説明

挟持具および挟持装置ならびに挟持方法

【課題】物体を破壊することなく確実に挟持することが可能な挟持具およびこれを用いた挟持装置ならびに挟持方法を提供する。
【解決手段】一対の支持体11と、一対の支持体11の先端側に設けられ、電圧の印加により変形する保持部12とを備えたことを特徴とするマイクロピンセット10である。また、基板を載置固定するステージと、ステージの上方に配置されたマイクロピンセット10と、マイクロピンセット10に電圧を印加する電圧印加部と、ステージまたは電圧印加部を移動させて、ステージとマイクロピンセット10の位置を調整する駆動部とを備えた挟持装置およびマイクロピンセット10を用いた挟持方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挟持具および挟持装置ならびに挟持方法に関し、特に、半導体基板やフォトマスク、液晶などのディスプレーパネル、CCDやCMOSセンサーなどのイメージングデバイス、レンズやミラーなどの各種光学部品からの微粒子の除去に用いる挟持具および挟持装置ならびに挟持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハや部品上の微粒子は、直接的またはリソグラフィプロセスを通して間接的に、基板に形成されるパターンに相応する欠陥を誘起しうる。半導体デバイスの高集積化やCCD画素の高精細化にともない、ナノメートルオーダーの極めて小さい微粒子さえも、欠陥の原因となる。
【0003】
従来、上述したような基板、マスクや、レンズの洗浄には、水溶液を用いるウェット洗浄が行われているが、ウェット洗浄では、例えば10000個の微粒子を10個程度に低減することはできるものの、全ての微粒子を除去することは難しい。
【0004】
また、半導体基板や液晶基板のウェット洗浄では、微粒子が付着している基板表面を微量にエッチングすることで、微粒子と基板の間の付着力を低減するメカニズムを用いている。このため、全ての微粒子を除去するために、長時間のウェット洗浄を行うと、基板表面には少なからずエッチングが起きるが、最近の高集積化、小サイズ化された基板では、洗浄時のエッチングは好ましくない。
【0005】
また、ウェット洗浄液やリンス水中にも不純物微粒子が含まれるため、洗浄後の基板に10〜20個程度の微粒子が残留してしまう。
【0006】
そこで、ウェット洗浄後に残る10〜20個程度の汚染微粒子を除去する場合には、局所的に微小なプローブを用いて除去することが提案されている。一例として、フォトマスク上の粒子汚染物(汚染微粒子)をマイクロプローブの静電気により除去する方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。また、原子間力顕微鏡のプローブを掃引することにより、汚染微粒子をデバイス回路の外へ移動させる方法もある。
【0007】
【特許文献1】特許第2831607号公報
【0008】
一方、微小な試料の電子顕微鏡による観察、分析の際の試料のサンプリングには、マイクロピンセットが使用されており、マイクロピンセットは微粒子の除去にも応用が可能である。
【0009】
上述したプローブやマイクロピンセットの先端は、微細加工しなければならないため、一般に、強度が大きく、加工し易い、シリコン製、窒化シリコン、カーボンナノチューブなどが用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1で報告されたプローブによる微粒子の除去は、例えばパターン間等に挟まった微粒子を掻き出すことはできても、基板上から確実に除去することは難しい、という問題がある。
【0011】
また、実際にデバイス製造工程で基板等に付着する微粒子を従来のマイクロピンセットにより除去する場合には、次のような問題がある。まず、第1に、微粒子の材質によりピンセットで挟持するのに最適な圧力があるが、ピンセットの圧力の制御が難しいため、大きな圧力をかけすぎると、微粒子が破壊されてしまい、確実に挟持することができない。また、第2に、基板ステージを移動させて微粒子をピンセットに近づける際のZ方向の精度はせいぜい数十μmであるため、数十μm以下の微粒子を挟む際には、ピンセットの強度が高いことから、ピンセットを微粒子に近づける際、または微粒子を挟持する際に、ピンセットの先端が基板を傷つける。第3に、例えば平らで接触面の広い微粒子等、微粒子の形状により挟持し難いものがある。
【0012】
そこで、本発明は、物体を破壊することなく確実に挟持することが可能な挟持具およびこれを用いた挟持装置ならびに挟持方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために、本発明の挟持具は、一対の支持体と、一対の支持体の先端側に設けられ、電圧の印加により変形する保持部とを備えたことを特徴としている。
