク質の結晶構造が利用可能であり、ラットおよびP. falciparumのDHODHについてのタンパク質-阻害剤複合体の構造もまた利用可能である。該構造は、阻害剤がキノンポケット中に結合し、そのため補助因子が再酸化されるのを妨げることによって機能すると考えられることを示している。
【0014】
ある種のSaccharomyces属の菌種を除いて、研究されてきた真菌の諸種にわたってクラスIIのDHODHが分布していることは、これまでに調べられたすべての真菌で見出されており、この酵素の進化系統樹はその生物自体のそれと対応している。したがって、DHODHは、病原性真菌、例えばAspergillus fumigatus、Candida albicans、Candida glabrata、Coccidioides immitis、およびCryptococcus neoformansなどに存在している。ゲノム配列が特定の病原菌について利用できない場合、DHODHは、配列決定されたゲノムを有する近縁生物で同定されており、それによりBlastomyces属、Cladosporium属、およびScopulariopsis属の菌種でDHODHの存在が示されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、抗真菌剤としての使用に適したDHODH阻害剤の同定のための条件を最適化した。
【0016】
(発明の概要)
本発明は、抗真菌療法の標的としての真菌のDHODHに関し、具体的には候補薬剤が真菌のDHODH活性を阻害することができるかどうかを判定することによって、阻害剤、例えば小分子の、潜在的な抗真菌性化合物としての同定を最適化するための条件に関する。
【0017】
したがって、本発明は、下記:
・真菌のDHODHタンパク質を標的とする抗真菌剤の同定方法であって、
(a)候補物質を
(i)真菌のDHODHタンパク質;もしくは
(ii)配列番号:1もしくは2によって示される配列を含むDHODHタンパク質;または
(iii)(ii)もしくは(iii)と少なくとも50%の同一性を有するタンパク質;または
(iv)(ii)、(iii)、もしくは(iv)の変異体および/または少なくとも50アミノ酸長を有する断片を含むタンパク質
と接触させること;
(b)任意に、ジヒドロオロト酸(dihydroorotate)が500 μMであり、かつ/またはキノンが50 μMであり、かつ/または2,6-ジクロロインドフェノールが100 μMであり、かつ/または酵素活性が時間およびタンパク質濃度に関して線形範囲にあるようなDHODH酵素濃度であり、かつ/またはpHが8.0であり、かつ/またはNaClが150 mMであり、かつ/またはトリス HClが50 mMであり、かつ/または1% v/vのDMSOを有し、かつ/または8% v/vのグリセロールを有し、かつ/または0.08% v/vのトリトン(Trition) X-100を有し、かつ/または室温でインキュベートし、かつ/または20〜40分間インキュベートし、かつ/またはアッセイが0.375以上のZ’値を有し、かつ/またはアッセイが、酵素のない、もしくは完全に阻害された対照について5%未満の%CV値を有する、アッセイ条件下であること;ならびに
(c)候補物質が(i)、(ii)、(iii)、もしくは(iv)と結合し、またはこれらを調節するかどうかを判定することを含み、(i)、(ii)、(iii)、もしくは(iv)の結合または調節が、候補物質が抗真菌剤であることを示す、方法、
・抗真菌剤を同定するか、または得るための、上に定義した(i)、(ii)、(iii)、または(iv)の使用、
・上で同定した抗真菌剤を哺乳動物のDHODHと接触させ、その哺乳動物の酵素の結合もしくは調節をほとんど示さないか、または全く示さない抗真菌剤が同定されるように、
(i)配列番号:11によって示される配列を含む、哺乳動物のDHODHタンパク質;または
(ii)(i)と少なくとも80%の同一性を有するタンパク質;または
(iii)(i)もしくは(ii)の変異体および/または少なくとも50アミノ酸長を有する断片を含むタンパク質
を用いる、カウンタースクリーニング(counter-screen)の使用、
・抗真菌性化合物として使用するための、真菌のDHODHの機能を害する、上記方法によって同定された化合物、
・真菌感染症の予防用または治療用の医薬の製造における、本発明の方法によって同定された抗真菌剤の使用、ならびに
・本発明のスクリーニング方法によって同定された抗真菌剤を投与することを含む、真菌感染症の予防方法または治療方法、
を提供する。
【0018】
本発明の方法は、特定の群のDHODH阻害剤を同定している。こうした阻害剤は、式(I):
【0019】
【化1】

【0020】
[式中:
R1〜R4はそれぞれ独立して、H、F、Cl、または非置換もしくは置換の基C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、OR’、NR’R’’、シアノ、-COR’、-CO2R’、-CONR’R’’、-OCOR’、-NR’COR’’、および-OCONR’R’’から選択され、式中R’およびR’’は独立して、水素およびC1〜C4アルキルから選択され;
R5は、非置換もしくは置換のフェニルであり;かつ
R6は、C1〜C4アルキルである]
のキナゾリノン誘導体、ならびにその薬学的に許容される塩である。
【0021】
したがって、本発明はまた、式(I)のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物;真菌感染症の予防もしくは治療に使用するための式(I)のキナゾリノン誘導体、またはその薬学的に許容される塩;有効量の式(I)のキナゾリノン誘導体もしくはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、真菌感染症の予防方法または治療方法;ならびに真菌感染症の予防用もしくは治療用の医薬の製造における式(I)のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩の使用、も提供する。
【0022】
2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-7-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-6-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-5-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
2-イソプロピルスルファニル-5-メトキシ-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
2-エチルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-7-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
6-ジメチルアミノ-2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
3-(2-イソプロピル-フェニル)-2-イソプロピルスルファニル-3H-キナゾリン-4-オン、
3-(2-エチル-フェニル)-2-イソプロピルスルファニル-3H-キナゾリン-4-オン、
2-イソプロピルスルファニル-6-メトキシ-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
3-(2-ジメチルアミノ-フェニル)-2-イソプロピルスルファニル-3H-キナゾリン-4-オン、
2-エチルスルファニル-5-メトキシ-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
3-(2-エチル-フェニル)-2-エチルスルファニル-3H-キナゾリン-4-オン、
2-エチルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-5-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、もしくは
2-エチルスルファニル-3-(2-イソプロピル-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン
またはその薬学的に許容される塩であるDHODH阻害剤もまた提供する。
【発明の効果】
【0023】
(発明の詳細な説明)
上述のように、本発明は、抗真菌剤を同定するための、特定のタンパク質配列(本明細書において「本発明のタンパク質」という)の使用に関し、該タンパク質配列は、真菌のDHODHタンパク質(真菌のDHODHタンパク質の相同体および/もしくは断片を含む)のものであるか、または該DHODHタンパク質に由来する。本発明の方法は、潜在的な抗真菌性化合物としての化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書中で使用される場合、C1〜C4アルキル基またはC1〜C4アルキル部分は、直鎖状であってもよく、分枝していてもよい。適切なかかるアルキル基およびアルキル部分としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチルが挙げられる。
【0025】
本明細書中で使用される場合、C2〜C4アルケニル基またはC2〜C4アルケニル部分は、直鎖状であってもよく、分枝していてもよいが、好ましくは直鎖状である。それは、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む。それは、好ましくはC2〜C3アルケニル基である。適切なかかるアルケニル基およびアルケニル部分としては、ビニル、アリル、プロペニル、およびブテニルが挙げられる。
【0026】
アルキル基またはアルケニル基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。典型的には、それは3個以下の置換基、例えば1個または2個の置換基を有する。適切な置換基としては、好ましくはそれ自体が非置換のものであり、F、Cl、OH、およびO(C1〜C4アルキル)が挙げられる。アルキル基またはアルケニル基は、置換されていないことがより好ましい。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語DHODHは、ジヒドロオロト酸の酸化を触媒することができる酵素と定義することができる。本発明のDHODHは、酵素委員会の分類EC 1.3.3.1の中に入っている。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語抗真菌剤は、真菌の発育を遅らせるか、壊すか、もしくは妨げる薬剤、真菌感染症を治療するために使用される薬剤、または宿主に対してごく少ない毒性しか伴わずに宿主から選択的に真菌の病原体を排除する薬剤、として定義することができる。化合物の抗真菌効果は、インビトロで、例えば真菌の培養物を用いて測定することができ、またインビボで、例えば感染した宿主において測定することができる。
【0029】
本発明のタンパク質(すなわち真菌のDHODHタンパク質)は、そのファミリーの別のメンバーに対する配列の類似性によって定義することができる。上述のように、この類似性は、同一性百分率(例えば配列番号1、2、または11の配列に対する)に基づくものであってもよい。
【0030】
本発明のタンパク質は、例えば本発明の方法において使用される場合、単離された形態(非細胞性形態など)であってもよい。単離されたタンパク質は、DHODHタンパク質を含むことが好ましい。該タンパク質は、天然タンパク質を含んでいてもよく、合成タンパク質を含んでいてもよく、また組換えタンパク質を含んでいてもよい。該タンパク質は、天然タンパク質、合成タンパク質、または組換えタンパク質の組み合わせを含んでいてもよい。本発明のタンパク質は、天然に存在するDHODHタンパク質と、同一の配列を有していてもよく、異なる配列を有していてもよい。
