説明

押ボタンスイッチ及びその固定接点構成部材

【課題】オン操作時の固定接点と可動接点との良好な接触状態を確保し、安定したスイッチング機能を有する押ボタンスイッチ及びその固定接点構成部材を提供する。
【解決手段】押ボタンスイッチは、支持体2上に相互離間して並置された第1固定接点3及び第2固定接点4と、これら固定接点に対向して配置された導電性弾性板からなるドーム状の可動接点10と、前記可動接点10にスイッチング操作応力を印加するための押圧子22とを備え、前記可動接点10は前記第1固定接点3の表面上に載置されるドーム縁部10a及び前記第2固定接点4の表面上に離間して対向する操作応力印加部10bを有し、前記第2固定接点4は前記操作応力印加部10b内面との接離作用を受ける表面位置が前記第1固定接点の表面位置よりも高くなるように形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押ボタンスイッチ及びその固定接点構成部材に係り、特に各種電子機器の操作用スイッチとして使用されるドーム状可動接点内蔵タイプの押ボタンスイッチ及びその固定接点構成部材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の分野等ではその小形化、薄形化及び軽量化が要求され、これら電子機器の機能操作ボタン、テンキー或いはキーボードなどの操作用スイッチに使用される押ボタンスイッチにも同様な要求が益々高まってきている。この要求に応える従来技術の一例として、下記特許文献1に示されているようなドーム状可動接点内蔵タイプの押ボタンスイッチが開発されてきた。
【0003】
この特許文献1に示された押ボタンスイッチについて説明すると、このスイッチはドーナツ状(環状)の導電パターン(第1固定接点)、その内側に並置された円板状の他の導電パターン(第2固定接点)及びこれらと対面配置された球面(ドーム)状の弾性金属板製のダイヤフラム(可動接点)を組合せて形成されている。そして前記可動接点のドーム周縁部は前記第1固定接点の環上面に重ね合わせて接触されており、前記可動接点のドーム頂部は第2固定接点方向に押圧して凹ませることによってその内壁の一部が第2固定接点に接触されると、第1固定接点−第2固定接点間が導通(オン)される。次に前記押圧を解除すると前記可動接点は復元し、第1及び第2固定接点間は非導通(オフ)となる。なお、特許文献1では、前記第1及び第2固定接点の各導電パターンの厚さ関係についての特別な説明は見られない。
【0004】
ところで、図4は前記可動接点の一般的な荷重−変位特性曲線図であり、押ボタンのオン操作により前記可動接点のドーム頂部を第2固定接点に向かって押圧した際の荷重量(縦軸単位N)と可動接点のドーム頂部の変位量(横軸単位mm)との関係を示している。そして、特性曲線の領域Aでは、押ボタンの押圧(操作応力印加)に伴いドーム頂部が次第に凹み変形を進行し、変曲点B(極大値)までは押圧荷重量の増加と共に凹み変位量が増加する。領域Cでは、変曲点D(極小値)までは凹み変位量が更に増加進行するが、押圧荷重量は減少する。前記変曲点Dは、前記ドーム頂部内壁の前記第2固定接点表面に対する初期接触時点(スイッチオン)を示す。領域Eでは、押圧荷重量が増加しても前記変位量が著しく小さく、前記ドーム頂部内壁が前記第2固定接点表面に強く押し付けられた状態となる。
【0005】
このように前記可動接点は、前記変曲点Bから領域Cにおいて、変位量が増加しても押圧荷重量が減少する所謂負性領域が生じて、前記ドーム頂部の反転彎曲現象を起こし、この現象が、押ボタン操作におけるクリック感触を感じさせるように作用する。
【特許文献1】特公平4−74805号特許公告公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記可動接点は、前記第2固定接点に対して、前記変曲点D並びに領域Eのように、確実に接触して、第1及び第2固定接点相互間のオン状態が確保されなければならない。しかしながら、前記可動接点は、球面状ダイヤフラムとなるように弾性金属板を成形加工して製造されるが、その製造バラツキにより、前記反転領域Cにおける前記ドーム頂部の変位量が前記変曲点Dに到達できず、第2固定接点への接触が不充分或いは接触不可能なものに形成される虞がある。この結果、そのスイッチング精度が低下したり、その機能を失なう虞がある。また、このようなバラツキを低減するために、成形加工精度を高く追求すると、部品コストの高騰化を招くなどの問題がある。
