拡大可能プーリ
複数の隣接するセグメントを備え、各セグメントが径方向に移動可能であり、各セグメントがピン部材と滑動自在に係合し、各セグメントが各ピン部材に沿って径方向に対して実質的に角度(α)の方向に動けるように、各ピン部材が各セグメントと係合し、各セグメントを他のセグメントに対して空間的に配置するために各セグメントと係合する可動ガイド部材と、各セグメントに協動的に連結されるとともに各ピン部材と協働敵に係合可能なカウンタウエイトとを備え、各カウンタウエイトがセグメントの救心力に対抗する力を発生し、各ピン部材がハブに連結される拡大可能プーリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡大可能プーリに関し、特に外部から掛かるトルクに応じて可変的に決定される有効径を有する拡大可能分割プーリに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車の補機ベルト伝動装置は、ベルトによって駆動されるスタータ/ジェネレータを備え得ることが知られている。このようなシステムでは、始動と発電の両モードを満足するために特別なベルト張力が与えられる。従来技術のシステムでは、2つのテンショナが利用可能であり、例えば、オルタネータのベルト緩み側には流体テンショナが取り付けられ、オルタネータのベルト張り側には機械的なトーションスプリングテンショナが取り付けられる。
【0003】
この技術の代表は、米国特許第3,935,751号明細書(1976)であり、無段階速度可変装置、より具体的には、自動車などに適した自動変速装置の構造を開示し、前記変速装置の遠心力は、回転手段の高速回転により発生し、回転ディスクに旋回可能に嵌め合わされた複数の鉤爪ブロックがその外径を増大させるように外側に拡張できるようにし、動力が出力された後、前記動作外径の変化により様々な強さの異なる速度比を自動生成する。
【0004】
必要とされているのは、外部から掛かるトルクに応じて可変的に決定される有効径を有する拡大可能分割プーリである。本発明はこの要求に合致する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、第1の目的は、外部から掛かるトルクに応じて可変的に決定される有効径を有する拡大可能分割プーリを提供することである。
【0006】
本発明のその他の目的は、本発明の以下の説明と添付された図面により指摘され明らかとされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の隣接するセグメントを備え、各セグメントが径方向に移動可能であり、各セグメントがピン部材と滑動自在に係合し、各セグメントが各ピン部材に沿って径方向に対して実質的に角度(α)の方向に動けるように、各ピン部材が各セグメントと係合し、各セグメントを他のセグメントに対して空間的に配置するために各セグメントと係合する可動ガイド部材と、各セグメントに協動的に連結されるとともに各ピン部材と協働敵に係合可能なカウンタウエイトとを備え、各カウンタウエイトがセグメントの救心力に対抗する力を発生し、各ピン部材がハブに連結される拡大可能プーリを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
この明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【図1】本発明の拡大可能プーリの分解斜視図である。
【図2】ハブの詳細図である。
【図3】セグメント・ピン部材の詳細図である。
【図4】セグメント・ガイドの詳細図である。
【図5】セグメントの詳細図である。
【図6】セグメント・ストップの詳細図である。
【図7】カウンタウエイトの詳細図である。
【図8】圧縮性部材の詳細図である。
【図9】バックプレートの詳細図である。
【図10】拡大可能プーリハブの部分的な詳細図である。
【図11】拡大可能プーリの部分的な詳細図である。
【図12】拡大可能プーリ・セグメントの詳細図である。
【図13】拡大可能プーリ・セグメントおよびカウンタウエイトの詳細図である。
【図14】拡大可能プーリの斜視図である。
【図15】拡大可能プーリの閉じられた位置における側面図である。
【図16】拡大可能プーリの途中まで開かれた位置における側面図である。
【図17】拡大可能プーリの完全に開かれた位置における側面図である。
【図18】拡大可能プーリの断面図である。
【図19】拡大可能プーリを用いたベルト伝動システムの概略図である。
【図20】セグメントシステムの力学的関係を示す模式図である。
【図21】スロット角度の関数としての力のグラフである。
【図22】図17に示されるプーリの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は拡大可能プーリの分解斜視図である。プーリ100は、ハブ10、セグメント・ストップ20、セグメント・ピン部材30、セグメント・ガイド40、セグメント50、カウンタウエイト60、圧縮性部材70、そしてバックプレート80を備える。組立体は、ネジやボルトを含むファスナ90により1つに保持される。ファスナ90はバックプレート80からハブ10へと延出する。
【0010】
図2はハブの詳細図である。ハブ10はセグメント・ピン部材30の各々を受ける戻り止め11を備える。戻り止め11は、ハブ10の周りに円に沿って配置される。ハブ11は更にリム12を備え、リム12はハブ10から軸方向に突出する。プーリを補機あるいは他の取付面に取り付けるため、取付シャフトはボア13を通して延出する(例えば、図18参照)。ファスナ90は、ハブ12に設けられた孔に係合する。
【0011】
図3は、セグメント・ピン部材の詳細図である。各セグメント・ピン部材30はハブ10に係合する。各セグメント50は、セグメント・ピン部材30と滑動自在に係合する。各セグメント・ピン30は、各スロット53との滑動自在な係合を通して各セグメント50に係合する外側面31を備える。各セグメント・ピン部材30は、僅かに半径r2の円弧形状を呈し(図15参照)、これはこの明細書の他の場所で説明されるように、セグメント50の動きを容易にする。各セグメント・ピン部材30は、プーリが回転しているときに各セグメント50とカウンタウエイト60をプーリ100の中に保持する手段である。
