説明

抵抗体

【課題】自己制御温度域は低温域であるが、高温域に曝されても耐える大きな正抵抗温度特性を示す抵抗体を形成する。
【解決手段】抵抗体は、最高環境温度よりも高温域に融点を持つ第1の結晶性重合体と正抵抗温度特性による自己制御温度近傍に融点を持つ第2の結晶性重合体を併用し、前記結晶性重合体に親和性補強処理がなされた導電性微粉末を分散して形成する。これにより抵抗体は、導電性微粉末に親和性補強処理を施すことによって、融点の異なる結晶性重合体を併用したときの正抵抗温度特性の低下を解消するもので、自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性を示すとともに、より高温の環境温度に耐える正抵抗温度特性抵抗体を構成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己温度制御発熱体、温度センサー、過電流保護装置などに用いられる正抵抗温度特性を有する抵抗体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の抵抗体としては、例えば、2種以上の結晶性重合体と導電性粉体を含有し2つ以上の正抵抗温度特性の立ち上がり温度をもつもの。樹脂に導電粉末を分散させたものを架橋し、その粉砕材料を他の樹脂結着剤に分散させて形成するもの、あるいは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、あるいはこれらの材料の共重合体に導電性粉末を分散させた後粉砕し、この粉体と親和性を示す液体を含有する非結晶性重合体溶液に混合分散させて得たペーストを支持基材に塗布乾燥して形成するものを一例として挙げている。
【特許文献1】特開昭55−6745号公報
【特許文献2】特開昭51−32984号公報
【特許文献3】特開昭52−50596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、大きな正抵抗温度特性が得られるのは樹脂の大きな比容積の増加が得られる融点近傍であり、例えば、自己温度制御発熱体に応用する場合などでは、発熱温度域に応じて樹脂の融点を選定する必要があった。そのために、例えば、50℃近傍で大きな正抵抗温度特性を得ようとすれば、60℃から70℃近辺の比較的低い温度の融点をもつ結晶性重合体を使用する必要があった。
【0004】
この場合、低融点の結晶性重合体を用いて抵抗体を形成すると、抵抗体が曝される最高環境温度が融点よりも高くなることが想定される。このような融点を超えるような環境で抵抗体の長期の安定性を確保することは困難であり、この抵抗体の場合、用途を限定せざるを得なかった。そこで、2種以上の結晶性重合体を併用し、一方の結晶性重合体の融点を最高環境温度よりも高融点とすることによってこの課題は改善できるが、融点範囲が拡散するために大きな比容積の増加を示す温度域がなくなり、大きな正抵抗温度特性は得られなかった。
【0005】
また、結晶性重合体と導電粉末を分散させたものを架橋し、最高環境温度よりも高融点の樹脂結着剤に分散することによってもこの課題は改善できるが、高融点の重合体が比容積の増加率を阻害するために大きな正抵抗温度特性が得られなかった。また、結晶性重合体と導電粉末を分散させたものを最高環境温度よりも高融点の非結晶性重合体を含む溶液に分散させ、このペーストとしを塗布乾燥させることによってもこの課題は改善できるが、高融点の非結晶性重合体が比容積の増加率を阻害するために大きな正抵抗温度特性が得られなかった。このように、正抵抗温度特性を活用しようとする温度域に対して、より高温の環境温度が想定される場合に、大きな正抵抗温度特性を示す抵抗体は得られなかった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性を示すとともに、より高温の環境温度に耐える正抵抗温度特性抵抗体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の正抵抗温度特性抵抗体は、最高環境温度よりも高温域に融点を持つ第1の結晶性重合体と正抵抗温度特性による自己制御温度近傍に融点を持つ第2の結晶性重合体とからなる広域融点結晶性重合体と、前記広域融点結晶性重合体に分散された導電性微粉末を主成分としてなり、前記導電性微粉末に親和性補強処理がなされてなる導電性組成物を主成分として形成されるものである。
【0008】
これによって、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体からなる広域融点結晶性重合体は最高環境温度で溶融せず、正抵抗温度特性を活用しようとする自己制御温度域で比容積が増大する重合体となる。この広域融点結晶性重合体に分散された導電性微粉末は親和性補強処理によって凝集することなく微細に分散し、導電性微粉末の粒子間に重合体が介在する構造となる。このために広域融点結晶性重合体の比容積の増大率が少なくても大きな抵抗値の増大が得られる。