【0031】
本明細書において、用語「から単離された」は、「の(of)」と読むことができることを理解されたい。したがって、特定の生物「から単離された」タンパク質への言及は、それをその生物から得ること以外の手段によって、例えば合成または組換えなどで、調製されたタンパク質を含む。
【0032】
本発明のタンパク質は、好ましくは、真菌から単離されたものであり、より好ましくは糸状菌から単離されたものであり、さらにより好ましくは子嚢菌から単離されたものである。
【0033】
本発明のタンパク質は、Absidia属;Acremonium属;Alternaria属;Aspergillus属;Bipolaris属;Blastomyces属;Blumeria属;Candida属;Cladosporium属;Coccidioides属;Colletotrichium属;Cryptococcus属;Curvularia属;Encephalitozoon属;Epicoccum属;Epidermophyton属;Exophiala属;Exserohilum属;Fonsecaea属;Fusarium属;Histoplasma属;Leptosphaeria属;Microsporum属;Mycosphaerella属;Neurospora属;Paecilomyces属;Paracoccidioides属;Penicillium属;Phialophora属;Phytophthora属;Plasmopara属;Pneumocystis属;Pseudallescheria属;Pyricularia属;Pythium属;Puccinia属;Rhizoctonia属;Rhizomucor属;Rhizopus属;Saccharomyces属;Scedosporium属;Scopulariopsis属;Sporothrix属;Trichophyton属;Trichosporon属;Ustilago属およびWangiella属から独立して選択される生物から単離されたものであることが好ましい。
【0034】
本発明のタンパク質は、Absidia corymbifera;Acremonium属の種:Alternaria alternata;Aspergillus flavus;Aspergillus fumigatus;Aspergillus nidulans;Aspergillus niger;Aspergillus parasiticus;Aspergillus terreus;Bipolaris属の種;Blastomyces dermatitidis;Blumeria graminis;Candida albicans;Candida glabrata;Candida krusei;Candida parapsilosis;Candida tropicalis;Cladosporium carrionii;Cladosporium cladosporoides;Cladosporium herbarium;Coccidioides immitis;Coccidioides posadasii;Curvularia lunata;Colletotrichium trifolii;Cryptococcus neoformans;Encephalitozoon cuniculi;Epicoccum nigrum;Epidermophyton floccosum;Exophiala属の種:Exserohilum rostratum;Fonsecaea pedrosoi;Fusarium graminarium;Fusarium solani;Fusarium sporotrichoides;Histoplasma capsulatum;Leptosphaeria nodorum;Microsporum canis;Mycosphaerella graminicola;Paecilomyces lilanicus;Paecilomyces varioti;Paracoccidioides brasiliensis;Penicillium chrysogenum;Phialophora verrucosa;Phytophthora capsici;Phytophthora infestans;Plasmopara viticola;Pneumocystis jiroveci;Puccinia coronata;Puccinia graminis;Pyricularia oryzae;Pythium ultimum;Rhizoctonia solani;Rhizomucor属の種:Rhizopus属の種:Saccharomyces属の種;Scedosporium apiospermum;Scedosporium prolificans;Scopulariopsis brevicaulis;Sporothrix属の種;Trichophyton mentagrophytes;Trichophyton interdigitale;Trichophyton rubrum;Trichosporon asahii;Trichosporon beigeliiおよびUstilago maydisの種から選択される生物から単離されたものであることが好ましい。
【0035】
上述の本発明のタンパク質の変異体もまた提供され、以下に述べられる。
【0036】
本発明のタンパク質は、実質的にタンパク質配列の配列番号1もしくは2、またはその変異体を含むことが好ましい。
【0037】
用語「組換えタンパク質」によって、組換えDNA、または当業者に知られているタンパク質の技術もしくは方法を用いて生産された、アミノ酸またはタンパク質が意味される。
【0038】
本明細書において、用語「変異体」、および用語「実質的にタンパク質配列(substantially the protein sequence)」は、関連配列を指すために使用される。以下に述べるように、かかる関連配列は、典型的には、所与の配列と、例えばその配列の全長にわたって、または所与の長さの一部分にわたって、相同性がある(同一性百分率を共有している)。関連配列はまた、当該配列の断片であってもよく、相同配列の断片であってもよい。
【0039】
用語「変異体」、および用語「実質的にタンパク質配列」によって、本発明者らは、言及されている配列のいずれか1つのアミノ酸配列/タンパク質配列と、少なくとも50%、好ましくは60%、より好ましくは70%、およびさらにより好ましくは80%の配列同一性を有する配列を意味する。「実質的にタンパク質配列」である配列は、対応の配列と同一であってもよい。
【0040】
言及した任意の配列に対する65%よりも大きい同一性を有するアミノ酸配列/タンパク質配列もまた想定している。言及した任意の配列に対する70%よりも大きい同一性を有するアミノ酸配列/タンパク質配列もまた想定している。言及した任意の配列に対する75%よりも大きい同一性を有するアミノ酸配列/タンパク質配列もまた想定している。言及した任意の配列に対する80%よりも大きい同一性を有するアミノ酸配列/タンパク質配列もまた想定している。アミノ酸配列/タンパク質配列は、好ましくは言及した任意の配列と85%の同一性を有し、言及した任意の配列と、より好ましくは90%の同一性を有し、さらにより好ましくは92%の同一性を有し、さらにより好ましくは95%の同一性を有し、さらにより好ましくは97%の同一性を有し、さらにより好ましくは98%の同一性を有し、最も好ましくは99%の同一性を有する。
【0041】
上述の同一性百分率は、原配列の全長にわたって、または原配列の15アミノ酸、20アミノ酸、50アミノ酸、または100アミノ酸の領域にわたって、測定することができる。好ましい実施態様において、同一性百分率は、配列番号1、2、または11に対して測定される。変異体のタンパク質は、配列番号1、2、もしくは11、または配列番号1、2、もしくは11の一部と少なくとも40%の同一性、例えば少なくとも60%の同一性、または少なくとも80%の同一性、を有することが好ましい。
【0042】
他の適切な変異体は、相同するヌクレオチド配列を有するが、置換するアミノ酸と類似の生物物理学的性質の側鎖を有するアミノ酸をコードする異なるコドンで置換することによって保存的変化が生じるように変化させた配列の全体または一部を含む、変異体である。例えば、小さく、非極性で、疎水性のアミノ酸としては、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、およびメチオニンが挙げられる。大きく、非極性で、疎水性のアミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが挙げられる。極性で、中性のアミノ酸としては、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられる。正電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、リシン、アルギニン、およびヒスチジンが挙げられる。負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、およびグルタミン酸が挙げられる。Candida属を含むある種の生物が、大多数の真核生物で使用されているコドンと比較して、非標準的なコドンを使用していることは公知である。かかる生物に由来するタンパク質と本明細書に示した配列との比較では、こうした差異を考慮に入れられるべきである。
【0043】
タンパク質配列の他の修飾、すなわち、例えばアセチル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、タンパク質分解による切断、またはリガンドへの結合によって、翻訳中または翻訳後に行われる修飾、もまた想定しており、特許請求した発明の範囲内のものである。
【0044】
本発明のタンパク質は、融合タンパク質として使用することができ、該融合タンパク質は、別のタンパク質のアミノ酸配列(もしくはその一部;好ましくはそのタンパク質の少なくとも10アミノ酸、20アミノ酸、もしくは50アミノ酸の部分)に、任意にN末端もしくはC末端で、共有結合(例えばペプチド結合)を介して融合した、DHODHポリペプチドまたはその断片として定義される。
【0045】
用語「変異体」、および用語「実質的にタンパク質配列」はまた、上述した相同配列(特定の配列に対する同一性百分率を有する)の断片を含む、対応タンパク質配列の断片も含む。タンパク質の断片は、典型的には少なくとも10個のアミノ酸、例えば少なくとも20個、30個、50個、80個、100個、150個、200個、300個、400個、または500個のアミノ酸を含むことになろう。該断片は、そのタンパク質のいずれかの末端または両端から、少なくとも3個のアミノ酸、例えば少なくとも10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、または110個のアミノ酸を欠いていてもよい。本発明の1つの実施態様において、本発明のタンパク質は、DHODHのミトコンドリア標的化配列および膜貫通領域を除去するようにN末端で切断されたDHODH断片である。これらの配列および領域は、TMHMM、PSORTII、またはMitoProtIIなどの公的に入手可能なソフトウェアを用いることによって、または膜貫通領域(例えば15〜20個の連続する疎水性残基)の場合には目視(eye)によって、決定することができる。
【0046】
本発明は、DHODHタンパク質の調節因子(modulators)、例えば本発明のタンパク質の活性の阻害剤を同定するために使用することができる、スクリーニング方法を提供する。該方法の1つの実施態様では、候補物質を本発明のタンパク質と接触させ、候補物質がそのタンパク質を結合または調節するか否かを判定する。
