説明

抱合方法

本発明は、エフェクター基(たとえば、細胞傷害剤)又はリポーター基(たとえば、放射性核種)により、抗体のような細胞結合剤を抱合する方法を記載し、その際、リポーター基又はエフェクター基は先ず、2官能性リンカーと反応し、次いで精製しないでその混合物を細胞結合剤との抱合反応に使用する。本発明に記載される方法は、エフェクター基又はリポーター基との抗体のような細胞結合剤の、安定して連結される抱合体の調製に有利である。本抱合方法は、鎖間架橋した及び不活化されたリンカー残基を含まずに高い純度と均質性の高い収率の抱合体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体の開示が参照によって明示的に本明細書に組み入れられる、2009年6月3日に出願された米国特許仮出願第61/183,774号の優先権を主張する。
本発明は、2官能性リンカーを介してエフェクター基(たとえば、細胞傷害剤)又はリポーター基(たとえば、放射性標識)を抗体又はその断片のような細胞結合剤に抱合させる新規の方法に関する。さらに具体的には、本発明は、分子内又は分子間の反応のために形成される望ましくない加水分解された種又は望ましくない架橋された種の形成を結果として生じる工程を製造過程が排除するように、2官能性リンカーを介してエフェクター基(たとえば、マイタンシノイド)又はリポーター基(たとえば、放射性標識)を細胞結合剤(抗体又はその断片)に抱合させる新規の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、抗体のような細胞結合剤の、たとえば、小型の細胞傷害剤又は細胞傷害性タンパク質のようなエフェクター基との抱合体は、抗癌治療剤の開発にとって計り知れない関心事である(Richart, A. D., and Tolcher, A. W., 2007, Nature Clinical Practice, 4, 245-25)。これらの抱合体は、腫瘍細胞の細胞表面に発現される抗原に向けた選択された抗体の高い特異性のゆえに腫瘍特異的である。腫瘍細胞への特異的な結合の際、抗体/細胞傷害剤の抱合体は標的の癌細胞に内部移行され、分解され、それによって、たとえば、微小管動態又はDNA複製のような本質的な細胞機能を阻害する活性のある細胞傷害剤を放出し、その結果、癌細胞の殺傷を生じる。血漿における抱合体の所望の安定性を維持する一方で、内部移行の際、細胞内への剤の送達を高め、抱合体の処理を高めることを目的に、抗体を細胞傷害剤に連結するのに種々のリンカーが採用されている。これらのリンカーには、細胞内チオールによる還元動態に影響を及ぼすように様々な程度の立体障害とともに設計されるジスルフィドリンカー、バリン/シトルリン結合のような切断可能なペプチドリンカー、及びチオエーテル結合のような切断不能なリンカーが挙げられる(Widdison, W., et al., J. Med. Chem., 2006, 49, 4392-4408; Erickson, H., et al, Cancer Res., 2006, 66, 4426-4433)。
【0003】
抗体のような細胞結合剤と標識又はリポーター基との抱合体は、癌患者における腫瘍画像化応用、種々の疾患の診断用の免疫アッセイの応用、放射性核種−リガンドの抱合体を用いた癌治療法、並びにタンパク質、ペプチド及びオリゴヌクレイドのような生物活性剤の精製用のアフィニティクロマトグラフィの応用に有用である。細胞結合剤に抱合される標識又はリポーター基には、蛍光色素分子、及びビオチンのようなアフィニティ標識が挙げられる。
【0004】
非還元性結合(たとえば、チオエーテル結合)を介して連結されるエフェクター基(たとえば、細胞傷害剤)又はリポーター基(たとえば、放射性標識)にたとえば、抗体のような細胞結合剤を抱合させる従来の方法は、抗体との2つの別々の反応工程を採用し、精製工程の使用を必要とする。第1の反応工程では、異なった2つの反応基(たとえば、X及びY)を持つヘテロ2官能性リンカーに抗体を反応させる。たとえば、方法の1つでは、ヘテロ2官能性試薬のX反応基(たとえば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)との抗体の反応性残基(たとえば、リジンアミノ残基)の反応は、抗体の1以上の反応性残基(たとえば、リジンアミノ残基)にてY反応基を含有するリンカーの取り込みを生じる。最初に修飾された抗体生成物は、次の工程が生じる前に、過剰なリンカー又は加水分解されたリンカー試薬から精製されなければならない。第2の工程では、Y反応基(たとえば、マレイミド又はハロアセトアミド)を含有するリンカーで修飾された抗体が、たと
えば、チオールのような反応基を含有するエフェクター基(C)(たとえば、細胞傷害剤)のようなエフェクターと反応して抗体/エフェクターの抱合体を生成し、それは、再び追加の精製工程にて精製される(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号又は同第5,024,834号を参照)。従って、上記製造過程では、少なくとも2つの精製工程を必要とする。
【0005】
抗体をエフェクター基又はリポーター基に抱合するのに2つの反応及び精製の工程が関与する別の方法は、抗体(たとえば、2−イミノチオランのようなチオール生成試薬による抗体の修飾を介して、又は非天然のシステイン残基を組み入れる突然変異誘発を介して、又は天然のジスルフィド結合の還元を介して生成される)におけるチオール残基の、Y反応基(たとえば、マレイミド又はハロアセトアミド)を含有するホモ2官能性リンカーY−L−Yとの反応を利用する。
【0006】
マレイミド(又はハロアセトアミド)のような反応基Yを抗体又はペプチドに組み入れる主な欠点は、反応性マレイミド(又はハロアセトアミド)基の、抗体又はペプチドにおける天然のヒスチジン、リジン、チロシン、又はシステイン残基との分子内又は分子間の反応を受ける傾向(Papini, A. et al., Int. J. Pept. Protein Res., 1992, 39, 348-355; Ueda, T. et al., Biochemistry, 1985, 24, 6316-6322)、及びYマレイミド基の水性の不活化である。抗体に取り込まれたマレイミド(又はハロアセトアミド)基Yの抗体における天然のヒスチジン、リジン又はシステイン残基との望ましくない分子内又は分子間の反応、及びエフェクター基又はリポーター基Cとの第2の反応の前のYマレイミド基の水性の不活化は、架橋タンパク質又は非均質抱合体を生じ、エフェクター基又はリポーター基Cとの第2の反応の効率を低下させる。最初に組み入れられたY基(たとえば、マレイミド基)の抗体又はペプチドにおける天然の基(たとえば、ヒスチジン、リジン、チロシン、又はシステイン)との望ましくない反応から、又は水性の不活化によって生成された不活性のマレイミド残基によって生成される非均質抱合体生成物/架橋タンパク質又はペプチドは、所望の均質抱合体生成物に比べて劣った活性及び安定性を有し得る。
【0007】
ジスルフィド結合を介してチオール含有の細胞傷害剤に抗体を抱合させる製造過程は以前記載されている(たとえば、米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、同第6,441,163号、米国特許公開第2007/0048314Al号を参照)。これらの製造過程には、ヘテロ2官能性試薬との抗体の第1の反応、その後のチオール含有の細胞傷害剤との第2の反応が関与する。代わりの方法は、米国特許第6,441,163Bl号に記載されており、先ず、細胞傷害剤のジスルフィド結合した反応性エステルを精製し、次いで抗体と反応させるが、それには、抗体との反応工程の前にチオール基含有の細胞傷害剤から出発する追加の反応及び精製工程が含まれる。
【0008】
細胞結合剤の抱合体を作製する現在の方法のさらなる欠点は、2つの精製工程の必要性であり、それは全体的な収率を低下させ、規模拡大するには製造過程を繁雑で不経済なものにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の見地から見て、実質的に高い純度であり、ユーザーにとっての時間とコストを軽減することによって繁雑な工程を回避して調製することができる、細胞結合剤/薬剤の抱合体組成物を調製する改善された方法を開発するニーズが当該技術分野に存在する。本発明はそのような方法を提供する。本発明のこれら及びそのほかの利点は、追加の発明の特徴と共に、本明細書で提供される発明の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、チオール含有の細胞傷害剤(たとえば、マイタンシノイド)のへテロ又はホモの2官能性試薬(たとえば、切断可能又は切断不能なリンカー)との直接反応を利用し、次いで未精製の反応混合物を細胞結合剤(たとえば、抗体又はその断片)と混合し、それによって、さらに効率的であり、高い収率を有し、規模拡大に適する製造過程により非還元性のチオール結合の抱合体を生成することによって、式C−L−CBAの非還元性のチオール結合の抱合体を調製する抱合方法を記載し、式中、Cはエフェクター又はリポーターの分子(たとえば、細胞傷害剤又は放射性標識)を表し、Lはリンカーであり、CBAは細胞結合剤(たとえば、抗体又はその断片)である。別の重要な利点は、そのような抱合方法によって、鎖間タンパク質架橋又は不活化残基(たとえば、マレイミド又はハロアセトアミド残基)を伴わずにチオエーテル結合の非還元性抱合体が得られることである。本出願に開示される新規の方法は、上記式で表される任意の抱合体の調製に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】マイタンシノイドDM1(又はDM4)とマレイミド−PEG−NHSリンカーの反応混合物による抗体の抱合を示す図である。
【図2】本発明に記載された方法を用いて調製したAb−(PEG−Mal)−DM4抱合体と従来の2工程方法を用いて調製した抱合体の還元SDS−PAGEを示す図である。各試料レーンは10μgのタンパク質を含有した;ゲルはクマシーブルーで染色した。レーン1及び2は分子量マーカーを含有した。レーン3はAb当たり6.1のDM4を伴う従来の2工程方法によって調製した抱合体を含有した。レーン4は本発明に記載された方法によって調製した抱合体を含有し、Ab当たり6.2のDM4を含有した。
【図3】本発明に記載された方法を用いて調製したAb−(PEG−Mal)−DM4抱合体と従来の2工程方法を用いて調製した抱合体のタンパク質LabChip電気泳動を示す図である。(A)Ab−(PEG−Mal)−DM4抱合体の還元条件下でのタンパク質LabChip電気泳動(Agilent2100Bioanalyzer/Agilent Protein 230キット)。レーン1:分子量マーカー;レーン2:本発明に記載された方法を用いて合成したAb−(PEG−Mal)−DM4、6.2D/Ab;レーン3:2工程方法を用いて調製したAb−(PEG−Mal)−DM4、6.1D/Ab;レーン4:非抱合Ab(各レーンでは0.24μgの総タンパク質)。上部マーカー、システムピーク及び下部マーカーのバンドは、キットから加えられた外部マーカーを表す。(B)タンパク質LabChip電気泳動からのタンパク質バンドの定量。
【図4】本発明に記載された方法を用いて調製したAb−(PEG−Mal)−DM4抱合体と従来の2工程方法を用いて調製した抱合体のMSを示す図である。(A)Ab当たり6.1のDM4を伴う従来の2工程方法によって調製した抱合体のMS。抱合体の有意な不均質性のためにMSのピークを上手く分割することができなかった。(B)本発明に記載された方法によって調製した抱合体のMSで、Ab当たり6.2のDM4を含有した。抱合体の均質性のために、MSピークは上手く分割された。
【図5】CanAg抗原を発現するCOLO205細胞への、抗体当たり6.7DM1を伴う抗CanAg抗体/PEG−Mal−DM1抱合体(本発明に記載された方法を用いて調製した)結合と、非修飾抗体の結合を示す図である。結合は蛍光単位で測定した。
【図6】CanAg抗原を発現するCOLO205細胞に向けた、抗体当たり6.7DM1を伴う抗CanAg抗体/PEG−Mal−DM1抱合体(本発明に記載された方法を用いて調製した)の試験管内細胞傷害性を示す図である。抱合体をCOLO205細胞に加え、抱合体との5日間の連続インキュベートの後、WST−8アッセイを用いて細胞の生存率を測定した。抱合体の特異性を明らかにする対照実験は、過剰の非抱合の抗CanAg抗体を用いて行い、標的癌細胞に向けた抱合体の結合と細胞傷害性を阻止した。
【図7】DM1(又はDM4)とマレイミド−スルホ−NHSリンカーの反応混合物による抗体の抱合を示す図である。
【図8】本発明に記載された方法を用いて調製したAb−(スルホ−Mal)−DM1抱合体と従来の2工程方法を用いて調製した抱合体の還元SDS−PAGEを示す図である。各試料レーンは10μgのタンパク質を含有した;ゲルはクマシーブルーで染色した。レーン1は分子量マーカーを含有した。レーン3と5は本発明に記載された方法によって調製した抱合体を含有し、それぞれ、Ab当たり3.6のDM1及び5.6のDM1を含有した。レーン2と4は従来の2工程方法によって調製した抱合体を含有し、それぞれ、Ab当たり4.0のDM1及び5.7のDM1を含有した。
【図9】本発明に記載された方法を用いて調製したAb−(スルホ−Mal)−DM1抱合体と従来の2工程方法を用いて調製した抱合体のタンパク質LabChip電気泳動を示す図である。(A)Ab−(スルホ−Mal)−DM1抱合体の還元条件下でのタンパク質LabChip電気泳動(Agilent2100Bioanalyzer/Agilent Protein 230キット)。レーン1:分子量マーカー;レーン2:非抱合Ab;レーン3:2工程抱合方法を用いて合成されたAb−スルホ−Mal−DM1、5.7D/Ab;レーン4:本発明に記載された方法を用いて合成したAb−スルホ−Mal−DM1、5.6D/Ab;ウェル当たり0.22gの総タンパク質を負荷した。上部マーカー、システムピーク及び下部マーカーのバンドは、キットから加えられた外部マーカーを表す(ウェル当たり0.24gの総タンパク質)。(B)タンパク質LabChip電気泳動からのタンパク質バンドの定量。
【図10】本発明に記載された方法を用いて調製した抗体−(スルホ−Mal)−DM1抱合体と従来の2工程方法を用いて調製した抱合体のLC−MSの比較を示す図である。(A)本発明に記載された方法を用いて調製した3。Ab当たり6のDM1/Abを伴う抱合体は、1〜6のDM1が持つ別々の抱合体ピークを伴った均質な抱合体を示す。(B)従来の2工程抱合方法によって調製したAb当たり4.0のDM1を伴う抱合体のMS。従来の2工程方法によって調製した抱合体のMSは抱合体、及び加水分解されたリンカー又は架橋されたリンカーを伴う抱合体(たとえば、2DM1にL、2L及び3Lが1つ加わった抱合体)に相当するピークを示すということは、非均質な生成物を示す。
【図11】CanAg抗原を発現するCOLO205細胞への、抗体当たり5.6のDM4を伴う抗CanAg抗体/スルホ−Mal−DM1抱合体(本発明に記載された方法を用いて調製した)の結合と、非修飾抗体の結合を示す図である。結合は蛍光単位で測定した。