【0012】
図4は、セグメント・ガイドの詳細図である。セグメント・ガイド40は、頂点が径方向内側を向くように径方向外側に延出する楔形状部材41を備える。隙間42が各部材41の間に設けられる。セグメント部材52は、各隙間42に配置される。ガイド40は更に、リング43、44を備える。リング43、44の目的は、各セグメント・ガイド41を適切に空間的に位置決めすることである。
【0013】
セグメント・ガイド40は、ハブ10やバッキング・プレート80、あるいはセグメント50の何れにも固定的な連結はされていない。すなわち、セグメント・ガイド40は、各セグメント50とハブ10の間を「自由に動く」(図18参照)。これは結果として、セグメント・ピン部材30および隣接するセグメント50の各々との適切なアライメントを維持しながら、各セグメント50が径方向および周方向に動く自由を与えるのに必要なセグメント・ガイド40のプーリ内でのパーシャルな回転を許す。
【0014】
この好ましい実施形態では、部材30はセグメント・ピン部材として説明される。しかし、セグメント・ピン部材30の機能は、セグメント・ピン部材30の面31によって達成される。面31は、ハブ10またはバックプレート80から適正位置へ片持ち梁部材や他の軸突起物を延出し、それによってセグメント50の位置を制御するようにスロット53と接触するようにすることによっても実現できる。
【0015】
図5は、セグメントの詳細図である。プーリ100は、外周の周りに配置される複数のセグメント50を備える。セグメント50は円弧部51を備える。円弧部51は、ベルト(図示せず)と係合する外面54を備える。外面54は、マルチリブ形状を有するように描かれるが、平ベルトや単独のVリブ形状も適用できる。
【0016】
部材52は、円弧部51から径方向内側にプーリの中心に向けて延出する。部材52は、一般的には円弧部51に垂直に配置される。部材52はスロット53と穴55を備える。カウンタウエイト60は、穴55を通して各セグメント50に係合する(図7参照)。例えば、各セグメントは約8gのオーダの質量を有する。
【0017】
図6は、セグメント・ストップの詳細図である。セグメント・ストップ20は、円環状であり、エラストマー素材あるいは他の弾性材料であってもよく、プラスチック、天然ゴム、合成ゴムやそれらの等価物や組合せが含まれる。セグメント・ストップ20は、各セグメント50の動きに対して径方向内側最大限界として働く。
【0018】
図7は、カウンタウエイトの詳細図である。カウンタウエイト60は、セグメント50の穴55に旋回可能に係合するピン61を備える。カウンタウエイト60は、使用時のプーリの回転により各セグメントに働く遠心力に対抗すように作用する所定の質量を有する。ノッチ62は、セグメント・ピン部材30と協働的に係合する。カウンタウエイトの質量の大部分は、ローブ63に位置する。例えば、各カウンタウエイトは、約8gのオーダの質量を有する。
【0019】
図8は、圧縮性部材の詳細図である。圧縮性部材70は、エラストマー素材あるいは他の弾性材料であり、プラスチック、天然ゴム、合成ゴムやそれらの等価物や組合せが含まれる。作動時、カウンタウエイト60は、ピン61とセグメント・ピン部材30の周りに、各カウンタウエイトが圧縮性部材70と接触するように旋回する。圧縮性部材70は、各カウンタウエイトの運動を所定の位置で停止させる弾性手段として働く。殆どの場合、各カウンタウエイト60が圧縮性部材70と係合する位置は、略各セグメント50の最大径方向位置に対応する。
【0020】
図9は、バックプレートの詳細図である。バックプレート80は、形状において一般的に平坦かつ円形である。各戻り止め81は、セグメント・ピン部材30の一端を受け入れる。各戻り止め81は、ハブ10に設けられた協働する戻り止め11と一直線に並ぶ。
【0021】
ファスナ90は、ハブリム12に設けられた穴にバックプレート80を連結する。ファスナ90は、ネジやその技術分野で従来知られている適切な任意のファスナである。
【0022】
図10は、拡大可能プーリハブの部分詳細図である。セグメント・ピン部材30は、戻り止め11においてハブ10と係合された状態で示される。セグメント・ストップ20は、リム12の周りに係合された状態で示される。
【0023】
図11は、拡大可能プーリの部分詳細図である。セグメント・ガイド40は、ハブ10に隣接して配置される。セグメント・ピン部材30は、ガイド40のリング43、44を通して延在する。各セグメント・ピン部材30は、各部材41の間にある各隙間42を通して延出する。各セグメント・ピン部材は、回転軸A−Aに実質的に平行な軸方向に延在する。セグメント・ガイド40は、ハブ10やセグメント・ピン部材30の何れにも固定されないが、その代わり、説明した様々な構成部との関係により、この位置に緩く保持される。これはセグメント・ガイド40が、セグメント50の動きに応じて自由に動くことを許容する。
【0024】
図12は、拡大可能プーリ・セグメントの詳細図である。部材52は、各部材41の間の隙間42に滑動自在に係合される。隙間42は、スロット53を通した部材52のセグメント・ピン30に沿った滑動を許容するのに十分広く、すなわち、スロット53はセグメント・ピン部材30に沿って滑動する。スロット53は、径方向に対して約30〜50°の範囲にある角度αをもって配置される(図20参照)。
【0025】
図13は、拡大可能プーリ・セグメントとカウンタウエイトの詳細図である。カウンタウエイト60は、穴55に回動可能に挿入されたピン61によってセグメント50に回動可能に係合される。セグメント・ピン部材30は、ノッチ62に係合する。カウンタウエイト60とセグメント・ガイド40は、セグメント50の幅の中に完全収まる。この図13において、幅は垂直軸方向であり、セグメント・ピン部材30に平行である。セグメント外面54は、マルチリブベルト(図示せず)と噛み合うマルチリブ形状を呈する。
【0026】