この結果、正抵抗温度特性を活用しようとする自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抵抗体は、導電性微粉末に親和性補強処理を施すことによって、融点の異なる結晶性重合体を併用したときの正抵抗温度特性の低下を解消するもので、自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性を示すとともに、より高温の環境温度に耐える正抵抗温度特性抵抗体を構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、最高環境温度よりも高温域に融点を持つ第1の結晶性重合体と正抵抗温度特性による自己制御温度近傍に融点を持つ第2の結晶性重合体とからなる広域融点結晶性重合体と、前記広域融点結晶性重合体に分散された導電性微粉末を主成分としてなり、前記導電性微粉末に親和性補強処理がなされてなる導電性組成物を主成分とするものである。このことにより、第1の結晶性重合体は最高環境温度で溶融せず、導電性微粉末の移動による抵抗値変動を抑制する。そして、第2の結晶性重合体は自己制御温度近傍で比容積を増大させ、その温度域での正抵抗温度特性を付与する。この第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体からなる広域融点結晶性重合体に分散された導電性微粉末は、親和性補強処理によって凝集することなく微細に分散し、導電性微粉末の粒子間に広域融点結晶性重合体が介在する構造となる。このために広域融点結晶性重合体の比容積の増大率が少なくても大きな抵抗値の増大が得られる。この結果、正抵抗温度特性を活用しようとする自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性が得られる。
【0011】
第2の発明は、特に、広融点範囲結晶性重合体が、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体に加え、前記第1の結晶性重合体と前記第2の結晶性重合体の間の融点を持つとともに双方に親和性を有する第3の結晶性重合体からなるものである。第2の結晶性重合体は自己制御温度近傍で比容積を増大させようとするが、融点の高い第1の結晶性重合体はその比容積の増大を阻害する。第3の結晶性重合体は、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の間に融点があり、双方の重合体の比容積の変化を円滑かつ連続的なものとする緩衝作用がある。その結果、第2の結晶性重合体は第1の結晶性重合体の制約を受けずに比容積を増大させることができるようになる。また、第3の結晶性重合体は、第1の結晶性重合体は溶融しないが、第2の結晶性重合体が溶融するような温度域において、溶融部分と非溶融部分が相分離し、それに伴って導電性微粉末が凝集し、抵抗値が変動するような現象を抑制する作用もある。
【0012】
第3の発明は、特に、第3の結晶性重合体の介在によって、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の間が略10Kの融点差の結晶性重合体で連結されてなるもので、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の融点が大きく離れていると、連続的ではなくなり、独立の重合体として機能し、一体性のある広融点範囲結晶性重合体とはならない。もし、
一体性がないと、相分離の原因となり、導電性微粉末の凝集による抵抗値の変動をもたらす。また、比容積の増大を互いに阻害するために、大きな正抵抗温度特性が得られなくなる。そして、第3の結晶性重合体の介在によって、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の間が連続的となり、一体性のある広融点範囲結晶性重合体となり、大きな正抵抗温度特性が得られる。
【0013】
第4の発明は、特に、第3の結晶性重合体が融点の異なる複数の結晶性重合体からなり、前記第3の結晶性重合体の介在によって、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の間が略10Kの融点差の結晶性重合体で連結されてなるもので、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の融点が大きく離れていると、第3の結晶性重合体を介在させても、融点範囲が連続的ではなくなるために独立の重合体として機能し、一体性のある広融点範囲結晶性重合体とはならない。一体性がないと、相分離の原因となり、導電性微粉末の凝集による抵抗値の変動をもたらす。また、比容積の増大を互いに阻害するために、大きな正抵抗温度特性が得られなくなる。融点の異なる複数の第3の結晶性重合体の介在によって、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の間が連続的となり、一体性のある広融点範囲結晶性重合体となり、大きな正抵抗温度特性が得られる。
【0014】
第5の発明は、特に、広融点範囲結晶性重合体を形成する結晶性重合体が相互に架橋されるものである。結晶性重合体が相互に結合することにより、第1の結晶性重合体は溶融しないが、第2の結晶性重合体が溶融するような温度域において、溶融部分と非溶融部分が相分離し、それに伴って導電性微粉末が凝集し、抵抗値が変動するような現象を抑制することができる。また、広融点範囲結晶性重合体に第3の結晶性重合体を用いる場合には、第3の結晶性重合体が第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体を単に物理的に結びつけるだけでなく、化学的にも結びつけることができるために、相分離によって導電性微粉末が凝集し、抵抗値が変動するような現象をより効果的に抑制することができる。
