説明

振動式転圧機

【課題】 振り子の回転による原動機側と起振機側のプーリー間の軸間距離の変動を減少させてベルトへの悪影響を解消すると共に、防振ゴムの内部抵抗による振動の減衰を解消して充分な振動を発生し得るようにせんとするものである。
【課題手段】 転圧板、原動機および起振体からなり、原動機を転圧板上に防振手段を介して載架し、起振体を転圧板上に固定的に配置し、起振体は、同軸上に軸支したプーリーと振り子を備え、該起振体側のプーリーは前記原動機の出力軸に連結したプーリーにベルトを介して連結され、起振体側のプーリーは振り子の軸に対してプーリーの中心が振り子の重心側に位置するように偏心してプーリー軸に軸支されていることを特徴とし、起振体側のプーリの偏心量は、振動の振幅の1/2であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、路盤等に敷設された採石、砂、土等を転圧し、或いはアスファルト舗装の仕上げ等のために使用される振動式転圧機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路上等に敷設された採石、砂、土等の表層を転圧し、或いはアスファルト舗装の仕上げのために使用される振動式転圧機は公知であり、広く実用に供されている。振動式転圧機は、路面上に載置される転圧板と該転圧板上に振動吸収手段を介して取付けられる原動機と転圧板に連結された起振手段と、前記原動機の出力を起振手段に伝達する動力伝導手段とから構成されるものであり、例えば特開2000−192416公報に開示されている。
【0003】
従来公知の振動式転圧機は、起振機のプーリー軸に重錘からなる振り子を軸支し、プーリー軸をベルトを介して前記原動機で駆動回転して、振り子の回転によって起振させ、その振動を転圧板に伝達して転圧を行うようしてある。ベルトは、原動機側と起振機側のプーリー間に張り渡されるが、二つのプーリーの軸間距離が、振り子の回転に伴って大きく変動するため、ベルトに激しい波打ち運動が発生し、ベルトの消耗、破損が著しかった。例えば、80ヘルツから100ヘルツの振動の振動式転圧機のベルトは非常に過酷な条件下にあり、このため転圧板の振幅は1.5から1.9mmが限界であった。
【0004】
又、起振機を含む転圧板と原動機は、防振ゴムを介して結合され、転圧板の振動を防振ゴムで吸収して、転圧板の振動から原動機を隔離する構造となっている。しかしながら、防振ゴムを介して隔離される原動機側と転圧板を含む起振機側の質量がほぼ等しいか或いは原動機側の質量が大きい場合、防振ゴムの内部抵抗によって転圧板の振動が減衰され、充分な振動を発生させることができない問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−192416
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、振り子の回転による原動機側と起振機側のプーリー間の軸間距離の変動を減少させてベルトへの悪影響を解消すると共に、防振ゴムの内部抵抗による振動の減衰を解消して充分な振動を発生し得るようにせんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、転圧板、原動機および起振体からなり、原動機を転圧板上に防振手段を介して載架し、起振体を転圧板上に固定的に配置し、起振体は、同軸上に軸支したプーリーと振り子を備え、該起振体側のプーリーは前記原動機の出力軸に連結したプーリーにベルトを介して連結され、起振体側のプーリーは振り子の軸に対してプーリーの中心が振り子の重心側に位置するように偏心してプーリー軸に軸支されていることを特徴とし、起振体側のプーリの偏心量は、振動の振幅の1/2であることを特徴とする。尚、この明細書において、振動の振幅は、両振幅を意味している。尚、この明細書において振動の幅とは両振幅を意味している。
【0008】