図14は、拡大可能プーリの斜視図である。部材70は、リム12の周りに配置される。バックプレート80とファスナ90は、この斜視図では省略されている。セグメント50が部分的に開かれた位置で示される。ピン120は、ハブ100をバックプレート80に位置決めする。
【0027】
図15は、閉じられた位置での拡大可能プーリの側面図である。複数のセグメント50はプーリ100の外周の周り隣接して配置される。プーリ100は、協働的セグメント50の組立体を含み、各組立体には、セグメント50、セグメント・ピン部材30、カウンタウエイト60が含まれる。各セグメント50は、隣接するセグメント50によりプーリ外周に適正に配置される。図15のプーリは、「閉じられた」位置として示され、すなわち、各セグメント50は隣接するセグメント50と接触している。各カウンタウエイト60は、部材70に軽く押し付けられる。
【0028】
部材30における各円弧は、半径r2を有する。半径r2は、図16に示されるように、各セグメント50の径方向への動きに対し各スロット53が円弧に沿って動くことを可能にする。
【0029】
図16は、部分的に開かれた位置での拡大可能プーリの側面図である。この図16は、プーリが途中まで拡大された状態を示し、プーリが回転している場合に対応する。各セグメント50は、所定距離径方向外側に移動されており、そのときスロット53は、セグメント・ピン30に沿って途中まで移動される。各カウンタウエイト60は、ピン61の周りに途中まで回転される。これは各カウンタウエイト60が、各ノッチ62において各セグメント・ピン部材30にも押し付けられるからである。
【0030】
例えば、各セグメント50が径方向外側へ移動すると、それは「D」方向への動きの成分ももつ。セグメント50が方向「D」へ移動すると、穴55も同様に移動し、それによりカウンタウエイト60も同様に移動する。各カウンタウエイト60の「D」方向への僅かな動きは、各ノッチ62のセグメント・ピン30への押し付けを発生する。要するに、ノッチ62とセグメント・ピン30の間の接触は、各カウンタウエイト60のノッチ62におけるセグメント・ピン30の周りの旋回、およびピン61の周りの旋回を発生する。ピン30との係合、それによるセグメント・ピン部材表面31との係合は、各セグメント50とカウンタウエイト60をプーリ100内の適正位置に保持する。この運動は更に、他のセグメントに対する各セグメントの適正なアライメントを維持するため、ガイド部材40も途中まで回転する。
【0031】
図17は、完全に開いた状態における拡大可能プーリの側面図である。求心力の影響の下、各セグメント50が径方向外側へと動くと、プーリの有効径が増大し、各セグメント間の隙間が拡大する。各セグメント50の径方向外側への運動の限界は、各カウンタウエイトの部材70との係合によって規定される。各ローブ63は径方向内側に動き、そして増大する力を部材70へ掛ける。最終的には、部材70との接触は、カウンタウエイトの更なる内側への運動の全て停止し、これは同様に各セグメント50の更なる外側への運動の全て停止する。
【0032】
図18は、拡大可能プーリの断面図である。拡大可能プーリ100は、一般的には回転シャフト「S」に取り付けられる。シャフト「S」は、例えばモータあるいはエンジン(図示せず)に利用されるであろう補機から延出してもよい。補機には、オルタネータや、モータ・ジェネレータ、ウオーターポンプ、パワーステアリング・ポンプ、あるいは他の回転する補機が含まれる。プーリ100は、ナット「N」を用いてシャフトSのネジ付端部に確りと固定される。
【0033】
図19に示されるこのシステムの有効駆動比は、セグメント50の外側への運動により生じる拡大可能プーリの有効径の変化によって変更可能である。
【0034】
例えば、約60mmの「閉じた」直径をもつ拡大可能プーリは、約4000RPMの運転速度において約65mmの直径まで拡大し得る。プーリの直径の増大は、プーリ、それによって補機シャフト(図18、「S」参照)の回転速度を比率:
速度1×直径1=速度2×直径2
で低下させる。
解:
速度2=[(4000RPM)×60mm]/65mm
速度2=3692RPM
【0035】
これは直径の増大に比例する補機回転速度の速度低下を表す。システムの回転速度が増大すると、これに比例する補機の速度低下が起こり得る。拡大可能プーリは、運転速度の広い範囲に対して適しており、例えば、約14,000RPMまで適応する。
【0036】
この例は、単に例示の目的で提供されたもので、本発明のプーリの大きさ、実施形態、あるいは用途を限定することを意図したものではない。
【0037】
図19は、拡大可能プーリを使用したベルト伝動システムの概要図である。この例では、発明に係るプーリ100はモータ/ジェネレータに連結されている。また、このシステムは、ベルトB、アイドラ、テンショナ、そしてクランクシャフトに取り付けられたプーリを備える。この例示されたシステムは、一般的なハイブリッド内燃機関において利用できる。発電モードでは、クランクシャフトがベルトBを駆動する。始動モードでは、モータ/ジェネレータがベルトBを駆動し、それによりクランクシャフトを回転し、それによりベルト伝動システムが取り付けられたエンジンを始動する原動機として利用される。
【0038】
図20は、セグメントシステムの力学的関係を示す模式図である。第1運転モードでは、拡大可能プーリのセグメント50は、図15に示されるように最も径方向内側に位置する。このモードでは、プーリは最小の直径を有する。各セグメント50のスロット53は、略ピン部材30を中心に配置する。プーリが回転していても、ベルトによってプーリにトルクが掛からず、それ故、セグメント50を径方向に対し垂直な方向に押し遣る救心力FCに垂直に作用する「トルク」力TBが存在しない。別の言い方をすると、力TBは、プーリの外周に対して各セグメント外面54に実質的に接線方向に作用する。各カウンタウエイト60は、力FCと略釣り合う力(FCW)を作用し、そのため各セグメント50は径方向外側へは動かない。更に、カウンタウエイト(FCW)によって作用する力は、一度ベルトトルクが除かれると各セグメントを引っ込めるように作用する。
