説明

振動型アクチュエータ

【課題】 強固且つ高い精度で取り付けることで、安定的に支持することのできる振動型アクチュエータを提供すること。
【解決手段】 アクチュエータ本体1を、一組のホルダ11とカバー12とからなる支持部材10の内部に接着剤21,22を用いて中空状態で保持する。ホルダ11には、移動体2の移動方向(X方向)と直交するY方向に取付部11D及び延出部11E,掛止部11Fが一体形成されており、振動型アクチュエータはこの取付部11D及び掛止部11Fを用いて他の電子機器の筐体に固定される。取付け作業の際、移動体2と取付部11D及び掛止部11F等との干渉がなくなり、支持部材10を強固且つ高い精度で取り付けることが可能となり、アクチュエータ本体1を安定的に支持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子などの駆動素子によって駆動子を加振させることで、ねじ部を介して駆動子と嵌合している移動体を移動させる振動型アクチュエータの支持部材に係わり、特に外形が長尺形状からなる振動型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1には、ねじ部を介して互いに嵌合している駆動子と移動子および前記駆動子を加振する圧電素子を有する振動型アクチュエータが開示されている。
【0003】
前記圧電素子の駆動子に2軸且つ位相差のある屈曲運動(または屈曲振動、以下同じ)が繰り返されると、駆動子の運動は回転運動を行い、移動子に伝達されて、移動子が回転させられる。移動子は駆動子とねじ部を介して嵌合しているため、移動子は自らの回転力で、ねじの軸方向へ移動させられる。この種の振動型アクチュエータは、移動子が比較的低速で回転しながら前記中心軸に沿う方向へ進退移動でき、且つ大きな駆動トルクを得て大きな進退移動力(推進力)を発揮できるという利点を有する。
【0004】
このような屈曲運動する長尺形状からなるアクチュエータの支持部材としては、例えば以下の特許文献2などが存在する。
【0005】
特許文献2は、外周面に、駆動用、検出、及び共通アース用の電極パターンが形成され、各電極間に所定の電圧を印加すると全体として屈曲運動を行う長尺状の円柱圧電セラミックスからなる圧電振動子を利用した振動ジャイロに関するものである。
【0006】
圧電振動子は、その両端から所定の距離を隔てた2箇所の位置に屈曲運動を行うためのノード(振動節)を有しており、このノードの近傍に弾性材質からなる環状支持部材がそれぞれ外挿され、この環状支持部材がホルダに立設された2箇所の鍔部の取り付け穴内にそれぞれ装着されることにより支持固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−505599号公報
【特許文献2】特開2002−22451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなアクチュエータは他の電子機器内に組み込まれるが、この際以下に示すような問題がある。
【0009】
長尺形状からなるアクチュエータは、その長手方向が移動方向でもある。
このため、アクチュエータの端部に取付け部材が配置される構成では、振動子が取付け部材と干渉することがあり、振動子の支持・固定が不安定になって振動子の推進力が低下するという問題があった。
【0010】
またアクチュエータを電子機器内に強固に固定することが難しく、取付精度を高めることも困難であるという問題があった。
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、外形が長尺形状からなる振動子(移動体)を、推進力を低下させることなく安定的に支持することのできる振動型アクチュエータを提供することを目的としている。
【0012】
また本発明は、強固且つ高い精度で取り付けることを可能とした振動型アクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、長尺状の筒体、前記筒体の内部に進退自在に設けられた移動体及び前記筒体の周囲に設けられて前記筒体に屈曲運動を与える圧電素子とを有するアクチュエータ本体とを備えた振動型アクチュエータであって、
前記アクチュエータ本体を支持する支持部材が設けられており、前記支持部材には、前記移動体が進退する移動方向と直交する方向に張り出した取付部が形成されており、この取付部を介して固定されることを特徴とするものである。