【図12】CanAg抗原を発現するCOLO205細胞に向けた、抗体当たり5.6のDM4を伴う抗CanAg抗体/スルホ−Mal−DM1抱合体(本発明に記載された方法を用いて調製した)の試験管内細胞傷害性を示す図である。抱合体をCOLO205細胞に加え、抱合体との5日間の連続インキュベートの後、WST−8アッセイを用いて細胞の生存率を測定した。抱合体の特異性を明らかにする対照実験は、過剰の非抱合の抗CanAg抗体を用いて行い、標的癌財棒に向けた抱合体の結合と細胞傷害性を阻止した。
【図13】DM1(又はDM4)とスルホ−NHS SMCCリンカーの反応混合物による抗体の抱合体を示す図である。
【図14】本発明に記載された方法を用いて調製したAb−(SMCC)−DM1抱合体と従来の2工程方法を用いて調製した抱合体の還元SDS−PAGEを示す図である。各試料レーンは10μgの総タンパク質を含有した;ゲルはクマシーブルーで染色した。レーン1は分子量マーカーを含有し、レーン2は非抱合Abを含有し、レーン3はAb当たり3.1のDM1を伴う従来の2工程方法によって調製した抱合体を含有し、レーン4はAb当たり3.1のDM1を伴う本発明に記載された方法によって調製した抱合体を含有した。
【図15】本発明に記載された方法を用いて調製したAb−(SMCC)−DM1抱合体と従来の2工程方法を用いて調製した抱合体のタンパク質LabChip電気泳動を示す図である。A)Ab−SMCC−DM1抱合体の還元条件下でのタンパク質LabChip電気泳動(Agilent2100Bioanalyzer/Agilent Protein 230キット)。レーン1:分子量マーカー;レーン2:本発明に記載された方法を用いて合成したAb−SMCC−DM1、3.1D/Ab;レーン3:非抱合Ab;レーン4:2工程抱合方法を用いて合成されたAb−SMCC−DM1、3.1D/Ab(各レーンにおける0.24gの総タンパク質)。上部マーカー、システムピーク及び下部マーカーのバンドは、キットから加えられた外部マーカーを表す。(B)タンパク質LabChip電気泳動からのタンパク質バンドの定量。
【図16】本発明に記載された方法を用いて調製した抗体−(SMCC)−DM1抱合体と従来の2工程方法を用いて調製した抱合体のLC−MSの比較を示す図である。(A)Ab当たり3.1DM1を伴う逐次2工程法によって調製した抱合体のMS。主要な各抱合体ピークは、加水分解された及び架橋されたリンカーの断片の存在のためにそばのピークと関連している。(B)Ab当たり3.1のDM1を伴う本発明に記載された方法よって調製した抱合体のMS。抱合体の均質性のゆえにMSピークは上手く分割された。
【図17】従来の2工程法による抱合の間での鎖間架橋及びマレイミド不活化の提唱されたメカニズムを示す図である。
【図18】本発明に記載された方法を用い、及び抗体の抱合反応の前に4−マレイミド酪酸を用いて遊離のDM4チオールをクエンチして(最初のDM4+HNSスルホMalへテロ2官能性試薬のカップリング反応の後)、調製したAb−(スルホ−Mal)−DM4抱合体の還元型SDS−PAGEを示す図である。各試料は10μgのタンパク質を含有した;ゲルはクマシーブルーで染色した。レーン1と5は分子量マーカーを含有した。レーン2はAbのみを含有した。レーン3は追加の4−マレイミド酪酸なしで本発明に記載された方法によって調製した抱合体を含有した。レーン4は最初のDM4+HNSスルホMalへテロ2官能性試薬の後(抗体抱合工程の前)、4−マレイミド酪酸を添加して本発明に記載された方法によって調製した抱合体を含有した。
【図19】DM1(又はDM4)とSPDBリンカーの反応混合物を用いた抗体の十スルフィド結合抱合体の調製を示す図である。
【図20】DM1(又はDM4)とSPDB及びNHS−PEG−Mal双方の未精製の反応混合物による抗体の抱合を介した、ジスルフィド−及び切断不能なPEG−Malリンカー双方を伴った抗体/マイタンシノイドの抱合体の調製を示す図である。
【図21】ジスルフィド−及び切断不能なPEG−Malリンカー双方を伴った抗体/マイタンシノイドの抱合体(DM1又はDM4とSPDB及びNHS−PEG−Mal双方の未精製の反応混合物による抗体の抱合によって調製される)のMSを示す図である。
【図22】DM1(又はDM4)とSMCCリンカーの反応混合物による抗体の抱合を示す図である。
【図23】抗体当たり平均3.1のDM1を含有する、本発明に記載された方法によってSMCCを用いて調製した抗体−SMCC−DM1抱合体のMSを示す図である。
【図24】DM1(又はDM4)とSSNPBリンカーの反応混合物を用いた抗体のジスルフィド結合抱合体の調製を示す図である。
【図25】DM1(又はDM4)と、脂肪族直鎖炭素鎖を持つヘテロ2官能性リンカーの反応混合物による抗体の抱合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の特定の実施形態について今や詳細な参照が行われ、その例は添付の構造及び式にて説明される。本発明は列挙される実施形態と併せて説明される一方で、それらは本発明をそれら実施形態に限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。それに対して、本発明は、特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内に含まれてもよい代替物、改変物及び同等物すべてを網羅することが意図される。当業者は、本明細書で記載されるものと類似の又は同等の多数の方法及び物質を認識するであろうが
、それらは本発明の実施において使用され得る。
【0013】
本発明は、チオール含有のエフェクター基(たとえば、細胞傷害剤)又はリポーター基(たとえば、放射性標識)を細胞結合剤(たとえば、抗体)に抱合する新規の方法を記載するが、その際、チオール含有のエフェクター又はリポーターが先ず、有機溶媒、水性溶媒又は有機溶媒/水性溶媒の混合溶媒中にて2官能性のリンカー試薬と反応し、次いで有機溶媒、水性溶媒又は有機溶媒/水性溶媒の混合溶媒中にて未精製の反応混合物を細胞結合剤と反応させる。
【0014】
説明文の略語
スキーム及び実施例の説明に使用されている略語は以下のとおりである:
C=エフェクター基又はリポーター基(たとえば、細胞傷害剤又は放射性標識)
L=リンカー(切断可能又は切断不能なリンカー)
X=アミン反応基(たとえば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)、スルホ−NHSエステル、p−ニトロフェノールエステル、テトラフルオロスルホネートフェニルエステル、1−ヒドロキシ−2−ニトロ−ベンゼン−4−スルホン酸エステル)
Y=マレイミド又はハロアセトアミド(ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド)
は、反応性の混合ジスルフィド基(たとえば、2−ピリジルジチオ、4−ピリジルジチオ、2−ニトロ−ピリジルジチオ、5−ニトロ−ピリジルジチオ、2−カルボキシ−5−ニトロ−ピリジルジチオ)である
X’=アミド結合
Y’=チオエーテル(R−S−R’)又はセレノエーテル(R−Se−R’)結合
Y’=ジスルフィド(R−S−S−R’)結合
【0015】
本発明の一実施形態では、エフェクター分子又はリポーター分子との細胞結合剤のチオエーテル結合抱合体を調製する方法が記載され、該方法は、以下の工程:(a)水性溶媒、有機溶媒又は混合された有機/水性反応混合物にて式X−L−Yのヘテロ2官能性リンカーをチオール含有のエフェクター分子又はリポーター分子C(たとえば、マイタンシノイド又は放射性核種)と接触させて、式X−L−Y’−Cの中間体生成物を得ること;(b)未精製の反応混合物を、たとえば、抗体(Ab)のような細胞結合剤と混合して式Ab−(X’−L−Y’−C)の抱合体を生成すること、(式中、Lは置換又は非置換の直鎖、分枝鎖又は環状の1〜10の炭素原子を持つアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基、単純な又は置換されたアリール単位(アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、フルオロ、カルボキシ、スルホネート、ホスフェート、アミノ、カルボニル、ピペリジノから選択される置換基)、又はポリエチレングリコール含有の単位(好ましくは1〜500PEGスペーサー、又はさらに好ましくは1〜24のPEGスペーサー、又は一層さらに好ましくは2〜8のPEGスペーサー)であり;X及びYは、アミン又はチオール反応基、たとえば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、及びマレイミド又はハロアセトアミド)であり;Abは抗体であり;mは1〜20の整数であり;X’は抗体との反応の際、修飾されるX部位(たとえば、アミド結合)であり;Y’は、たとえば、エフェクター基又はリポーター基の細胞傷害剤又は放射性標識との反応の際、修飾されるY部位(たとえば、チオエーテル結合)である)、及び(c)接線流濾過、透析又はクロマトグラフィ(たとえば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ)又はそれらの組み合わせによって抱合体を精製することを含む。好ましくは、Yはマレイミド又はハロアセトアミドから選択されるチオール反応基である。好ましくは、Lは、1〜6の炭素を伴った直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は2〜8のPEGスペーサーである。好ましくは、Cは、マイタンシノイド、CC−1065類似体、タキサン、DNA結合剤、から選択される細胞傷害剤であり、さらに好ましくは、それはマイタンシノイドである。
【0016】
式1及び2によって表される本反応の順序:
X−L−Y+C→X−L−Y’−C (1)
Ab+X−L−Y’−C(反応1から未精製)→Ab(X’−L−Y’−C) (2)
は、中間体生成物X−L−Y’−Cの精製が関与しないので、抗体とそれをそのまま混合する(未精製の中間体生成物を抗体に加える、又は抗体を未精製の中間体生成物に加える)という利点を提供し、それによって繁雑な精製工程を排除するので方法が抱合に有利になる。重要なことに、従来の2工程法と精製順によって調製される抱合体で認められる鎖間タンパク質架橋又は不活化されたマレイミド残基とは対照的に、本方法によって鎖間タンパク質架橋又は不活化されたマレイミド残基を伴わない均質な抱合体が得られる。
【0017】
反応1は、水性溶媒、有機溶媒又は有機/水性反応混合物にて高い濃度のヘテロ2官能性リンカー、及びエフェクター基又はリポーター基Cで実施することができ、その結果、従来の2工程法と精製順によって調製される抱合体についての水性溶液での低い濃度に比べて速い反応速度を生じる。
【0018】
反応1で生成される中間体生成物X−L−Y’−Cは、適当に低いpHの水性溶媒、有機溶媒、又は混合した有機/水性混合物、又は凍結乾燥状態にて長い間、低温にて凍結状態で未精製のまま保存することができ、その後、約4〜9の高いpH値にて最終的な抱合反応のために抗体溶液と混合することができるので、この反応順の利便性に加えることができる。中間体生成物は、細胞結合剤と混合する前に、必要に応じて、有機溶媒又は水性緩衝液、又は有機溶媒と水性緩衝液の混合物で希釈することができる。用語「約」は、数字と併せて本明細書で使用されるとき、すべての数及びその小さな変動を含めてそのような数すべてを指すように理解されるべきである。中間体生成物X−L−Y’−Cの抗体との反応は、約4〜約pH9、好ましくは約5〜8.7のpH範囲、さらに好ましくは約635〜8.5のpH範囲、たとえば、pH9.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4及び8.5のようなpH値、その中でのpH範囲又はその小さな変動にて実施することができる。約6.5〜8.5の優先的なpH範囲での中間体生成物X−L−Y’−Cとの抗体の反応に使用される緩衝液は、このpH範囲のあたりでpK値を持つ緩衝液、たとえば、リン酸緩衝液及びHEPES緩衝液である。これらの好ましい緩衝液は、リンカーX(たとえば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)と反応することができる1級若しくは2級のアミノ基、又はそのほかの反応基を有するべきではない。
【0019】
最初の反応で、ヘテロ2官能性リンカーX−L−Yに対して化学量論的な又はやや過剰なCを用いて、未精製の混合物を抗体に加える前にY基(たとえば、マレイミド)すべてが確実に反応するようにする。クエンチ試薬(たとえば、4−マレイミド酪酸、3−マレイミドプロピオン酸、又はN−エチルマレイミド又はヨードアセトアミド又はヨードアセトアミドプロピオン酸)による最適な追加反応を行って、抗体と混合する前に未反応のCをクエンチして天然の抗体のジスルフィド結合とのチオールジスルフィドの望ましくない交換反応をできるだけ抑えることができる。極性の荷電したチオールのクエンチ試薬(たとえば、4−マレイミド酪酸又は3−マレイミドプロピオン酸)によるクエンチの際、過剰な未反応のCは、共有結合した抱合体から容易に分離することができる極性の荷電した付加体に変換される。任意で、精製前の最初の反応混合物2は、たとえば、アミノ基含有の求核試薬(たとえば、リジン、タウリン、ヒドロキシアミン)のような求核試薬で処理して未反応のリンカー(X−L−Y’−C)をクエンチする。
【0020】
マイタンシノイド(DMx)とヘテロ2官能性リンカーの未精製の最初の反応混合物と
の抗体の反応についての代替方法には、DMxとヘテロ2官能性リンカーの最初の反応混合物(DMx/リンカーの反応の完了時)を抗体と低いpH(pH約5)で混合し、次いで抱合反応のために緩衝液又は塩基を添加してpHを約6.5〜8.5に上げることが含まれる。
【0021】
この新しい方法は、細胞傷害性のマイタンシノイド薬剤との抗体抱合体の調製に適用される。反応順1〜2で概説されるこの方法を用いて調製される抗体/マイタンシノイドの抱合体は、還元型SDS−PAGE、タンパク質LabChip電気泳動及び質量分析に基づいて、従来の2工程法及び精製順によって調製した抱合体に比べて思いがけなく均質性に優れていた。反応順1〜2を含む本発明で記載される抱合方法はまた、中間体精製の工程を必要としないので、従来の2工程法よりも有意に好都合である。
【0022】
本発明の第2の実施形態では、エフェクター分子又はリポーター分子との細胞結合剤のチオエーテル結合抱合体を調製する方法が記載され、該方法は、以下の工程:(a)水性溶媒、有機溶媒又は混合された有機/水性反応混合物にて式X−L−Yのヘテロ2官能性リンカーをチオール又はアミンを含有するエフェクター基又はリポーター基C(たとえば、細胞傷害剤)と接触させて、式X−L−Y’−Cの中間体生成物を得ること;(b)水性溶液又は水性/有機混合物にて未精製の反応混合物を抗体と混合して式Ab−(Y’−L−Y’−C)の抱合体を生成すること(式中、Lは上記と同義であり、Yはチオール又はアミンの反応基、たとえば、マレイミド又はハロアセトアミド、又はN−ヒドロキシスクシンイミド又はスルホN−ヒドロキシスクシンイミドであり;Abは抗体であり;mは1〜20の整数であり;Y’は、抗体との反応の際、修飾されるY部位(たとえば、チオエーテル結合又はアミド結合)又は細胞傷害剤又はエフェクター基又はリポーター基との反応の際、修飾されるY部位(たとえば、チオエーテル結合又はアミド結合)である)、及び(c)接線流濾過、透析又はクロマトグラフィ(たとえば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ)又はそれらの組み合わせによって抱合体を精製することを含む。式3及び4で表される反応順:
Y−L−Y+C→Y−L−Y’−C (3)
Ab+Y−L−Y’−C(反応3から未精製)→Ab(Y’−L−Y’−C) (4)
は、中間体生成物Y−L−Y’−Cの精製を含まないので、抱合のために有利な方法である。
【0023】
第3の実施形態では、エフェクター分子又はリポーター分子との細胞結合剤のジスルフィド結合抱合体を調製する方法が記載され、それは以下の工程:(a)水性溶媒、有機溶媒又は混合された有機/水性反応混合物にてエフェクター基又はリポーター基C(たとえば、細胞傷害剤)に式X−L−Yのヘテロ2官能性リンカーを接触させて中間体生成物X−L−Y’−Cを得ること;(b)水性溶液又は水性/有機混合物にて未精製の反応混合物を抗体と混合して式Ab−(X’−L−Y’−C)の抱合体を生成すること(式中、Lは上記のとおりであり、Yは反応性ジスルフィド、たとえば、ピリジルジスルフィド又はニトロ−ピリジルジスルフィドであり、Xはアミン反応基、たとえば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル又はスルホN−ヒドロキシスクシンイミドエステルであり、Abは抗体であり;mは1〜20の整数であり;X’は抗体との反応の際、修飾されるX部位(たとえば、アミド結合)であり;Y’は細胞傷害剤又はエフェクター基又はリポーター基との反応の際、修飾されるY部位(ジスルフィド)である);及び(c)接線流濾過、透析又はクロマトグラフィ(たとえば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ)又はそれらの組み合わせによって抱合体を精製することを含む。反応順は式5及び6にて表される:
X−L−Yb+C→X−L−Y’−C (5)
Ab+X−L−Y’−C(反応5から未精製)→Ab−(X’−L−Y’−C)
(6)
【0024】
第4の実施形態では、2種類のリンカー、切断不能な(チオエーテル結合)及び切断可能な(ジスルフィド結合)リンカーを伴ったエフェクター基又はリポーター基との抗体の抱合体を調製する方法が記載され、それは以下の工程を含む:
(a)X−L−YとX−L−Yのリンカーを細胞傷害剤Cに接触させて式X−L−Y’−CとX−L−Y’−Cの中間体生成物を生成すること、(b)反応式7〜9に示すような順番で又は同時に、未精製の反応混合物を抗体と混合して、
X−L−Y+C→X−L−Y’−C (7)
X−L−Y+C→X−L−Y’−C (8)
Ab+X−L−Y’−C+X−L−Y’−C(反応7〜8から未精製)→Ab−(X’−L−Y’−C)(X’−L−Y’−C)m’ (9)
抱合体Ab−(X’−L−Y’−C)(X’−L−Y’−C)を提供すること(式中、X、L、Y’、C、Y’及びmは上記のとおりであり、m’は1〜20の整数である)、及び(c)接線流濾過、透析又はクロマトグラフィ(たとえば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ)又はそれらの組み合わせによって抱合体を精製すること。これら2つのリンカーエフェクター中間体(X−L−Y’−C及びX−L−Y’−C)は、種々の比率で異なった順にて(先ずX−L−Y’−C、次いでX−L−Y’−C又は先ずX−L−Y’−C、次いでX−L−Y’−C)精製せずに抗体と混合される。
【0025】
反応1、3、5及び7〜8は、水性溶媒、有機溶媒又は有機/水性反応混合物にて、高い濃度の2官能性リンカー(X−L−Y、X−L−Y又はY−L−Y)とエフェクター基又はリポーター基Cで実施することができ、その結果、従来の2工程法及び試薬の溶解性が限定される精製順によって調製される抱合体についての水性溶液での低い濃度に比べて速い反応速度を生じる。
【0026】
反応1、3、5及び7〜8にて生成される中間体生成物X−L−Y’−C、Y−L−Y’−C又はX−L−Y’−Cは、低いpHの水性溶媒、有機溶媒、又は混合した有機/水性混合物、又は凍結乾燥状態にて長い間、低温にて凍結状態で未精製のまま保存することができ、その後、最初の抱合体反応のために抗体溶液に加えることができるので、この反応順の利便性に加えることができる。
【0027】
最初の反応で、ヘテロ2官能性リンカーX−L−Y、はY−L−Y又はX−L−Yに対して化学量論的な又はやや過剰なCを用いて、未精製の混合物を抗体に加える前にY基(たとえば、マレイミド)すべてが確実に反応するようにする。クエンチ試薬(たとえば、4−マレイミド酪酸、3−マレイミドプロピオン酸、又はN−エチルマレイミド又はヨードアセトアミド又はヨード酢酸)による最適な追加処理を行って、抗体に添加する前にCにおける未反応基(たとえばチオール)をクエンチして天然の抗体のジスルフィド結合との望ましくないチオールジスルフィド交換反応をできるだけ抑えることを保証することができる。2官能性リンカーとのCの最初の反応後、荷電した極性のチオールクエンチ試薬を用いた過剰なCのクエンチは、過剰なCを高度に極性の水溶性付加体に変換し、それは、ゲル濾過、透析又はTFFによって、共有結合した抱合体から容易に分離される。最終的な抱合体生成物は非共有結合で会合したCを含有しない。任意で、精製前に、最終反応混合物2、4、6及び9をたとえば、アミノ基含有の求核試薬(たとえば、リジン、タウリン、ヒドロキシルアミン)のような求核試薬で処理して未反応のリンカー(X−L−Y’−C、Y−L−Y’−C又はX−L−Y’−C)をクエンチする。
【0028】
DMxと2官能性リンカーの未精製の最初の反応混合物との抗体の反応の代替方法には、DMxとヘテロ2官能性リンカーの最初の反応混合物(DMx/リンカーの反応の完了
時)を抗体と低いpH(pH約5)で混合し、次いで抱合反応のために緩衝液又は塩基を添加してpHを約6.5〜8.5に上げることが含まれる。
【0029】
2以上の異なったエフェクターに由来する2以上のリンカー/エフェクターの中間体を未精製のままで順番に又は同時に抗体に加えることによって1を超える種類のエフェクターの複数コピーを抗体に抱合させることができる。
エフェクター基
【0030】
用語エフェクター基又はエフェクター分子は相互交換可能に使用され、用語「エフェクター基」又は「エフェクター分子」は本明細書で使用されるとき、細胞傷害剤を含むものとする。特定の点では、エフェクター基又はエフェクター分子が種々の長さのスペーサーアームに連結されて立体障害の可能性を軽減することが望ましくてもよい。2以上の異なったエフェクターに由来する2以上のリンカー/エフェクターの中間体を未精製のままで順番に又は同時に抗体に加えることによって1を超える種類のエフェクターの複数コピーを抗体に抱合させることができる。
【0031】
本発明で使用することができる細胞傷害剤には、化学療法剤又は化学療法剤の構造的類似体が挙げられる。「化学療法剤」は癌の治療で有用な化合物である。化学療法剤の例には、たとえば、チオテパ及びサイクロホスファミド(CYTOXAN(商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなアルキルスルホネート類;ベンゾドパ、カルボクオン、メツレドパ及びウレドパのようなアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスファオルアミド及びトリメチロロメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(アドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドダスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW−2189及びCBI−TIMI);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロロナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、酸化メクロレタミン塩酸塩、メルファラン、ノバムブチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードのようなナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンのようなニトロソ尿素;たとえば、エネジン抗生剤(たとえば、カリケラミシン、特にカリケラミシンγ1及びカリケラミシンθ1、たとえば、Angew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186 (1994)を参照;ダイネミシンAを含むダイネミシン;エスペラミシン;同様にネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連するクロモタンパク質エネジン抗生剤クロモモルフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン;クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、ニトロマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、プロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシンのような抗生剤;たとえば、メソトレキセート及び5−フルオロ裏質(5−FU)のような抗代謝薬;葉酸類似体、たとえば、デノプテリン、メソトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類縁体、たとえば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、たとえば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフ
ァ、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フルオクスウリジン、5−FU;アンドロゲン、たとえば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬、たとえば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充薬、たとえば、フォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキセート;デフォファミド;ジアジクオン;エルフォミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;マイタンシノイド類、たとえば、マイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジン;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2、2’、2”−トリクロロトリエチルアミン;トリクロテセン(特にT−2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);サイクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類、たとえば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ニュージャージー州、プリンストンのブリストルマイヤーズスクイブオンコロジー)及びドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、フランス、アントニーのローヌプーラン);クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メソトレキセート;白金類似体、たとえば、シスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロミチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン;並びに上記の薬学上許容可能な塩、酸、又は誘導体が挙げられる。この定義で挙げられるのはまた、腫瘍におけるホルモンの作用を調節する又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、たとえば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害の4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン、並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、レウプロリド及びゴセレリンのような抗アンドロゲン;siRNA並びに上記の薬学上許容可能な塩、酸、又は誘導体である。本発明と共に使用することができるそのほかの化学療法剤は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許公開第20080171040号及び同第20080305044号に開示されている。
【0032】
好ましい実施形態では、化学療法の細胞傷害剤は、本質的に小分子の細胞傷害剤である。「小分子の薬剤」は本明細書で広く使用され、たとえば、100〜1500、さらに好適には120〜1200、好ましくは200〜1000の分子量を有してもよい、通常、約1000未満の分子量を有する有機、無機又は有機金属の化合物を指す。本発明の小分子の細胞傷害剤は、約1000未満の分子量を有するオリゴペプチド及びそのほかの生体分子を包含する。小分子の細胞傷害剤は、たとえば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられるWO05058367A2、欧州特許第85901495号及び同第8590319号、及び米国特許第4,956,303号のような当該技術で十分に性状分析されている。
【0033】
好ましい小分子の細胞傷害剤は、細胞結合剤に結合できるものである。本発明は、既知の細胞傷害剤並びに既知になってもよいものも含む。特に好ましい小分子の細胞傷害剤には細胞傷害剤が挙げられる。
【0034】
細胞傷害剤は、細胞の死を結果的に生じる、細胞死を誘導する、又は場合によっては細
胞の生存率を低下させる任意の化合物であってもよく、各細胞傷害剤はチオール部分を含む。
【0035】
好ましい細胞傷害剤は、マイタンシノイド化合物、タキサン化合物、CC−1065化合物、ダウノルビシン化合物及びドキソルビシン化合物、ピロロベンゾジアゼピン二量体、カリケアミシン、アウリスタチン、及びそれらの類似体及び誘導体であり、その一部は以下に記載される。
【0036】
必ずしも小分子ではない、たとえば、siRNAのようなそのほかの細胞傷害剤も、本発明の範囲内で熟考される。たとえば、オリゴヌクレオチドの修飾に一般に使用される方法(たとえば、米国特許公開第20050107325号及び同第20070213292号)によってsiRNAを本発明の架橋剤に連結することができる。従って、3’又は5’−ホスホロアミダイト形態でのsiRNAは、ヒドロキシル官能性を持つ架橋剤の一方の末端と反応してsiRNAと架橋剤の間にエステル結合を作る。同様に、末端アミノ基を持つ架橋剤とのsiRNAホスホロアミダイトの反応によってアミンを介したsiRNAへの架橋剤の結合を生じる。siRNAは、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許公開第20070275465号、同第20070213292号、同第20070185050号、同第20070161595号、同第20070054279号、同第20060287260号、同第20060035254号、同第20060008822号、同第20050288244号、同第20050176667に記載されている。
