説明

拘束装置、支承装置および支承構造の製造方法

【課題】すべり板と支承体との相対的な摺動の拘束の解除を簡便に行うこと。
【解決手段】下部構造体と上部構造体との間に配設され下部構造体に固定されるすべり板4と、該すべり板4上に摺動自在に配設され上部構造体に固定される支承体5と、の相対的な摺動を拘束する拘束装置6であって、内端部11が支承体5に離脱自在に連結されるとともに外端部12が下部構造体においてすべり板4よりも外側に位置する被連結部分に離脱自在に連結され、周方向に互いに間隔をあけて配置される少なくとも3つの拘束部材10を備え、拘束部材10の内端部11は、支承体5に突き当てられて連結される拘束装置6を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拘束装置、支承装置および支承構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような支承装置が知られている。この支承装置は、下部構造体と上部構造体との間に配設され下部構造体に固定されるすべり板と、該すべり板上に摺動自在に配設され上部構造体に固定される支承体と、を備えている。
さらにこの支承装置は、例えば建築工事中などにすべり板と支承体との相対的な摺動を拘束する拘束装置を備えている。拘束装置は、支承体に備えられたフランジ部と、すべり板が固定された固定板においてすべり板よりも外側に位置する被連結部分と、を結ぶ長さのつなぎ金物を有しており、このつなぎ金物の両端部が、フランジ部および被連結部分それぞれにボルトにより連結されている。
この拘束装置は、すべり板が下部構造体に固定されるとともに、支承体が上部構造体に固定され、前記支承装置により下部構造体上に上部構造体が支承されてなる支承構造が形成された後、すべり板と支承体との相対的な摺動の拘束を解除するために取り外されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−48523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の拘束装置では、すべり板と支承体との相対的な摺動の拘束を解除する作業が煩雑であるという問題がある。
すなわち、前述の拘束を解除するために拘束装置を取り外すときには、支承装置が上部構造体と下部構造体との間に位置していることとなる。したがって、つなぎ金物の内端部とフランジ部との連結を解除するために、上部構造体と下部構造体との間に入り込んでボルトの取り外し作業をする必要があり、作業スペースを確保し難く手間がかかる。またこのとき、つなぎ部材の内端部をボルトにより連結してから、通常、例えば半年から1年程度の長期間が経過しているので、ボルトが固着して外し難くなっているおそれもある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、すべり板と支承体との相対的な摺動の拘束の解除を簡便に行うことができる拘束装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る拘束装置は、下部構造体と上部構造体との間に配設され下部構造体に固定されるすべり板と、該すべり板上に摺動自在に配設され上部構造体に固定される支承体と、の相対的な摺動を拘束する拘束装置であって、内端部が前記支承体に離脱自在に連結されるとともに外端部が前記下部構造体において前記すべり板よりも外側に位置する被連結部分に離脱自在に連結され、周方向に互いに間隔をあけて配置される少なくとも3つの拘束部材を備え、前記拘束部材の内端部は、前記支承体に突き当てられて連結されることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、拘束部材の内端部が、支承体に突き当てられて連結されるので、この内端部を支承体に径方向の外側から突き当てることにより連結することができるとともに、内端部を支承体から径方向の外側に引き離すことにより連結を解除して離脱させることができる。これにより、上部構造体と下部構造体との間に入り込んで支承体周囲の狭い作業スペースでボルトの着脱作業をしなくても、拘束部材の内端部を、支承体に連結させたり支承体から離脱させたりすることが可能になり、拘束装置の着脱作業を簡便なものとして、すべり板と支承体との相対的な摺動の拘束の解除を簡便に行うことができる。
【0008】
また、前記拘束部材のうち、前記内端部と前記外端部との間に位置する中間部は、これらの内端部と外端部とは別体に形成されるとともに、前記内端部と前記外端部との間に上方から離脱自在に嵌合していても良い。
【0009】
この場合、拘束部材の中間部が、内端部と外端部とは別体に形成されるとともに、両端部の間に上方から離脱自在に嵌合しているので、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
【0010】
また、前記拘束部材の外端部は、前記すべり板が固定された固定面から上方に突出する突出部に径方向の内側から係合することで連結されても良い。
