説明

押出成形機

【課題】原料の含水率に影響されることが殆ど無く、固形燃料を一様な大きさに形成できる押出成形機を提供する。
【解決手段】押出成形機1は、複数のダイス孔2を有するダイスプレート3と、一端がダイスプレート3にて塞がれ他端が開放されたバレル4と、先端5をダイスプレート3に対向する姿勢でバレル4に内装されたスクリュー6と、スクリュー6を回転させる駆動手段と、ダイスプレート3を加熱する複数のヒータと、ダイスプレート3とバレル4の一端との間に介在されたスペーサ9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチック等を含む原料を圧縮することにより、固形燃料を形成する押出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の押出成形機は、バレルの投入口から同バレルに投入される原料を、2軸のスクリューの回転に従わせダイスプレートへ向けて推進させながら、これを適度に加熱しダイスプレートのダイス孔から固形燃料として押し出すものである。この他、固形燃料を成形する技術は特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開平8−142052号公報
【特許文献2】特開2006−321845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
固形燃料の原料が、可燃性の廃プラスチックを含んでいる場合、廃プラスチックを熱溶融し、この溶融した廃プラスチックに、塊を形成するためのバインダーの役割を担わせる。しかしながら、廃プラスチックは雨水等を吸水していることが多い。このような廃プラスチックを含む原料を押出成形機のバレルに投入すると、スクリューの回転に従い推進される原料がバレル内で圧縮されることにより発熱しても、この熱は廃プラスチックの水分の気化熱として奪われる。このため、廃プラスチックの溶融が妨げられ、廃プラスチックがバインダーの役割を果たせず、固形燃料を満足に形成できなくなる。
【0004】
例えば、廃プラスチックがポリエチレンであれば、その溶融温度は摂氏100度以上である。廃プラスチックの溶融を促すために、ヒータを使用してダイスプレートを加熱すると、ダイスプレートに接触した原料から多量の水蒸気が発生しダイス孔から噴出する。このため、原料が水蒸気によってダイス孔の外側へ吹き飛ばされることになるので、固形燃料を塊として得ることができない。ここに述べた不具合は、原料の含水率が約15%以上であるときに顕著である。
【0005】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑みて為されたものであり、原料の含水率に影響されることが殆ど無く、固形燃料を一様な大きさに形成できる押出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ダイス孔を有するダイスプレートと、前記ダイスプレートが一端に設けられ他端が開放されたバレルと、前記ダイスプレートに先端を対向する姿勢で前記バレルに内装された2軸のスクリューと、前記2軸のスクリューを回転させる駆動手段と、前記ダイスプレートを加熱するヒータとを備える押出成形機に係るものであって、前記ダイスプレートと前記ダイスプレートの一端との間にスペーサを介在することにより、前記ダイスプレートと前記スクリューの先端との間に隙間を確保し、前記バレルに投入される含水原料を、前記スクリューの回転に従わせ前記ダイスプレートへ向けて推進させる工程で、前記含水原料から脱水される水分を、前記隙間から前記バレルの他端へ逃すことを特徴とする。
【0007】
更に、本発明に係る押出成形機は、互いに厚みを違える複数の前記スペーサを備え、前記ダイスプレートと前記バレルの一端との間に、前記複数のスペーサの中から選択されるスペーサを着脱自在に取付けることにより、前記スペーサの厚みに相当する隙間を、前記ダイスプレートと前記スクリューの先端との間に確保したことを特徴とする。更に、前記バレルは、その他端が一端よりも低くなるよう傾斜しても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る押出成形機によれば、バレルに投入される含水原料を、スクリューの回転に従わせダイスプレートへ向けて推進させる工程で、含水原料を圧縮することにより、含水原料から水分を脱水することができる。この水分は液体であり、ダイスプレートとスクリューの先端との間に確保された隙間を流下し、更にバレルの他端から排水される。これにより、例えば廃プラスチックを含んだ原料がバレルに投入された場合、この原料がバレル内で圧縮されることにより発生する熱が、水分の気化熱となるのを抑制できるので、廃プラスチックを加熱するために、原料の発熱を有効に利用することができる。
【0009】
しかも、上記原料の発熱により発生する水蒸気が、ダイスプレートとスクリューの先端との間の隙間に滞留することなく、バレルの他端から速やかに排気されることになる。これは、含水原料がヒータで加熱されたダイスプレートに接触することにより発生する水蒸気についても同様である。従って、水蒸気をダイス孔から噴出させなくて済むので、例えば廃プラスチックを含んだ原料が水蒸気によって吹き飛ばされるという不具合は起こらず、固形燃料をダイス孔から所望の大きさの塊として押出すことができる。
【0010】