【0047】
調節因子は、該タンパク質の活性を促進する(刺激する)ものであってもよく、阻害する(拮抗する)ものであってもよい。治療用調節因子(真菌感染症に対する)は、本発明のタンパク質の活性を阻害するであろう。
【0048】
該方法は、インビトロ(細胞の内部または外部)で行ってもよく、インビボ、例えば細胞、細胞培養物、または細胞抽出物で行ってもよい。その細胞は、そのポリヌクレオチドまたはタンパク質が自然に存在している細胞であってもなくてもよい。その細胞は真菌の細胞であってもなくてもよく、また本明細書中で述べたいずれかの真菌の細胞であってもなくてもよい。該方法において、タンパク質は、非細胞性形態で存在していてもよく、したがってタンパク質は、細胞から精製された組換えタンパク質の形態であってもよい。
【0049】
候補物質がタンパク質の活性を調節するか否かは、タンパク質が活性であることを可能にする条件下で、候補物質をタンパク質に供し、候補物質がタンパク質の活性を調節することができるかどうかを判定することによって、判定することができる。あるいは、タンパク質への候補物質の結合を測定することができる。結合は、分光学的変化などの、結合の際に変化するタンパク質の特性を測定することによって判定することができる。
【0050】
測定する活性は、DHODHの活性などの、本明細書において述べた本発明のタンパク質のどの活性であってもよい。1つの実施態様において、スクリーニング方法は、候補物質の存在下および非存在下でDHODH反応を行い、その候補物質が本発明のタンパク質のDHODH活性を阻害するかどうかを判定することを含み、DHODH反応は、候補物質が存在しない場合にそのタンパク質がジヒドロオロト酸の酸化を触媒する条件下で、前記タンパク質をジヒドロオロト酸と接触させることによって行われる。
【0051】
好ましい実施態様において、DHODH反応の阻害は、キノン、および2,6-ジクロロインドフェノール(DCIP)を加え、2,6-ジクロロインドフェノールの還元を分光学的に600 nmで検出することによって測定される。1,4-ベンゾキノン(Q0)、ユビキノン30(Q6)、ユビキノン50(Q10)、デシルユビキノン(QD)、ユビキノン5(コエンザイムQ1)、ユビキノン10(コエンザイムQ2)、およびユビキノン20(コエンザイムQ4)を含むさまざまなキノンが公知であり、適切であり得る。DCIPの代わりに他の適切な電子受容体を使用してもよく、アッセイはキノンの非存在下で行ってもよい。本発明の別の実施態様において、DHOの酸化を、直接的に、分光光度法で、例えば277 nmまたは296 nmで、測定することができる。
【0052】
アッセイの1つの実施態様において、ジヒドロオロト酸の濃度は、100〜2000 μMであり、好ましくは200〜1000 μMであり、より好ましくは500 μMであり;キノンの濃度は、25〜100 μMであり、好ましくは40〜60 μMであり、より好ましくは50 μMであり;2,6-ジクロロインドフェノールの濃度は、20〜400 μMであり、好ましくは50〜200 μMであり、より好ましくは100 μMであり;pHは、7.0〜9.0であり、好ましくは7.5〜8.5であり、より好ましくは8.0であり;NaClまたはKClの濃度は、75〜300 mMであり、好ましくは100〜200 mMであり、より好ましくは150 mMであり;トリス HClの濃度は、10〜200 mMであり、好ましくは25〜100 mMであり、より好ましくは50 mMであり;DMSOの濃度は、0〜5% v/vであり、好ましくは0.25〜3% v/vであり、さらにより好ましくは0.5〜2% v/vであり、最も好ましくは1% v/vであり;グリセロールの濃度は、0〜20% v/vであり、好ましくは1〜10% v/vであり、最も好ましくは8% v/vであり;トリトン(Triton) X-100の濃度は、0〜5% v/vであり、好ましくは0.25〜2% v/vであり、最も好ましくは0.08% v/vであり;反応温度は、10〜37℃であり、好ましくは15〜25℃であり、より好ましくは室温であり;Z’値は、0.2以上であり、好ましくは0.3以上であり、好ましくは0.375以上であり、より好ましくは0.4以上であり、さらにより好ましくは0.5以上であり、最も好ましくは0.6以上であり;%CVの値は、10%未満であり、好ましくは7.5%未満であり、より好ましくは5%未満であり、さらにより好ましくは3%未満である。
【0053】
本発明の1つの実施態様において、酵素濃度は、時間およびタンパク質濃度に関して線形範囲にある濃度である。すなわち、時間が、時間に対する生成物の生成量のプロットの線形段階にあるように、かつ酵素量と生成した生成物の量との間に直接の線形関係が存在するように、反応のインキュベーション時間およびDHODH酵素の濃度が選択される。インキュベーション時間は、好ましくは10〜60分であり、より好ましくは20〜40分である。
【0054】
パラメータである変動係数%CVおよびダイナミックレンジZ’は、以下のように定義され、式中SDは、標準偏差を表し;100%対照は、すべてのウェルが、阻害されない反応を含むマイクロウェルプレートを表し;0%対照は、すべてのウェルが、完全に阻害された反応を含むか、または酵素を含まない、マイクロウェルプレートを表す。
%CV=(プレート全体からのデータの標準偏差/プレート全体からのデータの平均値)×100
(式中、プレートは0%対照である)
Z’=1−((100%対照の3SD+0%対照の3SD)/(0%対照の平均値−100%対照の平均値))
【0055】
本発明の1つの実施態様において、上記の同定された抗真菌剤を哺乳動物のDHODHと接触させ、ヒトの酵素への結合もしくは調節をほとんど示さないか、または全く示さない抗真菌剤が同定されるように、真菌のDHODHに対してスクリーニングされた化合物は、配列番号:11によって示される配列を含む哺乳動物のDHODHタンパク質;もしくは哺乳動物のDHODHと少なくとも80%の同一性を有するタンパク質;または哺乳動物のDHODHの断片もしくは変異体を含み、該断片が少なくとも50アミノ酸長を有するタンパク質、に対するカウンタースクリーニング(counter-screen)において使用される。
【0056】
1つの実施態様において、該方法は、10 nM〜100 nMまたは20 nM〜100 nMのIC 50(酵素活性を50%阻害する阻害剤濃度)を有する阻害剤を同定することが可能である。別の実施態様において、該方法は、20 nM〜60 nmのKiを有する阻害剤を同定することが可能である。該方法は、可逆的であり、かつ/またはコエンザイムQ補助基質と競合的である、DHODHに対する結合(DHODHのキノンポケット内に阻害剤が結合したことを示す)を有する阻害剤を同定することが可能であり得る。したがって、阻害剤は、1つ以上のこれらの物理的性質を有することに基づき選択することができる。
【0057】
A. fumigatusのDHODH酵素については、以下の領域:
バリン87〜グルタミン酸135
バリン144〜ロイシン218
アスパラギン487〜アルギニン530
がキノンポケット環境に寄与している。
【0058】
C. albicansのDHODH酵素については、以下の領域:
チロシン52〜ロイシン95
バリン106〜セリン180
アスパラギン388〜グルタミン酸431
がキノンポケット環境に寄与している。
【0059】
したがって、阻害剤は、A. fumigatusもしくはC. albicansのDHODH酵素のこれらの領域、または他のDHODH酵素の同等の領域のいずれかに結合するその能力に基づき選択することができる。
【0060】
上記方法で試験することができる適切な候補物質としては、抗体産物(例えば、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、ならびにCDR移植抗体)が挙げられる。さらに、コンビナトリアルライブラリー、明確な化学的実体(defined chemical identities)、ペプチドおよびペプチド模倣物、オリゴヌクレオチド、ならびに天然産物のライブラリー、例えばディスプレイライブラリーなど(例えばファージディスプレイライブラリー)もまた試験することができる。候補物質は化合物であってもよい。例えば1反応についての10種の物質、および個別に試験された阻害を示すバッチ由来の物質の最初のスクリーニング(screen)において、候補物質のバッチを使用することができる。
【0061】
本発明のさらなる態様によれば、真菌感染症の治療用の医薬の製造のための本発明のタンパク質の使用が提供される。
【0062】
本発明のタンパク質は、好ましくはその誘導体または変異体を生成させるために、使用前に修飾してもよい。該タンパク質は、誘導体化してもよい。該タンパク質は、修飾しなくてもよく、誘導体化しなくてもよい。
【0063】
該医薬は、真菌感染症を遅らせるか、または予防するように適合されていることが好ましい。治療は、真菌感染症を遅らせるか、または予防することを含み得る。好ましくは、その薬物および/または医薬は阻害剤を含み、好ましくはDHODH阻害剤を含む。その薬物または医薬は、そのタンパク質またはその断片の機能を阻害するように適合されていることが好ましい。
【0064】
本発明の方法を、真菌のDHODHタンパク質を標的とする化合物を同定するために使用した。この方法によって、本発明者らは式(I)のキナゾリノン化合物をDHODH阻害剤として同定した。こうした化合物は、その後に抗真菌アッセイにおいて評価し、Aspergillus属の真菌のいくつかの菌株に対して抗真菌活性を有することが見出された。
【0065】
したがって、本発明は、真菌感染症の治療または予防に使用するための、式(I)のキナゾリノン化合物、およびその薬学的に許容される塩を提供する。本発明の方法によって同様に同定された他の化合物もまた、有益な抗真菌活性を有すると予測することができ、したがって抗真菌感染症(anti-fungal infection)の治療または予防に使用することもできる。
【0066】
式(I)の化合物において、R1〜R4は好ましくは独立して、H、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、OR’、NR’R’’、F、Cl、およびシアノから選択され、式中R’およびR’’は独立して、HまたはC1〜C4アルキルである。より好ましくは、R1〜R4は独立して、H、C1〜C4アルキル、OR’、およびNR’R’’から選択され、式中R’およびR’’は独立して、HまたはC1〜C4アルキルであり、好ましくはHまたはC1〜C2アルキルである。R1〜R4は独立して、H、メチル、-OMe、または-N(Me)2から選択されることが最も好ましい。
【0067】
R1〜R4自体は、置換されていなくてもよく、置換されていてもよい。R1〜R4が置換されている場合、これらは典型的には1個、2個、または3個の置換基、好ましくは1個の置換基を有し、該置換基は、それ自体が非置換のものである。適切な置換基としては、F、Cl、OH、およびO(C1〜C4アルキル)が挙げられる。R1〜R4は、置換されていないことがより好ましい。
【0068】
R5のフェニル環上の置換基は、典型的には、上記のR1〜R4として定義された基から選択される。好ましい置換基は、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、OR’、NR’R’’、F、Cl、およびシアノであり、式中R’およびR’’は独立して、HまたはC1〜C4アルキルである。より好ましい置換基は、C1〜C4アルキル、OR’、またはNR’R’’であり、式中R’およびR’’は独立して、HまたはC1〜C2アルキルである。典型的には、R5のフェニル環は、置換されていないか、または1個もしくは2個の置換基を有する。1個の置換基が好ましい。