【0014】
本発明では、支持部材を固定するための取付部を移動方向と直交する方向に配置することができるため、進退移動する移動体が取付用の部材と干渉することを避けることができ、推進力の低下を防止することが可能となる。
【0015】
上記において、前記直交する方向の一方に取付部が設けられ、他方に掛止部が設けられているものが好ましい。
上記手段では、支持部材を確実に固定することができる。
【0016】
また前記掛止部は、前記基端から先端に向かって湾曲形成されているものが好ましい。
上記手段では、スプリングワッシャー(ばね座金)やウェーブワッシャー(波形座金)を用いなくとも強固に固定することができる。
【0017】
さらには、前記取付部に螺子止め用の取付穴が形成されているものである。
上記手段では、簡単且つ確実に固定することができる。
【0018】
また前記支持部材が、一組のホルダとカバーとからなり、前記アクチュエータ本体が前記ホルダと前記カバーとが組み合わされて形成される枠体の内側に支持されているものとして構成できる。
【0019】
前記ホルダと前記カバーの少なくとも一方の内面に凹部が形成されており、この凹部に塗布された接着剤により、前記アクチュエータ本体が支持されるものが好ましい。
【0020】
上記手段では、凹部で接着剤を保持することができるため、接着剤の無駄を防止できる。
【0021】
また前記ホルダの、前記凹部が形成された面の裏面に凸部が形成されており、この凸部を介して前記支持部材が外部の機器に対して位置決めされるものが好ましく、さらには前記凹部と前記凸部とが表裏一体をなしており、前記凹部と前記凸部とが取付基準部として機能するものが好ましい。
【0022】
上記手段では、凹部を基準としてアクチュエータ本体を支持することができ、また凸部を基準として筐体に対して支持部材を固定することができるため、取付け精度を高めることができる。
【0023】
さらには、フレキシブルケーブルが前記圧電素子の周囲に設けられ、フレキシブルケーブル内の導電パターンと前記圧電素子の電極とが半田で固定されており、前記ホルダ及びカバー上の前記半田と対向する部分に逃げ部が形成されているものが好ましい。
【0024】
上記手段では、アクチュエータ本体1が屈曲運動したときに、フレキシブルケーブルの周囲に形成された半田が支持部材の内面に接触することを避けることができ、推進力の低下を有効に防止できる。
【0025】
また前記ホルダと前記カバーには、前記フレキシブルケーブルを外部に引き出す段差部が形成されているものが好ましい。
【0026】
上記手段では、アクチュエータ本体が屈曲運動したときに、フレキシブルケーブルが拘束されることを防止できるため、推進力の低下を有効に防止できる。
また組み込み作業を容易化することもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、アクチュエータ本体を支持する支持部材に、取付部を移動方向と直交する方向に配置することにより、進退移動する移動体が取付用の他の部材と干渉することを避けることができる。
【0028】
また支持部材を他の電子機器の筐体に対して強固且つ確実に取り付けることができる。
さらには支持部材の一方の面に形成した凹部を基準としてアクチュエータ本体を支持し、且つ他方の面に形成した凸部を基準として筐体に対して支持部材を固定することにより、振動型アクチュエータの取付け精度を高めることができる。
よって、推進力を低下させることなく安定的に支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態としての振動型のアクチュエータ本体を示す斜視図、
【図2】図1の振動型のアクチュエータ本体の分解斜視図、
【図3】振動型アクチュエータ(振動型のアクチュエータ本体が支持部材により支持された状態)を示す斜視図、
【図4】図3の振動型アクチュエータの分解斜視図、
【図5】振動型アクチュエータを図3の矢視V方向から見た状態を示す正面図、
【図6】振動型アクチュエータの取付けの概略を示す正面図、
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は本発明の実施の形態としての振動型のアクチュエータ本体を示す斜視図、図2は図1の振動型のアクチュエータ本体の分解斜視図である。
【0031】