マイタンシノイド
【0037】
本発明で使用することができるマイタンシノイドは当該技術で周知であり、既知の方法に従って天然の供給源から単離することができ、又は既知の方法に従って合成で調製することができる。
【0038】
好適なマイタンシノイドの例には、マイタンシノール及びマイタンシノール類似体が挙げられる。好適なマイタンシノール類似体の例には、修飾された芳香族環を有するもの及びほかの位置で修飾を有するものが挙げられる。
【0039】
修飾された芳香族環を有するマイタンシノールの好適な類似体の具体例には、
(1)C−19のデクロロ(米国特許第4,256,746号)(アンサミトシンP2のLAH還元によって調製される);
(2)C−20ヒドロキシ(又はC−20デメチル)+/−C−19デクロロ(米国特許第4,361,650号及び同第4,307,016号)(Streptomyces若しくはActinomycesを用いた脱メチル化又はLAHを用いた脱塩素化によって調製される);
(3)C−20デメトキシ、C−20アシルオキシ(−OCOR)+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号)(塩化アシルを用いたアシル化によって調製される);
が挙げられる。
【0040】
ほかの位置に修飾を有するマイタンシノールの好適な類似体の具体例には、
(1)C−9SH(米国特許第4,424,219号)(H2S又はP2S5とのマイタンシノールの反応によって調製される);
(2)C−14アルコキシメチル(デメトキシ/CH2OR)(米国特許第4,331,598号);
(3)C−14ヒドロキシメチル又はアシルオキシメチル(CH2OH又はCH2OAc)(米国特許第4,450,254)(ノカルジアから調製される);
(4)C−15ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(Str
eptomycesによるマイタンシノールの変換によって調製される);
(5)C−15メトキシ(米国特許第4,313,946号)(Trewia nudifloraから単離される);
(6)C−18N−デメチル(米国特許第4,362,663号及び同第4,322,348号)(Streptomycesによるマイタンシノールの脱メチル化によって調製される);
(7)4,5−デオキシ(米国特許第4,371,533号)(マイタンシノールの三塩化チタン・LAH還元によって調製される)が挙げられる。
【0041】
本発明で有用なチオール含有のマイタンシノールの合成は、米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び米国特許出願第20040235840号に完全に開示されている。
【0042】
C−3位、C−14位、C−15位又はC−20位におけるチオール部分を持つマイタンシノイドはすべて有用であると期待される。C−3位が好ましく、マイタンシノールのC−3位が特に好ましい。好ましいのはまた、N−メチルアラニン含有のC−3チオール部分のマイタンシノイド及びN−メチルシステイン含有のC−3チオール部分のマイタンシノイド及びそれぞれの類似体である。
【0043】
本発明で有用なN−メチルアラニン含有のC−3チオール部分のマイタンシノイド誘導体の具体例は式M1、M2、M3、M6及びM7によって表される。
【0044】
【化1】

【0045】
式中。lは1〜10の整数であり、Mayはマイタンシノイドである。
【0046】
【化2】

【0047】
式中、R及びRは、H、CH又はCHCHであり、同一であっても異なっていてもよく;
mは0、1、2、又は3であり;
Mayはマイタンシノイドである。
【0048】
【化3】

【0049】
式中、nは3〜8の整数であり;
Mayはマイタンシノイドである。
【0050】
【化4】

【0051】
式中、lは1、2、又は3であり;
はCl又はHであり;
はH又はCHである。
【0052】
【化5】

【0053】
式中、
、R、R、Rは、H、CH又はCHCHであり、同一であっても異なっていてもよく;
mは0、1、2、又は3であり;
Mayはマイタンシノイドである。
【0054】
本発明で有用なN−メチルシステイン含有のC−3チオール部分のマイタンシノイド誘導体の具体例は、式M4及びM5によって表される。
【0055】
【化6】

【0056】
式中、
0は、1、2又は3であり;
pは、0〜10の整数であり;
Mayはマイタンシノイドである。
【0057】
【化7】

【0058】
式中、
0は、1、2又は3であり;
pは、0〜10の整数であり;
はCl又はHであり;
はH又はCHである。
【0059】
好ましいマイタンシノイドは、米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、同第6,333.410号、同第6,441,163号、同第6,716,821号;RE39,151号及び同第7,276,497号に記載されたものである。
タキサン類
【0060】
本発明に係る細胞傷害剤は、またタキサンであってもよい。
【0061】
本発明で使用することができるタキサンは、チオール部分を含有するように修飾されている。本発明で有用な一部のタキサンは以下に示す式T1を有する。
【0062】
【化8】

【0063】
好ましいタキソイドは、米国特許第6,340,701号、同第6,372,738号、同第6.436,931号、同第6,596,757号、同第6,706,708号、同第7,008,942号、同第7,217,819号及び同第7,276,499号に記載されたものである。
CC−1065類似体
【0064】
本発明に係る細胞傷害剤は、またCC−1065類似体であってもよい。
【0065】
本発明によれば、CC−1065類似体はサブユニットAとB又はサブユニットB−Cを含有する。好ましいCC−1065類似体は、米国特許第5,475,092号、同第5,595,499号、同第5,846,545号、同第6,534,660号、同第6,586,618号、同第6,756,397号及び同第7,049,316号に記載されたものである。
ダウノルビシン/ドキソルビシン類似体
【0066】
本発明に係る細胞傷害剤は、またダウノルビシン類似体又はドキソルビシン類似体であってもよい。
【0067】
本発明のダウノルビシン及びドキソルビシンの類似体は、チオール部分を含むように修飾することができる。本発明の修飾されたダウノルビシン/ドキソルビシン類似体は、チオール部分を有し、WO01/38318に記載されている。修飾されたダウノルビシン/ドキソルビシン類似体は、既知の方法(たとえば、米国特許第5,146,064号を参照)に従って合成することができる。
【0068】
アウリスタチンには、アウリスタチンE、アウリスタチンEB(AEB)、アウリスタチンEFP(AEFP)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)が挙げられ、米国特許第5,635,483号、Int.J.Oncol.15:367−72(1999);
Molecular Cancer Therapeutics,vol.3,No.8,pp.921−932(2004); 米国特許公開第11/134826号、米国特許公開第20060074008号、同第2006022925号に記載されている。
【0069】
本発明に係る細胞傷害剤には、当該技術(米国特許第7,049,311号、同第7,067,511号、同第6,951,853号、同第7,189,710号、同第6,884,799号、同第6,660,856号)で既知であるピロロベンゾジアゼピン二量体が挙げられる。
類似体及び誘導体
【0070】
細胞傷害剤の当業者は、本明細書で記載される細胞傷害剤のそれぞれは、得られる化合物が出発化合物の特異性及び/又は活性を依然として保持するような方法で修飾され得る
ことを容易に理解するであろう。当業者はまた、これらの化合物の多くが本明細書で記載される細胞傷害剤の代わりに使用され得ることも理解するであろう。従って。本発明の細胞傷害剤は、本明細書で記載される化合物の類似体及び誘導体を含む。
リポーター基
【0071】
用語リポーター基又はリポーター分子は相互交換可能に使用され、用語「リポーター基」又は「リポーター分子」は本明細書で使用されるとき、診断又は治療の目的で試薬の特異的な親和性部分によって特定の物質又は細胞に送達される物質を指し;例は放射性同位元素、常磁性造影剤及び抗癌剤である。種々の標識又はリポーター基は、癌患者における腫瘍の画像化応用、種々の疾患の診断用の免疫アッセイ応用、放射性の核種/リガンド抱合体を用いた癌療法、及び生物活性剤、たとえば、タンパク質、ペプチド及びオリゴヌクレイドの精製のためのアフィニティクロマトグラフィ応用で有用である。細胞結合剤と抱合される標識又はリポーター基には、蛍光色素分子、及びたとえば、ビオチンのようなアフィニティ標識が挙げられる。そのようなリポーター基の参照は、米国特許公開第2007/0092940に見い出すことができる。たとえば、ビオチン又はフルオレセインを含むリポーター基は、PEG抱合体部分にも連結することができる。多数の好適なリポーター基は、当該技術、たとえば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第4,152,411号及びHirschfeld米国特許第4,166,105号、米国特許第5,223,242号、米国特許第5,501,952号、米国特許公開第20090136940号で知られている。
リンカー
【0072】
抱合体は、試験管内の方法によって調製されてもよい。薬剤を細胞結合剤に連結するために、連結基を使用する。好適な連結基は当該技術で既知であり、切断不能なリンカー及び切断可能なリンカーが挙げられる。切断不能なリンカーは、安定な共有結合で細胞傷害剤を細胞結合剤に連結することが可能である化学部分である。切断不能なリンカーは酸誘導の切断、光誘導の切断、ペプチダーゼ誘導の切断、エステラーゼ誘導の切断、及びジスルフィド結合の切断に実質的に耐性である。切断不能なリンカーの例には、薬剤、リポーター基又は細胞結合剤との反応について、N−スクシンイミジルエステル、N−スルホスクシンイミジルエステル部分、マレイミド−又はハロアセチル系の部分を有するリンカーが挙げられる。マレイミド系部分を含む架橋試薬には、N−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、SMCCの「長鎖」類似体(LC−SMCC)であるN−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート)、κ−マレイミドウンデカンN−スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ−マレイミド酪酸N−スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε−マレイミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N−(α−マレイミドアセトキシ)−スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N−スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB)、及びN−(p−マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)が挙げられる。ハロアセチル系部分を含む架橋試薬には、N−スクシンイミジル−4−(ヨードアセチル)−アミノベンゾエート(SIAB)、N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、N−スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)及びN−スクシンイミジル3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)が挙げられる。
【0073】
切断不能なリンカーを形成するイオウ原子を欠くそのほかの架橋試薬も本発明の方法で使用することができる。そのようなリンカーはジカルボン酸系の部分に由来することができる。好適なジカルボン酸系の部分には、以下に示す一般式のα、ω−ジカルボン酸が挙げられる:
HOOC−X−Y−Z−COOH
式中、Xは2〜20の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基であり、Yは3〜10の炭素原子を有するシクロアルキル基又はシクロアルケニル基であり、Zは6〜10の炭素原子を有する置換若しくは非置換の芳香族基、又は置換若しくは非置換の複素環基であり、ヘテロ原子はN、O、又はSから選択され、l、m及びnが同時にすべてゼロではないという条件で、l、m及びnはそれぞれ0又は1である。
【0074】
本明細書で開示される切断不能なリンカーの多くは、米国特許公開第20050169933号で詳細に記載されている。
【0075】
切断可能なリンカーは、穏やかな条件下、すなわち、細胞傷害剤の活性に影響を及ぼさない条件下で切断することができるリンカーである。多数の既知のリンカーはこのカテゴリーに入り、以下に記載される。
【0076】
酸に不安定なリンカーは酸性pHで切断可能かリンカーである。たとえば、特定の細胞内区画、たとえば、エンドソーム及びリソソームは酸性pH(pH4〜5)を有し、酸に不安定なリンカーを切断するのに好適な条件を提供する。
【0077】
光に不安定なリンカーは、体表面及び光にアクセス可能な多数の体腔において有用である。さらに、赤外線は組織を貫通することができる。
【0078】
一部のリンカーはペプチダーゼによって切断することができる。細胞内又は細胞外では特定のリンカーだけが切断され易く、たとえば、Trouetら、79 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,626−629(1982),Umemotoら、43 Int.J.Cancer,677−684(1989)、及びリソソーム/加水分解酵素で切断可能なバリン/シトルリン結合(米国特許第6,214,345B1号)を参照のこと。さらに、ペプチドは、α−アミノ酸とペプチド結合から構成され、ペプチド結合は、1つのアミノ酸のカルボキシレートと2番目のアミノ酸のαアミノ基のあいだのアミド結合である。たとえば、カルボキシレートとリジンのε−アミノ基の間の結合のようなそのほかのアミド結合はペプチド結合ではないと理解され、切断不能であるとみなされる。
【0079】
一部のリンカーはエステラーゼによって切断することができる。再び、細胞内又は細胞外に存在するエステラーゼによって一部の特定のエステルだけが切断される。エステルはカルボン酸とアルコールの縮合によって形成される。単純なエステルは、たとえば、脂肪族アルコール及び小型の環状アルコール及び小型の芳香族アルコールのような単純なアルコールで生成されるエステルである。たとえば、エステル、マイタンシノールのアルコール成分は非常に大きくて複雑なので、本発明者らは、マイタンシンのC−3でのエステルを切断するエステラーゼはないことを見い出した。
