説明

抗糖尿病剤

本発明は、式(I)(式中、R’、R”、R’’’、及びZは本明細書中に定義のとおり)の化合物、そのプロドラッグ、及び該化合物及びプロドラッグの薬学的に許容しうる塩;その医薬組成物;及び糖尿病、インスリン抵抗性、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性ネフロパシー、糖尿病性網膜症、白内障、高血糖症、高コレステロール血症、高血圧症、高インスリン血症、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、及び組織虚血症の治療におけるそれらの使用を提供する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は、一定の置換N−(インドール−2−カルボニル)アミド類及び6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボキサミド類に関する。これらは抗糖尿病剤であり、従って、糖尿病、インスリン抵抗性、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性ネフロパシー、糖尿病性網膜症、白内障、高血糖症、高コレステロール血症、高血圧症、高インスリン血症、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、及び組織虚血症、特に心筋虚血症の治療に有用である。本発明はまた、そのような化合物を哺乳動物、特にヒトにおける上記疾患の治療に使用する方法、及びそのために有用な医薬組成物にも関する。
【0002】
古くはインスリンの発見とその後の糖尿病治療における幅広い使用、新しくはスルホニルウレア類、ビグアニド類及びチアゾリジンジオン類、例えばトログリタゾン、ロシグリタゾン又はピオグリタゾンの経口血糖降下剤としての発見及び使用にもかかわらず、糖尿病の治療はまだ満足のゆくものになっていない。
【0003】
インスリンの使用は、通常自己注射によって、1日複数回の投与を必要とする。インスリンの適正な用量を決定するには、尿又は血液中の糖を頻繁に評価する必要がある。過剰量のインスリン投与は低血糖を起こし、その影響は血糖の軽度の異常から昏睡、又は死に至るものにまで及ぶ。非インスリン依存型糖尿病(II型糖尿病、NIDDM)の治療は、通常、食事療法、運動、経口血糖降下剤、例えばチアゾリデンジオン類、及びさらに重症例ではインスリンの組合せからなる。しかしながら、臨床的に利用可能な血糖降下剤は、それらの使用を制限するような副作用があったり、特定の患者に有効でなかったりし得る。インスリン依存型糖尿病(I型)の場合、インスリン投与が治療の主たるコースを構成する。副作用の少ない又は他の血糖降下剤が無効な場合に有効な血糖降下剤が求められている。
【0004】
動脈の疾患であるアテローム性動脈硬化症は、米国及び西欧における死因の第1位と認識されている。アテローム性動脈硬化症及び閉塞性心疾患に至る病理機序はよく知られている。この機序の最初期段階は、頸動脈、冠状および大脳動脈、及び大動脈における“脂肪線条”の形成である。これらの病変は、主として動脈や大動脈の平滑筋細胞内及び内膜層のマクロファージ中に見られる脂質沈着の存在のために黄色い色をしている。さらに、脂肪線条内に認められる大部分のコレステロールが今度は、脂質を積載した、細胞外脂質、コラーゲン、エラスチン及びプロテオグリカンに被覆された内膜平滑筋細胞の蓄積からなる“線維性プラーク”を発生させると考えられている。その細胞とマトリックスで線維性の蓋が形成され、より厚い細胞残屑沈着物及びより多くの細胞外脂質が覆われる。脂質は主に遊離及びエステル化コレステロールである。線維性プラークはゆっくり形成され、やがて石灰化及び壊死する傾向にあり、いわゆる“複雑病変”に進行する。これが、進行したアテローム性動脈硬化症の特徴である動脈閉塞の、及び壁在血栓症及び動脈筋痙攣を起こしがちな傾向の説明となる。
【0005】
疫学的証拠により、高脂血症がアテローム性動脈硬化による心臓血管疾患(CVD)を起こす主要リスク因子であることが確立されている。近年、医学専門家らは、CVD予防上の必須ステップとして、血漿中コレステロール濃度、特に低密度リポタンパク質コレステロールの低下を新たに強調している。“正常値”の上限は、今では従来の認識より著しく低いことが知られている。その結果、多数の西洋人口が今では特にハイリスクであると理解されている。そのような独立リスク因子には、グルコース不耐症、左心室肥大、高血圧、及び男性であることが含まれる。心臓血管疾患は特に糖尿病患者に多い。その理由の少なくとも一部は、この集団に複数の独立リスク因子が存在しているためである。従って、一般人及び特に糖尿病患者における高脂血症の治療に成功を収めることは、医学的にことのほか重要なことである。
【0006】
高血圧(hypertension, high blood pressure)は、腎動脈狭窄、褐色細胞腫又は内分泌障害のような様々な他の障害の二次的症状としてヒト集団に発生する状態である。しかしながら、高血圧は、原因因子又は障害が不明な多くの患者にも認められる。そのような“本態性”高血圧は、肥満、糖尿病及び高トリグリセリド血症のような障害に関連することが多いが、これら障害の間の関係は十分に解明されていない。その上、多くの患者は、疾患又は障害のいかなる他の徴候も全くないのに高血圧の症状を呈している。
【0007】
高血圧は、心不全、腎不全及び脳卒中(脳出血)を直接生じ得ることが知られている。これらの状態は患者を死に至らしめる可能性がある。高血圧は、アテローム性動脈硬化症及び冠状動脈疾患の発生にも寄与しうる。これらの状態は次第に患者を弱らせ、死をもたらすこともある。
【0008】
“本態性”高血圧の正確な病因は不明であるが、多くの因子が疾患の発生に寄与していると考えられている。そのような因子に含まれるものは、ストレス、未制御の(uncontrolled)情緒、不規則な(unregulated)ホルモン分泌(レニン、アンギオテンシン、アルドステロン系)、腎機能不全による過剰の塩及び水、血管収縮をもたらす血管系の壁肥厚及び肥大、及び遺伝的素質などである。
【0009】
“本態性”高血圧の治療は、前記因子を念頭に置いて行われている。従って、広範囲のβ遮断剤、血管収縮剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤などが抗高血圧剤として開発され市場に出ている。これらの化合物を利用した高血圧の治療は、心不全、腎不全、及び脳出血のような短時間で死に至る疾患の予防に有益であることが証明されている。しかしながら、長期にわたる高血圧によるアテローム性動脈硬化症又は心疾患の発生に関してはまだ問題を残している。このことは、高血圧を低下させても、内在する原因である本態性高血圧がこの治療に応答していないことを意味している。
【0010】
高血圧は、血中インスリン濃度の上昇(高インスリン血症として知られている状態)に関連している。インスリンは、グルコース利用、タンパク質合成、及び中性脂肪の生成と貯蔵の促進を主作用とするペプチドホルモンであるが、とりわけ血管細胞の増殖を促進し、腎ナトリウム貯留を増進する作用も持つ。これら後者の機能は、グルコース濃度に影響を及ぼさずに達成でき、そして高血圧の原因としても知られている。例えば、末梢血管の増殖は末梢毛細管の収縮を起こす可能性があり、一方ナトリウム貯留は血液量を増加させる。従って、高インスリン血中でインスリン濃度を低下させることは、高インスリン濃度によって起こる異常な血管増殖及び腎ナトリウム貯留を防止できるので、高血圧が緩和される。
【0011】
心肥大は、突然死、心筋梗塞、及びうっ血性心不全の発生の重要なリスク因子である。これらの心臓事象は、少なくとも一部は、外来患者にも術中状況下でも起こりうる虚血及び再灌流後の心筋傷害に対する感受性の増大による。現在のところ、有害な心筋の術中転帰、特に術中心筋梗塞を防止又は最小限に抑えたいとする医学的需要は満たされていない。心臓はもとより心臓以外の手術も心筋梗塞又は死亡の相当なリスクを伴う。心臓以外の手術を受けるおよそ700万人の患者はリスクを負うと考えられており、術中死亡及び重大な心臓合併症の発生率は場合によっては20〜25%の高さにもなる。さらに、冠状動脈バイパス手術を受ける年間400,000人の患者のうち、術中の心筋梗塞は5%に、死亡は1〜2%に発生すると見積もられている。現在のところ、術中心筋虚血による心臓組織への損傷を低減する、又は虚血エピソードに対する心臓の抵抗性を増強するこの分野における薬物療法は市場にない。そのような療法は、救命、入院の減少、生活の質の向上、及びハイリスク患者の総体的医療費削減のために期待されている。虚血及び再灌流後に観察される心筋傷害を招く機序は十分理解されていないが、“虚血前のグリコーゲン減少...は、ラット肥大心における虚血後の左心室機能回復の改善に関連している”ことが報告されている(M.F.Allardら、Am.J.Physiol.,267:H66−H74(1994))。
【0012】
心筋虚血のほか、他の組織も虚血を被って損傷を受け、患者に深刻な問題をもたらす可能性がある。そのような組織の例には、心臓、脳、肝臓、腎臓、肺、消化管、骨格筋、脾臓、膵臓、神経、脊髄、網膜組織、血管系、又は腸組織が含まれる。
【0013】
肝臓のグルコース産生はNIDDM療法の重要なターゲットである。肝臓は、吸収後(絶食)状態における血漿中グルコース濃度の主たる調節器であり、NIDDM患者における肝グルコース産生速度は正常者に比べて著しく上昇している。同様に、食後(摂食後)の状態でも(この状態においては、肝臓は総血漿中グルコース供給において比例的により小さな役割しか果たさないが)、NIDDM患者では肝グルコース産生が異常に高い。
【0014】
グリコーゲン分解は、肝グルコース産生を遮断するための重要なターゲットである。肝臓はグリコーゲン分解(グルコースポリマーであるグリコーゲンの分解)及び糖新生(2−及び3−炭素前駆体からのグルコースの合成)によってグルコースを産生している。いくつかの証拠によれば、グリコーゲン分解はNIDDMにおける肝グルコース産生量に重要な寄与をしているようである。第一に、正常者の吸収後の場合、75%までの肝グルコース産生がグリコーゲン分解の結果であると推定される。第二に、エルス病(グリコーゲンホスホリラーゼ欠損症)を含む肝糖原病を有する患者は、低血糖のエピソードを示す。これらの観察から、グリコーゲン分解は肝グルコース産生の重要なプロセスであり得ることが示唆される。
【0015】
グリコーゲン分解は、肝臓、筋肉、及び脳で、酵素グリコーゲンホスホリラーゼの組織特異的アイソフォームによって触媒される。この酵素は、グリコーゲン巨大分子を切断してグルコース−1−リン酸と新しい短縮されたグリコーゲン巨大分子を放出する。これまでに数種類のグリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤が報告されている。すなわち、グルコース及びグルコース類似体[J.L.Martinら、Biochemistry,30:10101(1991)];カフェイン及び他のプリン類似体[P.L.Kasvinskyら、J.Biol.Chem.,253:3343−3351及び9102−9106(1978)];置換N−(インドール−2−カルボニル)−アミド類[PCT公開番号WO96/39385];及び置換N−(インドール−2−カルボニル)−グリシンアミド類[PCT公開番号WO96/39384]である。これらの化合物、及びグリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤は一般的に、肝グルコース産生の減少と血糖の低下によってNIDDMの治療に有用であると考えられている。[T.B.Blundellら、Diabetologia,35:Suppl.2,569−576(1992)及びMartinら、Biochemistry,30:10101(1991)]。
【0016】
心筋虚血傷害は、外来患者にも術中の状況下でも起こり得、突然死、心筋梗塞、又はうっ血性心不全の発生に至ることもある。現在のところ、心筋虚血傷害、特に術中心筋梗塞を防止又は最小限に抑えたいとする医学的需要は満たされていない。そのような療法は、救命、入院の減少、生活の質の向上、及びハイリスク患者の総体的医療費削減のために期待されている。高血糖症、高コレステロール血症、高血圧症、高脂血症、アテローム性動脈硬化症及び組織虚血症に対する様々な療法があるが、当該分野では代替療法に対する継続した需要がある。
【特許文献1】WO96/39385
【特許文献2】WO96/39384
【非特許文献1】M.F.Allardら、Am.J.Physiol.,267:H66−H74(1994)
【非特許文献2】J.L.Martinら、Biochemistry,30:10101(1991)
【非特許文献3】P.L.Kasvinskyら、J.Biol.Chem.,253:3343−3351(1978)
【非特許文献4】P.L.Kasvinskyら、J.Biol.Chem.,253:9102−9106(1978)
【非特許文献5】T.B.Blundellら、Diabetologia,35:Suppl.2,569−576(1992)
【非特許文献6】Martinら、Biochemistry,30:10101(1991)
【0017】
発明の要旨
本発明は、式(I):
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R’、R”、R’’’、及びZは本明細書中に定義のとおり)の化合物、そのプロドラッグ、及びそれら化合物及びプロドラッグの薬学的に許容しうる塩;その医薬組成物;及び糖尿病、インスリン抵抗性、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性ネフロパシー、糖尿病性網膜症、白内障、高血糖症、高コレステロール血症、高血圧症、高インスリン血症、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、及び組織虚血症の治療におけるそれらの使用を提供する。
【0020】
発明の詳しい説明
本発明は、式(I):
【0021】
【化2】