【0011】
この場合、拘束部材の外端部が、前記突出部に径方向の内側から係合することで連結されるので、この外端部を固定面に上方から配置することにより連結することができるとともに、外端部を固定面から上方に引き離すことにより連結を解除して離脱させることができる。これにより、拘束部材の外端部をボルトによらず前記被連結部分に連結することが可能になり、拘束装置の着脱作業を一層簡便に行うことができる。
【0012】
また、前記支承体の径方向の外側に全周にわたって配置されるとともに、前記すべり板を上方から覆うカバー材を備え、該カバー材は、各前記拘束部材において前記内端部と前記外端部との間に位置する中間部に連結されていても良い。
【0013】
この場合、前記カバー材を備えているので、カバー材によりすべり板を保護することができる。
またカバー材が、各拘束部材の中間部に連結されているので、このカバー材により拘束部材の位置関係を高精度に保持することができる。これにより、すべり板と支承体との相対的な摺動を確実に拘束することができる。
【0014】
また、本発明に係る支承装置は、下部構造体と上部構造体との間に配設され下部構造体に固定される固定板と、該固定板上に固定され、該固定板を介して下部構造体に固定されるすべり板と、該すべり板上に摺動自在に配設され上部構造体に固定される支承体と、前記拘束装置と、を備え、前記拘束部材の外端部は、前記被連結部分に前記固定板を介して連結され、前記拘束装置により前記すべり板と前記支承体との相対的な摺動が拘束されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、前記拘束装置によりすべり板と支承体との相対的な摺動が拘束されているので、拘束装置を簡便に着脱させることが可能になり、施工性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る支承構造の製造方法は、下部構造体と上部構造体との間に配設され下部構造体に固定されたすべり板と、該すべり板上に摺動自在に配設され上部構造体に固定された支承体と、前記拘束装置と、を備える支承装置により、下部構造体上に上部構造体が支承されてなる支承構造を形成する支承構造の製造方法であって、前記すべり板を下部構造体に固定するとともに前記支承体を上部構造体に固定する固定工程と、該固定工程の後、前記各拘束部材の内端部を前記支承体に連結させた状態で、前記各拘束部材の外端部と前記被連結部分との連結を解除する解除工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、固定工程の後に行う解除工程の際、各拘束部材の外端部と被連結部分との連結を解除することで、拘束装置によるすべり板と支承体との相対的な摺動の拘束が解除される。
ここで前述のように、カバー材が、各拘束部材の中間部に連結されているので、解除工程を行うことで、各拘束部材の中間部をカバー材の骨組み部材として作用させることができる。つまり、すべり板と支承体とが相対的に摺動すると、支承体、カバー材、並びに拘束部材の内端部および中間部が一体になって移動することとなる。これにより、この支承構造において、カバー材によりすべり板を保護することができる。
また、すべり板と支承体との相対的な摺動の拘束を解除する際に、各拘束部材の内端部と支承体との連結を解除する必要がなく、前記拘束の解除を一層簡便に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る拘束装置によれば、すべり板と支承体との相対的な摺動の拘束の解除を簡便に行うことができる。
また、本発明に係る支承装置によれば、施工性を向上させることができる。
さらに、本発明に係る支承構造の製造方法によれば、すべり板と支承体との相対的な摺動の拘束の解除を一層簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る支承構造における部分断面を含む側面図である。
【図2】図1に示す支承構造における部分断面を含む上面図である。
【図3】図1に示す支承構造における拘束装置の着脱作業を説明する側面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る支承構造における部分断面を含む側面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る支承構造における部分断面を含む上面図である。
【図6】図1に示す支承構造における部分断面を含む側面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る支承構造における部分断面を含む側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る支承構造を説明する。
図1に示すように、支承構造1は、下部構造体Aと上部構造体Bとの間に配設されたすべり支承(支承装置)2により、下部構造体A上に上部構造体Bが支承されてなる。