【0080】
好ましい切断可能なリンカー分子には、たとえば、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(たとえば、Carlsson et al, Biochem. J, 173: 723-737(1978)を参照)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)(たとえば、米国特許第4,563,304号を参照)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)(たとえば、CAS登録番号341498−08−6を参照)、及びその全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第6,913,748号に記載されたもののような反応性架橋剤が挙げられる。
【0081】
本発明で使用することができるそのほかのリンカーには、荷電リンカー又は親水性リンカーが挙げられ、それぞれ、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願第12/433,604号及び同第12/433,668号に記載されている。
細胞結合剤
【0082】
本発明で使用される細胞結合剤は、癌細胞上の標的抗原に特異的に結合するタンパク質(たとえば、免疫グロブリン及び非免疫グロブリンタンパク質)である。これらの細胞結合剤には、
再表面化する抗体(米国特許第5,639,641号);
ヒト化抗体又は完全にヒトの抗体(ヒト化抗体又は完全にヒトの抗体は、huMy9−6、huB4、huC242、huN901、DS6、CD38、IGF−IR、CNTO95、B−B4、トラスツズマブ、ビバツズマブ、シブロツズマブ及びリツキシマブから選択されるが、これらに限定されない)(たとえば、米国特許第5,639,641号、同第5,665,357号及び同第7,342,110号、国際特許出願WO02/16,401号、米国特許公開第20060045877号、同第20060127407号、同第20050118183号、Pedersen et al, (1994) J. MoI. Biol. 235, 959-973, Roguska et al., (1994) Proceedings of the National Academy of Sciences, VoI
91, 969-973, Colomer et al., Cancer Invest., 19: 49-56 (2001), Heider et al, Eur. J. Cancer, 3 IA: 2385-2391 (1995), Welt et al., ./. Clin. Oncol, 12: 1193-1203 (1994), and Maloney et al., Blood, 90: 2188-2195 (1997)を参照);並びに
優先的に標的細胞に結合するsFv、Fab、Fab’及びF(ab’)2のような抗体断片(Parham, J. Immunol. 131 :2895-2902 (1983); Spring et al, J. Immunol. 113:470-478 (1974); Nisonoff et al, Λrc/z. Biochem. Biophys. 89:230-244 (I960))
を含む抗体が挙げられる。
【0083】
追加の細胞結合剤には、
アンキリン反復タンパク質(ARPins; Zahnd et al., J. Biol. Chem., 281, 46, 35167
-35175, (2006); Binz, H.K., Amstutz, P. & Pluckthun, A. (2005) Nature Biotechnology, 23, 1257-1268)又はたとえば、米国特許公開第20070238667号、米国特許第7,101,675号、WO/2007/147213,WO/2007/062466に記載されたアンキリン様反復タンパク質又は合成ペプチド;
インターフェロン(たとえば、α、β、γ);
リンホカイン、たとえば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6;
ホルモン、たとえば、インスリン、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)、MSH(色素形成細胞刺激ホルモン)、アンドロゲン及びエストロゲンのようなステロイドホルモン、並びに
増殖因子及びコロニー刺激因子、たとえば、EGF、TGF−α、IGF−I、G−CSF、M−CSF及びGM−CSF (Burgess, Immunology Today 5:155-158 (1984))によって例示されるが、これらに限定されないそのほかの細胞結合タンパク質及びポリペプチドが挙げられる。
【0084】
細胞結合剤が抗体である場合、それは、ポリペプチドであり、膜貫通分子(たとえば、受容体)であってもよく、又は増殖因子のようなリガンドであってもよい抗原に結合する。例となる抗原には、レニンのような分子;ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α1アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;たとえば、vmc因子、第IX因子、組織因子(TF)及びフォン・ヴィレブランド因子のような凝固因子;たとえば、プロテインCのような抗凝固因子;動脈ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;たとえば、ウロキナーゼ、ヒトの尿又は組織型のプラスミノーゲンアクチベータ(t−
PA)のようなプラスミノーゲンアクチベータ;トロンビン;造血増殖因子:腫瘍壊死因子α及びβ;エンケファリナーゼ;RANTES(発現された及び分泌された正常T細胞の活性化を調節する);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP−1α);たとえば、ヒト血清アルブミンのような血清アルブミン;ミュラー管阻害物質;レラキシンA鎖;レラキシンB鎖;プロレラキシン;マウス性腺刺激関連ペプチド;たとえば、β−ラクタマーゼのような微生物タンパク質;DNA分解酵素;IgE;たとえば、CTLA−4のような細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモン又は増殖因子のための受容体;プロテインA又はD;リウマチ因子;たとえば、骨由来の神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロピン−3、−4、−5又は−6(NT3、NT4、NT5又はNT6)のような神経栄養因子、又はNGF−βのような神経成長因子;血小板由来増殖因子(PDGF);たとえば、FGF及びbFGFのような線維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);たとえば、TGFβ1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、又はTGF−β5を含むTGFα及びTGFβのような形質転換増殖因子;インスリン様増殖因子−I及びII(IGF−I及びIGF−II);デス(1〜3)−IGF−I(脳IGF−I),インスリン様増殖因子結合タンパク質;たとえば、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20及びCD40のようなCDタンパク質;エリスロポイエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);たとえば、インターフェロンα、β及びγのようなインターフェロン;たとえば、M−CSF、GM−CSF、及びG−CSFのようなコロニー刺激因子(CSF);たとえば、IL−1〜IL−10のようなインターロイキン;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;分解促進因子;たとえば、HIVエンベロープの一部のようなウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節性タンパク質;たとえば、CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4及びVCAM、ヘテロ二量体ヒトインテグリン受容体のαVサブユニットのようなインテグリン;たとえば、HER2、HER3又はHER4受容体のような腫瘍関連抗原;並びに上記に列記されたポリペプチドの断片が挙げられる。
【0085】
本発明によって包含される抗体について好ましい抗原には、たとえば、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD34及びCD46のようなCDタンパク質;たとえば、RGF受容体、HER2、HER3又はHER4受容体のようなErbB受容体ファミリーのメンバー;たとえば、LFA−I、Macl、pl50.95、VLA−4、ICAM−I、VCAM、そのα又はβサブユニットを含むα4/β7インテグリン、及びαv/β3インテグリンのような接着分子(たとえば、抗CD−11a、抗CD−18又は抗CD−11b抗体);たとえば、VEGFのような増殖因子;組織因子(TF);TGF−β;αインターフェロン(α−IFN);IL−8のようなインターロイキン;血液型抗原Apo2、死の受容体;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA−4;プロテインC等が挙げられる。本明細書で最も好ましい標的は、IGF−IR、CanAg、EGF−R、EphA2、MUCl、MUC16、VEGF、TF、CD19、CD20、CD22、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD138、CA6、Her2/neu、CRIPTO(ヒト乳癌細胞の大半にて高いレベルで産生される)、αv/β3インテグリン、αv/β5インテグリン、TGF−β、CDlIa、CD18、Apo2及びC24である。
【0086】
モノクローナル抗体技術によってモノクローナル抗体の形態で細胞結合剤を作製することが可能である。当該技術で特に周知であるのは、たとえば、標的細胞、標的細胞から単離された抗原、ウイルス全体、弱毒化したウイルス全体、及びウイルスコートタンパク質のようなウイルスタンパク質のような当該抗原によってマウス、ラット、ハムスター又はそのほかの哺乳類を免疫することにより産生されるモノクローナル抗体を創製する技法である。感作したヒト細胞を使用することもできる。モノクローナル抗体を創製する別の方法は、sFv(短鎖可変領域)、特にヒトsFv(たとえば、Griffiths et al, U.S. pa
tent no. 5,885,793; McCafferty et al, WO 92/01047; Liming et al, WO 99/06587を参照)のファージライブラリの使用である。
【0087】
適切な細胞結合剤の選択は、標的とされるべき特定の細胞集団に左右される選択の問題であるが、一般に適切なものが入手可能であれば、標的細胞に優先的に結合するモノクローナル抗体及びその断片が好まれる。
【0088】
たとえば、モノクローナル抗体My9は、急性骨髄性白血病(AML)で見つかったCD33抗原に特異的であるマウスIgG2a抗体(Roy et al. Blood 77:2404-2412 (1991))であり、AML患者を治療するのに使用される。同様にモノクローナル抗体抗B4は、B細胞上のCD19抗原に結合し(Nadler et al, J. Immunol. 131 :244-250 (1983))、たとえば、標的細胞が、非ホジキンリンパ腫又は慢性リンパ性白血病でこの抗原を発現するB細胞又は冒された細胞である場合使用することができるマウスIgGである。同様に、抗体N901は、小細胞肺癌細胞及び神経内分泌起源のそのほかの腫瘍の細胞で見つかったCD56に結合するマウスのモノクローナルIgG抗体であり(Roy et al.
J Nat. Cancer Inst. 88:1136-1145 (1996))、hu242抗体はCanA抗原に結合し、トラスツズマブはHER2/neuに結合し、抗EGF受容体抗体は、EGF受容体に結合する。
精製方法
【0089】
本発明の抱合体、すなわち、最終生成物を精製して、未反応又は非抱合のエフェクター分子又はリポーター分子、又は未反応のリンカー、又は非抱合で加水分解されたリンカーを取り除く。精製方法は、接線流濾過(TFF、交差流濾過、限外濾過又は透析濾過としても知られる)、ゲル濾過、吸着クロマトグラフィ、選択的沈殿、又はこれらの組み合わせであり得る。吸着クロマトグラフィ法には、イオン交換クロマトグラフィ、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)、疎水性電荷誘導クロマトグラフィ(HCIC)、混合モードイオン交換クロマトグラフィ、不動化金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)、色素リガンドクロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、及び逆相クロマトグラフィが挙げられる。たとえば、式2で記載された抱合体Ab−(X’−L−Y’−C)は、未反応のC,又は未反応/加水分解されたX−L−Y又はX−L−Y’−Cから精製される。同様に式4、6及び9で記載された抱合体が精製される。そのような精製方法は当業者に既知であり、米国特許公開第2007/0048314号に見い出すことができる。
【0090】
抱合体における望ましくない加水分解されたリンカー又はタンパク質の架橋
反応性マレイミド残基又はハロアセトアミド残基とのヘテロ2官能性リンカーによるタンパク質の最初の反応を採用する従来の抱合方法は2つの主な欠点に悩まされている:(i)エフェクター分子又はリポーター分子との反応の前に、抗体に取り込まれたリンカーの水性不活性化のために抱合体生成物が加水分解されたリンカーから成る可能性がある;及び(ii)タンパク質又はペプチドにおける天然のヒスチジン、リジン、チロシン又はシステインとのマレイミド(又はハロアセトアミド)の反応のために、抱合体の鎖間又は鎖内の架橋(A. Papini et al., Int. J. Pept. Protein Res., 1992, 39, 348-355; T. Ueda et al., Biochemistry, 1985, 24, 6316-6322)。抗体におけるそのような鎖間架橋は結果的に、重鎖と軽鎖の間又は重鎖間に非還元性の共有結合を生じ、それらは、予想される重鎖及び軽鎖のバンドよりも高い分子量のバンドとして還元型SDS−PAGEで明らかになる。抗体におけるそのような鎖間又は鎖内の架橋はまた、予想される抗体プラス連結されたリポーター基又はエフェクター基の質量とは異なった異常な質量のピークとしてMSによって明らかになる。従来の抱合方法とは異なって、本出願に記載される方法は、鎖間架橋又は加水分解されたリンカーを実質的に伴わない高い均質性で抱合体を生じる。
