説明

抗酸化活性を有する新規な含窒素ヘテロ環化合物、及び該化合物を含有する抗酸化薬

【課題】新規な含窒素ヘテロ環化合物又はその塩、該化合物又はその塩を含有する抗酸化薬、並びにこの抗酸化薬を含む治療薬の提供。
【解決手段】式(1)で表される化合物又はその塩、該化合物又はその塩を含有する抗酸化薬、並びにこの抗酸化薬を含む腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患、脳梗塞の治療薬、網膜の酸化障害治療薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、20−HETEシンターゼ阻害薬。


〔式中、RはC1−6アルキル基等を、lは0〜10の整数を、mは1又は2を、Qはオキソゾール,イミダゾール,インドール及びそれらの誘導体を、Yは炭素原子を、Dは酸素原子等を、Eは少なくとも置換基としてNH等を有するクロマン−2−イル基等を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含窒素ヘテロ環化合物又はその塩、該化合物又はその塩を含有する抗酸化薬、及びこの抗酸化薬を含む、腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患、脳梗塞の治療薬、網膜の酸化障害治療薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、20−ヒドロキシエイコサテトラエン酸シンターゼ阻害薬に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内での過酸化脂質の生成とそれに付随したラジカル反応が、膜障害や細胞障害等を介して、生体に種々の悪影響を及ぼすことが明らかになってきた。それに伴い、抗酸化薬や過酸化脂質生成抑制薬(抗酸化薬等)の研究開発が盛んに行なわれている(非特許文献1等)。
【0003】
従来、抗酸化薬としては、(a)特定のキノン誘導体を含有する炎症、感染等に基づくエンドトキシンショックの治療及び予防に用いる医薬組成物(特許文献1)、(b)細胞増殖抑制作用、血管新生抑制作用を有する自己免疫疾患の治療及び予防に用いるヒドロキサム酸誘導体(特許文献2)、(c)抗酸化剤、ラジカルスカベンジャーとして有用な2,3−ジヒドロベンゾフラン誘導体(特許文献3〜5)、(d)抗高脂血症作用を有し、動脈硬化症の治療及び予防に有用なイミダゾール系化合物(特許文献6)、(e)抗関節炎活性を有するベンゾチアジンカルボキサミド(特許文献7)、(f)カルボニルアミノフェニルイミダゾール誘導体(特許文献8〜10)、(g)動脈硬化、肝疾患、脳血管障害等の種々の疾患の予防・治療剤として有用な過酸化脂質生成抑制作用を有するアミノジヒドロベンゾフラン誘導体(特許文献11)、(h)ベンゾイソキサゾール化合物等を含有する抗高脂血症薬(特許文献12)、(i)抗酸化防御系が不十分なときに生じる酸化ストレスの結果生じる脂質、タンパク質、炭水化物およびDNAの損傷を有意に改善するジヒドロベンゾフラン誘導体(特許文献13)、(j)脳卒中および頭部外傷に伴う脳機能障害の改善、治療及び予防に有効である光学活性アミノジヒドロベンゾフラン誘導体(特許文献14)等が知られている。
【0004】
脳は、エネルギー需要が大きいにもかかわらず、その供給が循環血液に依存していることから、脳は虚血に対して極めて脆弱である。脳血流が種々の原因により途絶え脳虚血に陥ると、ミトコンドリア障害や神経細胞内のカルシウム上昇などが引き金となって活性酸素種が発生し、また、虚血後の血流再開時には酸素ラジカルが爆発的に発生することが知られている。これらの活性酸素種が最終的には脂質、蛋白質、核酸などに対して作用し、それぞれを酸化させ細胞死を引き起こすといわれている。このような病態に対する治療薬として抗酸化薬があり、日本ではエダラボンが脳保護薬として認可され、用いられている。
【0005】
また、アラキドン酸に代表される不飽和脂肪酸へ酸素を添加するリポキシゲナーゼ(LO)としては、酸素添加部位により、5−LO、8−LO、12−LO及び15−LO等が知られている。5−LOは、強力な炎症メディエーターであるロイコトリエンを合成する初発酵素である。ロイコトリエン類は、喘息、リュウマチ性関節炎、炎症性大腸炎、乾癬等種々の炎症性疾患に関与しており、その制御は、これらの疾患の治療に有用である。12−LOや15−LOは、アラキドン酸以外にも、リノール酸やコレステロールエステル、リン脂質、低比重リポタンパク質(LDL)とも反応し、その不飽和脂肪酸に酸素添加をすることが知られている(非特許文献2)。
【0006】
マクロファージは、スカベンジャー受容体を介して、酸化修飾されたLDLを無制限に取りこんで泡沫細胞となる。これが動脈硬化巣形成の最初のステップとなることが、広く知られている。12−LO及び15−LOは、マクロファージに高レベルで発現しており、LDLの酸化修飾の引き金として必須であることも明らかにされている(非特許文献3)。これらの制御は、動脈硬化に起因する各種疾患の治療に有用である(特許文献15)。
【0007】
前駆体脂肪酸であるアラキドン酸は、細胞膜のリン脂質から切り離されると、20−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(以下、「20−HETE」と略記することがある。)シンターゼにより20−HETEとなる。20−HETEは、腎臓、脳血管等の主要臓器において微小血管を収縮又は拡張させることや細胞増殖を惹起することが知られており、生体内で重要な生理作用に関わり、腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患等の病態に深く関与していることが示唆されている(非特許文献4〜6)。更に、フェニルアゾール誘導体が、20−HETEシンターゼの阻害作用を有することが報告されている(特許文献16〜18)。
【0008】
また、老化に伴って多発する白内障や黄班変性症などの眼疾患の多くは、フリーラジカル・活性酸素が関連する酸化的ストレスがその発症要因の一つとして考えられている(非特許文献7〜9)。
眼組織中で、網膜は水晶体とともに老化の影響を受けやすい組織として知られている(非特許文献10)。網膜は高級不飽和脂肪酸を多く含むこと、網膜血管及び脈絡膜血管の両方から栄養を受けており、酸素消費が多いこと等から種々のフリーラジカルの影響を受けやすく、例えば太陽光など生涯に亘って受ける光は網膜にとっての酸化ストレスの代表的なものである。地上に到達する太陽光の大部分が可視光線と赤外線とで占められ、そのうち数%含まれる紫外線は可視光線や赤外線に比べ生体との相互作用が強く健康に与える影響が大きい。
また、近年においては、環境破壊が原因と考えられるオゾンホールの出現により、地球に到達する紫外線量が増加し、南半球では紫外線が関連する皮膚障害や皮膚がんが急増していることからも、網膜障害が今後ますます増えると考えられている。
【0009】
眼疾患の中で、加齢性黄斑変性症は失明度の高い網膜障害であり、アメリカでは1000万人が軽度の症状を呈しており、45万人以上がこの疾病による視覚障害をもっているとされている(非特許文献11)。
黄斑変性症の発症のメカニズムは不明な点が多いが、この病変の進行には網膜での光吸収による過酸化反応が関与しているとの指摘がある(非特許文献12、13)。また、その発症前期にはドルーゼと言われるリポフスチン様蛍光物質の出現が認められており、リポフスチンは、過酸化脂質の二次的分解産物であるアルデヒドとタンパク質の結合により生成することから、紫外線や可視光線による網膜での脂質過酸化反応が、この網膜障害を誘起する可能性がある。
【0010】
このような抗酸化作用による網膜疾患の予防、治療に有用な薬としては、特定のジヒドロフラン誘導体を含有する網膜疾患治療剤(特許文献19〜22)や、プロピオニル−L−カルニチン又はその塩と、カロテノイドを含有する、網膜の黄斑変性を含む視力及び網膜変化の薬剤(特許文献23)が知られている。しかしながら、既存の抗酸化薬の効力は十分ではないというのが現状である。
【0011】
【特許文献1】特開昭61−44840号公報
【特許文献2】特開平1−104033号公報
【特許文献3】特開平2−121975号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第345593号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第483772号明細書
【特許文献6】国際公開第95/29163号パンフレット
【特許文献7】独国特許出願公開第DE3,407,505号明細書
【特許文献8】特開昭55−69567号公報
【特許文献9】欧州特許出願公開第324377号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第458037号明細書
【特許文献11】特開平5−140142号公報
【特許文献12】国際公開第00/006550号パンフレット
【特許文献13】国際公開第96/28437号パンフレット
【特許文献14】特開平6−228136号公報
【特許文献15】特開平2−76869号公報
【特許文献16】国際公開第00/0168610号パンフレット
【特許文献17】特開2004−010513号公報
【特許文献18】国際公開第03/022821号パンフレット
【特許文献19】特開平6−287139号公報
【特許文献20】国際公開第04/092153号パンフレット
【特許文献21】国際公開第04/092163号パンフレット
【特許文献22】国際公開第00/092179号パンフレット
【特許文献23】国際公開第00/07581号パンフレット
【非特許文献1】J.Amer.OilChemists,Soc.、第51巻、第200頁、1974年
【非特許文献2】Biochem.Biophys.Acta、第1304巻、第652項、1996年
【非特許文献3】J.Clin.Invest.、第103巻、第15972項、1999年
【非特許文献4】J.Vascular Research、第32巻、第79項、1995年
【非特許文献5】Am.J.Physiol.、第277巻、第607項、1999年
【非特許文献6】Physiol.Rev.、第82巻、第131項、2002年
【非特許文献7】Anderson R.E.,Kretzer F.L.,Rapp L.M.「フリーラジカルと眼の疾患」Adv. Exp. Med. Biol.、第366巻、第73頁、1994年
【非特許文献8】Nishigori H.,Lee J.W.,Yamauchi Y.,Iwatsuru M.「発芽鶏胚のグルコチコイド誘発白内障における過酸化脂質変性とアスコルビン酸の効果」Curr.Eye Res.、第5巻、第37頁、1986年
【非特許文献9】Truscott R.J.W.,Augusteyn R.C.「正常又は白内障のヒト水晶体におけるメルカプト基の作用」Exp.Eye Res.、第25巻、第139項、1977年
【非特許文献10】Hiramitsu T.,Armstrong D.「網膜における脂質過酸化反応に対する抗酸化剤の予防効果」Ophthalmic Research、第23巻、第196頁、1991年
【非特許文献11】ビタミン広報センター(東京)VICニュースレター、第105巻、第4頁、2002年
【非特許文献12】幸村定昭「白内障と活性酸素・フリーラジカル、活性酸素・フリーラジカル」第3巻、第402頁、1992年
【非特許文献13】Solbach U.,Keilhauer C.,Knabben H.,Wolf S.「加齢性黄斑変性症における網膜自己蛍光像」Retina、第17巻、第385頁、1997年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、新規な含窒素ヘテロ環化合物又はその塩、この化合物又はその塩を含有する抗酸化薬、この抗酸化薬を含有する、腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患、脳梗塞、又は網膜の酸化障害の治療薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、及び20−ヒドロキシエイコサテトラエン酸シンターゼ阻害薬を提供することを課題とする。
【0013】
本発明者らは、既存の抗酸化薬の効力が十分でない原因は、薬剤が標的部位に到達しないか、標的部位到達前に活性を失活してしまうためであると考えた。そして、臓器移行性、特に血液脳関門又は血液網膜関門をより通過しやすい抗酸化薬の開発を目的として鋭意研究を重ねた。その結果、後述する式(1)で示される含窒素ヘテロ環化合物が、投与経路によらず優れたin vivo抗酸化作用を有することを見出した。
【0014】
さらに、網膜障害抑制について検討を行ったところ、強い抗酸化能を有する後述の式(1)で示される含窒素ヘテロ環化合物が、経口投与により網膜に短時間で移行し、酸化による網膜障害の改善、特に、老化に伴って増加する網膜の加齢性黄斑変性症の進行や症状の軽減に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)、(2)の化合物又はその塩が提供される。
(1)式(1)
【0016】
【化1】