すべり支承2は、下部構造体Aと上部構造体Bとの間に配設され下部構造体Aに固定された固定板3と、該固定板3上に固定され、該固定板3を介して下部構造体Aに固定されたすべり板4と、該すべり板4上に摺動自在に配設され上部構造体Bに固定された支承体5と、すべり板4と支承体5との相対的な摺動を拘束する拘束装置6と、を備えている。
なお、支承体5は柱状に形成されており、以下では、この支承体5の中心軸線に直交する方向を径方向といい、この中心軸線回りに周回する方向を周方向という。
【0021】
固定板3は、下部構造体Aの上面に設けられた下土台部A1に、固定ボルト3aにより固定されている。固定ボルト3aの頭部(突出部)3bは、固定板3においてすべり板4が固定された上面(固定面)3dから上方に突出するとともに、すべり板4の上面よりも下側に位置している。
すべり板4は、例えばステンレス鋼などで形成されている。なおすべり板4の上面には、例えばポリ4フッ化エチレンを重合した合成樹脂材料などにより表面が平滑な合成樹脂層が形成されていても良い。
【0022】
また図2に示すように、下部構造体Aの上面視において、固定板3は矩形状、図示の例では正方形状に形成されるとともに、すべり板4は固定板3より小形の八角形状、図示の例では正八角形状に形成されている。そしてすべり板4は、固定板3と同軸に配置されており、固定板3の4つの角部3cはそれぞれ、すべり板4から三角形状に露出している。これらの4つの角部3cそれぞれには、前記固定ボルト3aが配設されており、固定ボルト3aは、各角部3cに周方向に間隔をあけて2つずつ配設されている。
【0023】
図1に示すように、支承体5は、すべり板4上に摺動自在に配置されたすべり部材7と、すべり部材7の上面に固定された積層ゴム8と、積層ゴム8の上面に固定されるとともに、上部構造体Bの下面に設けられた上土台部B1に固定されたフランジ9と、を備えており、このすべり支承2は、いわゆる弾性すべり支承となっている。なおすべり部材7は、例えばポリ4フッ化エチレンを重合した合成樹脂材料などで下面が平滑な円盤状に形成されており、すべり部材7、積層ゴム8およびフランジ9は、この順に外径が大きくなっている。これにより、支承体5は多段の柱状に形成されている。
【0024】
図2に示すように、拘束装置6は、支承体5から径方向の外側に延在するとともに周方向に互いに間隔をあけて配置される4つ(少なくとも3つ)の拘束部材10を備えている。これらの4つの拘束部材10は、周方向に互いに同等の間隔をあけて配設されており、図示の例では、固定板3の対角線上に位置している。
【0025】
拘束部材10は、支承体5に離脱自在に連結された内端部11と、固定板3に離脱自在に連結された外端部12と、内端部11と外端部12との間に位置する中間部13と、により構成されている。本実施形態では、これらの内端部11、外端部12および中間部13は、それぞれ別体で構成されている。
【0026】
拘束部材10の外端部12は、固定板3の各角部3cに配設されており、外端部12の上面視形状は、径方向の外側に向かうに従い幅が狭まる等脚台形状となっている。この外端部12は、前記固定ボルト3aのうち、径方向の外側に位置する部分を除く全体を上方から覆っている。
【0027】
そして図1に示すように、この外端部12は、前記固定ボルト3aの頭部3bに径方向の内側から係合することで、下部構造体Aにおいてすべり板4よりも外側に位置し、かつ固定板3の外周縁よりも内側に位置する被連結部分A2に、固定板3を介して連結されている。外端部12の下面には、固定ボルト3aの頭部3bに外嵌可能なボルト凹部15が形成されている。ボルト凹部15は径方向の外側に開口しており、このボルト凹部15の内面が固定ボルト3aの頭部3bに径方向の内側から係合している。
なお図示の例では、外端部12において径方向の内側を向く内端面の下部は、すべり板4の側面に径方向の外側から当接するとともに、外端部12における径方向の内端部の上面には、径方向の内側に開口する凹部が形成されている。
【0028】
そして本実施形態では、拘束部材10の内端部11は、図2に示すように、支承体5に突き当てられることで連結されている。内端部11の上面視形状は、径方向の位置によらず幅が一定な矩形状とされるとともに、この内端部11において径方向の内側を向く内端面は、内部に前記支承体5のすべり部材7が径方向の内側から嵌合される支承体凹部16とされている。支承体凹部16の内面の曲率は、すべり部材7の外周面の曲率と同等となっている。また図1に示すように、内端部11の下面はすべり板4の上面に当接しており、内端部11はすべり板4上を摺動可能となっている。
【0029】
また、拘束部材10の中間部13は、内端部11と外端部12との間に上方から離脱自在に嵌合している。中間部13の径方向に沿った大きさは、内端部11と外端部12との間の間隔の径方向に沿った大きさと同等となっている。中間部13の下面は、すべり板4の上面に当接しており、中間部13はすべり板4上を摺動可能となっている。また中間部13には、径方向の内側に向けて突出する内突出板18、および径方向の外側に向けて突出する外突出板19が設けられており、内突出板18は前記内端部11上に配置されるとともに、外突出板19は前記外端部12の前記凹部の内面上に配置されている。
