説明

押下ヘッド及び押下ヘッド付き吐出器

【課題】対象物に噴射した液状物を塗り付けたり塗り広げたり、あるいはマッサージをするに際して、押下ヘッドと一体構造の塗布部材を使用できる押下ヘッド及び押下ヘッド付き吐出器を提供する。
【解決手段】この押下ヘッド1は、上方付勢状態で押し込み可能にステム3を起立した吐出器5に装着されるとともに、内部にステム3内に連通するノズル孔9を有し、ステム3に装着される装着部11を垂設する頂壁部13と、頂壁部13の外周縁部から下方に向けて延設されるとともにノズル孔9の一端を開口して噴出口15を形成する周壁部17と、頂壁部13の外周縁部に沿って部分的に配置され、該外周縁部から上方に向けて一体に延設されたへら状の塗布具19と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上方付勢状態で押込み可能にステムを起立した吐出器に装着する押下ヘッド及びこの押下ヘッドを備える押下ヘッド付き吐出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器内に収容された例えば化粧品や育毛剤、整髪料、医薬品等の液状物を吐出する吐出器としては、ピストン及びシリンダを有するポンプ式の吐出器やいわゆるエアゾール式の吐出器が知られており、これらの吐出器のステムには、ノズル孔が形成された押下ヘッドが装着されて、吐出器のステムから吐出された液状物を対象物に向けて確実に噴射することができるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−8213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような押下ヘッドを有する吐出器では、押下ヘッドの噴出口を対象物に近づけて使用した場合や、乳液や塗り薬のような比較的粘性の高い液状物を噴出する場合には、液状物の噴射半径が狭くなるため、対象面に噴射した後に液状物を均一に塗り付けたり塗り広げたり、あるいはマッサージするといった塗布作業を行う場合がある。このような塗布作業は、従来では、指や他に用意した道具を使用したり、別の塗布部材を押下ヘッドに組付けたりして行っていたため、一体構造の部材で塗布作業を行えず、使い勝手がよいとはいえなかった。
【0005】
それゆえこの発明は、対象物に噴射した液状物を塗り付けたり塗り広げたり、あるいはマッサージをするに際して、押下ヘッドと一体構造の塗布部材を使用できる押下ヘッド及び押下ヘッド付き吐出器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、この発明の押下ヘッドは、上方付勢状態で押し込み可能にステムを起立した吐出器に装着されるとともに、内部に前記ステム内に連通するノズル孔を有する押下ヘッドであって、前記ステムに装着される装着部を垂設する頂壁部と、前記頂壁部の外周縁部から下方に向けて延設されるとともに前記ノズル孔の一端を開口して噴出口を形成する周壁部と、前記頂壁部の外周縁部に沿って部分的に配置され、該外周縁部から上方に向けて一体に延設されたへら状の塗布具と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
なお、この発明の押下ヘッドにあっては、前記塗布具は、前記噴出口が配置された側である押下ヘッドの前方側に配置されることが好ましい。
【0008】
また、この発明の押下ヘッドにあっては、前記塗布具は、その前面に突起を有することが好ましい。
【0009】
さらに、この発明の押下ヘッドにあっては、前記頂壁部の外面と、前記塗布具の背面は、下方に凹の曲面にて連結されることが好ましい。
【0010】
また、この発明の押下ヘッド付き吐出器あっては、押下ヘッドを、上方付勢状態で押し込み可能にステムを起立した吐出器に装着してなる押下ヘッド付き吐出器であって、前記押下ヘッドは、前記ステムに装着される装着部を垂設する頂壁部と、前記頂壁部の外周縁部から下方に向けて延設されるとともに前記ノズル孔の一端を開口して噴出口を形成する周壁部と、前記頂壁部の外周縁部に沿って部分的に配置され、該外周縁部から上方に向けて一体に延設されたへら状の塗布具と、を備えることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、この発明の押下ヘッド付き吐出器にあっては、前記押下ヘッド付き吐出器は、前記押下ヘッドに着脱自在に取り付けられるカバーを備え、該カバーは、その内面に、カバー装着時にて前記噴出口に対向して位置して該噴出口を密封する凸部を有することが好ましい。
【0012】
しかも、この発明の押下ヘッド付き吐出器にあっては、前記カバーは、その下端部内面に、カバー装着時にて前記押下ヘッドの下端縁に当接して前記吐出器に対する該押下ヘッドの押し下げを阻止する突起を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明の押下ヘッド及び押下ヘッド付き吐出器によれば、押下ヘッドの頂壁部にへら状の塗布具が一体に設けられているので、塗布作業(マッサージを含む)を効率よく行い得て使い勝手がよい。また、部品点数も削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態の押下ヘッドを吐出器とともに容器に装着したものを示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】図1(a)のA−A断面図である。
