振動発生装置
【課題】小型薄型化、製作の容易に適し、バネと可動子とで構成される振動系の周波数特性を容易に変更できる組合せバネを有した振動発生装置を提供する。
【解決手段】本振動発生装置1は組合せバネを備える。組合せバネは、主バネ6と、主バネと異なる材料の補助バネ9とを有する。主バネは、筐体8a,8bに対して固定された外周リング部6aと、外周リング部に対して径方向内側に間隔を隔てて配置されヨーク外周部7bに固定された内周リング部6bと、外周リング部の内周から径方向内側に突出形成された固定端側端部6dと、内周リング部の外周から径方向外側に突出形成された可動端側端部6eと、固定端側端部から中心軸C周りの一定の周方向に延出し可動端側端部に繋がるアーム部とを有する。補助バネが、固定端側端部と、当該固定端側端部と前記一定の周方向と逆の周方向に隣接する可動端側端部との間、又は内周リング部とアーム部との間に架けられる。
【解決手段】本振動発生装置1は組合せバネを備える。組合せバネは、主バネ6と、主バネと異なる材料の補助バネ9とを有する。主バネは、筐体8a,8bに対して固定された外周リング部6aと、外周リング部に対して径方向内側に間隔を隔てて配置されヨーク外周部7bに固定された内周リング部6bと、外周リング部の内周から径方向内側に突出形成された固定端側端部6dと、内周リング部の外周から径方向外側に突出形成された可動端側端部6eと、固定端側端部から中心軸C周りの一定の周方向に延出し可動端側端部に繋がるアーム部とを有する。補助バネが、固定端側端部と、当該固定端側端部と前記一定の周方向と逆の周方向に隣接する可動端側端部との間、又は内周リング部とアーム部との間に架けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、携帯電話やPDAなどの携帯端末、ゲーム用コントローラなど操作機器に振動発生装置が用いられている。
かかる用途の振動発生装置としては、特許文献1、2にも記載されるように、次のような構成、作用を有するものが利用されている。
すなわち、板バネにより支持されたマグネット及びヨークにより構成される第1可動子と、筐体に固定されたコイルにより構成される固定子、又はこの固定子に代え振動板に固定されたコイルにより構成される第2可動子とを備えて構成される。
そして、マグネットにより発生する磁力とコイルに流れる電流により発生する電磁力との作用により、第1可動子が振動を発生し、第2可動子が音響を発生する。
【0003】
従来、この種の振動発生装置は、板バネと可動子とで構成される振動系の共振周波数とほぼ同一の周波数をコイルに通電して、前記振動系を共振させる方式が採用されている(特許文献3)。
【0004】
図16に、鋼製板バネを使用した従来の振動発生装置により得られる振動力〔N〕の周波数特性図を示した。
図16に示されるように、振動発生装置の周波数特性は、共振周波数をピークとした尖鋭な曲線により示されており、共振周波数では大きな振動力を得ることが可能であるが、入力周波数が共振周波数から外れるにつれて得られる振動力は弱くなってしまう。したがって、共振周波数より高帯域及び低帯域での実用度は高くなく、もっぱら共振周波数付近での使用に限定される。
振動に対する人体の感覚は周波数に依存することから、使用用途により最適な振動周波数は異なり、また、単一振動数の振動では表現力に欠けるという問題がある。
したがって、広帯域に亘って周波数に依る変化の少ない周波数特性への改善(周波数特性曲線の平坦化)が課題となる。かかる改善により広帯域での実用度を向上することができる。
【0005】
板バネと可動子とで構成される振動系の周波数特性は、可動部重量・バネ定数・振動系の減衰特性に依存する。可動部重量は製品の大きさにより限界が決まり、設計自由度が低い。したがって、上記課題を解決するため、板バネの材料の選択、組合せを試みることが得策である。
特許文献4には、可動子を支持するバネの材料として、種々の樹脂材料を挙げるとともに、異なる素材の層構造を採用することも記載されている。
特許文献5には、第1バネと第2バネとを直列に繋げて組み合わせたバネが記載され、第1バネ及び第2バネの材料として、金属薄板、ゴム、樹脂等の弾性体を挙げている。
特許文献6には、弾性接合部を介してアーム部を内周部及び外周部に連結し、弾性接合部とアーム部とを硬度のことなるエラストマー材で構成することが記載されている。
【特許文献1】特許第3375233号公報
【特許文献2】特開2003−9495号公報
【特許文献3】特開平9−205763号公報
【特許文献4】特開2005−303895号公報
【特許文献5】特開平10−14195号公報
【特許文献6】特開2004−229173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上掲した特許文献4〜6に記載の組合せバネにあっては、材料の選択、組合せにより振動系の周波数特性を選択することができるが、直列の連結構造や層構造によるため、小型薄型化もしくは製作の容易に適しておらず、小型薄型化、製作の容易に配慮しつつ上記周波数特性の改善を図ることが望まれる。
【0007】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、小型薄型化、製作の容易に適し、バネと可動子とで構成される振動系の周波数特性を容易に変更できる組合せバネを有した振動発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、中心軸方向の一端において振動板その他の部材に固定されたコイルと、前記コイルに対してその他端側から臨み前記中心軸方向に振動するマグネット及びヨークにより構成される可動子と、前記可動子を前記中心軸方向に振動可能に弾性支持する組合せバネと、前記コイル、前記可動子及び前記組合せバネを収める筐体とを備え、
前記ヨークの一部は前記コイルの径方向の外側に配置されるヨーク外周部を構成し、
前記組合せバネは、主バネと、補助バネとを有し、
前記主バネは、前記筐体に対して固定された外周リング部と、前記外周リング部に対して前記径方向内側に間隔を隔てて配置され前記ヨーク外周部に固定された内周リング部と、前記外周リング部の内周から前記径方向内側に突出形成された固定端側端部と、前記内周リング部の外周から前記径方向外側に突出形成された可動端側端部と、前記固定端側端部から前記中心軸周りの一定の周方向に延出し前記可動端側端部に繋がるアーム部とを有し、
前記主バネは、1つの前記固定端側端部、これに連続する1つの前記アーム部及びこれに連続する1つの前記可動端側端部とからなる組を、一周を3以上に分割してできる異なる角度領域に1組ずつ配して前記内周リング部を3アーム以上で支持し、
前記補助バネは、前記主バネと異なる材料により構成され、
