説明

拡幅部掘削用トンネル掘削機および異形断面掘削用トンネル掘削機

【課題】異形断面トンネルの掘削を効率的に行って、掘削ずりの排出をスムーズに行う。
【解決手段】円形断面トンネルを掘削する円形断面掘削用トンネル掘削機5の後方に、拡幅部を掘削する拡幅部掘削用トンネル掘削機6を配し、拡幅部掘削用トンネル掘削機6を、切羽を掘削するディスクカッタと掘削ずりを掬い込むバケット部とを有する一対のカッタホイール31と、各カッタホイール31を回転可能に支持する機体フレーム21と、各カッタホイールを回転させる回転駆動部と、機体フレーム21を掘進方向に推進させる推進手段と、掘削機本体の長手方向に延設される掘削ずり排出用のベルトコンベア49と、各カッタホイールの中心部にその先端部が配され、カッタホイール31内に掬い込まれた掘削ずりをベルトコンベア49まで搬送するベルトコンベアを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平部分を有する拡幅部が円形断面トンネルの両側部に形成されてなる異形断面トンネルにおける前記拡幅部を掘削する拡幅部掘削用トンネル掘削機と、その異形断面トンネルを掘削する異形断面掘削用トンネル掘削機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、岩盤層を掘削するトンネル掘削機として、トンネルボーリングマシン(TBM)が知られている。このTBMは、前端部にカッタヘッドが回転可能に配されてなる掘削機本体と、この掘削機本体に後続する作業台車とを備え、掘削機本体に設けられるグリッパによりトンネル坑壁に反力を取りつつ、カッタヘッドの回転とスラストジャッキの伸長により掘削機本体を前進させて、トンネルを掘削するように構成されている。このTBMでは、カッタヘッドを回転させつつ掘削がなされるため、掘削されるトンネルの掘削断面は円形である。
【0003】
ところで、完成トンネルの使用面に関しては、トンネル下部にレールを敷設するなどして車両を走行させることを考慮した場合、水平部分を有する拡幅部が円形断面トンネルの両側部に形成されてなる異形断面トンネル(いわゆる馬蹄形断面トンネル)が使用し易いとされている。このような異形断面トンネルを掘削する場合に、拡幅部を含むような大断面の円形トンネルを掘削し、不要部分を埋め戻すことにより所要のトンネルを形成する方法があるが、この方法では埋戻し作業分工期が長くなり、不経済になるという問題点がある。このため、この種の異形断面トンネルを効率的に掘削することのできるトンネル掘削機(TBM)の開発が待ち望まれている。
【0004】
なお、異形断面トンネルを掘削するためのシールド掘削機としては、特許文献1〜3に記載されたものがある。特許文献1に記載のシールド掘削機は、シールド掘削機のカッタヘッドとは独立してスキンプレートの側方部に拡幅用カッタヘッドを配し、この拡幅用カッタヘッドを通常はスキンプレート内に収納し、拡幅開始位置に到達したときにスライドジャッキの作動により突出させて拡幅部の掘削を行うように構成されたものである。また、特許文献2に記載のシールド掘削機は、スキンプレート内の前端部に、そのスキンプレートの中心軸に沿うアームを配設し、このアームの両側にそのアームとそれぞれ交差する方向の軸を回転中心軸とする複数の回転ドラムをそれぞれ別個の駆動源により回転できるようにし、いずれか一方の回転ドラムの回転中心軸を傾斜配置するように構成されたものである。さらに、特許文献3に記載のトンネル掘削機は、掘削機本体の前面中央部に設けた水平回転軸に円形カッタを装着し、水平回転軸に対して直角方向にドラムカッタ回転軸を配設し、このドラムカッタ回転軸に、掘削機本体の前面短辺方向の幅に等しい直径を有し、円形カッタの背面から掘削機本体の端部短辺縁に達する長さの円筒形状のドラムカッタを装着した矩形断面トンネル掘削機である。
【0005】
【特許文献1】特開2005−60988号公報
【特許文献2】特許第2717184号公報
