説明

押し込み操作型電子部品及びプッシュスイッチ

【課題】半田付け時のフラックス管理が簡単であるとともに、メタルマスク厚の半田付けにも対応でき、また小型・薄型化が可能な構造にする。
【解決手段】一端側にハウジング2の後側面2cに表出した外側固定端子7aを有し、他端側にハウジング2の下面2a側から左右の側面2b外方に導出した導出端子7bを有するアース用の接点部材7を切り換え用の接点部材5,6と共にハウジング2にインサート成形して設け、かつ、金属材で形成したカバー10をアース用の接点部材7の外側固定端子7aに当接させてハウジング2に取り付けてなり、アース用の接点部材7の導出端子7bをプリント基板のアース回路に接続して装着される押し込み操作型電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押し込み操作型電子部品及びプッシュスイッチに関するものであり、特に、種々の電子機器のプリント基板に面実装して使用するのに好適な押し込み操作型電子部品及びプッシュスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器のプリント基板に面実装によって取り付けられるプッシュスイッチ等の押し込み操作型電子部品は各種知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、電子機器のプリント基板に実装して使用される押し込み操作型電子部品であるプッシュスイッチにあっては、操作する人の身体が帯びている静電気が、手や指からプッシュスイッチの操作部を介して電子機器の回路に流入しないように保護するための対策が必要とされる。その対策方法として、一般に、電子機器の操作部近傍の導電体に、静電気をプリント基板のアース回路に逃がすためのアース端子を設けている。
【0004】
このような静電気対策を施した従来における押し込み操作型電子部品として、プッシュスイッチを一例として図10〜図14を用いて次に説明する。
【0005】
図10は静電気対策を施した従来のプッシュスイッチの斜視図、図11は図10のB−B線断面図、図12は同上プッシュスイッチの正面図、図13は同上プッシュスイッチの平面図、図14は同上プッシュスイッチの側面図である。
【0006】
図11に示すように、プッシュスイッチ101は、上面開放となった収納部103を有する樹脂材で形成された箱形のハウジング102を備え、該ハウジング102の内底部に弾性金属薄板製の円形ドーム状の可動接点104が載せられ、該可動接点104の中央下面がハウジング102にインサート成形固定された金属薄板製の固定接点105a,105bと対峙されている。さらに、可動接点104の上部に保護フィルム106を介して樹脂製の操作部材107が載せられ、該操作部材107の上から該ハウジング102の上面を覆って金属材のカバー108が取り付けられている。
【0007】
前記ハウジング102は、該ハウジング102における前後の側面102a,102bの左右隅部に、それぞれ該ハウジング102の下面102cに沿って外方へ突出された係合凸部109,109を備える。また、ハウジング102にインサートされている固定接点105a,105bの他端側は該ハウジング102の下面102cに導出され、さらに、該他端側に該下面102cからハウジング102の左右側面102d,102d外方に向かう導出端子105A,105Bを設けている。
【0008】
前記操作部材107は、ハウジング102の前側面102aに設けている開口部111を貫通してハウジング102の前側面102aから外方に突出された押圧部107aと可撓性の作動部107bとを有する。
【0009】
前記カバー108は、ハウジング102の上面に位置し、かつ、中央に収納部103の内側に向かって斜めに切り起こされた傾斜片110を有する上面板108aと、該上面板108aの前後の端からハウジング102の前後の側面102a,102bに沿ってそれぞれ左右1対ずつ垂下された4個の取付脚108b,108b,108b,108bと、該各取付脚108b,108b…の下方にハウジング102の係合凸部109に対向して各々設けられた係止片108cを備え、該係止片108cを該係合凸部109の下面内に折り曲げてカシメることによりハウジング102に取り付けられている。
【0010】
なお、ハウジング102の前側面102aに設けられた左右1対の取付脚108b,108bの間は、少なくとも前記操作部107の作動部107bが配置されるのに十分な量だけ離されている。
【0011】