前記補助バネが、前記固定端側端部と、当該固定端側端部と前記一定の周方向と逆の周方向に隣接する他の組の前記可動端側端部との間、又は前記内周リング部と前記アーム部との間に架けられ前記主バネに付設されてなる振動発生装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記主バネの損失係数より前記組合せバネの損失係数が大きくされてなる請求項1に記載の振動発生装置である。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記主バネのバネ定数より前記組合せバネのバネ定数が大きくされてなる請求項1又は請求項2に記載の振動発生装置である。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記主バネが金属板により構成され、前記補助バネが高分子材料により構成されてなる請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の振動発生装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、主バネの固定部が外周リング部及び内周リング部により構成され、主バネの弾性変形部が固定端側端部、アーム部及び可動端側端部により構成されており、補助バネを固定端側端部とこれに隣接する可動端側端部との間に架けるため、比較的小片の補助バネで簡便に構成できる。また、そのような比較的小片の材料によって、変位の大きい固定端側端部と可動端側端部との間にアーム部と並列に補助バネを付設することができる。
変位の大きい固定端側端部と可動端側端部との間にアーム部と並列に補助バネを付設することができるので、効果的に組合せバネ全体の損失係数(従って減衰率)を増大したり、効果的に組合せバネ全体のバネ定数を増大したりすることができる。
減衰率やバネ定数の増大により、広帯域に亘って周波数に依る変化の少ない周波数特性への改善(周波数特性曲線の平坦化)が図られ、かかる改善により振動発生装置の広帯域での実用度を向上することができる。
外周リング部と内周リング部との間隔内に比較的小片の補助バネを主バネに対して並列的に付設することにより、外周リング部と筐体との固定及び内周リング部とヨーク外周部との固定に干渉することなく、かつ、径方向への要スペースの増大による大型化を来たすことなく好個の特性の組合せバネを構成することができる。
また、補助バネを用いず主バネだけ用いた振動発生装置も得ることができる状況を壊さずに、主バネに補助バネを付設することによって、さらには補助バネの材料を選択することによって、製造性良好に多様な特性の組合せバネを備えた振動発生装置を得ることができる。
以上説明したように本発明によれば、小型薄型化、製作の容易に適し、バネと可動子とで構成される振動系の周波数特性を容易に変更でき、従って容易に特性改善や用途に応じた特性選択が可能な組合せバネを有した振動発生装置が得られるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。図1は、本発明の一実施形態に係る振動発生装置の斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係る振動発生装置の分解斜視図である。図3、図4は、本発明の一実施形態に係る振動発生装置に用いられる主バネの平面図である。図5は、本発明の一実施形態に係る振動発生装置の垂直断面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施形態の振動発生装置1は、ベース筐体2と、コイル3と、センターヨーク4と、マグネット5と、主バネ6と、アウターヨーク7と、上部外周筐体8aと、下部外周筐体8bと、補助バネ9とを備える。センターヨーク4と、マグネット5と、アウターヨーク7とで可動子が構成される。主バネ6と補助バネ9とで組合せバネが構成される。主バネ6は金属板により構成され、補助バネ9は高分子材料により構成される。
コイル3は固定子に構成される。コイル3は、ベース筐体2の円形板部材2aの中央に固定される。円形板部材2aが振動板となるように、円形板部材2aを筐体本体に対して可動支持しても良い。この場合、コイル3は前述した第2可動子となる。
【0015】
図2及び図5に示すように、各部は円形に形成されているとともに、コイル3の中心軸Cを中心に同心状に配置される。中心軸Cに沿ってコイル3が固定される一端側を矢印Aにより、他端側を矢印Bにより示した。
センターヨーク4と、マグネット5と、アウターヨーク7とからなる可動子は、コイル3に対してその他端側(B側)から臨むように配置される。主バネ6は、かかる可動子を中心軸C方向に振動可能に弾性支持する。
【0016】
センターヨーク4及びマグネット5は、コイル3の内径より小さく、かつ、互いに略同一径の円盤又は円柱状に形成されている。アウターヨーク7の中央部7aは、コイル3の外径より大きい円盤状に形成されている。マグネット5の一端側と他端側とは反対磁極を構成する。マグネット5の一端側(A側)にセンターヨーク4が接合する。マグネット5の他端側(B側)にアウターヨーク7の中央部7aが接合する。
【0017】
アウターヨーク7は、中央部7aに連続してヨーク外周部7bを構成している。ヨーク外周部7bは、一端側(A側)において中央部7a対して隆起し、他端側(B側)において中央部7a対して同一面に形成されており、従って、ヨーク外周部7bは中央部7aより中心軸方向の寸法が大きくなっている。
センターヨーク4は、コイル3の径方向の内側に配置される。一方、ヨーク外周部7bは、コイル3の径方向の外側に配置される。
【0018】
主バネ6は、コイル3の径方向の外側に配置され、該径方向に延在する。
上部外周筐体8aと、下部外周筐体8bとは、同径の円筒状で上下に連接され、両者の間に主バネ6の外周リング部6aを挟んで筐体に固定する。
ヨーク外周部7bの一端側(A側)の端面に、外周側が切り欠かれた段差が形成され、その段差を埋めるように主バネ6の内周リング部6bが配置されて、内周リング部6bがヨーク外周部7bに固定される。
【0019】
図3に示すように、主バネ6は、外周リング部6a及び内周リング部6bがそれぞれリング状に形成され径方向に間隔を隔てて配置されたリング状の板バネである。すなわち、外周リング部6aの内径が内周リング部6bの外径より大きくされることによって、両者は径方向に間隔を隔てている。その間隔に、固定端側端部6d、アーム部6c及び可動端側端部6eにより構成される弾性変形部を配置し、外周リング部6aと内周リング部6bとを繋いでいる。
【0020】
固定端側端部6dは、外周リング部6aの内周から径方向内側に突出形成されている。可動端側端部6eは、内周リング部6bの外周から径方向外側に突出形成されている。
アーム部6cは、固定端側端部6dから中心軸C周りの一定の周方向(図3及び図4において反時計回り方向)に延出し可動端側端部6eに繋がる。
固定端側端部6dの突出幅6fは、アーム部6cの幅6gより大きい。可動端側端部6eの突出幅6hは、アーム部6cの幅6gより大きく、固定端側端部6dの突出幅6fより小さい。
【0021】