【0030】
次に、以上のように構成されたすべり支承2において、拘束装置6を取り付けて拘束装置6によりすべり板4と支承体5との相対的な摺動を拘束する方法について説明する。
【0031】
なお、このように拘束装置6によりすべり板4と支承体5との相対的な摺動を拘束する拘束工程は、固定板3を介してすべり板4を下部構造体Aに固定するとともに支承体5を上部構造体Bに固定する固定工程の前に行っても良く、固定板3を下部構造体Aに固定した後、支承体5を上部構造体Bに固定する前に行っても良い。
これらのうち、拘束工程を固定工程の前に行う場合には、例えばすべり支承2を工場から出荷する前に、すべり板4と支承体5との相対的な摺動を拘束することができる。これにより、すべり板4と支承体5との相対的な摺動を拘束した状態ですべり支承2を搬送することができる。
【0032】
はじめに図3に示すように、複数の拘束部材10それぞれの内端部11を支承体5に連結するとともに外端部12を固定板3に連結する。このとき内端部11を、支承体5のすべり部材7に径方向の外側から突き当て、支承体凹部16の内面をすべり部材7の外周面に当接させることにより連結する。また外端部12を、固定板3に上方から配置し、ボルト凹部15の内面を、固定ボルト3aの頭部3bに当接させることにより連結する。
その後、各拘束部材10の中間部13を、内端部11と外端部12との間に上方から嵌合させてすべり板4上に配置するとともに、内突出板18を内端部11上に配置し、外突出板19を外端部12上に配置する。
以上により、拘束装置6の取り付けが終了する。
【0033】
次に、前記すべり支承2から拘束装置6を取り外し、すべり板4と支承体5との相対的な摺動の拘束を解除する方法について説明する。なお、このように拘束装置6を取り外す工程は、例えば支承構造1を形成した後などに行う。
【0034】
はじめに図3に示すように、複数の拘束部材10それぞれの中間部13をすべり板4から引き離し、内端部11と外端部12との間から離脱させる。
そして、各拘束部材10の内端部11を支承体5から離脱させるとともに外端部12を固定板3から離脱させる。このとき内端部11を、例えばすべり板4上で径方向の外側に摺動させる等することで、支承体5のすべり部材7から径方向の外側に引き離し、支承体凹部16の内面をすべり部材7の外周面から離間させることにより連結を解除して離脱させる。また外端部12を、固定板3から上方に引き離し、ボルト凹部15の内面を、固定ボルト3aの頭部3bから離間させることにより連結を解除して離脱させる。
以上により、拘束装置6の取り外しが終了する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る拘束装置6によれば、拘束部材10の内端部11が、支承体5に突き当てられて連結されるので、この内端部11を支承体5に径方向の外側から突き当てることにより連結することができるとともに、内端部11を支承体5から径方向の外側に引き離すことにより連結を解除して離脱させることができる。これにより、上部構造体Bと下部構造体Aとの間に入り込んで支承体5周囲の狭い作業スペースでボルトの着脱作業をしなくても、拘束部材10の内端部11を、支承体5に連結させたり支承体5から離脱させたりすることが可能になり、拘束装置6の着脱作業を簡便なものとして、すべり板4と支承体5との相対的な摺動の拘束の解除を簡便に行うことができる。
【0036】
また、拘束部材10の外端部12が、固定ボルト3aの頭部3bに径方向の内側から係合することで連結されるので、この外端部12を固定板3に上方から配置することにより連結することができるとともに、この外端部12を固定板3から上方に引き離すことにより連結を解除して離脱させることができる。これにより、拘束部材10の外端部12をボルトによらず固定板3に連結することが可能になり、拘束装置6の着脱作業を一層簡便に行うことができる。
【0037】
また、拘束部材10の中間部13が、内端部11と外端部12とは別体に形成されるとともに、両端部11、12の間に上方から離脱自在に嵌合しているので、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
【0038】
さらに本実施形態では、拘束部材10の内端部11がすべり板4上を摺動可能となっているので、内端部11を支承体5から離脱させるときに、この内端部11を、すべり板4上で径方向の外側に摺動させることができる。これにより、内端部11をすべり板4から上方に離間させずに支承体5から離脱させることが可能になり、内端部11がすべり板4に落下することによりすべり板4が傷つくのを抑えることができる。
【0039】