【0022】
[式中、
R’は、
【0023】
【化3】

【0024】
{式中、Rは、水素;アミノ;シアノ;ニトロ;ハロゲン;−(C−C)アルキル;及び−(C−C)アルコキシからなる群から独立して選ばれる1〜3個の置換基を表し、前記−(C−C)アルキル基及び前記−(C−C)アルコキシ基はそれぞれ場合により1〜6個のフッ素原子で置換されている}であり;
R”は、
(i):
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、nは1〜3の整数を表す);又は
(ii)−(CHRSO(C−C)アルキル{式中、Rは、水素又は−(C−C)アルキルである}であり;
R’’’は、水素又は−(C−C)アルキルであり;そして
Zは、酸素又は硫黄である]
の化合物、そのプロドラッグ、又はそれら化合物もしくはプロドラッグの薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0027】
一般的に好適なサブグループの式(I)の化合物には、
R’が、
【0028】
【化5】

【0029】
(式中、Rは、クロロ、フルオロ、及びメチルからなる群から選ばれる)であり;
R”が、
【0030】
【化6】

【0031】
であり;
R’’’が、水素又はメチルであり;そして
Zが酸素である化合物が含まれる。
【0032】
別の一般的に好適なサブグループの式(I)の化合物には、
R’が、
【0033】
【化7】

【0034】
(式中、Rは、クロロ、フルオロ、及びメチルからなる群から選ばれる)であり;
R”が、
【0035】
【化8】

【0036】
であり;
R’’’が、水素又はメチルであり;そして
Zが酸素である化合物が含まれる。
【0037】
別の一般的に好適なサブグループの式(I)の化合物には、
R’が、
【0038】
【化9】

【0039】
(式中、Rは、クロロ、フルオロ、及びメチルからなる群から選ばれる)であり;
R”が、
【0040】
【化10】

【0041】
であり;
R’’’が水素であり;そして
Zが酸素である化合物が含まれる。
【0042】
さらに別の一般的に好適なサブグループの式(I)の化合物には、
R’が、
【0043】
【化11】

【0044】
であり;
R”が、
【0045】
【化12】

【0046】
であり;
R’’’がメチルであり;そして
Zが酸素である化合物が含まれる。
【0047】
さらに別の一般的に好適なサブグループの式(I)の化合物には、
R’が、
【0048】
【化13】

