振動装置
【課題】振動体の変位が抑制され難く、大きな変位量を得ることができ、しかも部品点数及び加工工程数の増大を招くことなく提供することができる振動装置を得る。
【解決手段】振動板2に支持シート3が貼り付けられており、支持シート3の振動板が貼り付けられている振動板積層部3Aの外側に位置している延長部3Bに、枠体4が振動板2の外周縁と間隔を隔て貼り付けられており、枠体4の開口部が多角形の形状を有し、該開口部の辺4a〜4dの中央部において枠体4に貼り付けられている支持シート部分の厚みよりも、枠体4の開口部のコーナー部4e〜4hにおいて枠体4に貼り付けられている支持シート部分の厚みが大きくされている、振動装置1。
【解決手段】振動板2に支持シート3が貼り付けられており、支持シート3の振動板が貼り付けられている振動板積層部3Aの外側に位置している延長部3Bに、枠体4が振動板2の外周縁と間隔を隔て貼り付けられており、枠体4の開口部が多角形の形状を有し、該開口部の辺4a〜4dの中央部において枠体4に貼り付けられている支持シート部分の厚みよりも、枠体4の開口部のコーナー部4e〜4hにおいて枠体4に貼り付けられている支持シート部分の厚みが大きくされている、振動装置1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば圧電振動板からなる振動板が支持シートを介して枠体に取り付けられている構造を有する振動装置に関し、より詳細には、枠体の開口部の形状が多角形である振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機や各種電子機器において、音声や振動を発生させるために、圧電サウンダや圧電スピーカなどが用いられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、図10に分解斜視図で示す圧電音響部品が開示されている。圧電音響部品101では、基板102上にキャップ状に絞り加工した金属板103が固定されている。
【0004】
金属板103の上面には、複数のスリット103aが矩形枠状をなすように配置されている。この複数のスリット103aで囲まれた部分において、金属板103の上面に圧電振動板104が接合されている。隣り合うスリット103a,103aの間の部分、すなわちスリットが形成されていない部分は、矩形の圧電振動板104のコーナー部近傍に位置している。圧電振動板104の振動に伴って、複数のスリット103aで囲まれた金属板部分が大きく変位する。従って、大きな音響を得ることができる。
【0005】
他方、下記の特許文献2には、図11(a)及び(b)に示す圧電スピーカが開示されている。圧電スピーカ111では、圧電素子112が金属からなる振動板113の上面に貼り合わされている。振動板113は、ダンパー部材としての樹脂板114上に貼り付けられている。樹脂板114の対向し合う一対の辺部分で、樹脂板114は、支持体115,116に固定されている。すなわち、圧電素子112及び振動板113の振動を妨げないように、ダンピング性を有する樹脂板114が支持体115,116により支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−355892号公報
【特許文献2】特開平9−271096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の圧電音響部品101では、複数のスリット103aが金属板103に形成されているので、圧電効果による変位を大きくし、大きな音圧を得ることができる。しかしながら、絞り加工により、キャップ状の金属板103を用意しなければならなかった。また、気室を分離するために、スリット103aに封止材料を充填しなければならなかった。従って、加工工程が煩雑であり、かつ部品点数が増大するという問題があった。
【0008】