【図3】この発明の押下ヘッド付き吐出器に装着されるカバーを示す斜視図である。
【図4】図3に示すカバーを適用した押下ヘッド付き吐出器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明をより具体的に説明する。ここに、図1は、この発明の一実施形態の押下ヘッドを吐出器とともに容器に装着したものを示しており、(a)は正面図、(b)は側面図であり、図2は、図1(a)のA−A断面図である。
【0016】
図1に示すように、押下ヘッド1は、上方付勢状態で押し込み可能にステム3(図2参照)を起立した吐出器5に装着されており、吐出器5は、容器7の口部7aに固定されている。図2に詳細を示すように、吐出器5は、ここではポンプ式を採用し、容器7の口部7aを通して充填空間Mの上部に吊り下げ保持されている。この吐出器5は、最下端に吸引口(図示省略)を有するシリンダ5aと、このシリンダ5a内で上下にスライド可能で、容器7の口部7aに着脱自在にねじ止めされた筒状のベースキャップ5bの貫通孔5cから露出させたステム3と、ステム3の内側に連結され、該ステム3とともにスライド可能なガイド5dと、このガイド5d及びステム3の相互間でスライド代をもって配置され、該ガイド5dと協働して吐出弁を構成するピストン5eと、シリンダ5a内で上記吸引口の開閉を行うポペット(バルブ)5fを有する。また、ベースキャップ5bの上面5gには、押下ヘッド1の後述する周壁部17との間に若干の隙間をもって上方に向けて延びるガイド壁5hが設けられ、押下ヘッド1の上下移動が安定して行えるようになっている。
【0017】
なお、吐出器5の形態は、ステム3を押下げることにより容器7内の液状物がステム3より吐出するよう構成したものであれば採用でき、上述したポンプ構造を備えたものの他、エアゾールタイプのもの等(図示省略)も採用できる。
【0018】
押下ヘッド1は、吐出器5のステム3に連通するノズル孔9を内部に有するものであり、ステム3に装着される筒状の装着部11を垂設する頂壁部13と、頂壁部13の外周縁部から下方に向けて延設されるとともにノズル孔9の一端を開口して噴出口15を形成する円筒状の周壁部17と、を有する。また、頂壁部13の外面13aは押下ヘッド1の押下操作時に指を掛ける指掛かり部となる部位であり、その外周縁部には上方に向けて延設されたへら状の塗布具19が一体に成形されている。
【0019】
塗布具19は、外周縁部に沿って部分的に設けることとし、これにより押下ヘッド1を押し下げる際に指を頂壁部13に導く空間部を押下ヘッド1の後方側(図2では右側)に形成している。ここでは塗布具19は、噴出口15が配置された側である押下ヘッド1の前方側(図2では左側)に配置されており、すなわち噴出口15の上方に配置されている。また、塗布具19はその先端形状が丸みを帯びた湾曲形状としている。塗布具19の先端部域の前面には、少なくとも1つ(ここでは5つ)のドーム状の突起21が一体に設けられており、さらに塗布具19の先端縁部にも上方に突出する複数の突起23が設けられている。なおこれらの突起21、23の形状は図示例のものに限らず、種々の形状を採用でき、例えば突起21、23をゴム材料で形成するとともに先細り形状としてもよく、これによれば口述する突起21、23によるマッサージ効果を高めることが可能である。しかも、頂壁部13の外面13aと、塗布具19の背面19aとは、下方に向けて凹となる曲面Rにて連結され、つまり屈折点を有することなく滑らかに連結されている。
【0020】
かかる実施形態の押下ヘッド1によれば、押下ヘッド1の頂壁部13にへら状の塗布具19が一体に設けられているので、対象物に噴射した後、液状物を塗り付けたり塗り広げたり、あるいはマッサージをするに際して、効率的に行い得て使い勝手がよい。また、部品点数も削減できる。
【0021】
また、塗布具19が、噴出口15が配置された側である押下ヘッド1の前方側に配置されているため、押下ヘッド1を操作したときの姿勢のままで塗布することができ、より自然な姿勢でかつ容易に塗布作業が行えるようになる。さらに、塗布具19の先端部域の前面には、突起21が一体に設けられており、塗布具19の先端縁部にも上方に突出する突起23が設けられていることから、特に育毛剤などを頭皮に噴射した後のマッサージも有利に行えるようになる。しかも、頂壁部13の外面13aと塗布具19の背面19aとが、下方に凹の曲面Rにて連結されているので、頂壁部13の外面13a及び塗布具19の背面19aと指との接触面積が増えてより安定して押下ヘッド1の押下操作や塗布具19による塗布作業を行うことが可能となる。
【0022】
図3は、この発明の押下ヘッド付き吐出器に好適に用いることができるカバーを示す斜視図であり、図4は、図3のカバーを適用した押下ヘッド付き吐出器を示す断面図である。
【0023】