【0017】
{式中、Rは、G1で置換されていてもよいC1−6アルキル基を表し、
G1はシアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
lは0〜10の整数を表し、lが2以上のとき、R同士は、同一であっても相異なっていてもよい。
mは1又は2を表す。
Qは、下記式(Q−1)、(Q−2)又は(Q−3)
【0018】
【化2】

【0019】
〔式中、Rは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、G2で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジル基)、アミノ基、モノ置換アミノ基、又はジ置換アミノ基を表し、
G2は、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
nは0〜3の整数を表し、nが2以上のとき、R同士は、同一であっても相異なっていてもよい。
Aは、水素原子、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、又は、下記式(A−1)、(A−2)、(A−3)若しくは(A−4)
【0020】
【化3】

【0021】
〔式中、R及びRは、それぞれ独立して、G3で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、若しくはC1−6アルキルスルホニル基)、又はハロゲン原子を表し、
G3は、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
qは、0〜3の整数を表し、
rは、0〜2の整数を表し、
q又はrが2以上のとき、R同士又はR同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
は、水素原子、G4で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルキルカルボニル基、若しくはベンゾイル基)、又はテトラヒドロピラニル基を表し、
G4は、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。〕で表されるいずれかの基を示す。
【0022】
Xは炭素原子、酸素原子、式:S(O)u(式中、uは0、1又は2を表す。)、又は式:N−R9〔式中、R9は、水素原子、又はG5で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、若しくはベンジル基)を表し、
G5は、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。〕を表す。
o、pは、それぞれ独立して、0、1又は2を表す。〕で表される基を示す。
点線は単結合または二重結合を表し、
Yは、置換基を有していてもよい炭素原子又は窒素原子を表す。
Dは、酸素原子、硫黄原子、又は下記式(1a)を表し、
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R6は、水素原子、C1−6アルキルカルボニル基、又は(ニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、C1−6アルコキシ基、若しくはC1−6アルキル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。
7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、C1−6アシルオキシ基、又はG6で置換されていてもよい(C3−6シクロアルキル基、若しくはフェニル基)を表し、
G6は、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
j及びkは、それぞれ独立して、0又は1を表し、
hは0〜16の整数を表し、hが2以上のとき、R同士及びR同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。)
【0025】
Eは、少なくとも置換基としてG7を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、チオクロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−3−イル基、又は1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表し、
G7は、ニトロ基、式:NHR10〔式中、R10は、水素原子、C1−6アルキルカルボニル基、又は(ニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、C1−6アルコキシ基、若しくはC1−6アルキル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。〕、又は式:OR11〔式中、R11は、水素原子、C1−6アルキルカルボニル基、又は(水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、若しくはC1−6アルキル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。〕を表す。}
で表される化合物又はその塩。
【0026】
(2)前記式(1)において、Eが、式(E−1)、(E−2)、(E−3)、(E−4)又は(E−5)
【0027】
【化5】