また、上面板108aの後端中央には、該上面板108aの後端からハウジング102の後側面102bに沿って垂下されたアース端子片112が設けられている。該アース端子片112の下方は下面をハウジング102の底面とほぼ同じ高さにして、外方に向かってほぼ直角に折り曲げられて略L字状に形成されている。
【0012】
この従来のプッシュスイッチ101は、図14に示すように、実装されるプリント基板115から操作部材107を前方(同図において左方)に突出させ、かつ、各導出端子105A,105Bを対応する配線部に半田付けして表面実装状態で搭載される。また、実装される時に、金属のカバー108のアース端子片112も対応するアース回路の配線部に半田付けされる。
【0013】
このようにしてプリント基板115に実装されたプッシュスイッチ101は、操作部材107が図11の2点鎖線で示す位置に配置されている状態で、押圧部107aの前端を後方に向かって水平に押し込むと、操作部材107がハウジング102上面に沿って保護フィルム106上を水平に移動し、作動部107bの先端が傾斜片110で下方に案内され、下方に位置する円形ドーム状の可動接点104に押し下げ力を加える。
【0014】
その押し下げ力が所定の大きさを超えると、図11に実線で示すように、可動接点104の中央部が反転動作して、その中央部下面が固定接点105a,105bに接触して、可動接点104を介して各導出端子105A,105B間が短絡したスイッチオン状態となる。なお、操作部材107の押し込み量は、押圧部107aの後面がハウジング102の前側面102aに当接するとそれ以上の押し込みが規制される。
【0015】
一方、押圧部107aの操作力を解くと、可動接点104が元の上方凸形に自己復元して作動部107bが押し上げられ、該作動部107bの先端が傾斜片110で案内されることにより操作部材107は図11に2点鎖線で示す位置まで前方に押し戻されて、元のスイッチオフ状態に戻る。
【0016】
そして、使用電子機器のプリント基板115に装着されたプッシュスイッチ101を操作する人の指が、押圧部107aの前端を押す際に、操作する人の身体に帯びている静電気が指から操作部材107に流れても、その静電気はカバー108及びアース端子片112を通ってプリント基板115のアース回路に流される。
【特許文献1】特開平9−120742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記従来のプッシュスイッチのように、カバー108における上面板108aの後端からハウジング102の後側面102bに沿って垂下されたアース端子片112を設け、該アース端子片112をプリント基板115のアース回路の配線部に半田付けして静電気対策を行う構造においては、アース端子片112を半田付けする際に、ハウジング102とアース端子片112の隙間S1(図14参照)に毛細管現象でフラックスが流入する可能性があり、半田付け時のフラックス管理が難しいという問題があった。
【0018】
そのフラックスの流入防止対策として、ハウジング102とアース端子片112の隙間S1を大きく確保して毛細管現象を無くす構造が求められているが、隙間S1を大きくすることによって外形サイズが大きくなるという問題点があった。さらに、アース端子片112は、その先端(下端)が外方へ直角に折り曲げられているので、カバー108からの突出量S2だけ大きくなり、小型化の面で問題があった。
【0019】
また、アース端子片112をカバー108に設けているので、アース端子片112の半田付け面がハウジング102とカバー108の組み込み寸法となり、ハウジング102側にインサートして設けている導出端子105A,105Bの半田面との間に誤差が生じ易く、メタルマスク厚の薄い半田付けに適さないという問題があった。
【0020】
そこで、半田付け時のフラックス管理が簡単であるとともに、メタルマスク厚の半田付けにも対応でき、また小型・薄型化が可能な構造にするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、収納部を有する樹脂材からなる箱形のハウジングと、該ハウジングの上面を覆って取り付けられた金属材からなるカバーとを備えてなり、電子機器のプリント基板に面実装する押し込み操作型電子部品において、一端側に前記ハウジングの前または後側面に表出した外側固定端子を有し、他端側に前記ハウジングの下面側から左右いずれか一方の側面外方に導出した導出端子を有するアース用接点部材を前記切り換え用接点部材と共に前記ハウジングにインサート成形して設け、かつ、前記カバーを前記アース用接点部材の外側固定端子に当接させて前記ハウジングに取り付けてなり、前記アース用接点部材の前記導出端子を前記プリント基板のアース回路に接続して装着される電子部品を提供する。