バネ鋼板に3つの同形状のスパイラル溝6kを順次120度ずらした配置で打ち抜くことによって、以上のような構成を各120度ずつの領域に構成している。スパイラル溝6kは、均一で狭小な溝幅で構成されている。スパイラル溝6kは、異なる半径位置で周方向にそれぞれ延在する外周溝6k−1,内周溝6k−2と、これらの端部同士を繋ぎ径方向に延在する径溝6k−3により構成される。径溝6k−3の外端に連続して外周溝6k−1が周方向に延びている。径溝6k−3の内端に連続して内周溝6k−2が周方向に延びている。
このような主バネ6によれば、外周リング部6aと内周リング部6bとの距離が短い、コンパクトなリング状板バネを構成することができる。
主バネ6は、1つの固定端側端部6d、これに連続する1つのアーム部6c及びこれに連続する1つの可動端側端部6eとからなる組を、一周を3つに分割してできる異なる120度ずつ角度領域に1組ずつ配して内周リング部6bを3アームで支持する。
3アームでなく、4アーム以上としてもよい。3アーム以上とするのは、可動子の振動軸がぶれないように安定的に支持するためである。
【0022】
図4に3つの補助バネ9,9,9の外形を破線により示した。図4に示すように、3つの補助バネ9,9,9がそれぞれ、固定端側端部6dと、当該固定端側端部6dと前記一定の周方向と逆の周方向(図3及び図4において時計回り方向)に隣接する他の組の可動端側端部6eとの間に架けられ主バネ6に付設されている。補助バネ9の両端は、固定端側端部6dと可動端側端部6eとに貼付されて固定される。
なお、図4に示すD−D線に沿って切った主バネ6と補助バネ9とからなる組合せバネの断面が図5に示される。
本振動発生装置1は、以上説明した構成を有し、コイル3に駆動電力が入力されると、センターヨーク4、マグネット5及びアウターヨーク7からなる可動子が、中心軸C方向に振動する。
【0023】
以上のような本実施形態の振動発生装置1によれば、小型薄型化、製作の容易に適し、バネと可動子とで構成される振動系の周波数特性を容易に変更でき、従って容易に特性改善や用途に応じた特性選択が可能な組合せバネを有した振動発生装置が得られるという効果がある。
補助バネの付加により組合せバネの減衰率やバネ定数を増大させ、広帯域に亘って周波数に依る変化の少ない周波数特性への改善(周波数特性曲線の平坦化)を図り、かかる改善により振動発生装置の広帯域での実用度を向上することができる。そのような実施例1,2及び活用例を以下に示す。
【実施例】
【0024】
図6は、実施例1,2に係る主バネ、補助バネ及び組合せバネの各バネ定数、主バネ及び組合せバネの各損失係数を記載した表である。
その他の条件としては、実施例1は外径φ60〔mm〕、共振周波数37.2〔Hz〕であり、実施例2は外径φ24〔mm〕、共振周波数52〔Hz〕であり、実施例1,2ともに上記実施形態に従うものである。
また、補助バネには、不織布の基材にアクリル系樹脂を主成分とする粘着剤を塗布して作成したテープを使用した。
図6の表からわかるように、主バネに補助バネを付設することによって、バネ定数、損失係数ともに増大している。
【0025】
周波数特性を評価するため、図7に、Q値の定義を示した。Q値は共振の鋭さを表す値で尖鋭度ともいう。
図7(a)に示したQ値の定義式の第1項と第2項の関係でわかるように、Q値と損失係数ηは反比例の関係にある。この関係性と図6の表を併せ見ればわかるように、実施例1,2ともに損失係数ηが増大したことによって、Q値を小さく、すなわち、共振のピークを抑えることができることとなる。
【0026】
図8は実施例1に係る可動子の変位ゲイン〔mm/V〕の周波数特性図、図9は実施例1に係る可動子の振動力〔N〕の周波数特性図、図10は実施例1に係る可動子の変位〔mm〕の周波数特性図である。
図11は実施例2に係る可動子の変位ゲイン〔mm/V〕の周波数特性図、図12は実施例2に係る可動子の振動力〔N〕の周波数特性図、図13は実施例2に係る可動子の変位〔mm〕の周波数特性図である。
図8〜図13において、破線曲線は比較のための従来例である。図8〜図10における従来例は実施例1の構成に対し補助バネを除いたものとし、その他は実施例1と同構成である。図11〜図13における従来例は実施例2の構成に対し補助バネを除いたものとし、その他は実施例2と同構成である。したがって、各従来例に適用されるバネ全体は、図6の表に示した主バネの特性を有する。なお、本発明の実施例1,2の方がバネ定数が大きいため、図10及び図13に示すように従来例と同程度の最大振幅となるように、本発明の実施例1,2のコイルに入力する駆動電力を従来例のそれより大きくしている。
【0027】
図8に示すように実施例1にあっては、最大ゲインGmaxをDCゲインG1の2.3倍程度と、従来例に比較しても大きく抑えている。
図9に示すように実施例1にあっては従来例に比較して、特性曲線の裾野が広がり(すなわち、ピークからの傾斜ラインが緩やかになり)、共振周波数に対する高帯域及び低帯域の双方において、振動力が向上している。
図10に示すように実施例1にあっては従来例に比較して、特に共振周波数に対する低帯域において振幅変位量が向上している。
【0028】
図11に示すように実施例2にあっては、最大ゲインGmaxをDCゲインG1の1.4倍程度と、従来例に比較しても大きく抑えている。
図12に示すように実施例2にあっては従来例に比較して、特性曲線の裾野広がり(すなわち、ピークからの傾斜ラインが緩やかになり)、共振周波数に対する高帯域及び低帯域の双方において、振動力が向上している。
図10に示すように実施例1にあっては従来例に比較して、特に共振周波数に対する低帯域において振幅変位量が向上している。
【0029】
図8〜図13からわかるように実施例1,2のいずれにおいても各3つの周波数特性のQ値は小さくなり、周波数特性曲線の平坦化が図られている。
このように、周波数特性曲線の平坦化が図られる、すなわち、広帯域に亘って周波数に依る変化の少ない周波数特性への改善が図られることにより、振動発生装置の広帯域での実用度が広がる。
実施例1,2で示されるように、本発明では最大振幅を抑えることができるため、部品同士の干渉が生じない程度まで入力電圧を上げることができる。すなわち、可動子の許容可動範囲が同じであっても、本発明によれば従来よりも入力電圧を上げることができ、その結果、従来よりも広帯域で大きな振動力を得ることが可能となる。
したがって、専ら共振周波数付近での使用に限定されていた従来の振動発生装置に対し、広帯域での使用が可能となる。共振周波数に対する高帯域及び低帯域における出力の低下が改善される。
広帯域での使用が可能となるので、音声出力を含め振動による表現力が向上する。
音声出力装置を構成するにあたっては、上述したベース筐体2の底面をボードやパネル(本振動発生装置が搭載される親機器の筐体等を含む)に付けて本振動発生装置の発生振動を当該ボードやパネルに伝えることによって、当該ボードやパネルを振動板とした音声出力装置を構成することができる。従来に比較して高音域でも低音域でも大きな音出力を得ることができ、低音出力から高音出力まで利用性が広がる。
