説明

抗菌性表面

本発明は、化合物を固定する表面を含む基体、前記化合物を、基体および前記基体を含むデバイス、特に医療デバイスに固定する方法に関する。化合物は、基体が植込み式医療デバイス、例えば置換関節、尿カテーテル、経皮的アクセスカテーテル、ステント、ならびに非植込み式デバイス、例えばコンタクトレンズおよびマスクおよび医療用空気または酸素を吸入させるための装置を含む、細菌のコロニー形成の傾向があるデバイスを被覆するのに用いることができる、抗菌性および/または抗炎症性化合物を含み得る。本発明はさらに、そのような基体を調製するにあたり用いるのに適する化合物に及ぶ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗菌性化合物を固定する表面を含む基体、特に固体基体に関する。そのような基体は、例えば医療デバイスにおいて用いるのに適する。
【0002】
参照による包含
本特許出願は、以下のものからの優先権を主張する:
・US 61/024325、発明の名称「ANTIMICROBIAL SURFACES」、2008年1月29日出願。
この出願の内容全体を、参照によって本明細書中に包含する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
オーストラリアのみを原産とする乾燥地の植物であるEremophila属(Myoporaceae)には、200を超える異なる種が含まれる(Chinnock RJ, 2007)。少数のEremophila種は、場合によっては細菌感染、例えば皮膚のただれおよび咽喉炎を示す症候のために、伝統的なアボリジニ文化における医薬的使用が記録されている(Barr A et al., 1993; Ghisalberti EL, 1994)。
【0004】
以前、E. duttoniiおよびE. alternifoliaを含む少数の記録された医薬的Eremophila種からの調製物は、グラム陽性菌に対する抗菌活性を有することが示された(Palombo, EA and Semple, SJ, 2001; Shah A, et al., 2004)。最近、大量の葉の樹脂(leaf resin)を産生するEremophila種に焦点を合わせた研究において、本出願人は、E. serrulataを含む伝統的な医薬においては報告されてない多種の他のEremophila種の抽出物が、多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の臨床分離株を含むグラム陽性細菌に対する抗菌活性を有することを示した(Ndi et al., 2007)。ジエチルエーテルおよびアセトンのような有機溶媒で抽出可能な多種のEremophila種からの樹脂(Ghisalberti, EL, 1994)は、多種多様な新規のジテルペノイドおよび単離された独特な構造の他の化学化合物(Ghisalberti, EL, 1995)による以前の化学構造調査の対象であった。しかし、これらの植物の抗菌活性に関与する化合物については、ほとんど知られていない。
【0005】
Eremophila種から誘導された数種のジテルペノイド抗菌性化合物の単離、構造の解明および抗菌活性を、本明細書中に記載する。さらに、記載した化合物を、例えば、固体材料の表面上に固定するための方法を記載する。これらの方法は、驚くべきことに当該化合物の抗菌活性を維持することが見出された。
【0006】
感染は、小規模の手術または大手術の後の長い患者の回復時間の一般的な原因である。実際に、関節置換手術の約8%が感染を起こし、患者の長期間の入院の原因となる。さらに、尚多大な報告された、および報告されてない感染症は、身体内の医療デバイスの短期の移植から生じる。カテーテル使用は、病院における感染の一般的な原因であり、Staphylococcus epidermisは、カテーテルが関連する感染症の最も一般的な原因である。
【0007】
感染症の発症を回避するための防止的手段が実行され得、医療デバイスの移植を伴う手術の後の感染の発生率を低減するにあたり有効であることが明らかになった。伝統的に、これらには、手術前および/または手術後の患者に対する抗生物質の全身投与が含まれていた。しかし、医療デバイスの移植を伴う手術(例えば関節の置換)において、微生物が移植片の表面にコロニー形成し、細胞外の粘液性のバイオフィルムを生成することが可能であり、それが慣用の抗菌薬、例えば全身投与された抗生物質からの微生物保護を提供することが示された(Darrouiche, RO, 2004)。したがって、医療デバイスの表面の微生物コロニー形成の防止に関して最近着手された多大な研究があった。特定の抗生物質化合物を植込み式医療デバイスの表面に固定することは、移植後の手術感染症の認められている発病率に対抗するための1つの可能な方略であることが示された。
【発明の概要】
【0008】
第1の観点において、本発明は、少なくとも1つの表面を含む基体であって、ここで前記表面が、それに固定した式(I):
【化1】

【0009】
式中、
、R、R、R、R、RおよびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキルアリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され;および
およびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され、あるいは一緒にC1〜3またはヘテロ原子架橋を形成して、それによって環状または複素環式基を形成する、
で表される化合物を含む、前記基体を提供する。
【0010】
好ましくは、R、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、基体の表面への結合残基を表し、RまたはRを介しての結合が、特に好ましい。好ましくは、当該化合物は、基体表面に共有結合している。いくつかの態様において、結合残基(1つまたは2つ以上)は、式(I)で表される化合物を結合する目的のために基体の表面に対して提供される官能基(例えばアミン基)の誘導体を表してもよい。そのような官能基は、次に、結合中間物(例えば中間層)を介して基体表面に対して提供されている場合がある。
【0011】
好ましくは、当該化合物は、式(II)または(III)で表される:
【化2】

式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキルアリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され;および
12は、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3オキソアルキル、C1〜3アルケニル、C1〜3カルボニル、C1〜3カルボキシル、C1〜3アルデヒド、C1〜3カルボキシレート、C1〜3シアノ、C1〜3エステル、C1〜3エーテル、C1〜3カルボキサミド、C1〜3アミド、C1〜3アミン、NH、O、スルホおよびスルフヒドリル残基からなる群から選択される。
【0012】
好ましくは、R、R、R、R、R、R、R10および/またはR11の少なくとも1つは、基体の表面への結合残基を表す。結合残基は、好ましくは基体の表面に共有結合している。いくつかの態様において、結合残基、好ましくはR、R10および/またはR11は、式(II)または(III)で表される化合物を結合する目的のために基体の表面に対して提供される官能基(例えばアミン基)の誘導体を表してもよい。そのような官能基は、次に、結合中間物(例えば中間層)を介して基体表面に対して提供されている場合がある。
【0013】
好ましくは、基体は、基体表面1cmあたり約10mg未満の化合物を含む。
第2の観点において、本発明は、第1の観点による基体を含むデバイスを提供する。
【0014】
当該デバイスは、好ましくは医療デバイスであるが、それは、他の点では微生物感染またはコロニー形成の制御または抑制が望まれるデバイス、例えば女性衛生用品または食物調理、調製または貯蔵器具または容器であり得る。各々の場合において、基体の性質および特性を、特定の適合性について意図された目的のために選択してもよいが、好ましくは、基体は、薄膜過フッ素化(perfluorinated)ポリ(エチレン−コ−プロピレン)ポリマー(FEP)を含む。
【0015】
第3の観点において、本発明は、式(I)で表される化合物を基体の少なくとも1つの表面に固定する方法を提供し、前記方法は;
(i)任意に基体の表面を調製して化合物と反応性とする段階;および
(ii)化合物を当該表面と反応させて、当該化合物を当該表面上に固定する段階
を含む。
【0016】
第3の観点による好ましい方法において、段階(i)は、基体の表面を、表面の官能基を含む中間層で被覆することを含み、ここで当該中間層は、薄いプラズマ重合体層を堆積させることによって形成し得、段階(ii)は、当該化合物を基体の表面に共有結合的に固定することを含んでいてもよい。
【0017】
あるいはまた、式(I)で表される化合物を、薄いプラズマ重合体の堆積によって単一の段階において基体の表面に固定してもよい。
したがって、第4の観点において、本発明は、式(I)で表される化合物を基体の少なくとも1つの表面に固定するための方法を提供し、前記方法は、当該化合物を前記表面に薄いプラズマ重合体の堆積によって共有結合的に固定することを含む。
【0018】
第5の観点において、本発明は、式(IV):
【化3】

式中、
、R、RおよびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩またはそれらの誘導体からなる群から選択され、
およびR12は、各々独立して、C1〜3ヒドロキシル、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3オキソアルキル、C1〜3アルケニル、C1〜3カルボニル、C1〜3カルボキシル、C1〜3アルデヒド、C1〜3カルボキシレート、C1〜3シアノ、C1〜3エステル、C1〜3エーテル、C1〜3カルボキサミド、C1〜3アミド、C1〜3アミン、NH、O、スルホおよびスルフヒドリル残基またはそれらの誘導体からなる群から選択される、
で表される化合物を提供し、ここで前記化合物は、ナフト(1,8−bc)ピラン−7,8−ジオン(即ちビフロリン)以外である。
【0019】
好ましくは、Rは:
【化4】

式中、
10およびR11は、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩またはそれらの誘導体からなる群から選択される、
である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本明細書中に記載した、Eremophila抽出物から単離した、セルラタン(serrulatane)、化合物(1)の二炭素環式(bicarbocyclic)構造および化合物(2)〜(8)の化学構造の図式的表示を示す。
【図2】図2は、本明細書中に記載した化合物(2)および(3)の芳香族部分の多重結合CH相関関係(HMBC)を示す。
【0021】
【図3a】図3(a)は、過フッ素化ポリ(エチレン−コ−プロピレン)ポリマー(FEP)の平坦なシートの表面にセルラタン化合物をオキシ水銀化により固定することに関与する各々の段階の図式的例証を提供する。
【図3b】図3(b)は、カルボジイミドによって媒介されるアミド結合形成を介してカルボキシル化されたセルラタンの共有結合的固定に関与する段階の図式的例証を提供する。
【0022】
【図4】図4は、プロピオンアルデヒドプラズマ重合体およびポリアリルアミン中間層を介してFEPの平坦なシート上にセルラタン化合物を固定した後の試料に関して記録したX線光電子分光法(XPS)スペクトルを示す。
【0023】
【図5】図5は、アミド結合形成を介してセルラタンを固定した後の試料に関して記録した飛行時間型二次イオン質量スペクトルを示す。セルラタンから誘導されたイオンに帰し得る特徴的な質量シグナルは、化合物が表面上に存在することを示し、ポリアリルアミンから誘導されたイオンは、ポリアリルアミン中間層が存在することを示す。
【0024】
【図6】図6は、ポリアリルアミン(左側のパネル)ならびにポリアリルアミン+セルラタン(中央および右側のパネル)表面の細菌のコロニー形成の染色した顕微鏡写真を提供する。セルラタン化合物を、オキシ水銀化により(中央のパネル)、またはカルボジイミド触媒により(右側のパネル)表面に結合させた。
【0025】
【図7】図7は、細菌懸濁液を加えた細胞培養ウェルおよび24時間放置して進行させたバイオフィルム成長の写真を示す。試料を、バイオフィルムの存在について0.1%のサフラニン溶液で染色した。試料は、(左から)ポリアリルアミン対照および4通りの異なる濃度、0.06M、0.03M、0.015Mおよび0.0075Mにて固定した化合物8(即ち8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸)を含むセルラタンコーティングである。
【0026】
【図8】図8は、マウス3T3線維芽細胞による試料の表面のコロニー形成の顕微鏡写真を示す。試料は、ポリアリルアミン対照ならびに0.015Mおよび0.0075Mの濃度にて固定した、化合物8(即ち8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸)を含む2種のセルラタンコーティングであった。細胞の形態は、良好な細胞適合性を示す。
【図9】図9は、各々の試料についてのいくつかの視野の統計学的画像解析によって得られた、図8に示した試料表面についての1mmあたりの細胞の数を示す。
【0027】
発明の詳細な説明
本発明を、医療デバイスの用途に対する特定の言及と共に本明細書中に記載する。しかし、本発明は、微生物感染またはコロニー形成、特に細菌感染またはコロニー形成を制御または抑制することが望まれるすべての領域における用途を有することを理解するべきである。細菌のコロニー形成の傾向があり得る医療デバイスの例には、植込み式医療デバイス、例えば置換関節(例えば膝および股関節)、尿カテーテル、経皮的アクセスカテーテル、ステント、ならびに非植込み式デバイス、例えばコンタクトレンズならびにマスクならびに医療用空気および酸素を吸入させるための装置が含まれる。
【0028】
望ましく細菌のコロニー形成を生じずに維持する他の表面の例には、コンタクトレンズ保管ケース、食物調理および調製表面などが含まれる。本発明はまた、抗菌活性を示す新規な化合物に及ぶ。そのような化合物は、微生物感染またはコロニー形成を制御または抑制することが望まれる種々の用途に適し得るが、固体表面の細菌感染またはコロニー形成の防止において、特定の有用性が見出され得る。
【0029】
第1の観点において、本発明は、少なくとも1つの表面を含む基体であって、ここで前記表面が、それに固定した式(I):
【化5】

