説明

抗真菌性外用組成物

【課題】 本発明は、抗真菌作用を発揮でき、しかも使用感が良好である抗真菌性外用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)抗真菌剤、(B)クロタミトン、炭酸プロピレン、脂肪酸エステル及び多価アルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の付着補助剤、(C)デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンを含有する粉末成分、(D)低級アルコール及び(E)水を含有する、抗真菌性外用組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた使用感が得られる抗真菌性外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
白癬、癜風、カンジダ症等の真菌性皮膚疾患の治療には、一般に、抗真菌剤を含有する外用剤が使用されている。特に、湿潤型の症状を呈する真菌性皮膚疾患に対しては、患部を乾燥させて治療効果を高めるために、抗真菌剤と共に粉末成分が配合されている外用剤が有効であるとされている。
【0003】
これまでに、抗真菌剤及び粉末成分を含有する抗真菌性外用剤については、種々提案されている。例えば、特許文献1には、粉末成分としてタルクやトウモロコシデンプン等を含有する抗真菌剤含有粉末エアゾール製剤が開示されている。また、特許文献2には、粉末成分として、コロイド質シリカ、酸化亜鉛、タルク等を含有する抗真菌剤組成物が開示されている。
【0004】
しかしながら、粉末成分を含有する従来の抗真菌性外用剤では、粉末成分が皮膚から離脱してしまう、外用剤が皮膚上でべたつく、すべりが悪い、外用剤の塗布面が皮膚上で分断されて不均一になり易い等といった欠点があった。そのため、従来の粉末成分を含有する抗真菌性外用剤では、使用感の点で満足できるものはなかった。
【0005】
このような従来技術を背景として、優れた使用感が得られる抗真菌性外用組成物の開発が切望されていた。
【特許文献1】特開2000−229845号公報
【特許文献2】特開平5−246843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決することである。具体的には、本発明は、抗真菌作用を発揮でき、しかも使用感が良好である抗真菌性外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、粉末成分としてデンプン、撥水性粉末及び酸化チタンを組み合わせて使用し、該粉末成分と共に、抗真菌剤及び付着補助剤を配合して調製した外用組成物は、抗真菌作用を発揮すると共に、皮膚上で均一な塗布面を形成でき、しかも塗布面がさらさらであり、使用感の点で優れていることを見出した。本発明者らは、更に、上記外用組成物に、ゲル化剤と共に水と低級アルコールを配合することによって調製されるゲル状の組成物は、優れた吸水力を備えており、患部の乾燥を促進できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることによって完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を包含する:
項1.(A)抗真菌剤、(B)クロタミトン、炭酸プロピレン、脂肪酸エステル及び多価アルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の付着補助剤、(C)デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンを含有する粉末成分、(D)低級アルコール、及び(E)水を含有する、抗真菌性外用組成物。
項2.更に、(F)ゲル化剤を含有する、項1に記載の抗真菌性外用組成物。
項2’.更に、(F)ゲル化剤を含有し、且つ、ゲル状の形態を有する、項1に記載の抗真菌性外用組成物。
項2’’.ゲル状の形態を有する、項1に記載の抗真菌性外用組成物。
項3.抗真菌性外用組成物の総重量に対して、(D)低級アルコールを7.2〜35.42重量%及び(E)水を10.8〜81.35重量%の割合で含有する、項2に記載の抗真菌性外用組成物。
項4.(D)低級アルコール100重量部に対して、(E)水が150〜1130重量部の割合で含有する、項2又は3のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
項5.デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンの総重量100重量部当たり、デンプンが19.2〜79.7重量部、撥水性粉末が14.7〜59.3重量部、酸化チタンが0.4〜51.9重量部の割合で含有される、項1乃至4のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
項6.デンプンが、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン及びコムギデンプンよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1乃至5のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