【0030】
図14は、実施例1に係る可動子の音圧レベル(SPL)〔dbSPL〕の周波数特性図である。図14からわかるように、実施例1では、[1/(2*π)]*√(K/m)で表される共振周波数を約40〔Hz〕に設定したことにより、100〔Hz〕より低域〜1万〔Hz〕超まで広帯域での音声出力が可能となった。このように、所望の周波数帯域の最低値又は最低値より低い周波数を共振周波数とする振動発生装置を用いることにより、所望の周波数帯域での音声出力が可能となる。
【0031】
図15に本発明の振動発生装置の活用例を示す。図15(a)は、本実施形態の振動発生装置1を搭載した一例の移動通信機器11の斜視図である。本振動発生装置1のベース筐体2の底面が移動通信機器11の筐体に固定されている。本振動発生装置1によれば、広帯域で駆動され広帯域の振動を出力することができるので、振動表現力が向上し、例えば使用者一人一人が最も感じ易い帯域の呼び出し振動を選択することができるなど、使用者の好みに応じた帯域の呼び出し振動を発生させることができる。
【0032】
図15(b)は、本実施形態の振動発生装置1を搭載した一例のアミューズメント機器12の斜視図である。本振動発生装置1のベース筐体2の底面がアミューズメント機器12の握り部で筐体に固定されている。本振動発生装置1によれば、広帯域で駆動され広帯域の振動を出力することができるので、振動表現力が向上し、例えばシューティングゲームで大きな銃で撃った感覚と小さな銃で撃った感覚の違いを振動周波数を変更することで表現することができるなど、より現実的なゲームの臨場感を使用者に与えることができる。
【0033】
図15(c)は、本実施形態の振動発生装置1を搭載した一例のタッチパネル式情報入力装置13の斜視図である。本振動発生装置1のベース筐体2の底面がタッチパネル式情報入力装置13の操作部裏面で筐体に固定されている。タッチパネル式情報入力装置13は、操作ボタンは映像であるため機械的操作ボタンのような操作感触が得られない。しかし、本振動発生装置1によれば、広帯域で駆動され広帯域の振動を出力することができるので、振動表現力が向上し、例えば操作ボタン映像を押した時に、機械的操作ボタンのような操作感触を表現することができるなど、様々な感触をより現実的に表現することができる。
【0034】
図15(d)は、本実施形態の振動発生装置1を搭載した一例の音声出力装置14の斜視図である。本振動発生装置1のベース筐体2の底面が音声出力装置14のパネル背面に固定されている。本振動発生装置1によれば、広帯域で駆動され広帯域の振動を出力することができるので、音声信号を入力することにより、入力した音声信号の周波数振動を発生させることができる。したがって、本振動発生装置1をあらゆる機器のパネルや筐体等に取り付けることによって、本振動発生装置1を音声発生源とし、取り付けられたパネルや筐体等を振動板とした音声出力装置(音声出力機能付き機器)を構成することができる。
【0035】
なお、補助バネは、上記実施形態の架設位置に代えて 内周リング部6bとアーム部6cとの間に架設してもよい。この場合、補助バネの架設位置を周方向に沿って移動することによって、同じ補助バネでもその効き具合を自由に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る振動発生装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る振動発生装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る振動発生装置に用いられる主バネの平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る振動発生装置に用いられる主バネの平面図である。補助バネの外形を破線により示す。
【図5】本発明の一実施形態に係る振動発生装置の垂直断面図である。
【図6】本発明の実施例1,2に係る主バネ、補助バネ及び組合せバネの各バネ定数、主バネ及び組合せバネの各損失係数を記載した表である。
【図7】Q値(尖鋭度)の定義である。
【図8】本発明の実施例1に係る可動子の変位ゲイン〔mm/V〕の周波数特性図である。
【図9】本発明の実施例1に係る可動子の振動力〔N〕の周波数特性図である。
【図10】本発明の実施例1に係る可動子の変位〔mm〕の周波数特性図である。
【図11】本発明の実施例2に係る可動子の変位ゲイン〔mm/V〕の周波数特性図である。
【図12】本発明の実施例2に係る可動子の振動力〔N〕の周波数特性図である。
【図13】本発明の実施例2に係る可動子の変位〔mm〕の周波数特性図である。
【図14】本発明の実施例1に係る可動子の音圧レベル(SPL)〔dbSPL〕の周波数特性図である。
【図15】本発明の振動発生装置の活用例の斜視図である。
【図16】従来例に係る可動子の振動力〔N〕の周波数特性図である。
【符号の説明】
【0037】
1 振動発生装置
2 ベース筐体
2a 円形板部材
3 コイル
4 センターヨーク
5 マグネット
6 主バネ
6a 外周リング部
6b 内周リング部
6c アーム部
6d 固定端側端部
6e 可動端側端部
7 アウターヨーク
7b ヨーク外周部
8a 上部外周筐体
8b 下部外周筐体
9 補助バネ
C 中心軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、携帯電話やPDAなどの携帯端末、ゲーム用コントローラなど操作機器に振動発生装置が用いられている。
かかる用途の振動発生装置としては、特許文献1、2にも記載されるように、次のような構成、作用を有するものが利用されている。
すなわち、板バネにより支持されたマグネット及びヨークにより構成される第1可動子と、筐体に固定されたコイルにより構成される固定子、又はこの固定子に代え振動板に固定されたコイルにより構成される第2可動子とを備えて構成される。
そして、マグネットにより発生する磁力とコイルに流れる電流により発生する電磁力との作用により、第1可動子が振動を発生し、第2可動子が音響を発生する。
【0003】
従来、この種の振動発生装置は、板バネと可動子とで構成される振動系の共振周波数とほぼ同一の周波数をコイルに通電して、前記振動系を共振させる方式が採用されている(特許文献3)。
【0004】
図16に、鋼製板バネを使用した従来の振動発生装置により得られる振動力〔N〕の周波数特性図を示した。
図16に示されるように、振動発生装置の周波数特性は、共振周波数をピークとした尖鋭な曲線により示されており、共振周波数では大きな振動力を得ることが可能であるが、入力周波数が共振周波数から外れるにつれて得られる振動力は弱くなってしまう。したがって、共振周波数より高帯域及び低帯域での実用度は高くなく、もっぱら共振周波数付近での使用に限定される。
振動に対する人体の感覚は周波数に依存することから、使用用途により最適な振動周波数は異なり、また、単一振動数の振動では表現力に欠けるという問題がある。