【特許文献3】実開平5−94394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1〜3に記載の掘削機はいずれも、シールド掘削機に関するものであり、これをそのまま岩盤掘削用のTBMに適用することができない。また、これら従来例のものは、掘進方向前方の地山を掘削するカッタヘッドと側方の地山を掘削するカッタヘッドとを併設して、これら複数のカッタヘッドにより同時に異形断面トンネルを掘削する構造であるため、各カッタヘッドの回転速度の相互調整および掘進速度の調整が極めて困難であるという問題点があるほか、掘削ずりの排土がスムーズに行えないという問題点がある。なお、特許文献1のものでは泥水式の排土方式を採用しているが、このような方式は岩盤掘削用のTBMにおいては採用することが困難である。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、水平部分を有する拡幅部が円形断面トンネルの両側部に形成されてなる異形断面トンネルの掘削を効率的に行えるようにするとともに、掘削ずりの排出をスムーズに行うことのできる拡幅部掘削用トンネル掘削機および異形断面掘削用トンネル掘削機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による拡幅部掘削用トンネル掘削機は、
水平部分を有する拡幅部が円形断面トンネルの両側部に形成されてなる異形断面トンネルにおける前記拡幅部を掘削する拡幅部掘削用トンネル掘削機であって、
切羽を掘削するディスクカッタと掘削ずりを掬い込むバケット部とを有し、掘削機本体の左右に配される一対のカッタホイールと、
各カッタホイールを回転可能に支持する機体フレームと、
各カッタホイールを前記機体フレームに対して掘進方向に直交する軸心周りに回転させる回転駆動部と、
前記機体フレームを掘進方向に推進させる推進手段と、
前記掘削機本体の長手方向に延設される掘削ずり排出用の排土手段と、
前記各カッタホイールの中心部にその先端部が配され、前記バケット部によって前記カッタホイール内に掬い込まれた掘削ずりを前記排土手段まで搬送するベルトコンベア
を備えることを特徴とするものである(第1発明)。
【0009】
本発明において、前記機体フレームには、前記排土手段の前端部上方に位置してホッパが取り付けられ、このホッパ内に前方の掘削ずり搬送手段から排出される掘削ずりが取り込まれるのが好ましい(第2発明)。
【0010】
また、本発明による異形断面掘削用トンネル掘削機は、
水平部分を有する拡幅部が円形断面トンネルの両側部に形成されてなる異形断面トンネルを掘削する異形断面掘削用トンネル掘削機であって、
円形断面トンネルを掘削する円形断面掘削用トンネル掘削機の後方に、前記拡幅部を掘削する拡幅部掘削用トンネル掘削機を配し、前記円形断面掘削用トンネル掘削機の最後尾に掘削ずり搬送手段を設けるとともに、前記拡幅部掘削用トンネル掘削機の最前部に前記掘削ずり搬送手段から排出される掘削ずりを取り込むホッパを設けてなり、
前記拡幅部掘削用トンネル掘削機が、
切羽を掘削するディスクカッタと掘削ずりを掬い込むバケット部とを有し、掘削機本体の左右に配される一対のカッタホイールと、
各カッタホイールを回転可能に支持する機体フレームと、
各カッタホイールを前記機体フレームに対して掘進方向に直交する軸心周りに回転させる回転駆動部と、
前記機体フレームを掘進方向に推進させる推進手段と、
前記掘削機本体の長手方向に延設される掘削ずり排出用の排土手段と、
前記各カッタホイールの中心部にその先端部が配され、前記バケット部によって前記カッタホイール内に掬い込まれた掘削ずりを前記排土手段まで搬送するベルトコンベア
を備えることを特徴とするものである(第3発明)。
【発明の効果】
【0011】
第1発明においては、左右一対のカッタホイールが回転駆動部による回転動力を受けて掘進方向に直交する軸心周りに回転され、ディスクカッタが切羽に押し付けられることにより、円形断面トンネルの両側部に形成する拡幅部の掘削が行われる。そして、掘削ずりはバケット部で掬い込まれてカッタホイール内に取り込まれ、この取り込まれた掘削ずりはベルトコンベアによって、掘削機本体の長手方向に延設される排土手段まで搬送される。本発明によれば、円形断面トンネルの掘削を終えてから拡幅部の掘削が行われるので、この拡幅部の掘削を効率的に行うことができ、しかもカッタホイールに掘削ずりを掬い込むバケット部が装備されているので、切羽における掘削ずりを効率良くかつ確実にカッタホイール内に取り込むことができ、またそのカッタホイール内に取り込まれた掘削ずりをベルトコンベアによって効率的に排土することができる。
【0012】
