説明

振動発生装置

【課題】空気振動である音の発生や反応の遅れを最小限に抑えつつ、効果的に振動を伝える装置の提供を課題とする。
【解決手段】非磁性体からなる固定片102によって固定された複数個の同種の磁石101と、電気信号を入力する事により電磁界を発生させる空芯コイル11と、磁石101及び空芯コイル102を弾性をもって固定する部品とを有し、空芯コイルに入力された電気信号による電流及び電磁界と、磁石101が発生させる磁界との相互作用により振動を発生させる。空芯コイル11に電気信号が入力されると、磁石101によって生み出される反発磁束が空芯コイル11を流れる電流と直交する事によりローレンツ力が生じ、空芯コイル11が筐体等に固定されている場合振動体10が上下に振動する。振動体10を固定した場合は空芯コイル11が振動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号により振動を発生させる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、電気信号を入力する事により振動を発生させる装置として、次のようなものがあった。
1.モーターの回転軸上に、重心が回転軸上にない錘を取り付ける事によって、回転時に偏心運動により振動を生じる偏心モーター。
2.スピーカーの構造を利用し、振動板に比して質量の大きい磁気回路部を可動とする事により振動を生じる振動スピーカー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記偏心モーターを使用する場合、次のような問題点があった。
1.信号を入力してから実際に振動を発生させるまでに時間がかかるので、人間に振動を伝える事を目的とした体感装置に使用する際、振動させるタイミングが予め予測可能な場合、及び、かかる時間差が許容される場面に限定されていた。
2.振動のパターンが一定であり、複雑な制御が難しかった。
【0004】
また、前記振動スピーカーを使用する場合、次のような問題点があった。
1.スピーカーの構造を踏襲しているため、振動に加えて空気振動である音も発生しやすく、入力する信号によっては意図しない雑音が発生しやすい傾向にあった。
2.そのため、振動のみを発生させたい場合には、雑音が発生しないよう処理された信号を入力するか、フィルタ回路などを使用して帯域制限する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の振動発生装置は、非磁性体によって特定の位置関係に固定された複数個の同種の磁石と、電気信号を入力する事により電磁界を発生させるコイルと、前記磁石及びコイルを定められた弾性をもって固定する部品とを有し、前記コイルに入力された電気信号による電流及び電磁界と、前記磁石が発生させる磁界との相互作用により振動を発生させる事を特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の振動発生装置では、振動を発生させる基本原理は既存のスピーカーと同等である。即ち、磁石の発生させる磁界とコイルの電流及び電磁界との相互作用により、振動を発生させる。したがって、前記偏心モーターにみられる反応の遅れはない。
【0007】
また、本発明の振動発生装置によれば、コイル及び内部の磁石を空気抵抗の少ない形状に加工する事により、雑音の発生を比較的少なく留める事ができる。
【0008】
振動の強度を増したい場合、これまではより強力な磁石を使用するか、より多くの電流を流す等の方法が取られたが、本発明においては、複数個の磁石の間隔を小さくする事により簡単に実現可能である。これは、磁石から発生する磁束の密度が上がる事による。
【0009】
従来のスピーカー構造の場合、電流を流す際、振動板に取り付けられたコイルが発熱するため、入力電力を大きく取りたい場合に放熱処理を工夫する必要があったが、本発明ではコイル部分を固定できるため、かかる放熱処理の自由度が大きく、必要に応じて入力可能な電力を大きく取れる利点がある。
【0010】
上述した通り、本発明の振動発生装置によれば、従来の同種装置に見られた反応の遅れや副次的な音の発生を最小限に留めつつ、効果的に振動を発生させる事ができる。
例えば、携帯機器において効果音と連動した振動を発生させる用途に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施例を挙げて説明する。図1は比較的簡単な構造で本発明を実現したものである。図2は図1における図面垂直方向の断面図である。
【0012】
振動体10は、2個の磁石101を、同極同士を向かい合わせた状態で非磁性体からなる固定片102によって接着固定する事によって成り立っている。振動体10と固定蓋13は、ある反発係数をもつばね12で固定されており、更に固定蓋13と空芯コイル11が接着固定されている。
【0013】
空芯コイル11に電気信号が入力されると、2個の磁石101によって生み出される反発磁束が空芯コイル11を流れる電流と直交する事によりローレンツ力が生じ、空芯コイル11が筐体等に固定されている場合、振動体10が上下に振動する。振動力はコイルと磁石の相互力であるから、何らかの方法で振動体10を固定した場合は空芯コイル11が振動する。これは、従来のスピーカーと同じ原理である。
【0014】
振動の効率を良くするためには、2個の磁石101によって生み出された反発磁束の大部分が同方向で空芯コイル11と交差し、更に空芯コイルと交差しない無効な磁束を少なくする必要がある。これは、振動体10と空芯コイル11の間隔を小さくする事と、固定片102を薄くして2個の磁石101の間隔を小さくする事により実現できる。
【0015】
振動体10と空芯コイル11は適当な弾性をもって固定されておれば良いので、例えばばね12の代わりに軟性樹脂等で振動体10と空芯コイル11の間隙を充填しても良い。この場合、充填する樹脂は低反発性でない、具体的には反発係数が0.5以上である事が望ましい。
【0016】
また、図1では空芯コイル11及び振動体10を円筒形で示したが、上下方向に振動できる構造であれば形状に制約はない。例えば直方体状にしても良い。
【0017】
振動力はコイルと磁石の相互作用によって発生するため、図1のように空芯コイル11を振動体10の外側に配置する必要性はなく、空芯コイル11を内側に配置しても良い。
【0018】
例えば携帯電子機器に組み込む際、発生した磁界が周辺の電子回路へ及ぼす影響を最小限に留めたい場合は、本発明の振動装置全体を磁性体より構成される容器に収める等の処置をする事によって実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例の模式図を示す。
【図2】図1の断面構造図を示す。
【符号の説明】
【0020】
10 振動体
11 空芯コイル
12 ばね
13 固定蓋
101 磁石
102 固定片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体によって特定の位置関係に固定された複数個の同種の磁石と、電気信号を入力する事により電磁界を発生させるコイルと、前記磁石及びコイルを所定の弾性をもって固定する部品とを有し、前記コイルに入力された電気信号による電流及び電磁界と、前記磁石が発生させる磁界との相互作用により振動を発生させる事を特徴とする振動発生装置。
【請求項2】
前記複数個の磁石において、隣接する磁石同士が同極対向となるように配置した事を特徴とする、請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載の振動発生装置のコイル部分に接続されたコントローラを備え、該コントローラは前記コイルに入力する電気信号を生成し、駆動するものである、振動発生システム。
【請求項4】
請求項2に記載の振動発生装置のコイル部分に接続されたコントローラを備え、該コントローラは前記コイルに入力する電気信号を生成し、駆動するものである、振動発生システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−139647(P2012−139647A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294904(P2010−294904)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【出願人】(597010226)株式会社コト (13)
【Fターム(参考)】