したがって、広帯域に亘って周波数に依る変化の少ない周波数特性への改善(周波数特性曲線の平坦化)が課題となる。かかる改善により広帯域での実用度を向上することができる。
【0005】
板バネと可動子とで構成される振動系の周波数特性は、可動部重量・バネ定数・振動系の減衰特性に依存する。可動部重量は製品の大きさにより限界が決まり、設計自由度が低い。したがって、上記課題を解決するため、板バネの材料の選択、組合せを試みることが得策である。
特許文献4には、可動子を支持するバネの材料として、種々の樹脂材料を挙げるとともに、異なる素材の層構造を採用することも記載されている。
特許文献5には、第1バネと第2バネとを直列に繋げて組み合わせたバネが記載され、第1バネ及び第2バネの材料として、金属薄板、ゴム、樹脂等の弾性体を挙げている。
特許文献6には、弾性接合部を介してアーム部を内周部及び外周部に連結し、弾性接合部とアーム部とを硬度のことなるエラストマー材で構成することが記載されている。
【特許文献1】特許第3375233号公報
【特許文献2】特開2003−9495号公報
【特許文献3】特開平9−205763号公報
【特許文献4】特開2005−303895号公報
【特許文献5】特開平10−14195号公報
【特許文献6】特開2004−229173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上掲した特許文献4〜6に記載の組合せバネにあっては、材料の選択、組合せにより振動系の周波数特性を選択することができるが、直列の連結構造や層構造によるため、小型薄型化もしくは製作の容易に適しておらず、小型薄型化、製作の容易に配慮しつつ上記周波数特性の改善を図ることが望まれる。
【0007】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、小型薄型化、製作の容易に適し、バネと可動子とで構成される振動系の周波数特性を容易に変更できる組合せバネを有した振動発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、中心軸方向の一端において振動板その他の部材に固定されたコイルと、前記コイルに対してその他端側から臨み前記中心軸方向に振動するマグネット及びヨークにより構成される可動子と、前記可動子を前記中心軸方向に振動可能に弾性支持する組合せバネと、前記コイル、前記可動子及び前記組合せバネを収める筐体とを備え、
前記ヨークの一部は前記コイルの径方向の外側に配置されるヨーク外周部を構成し、
前記組合せバネは、主バネと、補助バネとを有し、
前記主バネは、前記筐体に対して固定された外周リング部と、前記外周リング部に対して前記径方向内側に間隔を隔てて配置され前記ヨーク外周部に固定された内周リング部と、前記外周リング部の内周から前記径方向内側に突出形成された固定端側端部と、前記内周リング部の外周から前記径方向外側に突出形成された可動端側端部と、前記固定端側端部から前記中心軸周りの一定の周方向に延出し前記可動端側端部に繋がるアーム部とを有し、
前記主バネは、1つの前記固定端側端部、これに連続する1つの前記アーム部及びこれに連続する1つの前記可動端側端部とからなる組を、一周を3以上に分割してできる異なる角度領域に1組ずつ配して前記内周リング部を3アーム以上で支持し、
前記補助バネは、前記主バネと異なる材料により構成され、
前記補助バネが、前記固定端側端部と、当該固定端側端部と前記一定の周方向と逆の周方向に隣接する他の組の前記可動端側端部との間、又は前記内周リング部と前記アーム部との間に架けられ前記主バネに付設されてなる振動発生装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記主バネの損失係数より前記組合せバネの損失係数が大きくされてなる請求項1に記載の振動発生装置である。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記主バネのバネ定数より前記組合せバネのバネ定数が大きくされてなる請求項1又は請求項2に記載の振動発生装置である。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記主バネが金属板により構成され、前記補助バネが高分子材料により構成されてなる請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の振動発生装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、主バネの固定部が外周リング部及び内周リング部により構成され、主バネの弾性変形部が固定端側端部、アーム部及び可動端側端部により構成されており、補助バネを固定端側端部とこれに隣接する可動端側端部との間に架けるため、比較的小片の補助バネで簡便に構成できる。また、そのような比較的小片の材料によって、変位の大きい固定端側端部と可動端側端部との間にアーム部と並列に補助バネを付設することができる。
変位の大きい固定端側端部と可動端側端部との間にアーム部と並列に補助バネを付設することができるので、効果的に組合せバネ全体の損失係数(従って減衰率)を増大したり、効果的に組合せバネ全体のバネ定数を増大したりすることができる。
減衰率やバネ定数の増大により、広帯域に亘って周波数に依る変化の少ない周波数特性への改善(周波数特性曲線の平坦化)が図られ、かかる改善により振動発生装置の広帯域での実用度を向上することができる。
外周リング部と内周リング部との間隔内に比較的小片の補助バネを主バネに対して並列的に付設することにより、外周リング部と筐体との固定及び内周リング部とヨーク外周部との固定に干渉することなく、かつ、径方向への要スペースの増大による大型化を来たすことなく好個の特性の組合せバネを構成することができる。
また、補助バネを用いず主バネだけ用いた振動発生装置も得ることができる状況を壊さずに、主バネに補助バネを付設することによって、さらには補助バネの材料を選択することによって、製造性良好に多様な特性の組合せバネを備えた振動発生装置を得ることができる。
以上説明したように本発明によれば、小型薄型化、製作の容易に適し、バネと可動子とで構成される振動系の周波数特性を容易に変更でき、従って容易に特性改善や用途に応じた特性選択が可能な組合せバネを有した振動発生装置が得られるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。図1は、本発明の一実施形態に係る振動発生装置の斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係る振動発生装置の分解斜視図である。図3、図4は、本発明の一実施形態に係る振動発生装置に用いられる主バネの平面図である。図5は、本発明の一実施形態に係る振動発生装置の垂直断面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施形態の振動発生装置1は、ベース筐体2と、コイル3と、センターヨーク4と、マグネット5と、主バネ6と、アウターヨーク7と、上部外周筐体8aと、下部外周筐体8bと、補助バネ9とを備える。センターヨーク4と、マグネット5と、アウターヨーク7とで可動子が構成される。主バネ6と補助バネ9とで組合せバネが構成される。主バネ6は金属板により構成され、補助バネ9は高分子材料により構成される。