【0014】
このような挟持具によれば、電圧の印加により保持部を変形させるため、印加する電圧を制御することで、保持部から挟持する物体にかかる圧力を制御することが可能となる。これにより、物体を挟持する際の過剰な圧力による物体の破壊が防止され、物体が確実に挟持される。尚、挟持具とは、例えばピンセットである。
【0015】
また、本発明の挟持装置は、基板を載置固定するステージと、ステージの上方に配置された挟持具と、挟持具に電圧を印加する電圧印加部と、ステージまたは挟持具を移動させて、ステージと挟持具との位置を調整する駆動部とを備えており、挟持具は、一対の支持体と、一対の支持体の先端側に設けられ、電圧の印加により変形する保持部とを備えたことを特徴としている。
【0016】
このような挟持装置によれば、ステージ上に載置固定された基板上の物体が、挟持具の保持部間に配置されるように、ステージまたは挟持具を移動させることで、上述した挟持具を用いて物体を挟持することができる。
【0017】
さらに、本発明の挟持方法は、基板上の物体を挟持する方法であって、次のような工程を順次行うことを特徴としている。まず、一対の支持体と、一対の支持体の先端側に電圧の印加により変形する保持部が設けられた挟持具を用い、保持部の間に物体が配置されるように、基板または挟持具を移動させる工程を行う。次に、電圧の印加により保持部を変形させて物体を挟持する工程を行う。
【0018】
このような挟持方法によれば、基板上の物体が挟持具の保持部間に配置されるように、基板または挟持具を移動させることで、上述した挟持具を用いて物体を挟持することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明の挟持具および挟持装置ならびに挟持方法によれば、基板上の物体を破壊することなく、確実に挟持することができる。したがって、例えば基板上の微粒子を除去する場合には、微粒子を確実に挟持した後、微粒子を挟持した状態の挟持具または基板を移動させることで、基板上から微粒子を除去することができる。したがって、製造する半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
<挟持具(マイクロピンセット)>
本発明の挟持具に係わる実施の形態について、マイクロピンセットを例にとり図1(a)を用いて説明する。この図に示すマイクロピンセット10は、後述する微粒子除去装置の一部であり、例えばシリコン基板からなる基板W(被処理体)上の微粒子P(汚染微粒子)の除去に用いられることとする。
【0022】
このマイクロピンセット10の本体は、一対の支持体11で構成されている。一対の支持体11は、所定の間隔を有して同一方向に並設されており、先端側はそれぞれ同一方向に屈折した状態で設けられている。支持体11は、シリコン、窒化シリコン、カーボンナノチューブ等の強度の高い材質で構成されており、支持体11の先端の径は、およそ数μm〜数十μmであることとする。
【0023】
また、上記一対の支持体11の先端側には、電圧の印加により変形する保持部12が設けられている。保持部12は、一対の支持体11の対向面側に略直方体状に設けられておいる。そして、電圧の印加により保持部12が変形することで、保持部12の間に配置された微粒子Pを挟持するように構成されている。ここで、保持部12は、基板Wよりも硬度の低い材質で構成されることが好ましく、支持体11の先端側からはみ出すように設けられることがさらに好ましい。これは、マイクロピンセット10を移動する際、または基板W上の微粒子Pを挟持する際に、マイクロピンセット10の先端側に設けられた保持部12が基板Wに接触したとしても、基板Wへの損傷が防止されるためである。
【0024】
ここでは、保持部12が、電圧の印加により変形するポリマーアクチュエーターにより構成されることとする。これにより、保持部12に印加する電圧を制御することで、保持部12の変形度合い、例えば膨張率を制御することが可能である。このため、マイクロピンセット10で挟持する微粒子Pにかかる圧力を精密に制御することができる。また、シリコン(Si)からなる基板Wのビッカース硬度は600kg/mm2(ヌープ硬度;850kg/mm2)であるのに対し、ポリマーアクチュエーターを構成する高分子材料の硬度はSiの5分の1以下となる。このため、基板Wへの損傷を防止することが可能となる。
【0025】
ここで、上記ポリマーアクチュエーターの材料としては、ポリマーゲル、イオン交換ポリマー、導電性ポリマー、圧電ポリマー、電歪ポリマー等が挙げられる。ポリマーゲルは、電圧の印加等の外部刺激により膨張収縮を起こす。イオン交換ポリマーは、イオン交換ポリマー膜中のイオンが移動し偏在することで、屈曲変形する。導電性ポリマーは、電界溶液中のイオンをポリマー電極が吸収することで、変形する。この場合、ポリマー電解質をポリマー電極で両側から挟む構造とする。圧電ポリマーは、ポリマーそのものが誘電分極されて逆電圧効果により変形する。電歪ポリマーは電圧の印加によりポリマーに生じるクーロン力で中間層のポリマーが変形する。