そして、本実施形態に係るすべり支承2によれば、前記拘束装置6によりすべり板4と支承体5との相対的な摺動が拘束されているので、拘束装置6を簡便に着脱させることが可能になり、施工性を向上させることができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の支承構造を、図4を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0041】
図4に示すように、本実施形態の支承構造30に備えられたすべり支承31の拘束装置32は、積層ゴム8の径方向の変形を拘束する積層ゴム拘束体33を備えている。積層ゴム拘束体33は、複数の拘束部材10それぞれに離脱自在に装着されるとともに、積層ゴム8の外周面に当接している。
積層ゴム拘束体33は、拘束部材10の内端部11に離脱自在に装着されるとともにこの内端部11から上方に延在している。この積層ゴム拘束体33は、上下方向および径方向の両方向に沿って延在する板状に形成されており、径方向の内側から外側に向かうに従い上下方向に沿った大きさが漸次、小さくなっている。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る拘束装置32によれば、前記積層ゴム拘束体33を備えているので、支承体5の積層ゴム8の変形を拘束することができる。
【0043】
なお積層ゴム拘束体33は、本実施形態に示されたものに限られず、適宜構成を変更することが可能である。例えば、積層ゴム拘束体33が、上下方向に延在し積層ゴム8の外周面に当接する縦材部、および縦材部の下端から径方向の外側に延設された横材部を有するL字材と、このL字材の縦材部および横材部を連結する補強材と、を備える構成であっても良い。
また本実施形態では、積層ゴム拘束体33は、拘束部材10に離脱自在に装着されるものとしたが、拘束部材10と一体に形成され、拘束部材10から離脱できなくても良い。
【0044】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態の支承構造を、図5および図6を参照して説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0045】
図5に示すように、本実施形態の支承構造40に備えられたすべり支承41は、支承体5の径方向の外側に全周にわたって配置されるとともに、すべり板4を上方から覆うカバー材42を備えている。このカバー材42は、各拘束部材10の中間部13に連結されている。
【0046】
本実施形態では、カバー材42の上面視形状は、すべり板4を全面にわたって上方から覆い、かつ固定板3をほぼ全面にわたって上方から覆う正方形状となっており、カバー材42における径方向の中央部には、支承体5が配置される配置孔43が形成されている。配置孔43の内径は、支承体5の積層ゴム8の外径と同等となっている。なおカバー材42は、例えばパネル材や、可撓性を具備するシート材などにより形成することができる。
【0047】
このカバー材42は、周方向に4分割されており、図示の例では、拘束部材10上を通って径方向に延在する4つの分割線44に沿って分割され、周方向に4等分されている。このようにしてカバー材42が分割されてなる4つのカバー構成体45は、径方向の内側から外側に向かうに従い、周方向に沿った大きさが漸次大きくなっている。
【0048】
各カバー構成体45は、周方向に隣り合う2つの拘束部材10の中間部13それぞれに、図示しない連結手段により上方から連結されている。この連結手段としては、例えばねじ部材やピン部材などを採用することができる。
また図6に示すように、本実施形態では、拘束部材10の中間部13において径方向の外側を向く外端面は、上下方向に沿って延在するとともに上下方向の全長にわたって外端部12に径方向の内側から当接している。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係るすべり支承41によれば、前記カバー材42を備えているので、カバー材42によりすべり板4を保護することができる。
またカバー材42が、各拘束部材10の中間部13に連結されているので、このカバー材42により拘束部材10の位置関係を高精度に保持することができる。これにより、すべり板4と支承体5との相対的な摺動を確実に拘束することができる。
【0050】
なお各カバー構成体45は、前記実施形態に示したものに限られず、4つの拘束部材10のうち、周方向で隣り合う2つ以上の拘束部材10の中間部13に連結されていれば良い。例えば、カバー構成体45は、カバー材42が2分割や3分割されることで構成されていても良く、また各カバー構成体45の周方向に沿った大きさが互いに異なっていても良い。さらに、カバー構成体45の周端部同士が互いに重なりあっていても良い。
【0051】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態の支承構造を、図7を参照して説明する。
なお、この第4実施形態においては、第3実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0052】