項7.撥水性粉末が、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1乃至6のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
項8.付着補助剤がクロタミトン、炭酸プロピレン及び脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1乃至7のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
項9.付着補助剤が、多価アルコールを含有する、項2乃至7のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
項10.抗真菌剤が、オキシコナゾール、ビフォナゾール、スルコナゾール、ネチコナゾール、テルビナフィン、ブテナフィン、アモロルフィン、ラノコナゾール及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1乃至9のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
項11.ゲル化剤がカルボキシビニルポリマーである、項2乃至10のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
項12.更に、鎮痒剤を含む、請求項1乃至11のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
項13.硝酸オキシコナゾールを0.3〜3重量%;ジプロピレングリコールを1〜15重量%;トウモロコシデンプン、タルク及び酸化チタンの混合物を10〜54重量%;リドカインを0.05〜6重量%;エタノールを7.2〜35.42重量%;水を10.8〜81.35重量%;並びにカルボキシビニルポリマーを0.1〜4重量%の割合で含有する、項1乃至12のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の抗真菌性外用組成物は、(A)抗真菌剤、(B)クロタミトン、炭酸プロピレン、脂肪酸エステル及び多価アルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の付着補助剤、(C) デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンを含有する粉末成分、(D)低級アルコール及び(E)水を含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の抗真菌性外用組成物に用いられる(A)抗真菌剤としては、真菌に対して抗菌作用を発揮するものであれば、特に制限されない。当該抗菌剤の具体例としては、例えば、ブテナフィン及びその塩等のベンジルアミン系抗真菌剤;ビフォナゾール、ネチコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、クロコナゾール、オモコナゾール、スルコナゾール及びこれらの塩等のイミダゾール系抗真菌剤;テルビナフィン及びその塩等のアリルアミン系抗真菌剤;アモロルフィン及びその塩等のモルホリン系抗真菌剤;リラナフタート、トルナフテート及びトルシクラート等のチオカルバミン酸系抗真菌剤;並びに、ナイスタチン、トリコマイシン、バリオチン、シッカニン、ピロールニトリン等の抗生物質等の抗真菌が例示される。これらの中でも、角質への浸透性や貯留性が高く、より優れた抗真菌作用を発揮するという観点から、好ましくは、ベンジルアミン系抗真菌剤、イミダゾール系抗真菌剤、アリルアミン系抗真菌剤及びモルホリン系抗真菌剤である。更に好ましくはオキシコナゾール、ビフォナゾール、スルコナゾール、ネチコナゾール、テルビナフィン、ブテナフィン、アモロルフィン及びラノコナゾール及びこれらの塩であり、これらの抗菌剤によれば、1日に1回の適用回数で所望の抗真菌効果を得ることができる。これらの抗真菌剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0011】
本発明の抗真菌性外用組成物において、上記抗真菌剤の配合割合は、使用する抗真菌剤の種類、該組成物の形態、患者の年齢や性別、期待される抗真菌効果等に応じて異なるが、例えば、該組成物の総重量に対して0.3〜3重量%、好ましくは0.4〜2.5重量%、更に好ましくは0.5〜2重量%が挙げられる。
【0012】
本発明の抗真菌性外用組成物に含まれる(B)付着補助剤とは、粉末成分の皮膚への付着性を向上させる成分であり、具体的には、クロタミトン、炭酸プロピレン、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルド、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、アジピン酸ジイソプロピル、グリセリン酸脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシル45、ステアリン酸ポリオキシル55、セバシン酸ジエチル、ソルビタン脂肪酸エステル、パルミチン酸イソプロピル、モノオレイン酸グリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、1,3−ブチレングリコール等)が挙げられる。特に、クロタミトンは、粉末成分の皮膚患部への付着性に優れ、且つ粉末成分の分散性を保持させ、更には基剤成分との混和性の点でも優れているので、好適な付着補助剤である。これらの付着補助剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。また、該組成物をゲル状にする場合であれば、付着補助剤として多価アルコールを使用することが望ましい。
