説明

押しボタンスイッチ

【課題】自動復帰する押しボタンの押圧で一方向に一定の角度ずつ回転するスターホイルと、このスターホイルの外周にバネで押し付けた圧子と、前記スターホイルに共回りするように取り付けた可動接点と、この可動接点が回転角に対応して接触する固定接点とを備えた押しボタンスイッチにおいて、山部の斜面の傾斜角度を大きくすることなく、山部が圧子に相対する位置でスターホイルが止まるのを防止する。
【解決手段】スターホイル15における山部15aの頂点に、先端に丸みを付けた小突起16を設け、山部15の頂点に圧子7からの荷重を受けたときに小突起16でバランスを取りにくくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動接点が、押しボタンの押圧で一方向に一定の角度ずつ回転し、その回転角に対応して固定接点と接触して、接点切り換えを行う押しボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の押しボタンスイッチには位置決め機構が組み込まれる。位置決め機構は、自動復帰する押しボタンの押圧で動作するラチェット機構等を介して一方向に一定の角度ずつ回転するスターホイルと、スターホイルの外周にバネで押し付けた金属球等の圧子からなり、可動接点が、スターホイルに共回りするように取付けられる(特許文献1参照)。
【0003】
スターホイルは、山部が圧子に相対する位置では止まりにくく、谷部が圧子に相対する位置まで回転して、圧子が谷部に嵌り込んで停止し、押しボタン復帰状態で可動接点の位置を保持する(特許文献1参照。)。
【0004】
また、この種の押しボタンスイッチでは山部と谷部を交互に有するスターホイルの外周に圧子を接触させることで、操作感触を発生させる。この際、押しボタンの押し込み動作に必要なスイッチ操作力が大きくならないようにすることが重要である。
【0005】
このため、スターホイルには外周に斜面の傾斜角度が比較的小さい山部と谷部を交互に有するものが使用される(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、そのようなスターホイルでは山部の斜面の傾斜角度が小さいため、山部の頂点に圧子からの荷重を受けたときにバランスが取りやすく、山部が圧子に相対する位置でスターホイルが止まりやすくなるという問題があった。
【0007】
このような問題を解決するための従来技術として、山部の斜面の途中に変曲点を設け、この変曲点から山部の頂点にかけての斜面の傾斜角度を、変曲点から谷部にかけての斜面の傾斜角度よりも大きくなるように設定し、圧子が山部で止まるのを防止するものがあった(特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】実開昭60−15722号公報
【特許文献2】実開平5−97028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来技術では山部の頂点付近の斜面の傾斜角度が大きくなり、山部の頂点に磨耗を生じやすくなるから、効果が押しボタンの押圧回数に伴って薄れ、ついには消失するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の押しボタンスイッチは、自動復帰する押しボタンの押圧で一方向に一定の角度ずつ回転するスターホイルと、このスターホイルの外周にバネで押し付けた圧子と、前記スターホイルに共回りするように取り付けた可動接点と、この可動接点が回転角に対応して接触する固定接点とを備え、前記スターホイルにおける山部の頂点に、先端に丸みを付けた小突起を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の押しボタンスイッチによれば、スターホイルにおける山部の頂点に小突起を設けたから、山部の頂点に圧子からの荷重を受けたときに小突起がバランスを取りにくくし、山部の斜面の傾斜角度を大きくしなくても、山部が圧子に相対する位置でスターホイルが止まるのを防止することができると共に、このような作用効果は、山部の斜面の傾斜角度を大きくしないから、押しボタンの押圧回数に伴って薄れ、ついには消失することなく発揮することができる。
【0012】
また、スターホイルにおける山部や谷部及び圧子に比べて極端に小さい小突起で上記作用効果を得ることができるから、小突起が圧子を乗り越えるときに必要な力は、山部が圧子を乗り越えるときに必要な力に比べて無視できるほど小さく、従来と同等のスイッチ操作力で接点の切り換えを行うことができると共に、小突起が操作感触に影響を与えることもなく、従来と同等の操作感触を得ることができる。