先ず、図1及び図2を参照しつつ振動型のアクチュエータ本体の基本的構造について説明する。
【0032】
図1及び図2に示すように、振動型のアクチュエータ本体1は、振動筒体4と、この振動筒体4の内部に挿入される移動体2を有している。
【0033】
振動筒体4は4つの側面を有しており、X1方向又はX2方向から見た端面の形状は略正方形状をしている。振動筒体4の中心には軸方向に貫通する貫通穴4aが形成されており、この貫通穴4aの内周面には雌ねじ部4a1が形成されている。なお、振動筒体4は一対のノード(振動節)をそれぞれ有している、一方のノードは長尺状の振動筒体4の一端側に設けられ、他方のノードは長尺状の振動筒体4の他端側に設けられている。
【0034】
また振動筒体4の4つの側面には、駆動素子として機能する4つの圧電素子6,7,8,9がそれぞれ取り付けられている。圧電素子6,7,8,9は電歪効果を発揮する圧電セラミックで形成されており、それぞれの圧電素子6,7,8,9の誘電分極の向きは厚み方向(Z方向)である。
【0035】
圧電素子6と圧電素子8は、振動筒体4の対向する側面4A,4Cにそれぞれ設けられ、圧電素子7と圧電素子9はこれと直交する他の側面4B,4Dにそれぞれに設けられている。圧電素子6,7,8,9には、外側の面に外側電極6a,7a,8a,9aが、側面4A,4B,4C,4Dと対向する内側の面に内側電極6b,7b,8b,9bがそれぞれ設けられている。
【0036】
4つの圧電素子6,7,8,9の周囲には、フレキシブルケーブル50が巻き付けられている。フレキシブルケーブル50は、絶縁性及び可撓性を備えたポリイミドなどからなるフィルムで形成され、フィルムの内部には複数の導電パターンが配線されている。
【0037】
フレキシブルケーブル50は、帯状に延びるケーブル本体50Aと、先端側のケーブル本体50AからX1方向に突出する4つの突出部51,52,53および54とを有して構成される。突出部51,52,53および54はそれぞれ所定の間隔を有して形成されている。突出部51,52,53および54には貫通孔55がそれぞれ形成されており、貫通孔44の内面側の周囲には内部のいずれかの配線パターンと接続された接続電極(図示せず)が形成されている。
【0038】
そして、フレキシブルケーブル50が巻き付けつけると、4つの突出部51,52,53および54が4つの圧電素子6,7,8,9に対向する。このとき、突出部51,52,53および54に形成された接続電極が、圧電素子6,7,8,9の外面側の外側電極6a,7a,8a,9aに対向する。このため、各貫通孔55に半田56を流し込むことにより、圧電素子6,7,8,9の外面側の外側電極6a,7a,8a,9aと突出部51,52,53および54の各接続電極とをそれぞれ半田付けすることができる。なお、圧電素子6,7,8,9の内面側の内側電極6b,7b,8b,9bはグランド用であり、例えばワイヤ線(図示せず)を介してフレキシブルケーブル50上に設けられたグランド電極(図示せず)に接続されている。
【0039】
移動体2は軸体であり、その軸中心は直線状である。そして、移動体2の外周面には、軸方向(X1−X2方向)に連続する雄ねじ部2aが形成されている。
【0040】
雄ねじ部2aは、振動筒体4の内周面に形成された雌ねじ部4a1と同じピッチを有しているが、雄ねじ部2aの有効径は雌ねじ部4a1の有効径よりもやや小さい。そのため、移動体2の雄ねじ部2aが、振動筒体4の雄ねじ部4a1に嵌合したときに、移動体2は軸中心O1と直交する方向へ若干のがたつき(クリアランス)を有しているが、移動体2を軸中心O1に沿う方向へ移動させようとしても、雄ねじ部2aのねじ山が、雌ねじ部4a1のねじ山を越えることはない。すなわち、移動体2は、振動筒体4に対して軸方向にがたつきを生じるように嵌合されているが、移動体2が振動筒体4に対して軸方向へ抜き出ることはない。
【0041】
なお、雌ねじ部4a1は、上記のように振動筒体4側の貫通穴4a内にその全長に渡って形成されていてもよいが、貫通穴4a内の両端のノード近傍のみにそれぞれ形成される構成でもよい。このようにすると、雌ねじ部4a1と雄ねじ部2aとの間の摩擦抵抗を低減することができるため、ねじ送りを効率良くスムースに行うことができるようになる。
あるいは、貫通穴4aの中心部にのみ雌ねじ部4a1を形成する構成であってもよい。
【0042】