他方、特許文献2に記載の圧電スピーカ111では、樹脂板114の一対の長辺部分が支持体115,116で支持されているが、樹脂板114は、その一対の短辺側では支持されていない。従って、樹脂板114の一対の短辺側において、封止材料を用いて支持強度を高める必要があった。そのため、やはり部品点数が増大し、加工工程が煩雑になるという問題があった。加えて、一対の長辺側において、樹脂板114が強固に支持されているので、一対の長辺側において、変位が抑制されがちであった。そのため、圧電素子112及び振動板113からなる振動体の変位が小さくなるおそれがあった。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、振動体の変位が抑制され難く、大きな変位量を得ることができ、しかも部品点数及び加工工程数の増大を招くことなく提供することができる振動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る振動装置は、振動板と、前記振動板に貼り付けられており、該振動板に貼り付けられている振動板積層部と、該振動板積層部の外側に張り出している延長部とを有する支持シートと、前記支持シートの延長部に貼り付けられており、かつ前記振動板の外周縁と間隔を隔てて設けられた枠体とを備える。本発明では、前記枠体が、複数の辺と、隣り合う辺が接続している部分がコーナー部である多角形の形状の開口部を有し、前記支持シートの前記コーナー部における前記枠体による保持強度が、前記開口部の辺の中央部における支持シートの前記枠体による保持強度よりも高くなるように、前記支持シートの厚みが、前記枠体の開口部の辺の中央部から前記枠体のコーナー部側に向かって連続的にまたは階段的に厚くされている。
【0011】
本発明に係る振動装置のある特定の局面では、前記振動板と前記枠体の開口部との間の間隔が、前記開口部の辺の中央において相対的に広く、前記枠体の前記コーナー部において相対的に狭くされている。
【0012】
本発明に係る振動装置の他の特定の局面では、上記枠体の開口部が矩形である。矩形の開口部を有する枠体は、簡単な加工により容易に得ることができる。
【0013】
本発明において、振動板の平面形状は特に限定されないが、本発明のさらに他の特定の局面では、矩形板状である。従って、汎用されている矩形板状の圧電振動子などを用いることができる。
【0014】
本発明に係る振動装置のさらに別の特定の局面では、上記振動板が圧電振動子である。
【0015】
本発明に係る振動装置のさらに他の特定の局面では、上記圧電振動子は、金属板と、金属板の片面に貼り合わされた圧電素子とを備える。
【0016】
本発明に係る振動装置のさらに別の特定の局面では、上記支持シートが合成樹脂フィルムからなる。合成樹脂フィルムからなる支持シートの場合、複数枚の合成樹脂フィルムを積層することにより支持シートの厚みを段階的にまたは連続的に厚くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る振動装置では、支持シートが枠体に貼り付けられているが、枠体の開口部のコーナー部における支持シートの枠体により保持強度が、枠体の開口部の辺の中央部における支持シートの枠体による保持強度よりも高くなるように、支持シートの厚みが上記枠体の開口部の辺の中央部からコーナー部側に向かって連続的にまたは段階的に厚くされているので、振動板と支持シートとが積層されている振動部分の変位量を大きくすることができる。従って、大きな音圧や大きな振動を得ることができる。
【0018】
また、本発明の振動装置は、枠体に支持シートを貼り付けた支持構造を有するだけであるため、部品点数の増大をまねかない。また、加工工程の煩雑さも回避することができる。よって、変位量の大きな振動装置を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る振動装置の平面図及び(a)中のB−B線に沿う部分の断面図であり、(c)は、用いられている圧電素子の正面断面図である。
【図2】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態の振動装置における支持フィルムの厚み分布を説明するための各模式的平面図であり、(c)は、(b)中のC−C線に沿う部分の断面図である。
【図3】比較のために用意した振動装置の変位分布を示す模式的斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る振動装置の変位分布を説明するための模式的斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態及び比較例として用意した振動装置における支持シートの領域と厚みとの関係を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態の振動装置における厚み分布を説明するための模式的平面図である。
【図7】(a)及び(b)は、本発明の他の実施形態の振動装置における支持シートの厚みの分布を説明するための各模式的平面図である。
【図8】本発明で用いられる支持シートの変形例を説明するための正面断面図である。