【0069】
R5のフェニル環上の置換基は、置換されていなくてもよく、置換されていてもよい。典型的にはその置換基は、置換されていないか、または1個〜3個の置換基、好ましくは1個の置換基で置換されており、該置換基は、それ自体が非置換のものである。適切な置換基としては、F、Cl、OH、およびO(C1〜C4アルキル)が挙げられる。R5のフェニル環上の置換基は、置換されていないことがより好ましい。
【0070】
R6は、好ましくはエチルまたはイソプロピルであり、最も好ましくはイソプロピルである。
【0071】
本発明のキナゾリノン化合物の特定の例は、実施例3において化合物例1〜15として同定された化合物、およびその薬学的に許容される塩である。
【0072】
1つ以上のキラル中心を含む化合物は、鏡像異性的またはジアステレオ異性的に純粋な形態で使用してもよく、異性体の混合物の形態で使用してもよい。誤解を避けるためであるが、化合物は、所望される場合、溶媒和物の形態で使用することができる。さらに、誤解を避けるためであるが、化合物は、任意の互変異性型で使用することができる。
【0073】
本明細書中で使用される場合、薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される酸または塩基との塩である。薬学的に許容される酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、もしくは硝酸などの無機酸、およびクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、サリチル酸、トリクロロ酢酸、ピクリン酸、トリフルオロ酢酸、ケイ皮酸、パモ酸、マロン酸、マンデル酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、p-アミノ安息香酸、もしくはグルタミン酸などの有機酸の双方、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、グリセロリン酸塩、またはケトグルタル酸塩が挙げられる。薬学的に許容される無機酸付加塩または有機酸付加塩のさらなる例としては、Journal of Pharmaceutical Science, 66, 2 (1977)に記載された薬学的に許容される塩が挙げられ、それらの塩は当業者に知られている。薬学的に許容される塩基としては、アルカリ金属(例えばナトリウムまたはカリウム)の水酸化物およびアルカリ土類金属(例えばカルシウムまたはマグネシウム)の水酸化物、ならびに有機塩基、例えばアルキルアミン、アラルキルアミンおよび複素環アミン、リシン、グアニジン、ジエタノールアミン、およびコリンが挙げられる。
【0074】
薬学的に許容される酸付加塩としては、そのキナゾリノン化合物が形成することができる水和物も意図している。
【0075】
酸付加塩は、化合物の合成の直接的な生成物として得ることができる。別の方法において、その遊離塩基を適切な酸を含む適切な溶媒に溶解し、溶媒を蒸発させるか、またはその他の方法で該塩と溶媒とを分離することによって、該塩を単離してもよい。
【0076】
該溶媒和物は、当業者に知られている方法により、標準的な低分子量の溶媒を用いて得ることができる。
【0077】
そのキナゾリノン誘導体はまた、プロドラッグの形態で使用することもできる。プロドラッグは、インビボで所望の活性化合物に変換される本発明の化合物の類似体である。適切なプロドラッグの例としては、カルボン酸基がエステルを形成するように修飾されているか、またはヒドロキシル基がエステルもしくはカルバマートを形成するように修飾されている、式(I)の化合物が挙げられる。他の適切な方法は、当業者に知られているであろう。さらなる適切なプロドラッグとしては、式(I)の化合物の窒素原子が、エステル基またはアルキルエステル基の付加によって四級化されているものが挙げられる。例えば、R1〜R4のアミン基またはR5のフェニル環の置換基のアミン基の窒素原子は、-CH2-O-COR基(式中、Rは典型的にはメチルまたはtert-ブチルである)の付加によって四級化することができる。
【0078】
式(I)のキナゾリノン誘導体は、以下のように調製することができる。
【0079】
【化2】

【0080】
第一段階において、2-アミノ安息香酸化合物(IV)を、例えばメタノールおよび濃硫酸中で、エステル化する。別の方法において、2-ニトロ安息香酸を使用することができ、エステル化後、ラネーニッケルを含むメタノールなどの適切な還元条件で、そのニトロ基をアミノ基に変換させることができる。本発明の化合物の合成のさらなる詳細は、実施例3において見出すことができる。上記合成の出発物質は、市販されているか、または公知の技術を用いて当業者によって調製され得る。
【0081】
上述のように、式(I)のキナゾリノン化合物、および本発明の方法によって同定される他の化合物は、真菌感染症の治療または予防に有用である。該真菌感染症は、好ましくは、真菌による感染症を含み、より好ましくは子嚢菌による感染症を含み、さらにより好ましくは、Absidia属;Acremonium属;Alternaria属;Aspergillus属;Bipolaris属;Blastomyces属;Blumeria属;Candida属;Cladosporium属;Coccidioides属;Colletotrichium属;Cryptococcus属;Curvularia属;Encephalitozoon属;Epicoccum属;Epidermophyton属;Exophiala属;Exserohilum属;Fonsecaea属;Fusarium属;Histoplasma属;Leptosphaeria属;Microsporum属;Mycosphaerella属;Neurospora属;Paecilomyces属;Paracoccidioides属;Penicillium属;Phialophora属;Phytophthora属;Plasmopara属;Pneumocystis属;Pseudallescheria属;Pyricularia属;Pythium属;Puccinia属;Rhizoctonia属;Rhizomucor属;Rhizopus属;Saccharomyces属;Scedosporium属;Scopulariopsis属;Sporothrix属;Trichophyton属;Trichosporon属;Ustilago属およびWangiella属から選択される生物による感染症を含む。
【0082】
好ましくは、該真菌感染症は、Absidia corymbifera;Acremonium属の種:Alternaria alternata;Aspergillus flavus;Aspergillus fumigatus;Aspergillus nidulans;Aspergillus niger;Aspergillus parasiticus;Aspergillus terreus;Bipolaris属の種:Blastomyces dermatitidis;Blumeria graminis;Candida albicans;Candida glabrata;Candida krusei;Candida parapsilosis;Candida tropicalis;Cladosporium carrionii;Cladosporium cladosporoides;Cladosporium herbarium;Coccidioides immitis;Coccidioides posadasii;Curvularia lunata;Colletotrichium trifolii;Cryptococcus neoformans;Encephalitozoon cuniculi;Epicoccum nigrum;Epidermophyton floccosum;Exophiala属の種:Exserohilum rostratum;Fonsecaea pedrosoi;Fusarium graminarium;Fusarium solani;Fusarium sporotrichoides;Histoplasma capsulatum;Leptosphaeria nodorum;Microsporum canis;Mycosphaerella graminicola;Paecilomyces lilanicus;Paecilomyces varioti;Paracoccidioides brasiliensis;Penicillium chrysogenum;Phialophora verrucosa;Phytophthora capsici;Phytophthora infestans;Plasmopara viticola;Pneumocystis jiroveci;Puccinia coronata;Puccinia graminis;Pyricularia oryzae;Pythium ultimum;Rhizoctonia solani;Rhizomucor属の種:Rhizopus属の種:Saccharomyces属の種;Scedosporium apiospermum;Scedosporium prolificans;Scopulariopsis brevicaulis;Sporothrix属の種;Trichophyton mentagrophytes;Trichophyton interdigitale;Trichophyton rubrum;Trichosporon asahii;Trichosporon beigeliiおよびUstilago maydisの種から選択される生物による感染症を含む。
【0083】
1つの実施態様において、該真菌感染症は、Aspergillus属の生物、例えばAspergillus flavus;Aspergillus fumigatus;Aspergillus nidulans;Aspergillus niger;Aspergillus parasiticus;またはAspergillus terreusによるものである。
【0084】
本発明の化合物を用いて予防または治療することができる真菌性疾患の例としては、全身性感染症および表在性感染症の双方が挙げられる。該真菌性疾患としては、アスペルギルス症またはカンジダ症などのAspergillus属の種およびCandida属の種によって引き起こされる侵襲性真菌性疾患が挙げられるが、局所的な形態のこれらの感染症も挙げられる。本発明の化合物は、アムホテリシンよりも低い毒性を有する殺真菌薬が必要とされている、Aspergillus属の種によって引き起こされる疾患に対して特に有用である。本発明はまた、皮膚感染症の治療も提供する。
【0085】
本発明の化合物を用いて予防または治療し得る全身性感染症の例としては、全身性カンジダ症;肺アスペルギルス症、例えば骨髄の受容者またはAIDS患者などの免疫抑制患者における肺アスペルギルス症;全身性アスペルギルス症;クリプトコッカス髄膜炎;鼻脳型ムコール症(rhinocerebral mucomycosis);ブラストミセス症;ヒストプラスマ症;コクシジオイデス症(coccidiomycosis);パラコクシジオイデス症(paracoccidiomycosis);ロボ真菌症;スポロトリクム症;クロモブラストミコーシス;フェオフィホ真菌症;接合菌症;クリプトコッカス症、および播種性スポロトリクム症が挙げられる。
【0086】
本発明の化合物を用いて予防または治療することができる表在性感染症の例としては、白癬(ring worm);足白癬;爪白癬(爪感染症);皮膚、口、または膣のカンジダ症;および慢性粘膜皮膚カンジダ症が挙げられる。
【0087】
