説明

抗菌剤と組合せたマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤を含んでなる組成物

33−エピクロロ−3−デスオキシアスコマイシンなどのマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と、スルファサラジン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、エリスロマイシンまたはゲンタマイシンなどの抗菌剤の、高い適合性を有するかまたは相乗的な組合せを、要すればさらなる薬学的に活性な薬剤、とりわけレチノイドと一緒に、提供する。それは、特に、例えばアトピー性、接触性および脂漏性皮膚炎、湿疹、乾癬、座瘡、酒さ、ポストピール、皮膚熱傷、そう痒症もしくはIBDなどの、例えば細菌感染が関与しているかまたは細菌感染が疑われるかもしくは予期される状態の処置、および、または、例えば、皮膚における細菌定着が役割を演ずるかまたは細菌定着が疑われるかもしくは予期される状態における免疫調節または免疫抑制に、および菌耐性の状態に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特に、皮膚疾患の処置における使用のための医薬組成物に関する。本発明は、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤および抗菌剤を含む医薬組成物に関する。
【0002】
マクロライド系T細胞免疫調節剤および免疫抑制剤は、驚くべきことに、抗菌剤と組合せて使用したとき高い適合性を有するかまたは相乗的にも作用し得、結果として、有益な効果、とりわけ抗菌活性が、高く保たれるが負の相互作用がない投与量での共投与にて見られることが明らかとなった。
【0003】
故に、本発明は、抗菌剤と混合したかまたは組合せたマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤を含む新規の医薬組成物に関し、それを以下に簡単に「本発明の組成物」と称する。
【0004】
マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤とは、本明細書にて、ラクトンまたはラクタム部分を含む大環状化合物構造を有するT細胞免疫調節剤またはT細胞免疫抑制剤であると解される。それは、好ましくは、少なくともいくらかのT細胞免疫調節活性または免疫抑制活性を有し、抗炎症活性などのさらなる薬学的特性を付随的に、または優位に有していても良い。
【0005】
抗菌剤とは、本明細書にて、病原菌、すなわち動物、とりわけヒトにて疾患を引き起こし得る原核微生物、に対する薬剤であると解される。
【0006】
本発明の組成物は、例えば経口もしくは静脈内など全身的使用に、または局所的使用に適用され得る;好ましくは、それらは局所的使用に適用される。それらは、その中に包含された特定の活性薬剤の既知の適応症に有用である。それらは特に、アトピー性、接触性および脂漏性皮膚炎、湿疹、乾癬、座瘡、酒さ、ポストピール(post-peel)、皮膚熱傷、そう痒症もしくは炎症性腸疾患(IBD)などの、要すれば炎症成分または炎症性合併症を伴う、細菌が関連する疾患、または菌耐性の状態にて用いられる。
【0007】
適当なマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤とは、例えばFKBP12結合カルシニューリン阻害剤またはマイトジェン活性化キナーゼ調節剤もしくは阻害剤であり、具体的にはアスコマイシンまたはラパマイシンである。好ましくは、アスコマイシン、とりわけ抗炎症性のアスコマイシン誘導体である。前記マクロライドは、好ましくは、少なくともいくらかのカルシニューリンまたはマイトジェン活性化キナーゼの調節活性または阻害活性を有しており、抗炎症活性などのさらなる薬学的特性を付随的にまたは優位に有していても良い。例えばアスコマイシンなどの、同じ構造クラスの他のメンバーと比較してより長期の作用活性を有する化合物、例えば、ゆっくりと不活性な産物に代謝分解される化合物が好ましい。
【0008】
アスコマイシンまたはラパマイシンとは、アスコマイシンまたはラパマイシ自体、またはその誘導体と解される。アスコマイシンまたはラパマイシン誘導体は、親化合物のアンタゴニスト、アゴニストまたは類似体であると解され、それらは基本構造を保持し、そして少なくとも1種の生物学的特性、例えば親化合物の免疫学的特性を調節する。
【0009】
「抗炎症性アスコマイシン誘導体」とは、本明細書中にて、例えばアレルギー性接触性皮膚炎の動物モデルにおいて明確に抗炎症活性を示すが、全身性免疫応答の抑制においては低い能力のみを有し、すなわち、アレルギー性接触性皮膚炎のマウスモデルでの局所投与にて約0.04%(w/v)濃度以下の最小有効量(MED)を有するが、同種腎臓移植のラットモデルでの経口投与におけるその効果は、タクロリムス(MED 14mg/kg)よりも少なくとも10倍低いものである、アスコマイシン誘導体と定義される(Meingassner, J.G.ら、 Br. J. Dermatol. 137 [1997] 568−579; Stuetz, A. Seminars in Cutaneous Medicine and Surgery 20 [2001] 233−241)。かかる化合物は、好ましくは親油性である。