【0022】
この構成によれば、アース用の接点部材は切り換え用接点部材と共にハウジングにインサート成形されているので、導出端子をプリント基板の配線部に半田付けする時にフラックスの流入をインサート箇所で防止できる。また、アース用接点部材の外側固定端子は、アース用接点部材の導出端子及び切り換え用接点部材の導出端子が導出されている左右いずれかの側面と交差しているハウジングの前または後側面に導出されていて、該前または後側面でカバーが外側固定端子に当接されてアースをとる構造を採用しているので、導出端子をプリント基板の配線部に半田付けする時、カバーは半田付けする箇所から大きく離れている状態になっている。したがって、フラックスがハウジングとカバーの隙間から侵入することもない。さらに、ハウジングの下面よりアース機能を持つアース用接点部材の導出端子を導出させることができ、該アース用接点部材の導出端子と切り換え用接点部材の導出端子の高さのバラツキ(コプラナリティ)が小さくなる。
【0023】
請求項2記載の発明は、上記ハウジングは、前後の各側面の左右隅部に該ハウジングの下面に沿って外方へ突出された係合凸部を備え、上記カバーは、上記ハウジングの上面に位置する上面板と、該上面板の前後端から前記ハウジングの前後の側面に沿って垂下された複数の取付脚と、該各取付脚の下方に前記ハウジングの前記係合凸部の下面に対向して設けられ該係合凸部の下面内に折り曲げて前記ハウジングにカシメ固定可能な係止片を備え、かつ、前記複数取付脚のうちの少なくとも1個の取付脚を上記アース用の外側固定端子に対向させて当接可能に設けてなる押し込み操作型電子部品を提供する。
【0024】
この構成によれば、カバーにおける取付脚の係止片をハウジングの係合凸部の下面内に折り曲げてカシメることにより、操作力を該カシメ部分である係合凸部の下面でも受けるようにしたため、カバーの剥離強度が増す。
【0025】
請求項3記載の発明は、収納部を有する樹脂材からなる箱形のハウジングと、該収納部の内底部に設けられた固定接点と、該固定接点上に配置された可動接点と、前記ハウジングの前側面から外方に突出する押圧部と可撓性の作動部とを有する操作部材と、前記収納部内側に切り起こされた傾斜片を有し前記ハウジングの上面に取り付けられた金属材からなるカバーとを備え、前記操作部材が押し込み操作されるのに伴い前記作動部が前記傾斜片下を摺動して下方へ撓むことで前記可動接点を押圧するプッシュスイッチにおいて、前記ハウジングが、一端側に前記固定接点を有し他端側に該ハウジングの下面側から左右いずれか一方の側面外方に導出した導出端子を有する第1接点部材と、一端側に該ハウジングの前または後側面に表出した外側固定端子を有し他端側に該ハウジングの下面側から左右いずれか一方の側面外方に導出したアース用の導出端子を有する第2接点部材をインサートして所定の形状に成形されているとともに、前記カバーが、前記第2接点部材の外側固定端子に当接されて前記ハウジングの上面に取り付けられてなり、前記アース用の導出端子をプリント基板のアース回路に接続して面実装されるプッシュスイッチを提供する。
【0026】
この構成によれば、アース用の第2接点部材は接点切り換え用の第1接点部材と共にハウジングにインサート成形されているので、導出端子をプリント基板の配線部に半田付けする時にフラックスの流入をインサート部分で防止できる。また、第2接点部材の外側固定端子は、第1接点部材の導出端子及び第2接点部材の導出端子が導出されている左右いずれかの側面と交差しているハウジングの前または後側面に導出されていて、該前または後側面でカバーが外側固定端子に当接されてアースをとる構造を採用しているので、導出端子をプリント基板の配線部に半田付けする時、カバーは半田付けする箇所から大きく離れている状態になっている。したがって、フラックスがハウジングとカバーの隙間から侵入することもない。さらに、ハウジングの下面よりアース機能を持つアース用接点部材の導出端子を導出させることができ、該アース用接点部材の導出端子と切り換え用接点部材の導出端子の高さのバラツキが小さくなる。
【0027】