コイル3は固定子に構成される。コイル3は、ベース筐体2の円形板部材2aの中央に固定される。円形板部材2aが振動板となるように、円形板部材2aを筐体本体に対して可動支持しても良い。この場合、コイル3は前述した第2可動子となる。
【0015】
図2及び図5に示すように、各部は円形に形成されているとともに、コイル3の中心軸Cを中心に同心状に配置される。中心軸Cに沿ってコイル3が固定される一端側を矢印Aにより、他端側を矢印Bにより示した。
センターヨーク4と、マグネット5と、アウターヨーク7とからなる可動子は、コイル3に対してその他端側(B側)から臨むように配置される。主バネ6は、かかる可動子を中心軸C方向に振動可能に弾性支持する。
【0016】
センターヨーク4及びマグネット5は、コイル3の内径より小さく、かつ、互いに略同一径の円盤又は円柱状に形成されている。アウターヨーク7の中央部7aは、コイル3の外径より大きい円盤状に形成されている。マグネット5の一端側と他端側とは反対磁極を構成する。マグネット5の一端側(A側)にセンターヨーク4が接合する。マグネット5の他端側(B側)にアウターヨーク7の中央部7aが接合する。
【0017】
アウターヨーク7は、中央部7aに連続してヨーク外周部7bを構成している。ヨーク外周部7bは、一端側(A側)において中央部7a対して隆起し、他端側(B側)において中央部7a対して同一面に形成されており、従って、ヨーク外周部7bは中央部7aより中心軸方向の寸法が大きくなっている。
センターヨーク4は、コイル3の径方向の内側に配置される。一方、ヨーク外周部7bは、コイル3の径方向の外側に配置される。
【0018】
主バネ6は、コイル3の径方向の外側に配置され、該径方向に延在する。
上部外周筐体8aと、下部外周筐体8bとは、同径の円筒状で上下に連接され、両者の間に主バネ6の外周リング部6aを挟んで筐体に固定する。
ヨーク外周部7bの一端側(A側)の端面に、外周側が切り欠かれた段差が形成され、その段差を埋めるように主バネ6の内周リング部6bが配置されて、内周リング部6bがヨーク外周部7bに固定される。
【0019】
図3に示すように、主バネ6は、外周リング部6a及び内周リング部6bがそれぞれリング状に形成され径方向に間隔を隔てて配置されたリング状の板バネである。すなわち、外周リング部6aの内径が内周リング部6bの外径より大きくされることによって、両者は径方向に間隔を隔てている。その間隔に、固定端側端部6d、アーム部6c及び可動端側端部6eにより構成される弾性変形部を配置し、外周リング部6aと内周リング部6bとを繋いでいる。
【0020】
固定端側端部6dは、外周リング部6aの内周から径方向内側に突出形成されている。可動端側端部6eは、内周リング部6bの外周から径方向外側に突出形成されている。
アーム部6cは、固定端側端部6dから中心軸C周りの一定の周方向(図3及び図4において反時計回り方向)に延出し可動端側端部6eに繋がる。
固定端側端部6dの突出幅6fは、アーム部6cの幅6gより大きい。可動端側端部6eの突出幅6hは、アーム部6cの幅6gより大きく、固定端側端部6dの突出幅6fより小さい。
【0021】
バネ鋼板に3つの同形状のスパイラル溝6kを順次120度ずらした配置で打ち抜くことによって、以上のような構成を各120度ずつの領域に構成している。スパイラル溝6kは、均一で狭小な溝幅で構成されている。スパイラル溝6kは、異なる半径位置で周方向にそれぞれ延在する外周溝6k−1,内周溝6k−2と、これらの端部同士を繋ぎ径方向に延在する径溝6k−3により構成される。径溝6k−3の外端に連続して外周溝6k−1が周方向に延びている。径溝6k−3の内端に連続して内周溝6k−2が周方向に延びている。
このような主バネ6によれば、外周リング部6aと内周リング部6bとの距離が短い、コンパクトなリング状板バネを構成することができる。
主バネ6は、1つの固定端側端部6d、これに連続する1つのアーム部6c及びこれに連続する1つの可動端側端部6eとからなる組を、一周を3つに分割してできる異なる120度ずつ角度領域に1組ずつ配して内周リング部6bを3アームで支持する。
3アームでなく、4アーム以上としてもよい。3アーム以上とするのは、可動子の振動軸がぶれないように安定的に支持するためである。
【0022】
図4に3つの補助バネ9,9,9の外形を破線により示した。図4に示すように、3つの補助バネ9,9,9がそれぞれ、固定端側端部6dと、当該固定端側端部6dと前記一定の周方向と逆の周方向(図3及び図4において時計回り方向)に隣接する他の組の可動端側端部6eとの間に架けられ主バネ6に付設されている。補助バネ9の両端は、固定端側端部6dと可動端側端部6eとに貼付されて固定される。
なお、図4に示すD−D線に沿って切った主バネ6と補助バネ9とからなる組合せバネの断面が図5に示される。
本振動発生装置1は、以上説明した構成を有し、コイル3に駆動電力が入力されると、センターヨーク4、マグネット5及びアウターヨーク7からなる可動子が、中心軸C方向に振動する。
【0023】
以上のような本実施形態の振動発生装置1によれば、小型薄型化、製作の容易に適し、バネと可動子とで構成される振動系の周波数特性を容易に変更でき、従って容易に特性改善や用途に応じた特性選択が可能な組合せバネを有した振動発生装置が得られるという効果がある。
補助バネの付加により組合せバネの減衰率やバネ定数を増大させ、広帯域に亘って周波数に依る変化の少ない周波数特性への改善(周波数特性曲線の平坦化)を図り、かかる改善により振動発生装置の広帯域での実用度を向上することができる。そのような実施例1,2及び活用例を以下に示す。
【実施例】
【0024】
図6は、実施例1,2に係る主バネ、補助バネ及び組合せバネの各バネ定数、主バネ及び組合せバネの各損失係数を記載した表である。
その他の条件としては、実施例1は外径φ60〔mm〕、共振周波数37.2〔Hz〕であり、実施例2は外径φ24〔mm〕、共振周波数52〔Hz〕であり、実施例1,2ともに上記実施形態に従うものである。
また、補助バネには、不織布の基材にアクリル系樹脂を主成分とする粘着剤を塗布して作成したテープを使用した。
図6の表からわかるように、主バネに補助バネを付設することによって、バネ定数、損失係数ともに増大している。
【0025】
周波数特性を評価するため、図7に、Q値の定義を示した。Q値は共振の鋭さを表す値で尖鋭度ともいう。