【0091】
本明細書及び後に続く実施例で引用される文献はすべてその全体が参照によって明示的に本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0092】
説明のみのためである以下の実施例は本発明を限定することを意図するものではない。
【0093】
実施例1.この方法(図1)と従来の2工程法によるヘテロ2官能性リンカー、マレイミド−PEG−NHSを用いた細胞傷害剤、DM1/DM4による抗体の抱合
【0094】
DM1[N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−マイタンシン]又はDM4[N2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)−マイタンシン](DMx)チオール及びマレイミド−PEG−NHSのストック溶液は、30〜60mMの濃度にてN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)で作製した。50%までの200mMコハク酸緩衝液、2mMのEDTA、pH5を含有するDMAにてリンカーとDMxチオールを一緒に混合し、1.6:1のDMzとリンカーのモル比及び15mMに等しいDMxの最終濃度を得た。混合した後、反応混合物を1〜4時間放置し、次いで反応混合物のアリコートを10倍に希釈し、その吸収を302〜320nmにて測定して、マレイミドの吸光係数(ε)、302nm=620M−1cm−1及びε320nm〜450M−1cm−1を用いて残っている未反応のマレイミドの存在を判定した。(302nmと252nmでモニターする吸収によって、反応混合物の凍結アリコートの追加の逆相HPLC解析を後で行って、抗体に反応混合物を添加した時点でのリンカーマレイミドの完全な消失と所望のリンカー/DMx試薬の形成を検証した)。UVによってさらなるマレイミドが存在しなかった場合、4mg/mLのAb、90%のリン酸緩衝液/10%DMA、pH7.5という最終抱合条件下にてリン酸緩衝液(pH7.5)における抗体溶液に、反応混合物のアリコートを精製せずに加えた。抱合反応を常温にて2時間進めた。pH7.5のリン酸緩衝液で平衡化したG25ゲル濾過カラムを用いて、又は接線流濾過(TFF)を用いて過剰な小分子DMx及びリンカー反応物からAb−DMxの抱合体を精製した。pH7.5の緩衝液で抱合混合物を4℃にて2日間保持して、非共有結合で又は不安定な結合で抗体に結合したDMx種を解離させた。次いでpH5.5のヒスチジン/グリシン緩衝液で抱合体を一晩透析し、次いで最終保存のために0.22μmのフィルターで濾過した。252nmと280nmで抱合体の吸収を測定し、これら2つの波長でのDMxと抗体の既知の吸光係数を用いて最終的な抱合体における抗体分子(平均)当たりのDMx分子の数を測定した。
【0095】
ヘテロ2官能性マレイミド−PEG−NHS試薬とのDMxチオールの最初の反応に幾つかの異なった反応条件を用いた:50%DMA/50%水性200mMのコハク酸緩衝液pH5.0、2mMのEDTA(v/v);又は60%DMA/40%200mMコハク酸緩衝液pH5.0、2mMのEDTA(v/v);又はDM4チオールのモル当たり1.5モル当量の有機塩基(たとえば、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン、DIPEA又はA−メチルモルフォリン)を伴った100%DMA。
【0096】
実験のシリーズの1つでは、マレイミド−PEG−NHSリンカー(Pierce Endogenから購入)に対するDMxのモル当量を1.2〜2.4で変化させ、反応時間は30分間だった。精製された抱合体で測定したDMx/Abの数は、リンカー当たりのDMxの添加した当量の関数として測定した。1.2〜2.0当量のDM1/リンカーの条件が同様のDMx/Abの負荷を持つ抱合体を生じるということは、リンカーのNHSエステル部位でのDMxチオールの望ましくない反応が大きな問題ではないことを示している。還元型SDS−PAGEによって最終抱合体に存在する架橋の量を分析して、架橋の混入の存在が、DM1/リンカー比率の上昇と共に有意に低下することを示した。
【0097】
DMxとヘテロ2官能性リンカーの最初の反応の完了後(抗体に反応混合物を加える前)、マレイミド又はハロアセトアミド試薬(たとえば、マレイミド酪酸、マレイミドプロピオン酸、N−エチルマレイミド又はヨードアセトアミド又はヨード酢酸)を用いた任意のクエンチ工程を1つ導入して抗体とDMxチオールの望ましくない反応を防ぐために過剰なDMxチオール基をクエンチした。
【0098】
DMxとヘテロ2官能性リンカーの未精製の最初の反応混合物と抗体との反応の代替方法には、DMxとヘテロ2官能性リンカーの最初の反応混合物(DMx/リンカーの反応の完了時)を低いpH(pH約5)で抗体と混合し、次いで抱合反応のために緩衝液又は塩基を添加してpHを6.5〜6.8に上げることが含まれる。
【0099】
本発明で記載される抱合方法との比較のために、従来の2工程抱合方法によって抗体−PEG−Mal−DM1又はDM4の抱合体を作製した。pH7.5のリン酸緩衝液(50mMのリン酸カリウム、50mMの塩化ナトリウム、2mMのEDTA、pH7.5)と5%DMAにおける濃度8mg/mLのヒト化抗体を過剰なヘテロ2官能性マレイミド−PEG−NHSリンカー試薬(Pierce Endogenから購入)によって修飾した。25℃にて2時間後、修飾した抗体をG25クロマトグラフィでゲル精製して過剰な未反応で取り込まれなかったリンカーを取り除いた。280nmでのUVの吸収によって精製されたAbの回収を測定した。少量の修飾抗体アリコートを用いて、マレイミドに対して過剰に加えられる既知の量のチオール(たとえば、2−メルカプトエタノール)を添加して修飾抗体におけるマレイミド残基と反応させ、次いでDTNB試薬を用いたEllmanのアッセイによって残りのチオールを測定すること(412nmでのTNBチオレートの吸光係数は、14150M−1cm−1:Riddles, P. W. et al, Methods Enzymol., 1983, 91, 49-60; Singh, R., Bioconjugate Chem., 1994, 5, 348-351)によって、修飾された抗体における架橋マレイミド基の数を測定した。95%リン酸緩衝液(50mMのリン酸カリウム、50mMの塩化ナトリウム、2mMのEDTA、pH7.5)と5%DMAから成る反応混合物にて2.5mg/mLのAb濃度で修飾されたAbとDM1又はDM4チオールの抱合を行った。Ab上の連結されたマレイミドのモル当たり、1.7モル当量の過剰のDM1又はDM4チオールを加えた。25℃で一晩反応させた後、抱合体を0.22μmのフィルターで滅菌濾過し、リン酸緩衝液pH7.5(50mMのリン酸カリウム、50mMの塩化ナトリウム、2mMのEDTA、pH7.5)で平衡化したG25カラムによって過剰な未反応のDM1又はDM4からゲルで精製した。精製した抱合体をリン酸緩衝液pH7.5(50mMのリン酸カリウム、50mMの塩化ナトリウム、2mMのEDTA、pH7.5)にて4℃で2日間保持して、非共有結合で又は不安定な結合で抗体に結合したDM1種又はDM4種を解離させた。その後、ヒスチジン/グリシン緩衝液pH5.5(130mMのグリシン/10mMのヒスチジン、pH5.5)に対して抱合体を2日間透析し、0.22μmのフィルターを用いて滅菌濾過した。252nmと280nmにて抱合体の吸収を測定し、これら2つの波長でのDM1/DM4とAbについての既知の吸光係数を用いることによって最終的な抱合体におけるAb分子当たりのDM1又はDM4の分子の数を測定した。
【0100】
4〜12%のBisTrisゲル(Invitrogen)と共にNuPage電気泳動システムを用いて抱合体と抗体の試料で還元型SDS−PAGEを行った。熱変性し、還元した試料を10μg/レーンで負荷した。本発明で記載された方法を用いて調製した抱合体の還元型SDS−PAGEは、主なバンドとして予想される重鎖と軽鎖のバンド(それぞれ50kDaと25kDa)のみを示した(図2)。それに対して、従来の2工程抱合方法によって調製した抱合体は、75、100、125及び150kDaの分子量を持つ望ましくない架橋バンドを示したが、それらは多分、それぞれ、鎖間架橋種、HL、H、HL及びHに相当する(図2)。
【0101】
本発明で記載された方法を用いて調製した抗体−PEG−Mal−DM4抱合体のタンパク質LabChip電気泳動解析(還元条件下)は、(総タンパク質の)58%及び30%の予想された重鎖バンド及び軽鎖バンドを示したが、それらは、それぞれ、65%及び30%の非抱合抗体についてのものに類似する(図3)。それに対して、従来の2工程抱合方法を用いて調製した抱合体は、それぞれ、たった16%及び8%の重鎖バンド及び軽鎖バンドしか示さず、主要なバンドは多分鎖間架橋による94〜169kDaに及ぶ高い分子量のものだった。定量的なタンパク質LabChip解析に基づいて、本出願で記載された方法によって調製した抱合体は、従来の2工程法を用いて調製したものよりも高度に優れている(図3)。
【0102】
本発明で記載された方法によって調製した抱合体のMS分析は、抗体分子当たり多くのマイタンシノイド分子を持つ抗体についての別々のDMx/抗体抱合体のピークを示した(図4)。それに対して、従来の2工程法を用いて得られた抱合体のMS分析は、ほとんど解像されなかったということは、多分、架橋している又は不活性化されたマレイミドリンカーによる抱合体調製物の非均一性を示唆している。従って、MSに基づいて、本発明で記載された方法を用いて調製した抱合体は、従来の2工程法によって合成されたものよりも優れている。
【0103】
抗原を発現しているCOLO205細胞を用いてフローサイトメトリーによって、本発明で記載された方法によって調製した抗CanAg抗体−PEG−Mal−DM1抱合体の結合を測定し、非抱合の抗体のそれと類似していることが分かったということは、抱合体が、抗体の結合に有害な効果を有さなかったことを示唆している(図5)。CanAg抗原を発現しているCOLO205結腸癌細胞を用いて試験管内で、本発明で記載された方法によって調製した抗CanAg抗体−PEG−Mal−DM1抱合体の細胞傷害性活性を測定した(図6)。ウシ胎児血清を含有する細胞培養培地にて96穴プレートに約1000個/ウェルで抗原発現癌細胞を入れ、種々の濃度のAb−DMx抱合体に暴露した。抱合体への暴露の5日後、WST−8アッセイ(Dojindo Molecular Technologies)を用いて各ウェルに残っている生細胞を測定した。図6に示されるように、本方法を用いて調製した抗CanAg抗体−PEG−Mal−DM1抱合体は、CanAg抗原を発現するCOLO205結腸癌細胞に対して低濃度で高度に強力だった。本発明で記載された方法によって調製した抗CanAg抗体−PEG−Mal−DM1抱合体の細胞傷害性は、過剰の非抱合抗体の添加によって阻止することができたので、COLO205細胞に特異的だった。
【0104】
実施例2.この方法(図7)と従来の逐次2工程法によるマレイミド−スルホ−NHSリンカーを用いたDM1/DM4による抗体の抱合
30〜60mMの濃度でN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)にてDMxチオール及びマレイミド−スルホ−NHS−ヘテロ2官能性リンカーのストック溶液を作製した。40%v/vまでの200mMのコハク酸緩衝液、2mMのEDTA、pH5.0を含有するDMAにてリンカーとDMxチオールを一緒に混合して1.6のDMxとリンカーの比率と15mMに等しいDMxの最終濃度を得た。混合した後、反応物を1〜4時間放置し、次いで反応混合物のアリコートを10倍に希釈して、反応の完了とマレイミドの非存在を評価するために302〜320nmで吸収を測定した(302nmと252nmでモニターする吸収によって、反応混合物の凍結アリコートの追加の逆相HPLC解析を後で行って、抗体に反応混合物を添加した時点でのリンカーマレイミドの完全な消失と所望のリンカー/DMx試薬の形成を検証した)。UVによってさらなるマレイミドが存在しなかった場合、4mg/mLのAb、90%のリン酸緩衝液/10%DMA、pH7.5という最終抱合条件下にてリン酸緩衝液(pH7.5)における抗体の混合物に、反応混合物のアリコートを加えた。抱合反応を常温にて2時間進めた。pH7.5のリン酸緩衝液
で平衡化したG25ゲル濾過カラムを用いて、又は接線流濾過によって過剰な未反応のDMx及び非抱合のリンカー生成物からAb−DMxの抱合体を精製した。pH7.5の緩衝液で抱合混合物を4℃にて2日間保持して、非共有結合で又は不安定な結合で抗体に結合したDMx種を解離させた。次いでpH5.5のヒスチジン/グリシン緩衝液で抱合体を一晩透析し、次いで最終保存のために0.22μmのフィルターで濾過した。252nmと280nmで抱合体の吸収を測定し、これら2つの波長でのDMxと抗体の既知の吸光係数を用いて最終的な抱合体における抗体分子(平均)当たりのDMx分子の数を測定した。
【0105】
比較のために、従来の2工程抱合方法を用いてAb−スルホ−Mal−DMx抱合体を調製した。pH7.5のリン酸緩衝液/5%DMAにおける濃度8mg/mLの抗体(Ab)を過剰なヘテロ2官能性マレイミド−スルホ−NHSリンカーによって修飾した。20℃にて2時間反応を進め、次いでG25クロマトグラフィを用いて過剰な未反応のリンカーから修飾されたAbを精製した。280nmでのUV吸収によって精製されたAbの回収を測定した。少量の修飾抗体アリコートを用いて、マレイミドに対して過剰に加えられる既知の量のチオール(たとえば、2−メルカプトエタノール)を添加して修飾抗体におけるマレイミド残基と反応させ、次いでDTNB試薬を用いたEllmanのアッセイによって残りのチオールを測定すること(412nmでのTNBチオレートの吸光係数は、14150M−1cm−1:Riddles, P. W. et al, Methods Enzymol., 1983, 91, 49-60; Singh, R., Bioconjugate Chem., 1994, 5, 348-351)によって、修飾されたAbにおける架橋マレイミド基の数を測定した。95%リン酸緩衝液と5%DMAにおける2.5mg/mLの抗体濃度で、Abにおける架橋マレイミドのモル当たり添加された1.7モル当量の過剰のDMxと共に、修飾されたAbとDMxの抱合を行った。反応物を18℃にて8〜24時間放置し、G25サイズ排除クロマトグラフィによって過剰で未反応のDMxから抱合体を分離した。精製後、抱合体をpH7.5の緩衝液中で4℃にて2日間保持して、非共有結合で又は不安定な結合で抗体に結合したDMx種を解離させた。その後、ヒスチジン/グリシン緩衝液pH5.5に対して抱合体を一晩透析し、次いで最終保存のために0.22μmのフィルターを介して濾過した。252nmと280nmにて抱合体の吸収を測定し、これら2つの波長でのDMxと抗体についての既知の吸光係数を用いることによって最終的な抱合体におけるAb分子当たりのDMxの分子の数を測定した。
【0106】