【0026】
上述した中でも、電圧印加に対して高速応答性を有し、発生応力が比較的大きく、低い印加電圧で変形する圧電ポリマーを用いて保持部12を構成することが好ましい。このような保持部12は、支持体11上に蒸着によって圧電ポリマーを形成した後、パターン加工することによって形成することが可能である。
【0027】
そして、この保持部12を挟む状態で、保持部12に電圧を印加する一対の電極13が設けられている。一対の電極13は、一対の支持体11の対向面に設けられた配線14とそれぞれ接続されており、電圧制御部(図示省略)からこの配線14を介して電圧が印加されるように構成されている。ここでは、略直方体状に設けられた保持部12を挟む状態で、保持部12の先端側の面12aとこの面の対向面12bに電極13が配置されることとする。ただし、この場合には、電極13が基板Wに接触しないように、保持部12の先端側の面12aの最下部となる部分12a’は、電極13で覆わず、保持部12が露出するように電極13を配置する。これにより、電極13の接触による基板Wの損傷が防止される。
【0028】
上述したように、保持部12を挟む状態で一対の電極13が配置されることで、保持部12に電圧を印加することが可能となる。そして、図1(b)に示すように、保持部12の間に微粒子Pを配置して電圧を印加することで、圧電ポリマーにより構成された保持部12が、微粒子Pを挟持可能な幅となるまで変形(膨張)する。ここで、基板Wに付着した微粒子Pの基板Wに対する付着力は0.1kPa程度であるが、圧電ポリマーの発生応力は4MPa程度と大きく凌駕する。これにより、保持部12を構成するポリマー膨張により、微粒子Pが挟持される。ここで、保持部12に印加する電圧は、電圧制御部(図示省略)により制御することが可能である。
【0029】
尚、ここでは、一対の支持体11に設けられた保持部12の両方を変形(膨張)させることで微粒子Pを挟持することとするが、片方の支持体11に設けられた保持部12を変形(膨張)させて挟持してもよい。また、ここでは、一対の電極13を保持部12の先端側の面12aとその対向面12bに配置することとしたが、電極13の配置はこれに限定されるものではなく、保持部12における微粒子Pの挟持面12cを除く部分に、保持部12を挟む状態で電極13が配置されていればよく、保持部12の上面12dと下面12eに設けられていてもよい。
【0030】
このようなマイクロピンセット10によれば、電圧の印加により保持部12を膨張させて微粒子Pを挟持するため、印加する電圧を制御することで保持部12から微粒子Pにかかる圧力を制御することが可能となる。これにより、マイクロピンセット10により過剰な圧力をかけることによる微粒子Pの破壊が防止されるため、微粒子Pを確実に挟持することができる。
【0031】
また、保持部12を基板Wよりも硬度の低い材質で形成することで、保持部12が基板Wに接触したとしても、基板Wへの損傷を防止することができる。
【0032】
<挟持装置(微粒子除去装置)>
次に、上述したようなマイクロピンセット10を用いた本発明の挟持装置について図2を用いて説明する。ここでは、挟持装置として基板W上の微粒子Pを除去するための局所クリーニングに用いる微粒子除去装置20の一例を示す。
【0033】
この図に示すように、微粒子除去装置20は、基板Wを載置保持するステージ21と、ステージ21の上方に配置された上記マイクロピンセット10と、マイクロピンセット10の保持部12に電圧を印加する電圧制御部22と、上記ステージ21を水平方向(X−Y方向)および上下方向(Z方向)に移動させる駆動部23とを備えている。また、上記マイクロピンセット10の先端側と微粒子Pの位置を受像して表示する画像検出部24、基板W上の微粒子Pに光を照射する光照射部25、前記微粒子Pからの散乱光を検出する光検出部26を備えている。
【0034】
ステージ21は、基板Wを真空吸着やエッジクランプ等により載置固定可能に構成されている。このステージ21は、駆動部23により水平方向(図面上X-Y方向)および上下方向(図面上Z方向)に移動自在に構成されている。
【0035】
このステージ21の上方には、上述したマイクロピンセット10が配置されており、マイクロピンセット10の本体を構成する一対の支持体11は、例えば電圧制御部22にそれぞれ固定されている。一対の支持体11は、所定の間隔を有してステージ21の基板W載置面と平行に、すなわち、水平方向(X−Y方向)に並設されている。ここでは、支持体11の間隔は固定されており、一対の支持体11の先端側に設けられる保持部12(前記図1(a)参照)の変形のみで、基板W上の微粒子Pが挟持されることとする。尚、ここでは、一対の支持体11の間隔は固定されることとするが、この間隔は変更可能に構成されていてもよい。この場合には、微粒子Pを挟持するために支持体11の間隔を狭める動作をピエゾ素子またはMEMS(Micro Electro Mechanical System)素子等の駆動により行うこととする。