真菌によって引き起こされるか、または真菌がアレルギー反応を悪化させる疾患または病状であって、本発明の化合物を用いて予防または治療することができる疾患または病状の例としては、アレルギー性気管支肺喘息(allergic bronchopulmonary asthma)(ABPA);喘息、鼻副鼻腔炎、および副鼻腔炎が挙げられる。
【0088】
DHODH阻害剤、例えば式(I)のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩を、治療法(ヒトまたは動物)において使用するには、通常はそれを標準的な製薬の慣習に従って、例えばDHODH阻害剤と薬学的に許容される担体とを混合することによって、医薬組成物に製剤化することとなる。
【0089】
かくして、本発明のさらなる態様によれば、DHODH阻害剤、例えば式(I)のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物が提供される。該医薬組成物は、真菌感染症の予防または治療において、好ましくはAspergillus属またはCandida属の真菌感染症の治療において、特に有用である。
【0090】
該医薬組成物は典型的には、85重量%以下のDHODH阻害剤、例えば式(I)のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩、を含む。より典型的には、それは50重量%以下のDHODH阻害剤、例えば式(I)のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩、を含む。好ましい医薬組成物は、無菌のものであり、かつ発熱物質を含まないものである。DHODH阻害剤、例えば式(I)のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩が光学異性体として存在し得る場合、典型的には本発明によって提供される医薬組成物は、実質的に純粋な光学異性体を含む。
【0091】
DHODH阻害剤、例えば式(I)のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩は、薬物の投与に通常用いられる任意の経路によって、宿主に投与することができ、例えばそれは、非経口的、経口的、局所的(口腔内、舌下、もしくは経皮を含む)に、または吸入によって、投与することができる。いかなる場合においても、最も適した投与経路は、その特定のDHODH阻害剤、関与する感染性生物、宿主、および疾患の性質および重症度、ならびに宿主の体調によることとなる。
【0092】
上述のように、DHODH阻害剤、例えば式(I)のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩は、典型的には、薬学的に許容される担体または希釈剤とともに投与するように製剤化される。例えば、固体の経口形態は、活性化合物とともに、溶解補助剤、例えばシクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリン;希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチ、またはジャガイモデンプン;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、もしくはステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤;例えばデンプン、アラビアゴム(arabic gums)、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルピロリドン;脱凝集剤(disaggregating agents)、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩、またはグリコール酸デンプンナトリウム;発泡性混合物(effervescing mixtures);色素;甘味剤;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸など;ならびに一般に医薬製剤に用いられる非毒性で薬理学的に不活性な物質を含有することができる。かかる医薬製剤は公知の方法、例えば、混合、造粒、打錠、糖衣、またはフィルムコーティング工程により製造することができる。
【0093】
液体の経口投与用分散液は、溶液、シロップ、乳濁液、および懸濁液とすることができる。該溶液は、溶解補助剤、例えばシクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリンを含んでいてもよい。該シロップは、担体として、例えば、サッカロースを、またはグリセリンならびに/もしくはマンニトールおよび/もしくはソルビトールとともにサッカロースを含んでいてもよい。
【0094】
懸濁液および乳濁液は、担体として、例えば、天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含んでいてもよい。筋肉内注射用の懸濁液または溶液は、活性化合物とともに、薬学的に許容される担体、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えばプロピレングリコール;溶解補助剤、例えばシクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリン、および所望される場合、適切な量のリドカイン塩酸塩を含んでいてもよい。
【0095】
静脈注射用または注入用の溶液は、担体として、例えば、滅菌水、および溶解補助剤、例えばシクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリンを含んでいてもよく、また好ましくはそれらは滅菌した等張生理食塩水溶液の形態であってもよい。
【0096】
治療有効量のDHODH阻害剤、例えば式(I)のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩が患者に投与される。典型的な1日用量は、その特定の化合物の活性、治療される対象の年齢、体重および病状、疾患の種類および重篤度、ならびに投与頻度および投与経路に応じて、体重1 kgあたり200 mg以下、例えば体重1 kgあたり0.001〜200 mgである。好ましくは、1日投与量のレベルは、0.05 mg〜50 g、例えば0.1 mg〜10 mgである。DHODH阻害剤、例えば式(I)のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩は、典型的には毒性を示さない量で患者に投与される。
【0097】
DHODH阻害剤、例えば式(I)のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩は、1つ以上の他の治療上活性のある、例えば抗真菌性の化合物と、組み合わせて、例えば同時に、連続的に、または別々に、投与することができる。
【0098】
本明細書中に引用された特許および特許出願を含むがこれらに限定されないすべての刊行物は、それぞれの個々の刊行物が明確に、かつ個別に本明細書中に参照によって完全に示されているのと同様に援用されるように、指示されているのと同様に、本明細書中に参照によって援用される。
【0099】
以下の実施例は、説明的なものにすぎないと解釈されるべきであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0100】
実施例1:組換えDHODHの調製
1.1 組換え体のA. fumigatus DHODH
ミトコンドリア標的化配列および膜貫通領域が欠如している、アラニン89から始まるタンパク質(ATDTRA・・・)をコードする、N末端で切断されたDHODHのコンストラクト(AF_DHODH_TR)を調製した。QBiogeneからのFastRNA Pro Redキット、およびFastprep FP120装置を用いて、製造業者の使用説明書に従い、A. fumigatusのバイオマスからRNAを調製した。Turbo DNAfree(Ambion)を用いて、そのRNAをデオキシリボヌクレアーゼで処理し、混入するDNAを除去した。AMV逆転写酵素(Promega)を用いて、製造業者のプロトコルに従い、デオキシリボヌクレアーゼで処理したRNAからcDNAを調製した。
【0101】
プライマー:
配列番号3 JO_AFpyrEtr_F4
GACGACGACAAGATGGCGACGGATACCAGGGCAAG
配列番号4 JO_AFpyrE_R3
GAGGAGAAGCCCGGTCTATTGACGGTTTTTCTTTTCC
を設計し、連結非依存性クローニング(ligation independent cloning)(LIC)によって、A. fumigatus DHODHのcDNAをpET-30(Novagen)中にクローン化した。
【0102】
KODポリメラーゼ(Novagen)、A fumigatusのcDNA、ならびにプライマーJO_AFpyrEtr_F4およびJO_AFpyrE_R3を用いて、AF_DHODH_TRのハイフィデリティーPCRを行った。LICベクター(Novagen)中にクローン化させるために、Qiaquickカラム(Qiagen)を用いてそのPCR産物を精製し、T4 DNAポリメラーゼおよびdATPを用いて処理し、オーバーハングを生じさせた。次いで用意ができた準備済みのpET-30に対して、その処理したDNAをアニーリングさせた。その試料をコンピテントなNovaBlue E. coli(GigaSingles、Novagen)中に形質転換した。形質転換体からのプラスミドDNAを配列決定し、cDNAが正確にクローン化されていることを確認した。
【0103】
KpnIおよびHindIII(Fermentas)を用いてpET-30_ AF_DHODH_TRを消化し、AF_DHODH_TRのコード配列を遊離させた。pET43.1ベクターDNAもまたKpnIおよびHindIIIで処理した。T4 DNAリガーゼ(Fermentas)を用いて、14℃での一晩の反応で、そのベクターおよびインサートを一緒に連結させた。エレクトロポレーションによって、連結反応の試料をエレクトロコンピテントな(electrocompetent)Genehogs(invitrogen)中に形質転換した。形質転換体を得、プラスミドDNAを調製した。EcoRVを用いた診断的な消化により、pET43.1にAF_DHODH_TRがクローン化されていることを確認した。
【0104】
以下のようにタンパク質発現を行った。pET43.1_AF_DHODH_TR DNAをBL21 DE3 E. coli(Novagen)中に形質転換させ、その形質転換混合物をLB培地および100 ug/mlのアンピシリンの中で、振盪しながら37℃で一晩インキュベートした。1 mlのその一晩培養物を50 mlのLB アンピシリン、および1%のグルコース、ならびにフラビンモノヌクレオチド(最終濃度100 uM)の中に播種し、OD600が0.5よりも大きくなるまで、振盪しながら37℃でインキュベートした。IPTG(最終濃度0.5 mM)を加え、その培養物を18℃で振盪しながら一晩インキュベートした。
【0105】