【0030】
式中、
、R、R、R、R、RおよびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され;および
およびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され、あるいは一緒にC1〜3またはヘテロ原子架橋を形成して、環状または複素環式基を形成する、
で表される化合物を含む、前記基体を提供する。
【0031】
式(I)において:
【化6】

は、環構造が、独立して0〜3つの二重結合(即ちC=C)を任意の環の位置において有することができ、共鳴構造を含み得ることを示すことを理解するべきである。同様に、
【化7】

は、単結合または二重結合のいずれかを表すものと理解するべきである。
【0032】
好ましくは、Rは、C1〜3ヒドロキシル、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3オキソアルキル、C1〜3アルケニル、C1〜3カルボニル、C1〜3カルボキシル、C1〜3アルデヒド、C1〜3カルボキシレート、C1〜3シアノ、C1〜3エステル、C1〜3エーテル、C1〜3カルボキサミド、C1〜3アミド、C1〜3アミン、NH、O、スルホおよびスルフヒドリル残基またはそれらの誘導体からなる群から選択される。より好ましくは、Rは、C1〜3ヒドロキシル、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3カルボキシル、C1〜3アミンおよびC1〜3アルケニル、またはそれらの誘導体から選択される。
【0033】
最も好ましくは、Rは:
【化8】

式中、
10およびR11は、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩またはそれらの誘導体からなる群から選択される、
である。
【0034】
、R、R、R、R、R、R、R10およびR11の少なくとも1つは、基体の表面に、好ましくは共有結合によって結合する残基を表す。より好ましくは、R、R、R10およびR11の少なくとも1つは、結合残基を表す。好適な結合残基には、例えばアミン、アセチル、ヒドロキシル、カルボキシル、アルケニルが含まれ、当該分野において知られている他の反応性基は、結合残基として作用し得る。さらに、アセチル基(−O−COCH)を水酸基に加水分解して、反応性基を所望の位置において提供してもよい。いくつかの態様において、結合残基は、式(I)で表される化合物を結合する目的のために基体の表面上に提供される官能基(例えばアミン基)の誘導体を表し得る。そのような官能基は、次に、結合中間物(例えば中間層)を介して基体表面上に提供されている場合がある。
【0035】
およびRは、立体的制約のために結合残基を形成するための適合性が比較的低い。
【0036】
好ましくは、当該化合物は、式(II)または(III)で表される:
【化9】

式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され;および
12は、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3オキソアルキル、C1〜3アルケニル、C1〜3カルボニル、C1〜3カルボキシル、C1〜3アルデヒド、C1〜3カルボキシレート、C1〜3シアノ、C1〜3エステル、C1〜3エーテル、C1〜3カルボキサミド、C1〜3アミド、C1〜3アミン、NH、O、スルホおよびスルフヒドリル残基またはそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0037】
式(III)において、
【化10】

は、単結合または二重結合のいずれかを表すことを理解するべきである。
【0038】
、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11について、第1の観点による化合物の好ましいアルキル残基には、直鎖状または分枝状C1〜6アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピル残基が含まれる。好ましいアルコキシ残基には、C1〜6直鎖状または分枝状アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシおよびブトキシ異性体が含まれる。好ましいアルケニル残基には、エチレン系一価または多価不飽和アルキルまたはシクロアルキル基を含むC1〜6直鎖状、分枝状または単環式もしくは多環式アルケン(例えばビニル、アリル、1−メチルビニル、ブテニル、イソブテニル、1−ペンテニル、シクロペンテニル、1−メチル−シクロペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、シクロヘキセニル、1−ヘプテニルおよび3−ヘプテニル)が含まれる。
【0039】
好ましいハロゲン残基には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が含まれる。好ましいアシル残基には、C1〜6カルバモイル、脂肪族アシル基および複素環を含むアシル基(複素環式アシルと呼ばれる)、直鎖状または分枝状アルカノイル、例えばホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2−メチルプロパノイル、ペンタノイルおよびヘキサノイルが含まれる。
【0040】
およびRは、最も好ましくは水素である。
は、最も好ましくは水素、ヒドロキシルまたは−O(COCH)である。
は、最も好ましくは水素、メチル、−CHOH、カルボキシルまたは−CHO(COCH)である。
は、最も好ましくは水素、ヒドロキシル、カルボニルまたは−O(COCH)である。
は、最も好ましくはメチル、カルボキシル、−CHOHまたはCHO(COCH)である。
およびRは、最も好ましくは一緒に酸素原子架橋を形成して、それにより複素環を形成する。
10およびR11は、最も好ましくはメチルまたは−CHOHである。
【0041】
特に好ましい化合物には、9−メチル−3−(4−メチル−3−ペンテニル)−2,3−ジヒドロナフト[1,8−bc]ピラン−7、8−ジオン、セルラタン型ジテルペノイド、20−アセトキシ−8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸、8,20−ジヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸、8,20−ジアセトキシセルラタ−14−エン−19−酸、セルラタン型ジテルペノイド、2,19−ジアセトキシ−8−ヒドロキシセルラタ−14−エン、8,19−ジヒドロキシセルラタ−14−エンおよび8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸、セルラタ−14−エン−7,8,20−トリオール、セルラタ−14−エン−3,7,8,20−テトラオール、それらの酸もしくは塩またはそれらの誘導体が含まれる。
【0042】
基体は、基体表面1cmあたり約10mg未満の化合物、より好ましくは約0.001μg〜10mgを含んでいてもよい。好ましくは、化合物の多くの分子は、提供されて、例えば基体上にフィルムまたはコーティングを形成するのに十分であり得る。実際に、化合物を過剰に提供して、基体の表面にわたる融合性コーティングを達成するようにしてもよい。あるいはまた、化合物を均一に分布させるが、基体の表面にわたる融合性の被覆より少量を提供してもよく、例えばここで、当該化合物は、特に高い抗菌活性を有する。
【0043】
本発明の特に好ましい態様において、化合物を、ポリアリルアミンの層によって提供されるアミン基を介して共有結合させ、それを次に、基体表面上の中間のアルデヒドプラズマ重合体層に共有結合させる。
【0044】
式(I)で表される化合物は、天然に存在するソースから、例えばEremophila植物から由来し得、あるいはそれらを、例えばDehmel F et al. (2002)もしくはNg PSP and Benerjee AK (2006)に記載されているように合成的に発生させるか、または天然に存在する前駆体から合成的に発生させ、例えばセルラタ−14−エン−7,8,20−トリオールおよびセルラタ−14−エン−3,7,8,20−テトラオールを加水分解してそれらのより活性な誘導体としてもよい。
【0045】
1種より多いタイプの式(I)で表される化合物を、基体表面に固定することができる(例えば単一種の化合物または、例えばそれらの抗菌活性および/または細胞毒性がないことについて選択される複数種の異なる化合物を、基体表面上に固定することができる)ことが理解される。
【0046】
式(I)で表される化合物の抗菌活性を、以下に提供する例において討議する。さらに、式(I)で表される化合物の少なくとも数種は、さらに抗炎症活性を有すると考えられる(Liu Q et al., 2006)。即ち、E. sturtiの粗製のエタノール抽出物から単離されたセルラチック酸(serrulatic acid)が、シクロオキシゲナーゼ1(COX−1)およびシクロオキシゲナーゼ2(COX−2)を、2mg/mlにてそれぞれCOX−1およびCOX−2の95%および89%の阻害で阻害したことは、以前に見出されている(Liu Q et al., 2006)。したがって、本発明の基体はまた、炎症の制御または低減が望まれる用途において利点を提供し得る。
【0047】
基体を構成する材料は、好ましくは固体であるが、ゲルおよび他の「柔軟な」または半固体の材料もまた、好適であり得る。典型的に、基体材料を、特定の意図された用途に適合するように選択する。例えば、成形した医療デバイスの場合において、材料を、特定の意図された用途の特定の仕様、例えば機械的および光学的特性を満たすように選択してもよい。
【0048】
本発明の固体の基体は、成形または非成形、堅い、または柔軟であり得る。さらに、本発明の固体の基体は、コーティングまたは織ったかもしくは不織のフィルムまたはシートであり得る。あるいはまた、固体の基体は、マイクロまたはナノの大きさの粒子からなってもよい。
【0049】
固体の基体を、天然の、または合成のフィラメントまたは繊維(例えば植物材料)から構成してもよい。あるいはまた、固体の基体を、金属、セラミックス、固体合成ポリマーまたは固体天然ポリマー、例えば固体生物高分子から構成してもよい。好ましい材料の例には、チタン、ヒドロキシアパタイト、ポリエチレン(それは整形移植片に有用である)、ポリウレタン、有機シロキサンポリマー、過フッ素化ポリマー(それは、カテーテル、軟部組織増強移植片および血液が接触するデバイス、例えば心臓弁に有用である)、アクリルヒドロゲルポリマーおよびシロキサンヒドロゲルポリマー(例えばコンタクトレンズおよび眼内レンズ用途のための)など、ならびにその任意の組み合わせが含まれる。
【0050】
多くのコーティング方法が、本発明の固体の基体を調製するのに適し、例えば薄膜過フッ素化ポリ(エチレン−コ−プロピレン)ポリマー(FEP)は、種々の固体の基体を被覆するのに適する。したがって、固定された抗菌性化合物で被覆された薄膜FEPを、置換関節、カテーテルおよびステントを含む医療デバイスのためのコーティングとして用いてもよい。
【0051】
第2の観点において、本発明は、第1の観点による基体を含むデバイスを提供する。
当該デバイスは、好ましくは医療デバイスであるが、それは、他の点では微生物感染またはコロニー形成の制御または抑制が望まれるデバイス、例えば女性衛生用品または食物調理、調製または貯蔵器具または容器であり得る。各々の場合において、基体の性質および特性を、特定の適合性について意図された用途のために選択してもよい。
【0052】
本明細書中で用いる用語「医療デバイス」は、広範囲の定義を有することを意図し、身体上または身体中で永久的または一時的に用いるための、ヒトもしくは獣医学的用途、または関連するデバイス、例えばそのようなデバイスを洗浄または保存するための容器において用いるための、任意のデバイスを含み得る。
【0053】
好ましい医療デバイスには、植込み式および非植込み式デバイス、例えば置換関節、尿カテーテル、経皮的アクセスカテーテル、ステント、ならびに非植込み式デバイス、例えばコンタクトレンズならびにマスクならびに医療用空気および酸素を吸入させるための装置が含まれる。
【0054】
第3の観点において、本発明は、式(I)で表される化合物を基体の少なくとも1つの表面に固定する方法を提供し、前記方法は;
(i)任意に基体の表面を調製して化合物と反応性とする段階;および
(ii)化合物を当該表面と反応させて、当該化合物を当該表面上に固定する段階
を含む。
【0055】
段階(i)および(ii)のために選択される特定の方法は、例えば基体の表面特性および/または基体の意図された用途に依存して変化し得る。種々の基体に適応するための方法の段階の修正には、当業者に十分知られている修正が含まれる。これらには、方法を最適化するための常習的な方法による調整が必要であり得る。
【0056】
表面を調製する方法には、表面を清浄にする方法、例えば洗浄、高圧蒸気殺菌法、照射および/または表面を被覆すること、および/または反応性官能基を基体表面に提供するプロセスおよび/または結合中間物(例えば中間層)を基体表面に付着させることが含まれ得る。あるいはまた、化合物を表面と反応させるために必要な所要の表面の特徴を有する基体を製造してもよく、したがって表面の調製段階は、必要でない場合がある;単に、化合物と反応性である基体の表面を提供することが必要である。
【0057】
基体の表面を被覆するためのおよび/または表面の官能的な(即ち反応性の)基を含む中間層を調製するための好適な方法は、当業者に十分知られている。そのような方法に、単一の段階において、あるいはまた、通常官能基を付着させるための被覆段階および結合段階を含む複数の段階において着手してもよい。1つのそのような好適な方法は、好適な材料(例えばプロピオンアルデヒド)をプラズマ重合させて、基体の表面上にコーティングを形成し、続いて官能基(例えばアミン基)をそれに共有結合させることを含む。
【0058】
そのような方法は、多くのタイプの基体表面に広範囲に適用可能であることが知られている。薄いプラズマ重合体層を堆積させることを含む代替法は、単一の被覆および結合段階を含み得る。上述のように、化合物を、好ましくは、例えばオキシ水銀化またはアミド生成反応により基体の表面に共有結合させる。オキシ水銀化およびアミド生成反応の両方に着手するのに適する結合中間層には、アミン基を含む表面を有するものが含まれる。
【0059】
第4の観点において、本発明は、式(I)で表される化合物を基体の少なくとも1つの表面に固定するための方法を提供し、前記方法は、当該化合物を前記表面に薄いプラズマ重合体の堆積によって共有結合的に固定することを含む。
【0060】
化合物を、第3の、または第4の観点の方法によって、基体表面に「頭」により、好ましくは残基R、R、R、R、Rおよび/またはRにより、最も好ましくはRにより、または、「尾」により、好ましくは分子の残基R、R10および/またはR11により固定してもよい。分子の「尾」を介しての共有結合が、特定の分子の活性を増強するために好まれ得る。例えば、キノン化合物を基体に分子の「尾」末端において結合させることにより、活性なキノン部分が分子の「頭」において露出し、それにより分子の活性が増強される。
【0061】
本発明の方法において用いるのに適する化合物は、Eremophila種、例えばE. serrulataおよびE. neglectaからの植物材料に由来し得る。式(I)で表される代替の化合物を同定するための方法を、以下に提供する例中に記載する。本発明の方法において用いるのに適する化合物を、Eremophila種の精製されたかまたは部分的に精製された抽出物によって提供してもよい。あるいはまた、有機化学的合成経路により製造される化合物が、好適である。
【0062】
任意に、本発明の方法は、化合物を基体表面に固定する前および/または間および/または後に安定剤を加えて、式(I)で表される化合物を安定化することを含んでもよい。安定剤には、酸化防止剤、例えばビタミンE、および窒素ガスが含まれ得る。あるいはまた、式(I)で表される化合物を、より安定な誘導体、例えばアセチル化された誘導体に変換してもよく、それをその後、基体表面への固定に続いて加水分解してもよい。
【0063】
第3の、または第4の観点の方法におけるさらなる任意の段階は、基体を所望の形状に、例えば所望の形状の美容整形で埋め込むものに成形する段階、および/または基体上に分布させるために化合物調製物質を可溶化し、懸濁させ、溶融させ、微粒子に粉砕する1つまたは2つ以上の段階、続いて溶液、懸濁液、液体またはフィルムを(例えば乾燥させることにより)硬化させることを含んでもよい。
【0064】
第5の観点において、本発明は、式(IV):
【化11】