【0049】
であり;
R”が、
【0050】
【化14】

【0051】
であり;
R’’’が水素又はメチルであり;そして
Zが酸素である化合物が含まれる。
【0052】
特に好適なサブグループの式(I)の化合物には、
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−1−チオフェン−2−イル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド;
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−1−テトラヒドロ−1−チオフェン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド;
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−ヘキサヒドロ−1−チオピラン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド;
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−ヘキサヒドロ−1−チオピラン−2−イル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド;
2−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−1−チオフェン−2−イル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド;
2−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−1−チオフェン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド;及び
2−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−ヘキサヒドロ−1−チオピラン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド;
からなる群から選ばれる化合物、そのプロドラッグ、又はそれら化合物もしくはプロドラッグの薬学的に許容しうる塩が含まれる。
【0053】
本発明の化合物及び中間体は、IUPAC(国際純正および応用化学連合、International Union for Pure and Applied Chemistry)又はCAS(ケミカル・アブストラクツ・サービス、Chemical Abstracts Service、オハイオ州コロンバス)の命名法体系のいずれかに従って命名されうる。
【0054】
本明細書では各種の炭化水素含有部分の炭素原子含有量は、当該部分における炭素原子の最小及び最大数を指定する接頭語によって示されうる。例えば、接頭語(C−C)アルキルは、整数“a”から“b”までの個数の炭素原子のアルキル部分を包括的に示す。従って、例えば(C−C)アルキルは、包括的な1〜6個の炭素原子のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどのことであり、それにはそれらの全ての位置異性体、及びそれらの直鎖及び分枝鎖形態も含まれる。
【0055】
“アルコキシ”という用語は、酸素原子に結合した、線状の又は分枝した一価の飽和脂肪族の炭素原子鎖のことである。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソ−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシなどが含まれる。
【0056】
“アルキル”という用語は、線状の又は分枝した一価の飽和脂肪族の炭素原子鎖のことであり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどが含まれる。
【0057】
“ハロゲン”という用語は、クロロ、フルオロ、ブロモ、及びヨードを表す。
“哺乳動物”という用語は、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、及びヒトを含む動物を意味する。好適な哺乳動物にはヒトが含まれる。
【0058】
“薬学的に許容しうる”という語句は、指定された担体、ビヒクル、希釈剤、賦形剤、及び/又は塩が、製剤を構成する他の成分と化学的及び/又は物理的に適合し、そしてそのレシピエントと生理的に適合しなければならないことを示す。
【0059】
“プロドラッグ”という用語は、薬物前駆体である化合物のことであり、それは、投与後に化学的又は生理的プロセスにより(例えば、生理的pHに達すると、又は酵素活性によって)、インビボで薬物を放出する。プロドラッグの合成と使用に関する検討は、T.Higuchi及びW.Stella,“新規送達システムとしてのプロドラッグ(Prodrugs as Novel Delivery Systems)”,ACS Symposium SeriesのVol.14、及び薬物設計における生物可逆的担体(Bioreversible Carriers in Drug Design),Edward B.Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987、によって提供されている。
【0060】
“基”という用語は、化学反応において単一の原子として振舞う原子団(例えば、有機基は、それを含有する化合物に特性を付与する)か、又は一連の反応もしくは変換時に未変化のままの原子団を示す。
【0061】
“塩”という用語は、式(I)の化合物もしくはその立体異性体、又はそのプロドラッグの有機及び無機の塩のことを言う。これらの塩は、化合物の最終単離及び精製時にその場で、又は、式(I)の化合物又はその立体異性体もしくはプロドラッグを適切な有機又は無機酸又は塩基と反応させてそのようにして形成された塩を単離することを別々に行なうことによって製造できる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ベシル酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(naphthylate)、メシル酸塩、グルコヘプタン酸塩、ラクトビオン酸塩、及びラウリル硫酸塩などが含まれる。それらには、アルカリ及びアルカリ土類金属に基づくカチオン、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、並びに非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンのカチオン、例えば、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなど(これらに限定されない)も含まれる。追加の例については、例えば、Bergeら、J.Pharm.Sci.,66,1−19(1977)参照のこと。
【0062】
“置換された”という用語は、分子上の水素原子が異なる原子又は分子で置換されていることを意味する。水素原子を置換する原子又は分子を“置換基”と言う。
記号“−”は共有結合を表す。
【0063】
“反応不活性溶媒”又は“不活性溶媒”という語句は、出発材料、試薬、中間体又は生成物と、それらの所望の性質に悪影響を与えるような様式で相互作用しない溶媒又は溶媒の混合物のことをいう。
【0064】
本明細書中で使用されている“治療する”、“治療された”、又は“治療”という用語には、防止的(例えば予防的)、対症的、又は治癒的使用もしくは結果が含まれる。
式(I)の化合物は不斉中心又はキラル中心を含有しうるので、異なる立体異性形態で存在しうる。式(I)の化合物の全ての立体異性体、並びにラセミ混合物を含むそれらの混合物も本発明の一部を形成すると考える。さらに、本発明は全ての幾何異性体及び位置異性体も包含する。例えば、式(I)の化合物が二重結合を組み込んでいる場合、シス体及びトランス体の両方、並びにそれらの混合物も本発明の範囲に包含される。
【0065】
ジアステレオマー混合物は、それらの物理的化学的相違に基づいて、当業者に周知の方法、例えばクロマトグラフィー及び/又は分別結晶によって個々のジアステレオマーに分離できる。鏡像異性体は、鏡像異性体混合物を適当な光学活性化合物(例えばアルコール)との反応によってジアステレオマー混合物に変換し、それらジアステレオマーを分離し、そして個々のジアステレオマーを対応する純粋な鏡像異性体に変換(例えば加水分解)することによって分離できる。また、式(I)の化合物はアトロプ異性体(例えば置換ビアリール類)であり得るが、それらも本発明の一部とみなされる。
【0066】
式(I)の化合物は、非溶媒和物形態だけでなく薬学的に許容しうる溶媒、例えば水、エタノールなどとの溶媒和物形態でも存在しうるが、本発明は溶媒和物形態及び非溶媒和物形態の両方を包含することを意図している。
【0067】
式(I)の化合物は、平衡状態の互変異性体として存在することも可能である。そうした全ての形態も本発明の範囲に包含される。
本発明は式(I)の同位体標識化合物も包含する。その同位体標識化合物は、1個以上の原子が通常天然に存在する原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置換されているという事実を除いて本明細書中に記載されている化合物と同一である。式(I)の化合物に組み込むことができる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、及び塩素の同位体、例えばそれぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36Clが含まれる。前述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有する式(I)の化合物、その立体異性体及びプロドラッグ、並びにそれら化合物、立体異性体、又はプロドラッグの薬学的に許容しうる塩も本発明の範囲に含まれると考える。
【0068】
一定の同位体標識した式(I)の化合物、例えばH及び14Cのような放射性同位体が組み込まれている化合物は、化合物及び/又は基質の組織分布アッセイに有用である。トリチウム化すなわちH、及び炭素−14すなわち14C同位体は、それらが製造も比較的容易で検出も容易であることから特に好適である。さらに、ジュウテリウムすなわちHのようなより重い同位体による置換は、代謝安定性がより高いことに由来する一定の治療的利点、例えば増大したインビボの半減期又は減少した用量要件を提供できるので、ある状況下では好適であり得る。式(I)の同位体標識化合物は一般に、以下に記載のスキーム及び/又は実施例に開示されているのと類似の手順を、非同位体標識試薬を同位体標識試薬に換えて実施することによって製造できる。
【0069】
別の側面において、本発明は、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、インスリン抵抗性、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性ネフロパシー、糖尿病性網膜症、白内障、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高血糖症、高血圧症、及び心筋虚血症を含む組織虚血症からなる群から選ばれる状態の治療法も提供する。その方法は、そのような治療を必要とする哺乳動物に、治療的に有効な量の式(I)の化合物、そのプロドラッグ、又はそれら化合物もしくはプロドラッグの薬学的に許容しうる塩;あるいは式(I)の化合物もしくはそのプロドラッグ、又はそれら化合物もしくはプロドラッグの薬学的に許容しうる塩と、薬学的に許容しうる担体、ビヒクル、又は希釈剤とを含む医薬組成物を投与することを含む。好適な状態には糖尿病が含まれる。
【0070】
別の側面において、本発明はグリコーゲンホスホリラーゼの阻害法を提供する。その方法は、そのような阻害を必要とする哺乳動物に、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害量の式(I)の化合物、そのプロドラッグ、又は前記化合物もしくはプロドラッグの薬学的に許容しうる塩;あるいは式(I)の化合物もしくはそのプロドラッグ、又は前記化合物もしくはプロドラッグの薬学的に許容しうる塩と、薬学的に許容しうる担体、ビヒクル、又は希釈剤とを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0071】
式(I)の化合物は、哺乳動物に1日約0.1mg〜約3,000mgの範囲の用量レベルで投与できる。体重約70kgの標準的成人の場合、典型的には体重1kgあたり約0.01mg〜約100mgの範囲の用量で十分である。しかしながら、治療を受ける患者の年齢及び体重、意図する投与経路、投与される特定の化合物などに応じて一般的用量範囲にいくらかの変動が必要であり得る。特定の哺乳動物患者の用量範囲及び最適用量の決定は、本開示の利益を有する当業者の能力の範囲内である。
【0072】
本発明の方法によれば、式(I)の化合物、そのプロドラッグ、又はその化合物もしくはプロドラッグの薬学的に許容しうる塩は、薬学的に許容しうる担体、ビヒクル、又は希釈剤を含む医薬組成物の形態で投与できる。従って、式(I)の化合物、そのプロドラッグ、又はその化合物もしくはプロドラッグの薬学的に許容しうる塩は、任意の慣用的な経口、直腸、経皮、非経口(例えば静脈内、筋肉内、又は皮下)、槽内、膣内、腹腔内、膀胱内、局所(例えば散剤、軟膏、又は滴剤)、又はバッカル、又は鼻腔剤形で、別個に又は一緒に患者に投与できる。
【0073】
非経口注射に適切な医薬組成物は、薬学的に許容しうる無菌水溶液剤又は非水溶液剤、分散液剤、懸濁液剤、又はエマルジョン、及び水で戻して注射可能な無菌溶液剤又は分散液剤に即時にするための無菌粉末を含みうる。適切な水性及び非水性担体、ビヒクル、及び希釈剤の例には、水、エタノール、ポリオール類(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、それらの適切な混合物、植物油(例えばオリーブ油)、及びオレイン酸エチルのような注射可能有機エステル類が含まれる。適当な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持できる。
【0074】
本発明の医薬組成物は、さらに、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤のようなアジュバントを含みうる。本組成物の微生物汚染の防止は、各種の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などで達成できる。等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウムなどを含むことも望ましいであろう。注射可能医薬組成物の吸収の持続は、吸収を遅延できる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によって実行できる。
【0075】
経口投与用の固体剤形には、カプセル、錠剤、散剤、及び顆粒剤が含まれる。そのような固体剤形の場合、活性化合物を少なくとも一つの不活性な慣用的な医薬賦形剤(又は担体)、例えば、クエン酸ナトリウム又はリン酸ジカルシウム、又は(a)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、マンニトール、及びケイ酸;(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート類、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアカシア;(c)保湿剤(humectant)、例えばグリセロール;(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショ又はタピオカデンプン、アルギン酸、一定の複合ケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム;(e)溶液凝固遅延剤、例えばパラフィン;(f)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物;(g)湿潤剤(wetting agent)、例えばセチルアルコール及びグリセロールモノステアレート;(h)吸着剤、例えばカオリン及びベントナイト;及び/又は(i)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール類、ラウリル硫酸ナトリウム、又はそれらの混合物と混合する。カプセル及び錠剤の場合、剤形はさらに緩衝剤を含んでもよい。
【0076】
同様の種類の固体組成物は、ラクトース又は乳糖、並びに高分子ポリエチレングリコール類などのような賦形剤を用いる軟質又は硬質ゼラチンカプセルの充填剤として使用することもできる。
【0077】
錠剤、ドラジェ、カプセル、及び顆粒剤のような固体剤形は、腸溶コーティング及び当業者に周知の他のコーティングのようなコーティング及びシェル(殻)を施して製造することもできる。それらは乳白剤を含むこともでき、活性化合物を遅延、持続、又は制御様式で放出するような組成物にすることもできる。使用できる包埋組成物の例は、ポリマー物質及びワックスである。活性化合物は、適当であれば一つ以上の上記賦形剤と共にマイクロカプセル形態にすることもできる。
【0078】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容しうるエマルジョン、溶液剤、懸濁液剤、シロップ、及びエリキシルが含まれる。液体剤形は、活性化合物のほか、当該技術分野で普通に使用されている不活性希釈剤、例えば水又はその他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類、特に綿実油、落花生油、コーン胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール類、及びソルビタンの脂肪酸エステル類、又はこれらの物質の混合物などを含有しうる。
【0079】
そのような不活性希釈剤のほか、医薬組成物はアジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、風味剤、及び香味剤を含むこともできる。
懸濁液剤は、活性化合物のほか、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル類、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、及びトラガカント、又はこれら物質の混合物などをさらに含みうる。
【0080】
直腸又は膣投与用の組成物には、好ましくは坐剤が含まれる。これは、活性化合物を適切な非刺激性賦形剤又は担体、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール又は坐剤ワックスと混合することによって製造できる。これらは通常の室温では固体であるが、体温で液体となるので直腸又は膣腔で溶解し、それによって活性成分を放出する。
【0081】
局所投与用の剤形には、軟膏剤、粉末剤、スプレー及び吸入剤が含まれ得る。活性薬剤を無菌条件下で薬学的に許容しうる担体、ビヒクル、又は希釈剤、及び必要とされうる任意の保存剤、緩衝剤、又は噴射剤と混合する。
【0082】
式(I)の化合物は、以下のスキーム1に開示されている例示的合成経路に従って、並びに他の慣用的な有機製造法によって製造できる。スキーム1に開示した方法は本発明の例示を目的としたものであり、いかなる様式でも本発明に対する制限と解釈すべきでないことが理解されるべきである。
【0083】
スキーム1
【0084】
【化15】