【0007】
本発明は、前記従来技術のような問題を解決するためになされたものであり、オン操作時の固定接点と可動接点との良好な接触状態を確保し、安定したスイッチング機能を有する押ボタンスイッチ及びその固定接点構成部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明の押ボタンスイッチは、支持体上に相互離間して並置された第1固定接点及び第2固定接点と、これら固定接点に対向して配置された導電性弾性板からなるドーム状の可動接点と、前記可動接点にスイッチング操作応力を印加するための押圧子とを備え、前記可動接点は前記第1固定接点の表面上に載置されるドーム縁部及び前記第2固定接点の表面上に離間して対向する操作応力印加部を有し、前記第2固定接点は前記操作応力印加部内面との接離作用を受ける表面位置が前記第1固定接点の表面位置よりも高くなるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の押ボタンスイッチにおいて、前記第2固定接点は前記可動接点の操作応力印加部に向って突出する突出部を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の押ボタンスイッチにおいて、前記第2固定接点の前記突出部は前記可動接点の操作応力印加部中心と同軸的な環状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の押ボタンスイッチにおいて、前記突出部の先端部は前記操作応力印加部に向って凸状の曲面を有することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明の固定接点構成部材は、支持体上に相互離間して並置された第1固定接点及び第2固定接点を有し、前記第2固定接点の表面位置は前記第1固定接点の表面位置よりも高く形成され、前記第1固定接点表面上には押ボタンスイッチ用のドーム状の可動接点のドーム縁部が載置され、表面位置の高い前記第2固定接点表面上には前記可動接点のドームの操作応力印加部が離間して対向配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の押ボタンスイッチ及び固定接点構成部材によれば、前記可動接点は前記第1固定接点の表面上に載置されるドーム縁部及び前記第2固定接点の表面上に離間して対向する操作応力印加部を有し、前記第2固定接点は前記操作応力印加部内面との接離作用を受ける表面位置が前記第1固定接点の表面位置よりも高くされている。そのために、押ボタン操作時に、前記操作応力印加部の反転変形領域での変位特性に製造上のバラツキがあっても、前記可動接点の操作応力印加部内壁は、前記表面位置の高い第2固定接点の表面に確実に接触並びに押付けられ、そのスイッチング機能が安定し周辺機器に対する確実なオン、オフの信号伝達ができる。
【0014】
また、前記第2固定接点が前記可動接点の操作応力印加部に向って突出する突出部を有する場合は、前記第2固定接点の中央部への粉塵などの異物集積を防止しスイッチング機能がより安定して確実になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明による押ボタンスイッチ及び固定接点構成部材の実施形態である実施例1乃至実施例3について図1乃至図3を参照して説明する。
【0016】
(実施例1):
図1(a)は本発明の第1の実施例の押ボタンスイッチを示す縦断面図であり、図1(b)はその固定接点構成部材の変形例を示す縦断面図である。
【0017】
図1(a)に示すように、固定接点構成部材1は、例えば回路配線基板に用いられる平板状の絶縁基板のような支持体2、前記支持体2表面上に配置された例えば円環状パターンの第1固定接点3、及び前記第1固定接点3の環内側壁からその内側に離間して前記支持体2表面上に並置された円板状パターンの第2固定接点4を有する。前記第1固定接点3はその円環の外径(直径)が6mm、内径が3.5mm、肉厚が25μm、前記第2固定接点4はその外径(直径)が2.5mm、肉厚が30μmとされ、前記第2固定接点4の表面位置は前記第1固定接点3の表面位置よりも高く、これらの表面位置の差hは5μmとされている。