図7(a)に示したQ値の定義式の第1項と第2項の関係でわかるように、Q値と損失係数ηは反比例の関係にある。この関係性と図6の表を併せ見ればわかるように、実施例1,2ともに損失係数ηが増大したことによって、Q値を小さく、すなわち、共振のピークを抑えることができることとなる。
【0026】
図8は実施例1に係る可動子の変位ゲイン〔mm/V〕の周波数特性図、図9は実施例1に係る可動子の振動力〔N〕の周波数特性図、図10は実施例1に係る可動子の変位〔mm〕の周波数特性図である。
図11は実施例2に係る可動子の変位ゲイン〔mm/V〕の周波数特性図、図12は実施例2に係る可動子の振動力〔N〕の周波数特性図、図13は実施例2に係る可動子の変位〔mm〕の周波数特性図である。
図8〜図13において、破線曲線は比較のための従来例である。図8〜図10における従来例は実施例1の構成に対し補助バネを除いたものとし、その他は実施例1と同構成である。図11〜図13における従来例は実施例2の構成に対し補助バネを除いたものとし、その他は実施例2と同構成である。したがって、各従来例に適用されるバネ全体は、図6の表に示した主バネの特性を有する。なお、本発明の実施例1,2の方がバネ定数が大きいため、図10及び図13に示すように従来例と同程度の最大振幅となるように、本発明の実施例1,2のコイルに入力する駆動電力を従来例のそれより大きくしている。
【0027】
図8に示すように実施例1にあっては、最大ゲインGmaxをDCゲインG1の2.3倍程度と、従来例に比較しても大きく抑えている。
図9に示すように実施例1にあっては従来例に比較して、特性曲線の裾野が広がり(すなわち、ピークからの傾斜ラインが緩やかになり)、共振周波数に対する高帯域及び低帯域の双方において、振動力が向上している。
図10に示すように実施例1にあっては従来例に比較して、特に共振周波数に対する低帯域において振幅変位量が向上している。
【0028】
図11に示すように実施例2にあっては、最大ゲインGmaxをDCゲインG1の1.4倍程度と、従来例に比較しても大きく抑えている。
図12に示すように実施例2にあっては従来例に比較して、特性曲線の裾野広がり(すなわち、ピークからの傾斜ラインが緩やかになり)、共振周波数に対する高帯域及び低帯域の双方において、振動力が向上している。
図10に示すように実施例1にあっては従来例に比較して、特に共振周波数に対する低帯域において振幅変位量が向上している。
【0029】
図8〜図13からわかるように実施例1,2のいずれにおいても各3つの周波数特性のQ値は小さくなり、周波数特性曲線の平坦化が図られている。
このように、周波数特性曲線の平坦化が図られる、すなわち、広帯域に亘って周波数に依る変化の少ない周波数特性への改善が図られることにより、振動発生装置の広帯域での実用度が広がる。
実施例1,2で示されるように、本発明では最大振幅を抑えることができるため、部品同士の干渉が生じない程度まで入力電圧を上げることができる。すなわち、可動子の許容可動範囲が同じであっても、本発明によれば従来よりも入力電圧を上げることができ、その結果、従来よりも広帯域で大きな振動力を得ることが可能となる。
したがって、専ら共振周波数付近での使用に限定されていた従来の振動発生装置に対し、広帯域での使用が可能となる。共振周波数に対する高帯域及び低帯域における出力の低下が改善される。
広帯域での使用が可能となるので、音声出力を含め振動による表現力が向上する。
音声出力装置を構成するにあたっては、上述したベース筐体2の底面をボードやパネル(本振動発生装置が搭載される親機器の筐体等を含む)に付けて本振動発生装置の発生振動を当該ボードやパネルに伝えることによって、当該ボードやパネルを振動板とした音声出力装置を構成することができる。従来に比較して高音域でも低音域でも大きな音出力を得ることができ、低音出力から高音出力まで利用性が広がる。
【0030】
図14は、実施例1に係る可動子の音圧レベル(SPL)〔dbSPL〕の周波数特性図である。図14からわかるように、実施例1では、[1/(2*π)]*√(K/m)で表される共振周波数を約40〔Hz〕に設定したことにより、100〔Hz〕より低域〜1万〔Hz〕超まで広帯域での音声出力が可能となった。このように、所望の周波数帯域の最低値又は最低値より低い周波数を共振周波数とする振動発生装置を用いることにより、所望の周波数帯域での音声出力が可能となる。
【0031】
図15に本発明の振動発生装置の活用例を示す。図15(a)は、本実施形態の振動発生装置1を搭載した一例の移動通信機器11の斜視図である。本振動発生装置1のベース筐体2の底面が移動通信機器11の筐体に固定されている。本振動発生装置1によれば、広帯域で駆動され広帯域の振動を出力することができるので、振動表現力が向上し、例えば使用者一人一人が最も感じ易い帯域の呼び出し振動を選択することができるなど、使用者の好みに応じた帯域の呼び出し振動を発生させることができる。
【0032】
図15(b)は、本実施形態の振動発生装置1を搭載した一例のアミューズメント機器12の斜視図である。本振動発生装置1のベース筐体2の底面がアミューズメント機器12の握り部で筐体に固定されている。本振動発生装置1によれば、広帯域で駆動され広帯域の振動を出力することができるので、振動表現力が向上し、例えばシューティングゲームで大きな銃で撃った感覚と小さな銃で撃った感覚の違いを振動周波数を変更することで表現することができるなど、より現実的なゲームの臨場感を使用者に与えることができる。
【0033】
図15(c)は、本実施形態の振動発生装置1を搭載した一例のタッチパネル式情報入力装置13の斜視図である。本振動発生装置1のベース筐体2の底面がタッチパネル式情報入力装置13の操作部裏面で筐体に固定されている。タッチパネル式情報入力装置13は、操作ボタンは映像であるため機械的操作ボタンのような操作感触が得られない。しかし、本振動発生装置1によれば、広帯域で駆動され広帯域の振動を出力することができるので、振動表現力が向上し、例えば操作ボタン映像を押した時に、機械的操作ボタンのような操作感触を表現することができるなど、様々な感触をより現実的に表現することができる。
【0034】
図15(d)は、本実施形態の振動発生装置1を搭載した一例の音声出力装置14の斜視図である。本振動発生装置1のベース筐体2の底面が音声出力装置14のパネル背面に固定されている。本振動発生装置1によれば、広帯域で駆動され広帯域の振動を出力することができるので、音声信号を入力することにより、入力した音声信号の周波数振動を発生させることができる。したがって、本振動発生装置1をあらゆる機器のパネルや筐体等に取り付けることによって、本振動発生装置1を音声発生源とし、取り付けられたパネルや筐体等を振動板とした音声出力装置(音声出力機能付き機器)を構成することができる。
【0035】