【0039】
ベルトトルクが各セグメントに掛かるとき、救心力FCに実質的に垂直な力TBが作用する。横方向の力TBは、各セグメント50のスロット53が各ピン30に沿って動くように働く。径方向外側の救心力FCと結び付けられたこのような横方向の運動は、カウンタウエイト(FCW)によって働く力に打ち勝ち、各セグメント50を径方向外側に向けて動かし、そしてこの運動はプーリの有効径を増大させる。ベルトは、同時に全てのセグメント50には係合せず、同時に全てのセグメント50にトルクを伝達しないが、1つのセグメントの如何なる動きも、ガイド部材40により他のセグメント全てに等しく伝達される。それにより、1つのセグメントの運動は、全てのセグメントにおいても同様に行われる。
【0040】
プーリは、トルクセンシティブであり、プーリの有効径がベルトにより各プーリ・セグメントに掛かるトルク力(TB)によって変化することを意味する。
【0041】
この例では、約45度の角度(α)が、始動モードにおいて適正なベルト張力を与えるのに十分である。発電モードでは、セグメントは径方向内側に引っ込んでおり、その結果、プーリは最小の有効径を有する。各場合において、拡大可能プーリはモータ/ジェネレータに連結されている。
【0042】
各セグメント50(結果として全てのセグメント50)の外側への運動を発生するのに必要な力FCの強さは、説明された各々の構成部の滑動により発生する摩擦力と同様に、角度(α)の関数である(例えば図21参照)。図21は、スロット角の関数としての救心力のグラフである。
【0043】
「始動モード」は、ベルトBを駆動し、それによりエンジン・クランクシャフトを回転させることでICエンジンを始動するモータ/ジェネレータのスタータとしての利用を指す。「発電モード」は、車両のバッテリシステム(図示せず)を再充電するモータ/ジェネレータのジェネレータとしての利用を指す。ジェネレータモードでは、モータ/ジェネレータは、ベルトBを通してICエンジン・クランクシャフトによって駆動される。
【0044】
図22は、図17に示されるプーリの詳細図である。図は、セグメント50、カウンタウエイト60、セグメント・ピン部材30、ガイド部材41の組立体の全体的に示す。図22は、セグメント・ピン部材30がスロット53の一端にあることから、セグメント50が開かれた位置にあるときを示す。セグメント・ピン部材30は、ノッチ62とも係合して示される。部材41の間の隙間42は、各セグメント50が径方向外側へ移動するときに、各セグメント50が径方向に整列された状態を維持する役割を果たす。これは、プーリが「開く」にしたがって、各セグメント50がそれぞれ隣合うセグメントから離れるからである。これにより、セグメント・ガイド40は、各セグメントが外側へ移動し、それにより隣接するセグメントと接触しなくなるときに、適正な間隔とアライメントを保証する。
【0045】
ここでは、本発明の1つ形態について説明されたが、当業者にとっては、ここで説明された本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく、その構成や構成部の関係を様々に変形することは容易である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡大可能プーリに関し、特に外部から掛かるトルクに応じて可変的に決定される有効径を有する拡大可能分割プーリに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車の補機ベルト伝動装置は、ベルトによって駆動されるスタータ/ジェネレータを備え得ることが知られている。このようなシステムでは、始動と発電の両モードを満足するために特別なベルト張力が与えられる。従来技術のシステムでは、2つのテンショナが利用可能であり、例えば、オルタネータのベルト緩み側には流体テンショナが取り付けられ、オルタネータのベルト張り側には機械的なトーションスプリングテンショナが取り付けられる。
【0003】
この技術の代表は、米国特許第3,935,751号明細書(1976)であり、無段階速度可変装置、より具体的には、自動車などに適した自動変速装置の構造を開示し、前記変速装置の遠心力は、回転手段の高速回転により発生し、回転ディスクに旋回可能に嵌め合わされた複数の鉤爪ブロックがその外径を増大させるように外側に拡張できるようにし、動力が出力された後、前記動作外径の変化により様々な強さの異なる速度比を自動生成する。
【0004】
必要とされているのは、外部から掛かるトルクに応じて可変的に決定される有効径を有する拡大可能分割プーリである。本発明はこの要求に合致する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、第1の目的は、外部から掛かるトルクに応じて可変的に決定される有効径を有する拡大可能分割プーリを提供することである。
【0006】
本発明のその他の目的は、本発明の以下の説明と添付された図面により指摘され明らかとされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の隣接するセグメントを備え、各セグメントが径方向に移動可能であり、各セグメントがピン部材と滑動自在に係合し、各セグメントが各ピン部材に沿って径方向に対して実質的に角度(α)の方向に動けるように、各ピン部材が各セグメントと係合し、各セグメントを他のセグメントに対して空間的に配置するために各セグメントと係合する可動ガイド部材と、各セグメントに協動的に連結されるとともに各ピン部材と協働敵に係合可能なカウンタウエイトとを備え、各カウンタウエイトがセグメントの救心力に対抗する力を発生し、各ピン部材がハブに連結される拡大可能プーリを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
この明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【図1】本発明の拡大可能プーリの分解斜視図である。
【図2】ハブの詳細図である。
【図3】セグメント・ピン部材の詳細図である。