【0036】
また、上述した支持体11の先端部は、ステージ21側に屈折した状態で配置されることとする。このように上記マイクロピンセット10が配置されることで、支持体11の先端部の上方に、後述する顕微鏡を備えた画像検出部24を配置することが可能となる。
【0037】
また、電圧制御部22には、支持体11に設けられた配線14(前記図1(a)参照)が接続されている。そして、保持部12を挟む状態で設けられた一対の電極に、配線14を介して電圧を印加することで、保持部12を変形し、微粒子Pを挟持する。ここで、電圧制御部22は、印加する電圧を制御可能に構成されている。
【0038】
また、支持体11の先端部の上方には、先端部と基板W上の微粒子Pの位置を受像して表示する画像検出部24が設けられている。画像検出部24は、例えば光学顕微鏡からなる受像部24aと、受像部24aからの画像を表示するモニター24bとで構成されている。尚、ここでは、受像部24aに光学顕微鏡を用いることとしたが、電子顕微鏡を用いてもよい。
【0039】
さらに、ステージ21の上方には、基板W上の微粒子Pに斜め上方から光を照射する光照射部25と、光照射部25からの光の照射による微粒子Pからの散乱光を検出する光検出部26とを備えている。光照射部25から、例えば波長266nmのレーザ光を照射することで、30nmの径以上の微粒子Pを検出することが可能である。また、この微粒子除去装置20は、光検出部26で検出された光を電気信号に変換する光電変換素子27と、この電気信号を処理する信号処理回路28とを備えている。そして、信号処理回路28は上述した駆動部23と接続されており、処理された電気信号に基づき、微粒子Pの位置にマイクロピンセット10の先端部が配置されるように、基板Wの載置されたステージ21を移動させる。
【0040】
<挟持方法(微粒子除去方法)>
次に、本発明の挟持方法に係る、上述した微粒子除去装置20を用いた微粒子除去方法について説明する。ここでは、予め、ウェット洗浄を行うことで基板Wに付着した微粒子Pの個数を低減させた後、レーザー散乱式異物検出装置により基板W全体を走査することで、微粒子Pの位置情報が取得されていることとする。そして、検出した微粒子Pの位置を、信号処理回路28に入力する。
【0041】
まず、基板W(被処理体)をステージ21上に配置し、裏面真空吸着やエッジクランプなどによりステージ21上に固定する。
【0042】
次に、駆動部23によりステージ21を移動させることで、基板Wの外周に設けられたアライメント用パターン数箇所に順次、受像部24aを構成する光学顕微鏡の対物レンズを近接させて、焦点を合わせ、アライメント用パターンの位置情報を信号処理回路28に入力する。
【0043】
予め行った検査によって検出した基板W上の微粒子Pの位置に、光照射部25および光検出部26が近接するように、ステージドライバーを動かして、ステージ21を移動させる。
【0044】
次に、予め行った検査によって検出した微粒子Pの位置の近傍の小さな領域に光照射部25によりレーザ光を照射して、散乱光を検出し、微粒子Pの位置情報を信号処理回路28に入力する。
【0045】
次いで、駆動部23により微粒子Pの正確な位置に光学顕微鏡(受像部24a)の対物レンズの中心が近接するように、ステージ21を移動させる。微粒子Pの位置から50μm以内に光学顕微鏡の対物レンズの中心が近づき、光学顕微鏡の視野に微粒子Pが入ってくる。光学顕微鏡で、微粒子を確認できない場合は、局所真空方式の簡易電子顕微鏡を用いて同様の操作を行う。
【0046】
その後、モニター24bを観察しながら、マイクロピンセット10の保持部12の間に、微粒子Pが配置されるように、ステージ21の水平方向(X−Y方向)の位置を調整する。このとき、マイクロピンセット10の先端のX−Y位置座標は、微粒子Pから0.1μm以内の位置になっている。
【0047】
続いて、マイクロピンセット10の保持部12の間に、基板W上の微粒子Pが配置されるように、ステージ21をZ軸方向に上昇させる。この際、マイクロピンセット10における保持部12は基板Wよりも硬度の低い材質で形成されるとともに、支持体11よりも先端側に突出した状態で設けられているため、ステージ21の上昇により基板Wがマイクロピンセットに接触したとしても、基板Wへの損傷が防止される。
【0048】
