説明

抵抗測定機能付IC、IC搭載パネルおよび抵抗測定方法

【課題】パネル基板に搭載されたICへのデータ入力ラインに関係する抵抗の抵抗値を、簡便かつより正確に測定する。
【解決手段】ICには、抵抗測定モードに切り替わる旨の制御電圧が入力されると、ロジック処理を行う処理ブロックへの全てのデータ入力回路33−1〜33−nを基準電圧VSSに接続させるスイッチ回路51−1〜51−nと、アナログ処理を停止させる制御回路54とが設けられている。また、ICの複数の基準電圧接続用端子に対して1つの基準電圧接続用配線131bを接続し、前記基準電圧接続用配線131bは、ICに設けられているデータ入力用端子に接続されるデータ配線よりも配線幅が太くなるように形成されている。スイッチ回路により、IC内で、測定対象とされたデータ入力ラインを構成するデータ配線が接続されるデータ入力用端子が、複数の基準電圧接続用端子の少なくともいずれかと電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル基板に搭載された状態でIC(Integrated Circuit)へのデータ入力ラインに関係する抵抗値の測定を行うための抵抗測定機能付IC、IC搭載パネルおよび抵抗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パネル基板に搭載されたICへのデータ入力ラインについて、その配線状態やICとの接続状態の確認を目視あるいは光学顕微鏡を用いた推論により行う場合、実抵抗値を求めることはできなかった。
【0003】
パネル基板に搭載されたICへのデータ入力ラインに関係する抵抗の測定技術に関し、例えば、特許文献1には、回路基板上に設けられた配線パターンと、該配線パターンと電気接続された駆動用ICとの間の接続抵抗を測定する測定部を、駆動用ICの内部に含む電気光学パネルが記載されている。
【0004】
また、本発明に関連する先行技術文献として、例えば、特許文献2には、ICチップに内蔵されたレギュレータの出力電圧を計測するためのレギュレータ出力電圧測定回路が記載されている。また例えば、非特許文献1には、I2C(Inter−Integrated Circuit)インタフェース規格を実装した双方向通信手段を有するICが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−219155号公報
【特許文献2】特開2008−309628号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Philips Semiconductors,「I2Cバス仕様書」,ver2.1,2000年1月,p.6−13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、液晶表示パネルに搭載された液晶駆動用ICへのデータ入力ラインに関する抵抗は、液晶表示パネルに設けられたデータ入力配線の抵抗(配線抵抗)と、さらにそのデータ入力配線の一部を構成するIC接続パッドとICとの接続抵抗の和によって表される。このようなICへのデータ入力ラインに関する抵抗を、液晶駆動用ICのようにアナログ処理とデジタル処理の両方を行うICであっても、パネル基板に搭載された状態で、より正確にかつ簡便に測定できるようにすることが望まれる。
【0008】
例えば、特許文献1には、接続抵抗測定機能として、接続抵抗測定回路が駆動用ICの入出力端子の一部を兼用し、接続抵抗測定回路と駆動用ICへの入出力回路との間に切替スイッチを設けて、2つの入出力端子を接続することにより2つの入出力回路を構成する例が示されている。
【0009】
しかし、特許文献1に記載されている構成では、2つの入出力端子を接続して接続抵抗を計測することになるので、求まる接続抵抗値は2本分の抵抗であって、入力端子毎に正確な抵抗値を求めることができない。従って、どちらの端子で接続不良を起こしているかの切り分けができないといった問題がある。
【0010】
なお、特許文献2に記載されているレギュレータ出力電圧測定回路は、測定時に入出力回路をHi−Z(ハイインピーダンス)にし、レギュレータ出力端子とIC内部でスイッチ回路を利用して短絡させ電位を同じにすることによって端子間に電流が流れないようにして、レギュレータ出力電圧の測定精度をあげようというものであって、パネル基板に搭載されたICへのデータ入力ラインに関する抵抗の抵抗値を簡便に測定しようというものではない。
【0011】