式中、
、R、RおよびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩またはそれらの誘導体からなる群から選択され;
およびR12は、各々独立して、C1〜3ヒドロキシル、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3オキソアルキル、C1〜3アルケニル、C1〜3カルボニル、C1〜3カルボキシル、C1〜3アルデヒド、C1〜3カルボキシレート、C1〜3シアノ、C1〜3エステル、C1〜3エーテル、C1〜3カルボキサミド、C1〜3アミド、C1〜3アミン、NH、O、スルホおよびスルフヒドリル残基またはそれらの誘導体からなる群から選択される、
で表される化合物を提供し、ここで前記化合物は、ナフト(1,8−bc)ピラン−7,8−ジオン(即ちビフロリン)以外である。
【0065】
好ましくは、当該化合物は、式(V):
【化12】

または式(VI):
【化13】

で表され、式中、R12は、C1〜3ヒドロキシル、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3オキソアルキル、C1〜3アルケニル、C1〜3カルボニル、C1〜3カルボキシル、C1〜3アルデヒド、C1〜3カルボキシレート、C1〜3シアノ、C1〜3エステル、C1〜3エーテル、C1〜3カルボキサミド、C1〜3アミド、C1〜3アミン、NH、スルホおよびスルフヒドリル残基またはそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0066】
最も好ましくは、Rは:
【化14】

式中、
10およびR11は、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩またはそれらの誘導体からなる群から選択される、
である。
【0067】
あるいはまた、化合物は、好ましくは式(VII):
【化15】

で表され、式中、
、R、R、R、R10およびR11は、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され;および
12は、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3オキソアルキル、C1〜3アルケニル、C1〜3カルボニル、C1〜3カルボキシル、C1〜3アルデヒド、C1〜3カルボキシレート、C1〜3シアノ、C1〜3エステル、C1〜3エーテル、C1〜3カルボキサミド、C1〜3アミド、C1〜3アミン、NH、O、スルホおよびスルフヒドリル残基またはそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0068】
式(IV)〜(VII)において:
【化16】

は、環構造が、0〜3つの二重結合(即ちC=C)を任意の環の位置において有し得、共鳴構造を含み得ることを示すことを理解するべきである。
【0069】
式(IV)〜(VII)において、R、R、R10およびR11は、各々独立して、C1〜3ヒドロキシル、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3カルボキシル、C1〜3アミンおよびC1〜3アルケニルまたはそれらの誘導体から選択される。
1つの態様において、第5の観点の化合物はまた、9−メチル−3−(4−メチル−3−ペンテニル)−2,3−ジヒドロナフトール[1,8−bc]−ピラン−7,8−ジオン以外である。
【0070】
第5の観点の化合物を、例えばヒト治療的または獣医学的用途のための抗菌および/または抗炎症組成物を調製するための薬学的または獣医学的に許容し得る担体と共に処方してもよい。そのような組成物を、例えば経口投与または全身投与のために処方してもよい。
【0071】
本発明はまた、式(I)で表される化合物をその中に包含する基体に及ぶ。そのように、当該基体は、当該化合物を表面においておよび表面下の両方に含んでいてもよい。当該化合物を、基板材料(例えば金属、セラミックスもしくはポリマー)に結合させてもよいか、または他の方法では単に混合物中に存在させてもよい。したがって、当該化合物は、「新たな」化合物が表面において露出するように基体から「浸出する」ことを受けて、または他の方法では基体が分解することを受けて、抗菌活性を奏し得る。
本発明を、以下の非限定的例および添付した図面により以下でさらに記載する。
【0072】