【0013】
さらに、小突起の先端に丸みを付けるから、耐摩耗性に優れ、上記作用効果は、押しボタンの押圧回数に伴って薄れ、ついには消失するのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチのローター(スターホイル)の斜視図、図2は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの斜視図、図3は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの分解図、図4は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの押しボタン部の縦断面図、図5は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの駆動機構部及び位置決め機構部の縦断面図、図6(A)は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチのケースの平面図,図6(B)は同ケースの側面図、図7は(A)は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの端子ベースの側面図,(B)は同端子ベースの背面(内面)図、図8は(A)は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの押しボタンの側面図,(B)は同押しボタンの側面図、図9(A)は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチのコンタクトの正面図,(B)は同コンタクトの底面図、図10(A)は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの接点部の正面図、(B)は同接点部の切り換え後の正面図、図11(A)は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの位置決め機構部の部分拡大正面図、(B)は同位置決め機構部の動作途中の部分拡大正面図である。
【0015】
なお、本実施の形態では、押しボタンの押圧で2種類のスイッチ回路を開閉操作する押しボタンスイッチを示し、例えば、車載用ルームランプの点灯/消灯を切り換える用途で使われる。消灯時に押しボタンを押圧すると消灯用回路を開いて点灯用回路を閉じ、点灯時に押しボタンを押圧すると点灯用回路を開いて消灯用回路を閉じる。
【0016】
押しボタンスイッチは、図3に示すように、合成樹脂製で絶縁性を有するケース1と、合成樹脂製で絶縁性を有する端子ベース2と、金属板を打ち抜き及び折り曲げ加工してなるカバー3と、合成樹脂製で絶縁性を有する押しボタン4と、金属コイルバネでなる押しボタン復帰バネ5と、合成樹脂製で絶縁製を有するローター6と、金属球でなる圧子7(ローラでも可)と、金属コイルバネでなる圧子バネ8と、良導電性の金属薄板を打ち抜き及び折り曲げ加工してなるコンタクト9で構成される。
【0017】
ケース1は、図2ないし図5及び図6(A),(B)に示すように、一側面及び上面を開放した箱状に形成される。なお、以下において、ケース1の開放した一側面を押しボタンスイッチの前側面として説明する。
【0018】
ケース1の内部には、左側壁の内面前部から後側壁と平行に右側壁の内面前部には達しない長さで突出する仕切り壁1aが設けられ、ケース1の内部空間が仕切り壁1aで、上面を開放した押しボタン収納空間1bと上面及び前側面を開放したローター収納空間1cに区画される。両空間1b,1cは、仕切り壁1aの右側端部と右側壁の内面前部との隙間1dで連通される。
【0019】
押しボタン収納空間1bの中心部には、底面から筒状の押しボタンガイド1eが垂直に立ち上げられる。ローター収納空間1cの下部には、仕切り壁1aから前後方向の軸線を有するローター軸1fが突出される。ローター収納空間1cの底側には、圧子収納凹部1gが設けられ、その左右両側から左右一対の圧子押え爪1hが立ち上げられる。圧子収納凹部1gの中心部には、底面から圧子バネ棒1pが垂直に立ち上げれる。圧子収納凹部1g及び圧子バネ棒1pの軸線は、ローター軸1fの軸線を含む鉛直平面内にある。
【0020】
ケース1の外部には、ケース1の前側面開口縁部から前側に突出する複数のベース固定ピン1iと、ケース1の前側面開口縁部における下側の左右隅部に形成するベース嵌合凹部1jと、ケース1の上面開口縁部における四隅部から上方に突出するカバー位置決め突起1kと、ケース1の後側壁の外面上部から後側に突出するカバー係合爪1mと、ケース1の左右側壁の外面上部に形成する浅いカバー嵌合凹部1nが設けられる。