各圧電素子6,7,8,9には、所定の駆動信号が図示しない駆動回路からフレキシブルケーブル50を介して与えられる。すなわち、圧電素子6に伸び力を発生させる駆動振動が与えられるときには、これと対向する位置に設けられた圧電素子8に縮み力を発生させる駆動信号が与えられる。次に、圧電素子6に隣接する圧電素子7に伸び力を発生させる駆動信号が与えられるときには、これと対向する位置に設けられた圧電素子9に縮み力を発生させる駆動信号が与えられる。
【0043】
以下同様に、互いに対向する一方の圧電素子に伸び力を与えると同時に他方の圧電素子に縮み力を与えるようにし、これを一定の周期で時計回り方向、または反時計回り方向に切り換えると、すなわち90°位相の異なる駆動信号を各圧電素子6,7,8,9に与えると、振動筒体4に屈曲運動を繰り返して発生させることができる。このため、振動筒体4を屈曲運動が可能な状態で支持しておくことにより、貫通穴4a内に設けられた移動体2を軸方向にねじ送りすることができる。すなわち、移動体2は振動筒体4の内部に移動方向に沿って進退自在に設けられている。
【0044】
このようなアクチュエータ本体1は、移動体2を軸方向にねじ送りすることにより、大きな駆動力を発生することができる。このため、例えばカメラ装置においてレンズを移動させるフォーカス機構などへの応用が見込まれる。
【0045】
次に、上記振動型アクチュエータの支持部材について説明する。
図3は振動型アクチュエータ(振動型のアクチュエータ本体が支持部材により支持された状態)を示す斜視図、図4は図3の振動型アクチュエータの分解斜視図、図5は振動型アクチュエータを図3の矢視V方向から見た状態を示す正面図、図6は振動型アクチュエータの取付けの概略を示す正面図である。
【0046】
図3ないし図6に示すように、本発明のアクチュエータ本体1は、一組のホルダ11とカバー12とからなる枠状の支持部材10を有し、これら支持部材10からなる枠体の内部に支持されている。
ホルダ11及びカバー12は、金属板を板金加工することにより形成されている。
【0047】
ホルダ11は、底部11Aと、前方(X1側)の位置で底板11Aの両側からそれぞれ垂直に立設された一対の前側板11B,11Bと、後方(X2側)の位置で底板11Aの両側からそれぞれ垂直に立設された一対の後側板11C,11Cと、底板11Aの一部が前側板11B,11Bと後側板11C,11Cの間から一方のY1方向に延びた取付部11Dと、他方のY2方向に延びた延出部11Eと有しており、これらは金属板を板金加工することにより一体に形成されている。
【0048】
底部11Aの内面には凹部11aが、外面には凸部11bが形成されている。凹部11aと凸部11bとは、底部11Aをプレス加工することにより、表裏一体の関係を有して形成されている(図5参照)。
【0049】
また前側板11B,11B及び後側板11C,11Cの外面には掛止凸部11c,11c,11c,11cがそれぞれ形成されている。さらに取付部11Dには取付穴11dが穿設されている。また図5に示すように、延出部11Eは基端から先端に向かって湾曲形成されており、その先端は水平面HPよりも下方に位置している。また延出部11Eの先端には、平面視略T字形状からなる掛止部11Fが形成されている。なお、掛止部11Fは先端の幅寸法は、フレキシブルケーブル50のケーブル本体50Aの幅寸法よりも広い。このため、上方から見たときに、延出部11Eの上に配置されたケーブル本体50Aにより、延出部11Eが隠れることがあっても、掛止部11Fをケーブル本体50Aの両側(X1及びX2方向)に突出させることができるため、後述するように取付時の作業を良好にできる。
【0050】
カバー12は、上部12Aと、上部12Aの両側が下方に垂直に折り曲げられて形成された一対の側部12B,12Bを有している。上部12Aの長手方向の両端には、略U字形状に切り欠かれた逃げ部12a,12aが形成されている。また上部12Aの内面には、プレス加工時の圧痕によって形成された逃げ凹部12b,12bが設けられている。一対の側部12B,12Bの前後の位置には、掛止穴12c,12c,12c,12cが形成され、その近傍には逃げ穴12d,12d,12d,12dが穿設されている。また側部12B,12Bの下端には、一部を切り欠くことによりなる段差部12f,12fがそれぞれ一体に形成されている。
【0051】