【0085】
上記スキーム1において、適当に置換された1H−インドール−2−カルボン酸誘導体(Ia)又は6−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸誘導体(Ib)を、(1)トリメチレンスルホン(Synthesis,,582−583(1982)に記載のように製造)、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド(スルホラン)、又はテトラヒドロ−1,1−ジオキシド−2H−チオピラン(J.Am.Chem.Soc.,114,3021(1992)に記載のように製造)、又は(2)構造式HCRSO(C−C)アルキル{式中、Rは、水素又は−(C−C)アルキル}のアシルスルホン補助基とカップリングして(I)を得る。そのカップリングは典型的には、リチウムジイソプロピルアミドのような強有機塩基の存在下で、エーテル又はテトラヒドロフランのような非プロトン性で非極性の溶媒中で実施する。カップリングは通常、周囲温度未満、好ましくは−78℃又はそのくらいの温度で実施される。
【0086】
一般構造式(Ia)の置換インドール誘導体は、同一出願人による米国特許第6,297,269号(この開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている方法に従って製造できる。一般構造式(Ib)の化合物は、以下の製造例1に記載のように、あるいは、同一出願人による米国特許第6,399,601号(この開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている方法論に従って製造できる。
【0087】
製造実験
特に断りのない限り、全ての反応物及び試薬は市販品を入手した。別途記載のない限り、以下の実験略号は示された意味を有する。
【0088】
DMF−N,N−ジメチルホルムアミド
HOBT−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
HPLC−高速液体クロマトグラフィー
hr−時間
LC/MS−液体クロマトグラフィー/質量分析
min−分
THF−テトラヒドロフラン
製造例1
2−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸−[1−ベンジル−2−メトキシ−2−(メトキシメチル−カルバモイル)−エチル]−アミド(Ib、Z=O、R’’’=CH
トリエチルアミンを、3−アミノ−2,N−ジメトキシ−N−メチル−4−フェニル−ブチルアミド(PCT国際出願公開番号WO96/39385)(1.65g、5.71mmol)のDMF(15ml)中溶液に滴下し、氷浴で冷却した。2−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸(米国特許第6,399,601号)(1.1g、5.71mmol)の15ml DMF中溶液を滴下し、次いでHOBT(1.16g、11.4mmol)をそのまま加えた。反応混合物を5分間撹拌し、N−エチルイミノメチレン−N,N’−ジメチル−プロパン−1,3−ジアミン(1.10g、5.71mmol)をそのまま加えた。得られた混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(150mL)で希釈し、飽和塩化アンモニウム、水、及び食塩水で洗浄した。酢酸エチルを真空下で乾燥及び蒸発させて2.54gの粗生成物を得た。酢酸エチル/ヘキサン(1:2)で溶離するシリカゲル上クロマトグラフィーにより、1.43gの標記化合物を得た。
【実施例1】
【0089】
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−ヘキサヒドロ−1−チオピラン−2−イル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド
n−ブチルリチウム(2mL、ヘキサン中2.5M)を、ジイソプロピルアミンのTHF(5mL)中溶液に0℃で滴下した。反応混合物を−78℃に冷却し、テトラヒドロ−1,1−ジオキシド−2H−チオピラン(0.67g、5mmol)のTHF溶液を滴下し、次いで混合物を0℃に温めた。得られたスラリーに、5mLのTHF中の5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−2−メトキシ−2−(ヒドロキシメチル−カルバモイル)−エチル]−アミド(PCT国際出願公開番号WO96/39385)(0.42g、1mmol)を加え、反応混合物を30分間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液を加えてクエンチングし、酢酸エチルで抽出した。抽出液を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空下で除去して33mgの標記化合物を得た。LC/MS(E+1)490。
【0090】
以下の式(I)の化合物も、実施例1に記載されているのと類似の方式で製造した。
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−1−チオフェン−2−イル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド LC/MS(E+1)476;
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−1−テトラヒドロ−1−チオフェン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド LC/MS(E+1)490;
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−1−チエタン−2−イル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド LC/MS(E+1)462;
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−ヘキサヒドロ−1−チオピラン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド LC/MS(E+1)504;
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−1−チエタン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド LC/MS(E+1)476;
2−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−1−チオフェン−2−イル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド LC/MS(E+1)482;
2−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−1−チオフェン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド LC/MS(E+1)496;
2−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−ヘキサヒドロ−1−チオピラン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド LC/MS(E+1)510;及び
2−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−1−チエタン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド LC/MS(E+1)482。
【実施例2】
【0091】
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸(1−ベンジル−4−エタンスルホニル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−ブチル)−アミド
メタンスルホニル−エタン(1.08g;10mmol)の5mL THF中溶液を、10mLのTHF中1Mのリチウムジイソプロピルアミド(LDA)溶液に−78℃で滴下した。次に該溶液を0℃に温めた。得られたスラリーに、5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸{1−[ヒドロキシ−(メトキシ−メチル−カルバモイル)−メチル]−2−フェニル−エチル}−アミド(0.42g;1mmol)の5mL THF中溶液を加え、反応混合物を30分間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(50mL)/1N HCl(50mL)の氷冷混合物に注いだ。有機層を分離し、乾燥させ、溶媒を真空下で除去して552mgの泡沫を得た。C−8 HPLCカラム上でさらに精製し(水、ギ酸、アセトニトリル)、255mgの標記生成物を得た(LC/MS ES463)。
【0092】
以下の式(I)の化合物も、実施例2に記載されているものと類似の方式で製造した。
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−(1−ベンジル−2−ヒドロキシ−4−メタンスルホニル−3−オキソ−ブチル)−アミド LC/MS(E+1)449;及び
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(プロパン−2−スルホニル)−ブチル]−アミド LC/MS(E+1)477。
【0093】
生物学的プロトコル
式(I)の化合物、そのプロドラッグ、並びにそれら化合物及びプロドラッグの薬学的に許容しうる塩の、動物、特に哺乳動物(例えばヒト)における疾患(本明細書中に詳述したような)の治療又は予防における有用性は、関連分野の当業者に公知の慣用的なアッセイ、例えば以下に記載のインビトロ及びインビボアッセイにおけるその活性によって立証することができる。そのようなアッセイは、式(I)の化合物の活性を他の公知化合物の活性と比較できる手段も提供する。
【0094】
グリコーゲンホスホリラーゼの生成とアッセイ