【0015】
第6の発明は、特に、結晶性重合体にエチレン重合体あるいはエチレン共重合体を用いるものであり、共重合体成分の含有比率により、融点を細やかに制御することができる。また、重合体相互に親和性があり、相分離しない、一体性のある広融点範囲結晶性重合体が形成できる。
【0016】
第7の発明は、特に、導電性微粉末がカップリング剤によって親和性補強処理がなされてなるもので、カップリング剤処理によって導電性微粉末の表面に重合体との親和性に寄与する官能基などが形成され、導電性微粉末は、凝集することなく微細に分散し、導電性微粉末の粒子間に広域融点結晶性重合体が介在する構造となる。このために広域融点結晶性重合体の比容積の増大率が少なくても大きな抵抗値の増大が得られる。この結果、正抵抗温度特性を活用しようとする自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性が得られる。
【0017】
第8の発明は、特に、導電性微粉末が有機過酸化物によって親和性補強処理がなされてなるもので、有機過酸化物の引き抜き作用あるいは空気中の酸素の介在により導電性微粉末の表面に重合体との化学的結合あるいは親和性付与層などが形成され、導電性微粉末は、凝集することなく微細に分散し、導電性微粉末の粒子間に広域融点結晶性重合体が介在する構造となる。このために広域融点結晶性重合体の比容積の増大率が少なくても大きな抵抗値の増大が得られる。この結果、正抵抗温度特性を活用しようとする自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性が得られる。
【0018】
第9の発明は、特に、導電性組成物を溶剤中に分散したペーストを塗布、乾燥するもので、印刷などの方法で一様な厚みの抵抗体を形成できる。
【0019】
第10の発明は、特に、導電性組成物を接着性を有する重合体と共に溶剤中に分散した
ペーストを塗布、乾燥するもので、様々な基材に対する印刷性と密着性が得られる。
【0020】
第11の発明は、特に、導電性組成物を柔軟性を有する重合体と共に溶剤中に分散したペーストを塗布、乾燥するもので、柔軟性のある基材に対する追従性と密着性が得られる。
【0021】
第12の発明は、特に、導電性組成物を部分相溶性を有する重合体と共に溶剤中に分散したペーストを塗布、乾燥するもので、部分相溶性を有する重合体は導電性組成物に対する親和性はあるが、その内部に入り込んで正抵抗温度特性を阻害しない作用があり、大きな正抵抗温度特性が得られる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
第1の結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点104℃、酢酸ビニル含有量5%)22部、第2の結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点74℃、酢酸ビニル含有量28%)22部、導電性微粉末としてカップリング剤で表面処理したカーボンブラック(ファーネス系、平均粒子径500nm、デグサ社製)56部を用意し、加熱ミキシングロール機で混練してカーボンブラックを十分に分散させ、導電性組成物を得た。なお、カップリング剤による表面処理は、カップリング剤(アルミネート系、味の素製)を低沸点溶剤で希釈した液を作製し、この液にカーボンブラックを浸し、乾燥させて0.2%の濃度となるようにして行った。次いで、この混練材料を冷凍粉砕機によって粉砕し、微粉末とした。この微粉末100部、接着性の重合体としてニトリルゴムワニス(G103、コニシ製)50部、溶剤としてテトラヒドロナフタレンを330部用意し、3本ロール機で、順次、溶剤を加えながらペースト状にした。 次いで、このペーストをポリエチレンテレフタレートのフィルムにスクリーン印刷し、150℃の熱風乾燥炉で30分乾燥して抵抗体塗膜を形成した。さらに、その表面に常温乾燥の銀電極を印刷し、乾燥させた後、抵抗値特性を測定した。その測定結果は、図1に示したように、20℃での面積抵抗値が7000Ω、60℃と20℃の抵抗値比率が4.8倍であり、低温域で十分大きな正抵抗温度特性が得られた。このサンプルを熱サイクル試験で評価した結果、最高90℃までの温度で大きな抵抗値の変動は認められなかった。−20℃と90℃の熱サイクルを1000サイクルまで試験した結果、20℃での面積抵抗値が30%以下の変動に収まることを確認した。
【0024】