【0028】
(式中、*はキラルな炭素原子を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、R12〜R32は、それぞれ独立して、水素原子又はC1−6アルキル基を表し、G7は前記と同じ意味を表す。)
で表されるいずれかの基であることを特徴とする(1)の化合物又はその塩。
【0029】
本発明の第2によれば、下記(3)の抗酸化薬が提供される。
(3)(1)又は(2)の化合物若しくはその塩の、1種又は2種以上を含有することを特徴とする抗酸化薬。
【0030】
本発明の第3によれば、下記(4)〜(9)の治療薬が提供される。
(4)(3)の抗酸化薬を含むことを特徴とする腎疾患の治療薬。
(5)(3)の抗酸化薬を含むことを特徴とする脳血管疾患の治療薬。
(6)(3)の抗酸化薬を含むことを特徴とする循環器疾患の治療薬。
(7)(3)の抗酸化薬を含むことを特徴とする脳梗塞の治療薬。
(8)(3)の抗酸化薬を含むことを特徴とする網膜の酸化障害の治療薬。
(9)前記網膜の酸化障害が黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症あるいは糖尿病性網膜症であることを特徴とする(8)の治療薬。
【0031】
本発明の第4によれば、下記(10)又は(11)の阻害薬が提供される。
(10)(3)の抗酸化薬を含むことを特徴とするリポキシゲナーゼ阻害薬。
(11)(3)の抗酸化薬を含むことを特徴とする20−ヒドロキシエイコサテトラエン酸シンターゼ阻害薬。
【発明の効果】
【0032】
本発明の式(1)で示される含窒素ヘテロ環化合物又はその塩は新規化合物である。本発明の含窒素ヘテロ環化合物又はその塩は優れた抗酸化活性を有し、動脈硬化症をはじめ心筋梗塞、脳梗塞等の虚血性臓器障害の治療、腎疾患等の酸化的細胞障害による疾病の治療、網膜の光等による酸化障害の抑制等に有効である。
本発明の抗酸化薬は、本発明の含窒素ヘテロ環化合物又はその塩を含有するものであり、腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患、脳梗塞疾患の治療薬等として、また、副作用が少ない網膜の酸化障害治療薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、及び20−HETEシンターゼ阻害薬として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下本発明を、1)式(1)で表される含窒素ヘテロ環化合物又はその塩、2)抗酸化薬、並びに3)治療薬及び阻害薬に項分けして詳細に説明する。
【0034】
1)式(1)で表される含窒素ヘテロ環化合物又はその塩
本発明の第1は、前記式(1)で表される含窒素ヘテロ環化合物又はその塩(以下、「本発明化合物」ということがある。)である。
【0035】
前記式(1)中、Rは、G1で置換されていてもよいC1−6アルキル基を表す。
のC1−6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル等が挙げられる。
G1は、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
ここで、C1−6アルコキシカルボニル基のC1−6は、該C1−6アルコキシカルボニル基のアルコキシ基部分の炭素数を表す(以下同様である。)。
【0036】
G1のC1−6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
1−6アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
モノ置換アミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
ジ置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、フェニルメチルアミノ基、メチルアセチルアミノ基、メチルベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0037】
lは0〜10のいずれかの整数を表し、lが2以上のとき、R同士は、同一又は相異なっていてもよい。
mは1又は2を表す。
【0038】
Qは、前記式(Q−1)、(Q−2)又は(Q−3)で表される基を示す。
式(Q−1)〜(Q−3)中、Rは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、G2で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジル基)、アミノ基、モノ置換アミノ基、又はジ置換アミノ基を表す。
【0039】
のハロゲン原子、C1−6アルキル基、モノ置換アミノ基、及びジ置換アミノ基としては、前記R1のハロゲン原子、C1−6アルキル基、モノ置換アミノ基、及びジ置換アミノ基として列挙したのと同様のものがそれぞれ挙げられる。
のC1−6アルコキシ基としては、前記G1のC1−6アルコキシ基として列挙したのと同様のものが挙げられる。
1−6アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基等が挙げられる。
また、C1−6アルキルカルボニル基としては、アセチル基、プロピオニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が挙げられる。
【0040】
G2は、前記G1と同様の、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
nは0〜3のいずれかの整数を表し、nが2以上のとき、R同士は同一であっても、相異なっていてもよい。
o、pは、それぞれ独立して0、1又は2を表す。
【0041】
Aは、水素原子、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、又は、前記式(A−1)、(A−2)、(A−3)若しくは(A−4)で表されるいずれかの基を示す。
Aのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
AのC1−6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0042】
前記式(A−1)〜(A−4)中、R及びRは、それぞれ独立して、G3で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルスルホニル基)、又はハロゲン原子を表す。
【0043】
及びRのC1−6アルキル基としては、前記R1のC1−6アルキル基として列挙したのと同様のものが挙げられる。
、Rの、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子としては、前記G1のC1−6アルコキシ基、ハロゲン原子として列挙したのと同様のものがそれぞれ挙げられる。
【0044】
、Rの、C1−6アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基等が挙げられる。
【0045】
G3は、前記G1と同様の、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
【0046】
qは0〜3の整数を、rは0〜2の整数をそれぞれ表し、q又はrが2以上のとき、R同士又はR同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
【0047】
は、水素原子、G4で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルキルカルボニル基、若しくはベンゾイル基)、又はテトラヒドロピラニル基を表す。
【0048】
のC1−6アルキル基としては、前記R1のC1−6アルキル基として列挙したのと同様のものが挙げられる。
のC1−6アルキルカルボニル基としては、前記RのC1−6アルキルカルボニル基として列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0049】
G4は、前記G3と同様の、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
【0050】
また、前記式(A−3)、(A−4)で表される基は、Rが水素原子のとき、例えば、下記に示す互変異性構造をとり得る。
【0051】
【化6】

【0052】
これらの中でも、Aとしては、水素原子、フッ素原子、メトキシ基、1−H−イミダゾール−2−イル基、1−H−イミダゾール−4−イル基、1−ピラゾール基、1−メチルイミダゾール−2−イル基、1−メチルイミダゾール−5−イル基、1−メチルイミダゾール−4−イル基、1−メチルピラゾール−4−イル基、1−イミダゾリル基、1H−ピラゾール−5−イル基、1H−ピラゾール−4−イル基、1−メチルピラゾール−5−イル基、1−メチルピラゾール−3−イル基、1−ベンゾイルピラゾール−4−イル基が好ましく、1−イミダゾリル基又は1−H−ピラゾール−5−イル基がより好ましく、ベンゼン環の3位又は4位に結合した1−イミダゾリル基又は1−H−ピラゾール−5−イル基が特に好ましい。
【0053】
Xは炭素原子、酸素原子、式:S(O)u(式中、uは0、1、若しくは2を表す。)、又は式:N−R9を表す。
式:N−R9の、R9は、水素原子、又はG5で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、若しくはベンジル基)を表す。
G5は、前記G1と同様の、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
【0054】
点線は単結合または二重結合を表す。
Yは、置換基を有していてもよい炭素原子又は窒素原子を表す。炭素原子の置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基等が挙げられる。
【0055】
Dは、酸素原子、硫黄原子、又は前記式(1a)を表す。
式(1a)中、R6は、水素原子、C1−6アルキルカルボニル基、又は(ニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、C1−6アルコキシ基、若しくはC1−6アルキル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。
【0056】
のC1−6アルキルカルボニル基としては、前記RのC1−6アルキルカルボニル基として列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0057】
7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、C1−6アシルオキシ基、又はG6で置換されていてもよい(C3−6シクロアルキル基、若しくはフェニル基)を表す。
【0058】
及びRのハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基としては、前記G1の、ハロゲン原子、RのC1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基として列挙したのと同様のものがそれぞれ挙げられる。
【0059】
2−6アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられる。
【0060】
2−6アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−メチル−2−ブチニル基、2−メチル−3−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1,1−ジメチル−2−ブチニル基等が挙げられる。
【0061】
2−6アルケニルオキシ基としては、アリルオキシ基、2−プロペニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、2−メチル−3−プロペニルオキシ等が挙げられる。
2−6アルキニルオキシ基としては、2−プロピニルオキシ基、2−ブチニルオキシ基、1−メチル−2−プロピニルオキシ等が挙げられる。
【0062】
1−6アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ等が挙げられる。
3−6シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、1−メチルシクロプロピル基、2−メチルシクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0063】
G6は、前記G1と同様の、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
【0064】
j及びkは、それぞれ独立して、0又は1を、hは0〜16のいずれかの整数をそれぞれ表す。hが2以上のとき、R同士及びR同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
【0065】
Eは、少なくとも置換基としてG7を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、チオクロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−3−イル基、又は1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表す。
【0066】
G7は、ニトロ基、式:NHR10〔式中、R10は、水素原子、C1−6アルキルカルボニル基、又は(ニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、C1−6アルコキシ基、若しくはC1−6アルキル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。〕、又は式:OR11〔式中、R11は、水素原子、C1−6アルキルカルボニル基、又は(水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、若しくはC1−6アルキル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。
【0067】
10、R11のC1−6アルキルカルボニル基としては、前記RのC1−6アルキルカルボニル基として列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0068】
Eの好ましい具体例としては、前記式(E−1)、(E−2)、(E−3)、(E−4)及び(E−5)で表される基が挙げられる。
【0069】
前記式(E−1)〜(E−5)において、*はキラルな炭素原子を表し、Zは、酸素原子又は硫黄原子を表し、G7は前記と同じ意味を表す。
12〜R32は、それぞれ独立して、水素原子又はC1−6アルキル基を表す。C1−6アルキル基としては、前記RのC1−6アルキル基として列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0070】
本発明化合物は、例えば、以下の製造法1〜5により製造することができる。
(製造法1)
【0071】
【化7】