【0018】
前記支持体2は例えばポリエチレンナフタレート(PEN)製の絶縁フィルムであり、前記各固定接点3、4は例えば銀ペーストのような導電性ペーストを前記PENフィルム2表面にスクリーン印刷法により印刷形成されている。
【0019】
前記印刷法を適用する場合、前記各固定接点のパターン形状及び前記表面位置差hを得るためには、まず、前記第1及び第2固定接点3、4の各パターン形状に対応するマスク印刷を施して、所定の一様厚さの1層目の導電性ペースト印刷層を形成し、その層に乾燥工程を施す。次に、前記第2固定接点4に対応する前記印刷層表面にのみ、前記表面位置差hに相当する厚さで、2層目の導電性ペースト印刷層を重ねて形成するようにマスク印刷工程及び乾燥工程を施す。このようにして前記表面位置差hは簡単に精度よく形成される。なお、前記各固定接点の銀ペースト層表面に導電性カーボン印刷などによる導電性カバー層を設けてもよい。
【0020】
前記固定接点構成部材1上に同軸的に対向配置される可動接点10は、例えばステンレス(SUS301)或いはリン青銅などの金属板を球面ドーム状に成形加工した板厚50μmの弾性金属板で形成され、導電性弾性板からなるダイヤフラムとしての機能を有する。そして、前記可動接点10のドーム縁部10aの外径(直径)は環状の前記第1固定接点3の内外径の中間的値である4mmとされ、ドーム縁部10aは前記第1固定接点3の環上に重ね合わせ接触状態で載置されている。
【0021】
前記可動接点10のドーム頂部10bの外面高さH(前記縁部10a底面とドーム頂部10b頂点との距離)は0.2mmとされている。ここで、前記ドーム頂部10b内面と前記第2固定接点4の中央部表面との最大距離は、前記ドーム外面高さHと前記第2固定接点4の表面位置差hとの差(H−h)から可動接点10の板厚を差引いた寸法となる。
【0022】
前記可動接点10のドーム上に配置された押ボタン操作部材20は、絶縁性のラバーシート21、ラバーシート21の下面中央部に凸状に設けられた押圧子22及びラバーシート21の上面中央部に設けられた押ボタン部23を有する。前記押圧子22及及び押ボタン部23の中心軸は前記第2固定接点4及び可動接点10のドーム中心軸と同軸的位置にある。
【0023】
前記押圧子22は例えば先端部直径が例えば1mmの錐状に形成され、前記押ボタン部23の押圧操作による外部操作応力印加時に、前記可動接点の操作応力印加部であるドーム頂部10bに反転凹み変形を起こさせ易いような形状及び寸法とされている。また、前記ラバーシート21は、前記押ボタン部23の極めて多数回に及ぶ繰返し操作に対する耐久性を保つ可撓性や弾性を持つ材料で構成され、押ボタン操作に応じてシート厚さ方向に円滑に弾性変形しその操作性が高まるように、前記押ボタン部23に近接する周辺部の厚さがその外側の周囲部分の厚さよりも薄く調整されている。
【0024】
前述のように一単位体で示された前記押ボタンスイッチを電子機器の例えばテンキーやキーボードに組み込む場合には、このような単位体の複数個がマトリックス状に配列される。その場合、前記回路配線基板用の支持体2上に前記第1及び第2固定接点2、3の複数組が前記マトリックス配列状に共にパターン形成され、前記ラバーシート21に前記固定接点の複数組に対応配置される前記押ボタン部23及び押圧子22の複数組が共に設けられる。そして、前記ラバーシート21と前記支持体2との間には前記マトリックス配列に対応する複数個の前記可動接点10が配置され、前記ラバーシート21と前記支持体2とは所定の間隔をもって支持部材(図示せず)により相互に支持固定され、前記可動接点10はスペーサ(図示せず)などで横位置ずれを抑えるように支持される。
【0025】
次に、前記押ボタンスイッチの動作について説明すると、前記可動接点10は、スイッチング操作時に図4の荷重−変位特性曲線におおよそ沿った凹み変形動作を行う。ところで、前記第2固定接点4が第1固定接点3との関係における前記表面位置差hを有しているために、押ボタンスイッチ動作としては、図4の特性曲線中の変曲点D及び領域Eが、その表面位置差h分だけ図中左側にシフトした動作となる。
【0026】
従って、前記可動接点10の製造バラツキがあっても、前記可動接点10のドーム頂部10b(操作応力印加部)の変位は、前記反転領域Cを経て前記変曲点D並びに領域Eに確実に到達でき、前記操作応力印加部10b内面との接離作用を受ける表面位置を有する第2固定接点4との充分な接触が得られ、確実なスイッチング機能が果たされる。