【0021】
端子ベース2は、図2ないし図3及び図7(A),(B)に示すように、良導電性の金属薄板を打ち抜き及び曲げ加工して形成してなる複数の異なる端子(本実施の形態では、共通端子10,第1選択端子11,第2選択端子12の3種類3端子)をインサート成形で一体化したもので、ケース1の開放した前側面を覆う蓋状に形成される。
【0022】
端子ベース2には、端子ベース2の外側部に形成する内外面貫通の複数のピン孔2aと、端子ベース2の内面下部における左右隅部から突出する嵌合突起2bと、端子ベース2の外面上部から突出するカバー係合爪2cが設けられる。
【0023】
端子ベース2の内面には、端子ベース2をケース1の開放した前側面に装着したときにはローター軸1fと同心な円形のコンタクト収納凹部2dが設けられ、その中心部にはさらに軸受け凹部2eが設けられる。
【0024】
コンタクト収納凹部2dの底面外周部には、同一円周上の複数箇所に間隔をおいて設ける複数の固定接点として、共通接点10a,2つの第1選択接点11a,11b,2つの第2選択接点12a,12bが設けられる。
【0025】
共通接点10aは、端子ベース2に埋設された端子における共通端子10の一端部をコンタクト収納凹部2dの底面外周部の他の固定接点とは異なる1箇所に略面一に露出して形成したもので、共通端子10と導通のある固定接点である。
【0026】
2つの第1選択接点11a,11bは、端子ベース2に埋設された端子における第1選択端子11の一端部を2つに分けてコンタクト収納凹部2dの底面外周部の他の固定接点とは異なる2箇所に略面一に露出して形成したもので、第1選択端子11と導通のある固定接点である。
【0027】
2つの第2選択接点12a,12bは、端子ベース2に埋設された端子における第2選択端子12の一端部を2つに分けてコンタクト収納凹部2dの底面外周部の他の固定接点とは異なる2箇所に略面一に露出して形成したもので、第2選択端子12と導通のある固定接点である。
【0028】
図7(B)においては(図10の(A),(B)においては)、コンタクト収納凹部2dの底面外周部の一箇所に設けた固定接点、例えば、中心角30度の円弧状の一方の第1選択接点11aから反時計方向(時計方向)に、中心角30度の円弧状の樹脂表面でなる第1絶縁接点13aと、中心角25度の円弧状の他方の第1選択接点11aと、中心角7.5度の円弧状の樹脂表面でなる第2絶縁接点13bと、中心角115度の円弧状の共通接点10aと、中心角7.5度の円弧状の樹脂表面でなる第3絶縁接点13cと、中心角25度の円弧状の他方の第2選択接点12bと、中心角30度の円弧状の樹脂表面でなる第4絶縁接点13dと、中心角30度の円弧状の一方の第2選択接点12aと、中心角60度の円弧状の樹脂表面でなる第5絶縁接点13eが、この順で設けられ、ローター軸1fと同心な円環状の可動接点摺動面13が形成される。
【0029】
端子ベース2に絶縁状態で埋設された共通端子10と第1選択端子11と第2選択端子12の他端側は、それぞれ、端子ベース2の下端面から間隔をおいて横一列に突出され、押しボタンスイッチの外部接続端子部10c,11c,12cとして形成される。
【0030】
カバー3は、図2ないし図5に示すように、ケース1の開放した上面を覆う蓋状に形成される。
【0031】
カバー3には、カバー3の押しボタン収納空間1bに対向する位置に形成する押しボタン収納空間1bの上面開口より一回り小さく、押しボタン4が挿通可能な内外面貫通の押しボタン孔3aと、カバー3の四隅部に形成する切り欠き部3bと、カバー3の前後側縁から、それぞれ、折り曲げで下向きに延出する前後一対のU字形の脚部3c,3dと、カバー3の左右側縁から、それぞれ、折り曲げで下向きに延出する左右一対の脚部3e,3fが設けられる。
【0032】
押しボタン4には、図3ないし図5及び図8(A),(B)に示すように、押しボタン4の下側に形成する押しボタン4より一回り大きく、ケース1の押しボタン収納空間1bに上下摺動自在に嵌合可能な摺動部4aと、押しボタン4の上面から摺動部4aの下面に貫通する中心孔4bと、摺動部4aの前側で右端に片寄せて形成する前側から見て略逆U字状の送りレバー4cが一体に設けられる。
【0033】