【0072】
上記式中、Q、Y、R、l、及びmは、前記と同じ意味を表す。式:CH−D’で表される基は、前記式(1)におけるDの一種であり、E’は、前記式(E−1)、(E−2)、(E−3)、(E−4)又は(E−5)で表される基において、G7が、ニトロ基又は式:OR11で表される基であるときのEを表す。
【0073】
Lは、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基等のハロアルキルスルホニルオキシ基;メチルスルホニルオキシ基等のアルキルスルホニルオキシ基;4−メチルフェニルスルホニルオキシ基等のアリールスルホニルオキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;等の脱離基を表す。
【0074】
即ち、式(2)で示される化合物と式(3)で示される化合物とを、有機溶媒中、適当な塩基の存在下で反応させることにより、式(1−1)で示される本発明化合物を得ることができる。
【0075】
用いる塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、マグネシウムエトキシド等の金属アルコキシド;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)等の有機塩基;等が挙げられる。
【0076】
用いる有機溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定はない。例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセタミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ピリジン等の芳香族含窒素化合物類;メタノール、エタノール等のアルコール類;等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
この反応において、式(2)で示される化合物の使用量は、用いる化合物の種類にもよるが、式(3)で示される化合物1モルに対して、0.5〜3倍モルである。
反応温度は、−15℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは0〜50℃であり、反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数十時間である。
【0078】
式(2)で表される化合物は、文献(例えば、欧州特許出願公開第0536512号、J.Med.Chem.,第29巻,359項,1986年)記載の公知の方法によって製造することができる。
【0079】
(製造法2)
本発明化合物は、下記反応式に従って製造することもできる。
【0080】
【化8】

【0081】
式中、Q、Y、R、l及びmは、前記と同じ意味を表す。また、式:CH−D’で表される基は、前記式(1)におけるDの一種であり、E’は、前記式(E−1)、(E−2)、(E−3)、(E−4)又は(E−5)で表される基において、G7が、ニトロ基又は式:OR11で表される基であるときのEを表す。
【0082】
即ち、式(2)で示される化合物と式(4)で示されるアルデヒドとの還元的アミノ化反応により、式(1−1)で示される本発明化合物を得ることができる。
【0083】
この還元的アミノ化反応は、前記式(2)で示される化合物及び式(4)で示されるアルデヒドの有機溶媒溶液に、適当な酸触媒及び還元剤を添加することにより行うことができる。
用いる酸触媒としては、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類;硫酸、塩酸等の無機酸類;が挙げられる。用いる還元剤としては、NaBH、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド等が挙げられる。
【0084】
用いる有機溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定はなく、例えば、前記製造法1で例示した有機溶媒と同様のものが挙げられる。
この反応において、式(2)で示される化合物の使用量は、用いる化合物の種類にもよるが、式(4)で示される化合物1モルに対して、0.5〜3倍モルである。
反応温度は、−15℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは0〜50℃であり、反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数十時間である。
【0085】
(製造法3)
本発明化合物は、下記反応式に従って製造することもできる。
【0086】
【化9】

【0087】
上記式中、Q、Y、R、l及びmは、前記と同じ意味を表す。
また、式:CO−D’で表される基は、前記式(1)におけるDの一種であり、E’は、前記式(E−1)、(E−2)、(E−3)、(E−4)又は(E−5)で表される基において、G7が、ニトロ基又は式:OR11で表される基であるときのEを表す。
【0088】
即ち、式(5)で示されるカルボン酸に、塩化チオニル、五塩化リン、シュウ酸ジクロリド等のハロゲン化剤を反応させることにより酸ハライド(6)を得たのち、得られた酸ハライド(6)を、有機溶媒中、塩基存在下に、式(2)で示される化合物と反応させて、式(1−2)で示される本発明化合物を得ることができる。
酸ハライド(6)は、単離して用いてもよいし、単離せずに連続的に用いてもよい。
【0089】
用いる有機溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されない。例えば、前記製造法1で例示した有機溶媒と同様のものが挙げられる。
用いる塩基としては、製造法1で例示した塩基と同様のものが挙げられる。
【0090】
この反応において、式(2)で示される化合物の使用量は、用いる化合物の種類にもよるが、酸ハライド(6)1モルに対して、0.5〜3倍モルである。
反応温度は、−15℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは0〜80℃であり、反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数十時間である。
【0091】
(製造法4)
本発明化合物は、下記反応式に従って製造することもできる。
【0092】
【化10】

【0093】
式中、Q、Y、R、l及びmは、前記同じ意味を表す。また、式:CO−D’で表される基は、前記式(1)におけるDの一種であり、E’は、前記式(E−1)、(E−2)、(E−3)、(E−4)又は(E−5)で表される基において、G7が、ニトロ基又は式:OR11で表される基であるときのEを表す。
【0094】
即ち、式(2)で示されるアミンと、式(5)で示されるカルボン酸とを脱水縮合させることにより、式(1−2)で示される本発明化合物を得ることができる。
【0095】
前記脱水縮合反応は、適当な溶媒中、縮合剤の存在下に行うことができる。
用いる縮合剤としては、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン等が挙げられる。
用いる有機溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、例えば、製造法1で例示した有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0096】
この反応において、式(2)で示される化合物の使用量は、用いる化合物の種類にもよるが、式(5)で示される化合物1モルに対して、0.5〜3倍モルである。
反応温度は、−15℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは0〜80℃であり、反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数十時間である。
【0097】
また、この場合においては、反応系に、N−ヒドロキシコハク酸イミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジンを共存させると、より速やかに反応を進行させることができる場合がある。
【0098】
(製造法5)
本発明化合物は、下記反応式に従って製造することもできる。
【0099】
【化11】