ホルダ11の前側板11B,11Bと後側板11C,11Cの外側に、カバー12の側面12B,12Bを装着し、ホルダ11側の掛止凸部11c,11c,11c,11cをカバー12側の掛止穴12c,12c,12c,12cにそれぞれ凹凸嵌合させることにより、支持部材10を組み立てることができる。
【0052】
次に、支持部材10を利用してアクチュエータ本体1を支持することにより形成される、振動型アクチュエータの製造方法について説明する。
【0053】
図4に示すように、アクチュエータ本体1を、図示しない冶具を用いて中空状態に保持する。続いて、アクチュエータ本体1を挟んでその一方にホルダ11を、他方にカバー12を対向配置する。
【0054】
次に、ディスペンサを用いて、カバー12の上部12Aの内面またはフレキシブルケーブル50の突出部51の表面の一方に接着剤21を塗布する。同様に、ホルダ11の底部11Aの内面とフレキシブルケーブル50の突出部53の表面の一方に接着剤22を塗布する。この状態で、ホルダ11とカバー12とを嵌合させる。そして、接着剤21,22が硬化することにより、支持部材10(ホルダ11とカバー12と)の内部に、アクチュエータ本体1を中空状態で弾性支持することができる。
【0055】
なお、アクチュエータ本体1から移動体2を取り外した状態のもの、すなわち圧電素子6,7,8,9およびフレキシブルケーブル50を備えた振動筒体4を、ホルダ11とカバー12とが対向する空間に配置し、これらの隙間を接着剤21,22で固定した後に、すなわち接着剤21,22の硬化後に、移動体2を振動筒体4内に装着するようにしてもよい。
【0056】
あるいは、あらかじめホルダ11とカバー12とを嵌合させた状態の支持部材10の内部にアクチュエータ本体1、または移動体2を取り外したアクチュエータ本体1を、図示しない冶具を用いてホルダ11及びカバー12の内面に触れることなく浮かせた中空状態に保持する。そして、ディスペンサを用いて、カバー12の上部12Aの内面とフレキシブルケーブル50の突出部51との対向する隙間に接着剤21を塗布し、同様にホルダ11の底部11Aの内面とフレキシブルケーブル50の突出部53とが対向する隙間に接着剤22を塗布するようにしてもよい。
【0057】
なお、フレキシブルケーブル50のケーブル本体50Aは、図3に示すように延出部11Eと段差部12fとの間に形成される隙間を介して、支持部材10の外部に引き出される。
【0058】
ここで、接着剤21,22は、硬化後はなるべく柔らかい状態を保って弾性力を発揮することが可能なものが好ましい。接着剤21,22の硬さとしてはデュロメータAによる硬さが43程度のものが好ましい。またディスペンサを用いる場合には、一液性でペースト状を有するものが好ましく、加えて常温で硬化し且つ硬化時間の短いものが好ましい。このような接着剤21,22としては、例えばシリコーンゴムなどが好適であるが、シリコーンゴムに限定されるものではない。
【0059】
上記のように、ホルダ11の底部11Aの内面には凹部11a,11aが形成され、カバー12の上部12Aの内面には逃げ凹部12b,12bが形成されている。このため、塗布された接着剤21及び接着剤22を、凹部11a,11a及び逃げ凹部12b,12bに溜めることができ、余計な部分に流れ込むことによる接着剤の無駄を防止することができる。すなわち凹部11a,11a及び逃げ凹部12b,12bは硬化前の接着剤21,22を保持する機能を有している。よって、接着剤21,22の量が必要以上に増大することを防止することができ、少ない量で確実にアクチュエータ本体1を支持部材10内に保持・固定することができる。
【0060】
なお、ホルダ11の凹部11a,11aとカバー12の逃げ凹部12b,12bとは双方に形成されている構成が好ましいが、少なくとも一方に形成される構成であってもよい。また硬化前の接着剤21,22の粘度が高く流動性が低いものである場合には、凹部11a,11a及び逃げ凹部12b,12bを有さない構成とすることもできるが、凹部11a,11a及び逃げ凹部12b,12bを有する構成の方が接着剤21,22を塗布する位置を視覚的に規定することができる点で好ましい。
【0061】
アクチュエータ本体1は、支持部材10とアクチュエータ本体1との間に形成される隙間に、上下方向から柔らかい接着剤21,22で挟まれた状態で、硬化後の接着剤21,22が有する接着力によって弾性支持される。
【0062】