【0027】
また、可動接点10を製作する際の弾性金属板の成形加工の精度を上げるには、その引張残留内部応力(歪)を考慮せねばならないために、その精度向上に困難を伴うが、前記表面位置差hを有する第2固定接点4は、例えば前述のようなスクリーン印刷法などにより、単にその厚さをコントロールするだけで、簡単に精度よく形成でき部品コストの高騰化を避けることができる。
【0028】
また、前記表面位置差hは大きいほど可動接点10の前記変曲点D並びに領域Eへの到達を確実にするが、可動接点10の良好なクリック感触(図4の極大変曲点B及び反転領域Cの動作)が確実に得られるように、前記表面位置差hの上限が調整される。前記表面位置差hは、更に、可動接点等の様々な部品サイズや前記のような可動接点の製造バラツキ度合いに応じて寸法調整される。
【0029】
ところで、固定接点構成部材1は、支持体2として利用される例えばポリイミド樹脂或いはガラスエポキシ樹脂製の絶縁基板に、第1及び第2固定接点3、4材料として利用される平板状の例えば銅箔をラミネートしたプリント基板材料を用いて形成してもよい。
【0030】
この場合の前記第1及び第2固定接点の形成方法の一例を説明すると、まず、前記銅箔の表面に、前記第1及び第2固定接点3、4に対応するパターン形状の1回目のレジストマスクを被着し、前記銅箔の露出表面を例えばケミカルエッチングによりハーフエッチングする。次に、前記第2固定接点4のみに対応するパターン形状の2回目のレジストマスクを被着し、他の部分を露出させて前記銅箔をエッチングする。
【0031】
その結果、前記第1及び第2固定接点3、4相互間の銅箔は前記支持体2の表面が露出するように除去されて、第2固定接点4が前記銅箔の素材厚さと同一厚に形成され、その側方に離間する第1固定接点3が第2固定接点4の1/2の厚さに形成される。この場合の前記表面位置差hは第2固定接点4の厚さの1/2に設定されることになる。なお、前記2回目のレジストマスクは、前記1回目のレジストマスクのうち第2固定接点4に対応するマスクを残留させて他のマスクを除去して形成しても、1回目のマスクを全て除去し新たに第2固定接点4にのみ形成してもよい。
【0032】
ところで、前述のような種類の押ボタンスイッチは、一般的にオン/オフ操作が頻繁に繰り返され、可動接点のドーム内空間と外部との間で外気の流出/流入を繰り返すために、外気中の絶縁性粉塵等の異物をドーム内に寄せ集める現象が起こり、この異物は一般的にドーム頂部に対向する第2固定接点の中央部に集積し易い傾向がある。
【0033】
図1(b)には、前記異物の集積を防止するのに好適な固定接点構成部材1の一変形例が示されている。即ち、第2固定接点4aは、例えばエッチング技術を用いて、前記可動接点10のドーム頂部10aに対向する表面が上方に凸状の曲面4bを有する形状とされている。この変形例によれば、第2固定接点中央部に集積しがちな粉塵等は例えばキー操作の振動などにより、前記凸状の曲面4bの中央部から周囲に向けて滑り落ちて第2固定接点中央部への集積が軽減され易く、第2固定接点4と可動接点10のドーム頂部10b内面との押圧接触がより確実になる。
【0034】
(実施例2):
図2(a)は本発明の第2の実施例の押ボタンスイッチを示す縦断面図、図2(b)はその固定接点構成部材の変形例を示す縦断面図である。そして、前記実施例1の押ボタンスイッチと同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0035】
支持体1上に設けられた第2固定接点5は、可動接点10のドーム頂部10b(操作応力印加部)と同軸的に配置されていて、第1固定接点3と同一厚さの本体部分5a、及び本体部分5aの中央に位置して前記ドーム頂部10bに向かって突出する突出部5bを有する。前記第2固定接点の本体部分5aは外径(直径)2.5mmの円板状に、前記突出部5bは外径(直径)1.5mmの円板又は円柱状に形成され、その突出部高さhは実施例1における前記表面位置差hに相当する寸法とされている。
【0036】