【図4】セグメント・ガイドの詳細図である。
【図5】セグメントの詳細図である。
【図6】セグメント・ストップの詳細図である。
【図7】カウンタウエイトの詳細図である。
【図8】圧縮性部材の詳細図である。
【図9】バックプレートの詳細図である。
【図10】拡大可能プーリハブの部分的な詳細図である。
【図11】拡大可能プーリの部分的な詳細図である。
【図12】拡大可能プーリ・セグメントの詳細図である。
【図13】拡大可能プーリ・セグメントおよびカウンタウエイトの詳細図である。
【図14】拡大可能プーリの斜視図である。
【図15】拡大可能プーリの閉じられた位置における側面図である。
【図16】拡大可能プーリの途中まで開かれた位置における側面図である。
【図17】拡大可能プーリの完全に開かれた位置における側面図である。
【図18】拡大可能プーリの断面図である。
【図19】拡大可能プーリを用いたベルト伝動システムの概略図である。
【図20】セグメントシステムの力学的関係を示す模式図である。
【図21】スロット角度の関数としての力のグラフである。
【図22】図17に示されるプーリの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は拡大可能プーリの分解斜視図である。プーリ100は、ハブ10、セグメント・ストップ20、セグメント・ピン部材30、セグメント・ガイド40、セグメント50、カウンタウエイト60、圧縮性部材70、そしてバックプレート80を備える。組立体は、ネジやボルトを含むファスナ90により1つに保持される。ファスナ90はバックプレート80からハブ10へと延出する。
【0010】
図2はハブの詳細図である。ハブ10はセグメント・ピン部材30の各々を受ける戻り止め11を備える。戻り止め11は、ハブ10の周りに円に沿って配置される。ハブ11は更にリム12を備え、リム12はハブ10から軸方向に突出する。プーリを補機あるいは他の取付面に取り付けるため、取付シャフトはボア13を通して延出する(例えば、図18参照)。ファスナ90は、ハブ12に設けられた孔に係合する。
【0011】
図3は、セグメント・ピン部材の詳細図である。各セグメント・ピン部材30はハブ10に係合する。各セグメント50は、セグメント・ピン部材30と滑動自在に係合する。各セグメント・ピン30は、各スロット53との滑動自在な係合を通して各セグメント50に係合する外側面31を備える。各セグメント・ピン部材30は、僅かに半径r2の円弧形状を呈し(図15参照)、これはこの明細書の他の場所で説明されるように、セグメント50の動きを容易にする。各セグメント・ピン部材30は、プーリが回転しているときに各セグメント50とカウンタウエイト60をプーリ100の中に保持する手段である。
【0012】
図4は、セグメント・ガイドの詳細図である。セグメント・ガイド40は、頂点が径方向内側を向くように径方向外側に延出する楔形状部材41を備える。隙間42が各部材41の間に設けられる。セグメント部材52は、各隙間42に配置される。ガイド40は更に、リング43、44を備える。リング43、44の目的は、各セグメント・ガイド41を適切に空間的に位置決めすることである。
【0013】
セグメント・ガイド40は、ハブ10やバッキング・プレート80、あるいはセグメント50の何れにも固定的な連結はされていない。すなわち、セグメント・ガイド40は、各セグメント50とハブ10の間を「自由に動く」(図18参照)。これは結果として、セグメント・ピン部材30および隣接するセグメント50の各々との適切なアライメントを維持しながら、各セグメント50が径方向および周方向に動く自由を与えるのに必要なセグメント・ガイド40のプーリ内でのパーシャルな回転を許す。
【0014】
この好ましい実施形態では、部材30はセグメント・ピン部材として説明される。しかし、セグメント・ピン部材30の機能は、セグメント・ピン部材30の面31によって達成される。面31は、ハブ10またはバックプレート80から適正位置へ片持ち梁部材や他の軸突起物を延出し、それによってセグメント50の位置を制御するようにスロット53と接触するようにすることによっても実現できる。
【0015】
図5は、セグメントの詳細図である。プーリ100は、外周の周りに配置される複数のセグメント50を備える。セグメント50は円弧部51を備える。円弧部51は、ベルト(図示せず)と係合する外面54を備える。外面54は、マルチリブ形状を有するように描かれるが、平ベルトや単独のVリブ形状も適用できる。
【0016】
部材52は、円弧部51から径方向内側にプーリの中心に向けて延出する。部材52は、一般的には円弧部51に垂直に配置される。部材52はスロット53と穴55を備える。カウンタウエイト60は、穴55を通して各セグメント50に係合する(図7参照)。例えば、各セグメントは約8gのオーダの質量を有する。
【0017】
図6は、セグメント・ストップの詳細図である。セグメント・ストップ20は、円環状であり、エラストマー素材あるいは他の弾性材料であってもよく、プラスチック、天然ゴム、合成ゴムやそれらの等価物や組合せが含まれる。セグメント・ストップ20は、各セグメント50の動きに対して径方向内側最大限界として働く。
【0018】
図7は、カウンタウエイトの詳細図である。カウンタウエイト60は、セグメント50の穴55に旋回可能に係合するピン61を備える。カウンタウエイト60は、使用時のプーリの回転により各セグメントに働く遠心力に対抗すように作用する所定の質量を有する。ノッチ62は、セグメント・ピン部材30と協働的に係合する。カウンタウエイトの質量の大部分は、ローブ63に位置する。例えば、各カウンタウエイトは、約8gのオーダの質量を有する。
【0019】
図8は、圧縮性部材の詳細図である。圧縮性部材70は、エラストマー素材あるいは他の弾性材料であり、プラスチック、天然ゴム、合成ゴムやそれらの等価物や組合せが含まれる。作動時、カウンタウエイト60は、ピン61とセグメント・ピン部材30の周りに、各カウンタウエイトが圧縮性部材70と接触するように旋回する。圧縮性部材70は、各カウンタウエイトの運動を所定の位置で停止させる弾性手段として働く。殆どの場合、各カウンタウエイト60が圧縮性部材70と係合する位置は、略各セグメント50の最大径方向位置に対応する。