【0010】
適当なアスコマイシンは、例えばEP 184162、EP 315978、EP 323042、EP 423714、EP 427680、EP 465426、EP 474126、WO 91/13889、WO 91/19495、EP 484936、EP 523088、EP 532089、EP 569337、EP 626385、WO 93/5059およびWO 97/8182に記載されており;
特に:
−アスコマイシン;
−タクロリムス(FK506;プログラフ(Prograf)(登録商標));
−イミダゾリルメトキシアスコマイシン(WO 97/8182の実施例1および式Iの化合物);
−32−O−(1−ヒドロキシエチルインドール−5−イル)アスコマイシン(L−732531)(Transplantation 65 [1998] 10−18、18−26、11頁、図1);および
−(32−デスオキシ,32−エピ−N1−テトラゾリル)アスコマイシン(ABT−281)(J.Invest.Dermatol. 12 [1999] 729−738、730頁、図1);
好ましくは:
−{1R,5Z,9S,12S−[1E−(1R,3R,4R)],13R,14S,17R,18E,21S,23S,24R,25S,27R}−17−エチル−1,14−ジヒドロキシ−12−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザトリシクロ[22.3.1.0(4,9)]オクタコス−5,18−ジエン−2,3,10,16−テトラオン(EP626385の実施例8)(以下に「5,6−デヒドロアスコマイシン」として示す);
−{1E−(1R,3R,4R)]1R,4S,5R,6S,9R,10E,13S,15S,16R,17S,19S,20S}−9−エチル−6,16,20−トリヒドロキシ−4−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−15,17−ジメトキシ−5,11,13,19−テトラメチル−3−オキサ−22−アザトリシクロ[18.6.1.0(1,22)]ヘプタコス−10−エン−2,8,21,27−テトラオン(EP569337の実施例6dおよび7l)(以下に「ASD 732」として示す);
【0011】
そして、とりわけ、
−ピメクロリムス(INN推薦)(ASM981;エリデル(Elidel)(商標))、すなわち
式I
【化1】

で示される、{[1E−(1R,3R,4S)]1R,9S,12S,13R,14S,17R,18E,21S,23S,24R,25S,27R}−12−[2−(4−クロロ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−17−エチル−1,14−ジヒドロキシ−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28,ジオキサ−4−アザトレシクロ[22.3.1.0(4,9)]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン(EP427680の実施例66a)(以下に「33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシン」として示す)
である。
【0012】
適当な抗炎症性アスコマイシン誘導体は、例えば:
(32−デスオキシ−32−エピ−N1−テトラゾリル)アスコマイシン(ABT−281);5,6−デヒドロアスコマイシン;ASD 732;およびピメクロリムスである。
適当なラパマイシンは、例えば米国特許番号第3’929’992号、WO 94/9010および米国特許番号第5’258’389号記載のもの、好ましくはシロリムス(ラパマイシン;ラパミュン(Rapamune)(登録商標))およびエベロリムス(RAD001;セルチカン(Certican)(登録商標))である。
【0013】
特に好ましいマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤は、ピメクロリムスである;それは、別段の記載がない限り遊離型である。
【0014】
適当な抗菌剤は、例えば:
−サリチル酸またはサリチル酸誘導体:例えば、4−アミノサリチル酸(Apacil(登録商標))または5−アミノサリチル酸(メサラミン;メサラジン;アサコール(Asacol)(登録商標))またはその誘導体、例えばオルサラジン(olsalazin)(メサラミンの二量体;5,5’アザビス[サリチル酸])またはスルファサラジン(5−[p−(2−ピリジルスルファモイル)フェニラゾ]サリチル酸;アザルフィジン(Azulfidine)(登録商標))など;
−スルファセタミドまたはスルファジアジンなどのスルホンアミド;
−抗生物質:例えば、
a)ペニシリン、例えばペニシリン自体またはクロキサシリン;
b)アモキシシリン;テトラサイクリン、例えばテトラサイクリン自体、ドキシサイクリン、オキシテトラサイクリンまたはミノサイクリン;またはセファロスポリン、例えばセフタジジムまたはWO 96/35692、WO 98/43981およびWO 99/48896に記載のセファロスポリン;