また、本発明に係る押出成形機によれば、含水原料の水分をバレルから積極的に排出できるので、ヒータの温度を従来よりも高くすることができる。このため、例えば廃プラスチックの溶融温度よりも高い温度までヒータの温度を上昇させることにより、廃プラスチックを可塑変形できる程度に軟化させられるので、ダイス孔から押出される固形燃料にダイス孔の形を良好に転写でき、一様な形状の固形燃料を量産することができる。
【0011】
更に、本発明に係る押出成形機によれば、ダイスプレートとバレルの一端との間に、互いに厚みを違える複数のスペーサの中から選択されるスペーサが着脱自在に取付けられるので、ダイスプレートとスクリューの先端との隙間を増減させる場合には、スペーサを厚みの異なるものに取替えるだけで良い。従って、含水原料の含水率の値に照らして、上記の隙間を調整する作業を容易且つ迅速に行うことができる。
【0012】
更に、バレルがその他端を一端よりも低くなるよう傾斜している場合、含水原料から脱水された水分がバレルの他端から流下するのを助勢することができる。このため、本発明に係る押出成形機によれば、含水原料の水分をバレルから排出することによる上記の効果を、顕著に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1,2に示すように、押出成形機1は、複数のダイス孔2を有するダイスプレート3と、一端がダイスプレート3にて塞がれ他端が開放されたバレル4と、ダイスプレート3に先端5を対向する姿勢でバレル4に内装された2軸のスクリュー6と、2軸のスクリュー6を回転させる駆動手段7と、ダイスプレート3を加熱する複数のヒータ8と、ダイスプレート3とバレル4の一端との間に介在されたスペーサ9とを備える。
【0014】
ダイスプレート3は、複数のダイス孔2にそれぞれ筒状のノズル21を取付けられ、ノズル21の外方に、羽根状の回転刃10を回転させる減速機付きモータ11が配置されている。ダイス孔2及びノズル21はそれぞれ円形である。符号22は、回転刃10及びノズル21を覆うカバーを指している。スクリュー6は、軸体61の周面に螺旋羽根62を形成したものである。駆動手段7は、出力軸71をギヤボックス72に収納された歯車列に接続した減速機付きモータを主体としており、2軸のスクリュー6を相互に同じ速度で回転させることができる。ヒータ8は、ダイスプレート3に刺し込まれた電熱器であり、この電熱器に給電するための電線が図に表れている。
【0015】
更に、押出成形機1は、図3に示すように、互いに厚みを違える複数のスペーサ9を備える。個々のスペーサ9は、所定の厚みを有する長円形の鋼板の適所に、ボルト挿通孔91が設けられている。図4に示すように、バレル4の一端にはフランジ41が形成されている。スペーサ9は、バレル4のフランジ41にダイスプレート3と共にボルト92で締付けられている。ボルト92を緩めれば、スペーサ9を迅速且つ容易に着脱することができる。符号93は、バレル4にスペーサ9を位置決めするためのピンを指している。
【0016】
上記の所定の厚みとは、ダイスプレート3とフランジ41との間にスペーサ9を挟んだ状態で、ダイスプレート3とスクリュー6の先端5との間に隙間12を確保するための寸法である。従って、図3に例示した複数のスペーサ9の中から選択したスペーサを、ダイスプレート3とバレル4のフランジ41との間に挟むことにより、隙間12の広さを自由に設定することができる。隙間12の広さは5〜15mmの範囲が好ましいが、5mm未満でも良く、又は15mmを超えても良い。
【0017】
押出成形機1を動作させるときは、先ず駆動手段7を起動させスクリュー6を回転させながら、図4に示すバレル4の投入口42に含水原料を投入する。含水原料は、スクリュー6の回転に従いダイスプレート3へ向けて推進される。この工程で含水原料が圧縮されることにより、含水原料の水分が脱水される。含水原料の一部は隙間12に入り込むが、隙間12の中で含水原料が強く圧縮されることはないので、上記の水分は隙間12を通って流下することができる。更に、スクリュー6の螺旋羽根62とバレル4の内面との間は水が通り抜けられる程度の隙間13になっているので、隙間12を流下した水分は、バレル4の他端まで達し、更に溝形の集水部材14へ排水される。
【0018】
また、上記の工程で、含水原料が圧縮されることにより発熱する。この発熱により発生する水蒸気は、隙間12,13を経てバレル4の他端まで逃され、更にバレル4の他端から大気中へ排気される。これは、含水原料がヒータ8で加熱されたダイスプレート3に接触することにより発生する水蒸気についても同様である。従って、隙間12又はバレル4の一端付近に水蒸気が滞留することがない。ここまでに述べた水分と水蒸気の量は、バレル4の投入口42に投入される含水原料の含水率が高ければ、その分多くなるので、含水原料の含水率が高い程、スペーサ9の厚みを増すことが好ましい。
【0019】
また、上記のように隙間12を流下した水分が、バレル4の一端から他端へ流れるのを促し、バレル4の他端から水分が流下するのを助勢できるように、バレル4をその他端が一端よりも低くなるよう傾斜させても良い。符号15は、バレル4の他端に設けられた蓋を適時に開閉するためのハンドルを指している。
【実施例1】
【0020】