請求項4記載の発明は、上記ハウジングは、前後の各側面の左右隅部に該ハウジングの下面に沿って外方へ突出された係合凸部を備え、上記カバーは、上記ハウジングの上面に位置する上面板と、該上面板の前後端から前記ハウジングの前後の側面に沿って垂下された複数の取付脚と、該各取付脚の下方に前記ハウジングの前記係合凸部の下面に対向して設けられ該係合凸部の下面内に折り曲げて前記ハウジングにカシメ固定可能な係止片を備え、かつ、前記複数取付脚のうちの少なくとも1個の取付脚を上記アース用の外側固定端子に対向させて当接可能に設けてなるプッシュスイッチを提供する。
【0028】
この構成によれば、カバーにおける取付脚の係止片をハウジングの係合凸部の下面内に折り曲げてカシメることにより、操作力を該カシメ部分である係合凸部の下面でも受けるようにしたため、カバーの剥離強度が増す。
【発明の効果】
【0029】
請求項1記載の発明は、ハウジングにアース用の接点部材及び切り換え用接点部材をインサート成形していることにより、アース用の接点部材及び切り換え用接点部材の各導出端子をプリント基板の配線部に半田付けするときにフラックスの流入をインサート成形部分で防止することができる。また、該各導出端子をプリント基板の配線部に半田付けする時、フラックスがハウジングとカバーの隙間から侵入することもないので、半田付け時のフラックス管理が簡単になる。さらに、カバーとハウジングの隙間を無くした構造にすることができるので、製品の小型・薄型化に貢献できる。また、ハウジングの下面よりアース機能を持つアース用接点部材の導出端子を導出させることができ、各導出端子の高さのバラツキを小さくできるため、部品の小型・薄型化に伴う半田のメタルマスク厚薄化への対応が可能となる。
【0030】
請求項2記載の発明は、操作力をハウジングの係合凸部の下面でも受けるようにしたため、請求項1記載の発明の効果に加えて、カバーの剥離強度が向上したものにすることができる。
【0031】
請求項3記載の発明は、ハウジングにアース用の第2接点部材及び切り換え用の第1接点部材をインサート成形していることにより、第1及び第2接点部材の各導出端子をプリント基板の配線部に半田付けするときにフラックスの流入をインサート成形部分で防止することができる。また、該各導出端子をプリント基板の配線部に半田付けする時、フラックスがハウジングとカバーの隙間から侵入することもないので、半田付け時のフラックス管理が簡単になる。さらに、カバーとハウジングの隙間を無くした構造にすることができるので、製品の小型・薄型化に貢献できる。また、ハウジングの下面よりアース機能を持つ第2接点部材の導出端子を導出させることができ、各導出端子の高さのバラツキを小さくできるため、部品の小型・薄型化に伴う半田のメタルマスク厚薄化への対応が可能となる。
【0032】
請求項4記載の発明は、操作力をハウジングの係合凸部の下面でも受けるようにしたため、請求項3記載の発明の効果に加えて、カバーの剥離強度が向上したものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
半田付け時のフラックス管理が簡単であるとともに、メタルマスク厚の半田付けにも対応でき、また小型・薄型化が可能な構造にするという目的を達成するために、収納部を有する樹脂材からなる箱形のハウジングと、該ハウジングの上面を覆って取り付けられた金属材からなるカバーと、該カバーが取り付けられたハウジング内の前側面から外方に押圧部を突出させて該ハウジング内に収容された操作部材と、該操作部材が押し込み操作されることによって切り換えられる接点と接続されている導出端子を前記ハウジングの下面側から左右いずれか一方の側面外方に導出してなる複数の切り換え用接点部材とを備えてなり、電子機器のプリント基板に面実装する押し込み操作型電子部品において、一端側に前記ハウジングの前または後側面に表出した外側固定端子を有し、他端側に前記ハウジングの下面側から左右いずれか一方の側面外方に導出した導出端子を有するアース用接点部材を前記切り換え用接点部材と共に前記ハウジングにインサート成形して設け、かつ、前記カバーを前記アース用接点部材の外側固定端子に当接させて前記ハウジングに取り付けてなり、前記アース用接点部材の前記導出端子を前記プリント基板のアース回路に接続して装着される構造にしたことにより実現した。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の押し込み操作型電子部品の一実施例を図1〜図9に示すプッシュスイッチを一例として説明する。図1は該プッシュスイッチを示す斜視図、図2は操作部材を押し込んだ状態で示す図1のA−A線に沿う断面図、図3は該プッシュスイッチの正面図、図4は該プッシュスイッチの平面図、図5は該プッシュスイッチの側面図、図6は該プッシュスイッチの底面図、図7は該プッシュスイッチの要部分解斜視図、図8はハウジングを示す斜視図、図9は接点部材の配置状態及びカバーの取り付け状態を簡略化して示す説明図である。