c)シプロフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシンまたはロメフロジサシンなどのキノロン;
d)エリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質;
e)クリンダマイシン;
f)クロラムフェニコールまたはアジダムフェニコール(azidamfenicol)(ロイコマイシンN(Leukomycin N)(登録商標));または、
g)ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシンまたはトブラマイシンなどのアミノグリコシド;
h)ナタマイシンなどのポリエン(polyene);
i)ムピロシン(シュードモニック酸(pseudomonic acid)A)などのシュードモニック酸;
j)セフロキシム;
k)WO 98/07745に記載のオミガナン(omiganan)(MBI 594;MBI 226);または、
l)プレウロムチリン(pleuromutilin);
−フシジン酸(ラマイシン(ramycin))およびその誘導体;
−メトロニダゾール;または、
−バシトラシン(batracin)、ポリミキシン、例えばポリミキシンB、またはチロトリシンなどのポリペプチド・グリコペプチド;
であり、
【0015】
好ましくは、サリチル酸誘導体、ペニシリン、キノロン、マクロライド系抗生物質またはアミノグリコシド;とりわけスルファサラジン、ペニシリン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、エリスロマイシンまたはゲンタマイシン;とりわけスルファサラジン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、エリスロマイシンまたはゲンタマイシン;さらにより好ましくは、シプロフロキサシンまたはエリスロマイシンである。それは、例えば、ストレプトコッカスおよびスタフィロコッカスなどのグラム陽性菌、またはシュードモナス(Pseudomonas)、大腸菌(Escherichia)、腸内細菌(Enterobacter)、クレブシエラ菌、モラクセラ菌および腸球菌(Enterococcus)などのグラム陰性菌に対して活性である。
【0016】
本発明の組成物の下位集団には、抗菌剤、とりわけ(other than)以下の抗菌剤を単独かまたはいくつかの集合で組合せたかまたは混合したマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤、好ましくは上記の抗炎症性アスコマイシン誘導体、とりわけピメクロリムス、が含まれる:
−抗生物質;および/または
−上記のグループa)および/またはグループb)の抗生物質;および/または
−上記のグループc)のキノロン系抗生物質;および/または
−エリスロマイシン;および/または
−クロラムフェニコール;および/または
−スルファサラジン;および/または
−シプロフロキサシン;および/または
−オフロキサシン;および/または
−メトロニダゾール;および/または
−テトラサイクリン系抗生物質;および/または
−サリチル酸および/またはサリチル酸誘導体;および/または
−ゲンタマイシン;および/または
−バシトラシン。
【0017】
病変部における障害のある皮膚が、細菌定着を増進し得、そして細菌感染が、炎症を増進し得る。一方または両方の成分が、ある程度の固有の抗炎症活性を有する本発明の組成物は、炎症を伴う状態の処置における使用に好ましい。抗菌剤と組合せたアスコマイシンを含む組成物、とりわけスルファサラジン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、エリスロマイシンまたはゲンタマイシンと組合せた33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンが特に好ましい。炎症性状態とは、例えばアトピー性、接触性または脂漏性皮膚炎、湿疹、乾癬、座瘡、酒さ、ポストピール、皮膚熱傷、そう痒症もしくはIBD(炎症性腸疾患)などである。
【0018】
本明細書に用いる「処置」には、予防、すなわち予防的処置ならびに治療的処置が含まれる。
【0019】
抗菌活性は、例えばNational Committee for Clinical Laboratory Standards (NCCLS) 13 (1993) (No. 25)、文献M7−A3、第3版、または嫌気性細菌についての文献M11−A3によるインビトロでの寒天希釈試験(Agar Dilution Test)にて決定される。
【0020】
相乗効果を、例えば、Chouらの、Transpl. Proc. 26 (1994) 3043に記載のような、2個の薬剤間のメカニズムの差異を補正するための相互作用項(interaction term)を用いて、Berenbaum, Clin. Exp. Immunol. 28 (1977) 1に記載のように測定する。相乗効果指数を、以下のように測定する:
【数1】