このように、本発明では、接着剤21,22が有する接着力によりアクチュエータ本体1が保持される構造であり、加圧力によって保持する構造ではないため、従来のように加圧力の大小に起因する問題を解消することができる。つまり接着剤21,22は、硬化後も弾性を有してアクチュエータ本体1を支持することができる。このため、振動駆動中のアクチュエータ本体1を安定的に支持することができ、推進力の低下を防止することができる。
【0063】
また隙間に接着剤を塗布することにより支持することができため、あらかじめ弾性部材を配置するための専用のスペースを支持部材10の中に確保しておく必要がない。このため、振動型アクチュエータを小型化することができる。
【0064】
接着剤を塗布する位置は、大きな推進力を得るためには、振動筒体4のノード(振動節)の部分が好ましいが、必ずしもノード(振動節)部分でなくてもよい。また接着面積は、接着剤21のように互いの対向面(カバー12の上部12Aの内面とフレキシブルケーブル50の突出部51の面)同士が一点で接着される構成であってもよいし、接着剤22のように互いの対向面(ホルダ11の底部11Aの内面とフレキシブルケーブル50の突出部53の面)同士が所定の面積を有して接着される構成であってもよい。
【0065】
なお、上記実施の形態では、4つの圧電素子6,7,8,9の周囲に巻き付けたフレキシブルケーブル50の突出部51,53の表面に接着剤21,22を塗布する構成を示しているが、フレキシブルケーブル50を巻き付けない構成からなるアクチュエータの場合には、4つの圧電素子6,7,8,9のうち対向するいずれか2つの圧電素子の外側電極(例えば、外側電極6a,8a)の表面に接着剤21,22が塗布される構成であってもよい。
【0066】
あるいは、接着剤21,22が振動筒体4に直接塗布される構成であってもよい。この場合、振動筒体4に4つの面取り部分(例えば、隣接する側面4Aと側面4Bとの間の部分)のうち、互いに対向するいずれか2つの面取り部分に接着剤を塗布することで上記同様に中空状態で支持することが可能となる。
【0067】
アクチュエータ本体1が、支持部材10の内部に保持された状態では、フレキシブルケーブル50の突出部52の表面に形成されている半田56が、ホルダ11のX1側の凹部11aに対向し、同様に突出部54の表面に形成されている半田56が、カバー12のX1側の逃げ部12aに対向する。さらに、突出部51,53の表面に形成されている半田56が、ホルダ11の側部12B,12Bに形成された逃げ穴(逃げ部)12d,12dに対向する。このため、アクチュエータ本体1が移動方向と直交する方向に屈曲運動しても、各半田56の頂部が、支持部材10を形成するホルダ11の底部11A、前側面11B,11Bおよびカバー12の上部12Aの各内面に当接することがない。よって、振動駆動中のアクチュエータ本体1と支持部材10との干渉を避けることができるため、推進力の低下を防止することができる。
【0068】
次に、振動型アクチュエータを他の電子機器への固定方法について説明する。
本発明の振動型アクチュエータのホルダ11は、例えばカメラなどの電子機器の筐体内に固定される。
【0069】
図6に示すように、電子機器内の筐体30には、掛止部31と、凹部32と、螺子穴33が設けられている。振動型アクチュエータは、Y1方向に張り出した掛止部11Fを、筐体30側の掛止部31に挿入して係止させるとともに、ホルダ11の底部11Aの外面に突出している凸部11bを筐体30側の凹部32に嵌合させる。
【0070】
このとき図3に示すように、掛止部11Fの幅広部分がフレキシブルケーブル50のケーブル本体50Aの両側に露出しており、視認しながら掛止部11Fを掛止部31に挿入することが可能となり、取付時の作業を良好とすることが可能である。
【0071】
上記においては、ホルダ11側の凸部11bを筐体30側の凹部32に嵌合させることにより、支持部材10を位置決めされた状態で筐体30に高精度に取り付けることができる。またホルダ11側の外面の凸部11bは、その内面の凹部11aと表裏一体の関係にあるところ、外面では凸部11bが筐体30に対する支持部材10の取付位置を規定し、内面では凹部11aが接着剤22の塗布位置として規定される。すなわち、本発明では、凹部11aと凸部11bとが、振動型アクチュエータ全体を筐体30に対して精度良く取り付けるための取付基準部として機能している。
【0072】