例1
方法および材料
抽出および単離
新鮮な植物の葉を、ジエチルエーテル(分析的等級、Merck Pty Limited, Kilsyth, VIC, Australia)中に、閉鎖した容器中で一晩浸漬して、葉樹脂を抽出した。溶媒を排出させ、真空において40℃にて蒸発乾固させて、40gの暗い帯緑色の残留物を得、それを、さらに抽出および分別するために好適な溶媒に再び溶解した。
【0073】
抗菌性アッセイ
a.細菌株および培地
Sansom Institute (University of South Australia, Adelaide, SA, Australia)において−70℃にて保存した貯蔵培養物から得た黄色ブドウ球菌ATCC 29213を、生物検定により案内された分別プロセスにおいて試験微生物として用いた。同一のコレクションからの黄色ブドウ球菌ATCC 25923、化膿性連鎖球菌ATCC 10389、肺炎球菌ATCC 49619、ネズミチフス菌ATCC 13311、緑膿菌ATCC 27853および大腸菌ATCC 25922を用いて、単離した最も活性の高い化合物を試験した。
【0074】
すべての細菌を、血液寒天培地プレート(Colombia寒天−CM331、Oxoid Limited, Basingstoke, Hampshire, United Kingdom)5%v/vの羊血液を補足した)上で37℃にて生育させた。連鎖球菌種を、5%の二酸化炭素(CO)の存在下で37℃にてインキュベートした。ブレインハートインフュージョンブロス(CM225、Oxoid Limited)を、連鎖球菌種についての最小発育阻止濃度(MIC)および最小殺菌濃度(MBC)を決定する実験のために用い、一方陽イオン調整MH IIブロス(Becton Dickinson France SAS, Le Point de Claix, France)を、試験したブドウ球菌種およびグラム陰性細菌のために用いた。
【0075】
b.MICおよびMBCを決定するためのブロス微量希釈アッセイ
ブロス微量希釈を用いて、黄色ブドウ球菌ATCC 29213に対する抽出物、画分および純粋な化合物のMICを決定した。試験試料(100μL/ウェル)の2つ組の2倍の連続的希釈を、無菌の丸底96ウェルプレート(Sarstedt Australia Pty Ltd, Technology Park, SA, Australia)中で、2%のDMSOを含む適切なブロス中に調製した。1×10CFU/mLに相当する細菌細胞懸濁液(100μL)を、それぞれ生理食塩水、試験試料および培地無菌対照を含むウェルを除外したすべてのウェルに加えた。試験試料を含まない細菌生育のための対照をまた、各々のプレート上に包含させた。次に、プレートを、10分間振盪機上に配置し、37℃にて一晩インキュベートした。
【0076】
インキュベーションの後、MICを、生育が2つ組のウェルにおいて観察されなかった最も低い濃度として決定した。バンコマイシンおよびゲンタマイシン(Sigma, St Louis, MO, 米国)を、それぞれグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌についての正の対照として用いた。MICの決定に続いて、10μLのアリコートをウェルの各々から、MICに相当する濃度および上記の当該濃度にて無菌の96ウェルプレート中の190μLの適切なブロス中に移すことにより、MBCを決定した。プレートを、5%COの存在下でインキュベートした連鎖球菌種を用いたMIC実験におけるのと同一の条件下でインキュベートした。細菌生育の有無を、視覚的検査により決定した。MBCを、生育が発生しなかった化合物の最も低い濃度であると考慮した。
【0077】
一般的な実験手順
Merck Siゲル60(70〜230メッシュASTM)およびSephadex LH-20 (Sigma)を、カラムクロマトグラフィーのために用いた。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)実験を、Activon Goldpak C-18逆相および順相(SiO)半分取(semipreparative)(25×1cm)HPLCカラムを有するShimadzuLC−6Aシステム上で行った。
【0078】
融点を、Stuart Scientific SMP10機器を用いて決定した。旋光度を、Atago AP100旋光計上で測定した。紫外線(UV)スペクトルを、Shimadzu UV-1700 Pharma Spec分光光度計上で記録した。赤外線(IR)スペクトルを、FT-IR-8400 S Shimadzu分光計上で測定した。1Dおよび2D核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、Varian INOVA600MHz分光計上で得た。化学シフトを、残留溶媒共鳴に対する基準とした。高解像度および低解像度質量スペクトルを、Kratos Concept ISQ磁場型質量分析計上で得た。
【0079】
結果および討議
E. serrulataからの生物活性化合物
a.E. serrulataの植物材料
E. serrulataの葉を、Glendamboの135.2km北にある北部サウスオーストラリアにおいて採集した。
【0080】
b.生物活性化合物の単離および同定
E. serrulata葉抽出物を、以前記載されている(Forster PG et al., 1986)ように、CHClに再溶解し、8%w/vの水性NaHCOおよび5%w/vの水性NaOH溶液で順次洗浄した。水性の塩基性画分を、10%HSOで酸性化し、CHClで再抽出し、活性炭を通して濾過した。種々のCHCl部分を、無水NaSOを用いて乾燥し、濾過し、蒸発させて、それぞれNaHCO可溶性(MIC=1000μg/mL)、NaOH可溶性(MIC=125μg/mL)および中性CHCl(MIC=125μg/mL)画分を得た。
【0081】
E. serrulataのジエチルエーテル抽出物は、黄色ブドウ球菌ATCC 29213に対する抗菌活性を125μg/mLのMICで示した。粗製のジエチルエーテル抽出物を分割することによって得たNaHCO可溶性、NaOH可溶性および中性CHCl画分をまた、抗菌活性について試験した。NaOH可溶性画分と中性画分との両方は、最も活性であり、各々が125μg/mLのMICを有することが見出された。
【0082】
【表1】

【0083】
NaOH可溶性画分(11g)を、CHClおよび増大する量の酢酸エチルで溶出させて真空液体クロマトグラフィーに付した。18の画分を採集し、それらの薄層クロマトグラフィー(TLC)プロフィールに基づいて4つの主要な画分(F1〜F4)に分類した。
【0084】
画分F1は、主要なカラムからCHClで溶出し、クロロホルムに溶解した際に粉末を生成した。これを濾過して、黄色粉末(MIC=500μg/mL)および濾液(MIC=125μg/mL)を得た。濾液(225mg)を、CHCl/MeOH3:1で溶出させてSephadexカラムに通じて、32の画分を得、それを、3つの主要な画分(F1−1、F1−2およびF1−3)に分類した。
【0085】
画分F1−1(MIC=15.6μg/mL)を、75%MeOH/水を用い、0.1%ギ酸を溶離剤として有し、2mL/分の流量を有する逆相(RP)−HPLCによって均一濃度でさらに分離した。72の画分を採集し、8つの異なる画分(F1−1−1〜F1−1−8)に分類した。画分F1−1−4は、10mgの純粋な化合物(2)(図1)(MIC=15.6μg/mL)を無定形のオレンジ色固体として生成した。
【0086】
CHCl/MeOH1:1での真空液体クロマトグラフィーカラムから溶出した画分F3(500mg、MIC=250μg/mL)を、65%MeOH/水を用い、0.1%ギ酸を溶離剤として有し、2mL/分の流量を有する逆相HPLCカラムに通じた。70の画分を採集し、3つの主要な画分(F3−1〜F3−3)に分類した。F3−3は、20mgの8,20−ジヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸(化合物(4);図1)(MIC=250μg/mL)を淡い帯黄色の油として生成した。
【0087】
CHClおよび増大する量の酢酸エチルで溶出させた真空液体クロマトグラフィーによる2.5gの中性の画分(MIC=125μg/mL)の処理により、22の画分が得られ、それを、それらのTLCプロフィールに基づいて6つの主要な画分(ESAF1〜6)に分類した。
【0088】
CHCl/EtOAc1:1を用いた主要なカラムから出た画分ESAF4を、75%MeOH/水を用い、0.1%ギ酸を溶離剤として有し、2mL/分の流量を有するRP−HPLCによってさらに分離した。50の画分を採集し、4つの異なる画分(ESAF4−1〜ESAF4−4)に分類した。ESAF4−2(MIC=125μg/mL)を、CHCl/MeOH3:1で溶出させてSephadexカラムに通じて、35の画分を得、それを、3つの画分(ESAF4−2−1〜ESAF4−2−3)に分類した。ESAF4−2−3は、25mgの化合物(3)(図1)(MIC=125μg/mL)を淡い帯黄色の油として生成した。
【0089】
同様に、画分ESAF4−4は、それをSephadexカラムに通じ、CHCl/MeOH3:1で溶出させた後に、30mgの8,20−ジアセトキシセルラタ−14−エン−19−酸(化合物(5);図1)(MIC=250μg/mL)を淡い帯黄色の油として生成した。
【0090】
塩化メチレン:メタノール(9:1)を移動相として用いた際の化合物(2)、(3)、(4)および(5)についての順相TLC(Merck, Silica gel 60, F254, Darmstadt, Germany)上でのRf値は、それぞれ0.750、0.388、0.350および0.488であった。これらの個所はまた、塩基で分割する前の最初のジエチルエーテル抽出物中に存在していた。
【0091】
a.9−メチル−3−(4−メチル−3−ペンテニル)−2,3−ジヒドロナフト[1,8−bc]−ピラン−7,8−ジオンおよび20−アセトキシ−8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸
NaOH可溶性画分および中性のCHCl画分の生物検定により案内された分別により、2種の新規な化合物である9−メチル−3−(4−メチル−3−ペンテニル)−2,3−ジヒドロナフト[1,8−bc]ピラン−7,8−ジオン(化合物(2))およびセルラタンジテルペノイドである20−アセトキシ−8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸(化合物(3))、これと共に2種の既知の(Forster PG et al., 1986)セルラタンタイプのジテルペノイドである8,20−ジヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸(化合物(4))および8,20−ジアセトキシセルラタ−14−エン−19−酸(化合物(5))の単離に至った。化合物(2)についての番号方式は、ビフロリンと称される以前記載されている関連する化合物についての番号方式に従う(Fonseca AM et al., 2003)。
【0092】
新規な化合物は共に、化合物(2)と共に黄色ブドウ球菌ATCC 29213に対して活性であり、これは、15.6μg/mLのMICを示した(表1)。これらの化合物の構造を、一次元および二次元NMR、IRならびにUV/可視分光法ならびに質量分析法を用いて解明した。化合物(4)および(5)を、それらのNMRおよび質量スペクトルデータを報告された値(Forster PG et al., 1986)と比較することによって同定した。
【0093】
化合物(2)〜(5)は、黄色ブドウ球菌(ATCC 29213)に対して、15.6〜250μg/mLの範囲内の最小発育阻止濃度(MIC)で抗菌活性を示した(表1)。化合物(2)は、125μg/mLの最小殺菌濃度(MBC)を示した。この化合物はさらに、黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)、化膿性連鎖球菌および肺炎球菌を含む他のグラム陽性細菌に対して抗菌活性を示した。MICおよびMBCは、それぞれ7.8〜15.6μg/mLおよび7.8〜125μg/mLの範囲内であった(表2を参照)。
【0094】
【表2】

【0095】
活性は、化合物(2)については、試験したすべてのグラム陰性細菌に対して観察されたわけではなかった。これは、E. sturtiからの2種の新規な抗菌性セルラタンであるジテルペノイド(セルラチック酸)の最近の単離(Liu Q et al., 2006)と共に、Eremophila抽出物がグラム陽性生物体に対して活性であるに過ぎないという以前の研究結果を確認する(Palombo EA and Semple SJ, 2001; Shah A et al., 2004; Ndi CP et al., 2007)。
【0096】
9−メチル−3−(4−メチル−3−ペンテニル)−2,3−ジヒドロナフト[1,8−bc]−ピラン−7,8−ジオン(化合物(2))は、オレンジ色の無定形固体である;
【数1】