送りレバー4cには、上下方向に延びる直線状の固定片部4dと、固定片部4dの上端部に形成する略4分の1円弧状の折り返し部4eと、折り返し部4eから下向きに延出し、固定片部4dとの間隔が途中から下端にかけて漸次拡大するように「く」字状に屈曲した押圧片部4fと、固定片部4dの一側端面から摺動部4a側に張り出して固定片部4dを折り返し部4e及び押圧片部4fよりも幅広に形成する繋ぎ部4gが一体に設けられる。
【0034】
送りレバー4cは、固定片部4dが繋ぎ部4gを介して摺動部4aの前側面右端部に一体に連結され、摺動部4aの前側面で折り返し部4e及び押圧片部4fの間に隙間4iが設けられ、押圧片部4fが摺動部4aの前側面に沿って左右方向に弾性変位可能である。
【0035】
ローター6は、図1及び図3及び図5に示すように、回転用スターホイル14と位置決め用スターホイル15を同軸上に一体に形成してなる。
【0036】
ローター6には、回転用スターホイル14側の側面の中心部に形成する円形の軸受け凹部6aと、位置決め用スターホイル15側の側面の中心部から垂直に突出するローター軸6bと、位置決め用スターホイル15側の側面にローター軸6bと同心な同一円周上の等間隔な3箇所から垂直に突出するコンタクト取り付けピン6cが一体に設けられる。
【0037】
回転用スターホイル14は、外周に山部14aと谷部14bを交互に有し、位置決め用スターホイル15は、外周に回転用スターホイル14と同数(12ずつ)の山部15aと谷部15bを交互に有する。両スターホイル14,15における山部14a,15aの頂点には丸みが付けられる。
【0038】
回転用スターホイル14の山部14aにおける斜面の傾斜角度は、押しボタン4の送りレバー4cにおける押圧片部4fの下端を押し当てやすいように、45度より大きい角度、例えば、60度に設定されるのに対し、位置決め用スターホイル15の山部15aにおける斜面の傾斜角度は、押しボタン4の押し込み動作に必要な押圧力(スイッチ操作力)が大きくならず、しかし、過小になって不用意に押しボタン4が押し込まれることもなく、しかも、明確な操作感触を発生できるように、45度より小さい角度、例えば、30度に設定される。
【0039】
図1に示すように、位置決め用スターホイル15の山部15aにおける頂点には、さらに小突起16が設けられる。
【0040】
小突起16の断面形状は、略半円形状に形成され、小突起16の先端には丸みが付けられる。
【0041】
小突起16の外形状は、位置決め用スターホイル15の軸線と平行な筋状に形成され、小突起16が山部15aの全幅にわたってその頂点に設けられる。
【0042】
コンタクト9は、図3及び図9(A),(B)ないし図10(A),(B)に示すように、円盤状に形成される。
【0043】
コンタクト9には、その中心に形成する内外面貫通の円形の中心孔9aと、その周囲に形成する同心な円環状の繋ぎ部9bと、繋ぎ部9bの等間隔な3箇所に形成する内外面貫通の取り付け孔9cと、繋ぎ部9bの等間隔な3箇所から放射方向に突出する突片9dと、各突片9dからその相互間における繋ぎ部9bの周囲に等間隔をおいて、図9(A)の矢印aで示すコンタクト9の回転方向(時計方向)とは逆方向(反時計方向)に円弧状に延出する片持ち梁の可動接片9eと、各可動接片9eを二股に形成するスリット9fと、各可動接片9eの先端に表面が凸、裏面が凹になるように形成する半円状の可動接点9hが一体に設けられる。
【0044】
各可動接片9eには、その基端から先端にかけて漸次持ち上げる傾斜角度が付けられ、各可動接片9eが、それぞれ、コンタクト9の厚み方向に弾性変位可能である。
【0045】
各可動接片9eは、同一形状に形成され、コンタクト9の外周部に各可動接点9hが、、中心孔9aと同心な同一円周上の等間隔な3箇所に設けられる。
【0046】
各突片9dの外周縁と各可動接片9eの外周縁は、中心孔9aと同芯な同一円周上にあり、コンタクト9の外形が、各可動接片9eの先端とそれからさらにコンタクト9の回転方向aとは逆方向にある各突片9dとの間隙で途切れる円形に形成される。
【0047】
次に、押しボタンスイッチを組み立てるには、圧子バネ8を、ケース1の圧子収納凹部1gに圧子押え爪1hの間から落とし込み、圧子収納凹部1gにおける圧子バネ棒1pの外側に組み込んだ後、その圧子収納凹部1gに圧子押え爪1hの間から圧子7を押し込んで組み込んでおく。
【0048】
圧子バネ8は、圧子7と圧子収納凹部1gの底面の間で圧縮され、圧子7を常時上方に付勢し、圧子押え爪1hは、圧子7を上方から押えて、圧子収納凹部1gからの飛び出しを防止する。圧子7は、その一部が圧子押え爪1hの間からローター収納空間1cの底側に突出される。圧子7の中心は、ローター軸1fの軸線を含む垂直な平面内にある。
【0049】