前記各固定接点の一形成方法を示すと、前記第1固定接点3及び第2固定接点5の本体部分5aは、実施例1で説明したパターン形状をもって導電ペーストをスクリーン印刷して同一厚さに同時に形成される。前記第2固定接点5の突出部5bは更に本体部分5a中央部表面上に前記突出部高さhを構成する厚さで導電ペーストをスクリーン印刷して形成される。また、固定接点構成部材1は銅箔張りプリント基板材料を用いて形成することもできる。この場合、第1及び第2固定接点3、5は、実施例1で述べた1回目のレジストマスクを用いた銅箔のハーフエッチング後、前記第2固定接点5の突出部5bのみに対応するパターン形状の2回目のレジストマスクを被着し、他の部分を露出させて前記銅箔をエッチングすれば、図2(a)に示された前述のような形状に簡単に精度よく形成できる。
【0037】
前記第2固定接点5の中央部に位置する突出部5bは本体部分5aよりも小さい外径となっているために、前記突出部5b上表面への異物集積が生じ難く、また、突出部5bの存在により第2固定接点5中央部への異物の寄せ集まりが軽減され、第2固定接点の突出部5b先端表面と可動接点10のドーム頂部10bとの押圧接触がより確実となる。
【0038】
図2(b)は実施例2における前記固定接点構成部材1の変形例を示しており、第2固定接点5の突出部5bは、例えばエッチング技術を用いて、前記可動接点10のドーム頂部10aに対向する表面が上方に凸状の曲面5cを有する形状とされている。この変形例によれば、中央部に寄せ集まろうとする異物は前記凸状の曲面5cの上表面から周囲に向けて容易に落ちこぼれて集積し難いために第2固定接点5と可動接点のドーム頂部10bとの押圧接触が更に確実となる。
【0039】
(実施例3):
図3(a)は本発明の第3の実施例の押ボタンスイッチを示す縦断面図、図3(b)はその固定接点構成部材の変形例を示す縦断面図、図3(c)は更にその第2固定接点の他の変形例を示す平面図である。そして、前記各実施例の押ボタンスイッチと同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
支持体1上に設けられた第2固定接点6は、可動接点10のドーム頂部10bに同軸的に配置された本体部分6a、及び本体部分6aの中央部に可動接点10のドーム頂部10bに向かって突出する円環状の突出部6bを有する。前記本体部分6aは、第1固定接点3と同一厚さであり、外径(直径)が2.5mmの円板状に形成されていて、前記突出部6bは、環外径(直径)が1.5mm、内径が0.5mmとされ、前記ドームの頂点(頂部10bの中心)に対向する部分に空洞を構成している。また、前記突出部6bは前記各実施例で述べた表面位置差hに相当する突出高さを有する。
【0041】
この実施例3においても、前記各固定接点は、前記第2固定接点の円環状の突出部6bに対応するマスクパターンを適用する点以外は、前記各実施例で述べたようなスクリーン印刷法や銅箔張りプリント基板材料のマスクエッチング法によって同様に簡単に精度よく形成できる。
【0042】
前記第2固定接点の環状の突出部6bは、前記粉塵などの異物の第2固定接点の中央部への寄せ集め現象をブロックすると共に、押ボタン操作時、前記突出部6bの環状周壁が前記可動接点10のドーム頂部10b内壁に接触するので、その接触面積が実施例2における突出部5bに比して大きくでき、前記異物の影響を避けた広面積接触によるスイッチング押圧接触が前記実施例2の場合よりも確実に得られる。
【0043】
図3(b)は実施例3における前記固定接点構成部材1の変形例を示しており、第2固定接点6の環状の突出部6bは、例えばエッチング技術を用いて、前記可動接点10のドーム頂部10aに対向する表面が上方に凸状の曲面6cを有する形状とされている。この変形例によれば、前記凸状の曲面6cは突出部6bの環上表面に沿って形成されているために、前記可動接点のドーム頂部10bの凹み変形時の彎曲内面が、より一層広面積をもって前記凸状の曲面6cに接触できるようになり、スイッチング押圧接触が更に確実に得られる。
【0044】
図3(c)は実施例3における前記第2固定接点6の他の変形例を示しており、第2固定接点の円板状本体部分6a上に設けられた円環状の突出部6dは、その環に沿って形成された複数のスリット6eを有する。即ち、前記第2固定接点6の中央部とその外側との間には、前記突出部6dの存在に拘わらず、前記スリット6eによる環内外通路が形成されている。なお、図3(c)には第2固定接点の本体部分6aに接続された回路配線層7が示されている。