図7に示すように、本実施形態の支承構造50では、各拘束部材10の外端部12と固定板3との連結が解除されており、図示の例では、外端部12が固定板3から離脱されている。このように、拘束部材10の外端部12と固定板3との連結が解除されることで、拘束装置6によるすべり板4と支承体5との相対的な摺動の拘束が解除される。
【0053】
ここで前述のように、カバー材42が、各拘束部材10の中間部13に連結されているので、各拘束部材10の中間部13をカバー材42の骨組み部材として作用させることができる。つまり、すべり板4と支承体5とが相対的に摺動すると、支承体5、カバー材42、並びに拘束部材10の内端部11および中間部13が一体になって移動することとなる。なおこのとき内端部11は、支承体5と中間部13との間に挟持されている。
【0054】
以上のように構成された支承構造50は、前記固定工程および前記拘束工程を行って図6に示すような支承構造40を形成した後、図7に示すように、拘束部材10の内端部11を支承体5に連結させた状態で、拘束部材10の外端部12と固定板3との連結を解除する解除工程を行うことで形成される。
なお図示の例では、このとき、外端部12を固定板3から離脱させることで、外端部12と固定板3との連結を解除している。ここで本実施形態では、拘束部材10の中間部13の外端面が、上下方向に沿って延在するとともに上下方向の全長にわたって外端部12に径方向の内側から当接しているので、前述のように外端部12を固定板3から離脱させる離脱作業が中間部13により阻害され難くなる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る支承構造50によれば、前述のように各拘束部材10の中間部13をカバー材42の骨組み部材として作用させることが可能になり、この支承構造50において、カバー材42によりすべり板4を保護することができる。
また、すべり板4と支承体5との相対的な摺動の拘束を解除する際に、各拘束部材10の内端部11と支承体5との連結を解除する必要がなく、前記拘束の解除を一層簡便に行うことができる。
【0056】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、拘束装置6、32は、4つの拘束部材10を備えているものとしたが、少なくとも3つの拘束部材10を備えていればこれに限られるものではない。
【0057】
また前記実施形態では、すべり支承2、31、41は、支承体5が積層ゴム8を備えるいわゆる弾性すべり支承であるものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、すべり支承2、31、41がいわゆる剛すべり支承であり、支承体5が例えば金属材料などからなる剛体を積層ゴム8に代えて有していても良い。
【0058】
また前記実施形態では、拘束部材10の内端部11は、支承体5のすべり部材7に突き当てられて連結されているものとしたが、支承体5に突き当てられて連結されていれば良い。例えば、支承体5のすべり部材7が、積層ゴム8に図示しないホルダを介して固定されている場合、このホルダに内端部11が突き当てられて連結されていても良い。さらに内端部11が、支承体5の積層ゴム8やフランジ9に突き当てられて連結されていても良い。
【0059】
また前記実施形態では、拘束部材10の外端部12が、前記固定ボルト3aのうち、径方向の外側に位置する部分を除く全体を上方から覆っているものとしたが、これに限られるものではなく、固定ボルト3aの全体を上方から覆っていても良く、固定ボルト3aを上方から覆っていなくても良い。
さらに前記実施形態では、拘束部材10の外端部12は、固定ボルト3aの頭部3bに係合するものとしたが、固定板3の上面3dから上方に突出するものに係合すれば、これに限られるものではない。例えば、拘束部材10の外端部12が係合する専用の部材を設けても良い。さらに例えば、前記拘束工程を前記固定工程の前に行う場合には、固定工程の際に固定板3を吊り下げるために用いられるアイボルトを拘束工程の前に固定板3に取り付け、このアイボルトの頭部に拘束部材10の外端部を係合させても良い。
さらにまた前記実施形態では、外端部12が、固定ボルト3aの頭部3bに、径方向の内側から係合することで連結されているものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、外端部12がボルト等の連結手段により固定板3に連結されていても良い。
【0060】
また前記実施形態では、拘束部材10の中間部13は、内端部11と外端部12とは別体に形成されるとともに、両端部11、12の間に上方から離脱自在に嵌合しているものとしたが、これに限られるものではなく、例えば拘束部材10は、内端部11と外端部12と中間部13とが一体に形成されたものであっても良い。
この場合において、前記第4実施形態に示された支承構造50のように、拘束部材の中間部をカバー材の骨組み部材として作用させるためには、外端部と固定板との連結を解除すれば良く、外端部を固定板から離脱させなくても良い。なおこの場合、すべり板と支承体とが相対的に摺動すると、支承体、カバー材、並びに拘束部材の全体(内端部、外端部および中間部)が一体になって移動することとなる。