第2発明によれば、当該拡幅部掘削用トンネル掘削機に先行するトンネル掘削機の掘削ずり搬送手段から排出される掘削ずりをホッパ内に取り込んで、後方へ搬出することができるので、掘削ずりの搬出をより効果的に行うことができる。
【0013】
第3発明によれば、円形断面掘削用トンネル掘削機による円形断面トンネルの掘削と、それに引き続く拡幅部掘削用トンネル掘削機による拡幅部の掘削とを連続的に、かつ効率的に行うことができ、それら掘削により生じた掘削ずりの搬出を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明による拡幅部掘削用トンネル掘削機および異形断面掘削用トンネル掘削機の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1には、本発明の一実施形態に係る異形断面掘削用トンネル掘削機の全体概略図(a)およびそのA−A線トンネル断面図(b)、B−B線トンネル断面図(c)がそれぞれ示されている。
【0016】
本実施形態の異形断面掘削用トンネル掘削機1は、主に岩盤層において、円形断面トンネル2の両側部に、水平部分3aを有する拡幅部3が形成されてなる異形断面トンネル(いわゆる馬蹄形断面トンネル)4を掘削するのに用いられる。この異形断面掘削用トンネル掘削機1は、円形断面トンネル2を掘削する円形断面掘削用トンネル掘削機5の後方に、拡幅部3を掘削する拡幅部掘削用トンネル掘削機6を配することにより、円形断面掘削用トンネル掘削機5による円形断面トンネル2の掘削に少し後行させて、拡幅部掘削用トンネル掘削機6による拡幅部3の掘削が行われるように構成されている。ここで、前記拡幅部3は、その水平部分3a上にレールを敷設するなどして車両を走行させる用途等に使用される。
【0017】
最初に、円形断面掘削用トンネル掘削機5について説明する。図2には、本実施形態に係る円形断面掘削用トンネル掘削機の要部構造を表す縦断面図が示されている。
【0018】
この円形断面掘削用トンネル掘削機5は、中心部に前後方向に延設されるメインビーム7と、このメインビーム7の前端部に設けられるカッタヘッドサポート8と、このカッタヘッドサポート8に回転自在に支承され多数個のディスクカッタ9aを有するカッタヘッド9と、前記メインビーム7に前後摺動自在に配されるグリッパ装置10と、このグリッパ装置10を前後方向に摺動させるスラストジャッキ11とを備えて構成されている。また、グリッパ装置10のフレームの後端部には牽引ビーム12の前端部が枢支され、この牽引ビーム12の後端部は最先端の後続台車13(図1参照)の前端部に枢支されている。この後続台車13は、隣接する後続台車13同士が連結材を介して互いに連結され、下面に取り付けられる車輪がレール14上を案内されることによって前後方向に走行できるようにされている。なお、これら後続台車13は、先行する円形断面掘削用トンネル掘削機5と、後行する拡幅部掘削用トンネル掘削機6の資機材搬送等に兼用される後続台車である。
【0019】
前記カッタヘッド9の回転により掘削された掘削ずりはそのカッタヘッド9の裏面側に配される図示されないホッパにて取り込まれ、複数基のずり搬送用ベルトコンベア15,16,17にて後方へ搬送される。また、後続台車13の最後尾にはトレーンローダ18とずり受け台車19とが設けられ、前段のずり搬送用ベルトコンベア15,16,17にて搬送されてきた掘削ずりは、このトレーンローダ18によってずり受け台車19内に一旦貯留される。なお、ずり受け台車19には、このずり受け台車19内の掘削ずりを更に後方へ搬出するためのベルトコンベア(掘削ずり搬送手段)20が付設されている。
【0020】
このように構成されている円形断面掘削用トンネル掘削機5においては、グリッパ装置10によってトンネル坑壁に反力を取りつつ、スラストジャッキ11によりカッタヘッドサポート8に推進力を伝達し、かつカッタヘッド9を回転させることにより掘進が行われ、所定ピッチの掘進後にグリッパ装置10の押付けが解除されてスラストジャッキ11の収縮によりグリッパ装置10がメインビーム7に対して前進され、これら動作の繰り返しにより連続的に掘進が行われて円形断面トンネル2の掘削が行われる。そして、この掘削により機内に取り込まれた掘削ずりは、ずり搬送用ベルトコンベア15,16,17を介して後方へ搬送され、トレーンローダ18によってずり受け台車19内に一旦貯留される。
【0021】