【0020】
図9は、バックプレートの詳細図である。バックプレート80は、形状において一般的に平坦かつ円形である。各戻り止め81は、セグメント・ピン部材30の一端を受け入れる。各戻り止め81は、ハブ10に設けられた協働する戻り止め11と一直線に並ぶ。
【0021】
ファスナ90は、ハブリム12に設けられた穴にバックプレート80を連結する。ファスナ90は、ネジやその技術分野で従来知られている適切な任意のファスナである。
【0022】
図10は、拡大可能プーリハブの部分詳細図である。セグメント・ピン部材30は、戻り止め11においてハブ10と係合された状態で示される。セグメント・ストップ20は、リム12の周りに係合された状態で示される。
【0023】
図11は、拡大可能プーリの部分詳細図である。セグメント・ガイド40は、ハブ10に隣接して配置される。セグメント・ピン部材30は、ガイド40のリング43、44を通して延在する。各セグメント・ピン部材30は、各部材41の間にある各隙間42を通して延出する。各セグメント・ピン部材は、回転軸A−Aに実質的に平行な軸方向に延在する。セグメント・ガイド40は、ハブ10やセグメント・ピン部材30の何れにも固定されないが、その代わり、説明した様々な構成部との関係により、この位置に緩く保持される。これはセグメント・ガイド40が、セグメント50の動きに応じて自由に動くことを許容する。
【0024】
図12は、拡大可能プーリ・セグメントの詳細図である。部材52は、各部材41の間の隙間42に滑動自在に係合される。隙間42は、スロット53を通した部材52のセグメント・ピン30に沿った滑動を許容するのに十分広く、すなわち、スロット53はセグメント・ピン部材30に沿って滑動する。スロット53は、径方向に対して約30〜50°の範囲にある角度αをもって配置される(図20参照)。
【0025】
図13は、拡大可能プーリ・セグメントとカウンタウエイトの詳細図である。カウンタウエイト60は、穴55に回動可能に挿入されたピン61によってセグメント50に回動可能に係合される。セグメント・ピン部材30は、ノッチ62に係合する。カウンタウエイト60とセグメント・ガイド40は、セグメント50の幅の中に完全収まる。この図13において、幅は垂直軸方向であり、セグメント・ピン部材30に平行である。セグメント外面54は、マルチリブベルト(図示せず)と噛み合うマルチリブ形状を呈する。
【0026】
図14は、拡大可能プーリの斜視図である。部材70は、リム12の周りに配置される。バックプレート80とファスナ90は、この斜視図では省略されている。セグメント50が部分的に開かれた位置で示される。ピン120は、ハブ100をバックプレート80に位置決めする。
【0027】
図15は、閉じられた位置での拡大可能プーリの側面図である。複数のセグメント50はプーリ100の外周の周り隣接して配置される。プーリ100は、協働的セグメント50の組立体を含み、各組立体には、セグメント50、セグメント・ピン部材30、カウンタウエイト60が含まれる。各セグメント50は、隣接するセグメント50によりプーリ外周に適正に配置される。図15のプーリは、「閉じられた」位置として示され、すなわち、各セグメント50は隣接するセグメント50と接触している。各カウンタウエイト60は、部材70に軽く押し付けられる。
【0028】
部材30における各円弧は、半径r2を有する。半径r2は、図16に示されるように、各セグメント50の径方向への動きに対し各スロット53が円弧に沿って動くことを可能にする。
【0029】
図16は、部分的に開かれた位置での拡大可能プーリの側面図である。この図16は、プーリが途中まで拡大された状態を示し、プーリが回転している場合に対応する。各セグメント50は、所定距離径方向外側に移動されており、そのときスロット53は、セグメント・ピン30に沿って途中まで移動される。各カウンタウエイト60は、ピン61の周りに途中まで回転される。これは各カウンタウエイト60が、各ノッチ62において各セグメント・ピン部材30にも押し付けられるからである。
【0030】
例えば、各セグメント50が径方向外側へ移動すると、それは「D」方向への動きの成分ももつ。セグメント50が方向「D」へ移動すると、穴55も同様に移動し、それによりカウンタウエイト60も同様に移動する。各カウンタウエイト60の「D」方向への僅かな動きは、各ノッチ62のセグメント・ピン30への押し付けを発生する。要するに、ノッチ62とセグメント・ピン30の間の接触は、各カウンタウエイト60のノッチ62におけるセグメント・ピン30の周りの旋回、およびピン61の周りの旋回を発生する。ピン30との係合、それによるセグメント・ピン部材表面31との係合は、各セグメント50とカウンタウエイト60をプーリ100内の適正位置に保持する。この運動は更に、他のセグメントに対する各セグメントの適正なアライメントを維持するため、ガイド部材40も途中まで回転する。
【0031】
図17は、完全に開いた状態における拡大可能プーリの側面図である。求心力の影響の下、各セグメント50が径方向外側へと動くと、プーリの有効径が増大し、各セグメント間の隙間が拡大する。各セグメント50の径方向外側への運動の限界は、各カウンタウエイトの部材70との係合によって規定される。各ローブ63は径方向内側に動き、そして増大する力を部材70へ掛ける。最終的には、部材70との接触は、カウンタウエイトの更なる内側への運動の全て停止し、これは同様に各セグメント50の更なる外側への運動の全て停止する。
【0032】
図18は、拡大可能プーリの断面図である。拡大可能プーリ100は、一般的には回転シャフト「S」に取り付けられる。シャフト「S」は、例えばモータあるいはエンジン(図示せず)に利用されるであろう補機から延出してもよい。補機には、オルタネータや、モータ・ジェネレータ、ウオーターポンプ、パワーステアリング・ポンプ、あるいは他の回転する補機が含まれる。プーリ100は、ナット「N」を用いてシャフトSのネジ付端部に確りと固定される。