【0100】
式中、Q、Y、R、l及びmは、前記と同じ意味を表す。
E’は、前記式(E−1)、(E−2)、(E−3)、(E−4)又は(E−5)で表される基において、G7がニトロ基であるときのEを表し、E’’は、前記式(E−1)、(E−2)、(E−3)、(E−4)又は(E−5)で表される基において、G7がアミノ基であるときのEを表す。
【0101】
即ち、式(1−3)で表される化合物を、有機溶媒中、水素添加触媒の存在下に水素添加するか、あるいは還元剤を用いて還元することにより、式(1−3)で表される化合物のニトロ基をアミノ基に還元し、式(1−4)で表される化合物を得ることができる。
前記式(1−3)で表されるニトロ化合物は、例えば、前記製造法1〜4に示す方法で製造することができる。
【0102】
水素添加反応は、前記式(1−4)で表される化合物の有機溶媒溶液に、水素添加触媒を添加し、水素雰囲気下で、全容を所定温度で撹拌することにより行うことができる。
【0103】
用いる水素添加触媒としては、パラジウム炭素、水酸化パラジウム、二酸化白金、ラネーニッケル等が挙げられる。
【0104】
水素添加反応を行うときに用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素類;DMF等のアミド類;ギ酸、酢酸等の有機酸類;酢酸エチル等のエステル類;及びこれらの溶媒の二種以上からなる混合溶媒;が挙げられる。
水素圧力は、通常2〜20kg/cmであり、反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から1日間である。
水素添加反応温度は、0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲である。
【0105】
還元剤を用いて還元する方法は、前記式(1−3)で表される化合物の溶媒溶液に、所定量の還元剤を添加して、全容を所定温度で撹拌することにより行うことができる。
この方法は、より具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール中、塩酸と塩化第一スズを用いる方法や、アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒と水との混合溶媒中、酢酸と鉄を用いる方法等が挙げられる。
反応温度は、0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲であり、反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から1日間である。
【0106】
上述した製造法1〜5のいずれの方法においても、反応終了後は、有機合成化学における通常の後処理操作、精製操作を行なうことにより、前記式(1)で表される本発明化合物を単離することができる。
【0107】
なお、前記式(1)で表される化合物には、いくつかの光学活性体及び互変異性体が存在し得る。これらは、すべて本発明の範囲に含まれる。
【0108】
本発明化合物の塩としては、前記式(1)で表される化合物の塩であれば特に制限されない。具体例としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸の塩;酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、ニコチン酸、ヘプタグルコン酸等の有機酸の塩;が挙げられる。
これらの塩は、前記式(1)で表される化合物から常法に従い容易に製造することができる。
【0109】
以上のようにして得られる本発明化合物の構造は、IRスペクトル、NMRスペクトル及びMSスペクトルの測定、元素分析等から確認・同定することができる。
【0110】
2)抗酸化薬
本発明の抗酸化薬は、本発明の含窒素ヘテロ環化合物又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする。
【0111】
本発明の抗酸化薬は、種々の活性酸素や過酸化脂質を除去し、虚血病変部の組織障害を防ぐことができるため、虚血臓器障害の治療薬として有用である。
【0112】
本発明の抗酸化薬は、酸化作用に基づく各種疾病、例えば、腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患、脳梗塞、動脈硬化、老化痴呆性疾患、心臓病、癌、糖尿病、熱傷、眼疾患等の治療薬としても有用である。脳梗塞や心筋梗塞等の虚血性臓器疾患では、虚血部位の血液再灌流時に種々の活性酸素が発生し、脂質過酸化反応による細胞膜破壊等により組織障害が増悪される。例えば、動脈硬化病変の発生、進展は、低比重リポ蛋白(Low density lipoprotein、以下「LDL」と略記する。)の酸化的変性を防ぐことによって阻止することができるので、本発明の抗酸化薬は、動脈硬化の治療薬に適用することができる。
【0113】
本発明の抗酸化薬は、リポキシゲナーゼ阻害作用及び20−HETEシンターゼ阻害作用を有する。リポキシゲナーゼの作用を阻害することにより、アラキドン酸をHPETEに変換されるのを抑制し、また、20−HETEシンターゼを阻害することにより20−HETEが産生されるのを抑制することができる。
また、本発明化合物の中には、ドーパミン放出抑制作用が少なく、パーキンソン様等の副作用を伴う可能性が少ない化合物も含まれる。
【0114】
本発明の抗酸化薬は、有効成分(本発明化合物)、及び慣用の医薬用担体又は賦形剤の他、他の薬剤、アジュバント等を他の成分と反応しない範囲で含有する組成物とすることができる。かかる組成物は、投与様式に応じて、有効成分を1〜99重量%、適当な医薬用担体又は賦形剤を99〜1重量%含有するものとすることができ、好ましくは、有効成分を5〜75重量%、残部を適当な医薬用担体又は賦形剤とすることができる。
【0115】
本発明の抗酸化薬には、投与様式に拘わらず、所望により、少量の補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、抗酸化剤等、他の成分と反応しない範囲で、例えば、クエン酸、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、ブチル化ヒドロキシトルエン等を添加することもできる。
【0116】
本発明の抗酸化薬は、上記疾病の医薬として、任意の様式で、例えば、経口、経鼻、非経口、局所、経皮又は経直腸で投与することができる。
また、その剤形も、固体、半固体、凍結乾燥粉末又は液体の剤形、例えば、錠剤、坐薬、丸薬、軟質及び硬質カプセル、散薬、液剤、注射剤、懸濁剤、エアゾル剤、持続放出製剤等とすることができ、正確な投与量を処方でき、かつ、簡便に投与することができる適当な剤形とすることができる。
【0117】
本発明の抗酸化薬の好ましい投与経路は経口であり、経口用の抗酸化薬に適用される賦形剤としては、任意の通常用いられる賦形剤、例えば、医薬用のマニトール、乳糖、デンプン、ゼラチン化デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロースエーテル誘導体、グルコース、ゼラチン、スクロース、クエン酸塩、没食子酸プロピル等を挙げることができる。
【0118】
また、経口用の抗酸化薬には、希釈剤として、例えば、乳糖、スクロース、リン酸二カルシウム等を、崩壊剤として、例えば、クロスカルメロースナトリウム又はその誘導体等を、結合剤として、例えば、ステアリン酸マグネシウム等を、滑沢剤として、例えば、デンプン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロースエーテル誘導体等を含有させることができる。
【0119】
本発明の抗酸化薬を注射剤とする場合には、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を包含することが好ましい。水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば注射剤用蒸留水及び生理食塩水を用いることができる。
【0120】
非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート(商品名)等を用いることができる。
【0121】
このような注射剤は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えば、ラクトース)、可溶化ないし溶解補助剤のような添加剤を含んでもよい。これらは、例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
【0122】
また、本発明の抗酸化薬を坐剤とする場合には、担体として体内で徐々に溶解する担体、例えば、ポリオキシエチレングリコール又はポリエチレングリコール(以下PEGと略記する)、具体的には、PEG1000(96%)又はPEG4000(4%)を使用し、かかる担体に本発明化合物0.5〜50重量%を分散したものを挙げることができる。
【0123】
本発明の抗酸化薬を液剤とする場合は、担体として水、食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノール等を使用し、かかる担体に本発明化合物を0.5〜50重量%と共に、任意の医薬アジュバントを溶解、分散させる等の処理を行い、溶液又は懸濁液としたものが好ましい。
【0124】
このような製剤は、通常の方法、例えば、レミントン・ファルマスーテイカル・サイエンス(Remington’s Pharmaceutical Sciences)第18版,マック・パブリシング・カンパニー,イーストン,ペンシルバニア(Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania)1990年刊等に教示される記載に従って製造することができる。
【0125】
本発明の抗酸化薬において、本発明化合物の治療有効量は、個人及び処置される疾病の病状により変動される。通常、治療有効1日用量は、体重1kgあたり、本発明化合物0.14mg〜14.3mg/日とすることができ、好ましくは、体重1kgあたり0.7mg〜10mg/日、より好ましくは、体重1kgあたり1.4mg〜7.2mg/日とすることができる。
【0126】
例えば、体重70kgのヒトに投与する場合、本発明化合物の用量範囲は、1日10mg〜1.0g、好ましくは、1日50mg〜700mg、より好ましくは、1日100mg〜500mgとなるが、これは飽く迄目安であって、処置の病状によってはこの範囲以外の用量とすることができる。
【0127】
3)治療薬及び阻害薬
本発明の腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患、脳梗塞、網膜の酸化障害の治療薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、20−HETEシンターゼ阻害薬は、本発明の抗酸化薬を含むことを特徴とする。これらの治療薬及び阻害薬の投与様式、投与形態、投与量も上記抗酸化薬と同様の様式、形態、投与量とすることができる。
【0128】
本発明の治療薬及び阻害薬には、上記抗酸化薬と同様の製剤用成分、担体、アジュバント等を包含させることができ、賦形剤、崩壊剤、結合剤等や、有効成分と反応しない他の酸化障害抑制薬の1種又は2種以上を適宜加えてもよい。また、上記の他に、他の薬効を有する成分を適宜含有させてもよい。
【0129】
(網膜の酸化障害治療薬)
本発明の網膜の酸化障害の治療薬は、網膜の酸化障害に起因する疾病;糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、貧血症、白血病、全身性エリテマトーデスや強皮症等の結合組織疾患、テイ−ザックス(Tay−Sacks)病、フォークト−シュピールマイヤー(Vogt−Spielmeyer)病等の先天代謝異常等の全身疾患に起因する網膜の血管障害;炎症性及び変性病変、未熟児網膜症、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈周囲炎等の網膜血管の障害;網膜剥離や外傷に由来する網膜の炎症や変性;加齢性黄斑変性症等の加齡に伴う網膜の変性疾患;先天的な網膜変性疾患;等の網膜局所の疾患の予防および治療に用いることができる。特に光酸化障害により発症する黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症、又は糖尿病性網膜症の疾患の治療薬として有用である。
【0130】
また、投与形態としては、上記抗酸化薬における場合と同様の投与形態の他、点眼剤、眼軟膏剤とすることができる。
【0131】
本発明の網膜の酸化障害治療薬を点眼剤とする場合は、本発明化合物を通常使用される基剤溶媒に加え水溶液又は懸濁液とし、pHを4〜10、好ましくは5〜9に調整することができる。
【0132】
点眼剤は、無菌製品とするため滅菌処理を行なうことが好ましく、かかる滅菌処理は製造工程のいずれの段階においても行うことができる。点眼剤中の本発明化合物の濃度は、0.001〜3%(W/V)、好ましくは0.01〜1%(W/V)であり、投与量も症状の程度、患者の体質等の種々の状態により1日1〜4回、各数滴等とすることができる。上記投与量は飽く迄目安であり、この範囲を超えて投与することもできる。
【0133】
上記点眼剤には、本発明化合物と反応しない範囲の緩衝剤、等張化剤、防腐剤、pH調整剤、増粘剤、キレート剤、可溶化剤等の各種添加剤を適宜、添加してもよい。
【0134】
かかる緩衝剤としては、例えば、クエン酸塩緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、アミノ酸等を挙げることができる。等張化剤としては、例えば、ソルビトール、グルコース、マンニトール等の糖類、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、塩化ナトリウム等の塩類等を挙げることができる。また、防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル基、パラオキシ安息香酸エチル等のパラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ソルビン酸又はその塩等を挙げることができる。
【0135】
pH調整剤としては、例えば、リン酸、水酸化ナトリウム等を挙げることができる。
増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースやその塩等を挙げることができる。
キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合リン酸ナトリウム等を挙げることができ、可溶化剤としては、例えば、エタノール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等を挙げることができる。
【0136】
また、本発明の網膜の酸化障害治療薬を眼軟膏剤とする場合、本発明化合物を通常使用される眼軟膏基剤、例えば、精製ラノリン、白色ワセリン、マクロゴール、プラスチベース、流動パラフィン等と混合したものとすることができ、無菌製品とするため滅菌処理をしたものが好ましい。
【0137】
眼軟膏剤における本発明化合物の濃度は、0.001〜3%(W/W)、好ましくは0.01〜1%(W/W)であり、投与量も症状の程度、患者の体質等の種々の状態により1日1〜4回等とすることができる。上記投与量は飽く迄目安であり、この範囲を超えて投与することもできる。
【実施例】
【0138】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0139】
実施例1
(1)5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4’−(6”−フルオロベンゾ[d]イソキサゾール−3”−イル)ピペリジン−1’−イルメチル]−2,3−ジヒドロベンゾフランの製造
【0140】
【化12】