NuPage4〜12%、BisTrisミニゲル及びNuPAGEMOPS−SDS泳動緩衝液を伴ったNuPage電気泳動システム(Invitrogen)を用いて抱合体と抗体の試料(10μg/レーン)を用いた還元型SDS−PAGEを行った(図8)。分子量75、125及び150kDaでのゲル上のバンドは、鎖間架橋種(それぞれHL、HL及びH)を示した。〜4DM1/Abを持つAb−スルホ−Mal−DM1抱合体(それぞれ、本方法によるレーン3、及び従来の2工程抱合方法によるレーン3)と〜6DM1/Abを持つもの(それぞれ、本方法によるレーン5、及び従来の2工程抱合方法によるレーン4)の比較は、本発明で記載された方法によって作製された抱合体(レーン3と5)は、従来の2工程法によって作製された抱合体(レーン2と4)よりも高分子量架橋種の比率がはるかに少ないことを明らかに示している。
【0107】
本発明で記載された方法を用いて調製した抗体−スルホ−Mal−DM1抱合体のタンパク質LabChip電気泳動解析(還元条件下)は、(総タンパク質の)70%及び28%の比率で予想された重鎖及び軽鎖の主要バンドを示したが、それらは、それぞれ、65%及び30%の非抱合抗体についてのものに類似する(図9)。それに対して、従来の2工程抱合方法を用いて調製した抱合体は、それぞれ、たった53%及び23%の重鎖バンド及び軽鎖バンドしか示さず、主要なバンドは多分鎖間架橋による99〜152kDaに及ぶ高い分子量のものだった。定量的なタンパク質LabChip解析に基づいて、本
出願で記載された方法によって調製した抱合体は、従来の2工程法を用いて調製したものに比べて、鎖間架橋の欠如という点ではるかに優れている(図9)。
【0108】
サイズ排除LC/MS分析によって、本発明に記載された方法により作製された類似薬剤負荷を伴ったAb−スルホ−Mal−DM1抱合体と従来の2工程法によるものを比較した(図10)。本発明に記載された方法により作製された抱合体は、Ab−(リンカー−DMx)に等しい質量を持つピークの予想された分布のみを含有する所望のMSスペクトルを示す。従来の2工程法を用いて作製された抱合体の場合、スペクトルにおける主要ピークはすべて、所望のAb−(リンカー−DMx)部分に加えて、1以上の加水分解された又は架橋されたリンカー断片を含有する。従来の2工程反応の順序におけるマレイミドの鎖間架橋又は水性不活化の推定上のメカニズムを図17に示すが、それによれば、ヘテロ2官能性リンカーとの抗体の最初の反応から取り込まれたマレイミド(又はハロアセトアミド)残基が、分子内(又は分子間)のヒスチジン、リジン、チロシン又はシステイン残基と反応し、その結果、鎖間架橋を生じ得る、又は最初に取り込まれたマレイミド(又はハロアセトアミド)残基が、不活化する(たとえば、加水分解的マレイミド環の切断若しくはマレイミドへの水性添加によって)ので、チオールを持ったエフェクター基若しくはリポーター基との迅速な反応に利用できなくなり得る。従って、LC−MS分析は、本発明で記載された方法が、抗体に結合する加水分解された又は架橋されたリンカーをほとんど含まない又は含まない均質な抱合体を産生する利点を有することを明らかに示す。
【0109】
抗原を発現しているCOLO205細胞を用いてフローサイトメトリーによって、本発明で記載された方法によって調製した、抗体分子(平均)当たり5.6のマイタンシノイド負荷を持った抗CanAg抗体−スルホ−Mal−DM1抱合体の結合を測定し、非抱合の抗体のそれと類似していることが分かったということは、抱合体が、抗体の標的抗原への結合に影響をおよぼさなかったことを示唆している(図11)。CanAg抗原を発現しているCOLO205結腸癌細胞を用いて試験管内で、本発明で記載された方法によって調製した抗CanAg抗体−スルホ−Mal−DM1抱合体の細胞傷害性活性を測定した(図12)。ウシ胎児血清を含有する細胞培養培地にて96穴プレートに約1000個/ウェルで抗原発現癌細胞を入れ、種々の濃度のAb−DMx抱合体に暴露した。抱合体への暴露の5日後、WST−8アッセイ(Dojindo Molecular Technologies)を用いて、残っている生細胞を測定した。図12に示されるように、本方法を用いて調製した抗CanAg抗体−スルホ−Mal−DM1抱合体は、CanAg抗原を発現するCOLO205結腸癌細胞に対して低濃度で高度に強力だった。この抱合体の細胞傷害性は、過剰の非抱合抗体との競合によって阻止され得たので、特異的だった。
【0110】
本発明に記載された方法を用いた抱合の代替方法は、DMxとヘテロ2官能性リンカーの最初の反応の完了後(抗体に反応混合物を加える前)、マレイミド又はハロアセトアミド試薬(たとえば、4−マレイミド酪酸、3−マレイミドプロピオン酸、N−エチルマレイミド又はヨードアセトアミド又はヨード酢酸)を用いた任意のクエンチ工程を含んで、抗体とDMxチオールの望ましくない反応を防ぐために過剰なDMxチオール基をクエンチした。具体例では、DMxとヘテロ2官能性リンカーの最初の反応の完了後(抗体に反応混合物を加える前)、4−マレイミド酪酸を加えて、抱合反応の間、抗体とDMxチオールの望ましくない反応を防ぐために過剰なDMxチオール基をクエンチした。過剰なDM4(3mM)を含有するDM4とスルホ−Mal−NHSへテロ2官能性試薬の反応混合物に、へテロ2官能性試薬のマレイミド基への所望のDM4チオールのカップリングの完了の際、2倍モル過剰の4−マレイミド酪酸を常温で20分間反応混合物に加えて、最初のカップリング反応から残ったDM4をクエンチした。反応混合物を精製することなく、4mg/mLのAb、90%の水性リン酸緩衝液/10%DMA、(pH7.5)とい
う最終抱合条件下にてリン酸緩衝液(pH7.5)の抗体溶液とアリコートを混合した。常温にて2時間、抱合反応を進めた。pH7.5のリン酸緩衝液で平衡化したG25ゲル濾過を用いて過剰の小分子DM4とリンカー反応物から抗体/DM4の抱合体を精製した。pH7.5の緩衝液で抱合混合物を4℃にて2日間保持して、非共有結合で又は不安定な結合で抗体に結合したDMx種を解離させた。次いでpH5.5のヒスチジン/グリシン緩衝液で抱合体を一晩透析し、次いで最終保存のために0.22μmのフィルターで濾過した。252nmと280nmで抱合体の吸収を測定し、これら2つの波長でのDM4と抗体の既知の吸光係数を用いて最終的な抱合体における抗体分子当たりのDM4分子の平均数を測定した。4〜12%のBisTrisゲル(Invitrogen)と共にNuPage電気泳動システムを用いた非還元型SDS−PAGEによって抱合体試料を解析した。熱変性した試料を10μg/レーンで負荷した。本発明で記載された方法を用い(クエンチなしで)調製した抱合体の非還元型SDS−PAGEは、軽鎖バンド(約25kDa)と半々抗体バンド(重鎖−軽鎖;約75kDa)の証拠を示した(図18)。他方、本発明で記載された方法で調製し、4−マレイミド酪酸で処理した(過剰のDMxチオールを覆った)抱合体は、有意に低い量のこれら望ましくないバンドを有した(未修飾の抗体試料に匹敵するレベル)。4−マレイミド酪酸のようなチオールのクエンチ剤によるDMxとヘテロ2官能性リンカーの最初の反応(抗体との抱合の前)のクエンチの別の利点は、抗体の抱合反応の間、「遊離の」DMx種(DM1又はDM4)がないので、精製後の最終抱合体が「遊離の」又は非抱合のDMx種を含有しないことである。4−マレイミド酪酸(又はそのほかの極性のチオールクエンチ試薬)とのDMx付加体はDMxよりも水溶性なので、共有結合した抗体/DMxの抱合体からさらに分離し易い。
【0111】
実施例3.スルホ−NHS−SMCCリンカー(図13)を用いたマイタンシノイド(DM1/DM4)による抗体の抱合
30〜60mMの濃度でDMAにて、DM1又はDM4チオール(DMx)及びスルホ−NHS基を伴ったスルホ−SMCCへテロ2官能性リンカー(Pierce Endogenから購入、図13)のストック溶液を作製した。40%v/vまでの水性200mMのコハク酸緩衝液、2mMのEDTA、pH5.0を含有するDMAにてリンカーとDM1又はDM4チオールを一緒に混合して1.6:1のDM1又はDM4(DMx)とリンカーの比率と6mMの最終濃度を得た。混合した後、反応物を常温で1〜4時間放置し、次いで反応混合物のアリコートを10倍に希釈して、マレイミドがすべて反応したかどうかを評価するために302〜320nmで吸収を測定した(302nmと252nmでモニターする吸収によって、反応混合物の凍結アリコートの追加の逆相HPLC解析を後で行って、抗体に反応混合物を添加した時点でのリンカーマレイミドの完全な消失と所望のスルホ−NHS−リンカー−Mal−DMx試薬の形成を検証した)。UVによってさらなるマレイミドが存在しなかった場合、4mg/mLのAb、90%のリン酸緩衝液/10%DMA、pH7.5という最終抱合条件下にてリン酸緩衝液(pH7.5)における抗体の水溶液に、反応物のアリコートを加えた。抱合反応を常温にて2時間進めた。pH7.5のリン酸緩衝液(水性)で平衡化したG25ゲル濾過カラムを用いて、過剰な未反応試薬と過剰なDMxからAb−DMxの抱合体を精製した。pH7.5の緩衝液で抱合体を4℃にて2日間保持して、非共有結合で又は不安定な結合で抗体に結合したDMx種を解離させた。次いでpH5.5のヒスチジン/グリシン緩衝液で抱合体を一晩透析し、次いで最終保存のために0.22μmのフィルターで濾過した。252nmと280nmで抱合体の吸収を測定し、これら2つの波長でのDMxと抗体の既知の吸光係数を用いて最終的な抱合体における抗体分子当たりのDMx分子の数を測定した。
【0112】
比較のために、従来の2工程抱合方法を用いてAb−SMCC−DMx抱合体を調製した。スルホ−NHS基を持つ過剰なヘテロ2官能性スルホ−SMCCリンカー(Pierce Endogenから購入)によって、95%pH6.5のリン酸緩衝液/5%DMAにおける濃度8mg/mLの抗体(Ab)を修飾した。25℃にて2時間、反応を進行
させた後、G25クロマトグラフィを用いて、修飾した抗体を過剰な未反応リンカーから精製した。精製されたAbの回収を280nmでのUVの吸収によって測定した。少量の修飾抗体アリコートを用いて、マレイミドに対して過剰に加えられる既知の量のチオール(たとえば、2−メルカプトエタノール)を添加して修飾抗体におけるマレイミド残基と反応させ、次いでDTNBを用いたEllmanのアッセイによって残りのチオールを測定すること(412nmでのTNBチオレートの吸光係数は、14150M−1cm−1:Riddles, P. W. et al, Methods Enzymol., 1983, 91, 49-60; Singh, R., Bioconjugate Chem., 1994, 5, 348-351)によって、修飾された抗体における結合したマレイミド基の数を測定した。95%のpH6.5リン酸緩衝液/5%DMAにおける2.5mg/mLの抗体濃度にて、修飾されたAbのDM1又はDM4チオールによる抱合を行い、Abにて結合したマレイミドのモル当たり、1.7モル当量のDM1又はDM4チオールを加えた。18℃で8〜24時間放置し、G25クロマトグラフィを介して過剰で未反応のDM1(又はDM4)から抱合体を分離した。精製後、pH6.5の緩衝液にて4℃で2日間、抱合体を保持し、弱く結合したDM1/DM4種を加水分解させた。その後、ヒスチジン/グリシン緩衝液pH5.5に対して抱合体を一晩透析し、最終保存のために0.22μmのフィルターで濾過した。252nmと280nmにて抱合体の吸収を測定し、これら2つの波長でのDM1/DM4とAbについての既知の吸光係数を用いることによって最終的な抱合体におけるAb分子当たりのDM1又はDM4の分子の数を測定した。
【0113】
NuPage4〜12%、BisTrisミニゲル及びNuPAGEMOPS−SDS泳動緩衝液を伴ったNuPage電気泳動システム(Invitrogen)を用いて抱合体と抗体の試料(10μg/レーン)にて還元型SDS−PAGEを行った(図14)。分子量75、125及び150kDaでのゲル上のバンドは、鎖間架橋種(それぞれHL、HL及びH)を示した。3.1D/Abを伴ったAbーSMCC−DM1抱合体(それぞれ本方法によるレーン4、及び従来の2工程法によるレーン3)の比較は、本発明に記載された方法を介して作製された抱合体(レーン4)の方が、従来の2工程法によって作製された抱合体(レーン3)よりもはるかに少ない高分子量の架橋種を有することを明らかに示している。
【0114】
本発明で記載された方法を用いて調製した抗体−SMCC−DM1抱合体のタンパク質LabChip電気泳動解析(還元条件下)は、(総タンパク質の)67%及び30%の重鎖及び軽鎖の主要バンドを示したが、それらは、それぞれ、68%及び30%の非抱合抗体についてのものに類似する(図15)。それに対して、従来の2工程抱合方法を用いて調製した抱合体は、それぞれ、たった54%及び24%の重鎖バンド及び軽鎖バンドしか示さず、主要なバンドは多分鎖間架橋による96〜148kDaに及ぶ高い分子量のものだった。定量的なタンパク質LabChip解析に基づいて、本出願で記載された方法によって調製した抱合体は、従来の2工程法を用いて調製したものに比べて、鎖間架橋の欠如という点ではるかに優れている(図15)。
【0115】
サイズ排除LC/MS分析によって、本発明に記載された方法により作製された類似薬剤負荷を伴ったAb−SMCC−DM1抱合体と従来の2工程法によるものを比較した(図16)。本発明に記載された方法により作製された抱合体は、Ab−(リンカー−DMx)に等しい質量を持つピークの予想された分布のみを含有する所望のMSスペクトルを示す。従来の2工程法を用いて作製された抱合体の場合、スペクトルは、所望のAb−(リンカー−DMx)種に加えて、不活性化されたマレイミド及び架橋されたリンカー断片を含有する追加の種を含む種の非均質混合物を示す。従来の2工程反応の順序における鎖間架橋及びマレイミドの不活化の推定上のメカニズムを図17に示すが、それによれば、ヘテロ2官能性リンカーとの抗体の最初の反応から取り込まれたマレイミド(又はハロアセトアミド)が、分子内(又は分子間)のヒスチジン、リジン、チロシン又はシステイン残基と反応し、その結果、鎖間架橋を生じ得る、又は最初に取り込まれたマレイミド
(又はハロアセトアミド)残基が、チオールを持つDM1又はDM4(DMx)剤との反応工程の前にマレイミドの加水分解又は水和によって不活化され得る。従って、LC−MS分析は、本発明で記載された方法が、抗体に結合する不活化されたマレイミド又は架橋されたリンカーをほとんど含まない又は含まない均質な抱合体を産生する利点を有することを明らかに示す。
【0116】
実施例4.本方法(図19)による切断可能なジスルフィドリンカーを伴ったDM1/DM4(DMx)による抗体の抱合
30〜60mMの濃度でDMAにて、DM1又はDM4チオール(DMx)及びヘテロ2官能性リンカー、4−(2−ピリジルジチオ)ブタン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(SPDB)を含有するストック溶液を作製した。40%v/vまでの水性200mMのコハク酸緩衝液、2mMのEDTA、pH5.0を含有するDMAにてリンカーとDMxチオールを一緒に混合して1.6:1のDM1又はDM4(DMx)とリンカーの比率と8mMの最終濃度を得た。混合した後、反応物を常温で1時間放置し、次いで反応物のアリコートを4mg/mLのAb、90%のリン酸緩衝液(水性)/10%DMA、pH7.5という最終抱合条件下にてリン酸緩衝液(pH7.5)における抗体の水溶液に加えた。抱合反応を常温にて2時間進めた。pH7.5のリン酸緩衝液(水性)で平衡化したG25ゲル濾過カラムを用いて、過剰な未反応試薬と過剰なDMxからAb−DMxの抱合体を精製した。pH7.5の緩衝液で抱合体を4℃にて2日間保持して、非共有結合で又は不安定な結合で抗体に結合したDMx種を解離させた。次いでpH5.5のヒスチジン/グリシン緩衝液で抱合体を一晩透析し、次いで最終保存のために0.22μmのフィルターで濾過した。252nmと280nmで抱合体の吸収を測定し、これら2つの波長でのDMxと抗体の既知の吸光係数を用いて最終的な抱合体における抗体分子当たりのDMx分子の数を測定した。