また、非特許文献1に記載されているようなI2Cインタフェース規格を実装した双方向通信手段を有するICにおいて、通信のためのラインを擬似的に利用して抵抗値を類推する方法も考えられるが、次のような問題がある。
【0012】
図7は、非特許文献1に記載されているI2Cインタフェース規格のタイミングチャートを示す説明図である。また、図8は、該I2Cインタフェース規格によるデータ転送を実現するための回路構成例を示すブロック図である。図7および図8に示すように、該I2Cインタフェース規格を実装しているICでは、マスター側デバイスからスレーブ側デバイスにデータ転送をする際に、スレーブ側がデータを受け取ったことを示すACK信号をマスター側に送信するタイミングがある。このタイミングでは、スレーブ側が送信モード、マスター側が受信モードになる。
【0013】
また、図9は、上述したI2Cインタフェース規格におけるスレーブ側のデータ信号ライン上にかかる抵抗を模式的に示す論理回路図である。図9において、抵抗R1はSDA(Serial Data Line)に係る配線抵抗である。また、抵抗R2は、SCL(Serial Clock Line)に係る配線抵抗(ACK時はGND配線抵抗)である。図9に示すように、スレーブ側のICのデータ信号ラインを擬似的に利用すれば、ACK時にR1+R2の抵抗値を計算上求めることが可能であるが、限られたタイミングでしか測定できないという問題がある。また、上述したように駆動状態で計測するために、内部回路動作によって基準レベルが変動するために、SCLが基準電圧に接続されても正確な抵抗値が求まらないという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、パネル基板に搭載されたICへのデータ入力ラインに関する抵抗の抵抗値を、簡便かつより正確に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による抵抗測定機能付ICは、パネルに搭載された状態で当該ICへのデータ入力ラインを形成する配線の配線抵抗と、データ入力ラインが当該ICと接続する部分である接続部(例えば、IC接続パッド)における当該ICとの接続抵抗の和によって表される入力ライン抵抗を測定するための抵抗測定機能付ICであって、入力ライン抵抗を測定する抵抗測定モードに切り替わる旨の制御電圧が入力されると、ロジック処理を行う処理ブロックへの全てのデータ入力回路(例えば、データ入力回路33−1〜33−n)を基準電圧に接続させるスイッチ回路(例えば、スイッチ回路51−1〜51−n)と、アナログ処理を停止させる制御回路(例えば、測定用制御回路54)とが設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、抵抗測定機能付ICは、アナログ処理を停止させる制御回路が、アナログ処理を行う処理ブロック用の駆動電圧を生成するチャージポンプ部(例えば、チャージポンプ部41)を非動作とする制御信号をチャージポンプ部に入力する回路であってもよい。
【0017】
また、本発明によるIC搭載パネルは、当該パネルに搭載されたICへのデータ入力ラインを形成する配線の配線抵抗と、データ入力ラインがICと接続する部分である接続部におけるICとの接続抵抗の和によって表される入力ライン抵抗を測定するためのIC搭載パネルであって、入力ライン抵抗を測定する抵抗測定モードに切り替わる旨の制御電圧が入力されると、ロジック処理を行う処理ブロックへの全てのデータ入力回路を基準電圧に接続させるスイッチ回路と、アナログ処理を停止させる制御回路とが設けられているIC(例えば、駆動用IC12)を搭載し、ICに設けられている複数の基準電圧接続用端子に対して、1つの基準電圧接続用配線(例えば、接続配線131b)を接続し、基準電圧接続用配線は、ICに設けられている端子であってデータ入力回路のいずれかに繋がる端子であるデータ入力用端子に接続されるデータ配線(例えば、接続配線131a)よりも配線抵抗が低くなるように形成され、スイッチ回路が、入力ライン抵抗を測定する抵抗測定モードに切り替わる旨の制御電圧が入力されると、IC内で、測定対象とされたデータ入力ラインを構成するデータ配線が接続されているデータ入力用端子(例えば、ロジックデータ接続端子32−1〜32−nのいずれか)を、複数の基準電圧接続用端子の少なくともいずれか(例えば、基準電圧接続端子34)に電気的に接続させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明による抵抗測定方法は、パネルに搭載された状態でICへのデータ入力ラインを形成する配線の配線抵