ここで、化合物AおよびBの用量とは、特定の組合せに用いたものを示し、AおよびBは、AおよびBそれぞれが同等の効果を与える個別の用量である。結果が1未満であるとき、相乗効果がある;結果が1であるとき、相加効果がある;結果が1より大きいとき、AとBは、アンタゴニストである。A/Aの用量対B/Bの用量のアイソボログラムのプロッティングにより、最大相乗効果の組合せを決定することができる。その後、アイソボログラムに沿った相乗効果用量、とりわけ最大相乗効果の点またはその近辺での2個の組成物の重量の比率として表される相乗効果比率を用いて、最適な相乗効果比率の2個の化合物を含む製剤を決定することができる。
【0021】
活性を、例えば前記組成物の個々の化合物の活性を試験するための既知の分析モデルにて決定することができる。
【0022】
適当な動物分析モデルは、例えば、Infect. Immunol. 44 (1992) 2636−2640;Antimicrob. Agents Chemother. 44 (2000) 255−260;JAC 42 (1998) 257−260;JAC 49 (2002) 455−465;およびInfect. Immunol. 68 (2000) 2880−2887に記載のとおりである。
【0023】
本発明はまた、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤、例えばピメクロリムスまたは5,6−デヒドロアスコマイシン、および抗菌剤、例えばシプロフロキサシンまたはエリスロマイシンを、高い適合性または相乗的有効量で、共投与することに関する産物および方法、例えば:
−細菌感染が関与しているかまたは細菌感染が疑われるかもしくは予期される疾患の処置または予防の、または、細菌定着が役割を演ずるかまたは細菌定着が疑われるかもしくは予期される状態における、または菌耐性の状態における免疫調節または免疫抑制の、かかる感染または状態に罹患しているまたは危険のある被験者における方法であって、高い適合性を有するかまたは相乗的有効量の本発明の組成物を共投与することを含んでなる、方法;
−抗菌剤と一緒に相乗的有効量で共投与するための医薬の製造における、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の使用;
−マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と一緒に相乗的有効量で共投与するための医薬の製造における、抗菌剤の使用;
−マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤および抗菌剤を、個別の単位投与量剤形(好ましくは、その単位投与量剤形は、相乗的有効量での成分化合物の投与に適する)で、使用のための取扱説明書と一緒に含み、要すれば成分化合物の投与のコンプライアンスを上昇させるさらなる手段、例えばラベルまたは図面を含んでいてよい、キット;
−抗菌剤との共投与を容易にするために使用される医薬的キットの製造における、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の使用;
−マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤との共投与を容易にするために使用される医薬的キットの製造における、抗菌剤の使用;
−同時、個別または連続的な使用のための、好ましくは相乗的有効量での、例えば、細菌感染の処置もしくは予防、または、細菌性のまたは疑われるかもしくは予期される細菌定着が関与する状態における免疫調節または免疫抑制のための、組合せた医薬製剤としてのマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤および抗菌剤;
−例えば、細菌感染の処置もしくは予防における使用、または、細菌性のまたは疑われるかもしくは予期される細菌定着が関与する状態、または菌耐性の状態における免疫調節または免疫抑制のための、例えば相乗的有効量で、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に、抗菌剤と組合せたかまたは混合したマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤を含む、医薬組成物;そして、
−マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と組合せたかまたは混合した抗菌剤を混合することを含む、本発明の組成物の製造方法、
を提供する。
【0024】
「相乗的有効量」とは、関連する適応症についてのそれぞれの有効投与量を個々に下回るが、例えば上記に計算したような相乗効果比率での共投与にて薬学的に活性である、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の量および抗菌剤の量を意味する。さらに、「相乗的有効量」とは、相当する適応症のためのそれぞれの有効投与量と個々に等しく、相加効果を上回る結果を生じる、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の量および抗菌剤の量を意味し得る。
【0025】