【0117】
実施例5.本方法(図20)を用いたジスルフィドリンカーと切断不能なリンカーの双方による抗体−DM1/DM4(Ab−DMx)抱合体の調製
30〜80mMの濃度でN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)にてDM1又はDM4(DMx)チオール及びNHS−PEG−マレイミドヘテロ2官能性リンカーのストック溶液を作製した。40%v/vまでの水性200mMのコハク酸緩衝液、2mMのEDTA、pH5.0を含有するDMAにてNHS−PEG−マレイミドリンカーとDMxチオールを一緒に混合して1.6:1のDMxとリンカーのモル比と8mMに等しいDMxの最終濃度を得た。反応混合物を常温で2時間放置した。別に並行した反応で、1時間の反応時間を除いてNHS−PEG−マレイミドの反応に用いた条件と同様に、SPDBとDMXチオールを一緒に混合した。双方の反応の終了後、精製しないで、等量のPEG−Mal−DM4混合物とSPDB−DM4混合物を合わせた。合わせた反応混合物のアリコートを精製することなく、4mg/mLのAb、90%のリン酸緩衝液(水性)/10%DMA、pH7.5という最終抱合条件下にてリン酸緩衝液(pH7.5)における抗体の水溶液に加えた。抱合反応を常温にて2時間進めた。pH7.5のリン酸緩衝液(水性)で平衡化したG25ゲル濾過カラムを用いて、過剰な未反応試薬と過剰なDMxからAb−DMxの抱合体を精製した。pH7.5の緩衝液で抱合体を4℃にて2日間保持して、非共有結合で又は不安定な結合で抗体に結合したDMx種を解離させた。次いでpH5.5のヒスチジン/グリシン緩衝液で抱合体を一晩透析し、次いで最終保存のために0.22μmのフィルターで濾過した。252nmと280nmで抱合体の吸収を測定し、これら2つの波長でのDMxと抗体の既知の吸光係数を用いて最終的な抱合体における抗体分子当たりのDMx分子の数を測定した。
【0118】
抱合体をDTT(ジチオスレイトール)処理してジスルフィド結合を還元する前と後で抗体当たりのDMxの比率(D/A)を比較することによって、本発明に記載された方法によって作製されたAb−(混合SPDBとPEG−Malリンカー)−DMx抱合体
を調べ、切断不能なリンカーに対する切断可能なリンカーの取り込み比率を割り出した。DTT還元の間、反応pHを7.5に維持するために、抱合体を先ず、250mMのHEPES緩衝液、pH7.5に対して透析した。次いで37℃にて20分間、25mMのDTTと反応させることによって抱合体を還元した。DTT反応の後、250mMのHEPES緩衝液、pH7.5で平衡化したG25ゲル濾過を用いて反応混合物から、放出されたDMxとDTTを分離した。252nmと280nmで抱合体の吸収を測定し、これら2つの波長でのDMxと抗体の既知の吸光係数を用いて精製した生成物における抗体分子当たりのDMx分子の数を測定した。DTT処理した抱合体のD/AとDTT処理しなかった抱合体のD/Aの比率を用いて、切断不能な結合を介してAbに結合したDMxの比率を算出した。2つの追加の試料、Ab−SPDB−DM4抱合体とAb−PEG−Mal−DM4抱合体をそれぞれ、陽性対照と陰性対照としてDTTで処理した。DTT処理の前と後でのD/Aを比較することによって、対照の切断不能なAb−PEG−Mal−DM4抱合体は、ほぼすべてのリンカーが予想どおり切断不能であると思われることを示した。本発明に記載された方法によって作製された切断不能なリンカーとジスルフィドリンカーの双方を含有するAb−(混合SPDBとPEG−Malリンカー)−DMx抱合体は、すべて切断可能なリンカーから成るAb−SPDB−DMX抱合体からのDMx喪失の量に比べて、DTT処理によって切断されるDMxが41%少なかった。このことは、本発明に記載された方法によって作製されたAb−(混合SPDBとPEG−Malリンカー)−DMx抱合体がほぼ40%の切断不能なリンカーと60%の切断可能なリンカーから構成されることを実証した。切断不能なリンカー試薬と切断可能なリンカー試薬の最初の比率を変えることによって、切断不能なリンカーと切断可能なリンカーの様々な比率で、マイタンシノイド又はそのほかのエフェクターとの抗体の抱合体を調製することができる。図21は、上述の脱グリコシル化抱合体の質量スペクトルを示すが、それは、ジスルフィドリンカー(SPDB)と切断不能なリンカー(PEG)の双方を介して結合した抗体分子当たり平均3.5のマイタンシノイド分子を伴った抗体で構成される。MSは、切断可能なリンカーと切断不能なリンカーの双方を持つ別々の抱合体種を示す(図21)。たとえば、D2−PEG−SPDBと名付けられた抱合体のピークは、ジスルフィド結合したマイタンシノイド分子1つと切断不能なチオエーテル結合したマイタンシノイド分子1つを持ち;D3−PEG−2SPDBと名付けられた抱合体のピークは、ジスルフィド結合したマイタンシノイド分子2つと切断不能なチオエーテル結合したマイタンシノイド分子1つを持ち;D3−2PEG−2SPDBと名付けられた抱合体のピークは、ジスルフィド結合したマイタンシノイド分子1つと切断不能なチオエーテル結合したマイタンシノイド分子2つを持つ。
【0119】
実施例6.SMCCリンカー(図22)を用いたマイタンシノイドによる抗体の抱合
30〜60mMの濃度でDMAにて、DM1チオール及びSMCCへテロ2官能性リンカー(Pierce)のストック溶液を作製した。50%v/vまでの200mMの水性コハク酸緩衝液、2mMのEDTA、pH5.0を含有するDMAにてリンカーとDM1チオールを一緒に混合して1.4:1のDM1とリンカーの比率と1〜6mMのDM1の最終濃度を得た。混合した後、反応物を常温で4時間まで放置し、次いで反応混合物のアリコートを10倍に希釈して、マレイミドがすべてチオールと反応したかどうかを評価するために302〜320nmで吸収を測定した。UVによってさらなるマレイミドが存在しなかった場合、2.5mg/mLのAb、70〜80%のリン酸緩衝液(水性)/30〜20%%DMA(v/v)という最終抱合条件下にてリン酸緩衝液(pH7.5〜8.5)における抗体の水溶液に、反応混合物のアリコートを加えた。抱合反応を常温にて3時間進めた。pH7.4のリン酸緩衝液(水性)で平衡化したG25ゲル濾過カラムを用いて、過剰な未反応又は加水分解された試薬と過剰なDM1からAb−DM1の抱合体を精製した。pH7.4のリン酸緩衝液(水性)で抱合体を一晩透析し、次いで最終保存のために0.22μmのフィルターで濾過した。252nmと280nmで抱合体の吸収を測定し、これら2つの波長でのDM1と抗体の既知の吸光係数を用いて最終的な抱合体に
おける抗体分子当たりのDM1分子の数を測定した。同様に、DM4チオール及びSMCCによる抗体の抱合体を調製することができる。SMCCリンカーを用いたDM1又はDM4による抗体の抱合体は、チオエーテルの切断不能なリンカーを含有する。
【0120】
本発明に記載された方法によって作製されたAb−SMCC−DM1抱合体は、脱グリコシル化抱合体のMS解析を特徴とした(図23)。本発明に記載された方法によって作製された抱合体は、Ab−(リンカー−DM1)に等しい質量を持つピークの予想された分布を含有する所望のMSスペクトルを示した。
【0121】
実施例7.へテロ2官能性のジスルフィドを含有するリンカー(SSNPB、SPP)を用いたマイタンシノイドによる抗体の抱合
ジスルフィド含有のヘテロ2官能性リンカー、SSNPB(N−スルホスクシンイミジル−4−(5−ニトロ−2−ピリジルジチオ)ブチレート)及びSPP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)を用いて、実施例4でSPDBリンカーについて記載されたものと似た方法によって、ジスルフィド結合の抗体/マイタンシノイド抱合体を調製した。SPDBを用いて調製したジスルフィド結合の抱合体の構造(図19)はSSNPBによって調製した抱合体のそれ(図24)と同一である。SPDBを用いて調製したジスルフィド結合の抱合体のMSは、抗体に結合した様々な数のマイタンシノイド分子に相当する質量値を持つ別々のピークを示した。
【0122】
実施例8.直鎖アルキル炭素鎖を持つ切断不能なリンカーを含有するマイタンシノイドによる抗体の抱合
実施例6でSMCCリンカーについて記載された方法に類似する、マイタンシノイドと直鎖アルキル炭素さを持つヘテロ2官能性リンカーの反応混合物を用いて、直鎖アルキル炭素鎖を持つ切断不能なリンカーを含有する抱合体を調製した。たとえば、図26に示されたようなBMPS(N−[β−マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル)又はGMBS(N−[γ−マレイミドブチルオキシ]スクシンイミドエステル)リンカーを用いてDM1を伴ったヒト化抗体の抱合体を調製した。60%のDMA/40%(v/v)の200mMのコハク酸緩衝液、pH5におけるBMPS又はGMBS(8mM)とDM1チオール(10.4mM)を含有する最初の反応混合物は、15分で確認した場合、マレイミド部分の完全な反応(302〜320nmでのマレイミドの吸収の衰退に基づく)を示した。20%のDMA(v/v)を含有する80%の水性EPPS緩衝液、pH8.1における2.5mg/mLのヒト化抗体溶液に、この反応混合物を2回に分けて、30分間離して加え、リンカーは合計、抗体と等量の8モル加えた。4時間後、抱合体混合物をゲル精製し、2回の透析に供した。3.8及び5.1のDM1/抗体の比率を持つ抱合体は、71〜75%の回収率で、高いモノマー比(96.2〜97.6%)で調製した。GMBS又はBMPSによって調製したこれら抱合体は、HISEP HPLC解析によって抱合されなかった遊離の薬剤を示さなかった。図25に示されるようなAMAS(N−[β−マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル)又はEMCS(N−[β−マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル)又はスルホ−H−ヒドロキシスクシンイミドエステル(スルホ−GMBS、スルホ−EMCS)を用いて直鎖アルキル鎖を持つ切断不能なリンカーを含有する類似の抱合体を調製することができる。表1は、本発明で記載された方法によって調製した精選抱合体のモノマー比率を示し、それらはすべてサイズ排除クロマトグラフィ解析によって高いモノマー比率を示した。比較のために、モノマー比率はまた、従来の2工程抱合方法(ヘテロ2官能性リンカーとの抗体の最初の反応、次いでマイタンシノイドチオールとの反応)によって調製した抱合体についても示す。
【0123】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液における精製された抱合体を調製する方法であって、前記抱合体が、細胞結合剤に連結されたエフェクター分子又はリポーター分子を含み、前記方法が、(a)エフェクター分子又はリポーター分子を2官能性リンカー試薬に接触させて該リンカーをエフェクター分子又はリポーター分子に共有結合させ、それによってそれに結合したリンカーを有するエフェクター分子又はリポーター分子を含む未精製の第1の混合物を調製することと、(b)未精製の第1の混合物を細胞結合剤と反応させることによって、それに結合したリンカーを有するエフェクター分子又はリポーター分子に細胞結合剤を抱合させて第2の混合物を調製することと、(c)第2の混合物を接線流濾過、透析、ゲル濾過、吸着クロマトグラフィ、選択的沈殿、又はこれらの組み合わせに供して精製された抱合体を調製することを含む方法。
【請求項2】
工程(b)が約4〜約9のpHでの溶液で行われる請求項1の方法。
【請求項3】
工程(b)における第2の混合物が、分子内又は分子間の反応によって形成される望ましくない架橋された、加水分解された種を実質的に含まない請求項1の方法。
【請求項4】
エフェクター分子が細胞傷害剤である請求項1の方法。
【請求項5】
細胞傷害剤が、マイタンシノイド、タキサン、CC1065又はこれらの類似体である請求項4の方法。
【請求項6】
細胞傷害剤がマイタンシノイドである請求項4の方法。
【請求項7】
マイタンシノイドがチオール基を含む請求項6の方法。
【請求項8】
マイタンシノイドがDM1である含む請求項6の方法。
【請求項9】
マイタンシノイドがDM4である含む請求項6の方法。
【請求項10】
細胞結合剤が、インターフェロン、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン6(IL−6)、インスリン、EGF、TGF−α、FGF、G−CSF、VEGF、MCSF、GM−CSF、トランスフェリン又は抗体である請求項1の方法。
【請求項11】
細胞結合剤が抗体である請求項10の方法。
【請求項12】
抗体がモノクローナル抗体である請求項11の方法。
【請求項13】
抗体が、ヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体である請求項11の方法。
【請求項14】
抗体が、MY9、抗B4、EpCAM、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD11、CD19、CD20、CD22、CD26、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD79、CD105、CD138、EphA受容体、EphB受容体、EGFR、EGFRvIII、HER2、HER3、メソテリン、cripto、アルファベータ、アルファベータ、アルファベータ、インテグリン又はC242である請求項10の方法。
【請求項15】
ヒト抗体又はヒト化抗体が、My9−6、B4、C242、N901、DS6、EphA2受容体、Cd38、IGF−IR、CNTO95、B−B4、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ビバツズマブ、シブロツズマブ又はリツキシマブである請求項13の方法。
【請求項16】
リンカーが、切断可能なリンカー又は切断不能なリンカーである請求項1の方法。
【請求項17】
リポーター分子が放射性同位元素である請求項1の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2012−528874(P2012−528874A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514074(P2012−514074)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/037046
【国際公開番号】WO2010/141566
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(504039155)イミュノジェン・インコーポレーテッド (36)
【Fターム(参考)】