抗と、データ入力ラインがICと接続する部分である接続部におけるICとの接続抵抗の和によって表される入力ライン抵抗を測定するための抵抗測定方法であって、ICに設けられている、IC内部にてロジック処理を行う処理ブロックへの全てのデータ入力回路を基準電圧に接続させるスイッチ回路と、アナログ処理を停止させる制御回路とを制御するための制御ピンに所定の制御電圧を入力して、全てのデータ入力回路を基準電圧に接続させるとともにアナログ処理を停止させ、測定対象とするデータ入力ライン上に外部抵抗を設けた上で、所定の電源電圧を印可して、測定対象とするデータ入力ライン上の電圧を測定し、測定された電圧の値から、印加した電源電圧の値と、外部抵抗の抵抗値とを用いて、入力ライン抵抗の抵抗値を導出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、パネル基板に搭載されるICに、抵抗測定モードに切り替わる旨の制御電圧が入力されると、ロジック処理を行う処理ブロックへの全てのデータ入力回路を基準電圧に接続させるスイッチ回路と、アナログ処理を停止させる制御回路とが設けられているので、検査時にデジタル処理とアナログ処理とを非動作状態とすることができる。従って、その状態で既知の出力電圧V0と外部抵抗Rtを与えて各データ入力ラインのパネル端子電圧Vを計測することによって、パネル基板に搭載されたICへのデータ入力ラインに関する抵抗の抵抗値を、簡便かつより正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】IC搭載パネルの一例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る駆動用IC12のバンプの使用例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る駆動用IC12内部の回路構成例を示すブロック図である。
【図4】チャージポンプ部41の入出力ラインおよびピン配置の例を示す説明図である。
【図5】チャージポンプ部41の回路構成例を示す説明図である。
【図6】測定モードにおける入力データラインの接続状態を示す説明図である。
【図7】あるI2Cインタフェース規格のタイミングチャートを示す説明図である。
【図8】図7に示したI2Cインタフェース規格によるデータ転送を実現するための回路構成例を示すブロック図である。
【図9】図7に示したI2Cインタフェース規格におけるスレーブ側のデータ信号ライン上にかかる抵抗を模式的に示す論理回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。図1は、IC搭載パネルの一例を示す説明図である。図1に示すIC搭載パネルは、液晶表示パネル10の一部を構成するパネル基板(例えば、ガラス基板)11上に、駆動用IC12と、パネル外部から駆動用IC12に接続するための接続部13とが配置されている。
【0022】
駆動用IC12には、当該駆動用IC12内に形成されている集積回路との間で制御信号やデータ信号の入出力や電源供給等を行うためのバンプ121が複数設けられている。各バンプ121が、接続部13を一方の端点とする接続配線131上にあるIC接続パッド132と電気的に接続されることにより、パネル外部より接続部13を介して制御信号やデータ信号の入出力や電源供給等を行う。
【0023】
図2は、本発明に係る駆動用IC12のバンプの使用例を示す説明図である。駆動用IC12に設けられる電源関係(ロジック処理用電源供給、アナログ処理用電源供給、VSS接続等)に関わるバンプは、電源強化の為、図2に示すように多バンプ(複数のバンプを1つの配線接続に使用する形態をいう。)かつ多箇所に設けられていることが好ましい。図2に示す例では、データ入力用の接続配線131aが1つのバンプ121に接続されるのに対して、VSS接続用の接続配線131bは、接続配線131aに比べて配線幅を太くして複数のバンプ121に接続されている。
【0024】
また、図3は、本発明に係る駆動用IC12内部の回路構成例を示すブロック図である。図3に示すように、駆動用IC12は、液晶を駆動するための構成要素として、チャージポンプ部41と、ロジック部42と、レベル変換部43と、液晶出力部44と、液晶駆動用電圧接続端子(液晶出力ピン)37−1〜37−mと、アナログ処理用電源接続端子(アナログ電源ピン)36と、ロジック処理用電源接続端子(ロジック電源ピン)35と、基準電圧接続端子(VSS接続ピン)34と、ロジックデータ接続端子(データ入力ピン)32−1〜32−nとを含んでいる。なお、図3に示す例では、1つのVSS接続ピン34しか示していないが、VSS接続ピン34は複数設けられている。