【0013】
上記付着補助剤の配合割合としては、使用する付着補助剤の種類、組成物の形態、使用する粉末成分の種類や量等によって異なり、一律に規定することはできないが、例えば、抗真菌性外用組成物の総重量に対して、該付着補助剤を1〜15重量%、好ましくは1.5〜12.5重量%、更に好ましくは2〜10重量%となる割合が挙げられる。上記範囲内であれば、皮膚患部への付着特性及び使用感の双方の点で優れた効果が得られる。
【0014】
また、本発明の抗真菌性外用組成物は、(C)粉末成分として、デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンを含有する。
【0015】
上記デンプンは、薬学的に許容されるものであれば、その起源については特に制限されない。本発明に使用されるデンプンの具体例として、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン等が例示される。これらのデンプンは1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。本発明に使用されるデンプンとして、好ましくはトウモロコシデンプン及びバレイショデンプンであり、更に好ましくはトウモロコシデンプンである。
【0016】
本発明において、撥水性粉末とは、撥水特性を備える粉末成分のことであり、具体的には、底面積6.25cm2の容器に、1gの粉末と1mLの水を添加して放置した場合に、液相と粉末相の2層に分離する性質を有する粉末成分のことである。また、本発明に使用される撥水性粉末は、薬学的に許容されるものであれば、当業界において公知のものを使用できる。かかる撥水性粉末の一例として、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等が例示される。これらの撥水性粉末は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。本発明に使用される撥水性粉末として、好ましくはタルクである。
【0017】
本発明に使用される酸化チタンとしては、薬学的に許容されるものであれば、特に制限されない。当該酸化チタンの好適なものとして、二酸化チタンが挙げられる。
【0018】
上記デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンの配合比としては、例えば、これら三成分の総重量100重量部当たり、デンプンが19.2〜79.7重量部、撥水性粉末が14.7〜59.3重量部、及び酸化チタンが0.4〜51.9重量部;好ましくはデンプンが23.5〜72.2重量部、撥水性粉末が18.8〜54.6重量部、及び酸化チタンが0.8〜47.1重量部;更に好ましくはデンプンが28.6〜65.8重量部、撥水性粉末が22.2〜49重量部、及び酸化チタンが1.3〜42.9重量部となる割合が例示される。上記範囲内であれば、皮膚上で均一な塗布面を形成でき、しかも優れた使用感を得ることができる。
【0019】
本発明の抗真菌性外用組成物に含まれる(C)粉末成分の割合については、使用する粉末成分の組成、組成物の形態等に応じて適宜設定される。(C)粉末成分の配合割合の一例として、抗真菌性外用組成物の総重量に対して、該粉末成分が総重量で、通常10〜54重量%、好ましくは12.5〜52重量%、更に好ましくは15.2〜50重量%となる割合が挙げられる。上記範囲内で(C)粉末成分を含有すれば、皮膚上で均一な塗布面の形成及び塗布面の付着性の点で優れた効果が得られる。
【0020】
本発明の抗真菌性外用組成物には、上記配合成分の混和性及び溶解性や患部への浸透性を高める等の観点から、基剤(溶剤)として、(D)低級アルコール及び(E)水が配合される。低級アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、特に好ましくはエタノールが挙げられる。当該エタノールは、メタノールやベンゼンを加えることにより変性アルコールにして使用することもできる。これらの低級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0021】
上記(D)低級アルコールの配合割合は、使用する抗真菌剤の種類、組成物の形態、使用する低級アルコールの種類等に応じて適宜設定され、例えば、抗真菌性外用組成物の総重量に対して、7.2〜35.42重量%、好ましくは9.6〜34.04重量%、更に好ましくは12〜32.78重量%である。
【0022】
上記(E)水の配合割合は、使用する抗真菌剤の種類、組成物の形態、使用する低級アルコールの種類等に応じて適宜設定され、例えば、抗真菌性外用組成物の総重量に対して、10.8〜81.35重量%、好ましくは14.4〜75.5重量%、更に好ましくは18〜69.95重量%である。
【0023】
本発明の抗真菌性外用組成物において、上記(D)低級アルコールと(E)水の総量が、該組成物の総重量当たり、例えば18〜88.55重量%、好ましくは24〜85.1重量%、更に好ましくは30〜81.3重量%の範囲内にあることが望ましい。