【0045】
この変形例によれば、前記異物が円板状本体部分6a中央部に集積する作用が生じても、前記異物が前記スリット6eを通じて横方向に向かって環外に移動できるために、可動接点方向(縦方向)への異物集積高さの積み上がり進行が抑制され、異物の集積が前記突出部6dの上表面にまで達し難くなる。
【0046】
なお、前記各実施形態では第1及び第2固定接点や可動接点は平面形状が円形になっているが、楕円、樽状、コーナーを弧状にしたほぼ矩形状など用途に応じた種々の形状にしても良い。可動接点の形状についてはドーム状との表現をしているが、皿状、椀状、ダイヤフラム状、或いは平面形状が十字状の板や短冊状の板を彎曲成形した形状等であってもよく、本発明の目的及び効果に照らして同様な形状や機能をもつものを総称してドーム状と表現した。また、前記の接点という用語は電極と表現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1(a)は本発明の実施例1に係る押ボタンスイッチを示す縦断面図、図1(b)はその固定接点構成部材の変形例を示す縦断面図である。
【図2】図2(a)は本発明の実施例2に係る押ボタンスイッチを示す縦断面図、図2(b)はその固定接点構成部材の変形例を示す縦断面図である。
【図3】図3(a)は本発明の実施例3に係る押ボタンスイッチを示す縦断面図、図3(b)はその固定接点構成部材の変形例を示す縦断面図、図3(b)はその固定接点構成部材の他の変形例を示す平面図である。
【図4】押ボタンスイッチの荷重−変位特性を説明するための特性曲線図である。
【符号の説明】
【0048】
1 固定接点構成部材
2 支持体
3 第1固定接点
4、5、6 第2固定接点
4b、5c、6c 凸状の曲面
5b、6b、 第2固定接点の突出部
10 可動接点
10a 可動接点のドーム縁部
10b 可動接点のドーム頂部(操作応力印加部)
20 押ボタン操作部材
21 ラバーシート
22 押圧子
23 押ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に相互離間して並置された第1固定接点及び第2固定接点と、これら固定接点に対向して配置された導電性弾性板からなるドーム状の可動接点と、前記可動接点にスイッチング操作応力を印加するための押圧子とを備え、前記可動接点は前記第1固定接点の表面上に載置されるドーム縁部及び前記第2固定接点の表面上に離間して対向する操作応力印加部を有し、前記第2固定接点は前記操作応力印加部内面との接離作用を受ける表面位置が前記第1固定接点の表面位置よりも高くなるように形成されていることを特徴とする押ボタンスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の押ボタンスイッチにおいて、前記第2固定接点は前記可動接点の操作応力印加部に向って突出する突出部を有することを特徴とする押ボタンスイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載の押ボタンスイッチにおいて、前記第2固定接点の前記突出部は前記可動接点の操作応力印加部中心と同軸的な環状に形成されていることを特徴とする押ボタンスイッチ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の押ボタンスイッチにおいて、前記突出部の先端部は前記操作応力印加部に向って凸状の曲面を有することを特徴とする押ボタンスイッチ。
【請求項5】
支持体上に相互離間して並置された第1固定接点及び第2固定接点を有し、前記第2固定接点の表面位置は前記第1固定接点の表面位置よりも高く形成され、前記第1固定接点表面上には押ボタンスイッチ用のドーム状の可動接点のドーム縁部が載置され、表面位置の高い前記第2固定接点表面上には前記可動接点のドームの操作応力印加部が離間して対向配置されることを特徴とする固定接点構成部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−213834(P2007−213834A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29480(P2006−29480)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】