次に、円形断面掘削用トンネル掘削機5の後方に配される拡幅部掘削用トンネル掘削機6について説明する。図3には、本実施形態に係る拡幅部掘削用トンネル掘削機の要部構造を表す縦断面図が、図4には、図3の平面図がそれぞれ示されている。また、図5には、図3のC−C断面図(a)およびD−D断面図(b)が示され、図6には、カッタホイールの構造図が示されている。なお、図6(a)は図6(b)のE−E断面図である。
【0022】
この拡幅部掘削用トンネル掘削機6は、掘削機本体の前部中央に配される箱型構造のメインフレーム(本願発明における「機体フレーム」に対応する。)21と、このメインフレーム21に前端部が固定されてトンネル中心部に前後方向に延設されるメインビーム22と、このメインビーム22に前後摺動自在に配されるグリッパ装置23と、メインビーム22とグリッパ装置23とを連結するように配され、グリッパ装置23を前後方向に摺動させるスラストジャッキ24とを備えている。前記メインフレーム21には、掘削中の安定化および掘削終了時にそのメインフレーム21をトンネル坑壁に対して支持する目的でフロントサポートが設けられている。このフロントサポートは、頂部に設けられるルーフサポート25と、側部に設けられるサイドサポート26と、下部に設けられるバーチカルサポート27とよりなっており、それぞれジャッキと平行リンクとよりなる個別の接離機構28によってトンネル坑壁に対して独立して接離できるようにされている。なお、図3、図4中、符号29にて示されるのは、メインビーム22の後端部に設けられるリヤサポートである。本実施形態におけるグリッパ装置23およびスラストジャッキ24等が、本発明における推進手段に対応する。
【0023】
図6に示されるように、前記メインフレーム21の下部には、両側方へ張り出すように略円筒形状のホッパ支持体30が固着されている。左右の各ホッパ支持体30の基端部の外周側には、アウターレース32、大口径ベアリング(コロ)33およびインナーレース34よりなるメインベアリングが配されている。ここで、アウターレース32はメインフレーム21に固定され、インナーレース34の内周面にはリングギヤ34aが形成されている。そして、このリングギヤ34aは、メインフレーム21に取り付けられた油圧モータ35にて駆動されるピニオンギヤ36に噛み合っている。また、前記インナーレース34には、前記カッタホイール31の中空のカッタドラム37が連結され、これによってカッタホイール31が前記メインベアリングを介してメインフレーム21に回転自在に支持されている。こうして、油圧モータ35が駆動されると、その駆動力はピニオンギヤ36およびリングギヤ34aを介してカッタホイール31に伝達され、このカッタホイール31がホッパ支持体30の周りを回転駆動される。なお、図6(a)にて符号38にて示されるのはシール部材である。本実施形態において、油圧モータ35、リングギヤ34a、ピニオンギヤ36等が、本発明における回転駆動部に対応する。
【0024】
前記ホッパ支持体30の内部空間の上部には、掘削ずりを受け入れるホッパ(ホッパシュート)39が固定されている。また、このホッパ39の排出口の下方には、そのホッパ39にて受け入れられた掘削ずりをトンネル中央部まで搬送するベルトコンベア40の基端部が配されている。
【0025】
前記カッタホイール31は、前記カッタドラム37と、このカッタドラム37の外周面上に着脱自在に取り付けられ、切羽を掘削するディスクカッタ41と、前記カッタドラム37の外周面上に設けられ、切羽における掘削ずりを掬い込むバケット部42とを備えて構成されている。前記バケット部42は、本実施形態の場合、カッタドラム37の周方向に等間隔で5つ設けられている。各バケット部42における掘削ずり取込口43はカッタドラム37の回転方向(図3、図6(a)中矢印R方向)側に開放されるとともに、各バケット部42の先端部には切羽における掘削ずりを掻き取るスクレーパ44が着脱可能に取り付けられている。
【0026】
前記ディスクカッタ41は、カッタドラム37の周方向に隣り合うバケット部42の間に掘削径に応じて所要個数配置されるとともに、カッタドラム37の幅方向に互いにオフセットされて配置されている。本実施形態では、1基のカッタホイール31に対して10基のディスクカッタ41が取り付けられている。また、前記カッタドラム37の外周面には、バケット部42の内部に取り込まれた掘削ずりをカッタドラム37の内部へと導く開口部45が設けられ、ホッパ支持体30の上部にもホッパ39に対応する位置に開口部46が設けられている。