【0024】
本発明の抗真菌性外用組成物は、必要に応じて、外用組成物に使用される他の基剤(溶剤)や担体が組み合わせて配合されて、液状、軟膏状、ゲル状、ゾル状、粉末状、固形状等の各種形態の外用組成物に調製される。中でも、ゲル状の抗真菌性組成物は、吸水力に優れ、患部の乾燥を促進できるので、本発明の抗真菌性外用組成物の好適な実施形態の1つである。
【0025】
ゲル状の抗真菌性外用組成物は、薬学的に許容されるゲル化剤を適当量配合することにより調製される。本発明において使用されるゲル化剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、ポリビニルブチラート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、メタアクリル酸メチルコポリマー、メタアクリル酸ジエチルアミノエチルメタアクリル酸メチルコポリマー等が挙げられる。これらの中で、好ましくはカルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、特に好ましくはカルボキシビニルポリマーである。
【0026】
上記ゲル化剤の配合割合としては、ゲル化剤の種類や、水及び低級アルコールの配合割合等に応じて適宜設定されるが、一例として、上記(D)低級アルコールと(E)水の配合割合を具備し、且つ、抗真菌性外用組成物の総重量に対して、ゲル化剤が0.1〜4重量%、好ましくは0.25〜3.5重量%、更に好ましくは0.5〜3重量%となる割合が例示される。
【0027】
また、ゲル状の抗真菌性外用組成物にする場合、上記(D)低級アルコールと(E)水の配合割合を満足し、且つ(D)低級アルコール100重量部に対して、(E)水が150〜1130重量部、好ましくは150〜786重量部、更に好ましくは150〜583重量部となる割合であることが望ましい。このような割合を具備することによって、製剤の通常環境下における性状の長期安定性が得られるという効果が得られる。
【0028】
また、本発明の組成物を軟膏状、ゾル状等に調製する場合、上記(D)アルコール及び(E)水に加え、さらに、軟膏状、ゾル状の製剤に配合される担体又は基剤を適当量配合してもよい。このような担体又は基剤として、例えば、ワセリン、スクワラン、パラフィン、流動パラフィン、白ロウ、プラスチベース、ポリエチレングリコール、マクロゴール等の油系基剤;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、ポリビニルブチラート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、メタアクリル酸メチルコポリマー、メタアクリル酸ジエチルアミノエチルメタアクリル酸メチルコポリマー、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等の高分子;セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;1.3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン類等の多価アルコール等が挙げられる。
【0029】
本発明の抗真菌性外用組成物は、上記成分に加えて、更に鎮痒剤を含有することによって、患部の掻痒感を抑制し、より優れた使用感を備えることができる。本発明に使用される鎮痒剤としては、例えば、リドカイン、塩酸リドカイン、ジブカイン、塩酸ジブカイン、プロカイン、塩酸プロカイン、アミノ安息香酸エチル、オキシポリエントキシドデカン、塩酸ジフェニルプラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン等が挙げられる。これらの鎮痒剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。鎮痒剤として、好ましくはリドカイン、塩酸リドカイン、ジブカイン、塩酸ジブカイン、プロカイン及び塩酸プロカインであり、更に好ましくはリドカイン、ジブカイン及びプロカインである。
【0030】
鎮痒剤を配合する場合、その配合割合としては、使用する鎮痒剤の種類、組成物の形態、期待される効果等によって異なり、一律に規定することはできないが、例えば、抗真菌性外用組成物の総重量に対して、該鎮痒剤を通常0.05〜6重量%、好ましくは0.25〜5.5重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%となる割合が挙げられる。
【0031】
本発明の抗真菌性外用組成物には、本発明の効果を妨げないことを限度として、前述の配合成分の他に、必要に応じて、細胞賦活剤、抗炎症剤、抗菌剤、保湿剤、香料、着色剤、他の粉末成分、組織修復剤、収斂剤、ビタミン類、清涼化剤、精油成分、温感、温熱成分、エキス類、界面活性剤、溶剤、溶解剤、pH調整剤、緩衝剤、基剤、発泡剤、消泡剤、乳化剤、懸濁剤、軟化剤、粘ちょう剤、分散剤、賦形剤、滑沢剤、酸化防止剤、防腐剤、保存剤、可塑剤等の任意成分を適当量配合してもよい。
【0032】