【0025】
さらに、本実施形態では、ロジック部42へのデータ入力回路33−1〜33−n上にスイッチ回路51−1〜51−nと、該スイッチ回路51−1〜51−nおよびチャージポンプ部41に制御信号を入力するための測定用制御回路53,54および制御ピン31とを含んでいる。また、制御ピン31に入力される制御電圧に対して必要に応じて所定のレベル変換を行うことにより各測定用制御回路53,54に対応する制御信号に変換して出力する論理変換回路52を含んでいてもよい。
【0026】
例えば、スイッチ回路51−1〜51−nがハイレベルの制御電圧入力時に測定モードとなる仕様であった場合に、ユーザがローレベルの制御電圧を入力することで測定モードに切り替えたいとする。この場合、論理変換回路52は、ユーザから入力される電圧レベルを変換して測定用制御回路53に出力することにより、スイッチ回路51−1〜51−nに対応した制御信号を入力させる。
【0027】
チャージポンプ部41は、当該駆動用IC内で必要な内部電源を生成する回路である。より具体的には、アナログ処理を行う液晶出力部44に対して、液晶用の駆動電圧を生成する。なお、本実施形態では、所定の電圧が入力されると、当該チャージポンプ部41の動作(少なくとも駆動電圧の生成動作)を停止させる機能を有する。チャージポンプ部41の動作を停止させる機能については後述する。
【0028】
ロジック部42は、入力される映像信号や制御信号などの各種信号を処理し、必要に応じて液晶出力部44への制御信号にしてレベル変換部43を経由して液晶出力部44に出力する。
【0029】
レベル変換部43は、ロジック部42からの制御信号のレベルを液晶出力部44の駆動電圧レベルに変換する。
【0030】
液晶出力部44は、ロジック部42からの制御信号に応じて液晶セルを駆動するための電位を各画素に対応する透明電極に設定する。
【0031】
スイッチ回路51−1〜51−nは、所定の電圧が入力されると、ロジック部42へのデータ入力回路33−1〜33−nが基準電圧VSSに接続されるようスイッチ切り替えを行うスイッチ回路である。本実施形態では、制御ピン31に制御電圧が入力されると、論理変換回路52および測定用制御回路53を介して全てのスイッチ回路51−1〜51−nに制御信号として入力される。この制御信号により、全てのスイッチ回路51−1〜51−nがONになり、全てのデータ入力回路33−1〜33−nを基準電圧VSSに接続する。全てのデータ入力回路33−1〜33−nを基準電圧VSSに接続することによって、ロジック部42にデータ信号が入力されないようにし、ノイズによる誤動作も含めてIC内部をデジタル的に非動作とする。
【0032】
なお、基準電圧VSSは、回路動作系、測定系ともに共通な基準電圧であって、グラウンド(GND)と称される場合もある。なお、基準電圧VSSは、測定時に接続する外部電圧V0との関係において、電流がV0からVSSに流れればよい。
【0033】
また、制御ピン31に制御電圧が入力されると、論理変換回路52および測定用制御回路54を介してチャージポンプ部41に制御信号として入力される。この制御信号により、チャージポンプ部41を非動作にする。チャージポンプ部41を非動作とするための制御信号は、例えば、クロックの発振を止めるための制御信号であってもよい。また、例えば、リセット信号を解除しないようリセットを入れ続けるような制御信号であってもよい。チャージポンプ部41を非動作とすることで、アナログ処理に必要な電源供給が行われなくなり、IC内部をアナログ的に非動作とすることができる。
【0034】
図4は、チャージポンプ部41の入出力ラインおよびピン配置の例を示す説明図である。また、図5は、チャージポンプ部41の回路構成例を示す説明図である。図4に示すように、チャージポンプ部41は、当該チャージポンプ部41を非動作とするための制御信号として¬SHDN信号を入力ラインに具備している。また、図5に示すように、チャージポンプ部41は、起動スイッチコントロール回路部41aと、CR発振回路部41bと、チャージポンプ回路部41cとを含んでいる。本実施形態では、¬SHDN信号がLowレベルの時には、起動スイッチコントロール回路部41aがCR発振回路部41bへの起動信号を止めて停止状態とさせて、チャージポンプ部41cにクロックを出力させない構成になっている。すなわち、¬SHDN信号がLowレベルの時には、クロックの発振を止める回路構成となっている。