存在するマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤のモル量は、抗菌剤の量と同じくらいからかなり少なく、好ましくは半分くらいかまたは半分以下である。故に、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と抗菌剤の相乗効果比率は重量で、約10:1から約1:50が適当であり、好ましくは約5:1から約1:20、より好ましくは約1:1から約1:15、例えば約1:12である。
【0026】
本発明の組成物は、自由な組合せで投与され得るか、または前記薬剤は、患者に対して利便性を大いに高める固定された組合せの製剤で投与され得る。
【0027】
前記化合物の絶対的な用量は、多数の因子、例えば個体、投与経路、所望の持続時間、活性物質の放出速度ならびに処置する状態の性質および重症度に依存して変化するであろう。例えば、必要な活性物質の量およびその放出速度は、血漿中の特定の活性物質の濃度が、治療効果に対して許容されるレベルでいつまで残っているかを測定する、公知のインビトロおよびインビボ技術を基に決定され得る。
【0028】
例えば、アトピー性皮膚炎または座瘡、または細菌感染症または細菌感染が疑われるかもしくは予期される疾患の予防および処置にて、維持投与量の約2−3倍の初期投与量を投与するのが適当であり、続いて維持投与量の約2−3倍の日用量を1〜2週間の期間投与し、そしてその後、前記用量を1週間に約5%の割合で漸減し、維持投与量にする。一般に、大型動物、例えばヒトにおけるアトピー性皮膚炎または座瘡または細菌性疾患の予防および処置における使用のための経口投与にて、33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンおよび抗菌剤、例えばシプロフロキサシンの相乗的有効量は、上記のような相乗的効果率にて、33−エピクロロ−33−デゾキキシアスコマイシンの量が約2mg/kg/日以下、例えば、約0.01mg/kg/日から約2mg/kg/日、好ましくは約0.5mg/kg/日と、シプロフロキサシンなどの抗菌剤を約50mg/kg/日、例えば、約0.25mg/kg/日から約50mg/kg/日、好ましくは約2.5mg/kg/日で組合せるかまたは共投与する。故に、これらの化合物の経口共投与のための適当な単位用量剤形は、約0.5mgから約100mg、好ましくは約3mgから約30mgの33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシン、および約0.1mgから約10mg、好ましくは約1mgから約3mgの抗菌剤を含み得る。経口投与のための日用量は、好ましくは単一用量で摂取するが、一日に2回、3回または4回の用量に分けて良い。静脈内投与について、有効投与量は、経口投与に必要な量よりも少なく、例えば、経口投与量の約5分の1である。
【0029】
「共投与」とは、経口投与により、例えば、両化合物が胃腸管内で同時に存在するようにするために、一緒にまたは実質的に同時に、例えば15分以内かまたはそれ以下で、同じビヒクルかまたは別々のビヒクルのどちらかで、本発明の組成物の成分を投与することを意味する。好ましくは、前記化合物は、固定された組合せとして投与される。
【0030】
本発明は主に、2個のみの薬学的に活性な成分の組合せまたは混合を検討しているが、本発明の目的と相反しない限りは、さらなる活性薬剤、例えば、1個のさらなる活性薬剤の存在を除外するものではない。
【0031】
組合せまたは混合のためのかかるさらなる薬学的に活性な成分としては、レチノイドが好ましい:
適当なレチノイドは、例えば:
−アシトレチン[エトレチン;(オール−E)−9−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3,7−ジメチル−2,4,6,8−ノナ−テトラエン酸;ソリアタン(Soriatane)(登録商標)];
−β−カロテン(カロタベン(Carotaben)(登録商標);プロビタミンA);
−エトレチナート[(オール−E)−9−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3,7−ジメチル−2,4,6,8−ノナテトラエン酸エチルエステル];
−イソトレチノイン(アキュテイン(Accutane)(登録商標);ロアクタン(Roaccutane)(登録商標));
−モトレチニド[タスマデルム(Tasmaderm)(登録商標);(オール−E)−N−エチル−9−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3,7−ジメチル−2,4,6,8−ノナテトラエンアミド];
−レチナール(レチンアルデヒド;レチネン;ビタミンA アルデヒド);
−レチノイン酸(ビタミンA酸;トレチノイン);
−レチノール(ビタミンA;レチノール(Retinol)(登録商標));
−レチノールパルミチン酸;
−タミバロテン;
−アダプレネ(adapalene)(ロラック(Lorac)(登録商標);ジフェリン(Differin)(登録商標));
−アリトレチノイン;または、
−タザロテン(tazarotene)(ゾラック(Zorac)(登録商標);タゾラック(Tazorac)(登録商標);合成アセチレン酸レチノイド);
好ましくは、エトレチナート、イソトレチノインまたはタザロテン;とりわけイソトレチノインまたはタザロテンである。