:268(4.3)、344(3.0)、452(3.3);υmax(CHCl)cm−1:1706、1640、1615、1575;Hおよび13C NMRデータを、表3に示す;HREIMS I:296.1412[M]、LREIMS m/z:298[M+2]、268、225。分子式を、m/z 296.1412(計算値296.1413)における分子イオンピークから高解像度EI質量スペクトル(HREIMS)においてC1920であると決定し、それは、10度の不飽和を示した。
【0097】
CHClにおけるUVスペクトルは、υmax268、344および452nmにおいて吸収を示し、それは、典型的なo−ナフトキノンに特有であり(Thomson, 1971)、IRスペクトルは、2つの共役カルボニル基の存在に一致して1706および1640cm−1においてピークを示した。これは、オルト−ナフトキノンに特有であるがパラ−ナフトキノンに特有でないEI質量スペクトルにおける[M+2]イオンピークの存在により、さらに支持された(Oliver RWA and Rashman RM, 1971)。
【0098】
13CおよびAPT NMRスペクトルは、合計19個の炭素を示し(表3)、3個はメチルであり(δ 8.2、18.3および26.3)、3個は1個が酸素原子に直接結合したメチレンであり(δ 26.9、34.6および71.9)、4個はspメチンであり(δ=125.2、129.0、132.5および136.7)、1個はspメチンであり(δ 37.9)、6個は第四級sp炭素であり(δ 117.6、127.7、131.4、134.1、140.4および165.4)、2個はカルボニル181.5および181.7である。合計で、10個のsp炭素(5つの二重結合官能)および2個のカルボニルは、7度の不飽和を占めていた。
【0099】
これは、当該化合物が3個の環を含むことを示唆した。H NMRスペクトルにおけるシグナルの中に、3つのメチル一重項(δH 1.61、1.68および1.91)についてのもの、δH 5.14(t、J=6.0Hz)において共鳴するオレフィン系プロトン、1個のベンジル系プロトン(δH 2.99、m)、2個のオキシメチレンプロトンδH 4.62、dd、J=11.1、2.1Hz;δH 4.40、dd、J=11.1、3.3Hzならびに3個の芳香系プロトン(δ 7.51、m;7.56、m;およびδ 7.89、d、J=6.6Hz)を有する三置換されたビニル基があった。COSYスペクトルにおいて、δ 7.89および7.56ppmにおける芳香系プロトンの間で相関関係が観察され、それは、それらが互いに隣接しており、またδ 7.56および7.51ppmにおける芳香系プロトンの間にあることを示す。
【0100】
ベンジル系プロトンは、オキシメチレンプロトンおよびメチレン基のプロトンとの結合を、COSYスペクトル中のδ 1.78および1.69において示した。このベンジル系プロトンは、δ 127.7および140.4において第四級芳香族炭素との、ならびにδ 136.7(δ 7.51、m)において芳香系spメチン炭素とのHMBC相関関係を示し、一方オキシメチレンプロトンは、δ 34.6においてメチレン炭素との、δ 140.4において第四級芳香族炭素との、およびδ 165.4ppmにおいて第四級sp炭素とのHMBC相関関係を示し、したがって芳香環に融合したピラン環が存在することを示した。
【0101】
他の芳香系プロトンのHMBC相関関係を、図2に示す。COSYスペクトル中でδ 1.78および1.69においてオレフィン系プロトン(δ 5.14)およびメチレンプロトンと結合したδ 2.12ppmにおけるメチレンプロトンは、δ 37.9(δ 2.99、m)においてベンジル系炭素とHMBC相関関係を示した。これは、三置換ビニル系基がδ 34.6においてメチレン炭素を通してベンジル系炭素に付着する側鎖の一部であることを示した。このメチレン炭素のプロトンとベンジル系プロトンとの間のCOSY相関関係は、側鎖のこの位置における付着をさらに支持した。
【0102】
【表3】

【0103】
δ 34.6においてメチレン炭素、δ 134.1において第四級炭素ならびにδ 18.3およびδ 26.3において2個のメチル炭素を有するオレフィン系メチンプロトン(δ 5.14、t、J=6.0Hz)の交差ピークが、HMBCスペクトルにおいて観察された。観察された他のHMBC相関関係は、アリル系メチルプロトン(δ 1.91)から第四級sp炭素δ 117.6およびδ 165.4、ならびにδ 181.5におけるカルボニルへの相関関係であった。第2のカルボニル(δ 181.7)は、質量スペクトルおよびUVスペクトルからの根拠に基づくδ 181.5におけるものと隣接して位置しており、それは、当該化合物がo−ナフトキノンであることを示唆した。
【0104】
芳香族ベンゼン環、ピラン環、4個のsp炭素および2つのカルボニルが存在することは、9度の不飽和を説明した。したがって、さらなる炭素シグナルがなくても、δ 181.7におけるカルボニルが芳香環に直接結合しており、したがって不飽和の残りの1度を占めていると結論づけられた。これらのスペクトル的研究に基づいて、化合物(2)による構造が、この新規な化合物について確立された。化合物(2)は、事実上19個の炭素骨格を有するo−ナフト[1,8−bc]ピランキノイドの第1の例である。
【0105】
20−アセトキシ−8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸(化合物(3))は、淡黄色油である;[α]D25−63°(MeOH;c 0.268);λMeOHmaxnm(logε):249(3.9)、302(3.4);υmax(CHCl)cm−1:3366、2961、2930、1717、1691、1609、1578;Hおよび13C NMRデータを、表3に示す;HREIMS m/z:374.2091[M]、LREIMS m/z:374[M]、314、243、230、204、159、131、109、69。分子式を、高解像度EI質量スペクトル(HREIMS)におけるm/z 374.2091(374.2093において計算)における分子イオンピークからC2230であると決定した。これは、当該化合物が8度の不飽和を有することを示した。
【0106】
IRスペクトルは、ヒドロキシル(3366cm−1)ならびにカルボニル(1717および1691cm−1)官能基が存在することを示した。13CおよびAPT NMRスペクトルは、合計22個の炭素を示し、その4個はメチルであり(δ 18.2、19.6、21.3および26.3)、5個は1個が酸素原子に直接結合しているメチレンであり(δ 21.0、23.1、27.7、35.0および66.9)、3個はspメチンであり(δ 114.2、123.6および126.1)、3個はspメチンであり(δ 34.0、39.6および44.2)、5個は第四級sp炭素であり(δ 130.4、130.8、132.8、144.2および156.9)、ならびに2個はカルボニルであった(171.0および173.7)。合計で、8個のsp炭素(4つの二重結合官能)および2つのカルボニルは、6度の不飽和を占めた。これは、当該化合物が2個の環を含むことを示唆した。
【0107】
H NMRスペクトルは、1つのアセチルメチル(δ 2.03、s)、2つのメチル一重項(δ 1.52および1.62)、メチル二重項(δ 0.98、J=6.6Hz)、オキシメチレン基(δ 4.32、dd、J=4.0および10.2Hz;δ 4.06、br t、J=10.2Hz)、芳香環が存在することを示唆する2個の芳香系プロトン(δ 7.39、br sおよび7.25、d、J=1.8Hz)、4.95ppmにおいて共鳴するオレフィン系プロトンを有する三置換ビニル基(t br、J=7.0Hz)ならびに2個のベンジル系プロトン(δ 2.66、m;3.42、m)についてのシグナルを示した。3.42ppmにおけるベンジル系プロトンのシフトは、周辺の水酸基(peri-hydroxyl group)が存在することを示唆した(Ghisalberti EL、1995)。水酸基の存在は、IRスペクトル中の3366cm−1においてバンドが出現することによりさらに支持された。
【0108】
COSYスペクトルにおいて、オキシメチレンプロトンδ 4.06(H、t br、J=10.2Hz;δ 66.9)およびδ 4.32(H、dd、J=10.2、4.0Hz;δ 66.9)と近隣の結合を示すδ 3.42(δ 34.0)におけるベンジル系プロトンはまた、δ 1.84(m;δ 23.1)におけるメチレンプロトンに結合していた。他のメチレン基のプロトン(δ 1.83、m;1.73、m;δ 21.0)は、δ 1.84におけるメチレンプロトンおよびδ 2.66(δ 44.2)におけるベンジル系プロトンと結合し、それによって6員環の炭素環式環を形成することを示した。これは、炭素環式環が不飽和の残りの2度を占めている芳香環に融合している化合物についての二環式構造を示した。異なるプロトンを担持する対応する炭素を、HMQCスペクトルから特定した。
【0109】
2つの芳香系プロトン(δ 7.39、br sおよび7.25、d、J=1.8Hz)と他のsp芳香系炭素およびδ 171.0におけるカルボニル炭素との間のHMBC相関関係(図2)は、それらがカルボニル置換基(δ 171.0)を有する第四級炭素(δ 130.8)のいずれかの側上に位置することを示した。また、HMBCスペクトルにおいて、δ 2.66におけるベンジル系メチンプロトンは、δ 23.1、δ 21.0およびδ 35.0におけるメチレン炭素;δ 130.4およびδ 144.2における第四級炭素;δ 123.6における芳香族spメチンならびにδ 39.6におけるspメチン基との交差ピークを示し、一方δ 3.42における他のベンジル系プロトンは、δ 66.9におけるオキシメチレン炭素、δ 21.0におけるメチレン炭素ならびにδ 144.2および156.9における第四級sp炭素との交差ピークを示し、したがって芳香環を位置づけている。
【0110】
芳香族部分のHMBC相関関係を、図2に示す。またδ 7.25における芳香系プロトンとのHMBC相関関係を示すδ 156.9におけるsp炭素についての13C NMRシフトは、フェノール系炭素のものと一致しており、したがってフェノール系水酸基をδ 3.42におけるベンジル系プロトンに対して周辺に配置している。オキシメチレンプロトンと、またδ 2.03におけるアセチルメチルプロトンと相関したδ 173.7におけるアセチルカルボニル炭素との間のHMBC相互作用は、アセトキシ基がδ 66.9におけるメチレン炭素に直接結合していることを示した。アルコキシ基についてのHおよび13C NMRスペクトル中に他のシグナルがなかったため、芳香系プロトンとのHMBC交差ピークを示すカルボニル炭素を、カルボン酸基のカルボニルであると考慮した。これは、1691cm−1におけるバンドがIRスペクトル中に存在することにより支持される。
【0111】
またアルキルメチン(δ 1.94、m、δ 39.6)ならびに2つのメチレン(δ 1.26、m、1.09、m、δ 35.0およびδ 1.98、m、1.84、m、δ 27.7)についてのシグナルを含むHおよび13C NMRスペクトル中の他のシグナルは、二環式部分に結合した側鎖に帰した。COSYスペクトルは、オレフィン系プロトン(δ 4.95、t br、J=7.0Hz;δ 126.1)のメチレンプロトンへのδ 1.98、1.84(δ 27.7)における結合を示した。これらのメチレンプロトンは、他のメチレン基のプロトンと、δ 1.26および1.09ppm(δ 35.0)において結合しており、それは次にアルキルメチンプロトンとの結合を示した。アルキルメチンとδ 0.98(δ 19.6)におけるメチルプロトンとの間の相互作用もまた、COSYスペクトルにおいて観察された。上記の結合はまた、HMBCスペクトルにおいて確認された。HMBC相関関係はまた、26.3および18.2ppmにおいてオレフィン系プロトンとメチル炭素との間で観察された。
【0112】
アルキルメチンプロトンと、21.0ppmにおけるメチレン炭素(δ 1.83、m、1.73、m)およびδ 144.2における第四級芳香族炭素とのHMBC相互作用、これと共にこのアルキルメチンプロトンとベンジル系プロトンとの間のδ 2.66(δ 44.2)におけるCOSYスペクトルにおいて観察される結合は、アルキルメチン基(およびしたがって側鎖)がベンジル系炭素に結合することを示した。上記のスペクトルデータから、化合物(3)による構造(図1)は、この新規な化合物について確立された。この化合物の相対的な立体化学は、化合物(4)、即ち相対的な立体化学が異なるEremophila種から単離された他のセルラタンジテルペノイドのものと同一であると示されたセルラタンジテルペノイドのものと同一であると推測された(Forster PG et al., 1986)。化合物(4)の構造を、図1に示す。立体化学についてのこの仮定は、2種の化合物の間に存在する構造的な類似性に基づいてなされた。セルラタンは、現在までEremophila属において遭遇した最も一般的な群のジテルペノイドを表す。
【0113】
E. neglectaからの生物活性化合物
a.E. neglectaからの植物材料
E. neglectaの葉を、Marlaの119km北にある北部サウスオーストラリアにおいて採集した。
【0114】
b.生物活性化合物の単離および同定
E. neglectaのEtO抽出物は、62.5μg/mLの最小発育阻止濃度(MIC)で黄色ブドウ球菌ATCC 29213に対する抗菌活性を示した。粗製のEtO抽出物を分割することによって得られるn−ヘキサン、CHClおよびMeOH可溶性画分をまた、抗菌活性について試験した。n−ヘキサンおよびCHCl可溶性画分は共に、最も活性であり、各々は62.5μg/mLのMICを有することが見出された。
【0115】
c.2,19−ジアセトキシ−8−ヒドロキシセルラタ−14−エン、8,19−ジヒドロキシセルラタ−14−エンおよび8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸
CHCl画分の部分の生物検定により案内された分別により、3種の化合物、即ち2,19−ジアセトキシ−8−ヒドロキシセルラタ−14−エン(化合物(6))、8,19−ジヒドロキシセルラタ−14−エン(化合物(7))および8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸(化合物(8))、これと共にビフロリンの単離がもたらされた。
【0116】
E. neglectaから単離される化合物(7)、(8)およびビフロリンは、それぞれ25.3〜49.3μMおよび25.8〜202.9μMの範囲内のMICおよびMBC値を有する黄色ブドウ球菌(ATCC 29213)に対して抗菌活性を示した(データは示していない)。化合物(6)は、最も活性が低く、試験した最大の濃度(621.5μM)にてほとんど活性を示さなかった。化合物(7)、(8)およびビフロリンはさらに、黄色ブドウ球菌(ATCC 25925)、化膿性連鎖球菌および肺炎球菌を含む他のグラム陽性細菌に対して抗菌活性を示した。MICおよびMBC値は、E. neglectaに由来する化合物については示していない。再び、これらの化合物については、試験したすべてのグラム陰性細菌に対して試験した最大濃度においては、活性はほとんど観察されなかった。
【0117】
化合物(6)〜(8)の構造を、1Dおよび2D NMR分光法、FT−IRおよび質量分析法を用いて解明した。ビフロリンを、そのNMRおよびMSデータを報告された値(Fonseca AM et al., 2003)と比較することによって同定した。
【0118】
8,19−ジヒドロキシセルラタ−14−エン(その後化合物(7)と同定された構造と一致すると見出された)を、淡黄色の無定形固体として単離した。分子式は、高解像度EI質量スペクトル(HREIMS)におけるm/z 302.2248(計算値302.2246)における分子イオンピークからC2030であると決定された。これは、当該化合物が6度の不飽和を有することを意味していた。IRスペクトルは、ヒドロキシ(3593cm−1)およびCdC(1618cm−1)官能基についての吸収帯を示した。13CおよびAPT NMRスペクトル(表4)は、合計20個の炭素を示し、そのうち4個はメチル(δ 17.6、18.7、21.0および25.7)であり、5個はメチレンであり、1個は酸素原子に直接結合しており(δ 19.4、26.2、27.3、33.5および65.4)、3個はspメチンであり(δ 26.8、38.0および42.5)、3個はspメチンであり(δ 111.1、120.3および124.9)、5個は第四級sp炭素であった(δ 129.1、131.2、137.9、141.5および153.6)。
【0119】
すべてのこれらの共鳴は、C2030の部分的な分子式を説明した。残留する2個の水素原子と1個の酸素は、3593cm−1におけるIR吸収バンドによって明示されるように、水酸基が存在することを示唆した。8個のsp炭素(4つの二重結合官能)は、4度の不飽和を占めた。これは、当該化合物が2個の環を含むことを示唆した。H NMRスペクトル(表4)は、2つのメチル一重項(δ 1.63、br s;1.53、br s)、2つのメチル二重項(δ 1.18、d、J)6.6 Hz;0.94、d,) 6.6Hz)、オキシメチレン基(δ 4.56、br s)、4.96ppm (t、J) 7.0Hzにおいて共鳴しているオレフィン系プロトンを有する三置換されたビニル基、広い一重項として出現したがLorentzian/Gaussian解像増強(Ferrige AG and Lindon JC, 1978)により広い二重項に分解した2個の芳香系プロトン;(δ 6.70、br d、J)1.4Hz;6.64、br d、J)1.4Hz)および2個のベンジル系プロトン(δ 3.09、d quint、J) 6.6、3.0Hz;2.58、dt、J) 5.6、3.0Hz)についての共鳴を示した。
【0120】
3.09ppmにおけるベンジル系プロトンシフトは、周囲水酸基が存在することを示唆した(Ghisalberti EL, 1995)。芳香系およびベンジル系プロトンの存在は、当該化合物がベンゼン環を含むことを示した。COSYスペクトルにおいて、メチル二重項δ 1.18(δ 21.0)との隣接する結合を示すδ 3.09(δ 26.8)におけるベンジル系プロトンはまた、δ 1.88、m;1.48、ddt、J )13.0、5.0、3.0Hz(δ 27.3)におけるメチレンプロトンと結合していた。これらのメチレンプロトンは、δ 1.86、m;1.69、ddt、J)13.5、5.0、3.0Hz(δ 19.4)におけるメチレンプロトンによってδ 2.58(δ 42.5)におけるベンジル系プロトンに結合しており、それによって6員環の炭素環式環を形成していた。これは、炭素環式環が芳香環に融合した化合物についての二環式構造を支持しており、したがって残りの2度の不飽和を説明している。
【0121】
2個の芳香系プロトン間の(δ 6.70、br d;6.64、br d、各々のJ)1.4Hz)、他のsp芳香系炭素およびオキシメチレン炭素とのHMBC相関関係(図1)は、それらがオキシメチレン置換基(δ 4.56、br s、δ 65.4)を有する第四級炭素(δ 137.9)のいずれかの側に位置することを示した。さらに、δ 6.64における芳香系プロトンは、HMBCスペクトルにおいてδ 153.6における第四級芳香族炭素との相関関係を示した。この炭素の化学シフトは、フェノール系炭素のものと一致していた。HMBC相関関係はまた、δ 3.09においてこの炭素とベンジル系プロトンの間で観察され、ベンジル系プロトンに対して周辺にフェノールヒドロキシ基を配置した。
【0122】
【表4】