【0035】
図1〜図9において、プッシュスイッチ1のハウジング2は、樹脂材からなり、図2及び図7,図8に示す収納部3を有する上面開口状の箱形に形成されている。この収納部3の内底部4には、導電性の金属板からなる切り換え用接点部材としての一対の第1接点部材5,6と、同じく導電性の金属板からなるアース用接点部材としての第2接点部材7がインサート成形により一体に埋設されている。
【0036】
図2及び図7,図8に示すように、前記1対の第1接点部材5,6の一端側には一部が収納部3の内底部4に表出された固定接点5a,6aが設けられ、他端側にはハウジング2の下面2a側から対向する左右1対の側面2b,2b外方にそれぞれ導出された導出端子(外部端子)5b,6bが設けられている。なお、第1接点部材5の導出端子5bはハウジング2の後側面2cの中央にも、下面2a側から該後側面2c外方に導出して設けられている。
【0037】
一方、前記第2接点部材7の一端側にはハウジング2の後側面2cで、かつ、一方の一側面2bに偏った位置(図7,図8,図9では右側面2bに偏った位置)に、該ハウジング2の上面2dから下面2a側に向かって垂下された状態で該後側面2cに沿って表出されている外側固定端子7aが設けられ、他端側にはハウジング2の下面2a側から第1接点部材6の導出端子6bと同じ側面2b外方に導出されて導出端子7bが設けられている。
【0038】
また、前記ハウジング2の前側面2eには、前記収納部3に連通する開口部8が設けられており、該開口部8から後述する操作部材9の押圧部9a及び作動部9bの一部が突出されて該操作部材9が収納部3内に収納される構造となっている。また、ハウジング2の前後の側面2c,2eの左右両端部には、後述するカバー10に設けている取付脚10bの係止片10cがカシメ係合される前または後の外方へ突出する係合凸部12が形成されている。
【0039】
前記収納部3の一対の固定接点5a,6a上には、導電性の薄板金属板でドーム状に湾曲して反転可能に形成された可動接点13が載置されている。該可動接点13は、ドーム状の頂部下面が内底部4に表出された一方の固定接点6aと一定の間隔を維持して対峙されており、また、ドーム状の外周の周縁部が収納部3の内底部に表出された他方の固定接点5aと接触した状態で配置されている。
【0040】
また、可動接点13の上面側には、ポリアミド樹脂等の絶縁性の樹脂シート材からなる保護シート14が配設されている。該保護シート14は周縁部が前記ハウジング2の収納部3上面に載置されて該収納部3の開口を覆うように接着剤等で固着されており、該収納部3内に配設された各接点部へのゴミ、異物等の侵入を防止している。
【0041】
図7に示すように、前記操作部材9は樹脂材等からなり、前記ハウジング2の開口部8から常に突出している押圧部9aと、該押圧部9aから前記収納部3内に突出して形成された作動部9bと、該作動部9bの周りに設けられた開口部15cを介して該作動部9bの両側部及び後部を囲むように該作動部9bに接続して形成されたスライド部9cとを有している。また、該押圧部9aは、該作動部9bの前先端側で該作動部9bから上下及び左右外方に向かって直角に大きく突出された状態で設けられている。
【0042】
該押圧部9aは、操作部材9をハウジング2外側から押し込み力を付与するときの操作面となる機能に加えて、ハウジング2の開口部8の左右両側に位置して設けられる後述するカバー10の取付脚10b,10bが前方外側に変形するのを防止するための機能も有しているもので、該押圧部9aの左右方向の幅は、図3に示すようにカバー10の取付脚10b,10bの幅よりも十分大きく形成されている。そして、操作部材9がハウジング2の収納部3内に向かって押し込まれて、該操作部材9が最大位置まで摺動された時に、該押圧部9aの後面が取付脚10b,10bの前面の少なくとも一部を覆って当接して(あるいは、押圧部9aの後面がハウジング2の前側面2eに当接し、かつ、取付脚10b,10bの前面に極めて接近して)、該取付脚10b,10bが前方外側へ変形しようとするのをブロックして抑える。
【0043】
なお、該操作部材9は、ハウジング2の収納部3に配設された保護シート14の上面側に配置され、押圧部9aが前記ハウジング2の開口部8から外方に突出されると共に、作動部9bの自由端である当接部9dが前記保護シート14を挟んで前記可動接点13のドーム状の頂部上面に対向して配設され、スライド部9cが前記収納部3内に摺動可能に収納されて設けられる。