【0027】
前記カッタホイール31は、機内に面する側がホッパ支持体30に固着されたカッタホイールカバー47(図5参照)によって覆われている。このようなカッタホイールカバー47を設けることで、バケット部42による掘削ずりの掬い込みを確実に行うことができるとともに、機内側の安全を確保することができる。なお、メインフレーム21の下方にはバキューム吸込口48が設けられ、機内側へこぼれた掘削ずりはそのバキューム吸込口48によって吸込まれるようになっている。
【0028】
前記メインフレーム21の下部中央部には排土用のベルトコンベア(本発明における「排土手段」に対応する。)49が配されている。このベルトコンベア49の前端部はメインフレーム21の前方側まで延設され、その前端部上方にはセンタホッパ50がメインフレーム21に固着されて設けられている。このセンタホッパ50には、前段のずり受け台車19内からベルトコンベア20にて搬出された掘削ずりが投入される。また、左右の各ベルトコンベア40の搬出端の下方にはホッパ(ホッパシュート)50Aが配されており、左右のカッタホイール31にて掘削されてベルトコンベア40にて搬出された掘削ずりは、このホッパ50Aを介してベルトコンベア49に受け渡される。
【0029】
このように構成されている拡幅部掘削用トンネル掘削機6においては、グリッパ装置23によってトンネル坑壁に反力を取りつつ、スラストジャッキ24によりフロントサポート(ルーフサポート25、サイドサポート26、バーチカルサポート27)に推進力を伝達し、かつカッタホイール31を回転させることにより掘進が行われ、所定ピッチの掘進後にグリッパ装置23の押付けが解除されてスラストジャッキ24の収縮によりグリッパ装置23がメインビーム22に対して前進され、これら動作の繰り返しにより連続的に掘進が行われて拡幅部3の掘削が行われる。そして、この掘削により機内に取り込まれた掘削ずりは、カッタホイール31におけるバケット部42によって掬い込まれ、カッタホイール31の上部位置を通過する際に、開口部45,46を通ってホッパ39内に投入される。そして、このホッパ39に投入された掘削ずりは、ホッパ支持体30の内部空間に配されるベルトコンベア40を介してトンネル中央部に搬送され、ホッパ50Aを介して中央部のベルトコンベア(排土手段)49、更にはそのベルトコンベア49の後端部に接続される複数基のベルトコンベアにてトンネル後方へ搬出される。
【0030】
この拡幅部掘削用トンネル掘削機6によれば、掘進方向と直交する軸心周りに回転するカッタホイール31に掘削ずりを掬い込むバケット部42が装備されているので、切羽における掘削ずりを効率よくかつ確実にカッタホイール31内に取り込むことができる。また、カッタホイール31内に取り込まれた掘削ずりを一旦ホッパ39内に投入してベルトコンベア40にてトンネル中央部のベルトコンベア49の位置まで搬送するようにされているので、カッタホイール31内に取り込まれた掘削ずりを効率良くトンネル後方へ搬出することできて排土効率を向上させた掘削機とすることができる。また、本実施形態の拡幅部掘削用トンネル掘削機6によれば、先頭部にセンタホッパ50が配されていて、このセンタホッパ50内に、先行する円形断面掘削用トンネル掘削機5のずり受け台車19からベルトコンベア20にて排出される掘削ずりを取り込んで、後方へ搬出することができるので、掘削ずりの搬出をより効果的に行うことができる。
【0031】
また、本実施形態の異形断面掘削用トンネル掘削機1によれば、円形断面掘削用トンネル掘削機5により円形断面トンネルの掘削を終えた後に、拡幅部掘削用トンネル掘削機6により拡幅部3の掘削が行われるので、円形断面トンネル2の掘削と、それに引き続く拡幅部3の掘削とを連続的に、かつ効率的に行うことができ、しかも上述のようにその掘削により生じた掘削ずりの排土を効率的に行うことができる。なお、本実施形態では、両方のトンネル掘削機5,6間にずり受け台車19が配されているので、それぞれのトンネル掘削機5,6の掘進速度に差があった場合でも、このずり受け台車19がバッファの役目を果たし、掘削ずりの搬出をスムーズに行うことができる。
【0032】