【0033】
図19に示されるこのシステムの有効駆動比は、セグメント50の外側への運動により生じる拡大可能プーリの有効径の変化によって変更可能である。
【0034】
例えば、約60mmの「閉じた」直径をもつ拡大可能プーリは、約4000RPMの運転速度において約65mmの直径まで拡大し得る。プーリの直径の増大は、プーリ、それによって補機シャフト(図18、「S」参照)の回転速度を比率:
速度1×直径1=速度2×直径2
で低下させる。
解:
速度2=[(4000RPM)×60mm]/65mm
速度2=3692RPM
【0035】
これは直径の増大に比例する補機回転速度の速度低下を表す。システムの回転速度が増大すると、これに比例する補機の速度低下が起こり得る。拡大可能プーリは、運転速度の広い範囲に対して適しており、例えば、約14,000RPMまで適応する。
【0036】
この例は、単に例示の目的で提供されたもので、本発明のプーリの大きさ、実施形態、あるいは用途を限定することを意図したものではない。
【0037】
図19は、拡大可能プーリを使用したベルト伝動システムの概要図である。この例では、発明に係るプーリ100はモータ/ジェネレータに連結されている。また、このシステムは、ベルトB、アイドラ、テンショナ、そしてクランクシャフトに取り付けられたプーリを備える。この例示されたシステムは、一般的なハイブリッド内燃機関において利用できる。発電モードでは、クランクシャフトがベルトBを駆動する。始動モードでは、モータ/ジェネレータがベルトBを駆動し、それによりクランクシャフトを回転し、それによりベルト伝動システムが取り付けられたエンジンを始動する原動機として利用される。
【0038】
図20は、セグメントシステムの力学的関係を示す模式図である。第1運転モードでは、拡大可能プーリのセグメント50は、図15に示されるように最も径方向内側に位置する。このモードでは、プーリは最小の直径を有する。各セグメント50のスロット53は、略ピン部材30を中心に配置する。プーリが回転していても、ベルトによってプーリにトルクが掛からず、それ故、セグメント50を径方向に対し垂直な方向に押し遣る救心力FCに垂直に作用する「トルク」力TBが存在しない。別の言い方をすると、力TBは、プーリの外周に対して各セグメント外面54に実質的に接線方向に作用する。各カウンタウエイト60は、力FCと略釣り合う力(FCW)を作用し、そのため各セグメント50は径方向外側へは動かない。更に、カウンタウエイト(FCW)によって作用する力は、一度ベルトトルクが除かれると各セグメントを引っ込めるように作用する。
【0039】
ベルトトルクが各セグメントに掛かるとき、救心力FCに実質的に垂直な力TBが作用する。横方向の力TBは、各セグメント50のスロット53が各ピン30に沿って動くように働く。径方向外側の救心力FCと結び付けられたこのような横方向の運動は、カウンタウエイト(FCW)によって働く力に打ち勝ち、各セグメント50を径方向外側に向けて動かし、そしてこの運動はプーリの有効径を増大させる。ベルトは、同時に全てのセグメント50には係合せず、同時に全てのセグメント50にトルクを伝達しないが、1つのセグメントの如何なる動きも、ガイド部材40により他のセグメント全てに等しく伝達される。それにより、1つのセグメントの運動は、全てのセグメントにおいても同様に行われる。
【0040】
プーリは、トルクセンシティブであり、プーリの有効径がベルトにより各プーリ・セグメントに掛かるトルク力(TB)によって変化することを意味する。
【0041】
この例では、約45度の角度(α)が、始動モードにおいて適正なベルト張力を与えるのに十分である。発電モードでは、セグメントは径方向内側に引っ込んでおり、その結果、プーリは最小の有効径を有する。各場合において、拡大可能プーリはモータ/ジェネレータに連結されている。
【0042】
各セグメント50(結果として全てのセグメント50)の外側への運動を発生するのに必要な力FCの強さは、説明された各々の構成部の滑動により発生する摩擦力と同様に、角度(α)の関数である(例えば図21参照)。図21は、スロット角の関数としての救心力のグラフである。
【0043】
「始動モード」は、ベルトBを駆動し、それによりエンジン・クランクシャフトを回転させることでICエンジンを始動するモータ/ジェネレータのスタータとしての利用を指す。「発電モード」は、車両のバッテリシステム(図示せず)を再充電するモータ/ジェネレータのジェネレータとしての利用を指す。ジェネレータモードでは、モータ/ジェネレータは、ベルトBを通してICエンジン・クランクシャフトによって駆動される。
【0044】
図22は、図17に示されるプーリの詳細図である。図は、セグメント50、カウンタウエイト60、セグメント・ピン部材30、ガイド部材41の組立体の全体的に示す。図22は、セグメント・ピン部材30がスロット53の一端にあることから、セグメント50が開かれた位置にあるときを示す。セグメント・ピン部材30は、ノッチ62とも係合して示される。部材41の間の隙間42は、各セグメント50が径方向外側へ移動するときに、各セグメント50が径方向に整列された状態を維持する役割を果たす。これは、プーリが「開く」にしたがって、各セグメント50がそれぞれ隣合うセグメントから離れるからである。これにより、セグメント・ガイド40は、各セグメントが外側へ移動し、それにより隣接するセグメントと接触しなくなるときに、適正な間隔とアライメントを保証する。
【0045】
ここでは、本発明の1つ形態について説明されたが、当業者にとっては、ここで説明された本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく、その構成や構成部の関係を様々に変形することは容易である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の隣接するセグメントを備え、
各セグメントが径方向に移動可能であり、
各セグメントがピン部材と滑動自在に係合し、各セグメントが各ピン部材に沿って径方向に対して実質的に角度(α)の方向に動けるように、各ピン部材が各セグメントと係合し、