3種類の異なる精製グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)のアイソエンザイムであって、グリコーゲンホスホリラーゼが活性化された“a”状態にあり(グリコーゲンホスホリラーゼa、又は略号GPaと呼ばれる)、本明細書中ではヒト肝臓グリコーゲンホスホリラーゼa(HLGPa)、ヒト筋肉グリコーゲンホスホリラーゼa(HMGPa)、及びヒト脳グリコーゲンホスホリラーゼa(HBGPa)と呼ばれるアイソエンザイムは、以下の手順に従って得られる。
【0095】
発現及び発酵
HLGPのcDNA{NewgardらのProc.Natl.Acad.Sci.,83,8132−8136(1986)、及びNewgardらのProc.Natl.Acad.Sci.,263,3850−3857(1988)にそれぞれ記載のようにして得た}及びHMGPのcDNA{Stratagene(Stratagene Cloning Systems、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)のヒト筋肉cDNAライブラリーを、Kubischら、分子神経生物学センター、ハンブルグ大学、マティーニストラッセ 85,ハンブルグ,20246,ドイツ;Genbank(全米バイオテクノロジー情報センター、国立衛生研究所、米国)アクセッション番号U94774、U94775、U94776及びU94777、1997年3月20日提出;Burkeら、Proteins,,177−187(1987);及びHwangら、Eur.J.Biochem.,152,267−274(1985)によりヒト骨格筋グリコーゲンホスホリラーゼ遺伝子の単離について報告された情報及び方法論及び部分cDNA配列に基づいたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物のcDNAフラグメントでスクリーニングして得た}を、大腸菌 XL−1 Blue株(Stratagene Cloning Systems、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)中でプラスミドpKK233−2(Pharmacia Biotech.Inc.,ニュージャージー州ピスカタウェイ)から発現させる。この株をLB培地(1リットルあたり10gのトリプトン、5gの酵母エキス、5gのNaCl、及び1mlの1N NaOHからなる)プラス100mg/Lのアンピシリン、100mg/lのピリドキシン及び600mg/LのMnClに播き、37℃で細胞密度OD550=1.0になるまで増殖させる。この時点で細胞を1mMのイソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)で誘導する。誘導の3時間後、細胞を遠心分離によって採集し、細胞ペレットを精製の必要があるまで−70℃で凍結させる。
【0096】
HBGPのcDNAはいくつかの方法論、例えば、CrerarらのJ.Biol.Chem.270,13748−13756(1995)に記載の方法によって発現できる。HBGPの発現法は次の通りである。HBGPのcDNAは、プラスミドpTACTACから大腸菌25A6株中で発現できる。この株をLB培地(1リットルあたり10gのトリプトン、5gの酵母エキス、5gのNaCl、及び1mlの1N NaOHからなる)プラス50mg/Lのアンピシリンに播いて一晩増殖させ、次に、新鮮なLB培地プラス50mg/Lのアンピシリンに再懸濁し、250μMのイソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)、0.5mMのピリドキシン及び3mMのMnClを含有する40倍の体積のLB/アンピシリン培地に再度播き、22℃で48〜50時間成長させる。その後、細胞を遠心分離によって採集し、細胞ペレットを精製の必要があるまで−70℃で凍結させる。
【0097】
また、HLGP及びHBGPのcDNAは、プラスミドpBlueBac III(Invitrogen Corp.,カリフォルニア州サンディエゴ)から発現され、プラスミドはBaculoGold Linear Viral DNA(Pharmingen、カリフォルニア州サンディエゴ)と共にSf9細胞にコトランスフェクトされる。次に、組換えウィルスがプラーク精製される(plaque purified)。タンパク質産生のために、無血清培地(Sf−900 II 無血清培地、Gibco BRL,Life Technologies、ニューヨーク州グランドアイランド)中で増殖させたSf9細胞を、0.5の感染多重度(moi)及び2×10細胞/mlの細胞密度で感染させる。27℃で72時間増殖後、細胞を遠心分離し、細胞ペレットを精製の必要があるまで−70℃で凍結させる。
【0098】
大腸菌中で発現されたグリコーゲンホスホリラーゼの精製
前述のペレット中の大腸菌細胞を、0.2mMのDTT、1mMのMgCl、プラス以下のプロテアーゼ阻害剤:
0.7μg/ml ペプスタチンA
0.5μg/ml ロイペプチン
0.2mM フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、及び
0.5mM EDTA
を含む25mMのβ−グリセロホスフェート(pH7.0)に再懸濁し、200μg/mlのリゾチーム及び3μg/mlのDNAアーゼで前処理して溶菌し、次いでBranson Model 450 超音波細胞破壊器(Branson Sonic Power Co.、コネチカット州ダンベリー)を用いて氷上で5×1.5分間、250mlずつのバッチ方式で超音波処理する。次に、大腸菌細胞溶解産物を35,000×gで1時間遠心分離することによって清澄化し、次いで0.45ミクロンのフィルタを通してろ過する。溶解産物の可溶性画分中のGP(総タンパク質の1%未満と推定)を、酵素活性(以下のGPa活性アッセイのセクションに記載のとおり)をモニタすることによって以下に記載の一連のクロマトグラフィーステップから精製する。
【0099】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)
このステップは、LuongらのJournal of Chromatography,584,77−84(1992)の方法に基づいている。細胞溶解産物のろ過された可溶性画分500ml(元の細胞ペレット約160〜250gから製造)を、IMACキレート化−セファロースの130mlカラム(Pharmacia LKB Biotechnology、ニュージャージー州ピスカタウェイ)に装填する。該カラムには50mMのCuCl及び25mMのβ−グリセロホスフェート、250mMのNaCl及び1mMのイミダゾールが、pH7(平衡化緩衝液)で充填されている。カラムを平衡化緩衝液でA280がベースラインに戻るまで洗浄する。次に、サンプルを100mMのイミダゾールを含有する同じ緩衝液でカラムから溶離し、結合したGP及び他の結合したタンパク質を除去する。GP活性を含有する画分をプールし(約600ml)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、DL−ジチオトレイトール(DTT)、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、ロイペプチン及びペプスタチンAを、それぞれ0.3mM、0.2mM、0.2mM、0.5μg/ml及び0.7μg/mlの濃度になるように加える。プールされたGPを、25mMのトリス−HCl(pH7.3)、3mMのDTT緩衝液(緩衝液A)で平衡化されたSephadex G−25カラム(Sigma Chemical Co.,ミズーリ州セントルイス)上で脱塩してイミダゾールを除去し、氷上に貯蔵して、必要であれば第二のクロマトグラフィーステップ(以下)にかける。
【0100】
5’−AMP−セファロースクロマトグラフィー
次に、脱塩されプールされたGPサンプル(約600mL)を、緩衝液A(上記参照)で平衡化されている70mlの5’−AMP−セファロース(Pharmacia LKB Biotechnology、ニュージャージー州ピスカタウェイ)と混合する。その混合物を22℃で1時間穏やかに撹拌し、次にカラムに詰めてA280がベースラインに戻るまで緩衝液Aで洗浄する。GP及び他のタンパク質を、25mMのトリス−HCl、0.2mMのDTT及び10mMのアデノシン5’−モノホスフェート(AMP)(pH7.3)(緩衝液B)でカラムから溶離する。GP含有画分を、以下に記載の酵素活性の測定及びドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)とその後の銀染色(2D−銀染色試薬 II “第一キット”、第一化学薬品、東京)によるM約97kdalのGPタンパク質バンドの視覚化によって確認した後プールする。プールしたGPを、25mMのβ−グリセロホスフェート、0.2mMのDTT、0.3mMのEDTA、200mMのNaCl、pH7.0緩衝液(緩衝液C)中に透析し、使用するまで氷上で貯蔵する。
【0101】
GP酵素の使用前に、その酵素を大腸菌 XL−1 Blue株(Stratagene Cloning Systems、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)に発現されている不活性体(GPbと表す)から活性体(GPaと表す)に、以下のセクション(A)「GPの活性化」に記載の手順によって変換する。
【0102】
Sf9細胞に発現されたグリコーゲンホスホリラーゼの精製
前述のペレット中のSf9細胞を、0.2mMのDTT、1mMのMgCl、プラス以下のプロテアーゼ阻害剤:
0.7μg/ml ペプスタチンA
0.5μg/ml ロイペプチン
0.2mM フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、及び
0.5mM EDTA
を含む25mMのβ−グリセロホスフェート(pH7.0)に再懸濁し、3μg/mlのDNAアーゼで前処理して溶菌し、次いでBranson Model 450 超音波細胞破壊器(Branson Sonic Power Co.、コネチカット州ダンベリー)を用いて氷上で3×1分間バッチ方式で超音波処理する。次に、Sf9細胞溶解産物を35,000×gで1時間遠心分離することによって清澄化し、次いで0.45ミクロンのフィルタを通してろ過する。溶解産物の可溶性画分中のGP(総タンパク質の1.5%と推定)を、酵素活性(以下のGPa活性アッセイのセクションに記載のとおり)をモニタすることによって以下に記載の一連のクロマトグラフィーステップから精製する。