【0061】
また前記実施形態では、拘束部材10の中間部13には内突出板18が設けられているものとしたが、内突出板18はなくても良い。
さらに、前記第1実施形態および前記第2実施形態では、中間部13には外突出板19が設けられているものとしたが、外突出板19はなくても良い。さらにまた、前記第3実施形態および前記第4実施形態では、拘束部材10の中間部13の外端面は、上下方向に沿って延在するとともに上下方向の全長にわたって外端部12に径方向の内側から当接しているものとしたが、これに限られず、中間部13に外突出板19が設けられていても良い。
【0062】
また前記実施形態では、拘束部材10の外端部12が、下部構造体Aの被連結部分A2に固定板3を介して固定されているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、拘束部材10の外端部12が、固定板3よりも径方向の外側に位置し、下部構造体Aにおいて固定板3よりも外側に位置する被連結部分に離脱自在に連結されていても良い。この場合、すべり板4が下部構造体Aに固定された後に、拘束装置6が取り付けられることとなる。またこの場合、固定板3はなくても良い。
【0063】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1、30、40、50 支承構造
2、31、41 すべり支承
3 固定板
3b 頭部(突出部)
3d 上面(固定面)
4 すべり板
5 支承体
6、32 拘束装置
7 すべり部材
10 拘束部材
11 内端部
12 外端部
13 中間部
42 カバー材
A 下部構造体
A2 被連結部分
B 上部構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造体と上部構造体との間に配設され下部構造体に固定されるすべり板と、該すべり板上に摺動自在に配設され上部構造体に固定される支承体と、の相対的な摺動を拘束する拘束装置であって、
内端部が前記支承体に離脱自在に連結されるとともに外端部が前記下部構造体において前記すべり板よりも外側に位置する被連結部分に離脱自在に連結され、周方向に互いに間隔をあけて配置される少なくとも3つの拘束部材を備え、
前記拘束部材の内端部は、前記支承体に突き当てられて連結されることを特徴とする拘束装置。
【請求項2】
請求項1記載の拘束装置であって、
前記拘束部材のうち、前記内端部と前記外端部との間に位置する中間部は、これらの内端部と外端部とは別体に形成されるとともに、前記内端部と前記外端部との間に上方から離脱自在に嵌合していることを特徴とする拘束装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の拘束装置であって、
前記拘束部材の外端部は、前記すべり板が固定された固定面から上方に突出する突出部に径方向の内側から係合することで連結されることを特徴とする拘束装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の拘束装置であって、
前記支承体の径方向の外側に全周にわたって配置されるとともに、前記すべり板を上方から覆うカバー材を備え、
該カバー材は、各前記拘束部材において前記内端部と前記外端部との間に位置する中間部に連結されていることを特徴とする拘束装置。
【請求項5】
下部構造体と上部構造体との間に配設され下部構造体に固定される固定板と、
該固定板上に固定され、該固定板を介して下部構造体に固定されるすべり板と、
該すべり板上に摺動自在に配設され上部構造体に固定される支承体と、
請求項1から4のいずれか1項に記載の拘束装置と、を備え、
前記拘束部材の外端部は、前記被連結部分に前記固定板を介して連結され、
前記拘束装置により前記すべり板と前記支承体との相対的な摺動が拘束されていることを特徴とする支承装置。
【請求項6】
下部構造体と上部構造体との間に配設され下部構造体に固定されたすべり板と、
該すべり板上に摺動自在に配設され上部構造体に固定された支承体と、
請求項4記載の拘束装置と、を備える支承装置により、下部構造体上に上部構造体が支承されてなる支承構造を形成する支承構造の製造方法であって、
前記すべり板を下部構造体に固定するとともに前記支承体を上部構造体に固定する固定工程と、
該固定工程の後、前記各拘束部材の内端部を前記支承体に連結させた状態で、前記各拘束部材の外端部と前記被連結部分との連結を解除する解除工程と、を有することを特徴とする支承構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−102787(P2012−102787A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250688(P2010−250688)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】