各セグメントを他のセグメントに対して空間的に配置するために各セグメントと係合する可動ガイド部材と、
各セグメントに協動的に連結されるとともに各ピン部材と協働敵に係合可能なカウンタウエイトとを備え、各カウンタウエイトがセグメントの救心力に対抗する力を発生し、
各ピン部材がハブに連結される
ことを特徴とする拡大可能プーリ。
【請求項2】
各セグメントが前記ピン部材に係合するスロットを備えることを特徴とする請求項1に記載の拡大可能プーリ。
【請求項3】
各カウンタウエイトが各セグメントに旋回可能に連結されることを特徴とする請求項1に記載の拡大可能プーリ。
【請求項4】
各カウンタウエイトと係合可能な弾性ストップ部材を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の拡大可能プーリ。
【請求項5】
各セグメントが径方向に対して角度(α)で移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の拡大可能プーリ。
【請求項6】
エンジン補機に連結された拡大可能プーリを備え、
前記拡大可能プーリが、
複数の隣接するセグメントを備え、
各セグメントが径方向に移動可能であり、
各セグメントがピン部材と滑動自在に係合し、各セグメントが各ピン部材に沿って径方向に対して実質的に角度(α)の方向に動けるように、各ピン部材が各セグメントと係合し、
各セグメントを他の全てのセグメントに対して空間的に配置するために各セグメントと係合する可動ガイド部材と、
各セグメントに協動的に連結されるとともに各ピン部材と協働敵に係合可能なカウンタウエイトとを備え、
各カウンタウエイトがセグメントの救心力に対抗する力を発生し、
各ピン部材がハブに連結され、
更に、原動プーリと、
前記原動プーリと前記拡大可能プーリに掛け回されるベルトと
を備えることを特徴とするベルト伝動システム。
【請求項7】
前記エンジン補機にモータ/ジェネレータが含まれることを特徴とする請求項6に記載のベルト伝動システム。
【請求項8】
前記原動プーリがエンジン・クランクシャフトに連結されていることを特徴とする請求項6に記載のベルト伝動システム。
【請求項9】
前記ベルトに係合されるテンショナを更に備えることを特徴とする請求項6に記載のベルト伝動システム。
【請求項10】
前記拡大可能プーリがマルチリブ形状を呈することを特徴とする請求項6に記載のベルト伝動システム。
【請求項1】
複数の隣接するセグメントを備え、
各セグメントが径方向に移動可能であり、
各セグメントがピン部材と滑動自在に係合し、各セグメントが各ピン部材に沿って径方向に対して実質的に角度(α)の方向に動けるように、各ピン部材が各セグメントと係合し、
各セグメントを他のセグメントに対して空間的に配置するために各セグメントと係合する可動ガイド部材と、
各セグメントに協動的に連結されるとともに各ピン部材と協働敵に係合可能なカウンタウエイトとを備え、各カウンタウエイトがセグメントの救心力に対抗する力を発生し、
各ピン部材がハブに連結される
ことを特徴とする拡大可能プーリ。
【請求項2】
各セグメントが前記ピン部材に係合するスロットを備えることを特徴とする請求項1に記載の拡大可能プーリ。
【請求項3】
各カウンタウエイトが各セグメントに旋回可能に連結されることを特徴とする請求項1に記載の拡大可能プーリ。
【請求項4】
各カウンタウエイトと係合可能な弾性ストップ部材を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の拡大可能プーリ。
【請求項5】
各セグメントが径方向に対して角度(α)で移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の拡大可能プーリ。
【請求項6】
エンジン補機に連結された拡大可能プーリを備え、
前記拡大可能プーリが、
複数の隣接するセグメントを備え、
各セグメントが径方向に移動可能であり、
各セグメントがピン部材と滑動自在に係合し、各セグメントが各ピン部材に沿って径方向に対して実質的に角度(α)の方向に動けるように、各ピン部材が各セグメントと係合し、
各セグメントを他の全てのセグメントに対して空間的に配置するために各セグメントと係合する可動ガイド部材と、
各セグメントに協動的に連結されるとともに各ピン部材と協働敵に係合可能なカウンタウエイトとを備え、
各カウンタウエイトがセグメントの救心力に対抗する力を発生し、
各ピン部材がハブに連結され、
更に、原動プーリと、
前記原動プーリと前記拡大可能プーリに掛け回されるベルトと
を備えることを特徴とするベルト伝動システム。
【請求項7】
前記エンジン補機にモータ/ジェネレータが含まれることを特徴とする請求項6に記載のベルト伝動システム。
【請求項8】
前記原動プーリがエンジン・クランクシャフトに連結されていることを特徴とする請求項6に記載のベルト伝動システム。
【請求項9】
前記ベルトに係合されるテンショナを更に備えることを特徴とする請求項6に記載のベルト伝動システム。
【請求項10】
前記拡大可能プーリがマルチリブ形状を呈することを特徴とする請求項6に記載のベルト伝動システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2011−504572(P2011−504572A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534941(P2010−534941)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/012654
【国際公開番号】WO2009/070204
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/012654
【国際公開番号】WO2009/070204
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】
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