なお、実施の形態1の比較サンプルとして以下に示す比較サンプル1を作製した。第1の結晶性重合体は使用せず、全て第2の結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点74℃、酢酸ビニル含有量28%)44部、導電性微粉末として表面処理しないカーボンブラック(ファーネス系、平均粒子径500nm、デグサ社製)56部を用意し、加熱ミキシングロール機で混練してカーボンブラックを十分に分散させ、導電性組成物を得た。次いで、この混練材料を冷凍粉砕機によって粉砕し、微粉末とした。この微粉末100部、接着性の重合体としてニトリルゴムワニス(G103、コニシ製)50部、溶剤としてテトラヒドロナフタレンを330部用意し、3本ロール機で、順次、溶剤を加えながらペースト状にした。 次いで、このペーストをポリエチレンテレフタレートのフィルムにスクリーン印刷し、150℃の熱風乾燥炉で30分乾燥して抵抗体塗膜を形成した。さらに、その表面に常温乾燥の銀電極を印刷し、乾燥させた後、抵抗値特性を測定した。その測定結果は、図1aに示したように、20℃での面積抵抗値は2800Ω、60℃と20℃の抵抗値比率は4.4倍であり、低温域で十分大きな正抵抗温度特性が得られた。しかし、このサンプルを熱サイクル試験で評価した結果、90℃熱サイクルでは図1aに破線で示したように、大きく抵抗値が増大した。熱サイクルで抵抗値が安定な温度範囲を
求めた結果、60℃が上限であった。実施の形態1に較べて、20℃での面積抵抗値や60℃と20℃の抵抗値比率は遜色ないが、熱サイクル安定温度が極めて低く、使用環境温度に大きな制約を受けるものであった。
【0025】
なお、上記比較サンプル1の熱サイクル安定温度の改善をはかるために、第1の結晶性重合体を併用した比較サンプル2を作製した。導電性微粉末に表面処理しない通常のカーボンブラックを使用し、他は実施の形態1と同様にしてペーストを作製し、印刷、乾燥を経てサンプルを完成させ、抵抗特性を測定した。その測定結果は、図1bに示したように、20℃での面積抵抗値は1400Ω、60℃と20℃の抵抗値比率は2.4倍、熱サイクルで安定な最高温度は90℃、−20℃と90℃の熱サイクル1000サイクル後の変化率は20%以下を確認した。実施の形態1に較べて、60℃と20℃の抵抗値比率が極めて低く、正抵抗温度特性を十分に活用できるだけの抵抗温度特性が得られなかった。
【0026】
以上のように構成された正抵抗温度特性抵抗体について、以下その動作、作用を説明する。まず、第1の結晶性重合体は融点が104℃であり、通常想定される最高環境温度では溶融しないために、導電性微粉末が結晶性重合体の溶融によって移動することはありえない。第2の結晶性重合体は融点が74℃であり、60℃近傍での比容積を増大させ、その温度域での正抵抗温度特性を付与する。この第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体からなる重合体は広域の融点範囲を持つ結晶性重合体であり、その重合体に分散された導電性微粉末は、その表面にアルミネート系のカップリング剤が施されているために結晶性重合体との親和性が格段に補強されている。この結果、導電性微粉末は結晶性重合体中に凝集することなく微細に分散し、導電性微粉末の粒子間に結晶性重合体が介在する構造となる。第2の結晶性重合体が60℃近傍で比容積を増大させようとするが、融点が高い第1の結晶性重合体が存在するために、比容積の増大率は第2の結晶性重合体を単独で使用する場合に較べて低下するのは否めない。しかし、比容積の増大率が少なくても、導電性微粉末の粒子間に結晶性重合体が介在する構造は変位に対する感度が高くなるために、大きな抵抗値の増大が得られる。この結果、正抵抗温度特性を活用しようとする60℃近傍の自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性が得られる。また、自己制御温度域よりも高温の90℃までの環境温度に曝されても抵抗特性の安定性を保つことができる。比較例1に示すように、融点104℃の第1の結晶性重合体を使用しないと、60℃までの環境温度にしか耐えられなくなり、用途が極めて限定される。また、比較例2に示すように、導電性微粉末をカップリング剤による表面処理をしないと、少ない比容積の増大に応じた小さい正抵抗温度特性となり、実用上の価値がなくなる。このように、比較的低温の自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性を示すとともに、より高温の環境温度に耐える正抵抗温度特性抵抗体を構成できる。
【0027】
(実施の形態2)
加熱ミキシングロール機で混練するまでは実施の形態1と同一であるが、混練が終了する直前に架橋剤(パーヘキシン25B、日本油脂製)を混練材料に対して0.4部添加し、均一に分散させた。この混練物を窒素雰囲気中にて180℃で1時間熱処理し、架橋剤を完全に反応させて、導電性組成物を得た。以降、実施の形態1と同様にしてペーストを作製し、印刷、乾燥を経てサンプルを完成させ、抵抗特性を測定した。その測定結果は、図2に示したように、20℃での面積抵抗値は8400Ω、60℃と20℃の抵抗値比率は4.5倍、熱サイクル安定温度90℃、熱サイクル1000サイクル後の変化率は20%以下を確認した。実施の形態1に較べて、20℃での面積抵抗値、60℃と20℃の抵抗値比率、熱サイクル安定温度は遜色なかった。また、熱サイクル1000サイクルでの抵抗値の安定性が改善されることを確認した。
【0028】
以上のように構成された正抵抗温度特性抵抗体において、結晶性重合体が相互に結合することにより、第1の結晶性重合体が溶融しない104℃以下、かつ、第2の結晶性重合
体が溶融するような74℃以上の温度域において、溶融した第2の結晶性重合体が溶融しない第1の結晶性重合体の中で移動し、相分離するような現象を防ぐことができる。この結果、導電性微粉末が移動あるいは凝集することがなくなり、抵抗値の大きな変動が抑制される。このように、より高温の環境温度に耐える正抵抗温度特性抵抗体を構成できる。