培養物を4000 gで20分間遠心し、E coliをペレット状にした。Bugbuster混合物を調製し(1×Bugbuster、25 U/mlのベンゾナーゼ(Benzonase)、1 kU/mlのrリゾチーム(すべてNovagen)、Hisタグのついたタンパク質用のプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)1/100容、および100 uMのFMN)、3〜5 mlをその細菌のペレットに加えた。室温での10〜20分間の、混合を伴うインキュベーションの後、透明な溶菌液を得た。その溶菌液を4℃で20分間16000 gで遠心した。一方、1 mlのNi-NTA His-bind樹脂(Novagen)を5 mlの洗浄緩衝液(50 mMのリン酸ナトリウム、pH 8、500 mMのNaCl、20 mMのイミダゾール、0.1%のTween 20)で洗浄し、氷上でBugbuster混合物と前もって平衡させた。溶菌液の上清を、前もって平衡させた樹脂と、氷上で1〜2時間混合した。次いで、樹脂および溶菌液の混合物を0.8×4 cmのPoly-Prepクロマトグラフィーカラム(Bio-Rad)の中に注いだ。その素通り画分を収集した。樹脂を5 mlの洗浄緩衝液で2回洗浄した。タンパク質を4×0.5 mlの溶出緩衝液(50 mMのリン酸ナトリウム、pH 8、500 mMのNaCl、250 mMのイミダゾール、0.1%のTween 20、プロテアーゼ阻害剤カクテル1/100容)で溶出させた。次いで、PD10カラム(GE Healthcare)を用い、DHODHアッセイ緩衝液(50 mMのトリス-HCl、pH 8、150 mMのKCl、10%のグリセロール、0.1%のトリトンX-100)で溶出させる、緩衝液の交換を溶出液に施した。
【0106】
1.2 ヒト、Candida albicansおよびラットに由来する組換えDHODH
これらのタンパク質の生産方法は、AF_DHODHについて上で説明した方法と同じであった。ヒトおよびラットの場合、cDNAのクローンは、Geneservice社から得た。pCMVsport6中のヒトDHODHの完全なcDNAは、IMAGEクローン6064723(MGC70636)中に存在しているものであり、pExpress I中のラット(Rattus norvegicus)cDNAの塩基16〜1188は、IMAGEクローン7317263中に存在しているものであった。下に記載するプライマーJO_hD licF2およびJO_hD licR1を用いて、AF_DHODHについて説明したのと同様に、N末端で切断されたヒトDHODHをpET30中にLICによりクローン化し、次いでpET43.1中にサブクローニングした。下に記載したプライマーJO_rD licF2およびJO_rD licR1を用いて、LICクローニングにより、N末端で切断されたラットDHODHをpET43.1中に直接クローン化した。Candida albicansのcDNAを、上で説明したA. fumigatusのcDNAと同様に調製した。C. albicansの遺伝コードの相違のため、Zameitatら, 2006, FEBS Journal 273, 3183〜3191に記載されたのと同様に、PCR変異誘発(PCR mutagenesis)によって、2つのCTGコドンをTCGコドンにする変異誘発を起こし、続いて融合PCR(fusion PCR)を行った。プライマーJO_CAD licF3およびJO_CAD licR1を用いて、変異した産物をpGEMTeasy(Promega)中にクローン化させ、配列決定し、次いでpET43.1へのLICクローニングに供した。
配列番号5:JO_hD licF2 GACGACGACAAGATGGCCACGGGAGATGAGCG
配列番号6:JO_hD licR1 GAGGAGAAGCCCGGTTCACCTCCGATGATCTGCTC
配列番号7:JO_rD licF2 GACGACGACAAGATGACGGCCACAGGGGATGAC
配列番号8:JO rD licR1 GAGGAGAAGCCCGGTTCACCTCCGATGATCTGCTC
配列番号9:JO_CAD licF3
GACGACGACAAGATGTCAAGATCAGCAATCCATGA
配列番号10:JO_CAD licR1
GAGGAGAAGCCCGGTTCACTTATCATCAGAGCCAA
【0107】
pET-43.1中にクローン化させた後、組換えタンパク質を発現させ、精製するために、AF_DHODHについて上で概説した手順を行った。
【0108】
実施例2:DHODH阻害剤のハイスループットスクリーニング
分注カセットおよびプレートアダプターを備えたThermo Labsystems Multidrop 384装置(Multidrop(登録商標) 384)、ならびにTecan Genesis FreedomおよびTecan Te-Mo自動液体処理ロボットを用いて、スクリーニングを行った。
【0109】
1.以下の緩衝液およびストック溶液を調製した。
緩衝液A:62.5 mMのトリス HCl(pH 8.0)、150 mMのNaCl、10% v/vのグリセロール
DHO/コエンザイムQ2/DCIP溶液:19.848 mgのジヒドロオロト酸(dihydroorotate)(DHO;Sigma)を160 μlのDMSOに溶解した。コエンザイムQ2(Sigma)をDMSOに溶解し、10 mg/mlの濃度を得た。7.236 mgの2,6-ジクロロインドフェノール(DCIP;Sigma)を160 μlのDMSOに溶解した。127.36 μlのDHO、127.36 μlのDCIP、および318.4 μlのコエンザイムQ2を用いてストック溶液を調製し、緩衝液Aで80 mlとした。アッセイウェルにおける最終濃度は、DHOは500 μMであり、コエンザイムQは50 μMであり、DCIPは100 μMである。
【0110】
2.化合物をさまざまな希釈度で384ウェルのマイクロタイタープレートに分取し、100〜0.001 mMのアッセイにおける最終濃度を得た。プレートの2つずつのセットを、セットの一方が酵素を受け、セットの対照のほうは酵素を受けないように、使用した。化合物を頻繁にDMSOまたはDMSO/水の混合物に溶解するので、アッセイはウェル中1%(v/v)のDMSO最終濃度を示すように設定した。
【0111】
3.組換え体のA. fumigatus DHODHを緩衝液Aに懸濁させ、20 μl中1435.8 ngのタンパク質濃度を得た。次いで20 μlのDHODH溶液をすべての+酵素プレートに加え、20 μlの緩衝液Aをすべての対照の−酵素プレートに加えた。
【0112】
4.20 μlのDHO/コエンザイムQ2/DCIP溶液をすべてのウェルに加え、その後プレートをそれぞれ室温で24分間インキュベートし、次いで600 nmにてTecan Safire分光光度計で読み取った。
【0113】
ヒトまたはC. albicansに由来する組換えDHODHを同様の方法でアッセイした。酵素のバッチの活性の変動を考慮に入れるため、酵素濃度および反応時間を調節することが必要であり、そのためインキュベーション時間をC. albicansの酵素については20分とし、ヒトの酵素については34分とした。結果を表1に示す。アッセイの質についての測定値を表2に示す。真菌およびヒトの酵素について、化合物をスクリーニングし、真菌の酵素に対して選択的な化合物を同定した。本発明者らはまた、アッセイはNaClではなく、KClの150 mMの最終濃度で行うことができること、およびトリトンX-100の添加は、状況によっては有用であり得ることも見出した。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
実施例3:DHODH阻害剤
以下の化合物が、実施例2の方法によって、DHODH阻害剤として同定された。実施例2のスクリーニングの結果、およびこれらの化合物の調製の詳細も示す。
1.2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-7-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
2.2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-6-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
3.2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-5-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
4.2-イソプロピルスルファニル-5-メトキシ-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
5.2-エチルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-7-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
6.6-ジメチルアミノ-2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
7.2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
8.3-(2-イソプロピル-フェニル)-2-イソプロピルスルファニル-3H-キナゾリン-4-オン、
9.3-(2-エチル-フェニル)-2-イソプロピルスルファニル-3H-キナゾリン-4-オン、
10.2-イソプロピルスルファニル-6-メトキシ-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
11.3-(2-ジメチルアミノ-フェニル)-2-イソプロピルスルファニル-3H-キナゾリン-4-オン、
12.2-エチルスルファニル-5-メトキシ-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
13.3-(2-エチル-フェニル)-2-エチルスルファニル-3H-キナゾリン-4-オン、
14.2-エチルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-5-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
15.2-エチルスルファニル-3-(2-イソプロピル-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン。
【0117】
【表3】

【0118】
化合物例1〜15の合成
参考例1:5-ジメチルアミノ-2-ニトロ-安息香酸
5-アミノ-2-ニトロ安息香酸(500 mg、2.74 mmol)およびホルムアルデヒド(40%水溶液、2.5 mL、83.33 mmol)を含むアセトニトリルの混合物(10 mL)に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(690 mg、10.99 mmol)を少しずつ加え、その混合物を16時間攪拌した。メタノール(10 mL)を加え、反応混合物を真空中で蒸発させ、5-ジメチルアミノ-2-ニトロ-安息香酸(900 mg、89%)を褐色がかった黄色の固体として得た。
【0119】
参考例2:2-アミノ-4-メチル-安息香酸メチルエステル
2-アミノ-4-メチル-安息香酸(1.0 g、6.62 mmol)の乾燥メタノール溶液(10 mL)に、0℃で濃硫酸(1 mL)を加え、次いで16時間加熱還流した。その混合物を室温に冷却し、真空中で濃縮した。その粗製の化合物を水(25 mL)で希釈し、重炭酸ナトリウム(10 mL)で塩基性化した。水層を酢酸エチル(2×50 mL)で抽出し、合わせた有機層を水(50 mL)、ブライン(50 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を減圧下で濃縮し、2-アミノ-4-メチル-安息香酸メチルエステル(900 mg、82%)を黄色液体として得た。
【0120】
参考例2a
下に示した化合物を参考例2と類似の方法で調製した。
【0121】
【表4】

【0122】
参考例3:2-アミノ-5-メチル-安息香酸メチルエステル