【0044】
前記カバー10は、金属板を打ち抜き折り曲げることにより形成されており、前記ハウジング2の上部に取り付けられて収納部3を覆うように平板状に形成された上面板10aと、該上面板10aの前後端における左右両側部からそれぞれ略直角に折り曲げられてL字状に垂下された4個の前記取付脚10b,10b…を有している。また、該取付脚10b,10b…の先端には前記係止片10cが設けられており、該係止片10cをハウジング2の前後の側面2c,2eにおける左右両端部に設けられた前記係止凸部12の下面にカシメて係止することによりカバー10がハウジング2上部に取り付けられている。
【0045】
なお、ハウジング2の後側面2cに沿って取り付けられる左右1対の取付脚10b,10bのうち、一方の取付脚10bは第2接点部材7の外側固定端子7aと対応しており、該カバー10がハウジング2上部に取り付けられたとき、図9に示しているように、外側固定端子7aと当接して電気的接続が図られる。この外側固定端子7aと取付脚10bとの当接は、該取付脚10bの係止片10cをハウジング2側に折り曲げて係止凸部12にカシメることによってより強固に保持される。
【0046】
また、前記上面板10aの略中央には、前記ハウジング2の収納部3内に折り曲げられて形成され、前記操作部材9の作動部9bの当接部9dと当接して該作動部9bを前記可動接点13の押圧方向へ案内する傾斜部10dが形成されている。該傾斜部10dは、上面板10aの板面をハウジング2の収納部3内へ操作部材9の押圧方向に沿って略45度の傾斜を持って折り曲げられている。なお、該傾斜部10dは、前記カバー10が前記ハウジング2の上部に取り付けられた際には、操作部材9のスライド部9cに設けられた開口部15内に位置して配置される。そして、操作部材9の押圧部9aが横方向(前面側)から押圧されることにより、傾斜部10dに作動部9bの当接部9d(自由端)が当接することで該当接部9dが前記可動接点13の押圧方向(押圧部9aの押圧方向と直交する下方向)へ案内され、可動接点13が下方へ押圧されて前記固定接点5a,6aと接触するものとなっている。
【0047】
なお、このプッシュスイッチ1は、ハウジング2の収納部3内に可動接点13、保護シート14、操作部材9を順に収納した後、該ハウジング2の上部からカバー10を装着し、該カバー10の4個の取付脚10b,10b,10b,10bの係止片10cをそれぞれ対応するハウジング2の係合凸部12の下面でカシメて係合させることにより一体化されて組み立てられる。
【0048】
また、使用時には、図5に示すように、実装されるプリント基板20から操作部材9を前方に突出させて、各導出端子5b,6b,7bを対応する配線部に半田付けして表面実装状態で搭載される。その実装状態で、アース用の第2接点部材7は導出端子7bを介してプリント基板20上のアース回路の配線部に接続され、カバー10も該第2接点部材7を介してアース回路の配線部に接続される。
【0049】
次に、上記構成のプッシュスイッチの動作について図2を用いて説明する。
まず、図2に2点鎖線で示す初期の状態では、操作部材9は、作動部9bの当接部9d(自由端)が保護シート14を介して可動接点13のドーム状の頂部上面に当接されている。そして、可動接点13が有する上方への弾性付勢力と、カバー10の傾斜部10dの傾斜面との相乗作用により、図示左方向(押圧部9aの押圧方向とは逆方向)に付勢されて押圧部9aは外方(前方)へ突出されている。この時、可動接点13は外周の周縁部が固定接点5aと接触しているがドーム状の頂部下面が固定接点6aと離間しておりスイッチはオフ状態となっている。
【0050】
この状態から、押圧部9aが図示右方向へ押圧されると、作動部9bの当接部9d(自由端)がカバー10の傾斜部10dに沿って下方向(押圧部9aの押圧方向とは直交する下方向)に案内され、保護シート14を介して可動接点13のドーム状の頂部上面を押圧することで可動接点13が下方へ反転するものとなる。そして、可動接点13のドーム状の頂部下面が固定接点6aと接触することで、固定接点5aと6aが電気的に接続され、スイッチがオン状態となる。
【0051】
また、操作部材9がハウジング2の収納部3内に向かって押し込まれて最大位置まで摺動された時に、該押圧部9aの後面が取付脚10b,10bの前面の一部または全部を覆って該取付脚10b,10bに当接、あるいは、該押圧部9aの後面がハウジング2の前側面2eに当接し、かつ、取付脚10b,10bの前面と接近し、該取付脚10b,10bが前方外側に変形して係止片10cが係合凸部12から外れるのを前側からブロックして防ぐ。