【0029】
(実施の形態3)
第1の結晶性重合体22部及び第2の結晶性重合体22部は実施の形態1と同一であるが、導電性微粉末は表面処理しない通常のカーボンブラック(ファーネス系、平均粒子径500nm、デグサ社製)56部を用意し、加熱ミキシングロール機で混練してカーボンブラックを十分に分散させ、混練が終了する直前に架橋剤(パーヘキシン25B、日本油脂製)を混練材料に対して0.6部添加し、0.5mm以下の薄肉のシートにして取り出した。このシートを通常の熱風乾燥炉にて180℃で1時間熱処理した後、再度、加熱ミキシングロール機で架橋剤0.4部を添加し、窒素雰囲気中にて180℃で1時間熱処理し、架橋剤を完全に反応させて、導電性組成物を得た。以降、実施の形態1と同様にしてペーストを作製し、印刷、乾燥を経てサンプルを完成させ、抵抗特性を測定した。その測定結果は、図3に示したように、20℃での面積抵抗値は9800Ω、60℃と20℃の抵抗値比率は5.1倍、熱サイクル安定温度90℃、熱サイクル1000サイクル後の変化率は20%以下を確認した。実施の形態1に較べて、20℃での面積抵抗値、熱サイクル安定温度、熱サイクル1000サイクルでの抵抗値の安定性は遜色なく、60℃と20℃の抵抗値比率が改善されることを確認した。
【0030】
以上のように構成された正抵抗温度特性抵抗体において、架橋剤を添加した薄肉シートを熱処理することによって、酸化された架橋剤が導電性微粉末の表面を活性化させ、重合体との結合あるいは親和性を飛躍的に高める。そして、導電性微粉末は結晶性重合体中に凝集することなく微細に分散し、導電性微粉末の粒子間に結晶性重合体が介在する構造となる。この結果、正抵抗温度特性を活用しようとする60℃近傍の自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性が得られる。
【0031】
(実施の形態4)
第1の結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点104℃、酢酸ビニル含有量5%)15部、第2の結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点74℃、酢酸ビニル含有量28%)15部、第3の結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点90℃、酢酸ビニル含有量15%)14部、導電性微粉末としてカップリング剤で表面処理したカーボンブラック(ファーネス系、平均粒子径500nm、デグサ社製)56部を用意し、加熱ミキシングロール機で混練してカーボンブラックを十分に分散させ、導電性組成物を得た。以降、実施の形態1と同様にしてペーストを作製し、印刷、乾燥を経てサンプルを完成させ、抵抗特性を測定した。その測定結果は、図4に示したように、20℃での面積抵抗値は8400Ω、60℃と20℃の抵抗値比率は5.5倍であり、低温域で極めて大きな正抵抗温度特性が得られた。このサンプルを熱サイクル試験で評価した結果、90℃熱サイクルでは図4に細線で示したように、抵抗値が微増する傾向が見られたが、85℃以下の熱サイクルでは抵抗値は安定であった。−20℃と85℃の熱サイクル1000サイクル後の変化率は30%以下を確認した。実施の形態1に較べて、20℃での面積抵抗値、熱サイクル1000サイクルでの抵抗値の安定性は遜色なく、熱サイクルで安定な最高温度がやや低下するものの実用的には問題ない範囲であり、60℃と20℃の抵抗値比率が大きく改善されることを確認した。
【0032】
以上のように構成された正抵抗温度特性抵抗体において、融点74℃の第2の結晶性重合体は60℃近傍の自己制御温度域で比容積を増大させようとするが、融点が104℃と高い第1の結晶性重合体はその比容積の増大を阻害する。融点が90℃の第3の結晶性重合体は、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の間に融点があるために、双方の重合
体の比容積の変化を円滑かつ連続的なものとする緩衝作用を示す。その結果、第2の結晶性重合体は第1の結晶性重合体の制約から逃れ、比較的自由に比容積を増大させることができるようになる。また、第3の結晶性重合体は、第1の結晶性重合体は溶融しないが、第2の結晶性重合体が溶融するような74℃から104℃の温度域において、溶融した第2の結晶性重合体と溶融しない第1の結晶性重合体が相分離し、それに伴って導電性微粉末が移動したり凝集したりするのを抑制し、抵抗値の変動を小さくする作用もある。このように、正抵抗温度特性を活用しようとする60℃近傍の自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性が得られるとともに、より高温の環境温度に耐える正抵抗温度特性抵抗体が構成できる。
【0033】
(実施の形態5)