また、コンタクト9の裏面とローター6の位置決め用スターホイル15側の側面を対向させた状態で、各コンタクト取り付けピン6cをそれらに対応する取り付け孔9cに嵌め込みながら、ローター軸6bをそれに対応する中心孔9aに嵌め込み、コンタクト9をローター6の位置決め用スターホイル15側の側面に共回りするように組み付けておく。
【0050】
圧子バネ8及び圧子7を組み込んだケース1には、コンタクト9を組み付けたローター6を組み込む。ケース1の開放した前側面とローター6の回転用スターホイル14側の側面を対向させた状態で、ケース1側のローター軸1fをローター6側の軸受け凹部6aに嵌め込みながら、コンタクト9を組み付けたローター6をケース1のローター収納空間1cの下部に組み込む。
【0051】
コンタクト9を組み付けたローター6を組み込んだケース1には、端子ベース2を組み付ける。ケース1の開放した前側面と端子ベース2の内面を対向させた状態で、各ベース固定ピン1iをそれらに対応するピン孔2aに嵌め込むと共に、各嵌合突起2bをそれらに対応する嵌合凹部1jに嵌め込みながら、ローター6側のローター軸6bを端子ベース2側の軸受け凹部2eに嵌め込み、端子ベース2をケース1の開放した前側面に組み付ける。
【0052】
端子ベース2は、その外面に突出する各ベース固定ピン1iの先端部を溶潰することで、ケース1の開放した前側面で固定できる。
【0053】
ケース1は、その開放した前側面が端子ベース2で覆われ、ローター収納空間1cの前側面開口が端子ベース2で閉鎖される。
【0054】
ローター6は、その両側が同軸上にあるローター軸6b,1fでローター収納空間1cの相対する前後側壁(端子ベース2と仕切り壁1a)の内面に回転自在に支えられる。
【0055】
コンタクト9は、ローター6の位置決め用スターホイル15側の側面とコンタクト収納凹部2dの底面の間に挟まれて、各可動接点9hの表面が各可動接片9eの弾性で可動接点摺動面13に押し付けられ、その反力で繋ぎ部9bと突片9dの裏面がローター6の位置決め用スターホイル15側の側面に当接した状態で、コンタクト収納凹部2dに回転自在に嵌め込まれる。
【0056】
さらに、押しボタン復帰バネ5を、ケース1の押しボタン収納空間1bにおける押しボタンガイド1eの外側に組み込んでおく。
【0057】
端子ベース2を組み付け、押しボタン復帰バネ5を組み込んだケース1には、押しボタン4を組み付ける。押しボタンガイド1eを中心孔4bに嵌め込むと共に、摺動部4aと送りレバー4cとの繋ぎ部4gをケース1の隙間1dに嵌め込みながら、摺動部4aをケース1の押しボタン収納空間1bに嵌め込むと共に、送りレバー4cをケース1のローター収納空間1cに嵌め込み、押しボタン4をケース1における押しボタン収納空間1bの上側に突出して組み付ける。
【0058】
最後に、カバー3を、押しボタン4を組み付けたケース1に組み付ける。ケース1の上部を前後左右の脚部3c,3d,3e,3fの内側に嵌め込むと共に、押しボタン4を押しボタン孔3aに嵌め込みながら、各カバー位置決め突起1kをそれらに対応する切り欠き部3bに嵌合させて、カバー3をケース1の開放した上面に組み付ける。
【0059】
カバー3は、左右の脚部3e,3fをそれらに対応するカバー嵌合凹部1nに嵌め込むと共に、各カバー係合爪1m,2cをそれらに対応する前後の脚部3c,3dの内側に嵌め込んで係合させることで、ケース1の開放した上面で固定できる。
【0060】
ケース1は、その開放した上面が押しボタン4の周囲においてカバー3で覆われ、ローター収納空間1cの上面開口がカバー3で閉鎖される。
【0061】
押しボタン復帰バネ5は、摺動部4aの下面のバネ座部と押しボタン収納空間1bの底面のバネ座部の間で圧縮され、押しボタン4を常時上方に付勢する。押しボタン4は、その下側周囲に張り出す摺動部4aの上端がカバー3の押しボタン孔3aの開口縁部で押えられて、押しボタン孔3aからカバー3の上面側に突出される。
【0062】
このように組み立てられた押しボタンスイッチでは、ケース1と端子ベース2とカバー3で、押しボタン4を上面から突出し、底側から外部接続端子部10c,11c,12cを突出し、可動接点9hが対向する内面側に固定接点10a,11a,11b,12a,12bを設けたスイッチ外箱が構成される。
【0063】
また、送りレバー4cとローター6の回転用スターホイル14で、押しボタン4の押圧動作を回転運動に変えて可動接点9hに与えるスイッチ駆動機構が構成される。
【0064】
さらに、ローター6の位置決め用スターホイル15と圧子7と圧子バネ8で、押しボタン復帰状態で可動接点9hの位置を保持する位置決め機構が構成される。