【0123】
アルキルメチン(δ 1.86、m、δ 38.0)および2つのメチレン(δ 1.27、dddd、J)13.0、10.0、7.0、3.0Hz;1.09、dddd、J)13.0、10.0、9.4、5.0Hz;δ 33.5およびδ 1.97、1.79、m;δ 26.2)についての共鳴を含んでいたHおよび13C NMRスペクトルの残りの共鳴は、二環式部分に結合する側鎖に帰していた。COSYスペクトルは、δ 0.94においてメチルプロトンへの、ならびに1.27および1.09ppmにおいてメチレンプロトンへのアルキルメチンプロトンの結合を示した。δ 1.97および1.79(δ 26.2)におけるメチレンプロトンは、1.27および1.09ppmにおいてオレフィン系プロトン(δH 4.96、t、J)7.0Hz)をメチレンプロトンに結合させていた。上記の結合はまた、HMBCスペクトルにおいて確認された。
【0124】
HMBC相関関係はまた、オレフィン系プロトンとメチル炭素との間で25.7および17.6ppmにおいて観察された。アルキルメチンプロトンのメチレン炭素との19.4ppm(δ 1.86、m、1.69、ddt、J)13.5、5.0、3.0Hz)における、および第四級sp炭素とのδ 141.5におけるHMBC相関関係は、メチン基(およびしたがって側鎖)がベンジル系炭素にδ 42.5ppm(δ 2.58、dt、J)5.6、3.0Hz)において直接結合していることを示唆した。これは、分子イオン(m/z 302)から側鎖(C15)が損失することから生じている質量スペクトルにおけるm/z 191における重要なイオンの存在によって確認された。C−4/C−11切断と呼ばれるこの切断(Forster PG et al., 1986)は、セルラタンジテルペノイドの質量スペクトルにおいて極めて一般的である。上記のデータから、この新規な化合物の構造は、化合物7(図1)によることが確立され、それは、8,19−ジヒドロキシセルラタ−14−エンと命名された。
【0125】
セルラタン系における相対的な立体配置をNMRデータのみに基づいて帰させることは困難であることが、以前注記された(Tippett LM and Massy-Westropp RA, 1993)。セルラタン骨格1の構造、絶対的立体配置および番号付け系は、X線結晶学的解析を用いて定義された。現在まで、Eremophila種から単離されたすべての異なるセルラタンジテルペノイドは、C−1、C−4およびC−11の周囲で同一の立体配置的特徴を有することが示された。したがって、化合物(7)についてのこれらの炭素の相対的立体配置は、化合物(1)についての構造におけるのと同一であると推測された(図1)。
【0126】
2,19−ジアセトキシ−8−ヒドロキシセルラタ−14−エン(化合物(6))は、淡黄色油として単離された。分子式は、高解像度EI質量スペクトル(HREIMS)においてm/z 402.2402(計算値402.2406)における分子イオンピークからC2434であると決定された。これは、化合物(7)およびさらに2度の不飽和と比較した際に、4個のさらなる炭素および3個のさらなる酸素が存在することを示した。IRスペクトルは、ヒドロキシ(3582cm−1)およびカルボニル(1732cm−1)官能基が存在することを示した。化合物(6)のNMR分光法データの分析により、この化合物が化合物(7)と類似するセルラタンジテルペノイドであることが明らかになった。
【0127】
その側鎖は、二環式環上の(7)におけるのと同一の位置に結合しており、δ 68.1(δ 4.97、br s)におけるオキシメチレン炭素は、δ 6.76、br sおよび6.63、br d、J)1.6Hzにおける2個の芳香系プロトンとのHMBC相関関係を示した。化合物(7)と同様に、δ 6.63における芳香系プロトンは、δ 157.2におけるフェノール系第四級炭素に対してHMBC相関関係を示した。この炭素とδ 3.15におけるベンジル系プロトンとの間のHMBC相関関係は、フェノール系ヒドロキシ基をこのベンジル系プロトンの周囲に配置した。δ 3.15におけるベンジル系プロトンは、H NMRスペクトルにおける拡張された五重項として出現したが、それは、Lorentzian/Gaussian解像増強(Ferrige AG and Lindon JC, 1978)(dq、J)6.6、5.0Hz)により四重項の二重項に分解した。この化合物についての芳香環上の置換パターンは、化合物(7)のものと同様であった(図1)。主要な差異は、さらなる2度の不飽和を占めている2個のさらなるカルボニル炭素(δ 173.4および173.1)についての炭素NMRスペクトルにおける共鳴の存在であった。
【0128】
δ 2.00、s、δ 21.8およびδ 2.05、s、δ 21.4における2つのO−アセチルメチル一重項についての余分の共鳴がまた、Hおよび13C NMRスペクトルにおいて観察された。この化合物についてのAPT NMRスペクトルは、それが4個のspメチレン炭素および4個のspメチン炭素、即ち化合物(7)と比較した際により低い1個のメチレン炭素およびより高い1個のメチン炭素を含むことを示した。この化合物におけるδ 68.1(δ 4.97、br s)におけるオキシメチレン炭素に加えてδ 78.8(δ 4.89、dt、J)8.7、5.0Hz)においてオキシメチン炭素が存在することは、化合物(7)中のメチレン基の1つのプロトンが酸素含有基によって置換されていることを示唆した。δ 4.89におけるオキシメチンプロトンとδ 173.4におけるカルボニル炭素との間およびこのカルボニル炭素とδ 2.00におけるO−アセチルメチルプロトンとの間のHMBC相関関係により、酸素含有基が実際にアセトキシ基であることが確認された。
【0129】
δ 4.89、dt、J)8.7、5.0Hz(δ 78.8)におけるオキシメチンプロトンのδ 3.15 dq、J)6.6、5.0Hz(δ 36.2)におけるベンジル系プロトンとの、ならびにまたδ 2.13、dt、J)13.0、5.0Hzおよび1.45、dt、J)13.0、8.7Hz(δ 28.6)におけるメチレンプロトンとの間のCOSYスペクトルにおける結合は、アセトキシ基を位置2に配置した(表4)。H NMRスペクトルにおける四重項の二重項としてのδ 3.15におけるベンジル系プロトンの出現により、さらにアセトキシ基がC−2に結合していることが確認される。δ 119.0および113.9における芳香系メチン炭素(芳香系プロトンに結合した炭素)とのHMBC相関関係を示したδ 4.97におけるオキシメチレンプロトンはまた、δ 173.1におけるカルボニル炭素とのHMBC相関関係を示した。さらに、このカルボニル炭素は、δ 2.05におけるO−アセチルメチルプロトンとのHMBC相関関係を示した。
【0130】
これは、化合物(6)が第2のアセトキシ基を有し、それがC−19においてメチレン基に結合していることを示した。したがって、図1中の化合物(6)について示す構造は、この新規な化合物について確立された。C−1、C−4およびC−11における立体配置的配置は、Eremophila属における他の植物種から単離される以前のセルラタンジテルペノイドのものと同一であると推測された。C−2における相対的立体配置は、2D ROESY NMR実験により決定された。ROESYスペクトルにおいて、H−2とH−20との間、H−2とH−4との間、H−20とH−4との間およびまたH−4とH−18との間で強い相関関係が観察された。これは、H−2がH−20、H−4およびH−18とコフェーシャル(cofacial)であることを示す。
【0131】
8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸(化合物(8))は、白色粉末として単離された。分子式は、HREIMSにおけるm/z 316.2035(計算値 316.2038)における分子イオンピークからC2028であると決定された。これは、当該化合物が7度の不飽和を有することを示した。IRスペクトルは、ヒドロキシ(3582cm−1)、カルボニル(1726cm−1)およびCdC(1688cm−1)官能基についての吸収バンドを示した。この化合物についてのHおよび13C NMR化学シフト配置は、化合物(7)についての対応する共鳴のものと極めて類似しており、化合物(7)中に存在する同一の構造的特徴を明らかにした。
【0132】
唯一の主要な差異は、化合物(7)中に存在するδ 65.4(δ 4.56、br s)におけるオキシメチレン基の共鳴が存在しないことであった。この共鳴は、1個のカルボニル炭素(δ 172.1)についての共鳴と交換されていた。カルボニル炭素は、質量スペクトルにおけるm/z 271におけるイオンピークとしてカルボン酸基のカルボニルであると考えられ、これは、分子イオン(m/z 316)からのカルボン酸基の損失を示す。カルボン酸基の存在は、化合物(7)と比較した際に、余分の程度の不飽和およびこの化合物中に存在する1つのさらなる酸素原子を説明した。m置換芳香系プロトン(δ 7.54、br d、J)1.4Hz;δ 7.29、br d、J)1.4Hz)とカルボン酸基のカルボニル炭素との間のHMBC相関関係(図1)により、カルボン酸基が化合物(7)中のオキシメチレン基と同一の位置において結合していることが明らかになった。この新規な化合物を、8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸と命名し、その立体配置は化合物(7)について示したものと同一であると推測された。
【0133】
例2
方法および材料
セルラタンでのコーティングのためのポリマー材料の調製
好適な試験基体を固体基体のコーティング用に一般的にフッ素重合体として提供した過フッ素化ポリ(エチレン−コ−プロピレン)ポリマー(Teflon FEP, DuPont, 100A)は、一般的に被覆するべきポリマーの最も困難な群である。したがって、図3に図式的に表し、本明細書中に詳細に記載したコーティング方略を、多くの他の基体材料の調製に容易に移行させることができる。
【0134】
最初に、FEP試料を注意深く洗浄して、遊離した表面汚染を除去した。X線光電子分光法(XPS)による分析(Kratos AXIS Ultra、単色励起)により、さもなければコーティング手順および細菌のアッセイに干渉し得る汚染物質が存在しないことが例証された。
【0135】
好適な反応性の表面の化学基、例えばアミン、ヒドロキシルまたはカルボキシルを有する基体材料または装置のために、表面を活性化するための以下のプラズマコーティング段階は、必要であってはならない。しかし、好適な反応性基を有しない表面のために、官能性の(反応性の)基を有する中間層コーティングを、プラズマ重合、反応性プラズマ重合体層の堆積によって、または当業者に十分知られている任意の他の方法によって設けることができる。
【0136】
セルラタンでのコーティングのためのセラミックス材料の調製
シリコンウエハー片を、モデルのセラミックス基体材料として用いた。セルラタンは、セラミックス基体表面上に直接固定することができず、したがってセラミックス表面に付着させ、生物活性分子をそれに固定するために反応性の表面の基を提供するための中間層を、形成した。セラミックスおよび他の表面に付着させる中間層を形成するための、およびまた生物活性分子を固定するための反応性の表面の基を提供するいくつかの方法は、当業者に十分知られている。1つの方法は、プラズマ重合である。したがって、FEPに関して、シリコンウエハー片を注意深く洗浄して、遊離した表面汚染を除去した。
【0137】
a.プラズマ重合
化学的に反応性でないFEPシートまたはシリコンウエハー片上に、薄いポリマー界面結合層を、プラズマ重合によって設けて、さらなる共有結合固定化反応に必要な表面の官能基を提供した。プロピオンアルデヒドまたはアリルグリシジルエーテルのプラズマ重合を、13.56MHzの発生器により動力を供給されるプラズマ反応チャンバーを用いて、第1の層を堆積させるために用いた。XPS分析法により、この手順が、FEPシートまたはシリコンウエハー片の表面を均一に被覆する、それぞれ表面のアルデヒド基、ならびに表面のエポキシおよびアルデヒド基を有するコーティングを生じることが示された。
【0138】
その後、ポリアリルアミン(PAA;MW 1500)を、表面のアルデヒド基上に還元的アミノ化反応(図3(a)および(b)を参照)を用いて共有結合的に接合した。次に、試料を、水性PAA溶液(12mg/ml)に30分間室温にて、続いてシアノ水素化{すいそか}ホウ素ナトリウム(NaCNBH)(水溶液中12mg/ml)に浸漬して、界面イミン結合を第二アミン結合に変換した。反応混合物を、室温にて一晩保持した。アリルグリシジルエーテルプラズマ重合中間層を用いる際には、シアノ水素化{すいそか}ホウ素還元は必要ではなかった。次に、スライドを、3回MilliQ水で洗浄した。ポリアリルアミンの共有結合した層の存在を、XPS分析によって確認した。
【0139】
b.プラズマ堆積
他のFEP試料を、代替法を用いて被覆した。即ち、表面のアミン基を、n−ヘプチルアミン蒸気から生成した薄い(〜50nm)プラズマ重合体層の堆積によって、FEP表面上に配置した。この方法は、セルラタン層を共有結合させるための表面を調製するための単一の段階のみを用いる。得られた表面はまた、より親水性が低く、それは、特定の生物医学的用途に対してある影響を有し得る。
【0140】
活性セルラタン化合物の共有結合
セルラタン化合物を共有結合的に固定するための以降の方法は、アミン表面を作製する経路とは独立している。
【0141】
a.オキシ水銀化
ポリアリルアミンで被覆した試料(上記方法のいずれかにより調製した)を、10mlの丸底フラスコ中に配置した。57mgのセルラタン化合物を含む3mlのテトラヒドロフランおよび27mgの硝酸水銀(II)を、フラスコに加え、窒素雰囲気下で密封して、酸化的副反応を回避した。フラスコを、60℃にて24時間撹拌した。その後、フラスコの内側の溶液を取り出し、3mlのNaBH溶液(10%NaOH中3mg/ml)と交換した。次に、フラスコを25℃にて18時間撹拌した。次に、試料をMilli-Q水で洗浄し、乾燥した(図3(a)を参照)。
【0142】
b.カルボジイミド触媒
代替の共有結合的結合法において、セルラタン化合物および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC、Sigma)を、各々1mlのHOとエタノールとの1:1混合物または純粋なエタノールに5mgにて別個に溶解した。次に、両方の溶液のpHを、4.4に調整した。ポリアリルアミンで被覆したFEP試料をバイアル中に配置し、3mlのセルラタン溶液を加え、次に3mlのEDC溶液を加えた。バイアルを、冷蔵庫中に4℃にて18時間保持した。その後、試料をMilli-Q水で洗浄した。
【0143】
セルラタンを固定した表面の抗菌性アッセイ
セルラタンでコートしたポリマー試料上の細菌アッセイを、Staphylococcus epidermis菌株ATCC 35984を用いて行った。試料を、12ウェルプレート(使い捨ての細胞培養、Nunclon(登録商標)Surface, Denmark)のウェル中に配置し、2mlの細菌ブロス培養物を、各々のウェル中に導入した。ブロス培養物は、Trypton Soy Broth(TSB)+0.25%グルコース中に10CFU/mlを含んでいだ。プレートを、37℃にて1時間または4時間インキュベートした。次に、ブロス培養溶液をウェルから除去し、ウェルを2mlのリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄した。次に、ウェル中の試料を、2mlの10%ホルムアルデヒド溶液に10分間浸漬して、表面に付着した細菌を試料上に固定した。固定試薬を除去した後に、2mlの染色試薬(Bact Light LIVE/DEAD)をウェル中に導入し、プレートを15分間穏やかに撹拌した。次に鉗子を用いて、染色した試料を、生理食塩水溶液中に浸漬することによって洗浄し、蛍光顕微鏡(Olympus BX 40)の下での顕微鏡的観察のためにガラススライド上に配置した。蛍光顕微鏡写真を、AnalySis Five Olympus Imaging Softwareを用いて分析した。
【0144】
結果
セルラタン化合物の固定
セルラタン化合物の共有結合的に固定された層を有する試料を、X線光電子分光法(XPS)および飛行時間型二次イオン質量分析法(ToF−SIMS)によって分析し、ポリアリルアミンまたはヘプチルアミンで被覆した試料(セルラタンを含まない)上で記録した基準スペクトルと比較した。XPSおよびToF−SIMSスペクトルは、ジテルペン化合物の層の付着と一致した変化を明らかに示した。図5は、カルボキシル化されたセルラタンのアミド結合形成による固定の後に試料に関して記録されたToF−SIMSスペクトルを示す。セルラタンから誘導されたイオンに帰し得る特徴的な質量シグナルは、化合物が表面上に存在することを示し、ポリアリルアミンから誘導されたイオンは、中間層の存在を示す。
【0145】
m/z 472におけるイオンは、特に、ポリアリルアミン断片にアミド結合を介して結合するセルラタン分子を示し、それは意図されたアミド生成反応の成功を示す。結合の共有結合的性質を、共有結合的に固定されていないセルラタン分子を除去することを意図する溶媒で洗浄することによって、さらに調査した;そのような洗浄により、示したピークは解消せず、固定の共有結合的性質が確認され、それは拡張された有効性および被覆表面から離れての拡散の回避に不可欠である。
【0146】
表面の抗菌性活性
図6は、上記で記載したように調製したセルラタン+ポリアリルアミン固定表面の細菌のコロニー形成の蛍光顕微鏡写真を示す。パネルAは、プロパナールプラズマ重合体中間層上に接合したポリアリルアミンコーティングを含む対照表面を示す。細菌のコロニー形成の範囲を、緑色蛍光染色法(生存可能な細菌を示す)によって示し、それは、プロトン化されたアミン表面の存在にもかかわらず相当なコロニー形成を示し、それは多くの他のポリマー表面よりも細菌に対して適していない傾向がある。
【0147】
パネルBおよびパネルCは、ポリアリルアミン+セルラタンで被覆した表面を示す。セルラタン化合物を、オキシ水銀化(パネルB)により、またはカルボジイミド触媒(パネルC)により付着させた。セルラタン化合物を付着させた後に、表面は大幅に減少した細菌のコロニー形成を示した。カルボジイミドによって媒介された付着によって調製した表面は、細菌のコロニー形成が完全に解消したことを示し、一方オキシ水銀化により生じた試料は、生存可能な細菌がいくらか存在することを示した。これらの結果は、いずれかの固定方法によって調製した表面が抗菌活性を有することを明らかに示す。表面間の抗菌活性の差異は、カルボジイミド方法のより大きい有効性よりむしろオキシ水銀化方法(例えば反応収量および付着したセルラタンの表面被覆のための)のさらなる最適化についての必要性を示す傾向がある。
【0148】
生存可能でない細菌を、赤色染色によって示した;極めて少数の生存可能でない細菌が、より高い倍率の下においても任意の表面上で観察された。
表5は、カルボジイミド方法によって被覆した表面から得られ、複数の視野の統計的分析によって分析した3つ組の結果を示す。
【0149】
バイオフィルム形成に対する耐性を、延長された細菌の培養条件(24および48時間)、続いてその上に形成される細菌のバイオフィルムをサフラニン染料の0.1%溶液で染色することを用いて、各々の表面上で試験した。図7は、対照のポリアリルアミン表面が24時間以内に融合性のバイオフィルムで被覆され、一方表面被覆を8倍に希釈した際にも、セルラタンで被覆した表面は静菌および/または殺菌活性を示し、依然として細菌生育およびバイオフィルム形成を有しなかったことを示す。
【0150】
抗菌性表面の哺乳類細胞との適合性
ヒト細胞および組織の最小限の炎症が、多くの移植状況において望まれる。哺乳類細胞との適合性を、当業者に十分知られている細胞形態およびコロニー形成密度の標準的な細胞培養手法および顕微鏡写真アッセイを用いて、マウス3T3線維芽細胞培養モデルを用いて試験した。図8は、24および48時間後に試料表面にコロニー形成した線維芽細胞の顕微鏡写真を示す。低い播種密度を用いて、細胞形状の観察を不明瞭にする融合性の被覆を回避した。示した3つの試料すべてにおいて、異なる速度においてではあるが、線維芽細胞は付着し、拡散し、増殖することを開始することができた。
【0151】
図9は、各々の試料についての多数の視野の画像分析によって採集し、統計学的に評価した結果を示す。セルラタンで被覆した試料に関して、線維芽細胞の数は、ポリアリルアミン対照に関するものと等しいかまたはそれより高く、それは、セルラタン分子の哺乳類細胞に対する悪影響がないことを示しており、一方上記で示したように、同一のコーティングを有する2つ組の試料は、細菌のコロニー形成を防止した。したがって、抗菌性表面をセルラタン分子から構成して、移植片上の抗菌性コーティングに対する不都合な臨床的反応が許容可能でなければならないようにすることが可能である。
【0152】
【表5】