加熱ミキシングロール機で混練するまでは実施の形態4と同一であるが、混練が終了する直前に架橋剤(パーヘキシン25B、日本油脂製)を混練材料に対して0.4部添加し、均一に分散させた。この混練物を窒素雰囲気中にて180℃で1時間熱処理し、架橋剤を完全に反応させて、導電性組成物を得た。以降、実施の形態1と同様にしてペーストを作製し、印刷、乾燥を経てサンプルを完成させ、抵抗特性を測定した。その測定結果は、図5に示したように、20℃での面積抵抗値は9800Ω、60℃と20℃の抵抗値比率は5.3倍、熱サイクルで安定な最高温度85℃、−20℃〜85℃の熱サイクル1000サイクル後の変化率は20%以下を確認した。実施の形態1に較べて、20℃での面積抵抗値は遜色なく、熱サイクルで安定な最高温度はやや低下するものの実用的には問題ない範囲であり、60℃と20℃の抵抗値比率、熱サイクル1000サイクルでの抵抗値の安定性が改善されることを確認した。
【0034】
以上のように構成された正抵抗温度特性抵抗体において、第3の結晶性重合体を介在させることにより、融点の異なる結晶性重合体を物理的に結合させる作用をもたらすが、これをさらに架橋することによって化学的にも結合させることにより、溶融した部分と溶融しない部分が混在するような温度域において、溶融した結晶性重合体が溶融しない結晶性重合体の中で移動し、相分離するような現象を完全に防ぐことができる。この結果、導電性微粉末の移動あるいは凝集による大きな抵抗値変動が抑制される。このように、より高温の環境温度に耐える正抵抗温度特性抵抗体を構成できる。
【0035】
(実施の形態6)
第1の結晶性重合体15部、第2の結晶性重合体15部、第3の結晶性重合体14部は実施の形態4と同一であるが、導電性微粉末は表面処理しない通常のカーボンブラック(ファーネス系、平均粒子径500nm、デグサ社製)56部を用意し、加熱ミキシングロール機で混練してカーボンブラックを十分に分散させ、混練が終了する直前に架橋剤(パーヘキシン25B、日本油脂製)を混練材料に対して0.6部添加し、0.5mm以下の薄肉のシートにして取り出した。このシートを通常の熱風乾燥炉にて180℃で1時間熱処理した後、再度、加熱ミキシングロール機で架橋剤0.4部を添加し、窒素雰囲気中にて180℃で1時間熱処理し、架橋剤を完全に反応させて、導電性組成物を得た。以降、実施の形態1と同様にしてペーストを作製し、印刷、乾燥を経てサンプルを完成させ、抵抗特性を測定した。その測定結果は、図6に示したように、20℃での面積抵抗値は9100Ω、60℃と20℃の抵抗値比率は5.2倍、熱サイクルで安定な最高温度85℃、−20℃〜85℃熱サイクル1000サイクル後の変化率は20%以下を確認した。実施の形態1に較べて、20℃での面積抵抗値は遜色なく、熱サイクルで安定な最高温度はやや低下するものの実用的には全く問題ない範囲であり、60℃と20℃の抵抗値比率、熱サイクル1000サイクルでの抵抗値の安定性が改善されることを確認した。
【0036】
以上のように構成された正抵抗温度特性抵抗体において、第3の結晶性重合体は、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の間に融点があるために、双方の重合体の比容積の
変化を円滑かつ連続的なものとする緩衝作用を示す。その結果、第2の結晶性重合体は第1の結晶性重合体の制約から逃れ、比較的自由に比容積を増大させることができるようになる。また、架橋剤を添加した薄肉シートを熱処理することによって、酸化された架橋剤が導電性微粉末の表面を活性化させ、重合体との結合あるいは親和性を飛躍的に高める。そして、導電性微粉末は結晶性重合体中に凝集することなく微細に分散し、導電性微粉末の粒子間に結晶性重合体が介在する構造となる。この結果、正抵抗温度特性を活用しようとする60℃近傍の自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性が得られる。
【0037】
(実施の形態7)
第1の結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点104℃、酢酸ビニル含有量5%)11部、第2の結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点74℃、酢酸ビニル含有量28%)11部、第3の結晶性重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点97℃、酢酸ビニル含有量10%)11部、第3の結晶性重合体の併用重合体としてエチレン酢酸ビニル共重合体(融点84℃、酢酸ビニル含有量20%)11部、導電性微粉末として表面処理しないカーボンブラック(ファーネス系、平均粒子径500nm、デグサ社製)56部を用意し、加熱ミキシングロール機で混練してカーボンブラックを十分に分散させ、混練が終了する直前に架橋剤(パーヘキシン25B、日本油脂製)を混練材料に対して0.6部添加し、0.5mm以下の薄肉のシートにして取り出した。このシートを通常の熱風乾燥炉にて180℃で1時間熱処理した後、再度、加熱ミキシングロール機で架橋剤0.4部を添加し、窒素雰囲気中にて180℃で1時間熱処理し、架橋剤を完全に反応させて、導電性組成物を得た。以降、実施の形態1と同様にしてペーストを作製し、印刷、乾燥を経てサンプルを完成させ、抵抗特性を測定した。その測定結果は、図7に示したように、20℃での面積抵抗値は9100Ω、60℃と20℃の抵抗値比率は6.2倍、熱サイクルによる安定な最高温度85℃、−20℃〜85℃の熱サイクル1000サイクル後の変化率は20%以下を確認した。実施の形態1に較べて、20℃での面積抵抗値は遜色なく、熱サイクル安定温度がやや低下するものの実用的には全く問題ない範囲であり、熱サイクル1000サイクルでの抵抗値の安定性が改善され、60℃と20℃の抵抗値比率が大きく改善されることを確認した。