なお、補助バネは、上記実施形態の架設位置に代えて 内周リング部6bとアーム部6cとの間に架設してもよい。この場合、補助バネの架設位置を周方向に沿って移動することによって、同じ補助バネでもその効き具合を自由に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る振動発生装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る振動発生装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る振動発生装置に用いられる主バネの平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る振動発生装置に用いられる主バネの平面図である。補助バネの外形を破線により示す。
【図5】本発明の一実施形態に係る振動発生装置の垂直断面図である。
【図6】本発明の実施例1,2に係る主バネ、補助バネ及び組合せバネの各バネ定数、主バネ及び組合せバネの各損失係数を記載した表である。
【図7】Q値(尖鋭度)の定義である。
【図8】本発明の実施例1に係る可動子の変位ゲイン〔mm/V〕の周波数特性図である。
【図9】本発明の実施例1に係る可動子の振動力〔N〕の周波数特性図である。
【図10】本発明の実施例1に係る可動子の変位〔mm〕の周波数特性図である。
【図11】本発明の実施例2に係る可動子の変位ゲイン〔mm/V〕の周波数特性図である。
【図12】本発明の実施例2に係る可動子の振動力〔N〕の周波数特性図である。
【図13】本発明の実施例2に係る可動子の変位〔mm〕の周波数特性図である。
【図14】本発明の実施例1に係る可動子の音圧レベル(SPL)〔dbSPL〕の周波数特性図である。
【図15】本発明の振動発生装置の活用例の斜視図である。
【図16】従来例に係る可動子の振動力〔N〕の周波数特性図である。
【符号の説明】
【0037】
1 振動発生装置
2 ベース筐体
2a 円形板部材
3 コイル
4 センターヨーク
5 マグネット
6 主バネ
6a 外周リング部
6b 内周リング部
6c アーム部
6d 固定端側端部
6e 可動端側端部
7 アウターヨーク
7b ヨーク外周部
8a 上部外周筐体
8b 下部外周筐体
9 補助バネ
C 中心軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸方向の一端において振動板その他の部材に固定されたコイルと、前記コイルに対してその他端側から臨み前記中心軸方向に振動するマグネット及びヨークにより構成される可動子と、前記可動子を前記中心軸方向に振動可能に弾性支持する組合せバネと、前記コイル、前記可動子及び前記組合せバネを収める筐体とを備え、
前記ヨークの一部は前記コイルの径方向の外側に配置されるヨーク外周部を構成し、
前記組合せバネは、主バネと、補助バネとを有し、
前記主バネは、前記筐体に対して固定された外周リング部と、前記外周リング部に対して前記径方向内側に間隔を隔てて配置され前記ヨーク外周部に固定された内周リング部と、前記外周リング部の内周から前記径方向内側に突出形成された固定端側端部と、前記内周リング部の外周から前記径方向外側に突出形成された可動端側端部と、前記固定端側端部から前記中心軸周りの一定の周方向に延出し前記可動端側端部に繋がるアーム部とを有し、
前記主バネは、1つの前記固定端側端部、これに連続する1つの前記アーム部及びこれに連続する1つの前記可動端側端部とからなる組を、一周を3以上に分割してできる異なる角度領域に1組ずつ配して前記内周リング部を3アーム以上で支持し、
前記補助バネは、前記主バネと異なる材料により構成され、
前記補助バネが、前記固定端側端部と、当該固定端側端部と前記一定の周方向と逆の周方向に隣接する他の組の前記可動端側端部との間、又は前記内周リング部と前記アーム部との間に架けられ前記主バネに付設されてなる振動発生装置。
【請求項2】
前記主バネの損失係数より前記組合せバネの損失係数が大きくされてなる請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記主バネのバネ定数より前記組合せバネのバネ定数が大きくされてなる請求項1又は請求項2に記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記主バネが金属板により構成され、前記補助バネが高分子材料により構成されてなる請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の振動発生装置。
【請求項1】
中心軸方向の一端において振動板その他の部材に固定されたコイルと、前記コイルに対してその他端側から臨み前記中心軸方向に振動するマグネット及びヨークにより構成される可動子と、前記可動子を前記中心軸方向に振動可能に弾性支持する組合せバネと、前記コイル、前記可動子及び前記組合せバネを収める筐体とを備え、
前記ヨークの一部は前記コイルの径方向の外側に配置されるヨーク外周部を構成し、
前記組合せバネは、主バネと、補助バネとを有し、
前記主バネは、前記筐体に対して固定された外周リング部と、前記外周リング部に対して前記径方向内側に間隔を隔てて配置され前記ヨーク外周部に固定された内周リング部と、前記外周リング部の内周から前記径方向内側に突出形成された固定端側端部と、前記内周リング部の外周から前記径方向外側に突出形成された可動端側端部と、前記固定端側端部から前記中心軸周りの一定の周方向に延出し前記可動端側端部に繋がるアーム部とを有し、
前記主バネは、1つの前記固定端側端部、これに連続する1つの前記アーム部及びこれに連続する1つの前記可動端側端部とからなる組を、一周を3以上に分割してできる異なる角度領域に1組ずつ配して前記内周リング部を3アーム以上で支持し、
前記補助バネは、前記主バネと異なる材料により構成され、
前記補助バネが、前記固定端側端部と、当該固定端側端部と前記一定の周方向と逆の周方向に隣接する他の組の前記可動端側端部との間、又は前記内周リング部と前記アーム部との間に架けられ前記主バネに付設されてなる振動発生装置。
【請求項2】
前記主バネの損失係数より前記組合せバネの損失係数が大きくされてなる請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記主バネのバネ定数より前記組合せバネのバネ定数が大きくされてなる請求項1又は請求項2に記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記主バネが金属板により構成され、前記補助バネが高分子材料により構成されてなる請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の振動発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−195799(P2009−195799A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38735(P2008−38735)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]