【0035】
なお、本実施形態では、制御ピン31に入力される制御電圧のON/OFF論理に関して、ユーザが所望するON/OFF論理で測定モードに切り替わるように、論理変換回路52を設ける例を示したが、制御ピン31に入力される制御電圧レベルによるON/OFF論理と、スイッチ回路51−1〜51−nに対する制御信号のON/OFF論理およびチャージポンプ部41に対する制御信号のON/OFF論理とが一致する場合には、論理変換回路52は省略可能である。
【0036】
次に、本発明による抵抗測定方法について説明する。本発明による抵抗測定方法は、上述した駆動用IC12が搭載されたパネル基板11を用いて次のように行う。なお、本パネル基板11には、駆動用IC12の制御ピン31に接続する検査制御用パッドが設けられ、その配線の先には測定モードへの切替スイッチが接続されているものとする。電源投入後この切替スイッチを用いて測定モードに切り替えることにより制御ピン31に制御電圧を入力し、各データ入力ピン32−1〜32−nから繋がるデータ入力回路33−1〜33−nに設けられているスイッチ回路51−1〜51−nをONにして基準電圧VSSに接続するとともに、チャージポンプ部41に対して、クロック信号の発振を止める制御信号を入力する。これにより、ICへの電源供給だけでICの全ての内部動作(デジタル処理およびアナログ処理)を非動作とし、基準電位の上昇や変動をなくす。
【0037】
そして、抵抗値を測定したいデータ入力ライン(以下、測定対象ラインという。)に、外部抵抗Rtを設けた上で、その測定対象ライン上の電圧Vを測定する。図6は、測定モードにおけるデータ入力ラインの接続状態を示す説明図である。
【0038】
図6に示すように、外部抵抗の一端に接続された既知の出力電圧をV0、測定対象ラインの接続配線131a上にあるIC接続パッド132とICのバンプ121との接続抵抗値をRc1、該接続配線131aの配線抵抗をRl1、そのバンプ121から繋がるデータ入力回路に設けられたスイッチ回路により接続されるVSS接続配線131b上にあるIC接続パッド132とICのバンプ121との接続抵抗値をRc2、該接続配線131bの配線抵抗をRl2とすると、測定点での電圧(パネル端子電圧)Vは、以下の式(1)によって表される。
【0039】
V=V0*(Rl1+Rc1+Rl2+Rc2)/((Rt+Rl1+Rc1+Rl2+Rc2)) ・・・式(1)
ただし、Rl1>>Rl2, Rc1>>Rc2
【0040】
なお、式(1)は、VSS側の配線幅がV0側のデータ配線幅よりも太く配線抵抗が低く、またVSS配線に用いるバンプ数がデータ配線に用いるバンプ数よりも多いことから、VSS側の配線抵抗Rl2と接続抵抗Rc2とは、V0側の配線抵抗Rl1と接続抵抗Rc1に比して十分小さいとの条件により、以下の式(2)に一般化することができる。なお、式(2)において、Rlは測定対象ラインの配線抵抗を示し、Rcは測定対象ラインとICとの接続抵抗を示す。
【0041】
V=V0*Rt/(Rc+Rl+Rt) ・・・式(2)
→Rl+Rc=V0*Rt/V-Rt ・・・式(3)
【0042】
そして、式(2)より式(3)が導き出されることから、簡易的に入力データラインに関係する抵抗値(接続抵抗値Rc+配線抵抗値Rl)を求めることができる。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、検査時に全てのデータ入力回路をスイッチにより基準電圧VSS(例えば、0電位)にすることと内部動作を止めることにより、既知の出力電圧V0と外部抵抗Rtを与えて各データ入力ラインのパネル端子電圧Vを計測するだけで、各データ入力ピンの接続状態および配線状態が抵抗値という数値によって簡単にわかり、モジュール品位を容易かつ確実に把握することが可能である。
【0044】
また、異常値が出た場合も数値化した基準をもてば容易に破棄または修復を行うことが可能である。また、ICを搭載した状態で測定することができるので、経年変化後の状況も数値化でき、信頼性条件の設定も可能になる。
【0045】
なお、本実施形態では、IC搭載パネルが液晶表示パネルの一部を構成するパネル基板である場合を例に説明したが、有機EL表示パネルの一部を構成するパネル基板であってもよい。また、IC搭載パネルは表示パネルに限定されず、ICを搭載した回路基板であれば、どのようなパネル基板であってもよい。また、搭載されるICも駆動用ICに限らない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、パネル基板にアナログ処理とデジタル処理の両方を行うICが搭載されるような装置(例えば、液晶表示装置)に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 液晶表示パネル