【0038】
以上のように構成された正抵抗温度特性抵抗体において、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の融点が30K程度も離れると、第3の結晶性重合体を1つ介在させても、融点が完全に連続的とはならないために、相分離の原因となり得る。そして、導電性微粉末の移動及び凝集による抵抗値の変動をもたらす余地が残っている。また、比容積の増大を互いに阻害する可能性もあり、大きな正抵抗温度特性が得られにくくなる。第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の融点が大きく異なっていても、融点の異なる複数の第3の結晶性重合体を配置することによって、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の間を約10K違いの融点で連なるようにできる。このような結晶性重合体を複合化すれば、一体性のある広融点範囲結晶性重合体となり、大きな正抵抗温度特性と高温熱サイクル安定性が得られる。
【0039】
以上に各実施の形態を示し、そこで熱サイクル安定温度による評価法を導入している。この評価法は、低温側温度を−20℃に固定し、高温側温度を変化させた時に、抵抗値が増大しない高温側の最高温度を測定するものである。その原理は、結晶性重合体の結晶構造が保持される温度と保持されない温度では抵抗値の挙動が異なるという前提に基づくものであり、熱的な挙動を観測する上には有用であると考えられるが、これによって実際に使用できる上限温度が決定されるものではなく、抵抗値が許容範囲にあれば使用できることは言うまでもない。
【0040】
以上に各実施の形態を示したが。本発明はこれに限定されるものではない。まず、結晶性重合体にエチレン酢酸ビニル共重合体を用いたが、有用な結晶性重合体としては、融点
130℃近辺の高密度ポリエチレン、融点120℃近辺のリニア低密度ポリエチレン、融点110℃近辺の低密度ポリエチレン等が有用であり、融点100℃以下の重合体としては、エチレンとの共重合体が有用である。共重合体の成分としては、アクリル酸、エチルアクリレート、メチルメタクリレート等が有用であり、その共重合成分の含有量によって融点を調整できる。また、アイオノマー等のような特殊な重合体も有用である。また、オレフィン系のみならず、ナイロン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、シリコン系等でも、共重合等の手段で融点の調整は可能であり、同様の作用を有する。
【0041】
また、以上に示した各実施の形態では導電性微粉末に粒子径500nmのファーネス系のカーボンブラックを用いたが、この材料に限定されるものではなく、製造方法、原料、ストラクチャー、粒子径、形状、吸油量、比表面積など、様々な要素から多くのカーボンブラックが使用可能である。また、混練方法によっては、通常、正抵抗温度特性が得られにくい高ストラクチャーのカーボンブラックが選択できる可能性もある。
【0042】
また、以上に示した各実施の形態では、カーボンブラックの表面処理にアルミネート系のカップリング剤を用いたが、この材料に限定されるものではなく、シラン系、チタネート系などのカップリング剤なども有用である。
【0043】
また、以上に示した各実施の形態では、導電性組成物をペースト状にして、印刷によって抵抗体を形成したが、導電性組成物をシート化して、これに電極を形成することも可能であり、同等の作用を有する。また、接着性のニトリルゴムワニスを接着性の重合体成分として用いてペースト化したが、この材料に限定されるものではなく、溶剤に溶解力があり、導電性組成物自体が接着性を有する場合には接着性は不要である。また、柔軟性を要求される場合は、柔軟性のあるエラストマ成分を有する重合体に置き換えたり、添加することによって対応可能である。また、正抵抗温度特性を阻害しないようにするためには、導電性組成物に含まれる結晶性重合体と完全に相溶しない重合体を用いてペースト化するのが望ましく、エチレン酢酸ビニル共重合体であれば、ウレタン系のような重合体から選定するのが望ましい。逆に、相溶させるのであればエチレンプロピレン系のエラストマなどから選定できる。柔軟性のあるエラストマとしては、フッ素ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコンゴムなどの未架橋エラストマから選定できる。さらに、共重合ポリエステル、共重合ナイロン、共重合ウレタンなどからも選定できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明にかかる正抵抗温度特性抵抗体は、比較的低温の自己制御温度域で大きな正抵抗温度特性を示すとともに、より高温の環境温度に耐えるものである。電気毛布、電気カーペット、防寒具、暖房カーテン、電気アンカ、電気足温器、暖房ソファ、暖房チェアなどの電気暖房機器だけでなく暖房シート、ハンドルヒータ、ドアミラーヒータなどの車載用機器、温熱パッド、電位治療器などの健康機器など、自己制御温度域は50℃程度の低温域であるが、環境ストレスモードでは80℃を越える温度に曝されるような用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態1における正抵抗温度特性抵抗体の初期及び熱サイクル後の抵抗温度特性を示す図