【0141】
6−フルオロ−3−(4−ピペリジニル)−1,2−ベンゾイソキサゾール1.0g、及び2,4,6,7−テトラメチル−5−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−トリフルオロメタンスルホネート1.74gをアセトニトリル17mlに溶解し、そこへ炭酸ナトリウム0.50gを加え、全容を4時間還流した。
反応液を冷却後、このものを氷水中に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥しろ過した。ろ液を減圧濃縮し、得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)にて精製することにより、目的物1.66gを得た。
【0142】
(2)5−アミノ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4’−(6”−フルオロベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル)ピペリジン−1’−イルメチル]−2,3−ジヒドロベンゾフランの製造
【0143】
【化13】

【0144】
上記(1)で得た5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4’−(6”−フルオロベンゾ[d]イソキサゾール−3”−イル)ピペリジン−1’−イルメチル]−2,3−ジヒドロベンゾフラン1.66gのエタノール35ml溶液に、塩化第一スズ・2水和物2.46gと濃塩酸10mlを添加し、全容を0.5時間加熱還流した。反応液を氷水中に注ぎ、水酸化ナトリウム水溶液で中和、クロロホルム抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥しろ過した。ろ液を減圧濃縮し、得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/クロロホルム=1/5(v/v))にて精製することにより、目的物0.86gを得た。(融点82−84℃)
【0145】
実施例2
(1)(5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル)−[4’−(6”−フルオロベンゾ[d]イソキサゾール−3”−イル)ピペリジン−1−イル]カルボキサミドの製造
【0146】
【化14】

【0147】
6−フルオロ−3−(4−ピペリジニル)−1,2−ベンゾイソキサゾール0.60g及びトリエチルアミン0.6gをジクロロメタン20mlに溶解した。この溶液に、2,4,6,7−テトラメチル−5−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−カルボン酸クロリド1.0gを撹拌下で加え、さらに室温で24時間攪拌した。反応液を氷水中に注ぎ、クロロホルム抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥しろ過そた。ろ液を減圧濃縮し、得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/クロロホルム=1/5(v/v))にて精製することにより、目的物2.0gを得た。
【0148】
(2)(5−アミノ−2,4,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル)−[4’−(6”−フルオロベンゾ[d]イソキサゾール−3”−イル)ピペリジン−1’−イル]カルボキサミドの製造
【0149】
【化15】

【0150】
(5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル)−[4’−(6”−フルオロベンゾ[d]イソキサゾール−3”−イル)ピペリジン−1’−イル]カルボキサミド2.0gを、メチルエチルケトン15mlと水23mlとの混合溶媒に溶解した。この溶液に鉄粉2.63gと酢酸1.05gとを加え、1時間還流した。反応液を冷却後、セライトでろ過し、酢酸エチルで抽出した。有機層を1N−水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥しろ過した。ろ液を減圧濃縮し、得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/クロロホルム=1/3(v/v))にて精製することにより、目的物0.94gを得た。Viscous oil
【0151】
実施例3
5−アミノ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4’−(1”,2”,3”,4”−テトラヒドロナフタレン−1”−イル)ピペラジン−1’−イルメチル]−2,3−ジヒドロベンゾフランの製造
【0152】
(1)1−(1’,2’,3’,4’−テトラヒドロナフタレン−1’−イル)−4−ホルミルピペラジンの製造
【0153】
【化16】

【0154】
1,2,3,4−テトロヒドロ−1−ナフトール2.55gのベンゼン25ml溶液中に、塩化チオニル2.46gを滴下し、室温で7時間撹拌した。反応液を氷水中に注ぎ、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥しろ過した。ろ液を減圧濃縮して得られた濃縮物をDMF28mlに溶解し、ホルミルピペラジン4.7ml及びよう化カリウム0.68gを加え、全容を70℃で一夜撹拌した。反応液を氷水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥しろ過した。ろ液を減圧濃縮し、得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:クロロホルム=1:3(v/v)に付し、目的物3.14gを得た。
(2)N−(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル)ピペラジンの製造
【0155】
【化17】

【0156】
上記(1)で得た、1−(1’,2’,3’,4’−テトラヒドロナフタレン−1’−イル)−4−ホルミルピペラジン3.14gをメタノール30mlに溶解した。この溶液に1N−水酸化ナトリウム水溶液を26ml加え、全容を1時間還流した。冷却後、反応液を氷水中に注ぎクロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥さしろ過した。ろ液を減圧濃縮することにより、目的物を2.9g得た。
(3)5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4’−(1”,2”,3”,4”−テトラヒドロナフタレン−1”−イル)ピペラジン−1’−イルメチル]−2,3−ジヒドロベンゾフランの製造
【0157】
【化18】

【0158】
N−(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル)ピペラジン0.56gと2,4,6,7−テトラメチル−5−ニトロジヒドロベンゾフラン−2−トリフルオロメタンスルホネート1.0gをアセトニトリル10mlに溶解し、炭酸ナトリウム0.28gを加え、一夜還流した。冷却後、反応液を氷水中に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)に付し、目的物1.02gを得た。
【0159】
(4)5−アミノ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4’−(1”,2”,3”,4”−テトラヒドロナフタレン−1”−イル)ピペラジン−1’−イルメチル]−2,3−ジヒドロベンゾフランの製造
【0160】
【化19】

【0161】
5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4’−(1”,2”,3”,4”−テトラヒドロナフタレン−1”−イル)ピペラジン−1’−イルメチル]−2,3−ジヒドロベンゾフラン1.02gにエタノール19mlを加え、塩化第一スズ・2水和物1.6gと濃塩酸7mlを添加し、1時間加熱還流を行った。反応液を氷水中に注ぎ、水酸化ナトリウム水溶液で中和、クロロホルム抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾別後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:クロロホルム=1:3(v/v))に付し、目的物0.75gを得た。(屈折率n20.51.5370)
【0162】
実施例4
(1)(5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル)−[4’−(1”,2”,3”,4”−テトラヒドロナフタレン−1”−イル)−ピペラジン−1’−イル]カルボキサミドの製造
【0163】
【化20】