【図9】本発明の振動装置で用いられる振動板のさらに他の例を説明するための正面断面図である。
【図10】従来の圧電型電気音響変換器の分解斜視図である。
【図11】(a)及び(b)は、従来の圧電スピーカの一例を示す斜視図及び(a)中のB−B線に沿う部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより本発明を明らかにする。
【0021】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る振動装置を示す平面図であり、(b)は、(a)中のB−B線に沿う部分の断面図である。
【0022】
本実施形態の振動装置1は、振動板2と、振動板2に貼り付けられる支持シート3と、支持シート3を囲むように配置された枠体4とを有する。
【0023】
振動板2は、矩形板状の形状を有する。図1(b)では、振動板2の一部が略図的に示されているが、実際には、振動板2は、積層型圧電体2aと、積層型圧電体2aの両面に形成された電極2b,2cとを有する。積層型圧電体2aは、2以上のPZTからなる圧電体層を有する。
【0024】
隣接し合う圧電体層が、厚み方向において逆方向に分極処理されている。従って、電極2b,2cから交番電界を印加することにより、振動板2は屈曲振動モードで励振される。すなわち、振動板2は、本実施形態では、圧電振動子である。
【0025】
なお、圧電振動子の構造は、図1(c)に示す積層型圧電体2aを用いたものに限定されない。例えば、図9に示す振動板2Aのように、金属板2d上に、厚み方向に分極された圧電体層2e及び電極2fが積層されているユニモルフ型の圧電振動子であってもよい。さらには、本発明においては、振動板2は、圧電振動子以外の振動体であってもよい。
【0026】
図1(a)及び(b)に示すように、支持シート3の上面に振動板2が貼り付けられている。この貼り付けは接着剤等の適宜の接合材を用いて行うことができる。
【0027】
支持シート3は、矩形板状の振動板2が貼り付けられている振動板積層部3Aと、振動板積層部3Aに連ねられており、振動板積層部3Aの外側に至っている矩形枠状の延長部3Bとを有する。この矩形枠状の延長部3B内の外側部分が、枠体4により固定されている。
【0028】
枠体4は、本実施形態では、矩形枠状の平面形状を有する。すなわち、枠体4は、矩形の開口部を有する。この矩形の開口部は、対向し合う一対の長辺4a,4bと、対向し合う一対の短辺4c,4dとを有する。隣り合う辺、すなわち、辺4aと4cとが接続されている部分を、第1のコーナー部4eとする。また、辺4bと辺4cとが接続されている部分を第2のコーナー部4f、辺4aと辺4dが接続している部分を第3のコーナー部4g、辺4dと辺4bが接続している部分を第4のコーナー部4hとする。
【0029】
上記枠体4は、金属板4i,4jを有する。金属板4i,4jが、支持シート3を挟持するようにして貼り合わされている。この貼り合わせは、接着剤等の適宜の接合材を用いて行うことができる。
【0030】
なお、枠体4は、金属に限らず、セラミックス等の他の剛性材料により形成することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、金属板4iと金属板4jは、同じ平面形状を有するが、異なる平面形状を有していてもよい。例えば、金属板4jを金属板4iよりも外側に張り出させてもよく、張り出された部分において電気的接続等を行ってもよい。
【0032】
上記支持シート3は、合成樹脂フィルムからなる。より詳細には、後述するように支持シート3は、複数枚の合成樹脂フィルムを積層することにより形成されている。もっとも、支持シート3は、合成樹脂フィルムに限らず、金属板により形成されていてもよい。
【0033】
本実施形態の振動装置1では、上記圧電振動子からなる振動板2を屈曲モードで励振した場合、振動板2が、柔軟性を有する支持シート3により支持されているため、振動板2の変位がさほど妨げられない。特に、本実施形態の特徴は、上記支持シート3の厚みが部分的に異ならされており、それによって、大きな変位量を得ることが可能とされている。これを、図2〜図6を参照してより具体的に説明する。
【0034】
本実施形態の振動装置1では、上記支持シート3が厚み分布を有する。図2(a)は、上記支持シート3における厚み分布を模式的に示した振動装置1の平面図である。図2(b)は、上記振動装置1の底面図であり、図2(b)中では、上記支持シート3の厚み分布が模式的に示されている。すなわち、支持シート3は、前述した枠体4の第1〜第4のコーナー部4e〜4h近傍において、最も厚い領域3aを有し、該領域3aから遠ざかるにつれて、厚みが順次小さくなる領域3b,3c,3d及び3eを有する。