また、液状、粉末状又はゾル状の形態に調製した抗真菌性外用組成物は、更に、エアゾール製剤用の噴射剤と組み合わせて抗真菌性外用エアゾール製剤として調製され使用される。エアゾール製剤用の噴射剤としては、特に制限されないが、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の脂肪族炭化水素やジメチルエーテルが挙げられる。エアゾール製剤は、上記抗真菌性外用組成物と上記噴射剤を、例えば以下に示す割合で混合することによって調製できる;抗真菌性外用組成物:噴射剤が重量比で、通常5〜30:70〜95、好ましくは7〜28:72〜93、更に好ましくは9〜26:74〜91。
【0033】
本発明の抗真菌性外用組成物は、配合成分の種類や量、その形態に応じて、1日当たりの適用量及び適用回数を適宜設定できる。本発明の抗真菌性外用組成物は、皮膚に適用されて、均一で良好な付着性を備えた塗布面が形成されるので、1日1回適用型の抗真菌性外用組成物として使用することもできる。
【0034】
本発明の抗真菌性外用組成物は、真菌性皮膚疾患、特に、表在性の真菌性皮膚疾患に有効である。特に、粉末成分により優れた乾燥効果が付与されているので、湿潤型の表在性の真菌性皮膚疾患に対して優れた治療効果を示す。
【発明の効果】
【0035】
本発明の抗真菌性外用組成物は、真菌性皮膚疾患の皮膚患部に適用されると、粉末成分による均一な塗布面を形成して、該皮膚患部の乾燥作用や抗真菌剤の薬効作用を効率的に発揮させることができる。
【0036】
また、本発明の抗真菌性外用組成物は、さらさらとした塗布面を皮膚上に形成できるので、使用感の点においても良好である。
【0037】
更に、本発明の抗真菌性外用組成物は、良好な付着性を有する塗布面を形成できるので、1日1回適用型の製剤に調製可能であり、患者の負担を軽減できる点においても利点がある。
【0038】
特に、ゲル状の抗真菌性外用組成物は、優れた吸水作用を有しており、患部の湿気や水分を吸収し、患部を快適に保ち、且つそれらによる薬物への悪影響(例えば、希釈、流出など)を防止できるという効果が期待できるので、長時間の使用に適している。また、ゲル状の抗真菌性外用組成物は、実質的に油性成分を使用することなく製剤化できるので、べたつき等がなく、良好な使用感を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、試験例及び実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の表中に示す数値の単位は、特段示さない限り、重量(g)である。
【0040】
試験例1 特性確認試験
表1に示す処方の組成物(実施例1及び比較例1−4)を調製し、下記試験を行い、(1)表面特性、(2)官能、(3)吸水力について評価した。
【0041】
【表1】

【0042】
(1)表面特性の評価
使用感(すべり)の評価
使用感を評価するために、下記方法に従って動摩擦計数(MIU)を計測した。
1.人工皮革(5cm×13cm)のMIUをKES-SE表面特性試験機(カトーテック社製)で測定した。
2.同じ人工皮革に1gの各組成物(実施例1及び比較例1−4)を3cm×6cmの範囲に、指で均一に塗り広げ、その塗布面のMIUをKES-SE表面特性試験機(カトーテック社製)で測定した。本使用感の評価試験は、n=3で行った。
3.下記評価基準に従って、測定したMIUの平均値から使用感を評価した。
<使用感の評価基準>
○ 塗布後のMIUの平均値が、塗布前のMIUの平均値よりも小さい
× 塗布後のMIUの平均値が、塗布前のMIUの平均値よりも大きい
#:MIUは、すべりの特性と相関する値であり、MIU値の減少はすべりの改善、MIU値の
増加はすべりの改悪を意味する。
塗布面の均一性の評価
人工皮革(5cm×13cm)に1gの各組成物(実施例1及び比較例1−4)を3cm×6cmの範囲に、指で均一に塗布し、塗布面の性状を下記評価基準に基づいて評価した。
<塗布面の均一性の評価基準>
○ 斑状や切片状の塗布面が形成されることのない均一な塗布面である
△ 斑状の塗布面は形成されないが、少量の切片状の塗布面が形成される
× 斑状や切片状の塗布面が形成される
得られた結果を表1に併せて示す。比較例2−4の結果から、それぞれ、デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンのみの使用では、使用感と均一性の双方において優れた塗布面を形成できないことが確認された。粉末成分として、デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンを組み合わせて使用すると塗布面に優れた使用感と均一性が付与されることが明らかとなった。
【0043】
(2)官能評価
被験者(湿潤型水虫患者2人及び健常者3人の合計5人)に足指間に抗真菌性外用組成物を適当量塗布した。塗布後、靴下及び靴を履いて1日通常の生活をおくった後に、各被験者が、付着性、均一性、さらさら感、実感、総合的使用感のそれぞれについて、下記5段階の評点で評価を行った。
5点:極めて良好である
4点:良好である
3点:普通である
2点:良くない
1点:悪い
得られた各被験者の評点を合計して、下記基準に従って、各抗真菌性外用組成物の官能評価について判定した。
<官能評価の評価基準>
◎:評点の合計20以上25以下
○:評点の合計15以上19以下
△:評点の合計10以上14以下
×:評点の合計5以上9以下
得られた結果を表1に併せて示す。実施例1の結果から、本発明の抗真菌性外用組成物は、抗真菌作用に加えて、付着性、均一性、さらさら感、実感、総合的使用感の全てにおいて、極めて良好な使用感が得られることが明らかとなった。