次に、電圧制御部22により、電圧を印加して、マイクロピンセット10の先端に設置されているポリマーアクチュエーターからなる保持部12を膨張させる。ポリマーアクチュエーターの膨張により、微粒子Pは両側から保持部12により挟持された状態となり、微粒子Pは挟持される。この際、微粒子Pの材質が予めわかっている場合、微粒子Pが変形、破壊しないような圧力から、最高印加電圧を計算し、電圧制御部22にリミッターとして入力する。
【0049】
次いで、ステージ21をZ軸方向に下降させる。これにより、微粒子Pは基板Wから除去される。続いて、基板Wがマイクロピンセット10や光学顕微鏡(受像部24a)から離れるように、ステージ21をさらにX-Y軸方向に移動させる。
【0050】
続いて、電圧制御部22により、電圧を下げて、マイクロピンセット10の先端の変形したポリマーアクチュエーターからなる保持部12を元に戻す。保持部12の収縮により、微粒子Pの圧力は解除されて、微粒子Pはマイクロピンセット10から外れて、落下する。静電気や粘着力により付着していて落下しない場合は、予めステージと異なる位置に設置されたウェット洗浄槽(図示省略)に、マイクロピンセット10の先端を入れて、洗浄により除去する。
【0051】
その後、基板Wをステージ21から搬出し、作業を完了する。尚、上述した工程の操作は全て自動で行うことも可能であり、一部の工程、例えば保持部12に印加する電圧を制御する工程等は手動で行ってもよい。
【0052】
このような微粒子除去装置20およびこれを用いた微粒子除去方法によれば、ステージ21上に載置保持された基板Wに付着した微粒子Pを、上述したマイクロピンセット10を用いて挟持するため、基板Wへの損傷を防ぐとともに、基板Wから微粒子Pが確実に除去される。したがって、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【0053】
尚、上述した実施形態で説明した微粒子除去装置20では、駆動部23によりステージ21がX−Y方向およびZ方向に可動する構成としたが、本発明はこれに限定されず、駆動部23によりマイクロピンセット10を移動させてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、マイクロピンセット10の一例について説明したが、マイクロピンセット10の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような構成とすることも可能である。
【0055】
(変形例1)
図3(a)に示すように、マイクロピンセット10が、一方の支持体11と他方の支持体11とが逆方向から先端部のみで対向配置されるように平行に設けられていてもよい。この場合の構成は、例えば基板W上に配線パターンAが設けられおり、一対の支持体11を同じ方向から並設できない場合等に好適に用いられる。このような構成であっても、図3(b)に示すように、電圧の印加により保持部12が微粒子P側に膨張することで、基板Wに損傷を与えることなく、微粒子Pを確実に捕捉することが可能である。
【0056】
(変形例2)
また、図4(a)に示すように、保持部12が、微粒子Pを挟持する側の先端に向かって薄くなるように形成されていてもよい。ここでは、保持部12の支持体11側から微粒子Pを挟持する側に向けて徐々に薄くなるように形成されることとする。この場合には、図4(b)に示すように、電圧の印加により保持部12が膨張することで、薄く形成された保持部12の先端が、基板Wと微粒子Pの間に入りこむ。このような構成であれば、薄片状の微粒子Pであっても、基板Wに損傷を与えることなく、確実に挟持して捕捉することができる。
【0057】
尚、ここでは、支持体11側から微粒子Pを挟持する側に向けて、保持部12が徐々に薄くなるように形成された例について説明したが、支持体11側から微粒子Pを挟持する側に向けて、保持部12が段差的に薄くなるように形成されてもよい。
【0058】
(変形例3)
さらに、図5(a)に示すように、保持部12が、基端部で支持体11に固定された導電性ポリマーからなる一対のアーム12状に形成されていてもよい。ここでは、例えば支持体11Aの先端部11A’に固定された2本のアーム12A、12Bが設けられており、支持体11Bの先端部11B’に固定された2本のアーム12C、12Dが設けられていることとする。保持部12を構成する各アーム12A〜12Dは、それぞれ導電性ポリマーで構成されていることとする。
【0059】
そして、図5(b)に示すように、各アーム12A〜12Dにそれぞれ電極13を配置し、各アーム12A〜12Dに電圧を印加することで、支持体11Aに設けられたアーム12A、12Bおよび支持体11Bに設けられたアーム12C、12Dとで微粒子Pを挟持するように、アームを変形させる。これにより、微粒子Pはアーム12A〜12Dで包囲された状態となる。このような構成であっても、基板Wに損傷を与えることなく、微粒子Pを両側からアームで挟持することで、確実に挟持することができる。
【0060】