11 パネル基板
12 駆動用IC
121 バンプ
13 接続部
131 接続配線
131a データ入力用接続配線
131b VSS接続用接続配線
132 IC接続パッド
31 制御ピン
32−1〜32−n ロジックデータ接続端子(データ入力ピン)
33−1〜33−n データ入力回路
34 基準電圧接続端子(VSS接続ピン)
35 ロジック処理用電源接続端子(ロジック電源ピン)
36 アナログ処理用電源接続端子(アナログ電源ピン)
37−1〜37−m 液晶駆動用電圧接続端子(液晶出力ピン)
41 チャージポンプ部
42 ロジック部
43 レベル変換部
44 液晶出力部
51−1〜51−n スイッチ回路
52 論理変換回路
53,54 測定用制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに搭載された状態で当該ICへのデータ入力ラインを形成する配線の配線抵抗と、前記データ入力ラインが当該ICと接続する部分である接続部における当該ICとの接続抵抗の和によって表される入力ライン抵抗を測定するための抵抗測定機能付ICであって、
前記入力ライン抵抗を測定する抵抗測定モードに切り替わる旨の制御電圧が入力されると、ロジック処理を行う処理ブロックへの全てのデータ入力回路を基準電圧に接続させるスイッチ回路と、アナログ処理を停止させる制御回路とが設けられている
ことを特徴とする抵抗測定機能付IC。
【請求項2】
アナログ処理を停止させる制御回路は、アナログ処理を行う処理ブロック用の駆動電圧を生成するチャージポンプ部を非動作とする制御信号を前記チャージポンプ部に入力する回路である
請求項1に記載の抵抗測定機能付IC。
【請求項3】
当該パネルに搭載されたICへのデータ入力ラインを形成する配線の配線抵抗と、前記データ入力ラインが前記ICと接続する部分である接続部における前記ICとの接続抵抗の和によって表される入力ライン抵抗を測定するためのIC搭載パネルであって、
前記入力ライン抵抗を測定する抵抗測定モードに切り替わる旨の制御電圧が入力されると、ロジック処理を行う処理ブロックへの全てのデータ入力回路を基準電圧に接続させるスイッチ回路と、アナログ処理を停止させる制御回路とが設けられているICを搭載し、
前記ICに設けられている複数の基準電圧接続用端子に対して、1つの基準電圧接続用配線を接続し、
前記基準電圧接続用配線は、前記ICに設けられている端子であって前記データ入力回路のいずれかに繋がる端子であるデータ入力用端子に接続されるデータ配線よりも配線抵抗が低くなるように形成され、
前記スイッチ回路が、前記入力ライン抵抗を測定する抵抗測定モードに切り替わる旨の制御電圧が入力されると、前記IC内で、測定対象とされたデータ入力ラインを構成するデータ配線が接続されているデータ入力用端子を、前記複数の基準電圧接続用端子の少なくともいずれかに電気的に接続させる
ことを特徴とするIC搭載パネル。
【請求項4】
パネルに搭載された状態でICへのデータ入力ラインを形成する配線の配線抵抗と、前記データ入力ラインが前記ICと接続する部分である接続部における前記ICとの接続抵抗の和によって表される入力ライン抵抗を測定するための抵抗測定方法であって、
前記ICに設けられている、前記IC内部にてロジック処理を行う処理ブロックへの全てのデータ入力回路を基準電圧に接続させるスイッチ回路と、アナログ処理を停止させる制御回路とを制御するための制御ピンに所定の制御電圧を入力して、全てのデータ入力回路を基準電圧に接続させるとともにアナログ処理を停止させ、
測定対象とするデータ入力ライン上に外部抵抗を設けた上で、所定の電源電圧を印可して、前記測定対象とするデータ入力ライン上の電圧を測定し、
前記測定された電圧の値から、前記印加した電源電圧の値と、前記外部抵抗の抵抗値とを用いて、前記入力ライン抵抗の抵抗値を導出する
ことを特徴とする抵抗測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−210526(P2010−210526A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58753(P2009−58753)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】