【0065】
次に、押しボタンスッチの動作を説明する。図2及び図4ないし図5はいずれも押しボタン復帰状態を示し、押しボタン4は押圧されていないから、摺動部4aの上端がカバー3に当接し、送りレバー4cにおける押圧片部4fの下端が非作用位置で保持される自由位置に復帰している。
【0066】
押しボタン復帰状態で送りレバー4cにおける押圧片部4fの下端が保持される非作用位置とは、回転用スターホイル14の中心を通る水平線が中心より右側で交わる回転用スターホイル14のピッチ円上の1点における接線上で、押圧片部4fの下端が下から上に移動するとき、その押圧片部4fの下端が回転用スターホイル14からその中心を通る水平線より上側で離反する位置である。
【0067】
圧子7は、ローター収納空間1cの底側に突出された一部が、位置決め用スターホイル15のある1つの谷部15bに嵌り込み、ローター6とコンタクト9の自由回転を規制し、可動接点9hの位置を保持している。
【0068】
このときの押しボタンスッチの接点部の状態が、例えば、図10(A)に示すようになる。すなわち、3つの可動接点1hのうち、ある1つの可動接点1hは共通接点10aと接触し、他の1つの可動接点1hは一方の第1選択接点11aと接触し、残り1つの可動接点1hが第4絶縁接点13dと接触している。これにより、共通端子10と第1選択端子11は導通し、第2選択端子12は非導通になっており、車載用ルームランプの点灯用回路を開き、消灯用回路を閉じている。
【0069】
そして、復帰状態で押しボタン4を押圧して押し込むと、押しボタン4と一体に摺動部4aと送りレバー4cが下方に動き、摺動部4aは押しボタン復帰バネ5を圧縮する。送りレバー4cは押圧片部4fの下端を回転用スターホイル14のある1つの山部14aの斜面に当接し、その山部を押し下げる。これにより、ローター6とコンタクト9が、ローター軸1f,6bを中心にa方向(時計方向)に一定の角度を回転する。本実施の形態では、押しボタン4の押し込みストロークによるローター6とコンタクト9の回転角は30度である。
【0070】
また、ローター6とコンタクトに連動して3つの可動接点1hが、ローター軸1f,6bを中心にa方向(時計方向)に回転角30度で回転しながら可動接点摺動面13上を摺動する。図10(B)に示すように、3つの可動接点1hのうち、共通接点10aと接触していたある1つの可動接点1hは、その回転角では共通接点10aを通過しないのでそれと接触し、一方の第1選択接点11aと接触していた他の1つの可動接点1hは、その回転角に対応する位置に設けられた第1絶縁接点13aと接触し、第4絶縁接点13dと接触していた残り1つの可動接点1hが、その回転角に対応する位置に設けられた一方の第2選択接点12aと接触して接点の切り換えが行われる。これにより、共通端子10と第2選択端子12が導通し、第2選択端子12は非導通になり、車載用ルームランプの消灯用回路が開かれ、点灯用回路が閉じられる。
【0071】
このように接点を切り換えるとき、図11(A),(B)に示すように、ローター6は、位置決め用スターホイル15の外周に真下から圧子バネ8で押し付けた圧子7を、位置決め用スターホイル15の外周に交互に有する山部15aと谷部15bで上下動させながら回転し、圧子7が、接点を切り換えるローター6の回転角30度で位置決め用スターホイル15の相対する谷部15bに嵌り込んで、ローター6とコンタクト9の位置が、回転した位置で保持される。これにより、接点を切り換えた後の可動接点9hの位置が保持される。また、山部15aと谷部15bを交互に有する位置決め用スターホイル15の外周に圧子7を接触させることで、操作感触を発生させることができる。
【0072】
押しボタン4の押圧を解除すると、押しボタン復帰バネ5で押しボタン4と一体に摺動部4aと送りレバー4cが上方に動き、元の復帰状態に戻されるが、ローター6は圧子7圧子バネ8、位置決め用スターホイル15で位置決めされており、接点の状態はそのまま保持される。
【0073】
再度押しボタン4を押圧して押し込むと、ローター6とコンタクト9が、ローター軸1f,6bを中心にa方向(時計方向)に回転角30度で回転し、これに連動して3つの可動接点1hが、ローター軸1f,6bを中心にa方向(時計方向)に回転角30度で回転し、その回転角に対応した接点と接触して、図10(A)に示す接点状態と同じように、共通端子10と第1選択端子11が導通し、第2選択端子12は非導通になり、車載用ルームランプの点灯用回路が開き、消灯用回路が閉じられるような接点状態への切り換えが行われる。