2-アミノ-5-メチル-安息香酸(3.0 g、19.84 mmol)のメタノール溶液(10 mL)に、0℃で塩化チオニル(2.88 mL、39.69 mmol)を滴下し、16時間還流した。反応混合物を乾燥状態まで濃縮し、残渣をクロロホルム(100 mL)に溶解した。有機層を重炭酸ナトリウム溶液(5×30 mL)、水(3×30 mL)、ブライン(3×30 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。残渣を真空下で濃縮して粗製の化合物を得、これを2%の酢酸エチルを含む石油エーテル(pet ether)を溶離液として用いてシリカゲル(100〜200メッシュ)でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、2-アミノ-5-メチル-安息香酸メチルエステル(2.0 g、61%)を淡黄色の半固体として得た。
【0123】
参考例3a〜3c
下に示した化合物を参考例3と類似の方法で調製した。
【0124】
【表5】

【0125】
参考例4:2-アミノ-5-ジメチルアミノ-安息香酸メチルエステル
5-ジメチルアミノ-2-ニトロ-安息香酸メチルエステル(400 mg、1.78 mmol)のメタノール懸濁液(20 mL)にラネーニッケル(80 mg)を加え、大気圧下、室温で2時間水素化した。その反応混合物をセライトでろ過し、ろ液を真空中で濃縮し、2-アミノ-5-ジメチルアミノ-安息香酸メチルエステルメチル(methyl 2-amino-5-dimethylamino-benzoic acid methyl ester)(340 mg、98%)を緑がかった褐色の液体として得た。
【0126】
参考例5:2-メルカプト-3-(2-メトキシ-フェニル)-7-メチル-3H-キナゾリン-4-オン
2-アミノ-4-メチル-安息香酸メチルエステル(900 mg、5.45 mmol)および酢酸(1.5 mL)のエタノール溶液(10 mL)に1-イソチオシアナト-2-メトキシ-ベンゼン(0.76 mL、5.45 mmol)を加え、16時間加熱還流した。その反応混合物を室温に冷却し、エタノールで希釈した。沈殿した固体をろ過し、エタノールで洗浄し、乾燥させ、2-メルカプト-3-(2-メトキシ-フェニル)-7-メチル-3H-キナゾリン-4-オン(1.0 g、62%)を白色固体として得た。
【0127】
参考例5a〜5f
下に示した化合物を参考例5と類似の方法で調製した。
【0128】
【表6】

【0129】
参考例6:3-(2-イソプロピル-フェニル)-2-メルカプト-3H-キナゾリン-4-オン
2-イソプロピルアニリン(500 mg、3.69 mmol)およびナトリウムメトキシド(10 mg)の2-プロパノール溶液(10 mL)に、室温で2-イソチオシアナト-安息香酸メチルエステル(0.58 mL、3.69 mmol)を加え、16時間加熱還流した。その反応混合物を真空下で乾燥状態まで濃縮した。この粗製の物質をジクロロメタン(2×10 mL)、10%のメタノールを含むクロロホルム(2×10 mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させ、3-(2-イソプロピル-フェニル)-2-メルカプト-3H-キナゾリン-4-オン(600 mg、55%)を白色固体として得た。
【0130】
参考例6a〜6b
下に示した化合物を参考例6と類似の方法で調製した。
【0131】
【表7】

【0132】
化合物例1:2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-7-メチル-3H-キナゾリン-4-オン
2-メルカプト-3-(2-メトキシ-フェニル)-7-メチル-3H-キナゾリン-4-オン(250 mg、0.84 mmol)および炭酸カリウム(235 mg、1.68 mmol)のアセトン懸濁液(10 mL)にイソプロピルブロミド(0.11 mL、1.25 mmol)を加え、その混合物を16時間加熱還流した。反応混合物を室温に冷却し、全ての固体をろ過し、アセトンで洗浄した。ろ液を真空中で乾燥状態まで濃縮し、この粗製の化合物を5%の酢酸エチルを含む石油エーテル(pet ether)を溶離液として用いてシリカゲル(100〜200メッシュ)でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-7-メチル-3H-キナゾリン-4-オン(170 mg、59%)を半固体として得た。
【0133】
化合物例2〜15
上に記載した化合物例2〜15を化合物例1と類似の方法で調製した。
【0134】
【表8−1】

【0135】
【表8−2】

【0136】
【表8−3】

【0137】
実施例4:最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentrations)(MIC)の測定
実施例3の化合物を抗真菌活性について以下のように評価した。
【0138】
1〜5 mgの化合物を滅菌したエッペンドルフチューブ(Eppendorf tube)に正確に秤取した。その化合物をDMSOに溶解し、5 mg/mLを含む溶液を得た。所要時までチューブを-20℃で保管した。
【0139】
試験の日に、解凍した溶液をボルテックスで混合し、均一性を確保した。30 μLの溶液を取り出し、個々の滅菌したエッペンドルフ(Eppendorf)中の570 μLの滅菌水に加えた。完全に混合した溶液を使用し、ディープウェルプレート(deep well plate)に一連の2倍希釈溶液を水で調製した。Minitrakを用いて各ウェルから11個の透明なポリスチレンの96ウェルプレートの中へ20 μLを吸引することによって13個の複製されたプレートを調製した。
【0140】
サブロー寒天培地(Sabarauds agar)上で5日間培養した培養物から、Aspergillus属の菌種(Aspergillus fumigatus[2つの菌株]、Aspergillus terreus[2つの菌株]、Aspergillus niger、およびAspergillus flavus)の胞子を収集し、約1×107 cfu/mLになるようにPBS/Tween 80中に再懸濁させた。各生物の懸濁液をYAG培地(1%のグルコース、1%の塩化アンモニウム、および0.5%の酵母エキス)で0.5〜2×104 cfu/mLに希釈した。80 μLの生物の懸濁液を薬物の希釈溶液群を含むプレートの各ウェルに加えた。
【0141】
これにより、50〜0.05 mg/Lの薬物の範囲、およびAspergillus属の菌種の1〜2×104 cfu/mLの生物接種材料を有するMICプレートを作成した。すべてのプレートを35℃で24時間インキュベートした。各ウェルの485 nmの光学濃度をモニタリングすることによって発育を評価した。化合物のMICは、薬物を含まない対照と比較して生物の発育を70%よりも多く阻害する、最低の薬物濃度である。MICはmg/Lとして記録する。生物のMICが0.05 mg/L以上である場合、MICは、0.5〜0.0005 mg/Lの濃度範囲を用いて反復する。
【0142】
RPMI培地でのアッセイも行った。この培地でMIC試験を行うために、上記と同様にマイクロタイタープレートに化合物の希釈溶液群を調製した。上記の方法と同一の方法で、試験する真菌の菌株を培養し、収集し、各生物の懸濁液を、YAG培地ではなく、2%のグルコースおよび0.135 MのMOPS緩衝液(pH 7.0)を含むRPMI培地で、0.5〜2×104 cfu/mLに希釈した。薬物の希釈溶液群を含むプレートの各ウェルに、80 μLの生物の懸濁液を加えた。
【0143】
これにより、50〜0.05 mg/Lの薬物の範囲、および1〜2×104cfu/mLの生物接種材料を有するMICプレートを作成した。すべてのプレートを35℃で24〜48時間インキュベートした。各ウェルの485 nmの光学濃度をモニタリングすることによって発育を評価した。化合物のMICは、薬物を含まない対照と比較して生物の発育を80%よりも多く阻害する、最低の薬物濃度である。
【0144】
以下の生物:Aspergillus flavus、Aspergillus fumigatus AF293およびAspergillus fumigatus AF210、Aspergillus niger、ならびにAspergillus terreus AT4およびAspergillus terreus AT49を試験した。
【0145】
Absidia corymbifera;Acremonium属の種;Alternaria alternata;Aspergillus nidulans;Aspergillus parasiticus;Bipolaris属の種;Blastomyces dermatitidis;Blumeria graminis;Candida albicans;Candida glabrata;Candida krusei;Candida parapsilosis;Candida tropicalis;Cladosporium cladosporoides;Cladosporium herbarium;Coccidioides immitis;Coccidioides posadasii;Colletotrichium trifolii;Curvularia lunata;Colletotrichium trifolii;Cryptococcus neoformans;Encephalitozoon cuniculi;Epicoccum nigrum;Epidermophyton floccosum;Exophiala属の種;Exserohilum rostratum;Fusarium graminearium;Fusarium solani;Fusarium sporotrichoides;Histoplasma capsulatum;Leptosphaeria nodorum;Magnaporthe grisea;Microsporum canis;Mycosphaerella graminicola;Neurospora crassa;Paecilomyces lilanicus;Paecilomyces varioti;Penicillium chrysogenum;Phytophthora capsici;Phytophthora infestans;Plasmopara viticola;Pneumocystis jiroveci;Puccinia coronata;Puccinia graminis;Pyricularia oryzae;Pythium ultimum;Rhizomucor属の種;Rhizoctonia solani;Rhizomucor属の種;Rhizopus属の種;Scedosporium apiospermum;Scedosporium prolificans;Scopulariopsis brevicaulis;Trichophyton interdigitale;Trichophyton mentagrophytes;Trichophyton rubrum;Trichosporon asahii;Trichosporon beigelii;およびUstilago maydisを含む他の真菌もまた上記のアッセイにおいて使用することができる。真菌は当業者に知られている標準的な方法によって培養し、MICは上記と同様に測定する。
【0146】
mg/L単位でのMICの結果(YAG培地):
以下のMICの結果は各等級に分けられている。その結果、等級1は10 mg/Lよりも大きいMICを表す。等級2は1〜10 mg/LのMICを表す。等級3は1 mg/L未満のMICを表す。
【0147】
【表9】

【0148】
mg/L単位でのMICの結果(RPMI培地):
以下のMICの結果は上に定義した各等級に分けられている。
【0149】
【表10】

【0150】
実施例5:高い活性を有する好ましい阻害剤の物理的性質
活性が高い阻害剤は以下の性質:
10 nM〜100 nM(大抵は20 nM〜100 nM)のIC 50(酵素活性を50%阻害する阻害剤の濃度)、
20 nM〜60 nmのKi、
可逆的であり、コエンザイムQ補基質と競合的である、DHODHに対する結合(DHODHのキノンポケット内に阻害剤が結合することを示す)
を有していた。
【0151】
A. fumigatusのDHODH酵素については、以下の領域:
バリン87〜グルタミン酸135
バリン144〜ロイシン218
アスパラギン487〜アルギニン530
がキノンポケット環境に寄与している。
【0152】
C. albicansのDHODH酵素については、以下の領域:
チロシン52〜ロイシン95
バリン106〜セリン180
アスパラギン388〜グルタミン酸431
がキノンポケット環境に寄与している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真菌のDHODHタンパク質を標的とする抗真菌剤の同定方法であって、候補物質を真菌のDHODHタンパク質と接触させること、および該候補物質がDHODHタンパク質を結合または調節するかどうかを判定することを含み、結合または調節は該候補物質が抗真菌剤であることを示す、方法。
【請求項2】
(a)候補物質を
(i)配列番号:1もしくは2によって示される配列を含むDHODHタンパク質;または
(ii)(i)と少なくとも50%の同一性を有するタンパク質;または
(iii)(i)もしくは(ii)の変異体および/もしくは少なくとも50アミノ酸長を有する断片を含むタンパク質
と接触させること;ならびに
(c)候補物質が(i)、(ii)、もしくは(iii)を結合または調節するかどうかを判定することを含み、(i)、(ii)、もしくは(iii)の結合または調節は、候補物質が抗真菌剤であることを示す、請求項1記載の真菌のDHODHタンパク質を標的とする抗真菌剤の同定方法。
【請求項3】
a)真菌のDHODHを提供すること;b)1種以上の候補化合物を提供すること;c)任意に、ジヒドロオロト酸(dihydroorotate)が500 μMであり、かつ/またはキノンが50 μMであり、かつ/または2,6-ジクロロインドフェノールが100 μMであり、かつ/または酵素活性が時間およびタンパク質濃度に関して線形範囲にあるようなDHODH酵素濃度であり、かつ/またはpHが8.0であり、かつ/またはNaClが150 mMであり、かつ/またはトリス HClが50 mMであり、かつ/または1%のDMSOを有し、かつ/または8% v/vのグリセロールを有し、かつ/または0.08% v/vのトリトン(Trition) X-100を有し、かつ/または室温でインキュベートし、かつ/または20〜40分間インキュベートし、かつ/またはアッセイは0.375以上のZ’値を有し、かつ/またはアッセイは、酵素のない、もしくは完全に阻害された対照について5%未満の%CV値を有する、アッセイ条件下で、前記DHODHを前記1種以上の候補化合物と接触させること;ならびにd)該化合物の存在下でDHODHの活性を判定すること、を含む、DHODH酵素の機能を害する候補抗真菌性化合物をスクリーニングするか、もしくは試験する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
真菌のDHODHが配列番号:1または配列番号:2によって示される配列を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
真菌のDHODHが配列番号:1または配列番号:2と少なくとも50%の同一性を有する、請求項1、3、または4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該DHODHが、DHODHの断片および/もしくは変異体ならびに/または融合タンパク質を含む、請求項1、3、4、または5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1、3、4、5、または6のいずれか1項に記載の方法であって、真菌のDHODHがAspergillus属もしくはCandida属の種に由来するものであり、かつ/または該方法は候補物質のIC50および/もしくはKiを決定することが可能であり、任意に該候補化合物が、10 nM〜100 nMのIC 50および/もしくは20 nM〜60 nmのKiを有すること、ならびに/またはDHODHに対する結合が可逆的であること、ならびに/またはDHODHに対する結合がコエンザイムQ補基質と競合的であること、に基づき選択される、方法。
【請求項8】
候補物質を、
(i)配列番号:11によって示される配列;または
(ii)哺乳動物のDHODHと少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、または
(iii)哺乳動物のDHODHの断片もしくは変異体を含み、該断片が少なくとも50アミノ酸長を有するタンパク質
を含む哺乳動物のDHODHとも接触させ、前記化合物の存在下で哺乳動物のDHODHの活性を判定する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
抗真菌性化合物の特異的な標的としての、Aspergillus属またはCandida属のDHODH。
【請求項10】
真菌DHODHの阻害剤、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項11】
真菌DHODHの阻害剤が、式(I):
【化1】


(I)
[式中:
R1〜R4はそれぞれ独立して、H、F、Cl、または非置換もしくは置換の基C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、OR’、NR’R’’、シアノ、-COR’、-CO2R’、-CONR’R’’、-OCOR’、-NR’COR’’、および-OCONR’R’’から選択され、式中R’およびR’’は独立して、水素およびC1〜C4アルキルから選択され;
R5は、非置換もしくは置換のフェニルであり;かつ
R6は、C1〜C4アルキルである]
のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩である、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
R6がエチルまたはイソプロピルである、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
R1〜R4は独立して、H、非置換C1〜C4アルキル、OR’、およびNR’R’’から選択され、ここでR’およびR’’は独立して、H、または非置換C1〜C4アルキルであり;R5はフェニルであり、該フェニルは、置換されていないか、または非置換C1〜C4アルキル、OR’、もしくはNR’R’’で置換されており、ここでR’およびR’’は独立して、H、または非置換C1〜C2アルキルである、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
真菌DHODHの阻害剤が、
2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-7-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-6-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-5-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
2-イソプロピルスルファニル-5-メトキシ-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
2-エチルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-7-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、
6-ジメチルアミノ-2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
2-イソプロピルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
3-(2-イソプロピル-フェニル)-2-イソプロピルスルファニル-3H-キナゾリン-4-オン、
3-(2-エチル-フェニル)-2-イソプロピルスルファニル-3H-キナゾリン-4-オン、
2-イソプロピルスルファニル-6-メトキシ-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
3-(2-ジメチルアミノ-フェニル)-2-イソプロピルスルファニル-3H-キナゾリン-4-オン、
2-エチルスルファニル-5-メトキシ-3-(2-メトキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
3-(2-エチル-フェニル)-2-エチルスルファニル-3H-キナゾリン-4-オン、
2-エチルスルファニル-3-(2-メトキシ-フェニル)-5-メチル-3H-キナゾリン-4-オン、もしくは
2-エチルスルファニル-3-(2-イソプロピル-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン、
またはその薬学的に許容される塩である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項14に記載のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩である、真菌DHODHの阻害剤。
【請求項16】
抗真菌性化合物として使用するための、真菌DHODHの機能を害する、請求項1〜8の方法によって同定された化合物。
【請求項17】
真菌感染症の治療用の医薬の製造におけるDHODH阻害剤の使用。
【請求項18】
免疫抑制された対象における真菌感染症の治療用の医薬の製造におけるDHODH阻害剤の使用。
【請求項19】
真菌感染症が、局所性真菌感染症、粘膜の真菌感染症、または全身性真菌感染症である、請求項17または18に記載の使用。
【請求項20】
局所性真菌感染症または粘膜の真菌感染症が、Aspergillus属またはCandida属の種によって引き起こされたものである、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記化合物が、宿主のDHODHの機能よりも、真菌のDHODHの機能を、より大きい程度に害する、請求項17〜20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
DHODH阻害剤が、請求項11〜14のいずれか1項に記載のキナゾリノン誘導体またはその薬学的に許容される塩である、請求項17〜21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって同定された抗真菌剤を投与することを含む、真菌感染症の予防方法または治療方法。

【公表番号】特表2011−520431(P2011−520431A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506773(P2011−506773)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001114
【国際公開番号】WO2009/133379
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510290197)エフツージー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】