図4に示すバレル4に含水率が約30%の原料を投入する。この場合、スペーサ9の厚みは9mmとする。原料の主な成分は廃プラスチックと紙である。廃プラスチックとは、例えばポリエチレン、又は産業廃棄物から抽出される可燃性の合成樹脂を、破砕機で破砕して得られる破片である。原料に廃プラスチックが占める重量割合は60%以上で、紙が占める重量割合は40%以下であれば良い。原料の全てが廃プラスチックでも良い。
【0021】
押出成形機1を始動させると、原料がスクリュー6の回転に従い推進されバレル4の内部で圧縮される。この工程で原料から脱水される水分は、バレル4の他端から排水されるので、原料の圧縮によって発生する熱が、水分の気化熱として奪われることを抑制できる。このため、廃プラスチックを加熱し溶融させるために、原料自体の発熱を有効に利用することができる。
【0022】
また、上記の工程で発生する水蒸気は、バレル4の他端から排気されるので、水蒸気がダイス孔2から噴出することはない。このため、原料が水蒸気によって吹き飛ばされるという不具合は起こらないので、スクリュー6の回転に従い推進される原料は、廃プラスチックが溶融した様態を保ち、ダイス孔2から押出されることになる。そして、溶融した廃プラスチックがバインダーの役割を果たし、固形燃料を形成することができる。更に、固形燃料は、後続の原料によってダイス孔2の外方へ押出され、図2に示す回転刃10にて所望の長さに切断される。固形燃料の長さを調整するには回転刃10の回転数を増減させれば良い。
【0023】
更に、押出成形機1によれば、含水原料の水分を液体又は水蒸気としてバレル4から積極的に排出できるので、ヒータ8の温度を従来のより高くすることができる。本実施例では、ヒータ8の出力を10.8kwに設定し、原料の温度を摂氏200度まで上昇させている。これにより、廃プラスチックを容易に可塑変形できるよう軟化させられるので、ダイスプレート3から押出される固形燃料にダイス孔2の形状を転写し、固形燃料を滑らかな円柱状に仕上げることができる。
【0024】
本実施例では、ヒータ8の出力を、駆動手段7の出力(45kw)の25%を目安に設定している。この条件で、所定時間当りにバレル4へ投入された原料の重さによって押出成形機1の処理能力を示すと、約250kg/hとなる。同条件で、含水率が15%以下の原料をバレル4に投入する場合、処理能力は約300kg/hである。これらの値を比較すれば、原料の含水率の上昇により処理能力が下がる傾向を認めることはできるが、問題視する度合ではない。
【0025】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様で実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る押出成形機に投入される原料の材質や様態については、何ら限定されるものではない。また、当該押出成形機の用途は、廃プラスチックの処理工程に限られることはなく、何かの製造又はリサイクル等の工程で、当該押出成形機を使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る押出成形機の側面図。
【図2】本発明の実施形態に係る押出成形機のバレルの一部を破断した平面図。
【図3】本発明の実施形態に係る押出成形機に適用できる複数のスペーサを例示した斜視図。
【図4】本発明の実施形態に係る押出成形機の要部の概略を示す断面図。
【符号の説明】
【0028】
1:押出成形機
2:ダイス孔
3:ダイスプレート
4:バレル
5:先端
6:スクリュー
7:駆動手段
8:ヒータ
9:スペーサ
12:隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイス孔を有するダイスプレートと、前記ダイスプレートが一端に設けられ他端が開放されたバレルと、前記ダイスプレートに先端を対向する姿勢で前記バレルに内装された2軸のスクリューと、前記2軸のスクリューを回転させる駆動手段と、前記ダイスプレートを加熱するヒータとを備える押出成形機であって、
前記ダイスプレートと前記ダイスプレートの一端との間にスペーサを介在することにより、前記ダイスプレートと前記スクリューの先端との間に隙間を確保し、
前記バレルに投入される含水原料を、前記スクリューの回転に従わせ前記ダイスプレートへ向けて推進させる工程で、前記含水原料から脱水される水分を、前記隙間から前記バレルの他端へ逃すことを特徴とする押出成形機。
【請求項2】
互いに厚みを違える複数の前記スペーサを備え、前記ダイスプレートと前記バレルの一端との間に、前記複数のスペーサの中から選択されるスペーサを着脱自在に取付けることにより、前記スペーサの厚みに相当する隙間を、前記ダイスプレートと前記スクリューの先端との間に確保したことを特徴とする請求項1に記載の押出成形機。
【請求項3】
前記バレルは、その他端が一端よりも低くなるよう傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の押出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−279668(P2008−279668A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126193(P2007−126193)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000237466)富士車輌株式会社 (18)
【Fターム(参考)】