【0153】
セルラタンで被覆した表面の生存可能な細菌計数の被覆していない表面(PAA)との比較は、被覆した表面が細菌のコロニー形成に対して耐性であることを示す。この結果は、蛍光染色に従って行った観察と整合しており、細菌のコロニー形成に対する耐性が抗菌性化合物の付着から生じることを確認する。
【0154】
本明細書を通して、用語「含む(comprise)」または変化形、例えば「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」は、述べた要素、整数もしくは段階または要素、整数もしくは段階の群を包含するが、すべての他の要素、整数もしくは段階または要素、整数もしくは段階の群をも除外しないことを意味するものと理解される。
【0155】
本明細書中で述べたすべての刊行物を、本明細書中に参照によって包含する。本明細書中に包含した文献、行為、材料、装置、記事などのすべての討議は、単に本発明についての文脈を提供する目的のためである。これらの主題の任意またはすべてが先行技術ベースの一部を形成するか、または本発明に関連する分野における共通の一般的知識であったという承認として、それが本出願の各々の特許請求の範囲の優先日前にオーストラリアまたは他の個所において存在したとして解釈するべきではない。
【0156】
多数の変法および/または修正が、特定の態様において示すように広く記載した本発明の精神または範囲から逸脱せずに本発明に対してなし得ることは、当業者によって理解される。したがって、本態様は、すべての点において例示的であり、限定的でないと考慮するべきである。
【0157】
【表6】