【図1a】本発明の実施の形態1における比較例1の正抵抗温度特性抵抗体の初期及び熱サイクル後の抵抗温度特性を示す図
【図1b】本発明の実施の形態1における比較例1の正抵抗温度特性抵抗体の初期及び熱サイクル後の抵抗温度特性を示す図
【図2】本発明の実施の形態2における正抵抗温度特性抵抗体の初期及び熱サイクル後の抵抗温度特性を示す図
【図3】本発明の実施の形態3における正抵抗温度特性抵抗体の初期及び熱サイクル後の抵抗温度特性を示す図
【図4】本発明の実施の形態4における正抵抗温度特性抵抗体の初期及び熱サイクル後の抵抗温度特性を示す図
【図5】本発明の実施の形態5における正抵抗温度特性抵抗体の初期及び熱サイクル後の抵抗温度特性を示す図
【図6】本発明の実施の形態6における正抵抗温度特性抵抗体の初期及び熱サイクル後の抵抗温度特性を示す図
【図7】本発明の実施の形態7における正抵抗温度特性抵抗体の初期及び熱サイクル後の抵抗温度特性を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最高環境温度よりも高温域に融点を持つ第1の結晶性重合体と正抵抗温度特性による自己制御温度近傍に融点を持つ第2の結晶性重合体とからなる広域融点結晶性重合体と、前記広域融点結晶性重合体に分散された導電性微粉末を主成分としてなり、前記導電性微粉末に親和性補強処理がなされてなる導電性組成物を主成分とする正抵抗温度特性抵抗体。
【請求項2】
最高環境温度よりも高温域に融点を持つ第1の結晶性重合体と、正抵抗温度特性による自己制御温度近傍に融点を持つ第2の結晶性重合体と、前記第1の結晶性重合体と前記第2の結晶性重合体の間の融点を持つとともに双方に親和性を有する第3の結晶性重合体とからなる広融点範囲結晶性重合体と、前記広融点範囲結晶性重合体に分散された導電性微粉末を主成分としてなり、前記導電性微粉末が親和性補強処理がなされてなる導電性組成物を主成分とする正抵抗温度特性抵抗体。
【請求項3】
第3の結晶性重合体の介在によって、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の間が略10Kの融点差の結晶性重合体で連結されてなる請求項2項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
【請求項4】
第3の結晶性重合体が融点の異なる複数の結晶性重合体からなり、前記第3の結晶性重合体の介在によって、第1の結晶性重合体と第2の結晶性重合体の間が略10Kの融点差の結晶性重合体で連結されてなる請求項2項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
【請求項5】
前記広融点範囲結晶性重合体が架橋されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
【請求項6】
結晶性重合体はエチレン重合体あるいはエチレン共重合体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
【請求項7】
導電性微粉末がカップリング剤によって親和性補強処理がなされてなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
【請求項8】
導電性微粉末が有機過酸化物によって親和性補強処理がなされてなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
【請求項9】
導電性組成物を溶剤中に分散したペーストを塗布、乾燥した請求項1〜8いずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
【請求項10】
導電性組成物を接着性を有する重合体と共に溶剤中に分散したペーストを塗布、乾燥した請求項1〜8いずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
【請求項11】
導電性組成物を柔軟性を有する重合体と共に溶剤中に分散したペーストを塗布、乾燥した請求項1〜8いずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。
【請求項12】
導電性組成物を前記導電性組成物と部分相溶性を有する重合体と共に溶剤中に分散したペーストを塗布、乾燥した請求項1〜8いずれか1項に記載の正抵抗温度特性抵抗体。

【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図1a】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−73573(P2007−73573A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255943(P2005−255943)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】