【0103】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)
固定化金属アフィニティークロマトグラフィーは上記セクションに記載のように実施する。そしてプールされ脱塩されたGPを、さらに処理するまで氷上で貯蔵する。
【0104】
GPの活性化
更なるクロマトグラフィーの前に、Sf9細胞に発現されている不活性酵素(GPbと表す)の画分を活性体(GPaと表す)に、以下のセクション(A)「GPの活性化」に記載の下記手順によって変換する。
【0105】
陰イオン交換クロマトグラフィー
IMACで精製したGPbを、以下に記載した固定化ホスホリラーゼキナーゼとの反応によってGPaに活性化した後、プールしたGPa画分を、0.5mMのDTT、0.2mMのEDTA、1.0mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、1.0μg/mlのロイペプチン及び1.0μg/mlのペプスタチンAを含有する25mM トリス−HCl(pH7.5)に対して透析する。次に、その画分をMonoQ陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(Pharmacia Biotech.Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)に装填する。カラムを平衡化緩衝液でA280がベースラインに戻るまで洗浄する。次に、サンプルを0〜0.25M NaClのリニアグラジエントでカラムから溶離し、結合GP及び他の結合タンパク質を除去する。GP含有画分は、NaClが0.1〜0.2Mの範囲で溶離される。これは、溶出液をA280におけるピークタンパク質の吸光度についてモニタすることによって検出される。次に、GPタンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)とその後の銀染色(2D−銀染色試薬 II “第一キット”、第一化学薬品、東京)によるM約97kdalのGPタンパク質バンドの視覚化によって確認し、次いでプールする。プールされたGPを、25mMのN,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、1.0mMのDTT、0.5mMのEDTA、5mMのNaCl、pH6.8緩衝液中に透析し、使用するまで氷上で貯蔵する。
【0106】
GP酵素活性の測定
A)GPの活性化:GPbのGPaへの変換
GP酵素活性の測定前に、酵素を大腸菌 XL−1 Blue株(Stratagene Cloning Systems、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)に発現されている不活性体(GPbと表す)から活性体(GPaと表す)に、以下のようにホスホリラーゼキナーゼを用いてGPをリン酸化することによって変換する。Sf9細胞に発現されている不活性酵素(GPbと表す)の画分も、以下の手順によって活性体(GPaと表す)に変換する。
【0107】
固定化ホスホリラーゼキナーゼとのGP反応
ホスホリラーゼキナーゼ(Sigma Chemical Company、ミズーリ州セントルイス)をメーカーの使用説明書に従ってAffi−Gel(登録商標)10(BioRad Corp.,ニューヨーク州メルヴィル)に固定化する。手短に述べると、ホスホリラーゼキナーゼ酵素(10mg)を洗浄したAffi−Gel(登録商標)ビーズ(1ml)と、2.5mlの100mMヘペス及び80mM CaCl(pH7.4)中、4℃で4時間インキュベートする。次にAffi−Gel(登録商標)ビーズを同じ緩衝液で1回洗浄した後、50mMのヘペス及び1Mのグリシンメチルエステル(pH8.0)を用い、室温で1時間ブロッキングする。ブロッキング緩衝液を除去し、貯蔵のために50mMのヘペス(pH7.4)、1mMのβ−メルカプトエタノール及び0.2%のNaNと入れ替える。GPbからGPaへの変換に使用する前に、Affi−Gel(登録商標)固定化ホスホリラーゼキナーゼビーズを、キナーゼ反応の実施に使用する25mMのβ−グリセロホスフェート、0.3mMのDTT、及び0.3mMのEDTA(pH7.8)からなる緩衝液(キナーゼアッセイ緩衝液)中で洗浄することによって平衡化する。
【0108】
上記5’−AMP−セファロースクロマトグラフィーから得られた部分精製された不活性GPb(大腸菌由来)又は上記IMACから得られたGPa及びGPbの混合物(Sf9細胞由来)をキナーゼアッセイ緩衝液で1:10に希釈し、それからAffi−Gel(登録商標)ビーズに固定化された前述のホスホリラーゼキナーゼ酵素と混合する。NaATPを5mMになるまで、MgClを6mMになるまで加える。得られた混合物を25℃で30〜60分間穏やかに混合する。活性化サンプルをビーズから除去し、GPaへの変換によるGPbの活性化パーセントを、3.3mMのAMPの存在下及び不在下におけるGP酵素活性を測定することによって評価する。GPa酵素活性(AMP非依存性)による総GP酵素活性のパーセンテージは以下のように算出される。
【0109】
総HLGPaの%=(HLGP活性−AMP)/(HLGP活性+AMP)
また、GPbからGPaへの変換は、GPbからGPaへの変換後に認められる電気泳動移動度におけるシフトに基づいて、等電点電気泳動によってモニタすることもできる。GPサンプルは、メーカーの推奨法に従ってプレキャストゲル(pI範囲4〜6.5)を用いるPharmacia PfastGel System(Pharmacia Biotech.Inc.,ニュージャージー州ピスカタウェイ)を利用した等電点電気泳動(IEF)によって分析する。次に、分解されたGPaとGpbバンドを銀染色(2D−銀染色試薬 II “第一キット”、第一化学薬品、東京)によってゲル上で視覚化する。GPaとGPbの確認は、実験サンプルと同じゲル上で平行して実施した大腸菌由来のGPa及びGPb標準との比較によって行う。
【0110】
B)GPa活性アッセイ
本明細書中に記載の式(I)の化合物の疾患/状態の治療/予防活性は、グリコーゲンホスホリラーゼ活性化形態(GPa)の活性に対する式(I)の化合物の作用を、次の二つの方法のうちの一つによって評価することにより間接的に測定できる。(1)GPa活性を、グリコーゲンからのグルコース−1−リン酸の産生をモニタすることによって順方向に測定する、又は(2)逆反応に従って、無機リン酸の放出によるグルコース−1−リン酸からのグリコーゲン合成を測定する。全ての反応とも96穴マイクロタイタープレートで三重に実施し、反応生成物の形成による吸光度の変化を、以下に明記した波長で、Titertech Microplate Stacker(ICN Biomedical Co,アラバマ州ハンツビル)に接続したMCC/340 MKII Elisa Reader(Lab Systems、フィンランド)で測定する。
【0111】
順方向のGPa酵素活性を測定するには、グリコーゲンからのグルコース−1−リン酸の産生を、Pesceらの多酵素を組合せた(multienzyme coupled)一般法(Clinical Chemistry 23,1711−1717(1977))を以下のように変形してモニタする。1〜100μgのGPa、10単位のホスホグルコムターゼ及び15単位のグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(Boehringer Mannheim Biochemicals、インジアナ州インジアナポリス)を緩衝液D(pH7.2、50mMのヘペス、100mMのKCl、2.5mMのエチレングリコールテトラ酢酸(EGTA)、2.5mMのMgCl、3.5mMのKHPO及び0.5mMのジチオトレイトール)中に希釈して1mLにする。このストック20μlを、0.47mg/mLのグリコーゲン、9.4mMのグルコース、0.63mMのニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の酸化型(NADP+)を含有する80μlの緩衝液Dに加える。試験される式(I)の化合物を14%ジメチルスルホキシド(DMSO)中5μlの溶液として加えた後に酵素を加える。阻害剤、例えば式(I)の化合物の不在下におけるGPa酵素活性の基礎速度は、5μlの14%DMSOを加えることによって測定され、GPa酵素活性の完全阻害速度は、陽性対照試験物質であるカフェインの50mMを20μl加えることによって得られる。反応は、室温で酸化型NADP+から還元型NADPHへの変換を340nmで測定することによって追跡する。
【0112】
逆方向のGPa酵素活性を測定するには、グルコース−1−リン酸からグリコーゲン+無機リン酸への変換を、Engersらによる一般法(Can.J.Biochem.,48,746−754(1970))を以下のように変形して測定する。1〜100ugのGPaを緩衝液E(pH7.2、50mMのヘペス、100mMのKCl、2.5mMのEGTA、2.5mMのMgCl及び0.5mMのジチオトレイトール)中に希釈して1mlにする。このストック20μlを、1.25mg/mlのグリコーゲン、9.4mMのグルコース、及び0.63mMのグルコース−1−リン酸を含有する80μlの緩衝液Eに加える。試験される式(I)の化合物を14%DMSO中5μlの溶液として加えた後に酵素を加える。添加阻害剤、例えば式(I)の化合物の不在下におけるGPa酵素活性の基礎速度は、5μlの14%DMSOを加えることによって測定され、GPa酵素活性の完全阻害速度は、50mMカフェインを20μL加えることによって得られる。この混合物を室温で1時間インキュベートし、グルコース−1−リン酸から放出された無機リン酸を、Lanzettaらの一般法(Anal.Biochem.,100,95−97(1979))を以下のように変形して測定する。150μlの10mg/mlモリブデン酸アンモニウム、1N HCl中0.38mg/mlのマラカイトグリーンを100μlの酵素混合物に加える。室温で20分間のインキュベーション後、吸光度を620nmで測定する。
【0113】
ある濃度範囲の式(I)の化合物で実施した上記アッセイから、GPa酵素活性の該化合物によるインビトロ阻害に関するIC50値(50%の阻害に必要な化合物の濃度)が決定できる。
【0114】