尚、ここでは、一対の支持体11A、11Bが一直線上に配置されることとしたが、本発明はこれに限定されず、微粒子Pの挟持方向に対して直交する方向に、支持体11A、11Bが間隔を有して平行に並設されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のピンセットに係る第1実施形態を説明するための斜視図である。
【図2】本発明の微粒子除去装置を説明するための構成図である。
【図3】本発明のピンセットに係る第1実施形態の変形例1を説明するための斜視図である。
【図4】本発明のピンセットに係る第1実施形態の変形例2を説明するための斜視図である。
【図5】本発明のピンセットに係る第1実施形態の変形例3を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
10…マイクロピンセット、12…保持部、13…電極、20…微粒子除去装置、21ステージ、22…電圧制御部、23…駆動部、24…画像検出部、25…光照射部、26…光検出部、W…基板、P…微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の支持体と、
当該一対の支持体の先端側に設けられ、電圧の印加により変形する保持部とを備えた
ことを特徴とする挟持具。
【請求項2】
変形した前記保持部により、基板上の物体が挟持される
ことを特徴とする請求項1記載の挟持具。
【請求項3】
前記保持部は、前記基板よりも硬度の低い材質で形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の挟持具。
【請求項4】
前記保持部は、前記支持体よりも先端側に突出した状態で設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の挟持具。
【請求項5】
前記保持部は、圧電ポリマーで形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の挟持具。
【請求項6】
前記保持部を挟む状態で、当該保持部に電圧を印加する電極が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の挟持具。
【請求項7】
前記保持部は、前記物体を挟持する側に向けて薄くなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の挟持具。
【請求項8】
前記保持部が、前記支持体の先端部で固定された一対のアーム状に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の挟持具。
【請求項9】
基板上の物体を挟持する挟持装置であって、
前記基板を載置固定するステージと、
前記ステージの上方に配置された挟持具と、
前記挟持具に電圧を印加する電圧印加部と、
前記ステージまたは前記挟持具を移動させて、前記ステージと前記挟持具との位置を調整する駆動部とを備えており、
前記挟持具は、一対の支持体と、当該一対の支持体の先端側に設けられ、電圧の印加により変形する保持部とを備えた
ことを特徴とする挟持装置。
【請求項10】
前記ステージの上方に、当該ステージ上に載置固定された前記基板上の前記物体と前記挟持具との位置関係を受像して表示する画像検出部が設けられている
ことを特徴とする請求項9記載の挟持装置。
【請求項11】
前記ステージ上に載置固定された前記基板上の前記物体に光を照射する光照射部と、
前記光照射部からの光の照射により前記物体から発する散乱光を検出する光検出部とを備え、
前記駆動部は、前記検出部からの情報に基づき前記ステージまたは前記挟持具を移動させる
ことを特徴とする請求項9記載の挟持装置。
【請求項12】
基板上の物体を挟持する方法であって、
一対の支持体と、当該一対の支持体の先端側に電圧の印加により変形する保持部が設けられた挟持具を用い、前記保持部の間に前記物体が配置されるように、前記基板または前記挟持具を移動させる工程と、
電圧の印加により前記保持部を変形させて前記物体を挟持する工程とを有する
ことを特徴とする挟持方法。
【請求項13】
前記物体は微粒子であり、
前記微粒子を挟持する工程の後、
前記微粒子を挟持した状態の前記挟持具または前記基板を移動させることにより、前記基板の表面から前記微粒子を除去する工程を行う
ことを特徴とする請求項12記載の挟持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−326716(P2006−326716A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150776(P2005−150776)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】