【0044】
(3)吸水力の評価
人工皮革(3cm×3cm)に200μgの各抗真菌性外用組成物(実施例1及び比較例1−4)を塗布し、これを、塗布面を下にして生理食塩水に浮かべた。1分後と3分後に人工皮革を引き上げ、10秒間水を切った後、重量を測定した。なお、コントロールとして、人工皮革のみを用いて、上記と同様の操作を行った。1分間の吸水量及び3分間の吸水量について、下記の計算式に基づいて算出した。
<吸水量の計算式>
〔静置前の重量〕―〔静置後1分目の重量〕 = 1分間の吸水量
〔静置前の重量〕―〔静置後3分目の重量〕 = 3分間の吸水量
上記で得られた1分間及び3分間の吸水量から、下記基準に従って、各抗真菌性外用組成物の吸水力を評価した。
<吸水力の評価基準>
○:3分間の吸水量について、塗布群とコントロール群との間におけるt検定で有意差があった(棄却率10%)
△:1分間の吸水量について、塗布群とコントロール群との間におけるt検定で有意差があったが、3分間の吸水量については、塗布群とコントロール群との間におけるt検定で有意差がなかった(棄却率10%)
×:3分間の吸水量及び1分間の吸水量のいずれについても、塗布群とコントロール群との間におけるt検定で有意差がなかった(棄却率10%)
得られた結果を表1に併せて示す。実施例1の結果から、本発明の抗真菌性外用組成物が、吸水力に優れ、患部の湿気や水分を吸収し、患部を快適に保ち、且つそれらによる薬物への悪影響(例えば、希釈、流出など)を防止でき、それゆえ、長時間の適用に好適に使用され得ることが確認された。
【0045】
試験例2 安定性試験
(1)低温サイクル試験
下記に示す低温サイクルで連続的に温度推移する環境下において、各抗真菌性外用組成物(実施例2〜12)を静置し、10日間経過後、性状(分離)を評価した。
<低温サイクル>
低温サイクルでは、下記の通り、(1)→(2)→(3)→(4)の順番で操作を行った。
(1)0〜1時間かけて、−20℃から5℃に推移させる
(2)1〜12時間のあいだ、5℃にて保持させる
(3)12〜13時間かけて、5℃から−20℃に推移させる
(4)13〜24時間のあいだ、−20℃にて保持させる
(2)高温サイクル試験
下記に示す高温サイクルで連続的に温度推移する環境下において、各抗真菌性外用組成物(実施例2〜12)を静置し、10日間経過後、性状(分離)を評価した。
<高温サイクル>
高温サイクルでは、下記の通り、(1)→(2)→(3)→(4)の順番で操作を行った。
(1)0〜1時間かけて、−20℃から42℃に推移させる
(2)1〜12時間のあいだ、42℃にて保持させる
(3)12〜13時間かけて、42℃から−20℃に推移させる
(4)13〜24時間のあいだ、−20℃にて保持させる
(3)高温試験
50℃にて、各抗真菌性外用組成物(実施例2〜12)を静置し、10日間経過後、性状(分離)を評価した。
【0046】
安定性試験の結果を表2〜3に示す。この結果から、本発明の抗真菌性外用組成物は優れた安定性を有していることが確認された。
<安定性の評価基準>
○ 上記(1)低温サイクル試験、(2)高温サイクル試験及び(3)高温試験の全ての安定性試験において、分離が確認されなかった
× 上記(1)低温サイクル試験、(2)高温サイクル試験及び(3)高温試験の全てもしくはいずれかの安定性試験において、分離が確認された
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
参考例1−14
表4−7に示す処方の抗真菌外用組成物(参考例1−14及び比較参考例1−17)を調製し、上記試験例1の方法に従って、表面特性(使用感及び塗布面の均一性)について評価した。
【0050】
得られた結果を表4−7に併せて示す。この結果から、クロタミトンと共に、粉末成分として、デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンを組み合わせて使用すると塗布面に優れた使用感と均一性が付与されることが明らかとなった。これに対して、デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンの内、いずれか一つでも欠けていると、使用感と均一性の双方において優れた塗布面を形成できないことが確認された。
【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
【表7】

【0055】
参考例15−18
表8に示す組成の抗真菌性外用組成物(参考例15−18及び比較参考例18−19)を調製した。この抗真菌性外用組成物を使用して、上記試験例1の方法に従って、使用感及び官能評価を行い、更に以下の方法に従って鎮痒効果について評価した。
【0056】
鎮痒効果の評価
1.ddY系クリーンマウス(雄、6週齢)を1週間飼育して、馴化させた。
2.マウスの体重を計測し、後背部をバリカンにて毛剃りした。
3.毛剃り部分に抗真菌性外用組成物(実施例15−18及び比較例18−19)200mgを満遍なく塗布し、指で擦り込んだ。
4.抗真菌性外用組成物塗布30分後に、エーテル麻酔を行い、かゆみ惹起物質(4.8mgのCompound48/80(ICN Biomedicals,Inc製)を1mLの生理食塩水に溶解したもの)を体重40g当たり20μLの割合でマウスに皮内投与した。