【0164】
1−(1’,2’,3’,4’−テトラヒドロナフタレン−1’−イル)ピペラジン0.60gと2,4,6,7−テトラメチル−5−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−カルボン酸0.74gに、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩を0.60g、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール塩酸塩0.48g、トリエチルアミン0.5mlをDMF6ml中に加え、室温で24時間攪拌した。反応液を水にあけ、析出した結晶を濾別し、水とエーテルで洗浄し、得られた結晶を乾燥させ、目的化合物1.29gを得た。
【0165】
(2)(5−アミノ−2,4,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル)−[4’−(1”,2”,3”,4”−テトラヒドロナフタレン−1”−イル)−ピペラジン−1’−イル]カルボキサミドの製造
【0166】
【化21】

【0167】
(5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル)−[4’−(1”,2”,3”,4”−テトラヒドロナフタレン−1”−イル)−ピペラジン−1’−イル]カルボキサミド1.2gをメチルエチルケトン20mlと水20mlに溶解し、鉄粉2.5gと酢酸1.0mlを加え1時間還流した。冷却後、反応液をセライトろ過し、酢酸エチルで抽出した。1N−水酸化ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾別後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:クロロホルム=1:5(v/v))に付し、目的物1.2gを得た。屈折率n20.41.5404
【0168】
実施例5
5−アミノ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4−(インドリン−1−イル)ピペリジン−1−イルメチル]ジヒドロベンゾフランの製造
【0169】
(1)1−(ピペリジン−4−イル)インドリンの製造
【0170】

【0171】
(式中、Bocは、t−ブトキシカルボニル基を表す。)
インドリン1.99gとBoc‐ピペリドン1.19gを塩化メチレン78mlに溶解し、酢酸0.92mlを加え30分撹拌した。得られた反応溶液にナトリウムトリアセトキシボロハイドライド4.25gを加え室温で一夜撹拌した。反応液を水にあけ、水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:3(v/v))で精製し、Boc体1.93gを得た。このBoc体にメタノール20mlと塩酸5mlを加え一夜放置した。この溶液中に、氷−水を加え1N水酸化ナトリウム水溶液で中和し、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別後、減圧濃縮して目的物1.3gを得た。
(2)5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4−(インドリン−1−イル)ピペリジン−1−イルメチル]ジヒドロベンゾフランの製造
【0172】

【0173】
上記(1)で得た、1−(ピペリジン−4−イル)インドリン1.1gと2,4,6,7−テトラメチル−5−ニトロジヒドロベンゾフラン−2−トリフルオロメタンスルホネート2.09gをアセトニトリル22mlに溶解し、炭酸ナトリウム0.58gを加え、一夜還流した。冷却後、反応液を氷水中に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、目的物2.9gを得た。
(3)5−アミノ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4−(インドリン−1−イル)ピペリジン−1−イルメチル]ジヒドロベンゾフランの製造
【0174】

【0175】
5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4−(インドリン−1−イル)ピペリジン−1−イルメチル]ジヒドロベンゾフラン1.14gにエタノール21mlを加え、塩化第一スズ・2水和物1.77gと濃塩酸7.5mlを添加し、1時間加熱還流を行った。反応液を氷水中に注ぎ、水酸化ナトリウム水溶液で中和、クロロホルム抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾別後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=3:100(v/v))に付し、目的物1.0gを得た。(屈折率n20.31.5663)
【0176】
実施例6
5−アミノ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4−(5−イミダゾリルインドリン−1−イル)ピペリジン−1−イルメチル]ジヒドロベンゾフランの製造
【0177】
(1)5−イミダゾリル−1−アセチルインドリンの製造
【0178】

【0179】
1−アセチル−5−ブロモインドリン5.0gとイミダゾール2.2gをキシレン43mlに懸濁した反応液に、室温で触媒として1,10−フェナンスロリン4.88gと1,5−ジフェニル−1,4−ペンタジエン−3−オン0.41gと炭酸セシウム7.71gとトリフルオロメタンスルホン酸銅(I)ベンゼンコンプレックス0.52gを加え、アルゴン気流中、一夜還流した。反応液に塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=3:1(v/v)、続いてクロロホルム:メタノール=100:3(v/v))で精製しアセチル体を3.0g得た。
(2)5−イミダゾリルインドリンの製造
【0180】

【0181】
上記(1)で得られた、5−(イミダゾール−1−イル)−1−アセチルインドリン6.5gにエタノール10mlと塩酸20mlを加え一夜還流した。冷却後、溶媒を減圧留去し、氷−水を加え1N水酸化ナトリウム水溶液で中和し、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムと活性炭を加え1時間撹拌した。活性炭と硫酸マグネシウムを濾別後、減圧濃縮して目的物5.0gを得た。
(3)4−(5−イミダゾリルインドリン−1−イル)ピペリジン
【0182】

【0183】
上記(2)で得られた、5−イミダゾリルインドリン5.0gを用いて実施例5(1)と同様の方法で目的物2.85gを得た。
(4)5−ニトロ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4−(5−イミダゾリルインドリン−1−イル)ピペリジン−1−イルメチル]ジヒドロベンゾフランの製造
【0184】

【0185】
5−イミダゾリル−1−(4−ピペリジル)インドリン2.85gを用いて実施例5(2)と同様の方法で目的物1.64gを得た。
(5)5−アミノ−2,4,6,7−テトラメチル−2−[4−(5−イミダゾリルインドリン−1−イル)ピペリジン−1−イルメチル]ジヒドロベンゾフランの製造
【0186】


【0187】
ニトロ体1.64gを用いて実施例5(3)と同様の方法で目的物1.2gを得た。(アモルファス)
【0188】
本発明化合物の具体例を、第1−1表〜第16−2表に示す。表中の物理恒数の欄にNMRと記載した化合物については、表の後にNMRデータを示す。
【0189】
表中、A欄には、フェニル基に置換する置換基Aを記載する。E欄のh1〜h8は下記に示す基を表す。
【0190】
【化22】

【0191】
【表1】

【0192】
【表2】

【0193】
【表3】

【0194】
【表4】

【0195】
【表5】

【0196】
【表6】

【0197】
【表7】

【0198】
【表8】

【0199】
【表9】

【0200】
【表10】

【0201】
【表11】

【0202】
【表12】

【0203】
【表13】

【0204】
【表14】

【0205】
【表15】

【0206】
【表16】

【0207】
【表17】

【0208】
【表18】

【0209】
【表19】

【0210】
【表20】

【0211】
【表21】

【0212】
【表22】

【0213】
【表23】

【0214】
【表24】

【0215】
【表25】

【0216】
【表26】

【0217】
【表27】

【0218】
【表28】

【0219】
【表29】

【0220】
【表30】

【0221】
【表31】

【0222】
【表32】

【0223】
化合物1−9のH−NMRスペクトルデータ
(CDCl,TMS)δppm:1.6(s,3H),1.9−2.1(m,3H),2.1(s,9H),2.8−5.0(m,10H),6.6(m,1H),7.3(m,1H),7.8(m,1H)
【0224】
化合物15−29のH−NMRスペクトルデータ
(CDCl,TMS)δppm:1.4(s,3H),1.6−1.8(m,4H),2.0(s,6H),2.05(s,3H),2.2−2.3(m,2H),2.4−2.6(m,2H),2.8(d,1H),2.9(t,2H),2.9−3.1(m,2H),3.2−3.3(m,2H),3.4(t,2H),6.3(d,1H),6.9(m,2H),7.1(s,2H),7.6(s,1H)
【0225】
実施例7 製剤の調製
本発明化合物を含有する製剤を以下の方法により調製した。
本発明化合物50g、乳糖407g及びコンスターチ100gを、流動造粒コーティング装置(大川原製作所社製)を使用して、均一に混合した。この混合物に、10%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液200gを噴霧して造粒した。乾燥後、20メッシュの篩を通し、これに、カルボキシメチルセルロースカルシウム20g、ステアリン酸マグネシウム3gを加え、ロータリー打錠機(畑鉄工所社製)で7mm×8.4Rの臼杵を使用して、一錠120mgの錠剤を得た。
【0226】
得られる経口剤(有効成分10mg錠)の組成
本発明化合物 10mg
乳糖 81.4mg
コンスターチ 20mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 4mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
―――――――――――――――――――――――――――
合計 120mg
【0227】
[in vitro過酸化脂質生成抑制作用試験]
本発明化合物のin vitro過酸化脂質生成抑制作用試験を、Malvyらの方法(Malvy,C.,et al.,バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications),1980,第95巻,734〜737頁)に準じて行った。
【0228】
臓器は、ブタ眼球から分離した後、−80℃にて保存している網膜を用いた。使用時に5倍量のリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)を加え、マイクロホモジナイザー(PHYSCOTRON、NITI−ON)にてホモジナイズした。このブタ網膜ホモジネートにKCl(0.15M)、本発明化合物、500μM システイン、5μM FeSOを加えて、37℃で30分間インキュベートした。
過酸化脂質の分解で生じたマロンジアルデヒドをチオバルビツール酸法にて測定した。測定値から本発明化合物の50%阻害濃度(IC50)を求めた。結果を第17表に示す。
【0229】
【表33】