転圧板、原動機および起振体からなり、原動機を転圧板上に防振手段を介して載架し、起振体を転圧板上に固定的に配置し、起振体は、同軸上に軸支したプーリーと振り子を備え、該起振体側のプーリーは前記原動機の出力軸に連結したプーリーにベルトを介して連結され、転圧板上に並列的に配置された防振ゴムおよび金属バネの組合せからなる防振手段を介して原動機を支持するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の振動式転圧機によれば、起振機側のプーリーをその中心から偏心してプーリー軸に取付けてあるので、回転数が一定回転を越えるとき回転と振動が180゜移相した状態となるため、プーリーは実質的に静止した状態となり、原動機側のプーリーとの軸間距離が安定し、ベルトの波打ち現象が解消され、ベルトの摩耗、損傷、破損を解消することができる。
【0010】
又、原動機側と転圧板とを、並列的に配置された防振ゴムと金属バネの組合せからなる防振手段を介して連結し、原動機側の重量を防振ゴムとバネで共同して負担するようにしてあるので、防振ゴムの内部抵抗による振動の減衰を抑制し、振動速度、加速度および振幅の大きな振動を得ることができ、作業効率が良く、転圧力が増加し、大きな振幅の起振体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の好ましい実施の形態を、以下に詳細に説明する。図において(1)は、この発明にかかる振動式転圧機を示し、(2)は原動機であり転圧板(3)上に防振ゴム(4)と金属バネ(5)を介して載架される。(6)は起振体であり、プーリー(7)と重錘からなる振り子(8)およびこれらを軸支するプーリー軸(9)からなり、前記転圧板(3)上に固定される。起振体側のプーリー(7)は、ベルト(10)を介して前記原動機側のプーリー(11)に連結され、駆動力が伝達される。原動機側のプーリー(11)は、好ましくは遠心クラッチを介して原動機の出力軸に連結される。尚、ベルトはVベルトが好ましい。
【0012】
図2,3を参照して、この発明はかかる起振式転圧機(1)において、起振機側のプーリー(7)をその中心(7c)から偏心させてプーリー軸(9)に軸支させたことを特徴とする。プーリーの中心(7c)からプーリー軸(9)までの偏心量(C)は、振幅の1/2とする。又、偏心方向は、振り子の軸に対してプーリーの中心(7c)が振り子の重心(8a)側に位置するように偏心させる。このように、起振体側のプーリー(7)を振動振幅の1/2偏心させてプーリー軸(9)に取付けることにより、起動時の不安定な状態を超え、一定の回転域(振動域)に達したとき、調和振動状態となる。この調和振動状態においては、回転と振動、すなわち振り子(8)の回転と起振体(6)の振動が、180゜移相し、一定の振り幅(両振幅)となる。従って、起振体側のプーリーをこの振り幅(両振幅)の1/2量だけ偏心させることにより、プーリーは静止状態の位置関係に保たれることになる。図示の実施例において、振り幅は2.4mmに、偏心量は1/2の1.2mmにそれぞれ設定されている。
【0013】
図2を参照して、図2(a)は、静止状態を示し、プーリー軸(9)に対し、プーリー(7)の中心(7c)は、偏心量Cだけ偏心している。原動機(2)を始動してベルト(10)を介して起振体側のプーリー(7)を駆動回転させる。始動直後は、不安定な回転状態にあるが、この不安定な状態を超えて一定の回転域(振動域)に達すると、振り子の回転と起振体の振動が180゜移相し、一定の振り幅となり調和振動状態となる。この調和振動状態における振り子(8)と起振体(6)の動きを図2(b)、(c)、(d)、(e)を参照しつつ説明する。回転はbからc、d、eと逆時計回りに回転する。
【0014】
調和振動状態においては、図2bに示すように振り子(8)は垂直方向上方に向かっているのに対し、起振体(6)はこれと逆に垂直方向下方に向かっており、静止状態(図2a)に対して振幅C’だけ下降しており、この振幅C’は、プーリー(7)の偏心量と一致している。又図2cでは、振り子(8)は水平方向左方向に向かっているのに対し、起振体(6)は水平方向右方向に向かっており、静止状態に対して右方向にC’振動している。図2dでは、振り子(8)と起振体(6)は前記図2bとは逆になっており、起振体(6)は静止状態に対して幅C’だけ上昇している。最後に、図2eでは、振り子(8)と起振体(6)は図2cとは逆になっており、起振体(6)は静止状態に対して幅C’だけ左方向に移動している。従って、図2b、dの間ではC’の2倍の振幅の振動が生じていることとなり、又図2c、eの間でも同様にC’の2倍の振幅の振動が発生している。前述したように、C’は、1.2mmであるので、これの2倍の2.4mmの振幅の振動が発生することになる。