5.皮内投与5分後から25分後までの間に、マウスのスクラッチ(マウスが口で皮内投与物質を投与した部分を直接掻く行動)回数をカウントした。
6.陽性コントロールとして、抗真菌性外用組成物を塗布せずにかゆみ惹起物質を投与したものについても、同様に試験を行い、スクラッチ回数をカウントした。なお、かかる鎮痒効果の評価試験はn=6で行った。
7.下記基準に従って、各抗真菌性外用組成物の鎮痒効果を評価した。
○:平均スクラッチ回数が、陽性コントロールの平均スクラッチ回数の1/4未満
△:平均スクラッチ回数が、陽性コントロールの平均スクラッチ回数の1/4以上1/2未満
×:平均スクラッチ回数が、陽性コントロールの平均スクラッチ回数の1/2以上
得られた結果を表8に併せて示す。この結果、参考例15−18の抗真菌性外用組成物は、抗真菌作用に加えて、極めて良好な使用感が得られることが明らかとなった。
【0057】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)抗真菌剤、(B)クロタミトン、炭酸プロピレン、脂肪酸エステル及び多価アルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の付着補助剤、(C)デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンを含有する粉末成分、(D)低級アルコール、及び(E)水を含有する、抗真菌性外用組成物。
【請求項2】
更に、(F)ゲル化剤を含有する、請求項1に記載の抗真菌性外用組成物。
【請求項3】
抗真菌性外用組成物の総重量に対して、(D)低級アルコールを7.2〜35.42重量%及び(E)水を10.8〜81.35重量%の割合で含有する、請求項2に記載の抗真菌性外用組成物。
【請求項4】
(D)低級アルコール100重量部に対して、(E)水が150〜1130重量部の割合で含有する、請求項2又は3のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
【請求項5】
デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンの総重量100重量部当たり、デンプンが19.2〜79.7重量部、撥水性粉末が14.7〜59.3重量部、酸化チタンが0.4〜51.9重量部の割合で含有される、請求項1乃至4のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
【請求項6】
デンプンが、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン及びコムギデンプンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1乃至5のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
【請求項7】
撥水性粉末が、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1乃至6のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
【請求項8】
付着補助剤がクロタミトン、炭酸プロピレン及び脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1乃至7のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
【請求項9】
付着補助剤が、多価アルコールを含有する、請求項2乃至7のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
【請求項10】
抗真菌剤が、オキシコナゾール、ビフォナゾール、スルコナゾール、ネチコナゾール、テルビナフィン、ブテナフィン、アモロルフィン、ラノコナゾール及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1乃至9のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
【請求項11】
ゲル化剤がカルボキシビニルポリマーである、請求項2乃至10のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
【請求項12】
更に、鎮痒剤を含む、請求項1乃至11のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。
【請求項13】
硝酸オキシコナゾールを0.3〜3重量%;ジプロピレングリコールを1〜15重量%;トウモロコシデンプン、タルク及び酸化チタンの混合物を10〜54重量%;リドカインを0.05〜6重量%;エタノールを7.2〜35.42重量%;水を10.8〜81.35重量%;並びにカルボキシビニルポリマーを0.1〜4重量%の割合で含有する、請求項1乃至12のいずれかに記載の抗真菌性外用組成物。

【公開番号】特開2006−104078(P2006−104078A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289331(P2004−289331)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】