【0230】
第17表から、本発明化合物は、in vitro過酸化脂質生成抑制作用を有していることが分かった。
【0231】
[組織移行性の評価試験]
本発明化合物の組織移行性を、ex vivo過酸化脂質生成抑制作用を測定することにより評価した。
ジメチルスルホキシド(DMSO)に本発明化合物を溶解し、この溶液を、DMSOが20重量%濃度となるように、0.1N塩酸生理食塩水、又は1%ポリエチレン硬化ヒマシ油(NIKOL HCO−60,日光ケミカル製)に溶解あるいは懸濁した。このものを1群3匹のSD系雄性ラット(日本SLC,6週齡)に経口投与し、投与1時間後に脳及び眼球を取り出した。
【0232】
脳及び眼球より分離した網膜につき、[in vitro過酸化脂質生成抑制作用試験]の項に記した方法により、各組織ホモジネートの過酸化脂質量を測定した。対照群(20重量% DMSO−0.1N塩酸生理食塩水/1%ポリエチレン硬化ヒマシ油群)と本発明化合物投与群の過酸化脂質生成量から本発明化合物の各組織における阻害率を求めた。各投与量における阻害率から50%阻害する投与量(IC50)を求めた。結果を第18表に示す。
第18表から、本発明化合物は組織移行性が高いことがわかった。
【0233】
【表34】

【0234】
[網膜移行性]
本発明化合物の網膜移行性を評価した。
本発明化合物を、0.1N塩酸溶液又は1%ポリエチレン硬化ヒマシ油溶液に溶解又は懸濁し、得られた溶液又は懸濁液を、一群3匹のSD系雄性ラット(6適齢)に経口投与し、30分後に両眼を摘出し、氷冷下で網膜を分離した。
ポリトロン微量ホモジナイザー(NS−310E:日音医理科器機社製)で、氷冷下、0.1Mトリス一塩酸緩衝液(pH7.4)中、網膜の5%ホモジネート液を調製し、37℃で、1時間自動酸化し、生成した過酸化脂質量をチオバルビツール酸法(真杉ら、ビタミン51、21−29、1977)で定量した。各投与量における阻害率から50%阻害する投与量(IC50)を求めた。その結果を第19表に示す。なお、対照薬として、下記に示す(R−1)、(R−2)を用いた。(R−1)はEP−A−0483772号公報に記載された化合物であり、(R−2)はWO2005/012293号パンフレットに記載された化合物である。
【0235】
【化23】

【0236】
【化24】

【0237】
【表35】

【0238】
この結果から、本発明化合物は、ex vivo網膜過酸化脂質生成抑制作用を有し、網膜移行性が高いことが分かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

{式中、Rは、G1で置換されていてもよいC1−6アルキル基を表し、
G1はシアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
lは0〜10の整数を表し、lが2以上のとき、R同士は、同一であっても相異なっていてもよい。
mは1又は2を表す。
Qは、下記式(Q−1)、(Q−2)又は(Q−3)
【化2】

〔式中、Rは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、G2で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルキルチオ基、C1−6アルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ベンジル基)、アミノ基、モノ置換アミノ基、又はジ置換アミノ基を表し、
G2は、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
nは0〜3の整数を表し、nが2以上のとき、R同士は、同一であっても相異なっていてもよい。
Aは、水素原子、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、又は、下記式(A−1)、(A−2)、(A−3)若しくは(A−4)
【化3】

〔式中、R及びRは、それぞれ独立して、G3で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、若しくはC1−6アルキルスルホニル基)、又はハロゲン原子を表し、
G3は、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
qは、0〜3の整数を表し、
rは、0〜2の整数を表し、
q又はrが2以上のとき、R同士又はR同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
は、水素原子、G4で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、C1−6アルキルカルボニル基、若しくはベンゾイル基)、又はテトラヒドロピラニル基を表し、
G4は、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。〕で表されるいずれかの基を示す。
Xは炭素原子、酸素原子、式:S(O)u(式中、uは0、1又は2を表す。)、又は式:N−R9〔式中、R9は、水素原子、又はG5で置換されていてもよい(C1−6アルキル基、若しくはベンジル基)を表し、
G5は、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。〕を表す。
o、pは、それぞれ独立して、0、1又は2を表す。〕で表される基を示す。
点線は単結合または二重結合を表し、
Yは、置換基を有していてもよい炭素原子又は窒素原子を表す。
Dは、酸素原子、硫黄原子、又は下記式(1a)を表し、
【化4】

(式中、R6は、水素原子、C1−6アルキルカルボニル基、又は(ニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、C1−6アルコキシ基、若しくはC1−6アルキル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。
7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C2−6アルケニルオキシ基、C2−6アルキニルオキシ基、C1−6アシルオキシ基、又はG6で置換されていてもよい(C3−6シクロアルキル基、若しくはフェニル基)を表し、
G6は、シアノ基、ホルミル基、水酸基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、又はハロゲン原子を表す。
j及びkは、それぞれ独立して、0又は1を表し、
hは0〜16の整数を表し、hが2以上のとき、R同士及びR同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。)
Eは、少なくとも置換基としてG7を有する(クロマン−2−イル基、クロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル基、チオクロマン−2−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−2−イル基、チオクロマン−4−イル基、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン−3−イル基、又は1,3−ベンゾキサチオラン−2−イル基)を表し、
G7は、ニトロ基、式:NHR10〔式中、R10は、水素原子、C1−6アルキルカルボニル基、又は(ニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、C1−6アルコキシ基、若しくはC1−6アルキル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。〕、又は式:OR11〔式中、R11は、水素原子、C1−6アルキルカルボニル基、又は(水酸基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子、若しくはC1−6アルキル基)で置換されていてもよいベンゾイル基を表す。〕を表す。}
で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
前記式(1)において、Eが、式(E−1)、(E−2)、(E−3)、(E−4)又は(E−5)
【化5】

(式中、*はキラルな炭素原子を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、R12〜R32は、それぞれ独立して、水素原子又はC1−6アルキル基を表し、G7は前記と同じ意味を表す。)
で表されるいずれかの基であることを特徴とする請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物若しくはその塩の、1種又は2種以上を含有することを特徴とする抗酸化薬。
【請求項4】
請求項3に記載の抗酸化薬を含むことを特徴とする腎疾患の治療薬。
【請求項5】
請求項3に記載の抗酸化薬を含むことを特徴とする脳血管疾患の治療薬。
【請求項6】
請求項3に記載の抗酸化薬を含むことを特徴とする循環器疾患の治療薬。
【請求項7】
請求項3に記載の抗酸化薬を含むことを特徴とする脳梗塞の治療薬。
【請求項8】
請求項3に記載の抗酸化薬を含むことを特徴とする網膜の酸化障害の治療薬。
【請求項9】
前記網膜の酸化障害が黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症あるいは糖尿病性網膜症であることを特徴とする請求項8に記載の治療薬。
【請求項10】
請求項3に記載の抗酸化薬を含むことを特徴とするリポキシゲナーゼ阻害薬。
【請求項11】
請求項3に記載の抗酸化薬を含むことを特徴とする20−ヒドロキシエイコサテトラエン酸シンターゼ阻害薬。


【公開番号】特開2007−16011(P2007−16011A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274409(P2005−274409)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】