【0015】
この調和振動状態において、プーリー(7)の回転中心は、図2bからeに示すように静止状態におけるプーリー軸(9)の軸心と一致し、静止した状態となっている。かくして、原動機側のプーリー(11)と起振機側のプーリー(7)との軸間距離は、実質的に変動がなく、静止した状態となっているため、両プーリー間に架け渡されたベルト(10)に波打ち現象等が発生するおそれがなく、ベルトの損傷、破損を回避することが可能となる。
【0016】
原動機(2)と転圧板(3)は、前述したように防振ゴム(4)を介して支持されると共に、金属バネ(5)を介して同時に支持される。すなわち、原動機(2)は転圧板(3)上に、並列的に配置された防振ゴム(4)と金属バネ(5)の組合せからなる防振手段で支持されている。防振ゴム単独で支持する場合、前述したようにゴムの内部抵抗により振動が減衰されるため、支持質量が大きくなると減衰率も高くなり、充分な振動を得ることができなくなる問題があった。この発明のように、防振ゴムと金属バネを併用することにより、充分な支持質量を確保しつつ振動の減衰率の上昇を抑制し、充分な振動を得ることが可能となる。
【0017】
防振ゴムと金属バネの組合せは、図示の両者を分離した構造に限られるものではなく、防振ゴムの外周に金属バネを配置しても、逆に防振ゴムの内部に金属バネを挿入する構造としても良い。このように、防振ゴムと金属バネを組み合わせた支持構造とすることにより、起振体の振幅も大きくなるため転圧力が増加し、転圧時の前進速度も速くなり、作業効率が良くなる。これらの結果、上部構造物の質量に制限がなくなり、本来の設計思想に沿った振動転圧力と効率を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明にかかる転圧機の側面図
【図2】この発明の振り子、プーリーおよび起振体の動作を示す説明図
【図3】振り子とプーリーの取付け構造を示す断面図
【符号の説明】
【0019】
(1)転圧機
(2)原動機
(3)転圧板
(4)防振ゴム
(5)金属バネ
(6)起振体
(7)プーリー
(8)振り子
(9)プーリー軸
(10)ベルト
(11)プーリー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
転圧板、原動機および起振体からなり、原動機を転圧板上に防振手段を介して載架し、起振体を転圧板上に固定的に配置し、起振体は、同軸上に軸支したプーリーと振り子を備え、該起振体側のプーリーは前記原動機の出力軸に連結したプーリーにベルトを介して連結され、起振体側のプーリーは振り子の軸に対してプーリーの中心が振り子の重心側に位置するように偏心してプーリー軸に軸支されていることを特徴とする振動式転圧機。
【請求項2】
起振体側のプーリの偏心量が、振動の振幅の1/2であることを特徴とする請求項1記載の転圧機。
【請求項3】
転圧板、原動機および起振体からなり、原動機を転圧板上に防振手段を介して載架し、起振体を転圧板上に固定的に配置し、起振体は、同軸上に軸支したプーリーと振り子を備え、該起振体側のプーリーは前記原動機の出力軸に連結したプーリーにベルトを介して連結され、転圧板上に並列的に配置された防振ゴムおよび金属バネの組合せからなる防振手段を介して原動機を支持するようにしたことを特徴とする振動式転圧板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−9458(P2006−9458A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189678(P2004−189678)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(504249134)大進機械(上海)有限公司 (1)
【Fターム(参考)】