【0052】
次に、このオン状態から、押圧部9bへの押圧が解除されると、可動接点13は自身が有する反転復帰力により上方へ反転復帰し、スイッチがオフ状態となる。そして、この時の付勢力で作動部9bの当接部9dは、逆に傾斜部10dに沿って図示左方向(押圧部9aの押圧方向とは逆方向)に付勢されて押圧部9aが外方へ突出して初期の状態に復帰するものとなる。
【0053】
そして、使用電子機器のプリント基板20に装着されたプッシュスイッチ1を操作する人の指が、押圧部9aの前端を押す際に、操作する人の身体に帯びている静電気が指から操作部材9に流れると、その静電気はカバー10及び第2接点部材7を通ってプリント基板20のアース回路に流される。
【0054】
上記した本発明の実施例によれば、アース用の第2接点部材7は切り換え用の第1接点部材5,6と共にハウジング2にインサート成形されているので、導出端子5b,6b,7bをプリント基板20の配線部に半田付けするときにフラックスの流入をインサート成形部分で防止することができる。
【0055】
また、第2接点部材7の外側固定端子7aは、第2接点部材7の導出端子7b及び第1接点部材5,6の導出端子5b,6bが導出されている左右の側面2b,2bと交差しているハウジング2の後側面2cに導出されていて、該後側面2c側でカバー10の取付脚10bが外側固定端子7aに当接してアースをとる構造をとっているので、カバー10は導出端子5b,6b,7bをそれぞれ半田付けする箇所から大きく離れている。このため、フラックスがハウジング2とカバー10の隙間から侵入することもない。
【0056】
さらに、ハウジング2の下面2aよりアース機能を持つ第2接点部材7の導出端子7bを導出させることができ、第1接点部材5,6の導出端子5b,6bとの高さのバラツキをなくして部品の小型・薄型化に伴う半田のメタルマスク厚薄化への対応が可能となる。
【0057】
また、さらにカバー10における取付脚10bの係止片10cをハウジング2の係合凸部12の下面内に折り曲げてカシメ、操作力を該カシメ部分である係合凸部12の下面でも受けるようにしているので、カバーの剥離強度が増すとともに、カバー10と第2接点部材7の外側固定端子7aとの当接強度も増す。
【0058】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例に係るプッシャスイッチの斜視図。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】本発明のプッシュスイッチの正面図。
【図4】本発明のプッシュスイッチの平面図。
【図5】本発明のプッシュスイッチの側面面図。
【図6】本発明のプッシュスイッチの底面図。
【図7】本発明のプッシュスイッチの要部分解斜視図。
【図8】本発明のプッシュスイッチのハウジングを示す斜視図。
【図9】本発明のプッシュスイッチの接点部材の配置状態及びカバーの取り付け状態を簡略化して示す説明図。
【図10】従来のプッシュスイッチを背面側より見て示す斜視図。
【図11】図10のB−B線に沿う断面図。
【図12】従来のプッシュスイッチを示す正面図。
【図13】従来のプッシュスイッチを示す底面図。
【図14】従来のプッシュスイッチを示す側面図。
【符号の説明】
【0060】
1 プッシュスイッチ
2 ハウジング
2a 下面
2b 左右の側面
2c 後側面
2d 上面
2e 前側面
3 収納部
4 内底部
5 第1接点部材(切り換え用接点部材)
5a 固定接点
5b 導出端子
6 第1接点部材(切り換え用接点部材)
6a 固定接点
6b 導出端子
7 第2接点部材(アース用接点部材)
7a 外側固定端子
7b 導出端子
8 開口部
9 操作部材
9a 押圧部
9b 作動部
9c スライド部
9d 当接部
10 カバー
10a 上面板
10b 取付脚
10c 係止片
10d 傾斜部
12 係合凸部
13 可動接点
14 保護シート
15 開口部
20 プリント基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部を有する樹脂材からなる箱形のハウジングと、該ハウジングの上面を覆って取り付けられた金属材からなるカバーとを備えてなり、電子機器のプリント基板に面実装する電子部品において、