式(I)の化合物は、血糖降下剤として容易に臨床使用に適応される。式(I)の化合物の血糖降下活性は、雄のob/obマウスにおいて式(I)の化合物を含まないビヒクルと比較してグルコース濃度を低下させる式(I)の化合物の量によって決定できる。この試験は、そのようなマウスにおいて血漿中グルコース濃度をインビボで低下させるそのような式(I)の化合物のおよその最小有効量(MED)値の決定も可能にする。
【0115】
血中グルコース濃度は糖尿病性障害の発生に密接に関連しているので、式(I)の化合物は、それらの血糖降下作用によって糖尿病性障害を予防、阻止及び/又は退行させる。
5〜8週齢の雄C57BL/6J−ob/obマウス(Jackson Laboratory、メーン州バーハーバー)を標準的動物飼育プラクティスの下で1ケージに5匹ずつ収容する。1週間の順応期間後、あらゆる処置に先立ち、動物の体重を測定し、25マイクロリットルの血液を眼窩後洞から採取する。血液サンプルは直ちに0.025%のナトリウムヘパリンを含有する生理食塩水で1:5に希釈し、代謝産物分析のために氷上に保持する。動物を、各群の血漿中グルコース濃度が類似の平均値を有するように処置群に割り振る。グループ割振り後、動物に4日間毎日、下記のいずれかからなるビヒクルを経口投与する。(1)pH調整をしていない水中0.25%w/vメチルセルロース;又は(2)pH調整をしていない0.1%生理食塩水中0.1%Pluronic(登録商標)P105 ブロックコポリマー界面活性剤(BASF Corporation、ニュージャージー州パーシッパニー)。第5日目、動物の体重を再測定してから式(I)の化合物又はビヒクルのみを経口投与する。全ての化合物は、(1)水中0.25%w/vメチルセルロース;(2)pH調整をしていない0.1%生理食塩水中10%DMSO/0.1%Pluronic(登録商標);又は(3)pH調整をしていないPEG400原液のいずれかからなるビヒクルに入れて投与する。その3時間後、血中の代謝産物濃度を測定するため眼窩後洞から血液を抜き取る。採取したばかりのサンプルを10,000×g、室温で2分間遠心分離する。上清をグルコースについて分析する。測定は、例えば、Abbott VP(商標)(Abbott Laboratories,Diagnostics Division、テキサス州アービング)及びVP Super System(登録商標)オートアナライザ(Abbott Laboratories、テキサス州アービング)によるか、又は100mg/dl標準を用いるA−Gent(商標)グルコース−UV試験試薬システム(Abbott Laboratories、テキサス州アービング)を使用するAbbott Spectrum CCX(商標)(Abbott Laboratories、テキサス州アービング)(Richterich及びDauwalder,Schweizerische Medizinische Wochenschrift,101,860(1971)の方法の変形)(ヘキソキナーゼ法)による。次に、下記等式を用いて血漿中グルコースを算出する。
【0116】
血漿中グルコース(mg/dl)=サンプル値×8.14
式中、8.14は血漿中ヘマトクリットについて調整された希釈比(ヘマトクリットを44%と仮定)。
【0117】
ビヒクルを投与された動物は、実質的に不変の高血糖グルコース濃度(例えば250mg/dl以上)を維持しており、血糖降下活性を有する化合物の適切な用量で処置された動物は、グルコース濃度が著しく抑制されている。式(I)の化合物の血糖降下活性は、第5日目の試験化合物処置群とビヒクル処置群の間の平均血漿中グルコース濃度の統計分析(対応のないt検定)によって決定される。ある用量範囲の式(I)の化合物で実施した上記アッセイは、血漿中グルコース濃度のインビボにおける低減に関するおよその最小有効量(MED)値の決定も可能にする。
【0118】
式(I)の化合物は、高インスリン血症逆転剤、トリグリセリド低下剤及び血中コレステロール低下剤として臨床使用に容易に適応される。そのような活性は、雄のob/obマウスにおいて、試験化合物を含まない対照ビヒクルと比較してインスリン、トリグリセリド、又はコレステロール濃度を低下させる式(I)の化合物の量によって測定できる。
【0119】
血中コレステロール濃度は、心臓血管、脳血管又は末梢血管障害の発生に密接に関連しているので、式(I)の化合物は、それらの血中コレステロール低下作用によって、アテローム性動脈硬化症を予防、阻止及び/又は退行させる。
【0120】
血中インスリン濃度は、(グルコース利用の促進などのその他の作用以外に)血管細胞増殖の促進及び腎ナトリウム貯留増進に関連し、そしてこれらの機能は高血圧の原因として知られているので、式(I)の化合物は、それらの血中インスリン低下作用によって、高血圧症を予防、阻止及び/又は退行させる。
【0121】
血中トリグリセリド濃度は血中脂質の総濃度に寄与するので、式(I)の化合物は、それらのトリグリセリド低下及び/又は遊離脂肪酸低下活性によって、高脂血症を予防、阻止及び/又は退行させる。
【0122】
5〜8週齢の雄C57BL/6J−ob/obマウス(Jackson Laboratory、メーン州バーハーバー)を標準的動物飼育プラクティスの下で1ケージに5匹ずつ収容し、標準的齧歯類食餌を自由に与える。1週間の順応期間後、あらゆる処置に先立ち、動物の体重を測定し、25マイクロリットルの血液を眼窩後洞から採取する。血液サンプルは直ちに0.025%のナトリウムヘパリンを含有する生理食塩水で1:5に希釈し、血漿中グルコース分析のために氷上に保持する。動物を、各群の血漿中グルコース濃度が類似の平均値を有するように処置群に割り振る。試験される式(I)の化合物は、(1)pH調整をしていない0.1%生理食塩水中10%DMSO/0.1%Pluronic(登録商標)P105 ブロックコポリマー界面活性剤(BASF Corporation、ニュージャージー州パーシッパニー)、又は(2)pH調整をしていない水中0.25%w/vメチルセルロースのいずれかの中の約0.02%〜2.0%溶液(w/v)として経口胃管投与される。あるいは、式(I)の化合物は、PEG400原液中に溶解又は懸濁させて経口胃管投与してもよい。1日1回投与(s.i.d.)、1日2回投与(b.i.d.)、又は1日3回投与(t.i.d.)を、例えば1〜28日間維持する。対照マウスは、pH調整をしていない0.1%生理食塩水中10%DMSO/0.1%Pluronic(登録商標)P105、又はpH調整をしていない水中0.25%w/vメチルセルロース、又はpH調整をしていないPEG400原液を投与される。
【0123】
最後の用量の投与1〜3時間後、動物を断頭によって殺し、体幹血を、3.6mgの1:1(重量/重量)フッ化ナトリウム:シュウ酸カリウム混合物を含有する0.5mlの血清分離管に採取する。採取したばかりのサンプルを10,000×g、室温で2分間遠心分離し、血清上清を取り出し、pH調整をしていない0.1%生理食塩水中1TIU/mlアプロチニン溶液で1:1(体積/体積)に希釈する。
【0124】
次に、希釈した血清サンプルを−80℃で分析まで貯蔵する。解凍した希釈血清サンプルを、インスリン、トリグリセリド、遊離脂肪酸及びコレステロール濃度について分析する。血清中インスリン濃度は、Binax(メーン州サウスポートランド)社から入手できるEquate(登録商標)RIA INSULINキット(二抗体法;メーカーの指定通り)を用いて測定する。アッセイ間の変動係数は≦10%である。血清中トリグリセリドは、Abbott VP(商標)及びVP Super System(登録商標)オートアナライザ(Abbott Laboratories、テキサス州アービング)、又はA−Gent(商標)トリグリセリド試験試薬システム(Abbott Laboratories、Diagnostics Division、テキサス州アービング)を使用するAbbott Spectrum CCX(商標)(Abbott Laboratories、テキサス州アービング)(リパーゼ結合酵素法;Sampsonら、Clinical Chemistry,21,1983(1975)の方法の変形)を用いて測定する。血清又は血漿中総コレステロール濃度は、Abbott VP(商標)及びVP Super System(登録商標)オートアナライザ(Abbott Laboratories、テキサス州アービング)、並びに100及び300mg/dl標準を用いるA−Gent(商標)コレステロール試験試薬システム(コレステロールエステラーゼ結合酵素法;Allainら、Clinical Chemistry,20,470(1974)の方法の変形)を用いて測定する。血清又は血漿中遊離脂肪酸濃度は、Abbott VP(商標)及びVP Super System(登録商標)オートアナライザ(Abbott Laboratories、テキサス州アービング)、又はAbbott Spectrum CCX(商標)(Abbott Laboratories、テキサス州アービング)と共に使用するように適応されたAmano International Enzyme Co.,Inc.社から入手できるキットを利用して測定する。次に、血清又は血漿中インスリン、トリグリセリド、遊離脂肪酸、及び総コレステロール濃度を以下の等式を用いて算出する。
【0125】
血清又は血漿中インスリン(μU/ml)=サンプル値×2
血清又は血漿中トリグリセリド(mg/dl)=サンプル値×2
血清又は血漿中総コレステロール(mg/dl)=サンプル値×2
血清又は血漿中遊離脂肪酸(μEq/l)=サンプル値×2
式中、2は希釈比である。
【0126】
ビヒクルを投与された動物は、実質的に不変の高い血清又は血漿中インスリン(例えば275μU/ml)、血清又は血漿中トリグリセリド(例えば235mg/dl)、血清又は血漿中遊離脂肪酸(1500mEq/ml)及び血清又は血漿中総コレステロール(例えば190mg/dl)濃度を維持し、式(I)の化合物で処置された動物は、一般に低減した血清又は血漿中インスリン、トリグリセリド、遊離脂肪酸、及び総コレステロール濃度を示す。式(I)の化合物の血清又は血漿中インスリン、トリグリセリド、遊離脂肪酸、及び総コレステロール低下活性は、式(I)の化合物処置群とビヒクル処置対照群の間の平均の血清又は血漿中インスリン、トリグリセリド、又は総コレステロール濃度の統計分析(対応のないt検定)によって決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
R’は、
【化2】