【0032】
本発明の組成物には、いかなる常套的な経路による投与にも適する組成物が含まれ、特に経腸的投与、例えば、飲料用の溶液、錠剤またはカプセルの形態で経口的に、または例えば、注射用溶液または懸濁液の形態で非経腸投与のどちらか;または、例えば、皮膚または粘膜の炎症性または細菌性状態の処置のための、例えば、それぞれの成分の重量が約0.1%から約4%の濃度の、とりわけ浸透促進物質と組合せてかまたは混合した、例えば、皮膚用クリーム、軟膏、点耳液、ムース、シャンプー、溶液、ローション、ジェル、エマルジェルまたは類似の製剤の形態で局所的に、ならびに、例えば、眼用クリーム、ジェルまたは点眼調製液の形態での眼投与、肺および気管の炎症性または細菌性のまたは疑われるかもしくは予期される細菌性状態の処置のための、例えば吸入可能組成物の形態での投与、および、例えば、膣錠の形態の粘膜投与に適する組成物が含まれる。
【0033】
本発明の組成物としては、相乗効果比率でマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤および抗菌剤を含む、エマルジョン、マイクロエマルジョン、エマルジョン前濃縮物またはマイクロエマルジョン前濃縮物または固溶体、とりわけ油中水マイクロエマルジョン前濃縮物または水中油マイクロエマルジョンが適当である。
【0034】
本発明の組成物は、簡便な方法、例えば、マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と抗菌剤を混合し、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と組合せたかまたは混合することにより、製造され得る。
【0035】
前記活性物質成分は、必要に応じて、遊離型であるかまたは薬学的に許容される塩形態であり得る。
【0036】
以下の実施例は、本発明を説明するものである。前記化合物は遊離型、すなわち他に特記しない限り中性または塩基性形態である。
【0037】
実施例1クリーム
【表1】

【0038】
製造を、エマルジョンのための常套的な製造方法で行う。薬剤物質を、中鎖トリグリセリド、オレイルアルコール、セシルステアリル硫酸ナトリウム、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリンを含む、加熱した均質の油相に加える。並行して、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、クエン酸および水酸化ナトリウムを含む水相を、油相と同じ温度で加熱する。油相を水相に加え、均質化する。得られたクリームを、室温まで冷やす。
【0039】
実施例2ローション
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤と組合せたかまたは混合したマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤を、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含んでなる、医薬組成物。
【請求項2】
スルファサラジン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、エリスロマイシンまたはゲンタマイシンと組合せたかまたは混合した33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンを含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
細菌感染が関与しているかまたは細菌感染が疑われるかもしくは予期される疾患の処置の、または、細菌定着が役割を演ずるかまたは細菌定着が疑われるかもしくは予期される状態における、または菌耐性の状態における免疫調節または免疫抑制の、かかる感染または状態に罹患しているかまたは危険がある被験者における方法であって、高い適合性を有するかまたは相乗的有効量の請求項1記載の組成物を共投与することを含んでなる、方法。
【請求項4】
マクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と、少なくとも1種の薬学的に許容される希釈剤または担体と組合せたかまたは混合した抗菌剤を混合することを含む、請求項1記載の組成物を製造する方法。
【請求項5】
使用のための説明書と共に、個別の単位用量剤形でマクロライド系T細胞免疫調節剤または免疫抑制剤および抗菌剤を含んでなる、キット。
【請求項6】
レチノイドである薬学的に活性な薬剤をさら含む、請求項1または2記載の組成物。

【公表番号】特表2006−522056(P2006−522056A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504963(P2006−504963)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003510
【国際公開番号】WO2004/087143
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】