【0158】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表面を含む基体であって、
前記表面が、それに固定した式(I):
【化1】

式中、
、R、R、R、R、RおよびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され;および
およびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され、あるいは、一緒にC1〜3またはヘテロ原子架橋を形成して、環状または複素環式基を形成する、
で表される化合物を含む、前記基体。
【請求項2】
、R、R、R、R、Rおよび/またはRの少なくとも1つが、基体の表面への結合残基(1または2以上)を表す、請求項1に記載の基体。
【請求項3】
前記化合物が、式(II)または(III):
【化2】

式中、
、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され;および
12は、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3オキソアルキル、C1〜3アルケニル、C1〜3カルボニル、C1〜3カルボキシル、C1〜3アルデヒド、C1〜3カルボキシレート、C1〜3シアノ、C1〜3エステル、C1〜3エーテル、C1〜3カルボキサミド、C1〜3アミド、C1〜3アミン、NH、O、スルホおよびスルフヒドリル残基、またはそれらの誘導体からなる群から選択される、
で表される、請求項1または2に記載の基体。
【請求項4】
、R、R、R、R、R、R10および/またはR11の少なくとも1つが、基体の表面への結合残基(1または2以上)を表す、請求項3に記載の基体。
【請求項5】
残基R、R、R、R、R、R、R10および/またはR11が、基体の表面に共有結合している、請求項4に記載の基体。
【請求項6】
基体表面1cmあたり約10mgより少ない化合物を含む、請求項5に記載の基体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の基体を含む、デバイス。
【請求項8】
前記デバイスが医療デバイスである、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記基体が薄膜過フッ素化ポリ(エチレン−コ−プロピレン)ポリマー(FEP)を含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
式(I):
【化3】

式中、
、R、R、R、R、RおよびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され;および
およびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され、あるいは一緒にC1〜3またはヘテロ原子架橋を形成して、それによって環状または複素環式基を形成する、
で表される化合物を基体の少なくとも1つの表面に固定する方法であって、前記方法が;
(i)任意に基体の表面を調製して化合物と反応性とする段階;および
(ii)化合物を当該表面と反応させて、当該化合物を当該表面上に固定する段階
を含む、前記方法。
【請求項11】
段階(i)が、基体の表面を、表面官能基を含む中間層で被覆することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
中間層を、薄いプラズマ重合体層を堆積させることにより形成し、段階(ii)が、化合物を基体の表面に共有結合的に固定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
化合物を表面上に共有結合的に固定する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
式(I):
【化4】

式中、
、R、R、R、R、RおよびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され;および
およびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され、あるいは一緒にC1〜3またはヘテロ原子架橋を形成して、それによって環状または複素環式基を形成する、
で表される化合物を基体の少なくとも1つの表面に固定する方法であって、前記方法が、該化合物を前記表面に薄いプラズマ重合体堆積により共有結合的に固定することを含む、前記方法。
【請求項15】
式(IV):
【化5】

式中、
、R、RおよびRは、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩またはそれらの誘導体からなる群から選択され、
およびR12は、各々独立して、C1〜3ヒドロキシル、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3オキソアルキル、C1〜3アルケニル、C1〜3カルボニル、C1〜3カルボキシル、C1〜3アルデヒド、C1〜3カルボキシレート、C1〜3シアノ、C1〜3エステル、C1〜3エーテル、C1〜3カルボキサミド、C1〜3アミド、C1〜3アミン、NH、O、スルホおよびスルフヒドリル残基またはそれらの誘導体からなる群から選択される、
で表され、ここで前記化合物は、ナフト(1,8−bc)ピラン−7,8−ジオン以外である、化合物。
【請求項16】
前記化合物がまた、9−メチル−3−(4−メチル−3−ペンテニル)−2,3−ジヒドロナフトール[1,8−bc]−ピラン−7,8−ジオン以外である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物が、式(V):
【化6】

または式(VI):
【化7】

で表され、式中、R12は、C1〜3ヒドロキシル、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3オキソアルキル、C1〜3アルケニル、C1〜3カルボニル、C1〜3カルボキシル、C1〜3アルデヒド、C1〜3カルボキシレート、C1〜3シアノ、C1〜3エステル、C1〜3エーテル、C1〜3カルボキサミド、C1〜3アミド、C1〜3アミン、NH、スルホおよびスルフヒドリル残基またはそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
が:
【化8】

式中、
10およびR11は、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩またはそれらの誘導体からなる群から選択される、
である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
前記化合物が、式(VII):
【化9】

で表され、式中、
、R、R、R、R10およびR11は、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、オキソアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、カルボニル、カルボキシル、アルデヒド、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミド、アミン、スルホおよびスルフヒドリル残基、それらの酸もしくは塩、またはそれらの誘導体からなる群から選択され;および
12は、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C1〜3オキソアルキル、C1〜3アルケニル、C1〜3カルボニル、C1〜3カルボキシル、C1〜3アルデヒド、C1〜3カルボキシレート、C1〜3シアノ、C1〜3エステル、C1〜3エーテル、C1〜3カルボキサミド、C1〜3アミド、C1〜3アミン、NH、O、スルホおよびスルフヒドリル残基またはそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
前記化合物が、以下のもの:9−メチル−3−(4−メチル−3−ペンテニル)−2,3−ジヒドロナフト[1,8−bc]ピラン−7,8−ジオン、20−アセトキシ−8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸、8,19−ジヒドロキシセルラタ−14−エンおよび8−ヒドロキシセルラタ−14−エン−19−酸からなる群から選択される、請求項15に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−511771(P2011−511771A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544534(P2010−544534)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000094
【国際公開番号】WO2009/094707
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(501345909)ユニバーシティ オブ サウス オーストラリア (5)
【氏名又は名称原語表記】University of South Australia
【Fターム(参考)】