次に、取付部11Dに形成された取付穴11dと筐体30側の螺子穴33とを重ねる。そして、取付穴11d及び螺子穴33を螺子35で螺着する。螺子35で締め付ける際、湾曲形成さられた取付部11Dが水平状態に変形されて加圧力が発生するため、スプリングワッシャー(ばね座金)やウェーブワッシャー(波形座金)を用いなくとも振動型アクチュエータを筐体に強固に固定することが可能である。
【0073】
また取付部11D及び延出部11Eは、移動方向(X方向)に対し直交するY方向に張り出すように形成されている。このため、振動型アクチュエータの筐体30への取付け作業の際に、螺子35を締め付けるドライバーなどの工具が、移動方向に延びる移動体2に当接するなどの干渉を避けることができる。このため、振動型アクチュエータを筐体にスムース且つ確実に取り付けることが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1 アクチュエータ本体
2 移動体
4 振動筒体
4a 貫通穴
6,7,8,9 圧電素子
6a,7a,8a,9a 圧電素子の外側電極
6b,7b,8b,9b 圧電素子の内側電極
10 支持部材
11 ホルダ(支持部材)
11A 底部
11B 前側板
11C 後側板
11D 取付部
11E 延出部
11F 掛止部
11a 凹部
11b 凸部
11c 掛止凸部
11d 取付穴
12 カバー(支持部材)
12A 上部
12B 側部
12a 逃げ部
12b 逃げ凹部
12c 掛止穴
12d 逃げ穴
12f 段差部
21,22 接着剤
30 筐体
31 掛止部
32 凹部
33 螺子穴
50 フレキシブルケーブル
50A ケーブル本体
51,52,53,54 突出部
56 半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の筒体、前記筒体の内部に進退自在に設けられた移動体及び前記筒体の周囲に設けられて前記筒体に屈曲運動を与える圧電素子とを有するアクチュエータ本体とを備えた振動型アクチュエータであって、
前記アクチュエータ本体を支持する支持部材が設けられており、前記支持部材には、前記移動体が進退する移動方向と直交する方向に張り出した取付部が形成されており、この取付部を介して固定されることを特徴とする振動型アクチュエータ。
【請求項2】
前記直交する方向の一方に取付部が設けられ、他方に掛止部が設けられている請求項1記載の振動型アクチュエータ。
【請求項3】
前記掛止部は、前記基端から先端に向かって湾曲形成されている請求項2記載の振動型アクチュエータ。
【請求項4】
前記取付部に螺子止め用の取付穴が形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項5】
前記支持部材が、一組のホルダとカバーとからなり、前記アクチュエータ本体が前記ホルダと前記カバーとが組み合わされて形成される枠体の内側に支持されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項6】
前記ホルダと前記カバーの少なくとも一方の内面に凹部が形成されており、この凹部に塗布された接着剤により、前記アクチュエータ本体が支持されている請求項5記載の振動型アクチュエータ。
【請求項7】
前記ホルダに形成された凹部の裏面に凸部が形成されており、前記支持部材が前記凸部を介して外部の機器に対して位置決めされる請求項6記載の振動型アクチュエータ。
【請求項8】
前記凹部と前記凸部とが表裏一体をなしており、前記凹部と前記凸部とが取付基準部として機能する請求項7記載の振動型アクチュエータ。
【請求項9】
フレキシブルケーブルが前記圧電素子の周囲に設けられ、フレキシブルケーブル内の導電パターンと前記圧電素子の電極とが半田で固定されており、前記ホルダ及びカバー上の前記半田と対向する部分に逃げ部が形成されている請求項5記載の振動型アクチュエータ。
【請求項10】
前記ホルダと前記カバーには、前記フレキシブルケーブルを外部に引き出す段差部が形成されている請求項5記載の振動型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−259214(P2010−259214A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106105(P2009−106105)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】