図3に示すカバー25は、上壁部27と側壁部29とを有するとともに、側壁部29の後方部が大きく切り欠かれており、これにより押下ヘッド1を備えた吐出器5に前方(図4の左側)から着脱自在に装着できる。また、側壁部29の下端部の両側縁には、カバー25の装着時にベースキャップ5bのガイド壁5hの外周を覆ってカバー25の脱落を防止する囲い壁30をそれぞれ設けている。したがって、カバー25を装着する際には、囲い壁30を若干外側に押し広げた状態にて押下ヘッド付き吐出器5に横(前方)から被せるようにする。カバー25の下端縁は、カバー装着時に吐出器5に当接することが好ましく、これによれば、カバー25上部内面と押下ヘッド1の先端縁部との間に隙間を形成、保持でき、ここでは該下端縁は吐出器5のベースキャップ5bの上面5gに当接するよう構成されている。また、カバー25は、その内面に、カバー装着時にて押下ヘッド1の噴出口15に対向して位置して該噴出口15を密封する凸部31を有する。
【0024】
このようなカバー25を用いることにより、塗布具19を用いた塗布作業後に液状物が塗布具19に付着していてもカバー25で押下ヘッド1全体を覆うことができ、塗布具19に付着した液状物が他の物に付くことがないので携帯するのに便利であり、また塗布具19に埃等が付着するおそれもない。また、押下ヘッド1のノズル孔9内に液状物が残留している場合であっても、カバー25の凸部31によって噴出口15が密封されていることから、これが外部に漏れ出すおそれもない。
【0025】
また、カバー25は、その下端部内面に、カバー装着時にて押下ヘッド1の下端縁1aに当接して吐出器5に対する該押下ヘッド1の押し下げを阻止するリブ状の突起33を少なくとも1つ(ここでは3つ)有する。これにより、誤って押下ヘッド1を操作した場合であっても液状物が噴出するおそれがない。また、これらの突起33を吐出器5のベースキャップ5bの上面5gと押下ヘッド1の下端縁との間に挟持させることによって、カバー25の脱落をより一層防止することができる。なお、突起33に代えて囲い壁30の径を図示のものよりも小さくし、囲い壁30を押下ヘッド1の下端縁1aとベースキャップ5bの上面5gとの間に嵌め込むことにより、押下ヘッド1の押し下げを阻止するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
かくしてこの発明により、対象物に噴射した液状物を塗り付けたり塗り広げたり、あるいはマッサージをするに際して、押下ヘッドと一体構造の塗布部材を使用できる押下ヘッド及び押下ヘッド付き吐出器が提供される。
【符号の説明】
【0027】
1 押下ヘッド
3 ステム
5 吐出器
7 容器
9 ノズル孔
11 装着部
13 頂壁部
15 噴出口
17 周壁部
19 塗布具
21、23 突起
25 カバー
30 囲い壁
31 凸部
33 リブ状の突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で押し込み可能にステムを起立した吐出器に装着されるとともに、内部に前記ステム内に連通するノズル孔を有する押下ヘッドであって、
前記ステムに装着される装着部を垂設する頂壁部と、
前記頂壁部の外周縁部から下方に向けて延設されるとともに前記ノズル孔の一端を開口して噴出口を形成する周壁部と、
前記頂壁部の外周縁部に沿って部分的に配置され、該外周縁部から上方に向けて一体に延設されたへら状の塗布具と、を備えることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項2】
前記塗布具は、前記噴出口が配置された側である押下ヘッドの前方側に配置される、請求項1に記載の押下ヘッド。
【請求項3】
前記塗布具は、その前面に突起を有する、請求項1又は2に記載の押下ヘッド。
【請求項4】
前記頂壁部の外面と、前記塗布具の背面は、下方に凹の曲面にて連結される、請求項1〜3の何れか一項に記載の押下ヘッド。
【請求項5】
押下ヘッドを、上方付勢状態で押し込み可能にステムを起立した吐出器に装着してなる押下ヘッド付き吐出器であって、
前記押下ヘッドは、前記ステムに装着される装着部を垂設する頂壁部と、
前記頂壁部の外周縁部から下方に向けて延設されるとともに前記ノズル孔の一端を開口して噴出口を形成する周壁部と、
前記頂壁部の外周縁部に沿って部分的に配置され、該外周縁部から上方に向けて一体に延設されたへら状の塗布具と、を備えることを特徴とする押下ヘッド付き吐出器。
【請求項6】
前記押下ヘッド付き吐出器は、前記押下ヘッドに着脱自在に取り付けられるカバーを備え、該カバーは、その内面に、カバー装着時にて前記噴出口に対向して位置して該噴出口を密封する凸部を有する、請求項5に記載の押下ヘッド付き吐出器。
【請求項7】
前記カバーは、その下端部内面に、カバー装着時にて前記押下ヘッドの下端縁に当接して前記吐出器に対する該押下ヘッドの押し下げを阻止する突起を有する、請求項5又は6に記載の押下ヘッド付き吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−72943(P2011−72943A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228410(P2009−228410)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】