本実施形態においては、円形断面掘削用トンネル掘削機5の後方に拡幅部掘削用トンネル掘削機6を配した例について説明したが、本実施形態の拡幅部掘削用トンネル掘削機6は、独立したトンネル掘削機として用い、円形断面トンネルの掘削を終えてから、拡幅部掘削のために投入するようにすることもできる。この場合には、前方に張り出すように設けられたセンタホッパ50は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る異形断面掘削用トンネル掘削機の全体概略図(a)およびそのA−A線トンネル断面図(b)、B−B線トンネル断面図(c)
【図2】本実施形態に係る円形断面掘削用トンネル掘削機の要部構造を表す縦断面図
【図3】本実施形態に係る拡幅部掘削用トンネル掘削機の要部構造を表す縦断面図
【図4】図3の平面図
【図5】図3のC−C断面図(a)およびD−D断面図(b)
【図6】カッタホイールの構造図
【符号の説明】
【0034】
1 異形断面掘削用トンネル掘削機
2 円形断面トンネル
3 拡幅部
3a 水平部分
4 異形断面トンネル(馬蹄形断面トンネル)
5 円形断面掘削用トンネル掘削機
6 拡幅部掘削用トンネル掘削機
20 ベルトコンベア(掘削ずり搬送手段)
21 メインフレーム(機体フレーム)
22 メインビーム
23 グリッパ装置
24 スラストジャッキ
30 ホッパ支持体
31 カッタホイール
34 リングギヤ
35 油圧モータ
36 ピニオンギヤ
39,50A ホッパ
40 ベルトコンベア
41 ディスクカッタ
42 バケット部
44 スクレーパ
49 ベルトコンベア(排土手段)
50 センタホッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平部分を有する拡幅部が円形断面トンネルの両側部に形成されてなる異形断面トンネルにおける前記拡幅部を掘削する拡幅部掘削用トンネル掘削機であって、
切羽を掘削するディスクカッタと掘削ずりを掬い込むバケット部とを有し、掘削機本体の左右に配される一対のカッタホイールと、
各カッタホイールを回転可能に支持する機体フレームと、
各カッタホイールを前記機体フレームに対して掘進方向に直交する軸心周りに回転させる回転駆動部と、
前記機体フレームを掘進方向に推進させる推進手段と、
前記掘削機本体の長手方向に延設される掘削ずり排出用の排土手段と、
前記各カッタホイールの中心部にその先端部が配され、前記バケット部によって前記カッタホイール内に掬い込まれた掘削ずりを前記排土手段まで搬送するベルトコンベア
を備えることを特徴とする拡幅部掘削用トンネル掘削機。
【請求項2】
前記機体フレームには、前記排土手段の前端部上方に位置してホッパが取り付けられ、このホッパ内に前方の掘削ずり搬送手段から排出される掘削ずりが取り込まれる請求項1に記載の拡幅部掘削用トンネル掘削機。
【請求項3】
水平部分を有する拡幅部が円形断面トンネルの両側部に形成されてなる異形断面トンネルを掘削する異形断面掘削用トンネル掘削機であって、
円形断面トンネルを掘削する円形断面掘削用トンネル掘削機の後方に、前記拡幅部を掘削する拡幅部掘削用トンネル掘削機を配し、前記円形断面掘削用トンネル掘削機の最後尾に掘削ずり搬送手段を設けるとともに、前記拡幅部掘削用トンネル掘削機の最前部に前記掘削ずり搬送手段から排出される掘削ずりを取り込むホッパを設けてなり、
前記拡幅部掘削用トンネル掘削機が、
切羽を掘削するディスクカッタと掘削ずりを掬い込むバケット部とを有し、掘削機本体の左右に配される一対のカッタホイールと、
各カッタホイールを回転可能に支持する機体フレームと、
各カッタホイールを前記機体フレームに対して掘進方向に直交する軸心周りに回転させる回転駆動部と、
前記機体フレームを掘進方向に推進させる推進手段と、
前記掘削機本体の長手方向に延設される掘削ずり排出用の排土手段と、
前記各カッタホイールの中心部にその先端部が配され、前記バケット部によって前記カッタホイール内に掬い込まれた掘削ずりを前記排土手段まで搬送するベルトコンベア
を備えることを特徴とする異形断面掘削用トンネル掘削機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−315145(P2007−315145A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148802(P2006−148802)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】