一端側に前記ハウジングの前または後側面に表出した外側固定端子を有し、他端側に前記ハウジングの下面側から左右いずれか一方の側面外方に導出した導出端子を有するアース用接点部材を前記切り換え用接点部材と共に前記ハウジングにインサート成形して設け、かつ、前記カバーを前記アース用接点部材の外側固定端子に当接させて前記ハウジングに取り付けてなり、前記アース用接点部材の前記導出端子を前記プリント基板のアース回路に接続して装着されることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
収納部を有する樹脂材からなる箱形のハウジングと、該ハウジングの上面を覆って取り付けられた金属材からなるカバーと、該カバーが取り付けられたハウジング内の前側面から外方に押圧部を突出させて該ハウジング内に収容された操作部材と、該操作部材が押し込み操作されることによって切り換えられる接点と接続されている導出端子を前記ハウジングの下面側から左右いずれか一方の側面外方に導出してなる複数の切り換え用接点部材とを備えてなり、電子機器のプリント基板に面実装する押し込み操作型電子部品において、
一端側に前記ハウジングの前または後側面に表出した外側固定端子を有し、他端側に前記ハウジングの下面側から左右いずれか一方の側面外方に導出した導出端子を有するアース用接点部材を前記切り換え用接点部材と共に前記ハウジングにインサート成形して設け、かつ、前記カバーを前記アース用接点部材の外側固定端子に当接させて前記ハウジングに取り付けてなり、前記アース用接点部材の前記導出端子を前記プリント基板のアース回路に接続して装着されることを特徴とする押し込み操作型電子部品。
【請求項3】
上記ハウジングは、前後の各側面の左右隅部に該ハウジングの下面に沿って外方へ突出された係合凸部を備え、上記カバーは、上記ハウジングの上面に位置する上面板と、該上面板の前後端から前記ハウジングの前後の側面に沿って垂下された複数の取付脚と、該各取付脚の下方に前記ハウジングの前記係合凸部の下面に対向して設けられ該係合凸部の下面内に折り曲げて前記ハウジングにカシメ固定可能な係止片を備え、かつ、前記複数取付脚のうちの少なくとも1個の取付脚を上記アース用の外側固定端子に対向させて当接可能に設けてなることを特徴とする請求項1記載の押し込み操作型電子部品。
【請求項4】
収納部を有する樹脂材からなる箱形のハウジングと、該収納部の内底部に設けられた固定接点と、該固定接点上に配置された可動接点と、前記ハウジングの前側面から外方に突出する押圧部と可撓性の作動部とを有する操作部材と、前記収納部内側に切り起こされた傾斜片を有し前記ハウジングの上面に取り付けられた金属材からなるカバーとを備え、前記操作部材が押し込み操作されるのに伴い前記作動部が前記傾斜片下を摺動して下方へ撓むことで前記可動接点を押圧するプッシュスイッチにおいて、
前記ハウジングが、一端側に前記固定接点を有し他端側に該ハウジングの下面側から左右いずれか一方の側面外方に導出した導出端子を有する第1接点部材と、一端側に該ハウジングの前または後側面に表出した外側固定端子を有し他端側に該ハウジングの下面側から左右いずれか一方の側面外方に導出したアース用の導出端子を有する第2接点部材をインサートして所定の形状に成形されているとともに、前記カバーが、前記第2接点部材の外側固定端子に当接されて前記ハウジングの上面に取り付けられてなり、前記アース用の導出端子をプリント基板のアース回路に接続して面実装されることを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項5】
上記ハウジングは、前後の各側面の左右隅部に該ハウジングの下面に沿って外方へ突出された係合凸部を備え、上記カバーは、上記ハウジングの上面に位置する上面板と、該上面板の前後端から前記ハウジングの前後の側面に沿って垂下された複数の取付脚と、該各取付脚の下方に前記ハウジングの前記係合凸部の下面に対向して設けられ該係合凸部の下面内に折り曲げて前記ハウジングにカシメ固定可能な係止片を備え、かつ、前記複数取付脚のうちの少なくとも1個の取付脚を上記アース用の外側固定端子に対向させて当接可能に設けてなることを特徴とする請求項3記載のプッシュスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−266700(P2009−266700A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116372(P2008−116372)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】