【0074】
このような動作を繰り返して押しボタンの押圧で2種類のスイッチ回路を開閉操作するのである。
【0075】
ここで、押しボタンスイッチでは、位置決め用スターホイル15における山部15aの頂点に小突起16を設けたから、山部15aの頂点に圧子7からの荷重を受けたときに小突起16がバランスを取りにくくし、山部15aの斜面の傾斜角度を大きくしなくても、山部15が圧子7に相対する位置で位置決め用スターホイル15が止まるのを防止することができ、ひいては、接点の正確な切り換え及び安定した接点の切り換えを実現することができる。このような作用効果は、山部15aの斜面の傾斜角度を大きくしないから、押しボタン4の押圧回数に伴って薄れ、ついには消失することなく発揮することができると共に、山部15aの高さを低くできるから、スイッチの低背化を実現することができる。
【0076】
また、位置決め用スターホイル15における山部15aや谷部15b及び圧子7に比べて極端に小さい小突起16で上記作用効果を得ることができるから、小突起16が圧子7を乗り越えるときに必要な力は、山部15aが圧子7を乗り越えるときに必要な力に比べて無視できるほど小さく、従来と同等のスイッチ操作力で接点の切り換えを行うことができると共に、小突起16が操作感触に影響を与えることもなく、従来と同等の操作感触を得ることができる。
【0077】
さらに、小突起16の先端に丸みを付けるから、耐摩耗性に優れ、上記作用効果は、押しボタン4の押圧回数に伴って薄れ、ついには消失するのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチのローター(スターホイル)の斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの分解図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの押しボタン部の縦断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの駆動機構部及び位置決め機構部の縦断面図である。
【図6】(A)は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチのケースの平面図(B)は同ケースの側面図である。
【図7】(A)は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの端子ベースの側面図,(B)は同端子ベースの背面(内面)図である。
【図8】(A)は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの押しボタンの側面図,(B)は同押しボタンの側面図である。
【図9】(A)は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチのコンタクトの正面図,(B)は同コンタクトの底面図である。
【図10】(A)は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの接点部の正面図、(B)は同接点部の切り替え後の正面図である。
【図11】(A)は本発明の一実施の形態に係る押しボタンスイッチの位置決め機構部の部分拡大正面図、(B)は同位置決め機構部の動作途中の部分拡大正面図である。
【符号の説明】
【0079】
4 押しボタン
7 圧子
8 圧子バネ
9h 可動接点
10a 共通接点(固定接点)
11a,11b 第1選択接点(固定接点)
12a,12b 第2選択接点(固定接点)
15 位置決め用スターホイル
15a 山部
16 小突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動復帰する押しボタンの押圧で一方向に一定の角度ずつ回転するスターホイルと、このスターホイルの外周にバネで押し付けた圧子と、前記スターホイルに共回りするように取り付けた可動接点と、この可動接点が回転角に対応して接触する固定接点とを備え、前記スターホイルにおける山部の頂点に、先端に丸みを付けた小突起を設けたことを特徴とする押しボタンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−218100(P2009−218100A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61072(P2008−61072)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】