{式中、Rは、水素;アミノ;シアノ;ニトロ;ハロゲン;−(C−C)アルキル;及び−(C−C)アルコキシからなる群から独立して選ばれる1〜3個の置換基を表し、前記−(C−C)アルキル基及び前記−(C−C)アルコキシ基はそれぞれ場合により1〜6個のフッ素原子で置換されている}であり;
R”は、
(i):
【化3】

(式中、nは1〜3の整数を表す);又は
(ii)−CHRSO(C−C)アルキル{式中、Rは、水素又は−(C−C)アルキルである}であり;
R’’’は、水素又は−(C−C)アルキルであり;そして
Zは、酸素又は硫黄である]
の化合物、そのプロドラッグ、又は前記化合物もしくはプロドラッグの薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
R’が、
【化4】

(式中、Rは、クロロ、フルオロ、及びメチルからなる群から選ばれる)であり;
R”が、
【化5】

であり;
R’’’が、水素又はメチルであり;そして
Zが酸素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R’が、
【化6】

(式中、Rは、クロロ、フルオロ、及びメチルからなる群から選ばれる)であり;
R”が、
【化7】

であり;
R’’’が、水素又はメチルであり;そして
Zが酸素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R’が、
【化8】

(式中、Rは、クロロ、フルオロ、及びメチルからなる群から選ばれる)であり;
R”が、
【化9】

であり;
R’’’が水素であり;そして
Zが酸素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−1−チオフェン−2−イル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−プロピル]アミド;
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−1−テトラヒドロ−1−チオフェン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]アミド;
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−ヘキサヒドロ−1−チオピラン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]アミド;及び
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−ヘキサヒドロ−1−チオピラン−2−イル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−プロピル]アミド;
からなる群から選ばれる請求項1に記載の化合物、そのプロドラッグ、又は当該化合物もしくはプロドラッグの薬学的に許容しうる塩。
【請求項6】
R’が、
【化10】

であり;
R”が、
【化11】

であり;
R’’’がメチルであり;そして
Zが酸素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R’が、
【化12】

であり;
R”が、
【化13】

であり;
R’’’が水素又はメチルであり;そして
Zが酸素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
2−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−1−チオフェン−2−イル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド;
2−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−1−チオフェン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド;及び
2−クロロ−6H−チエノ[2,3−b]ピロール−5−カルボン酸−[1−ベンジル−3−(1,1−ジオキソ−ヘキサヒドロ−1−チオピラン−2−イル)−2−メトキシ−3−オキソ−プロピル]−アミド;
からなる群から選ばれる請求項1に記載の化合物、そのプロドラッグ、又は前記化合物もしくはプロドラッグの薬学的に許容しうる塩。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物、そのプロドラッグ、又は前記化合物もしくは前記プロドラッグの薬学的に許容しうる塩;及び薬学的に許容しうる担体、ビヒクル、又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項10】
アテローム性動脈硬化症、糖尿病、インスリン抵抗性、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性ネフロパシー、糖尿病性網膜症、白内障、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高血糖症、高血圧症、組織虚血症、及び心筋虚血症からなる群から選ばれる状態の治療法であって、そのような治療を必要とする哺乳動物に、治療的に有効な量の請求項1の化合物、そのプロドラッグ、又は前記化合物もしくは前記プロドラッグの薬学的に許容しうる塩か;あるいは前記請求項1の化合物もしくはその前記プロドラッグ、又は前記化合物もしくは前記プロドラッグの前記薬学的に許容しうる塩と、薬学的に許容しうる担体、ビヒクル、又は希釈剤とを含む医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項11】
前記状態が糖尿病である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
グリコーゲンホスホリラーゼの阻害法であって、そのような阻害を必要とする哺乳動物に、グリコーゲンホスホリラーゼを阻害する量の請求項1の化合物、そのプロドラッグ、又は前記化合物もしくは前記プロドラッグの薬学的に許容しうる塩か;あるいは前記請求項1の化合物もしくはその前記プロドラッグ、又は前記化合物もしくは前記プロドラッグの前記薬学的に許容しうる塩と、薬学的に許容しうる担体、ビヒクル、又は希釈剤とを含む医薬組成物を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2006−507294(P2006−507294A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549452(P2004−549452)
【出願日】平成15年10月27日(2003.10.27)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004775
【国際公開番号】WO2004/041780
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】