【0035】
このような領域3a〜3eを形成するために、本実施形態では、図2(c)に示すように、領域3aでは、合成樹脂フィルム31〜35が積層されている。そして、領域3bでは、合成樹脂フィルム層32〜35、すなわち4層の合成樹脂フィルムが積層されている。領域3cでは、3層の合成樹脂フィルム層33〜35が積層されており、領域3dでは、合成樹脂フィルム層34,35が積層されている。
【0036】
領域3eでは、単一の合成樹脂フィルム層35のみが存在する。このように、合成樹脂フィルムの積層数を領域3a〜3eで異ならせることにより、領域3a〜3eにおける支持シート3の厚みが異ならされている。
【0037】
従って、支持シート3の枠体4に貼り付けられている部分においては、辺4a〜4dの中央部分に貼り付けられている支持シート部分の厚みよりも、支持シート3の枠体4の開口部のコーナー部4e〜4hに貼り付けられている部分、すなわち領域3aの厚みが大きくされている。また、上記のように複数枚の合成樹脂フィルム31〜35を用いているため、本実施形態では、辺4a〜4dの中央部に貼り付けられている支持シート部分から、コーナー部4e〜4hに貼り付けられている支持シート部分に向かうにつれて、支持シート3の厚みが段階的に厚くなっている。
【0038】
また、図2(c)に示すように、支持シート3の中央部分から、支持シート3の対角線方向に第1のコーナー部4eに向かう部分においても、支持シート3の厚みが、領域3eから、領域3d,領域3c,領域3b,領域3aに向かうにつれて厚くされている。
【0039】
本実施形態では、支持シート3の厚みが、上記のように設定されているので、枠体4のコーナー部における枠体4による支持シート3の保持強度が枠体4の開口部の辺の中央部における枠体4による支持シート3の保持強度よりも高くされている。
【0040】
本実施形態の振動装置1では、支持シート3が上記厚み分布を有するため、大きな変位量を得ることができる。これを、具体的な実験例に基づき説明する。
【0041】
本実験例では、振動板2は、PZTからなり、縦15.6mm×横波12mm×厚み110μmの8層の圧電体層を有する積層型圧電体を用いた。
【0042】
また、枠体4は、0.2mmの厚みの金属板4i,4jを積層することにより形成した。
【0043】
上記枠体4の開口部は、辺4a,4bの長さが16.6mm,4c,4dの長さが13mmの矩形の開口部とした。
【0044】
上記支持シート3としては、以下の第1〜第5の合成樹脂フィルム31〜35を積層体により構成した。
【0045】
第1の合成樹脂フィルム31:厚み20μm
第2の合成樹脂フィルム32:厚み10μm
第3の合成樹脂フィルム33:厚み10μm
第4の合成樹脂フィルム34:厚み20μm
第5の合成樹脂フィルム35:厚み140μm
【0046】
なお、第1〜第5の合成樹脂フィルム31〜35は、いずれもエチレンプロピレンゴム系樹脂からなる。また、第1〜第5の合成樹脂フィルム31〜35は、厚みを実質的に無視し得るシリコン系接着剤層を介して貼り合わせた。
【0047】
比較のために、上記支持シート3に代えて、厚みが図5の破線で示すように全領域において一定である支持シートを用いたことを除いては、上記実施形態と同様にして比較例の振動装置を用意した。
【0048】
図3は、上記比較例の振動装置に10Vの電圧を印加した際の有限要素法による変位形状を模式的に示す斜視図である。図4は、上記実施形態の実験例として用意した振動装置の有限要素シミュレーションによる変位形状を示す模式的斜視図である。なお、図3及び図4は、枠体4で囲まれた開口部の変位形状を示す。すなわち、支持シート3は、振動板2と共に振動するが、枠体4により拘束されている。従って、図3及び図4に示す変位形状は、枠体4の開口部内における振動板2及び支持シート3からなる構造の変位形状を示す。
【0049】
図3及び図4における数値は、上記支持シート3が枠体4の開口部の辺4a,4dに貼り付けられている部分における規格化された変位量を示す。
【0050】
図3と図4とを対比すれば明らかなように、上記比較例に比べて、上記実施形態によれば、大きな変位量の得られることがわかる。すなわち、図3の破線で示す円Xで囲まれるコーナー部では、コーナー部がマイナス方向に比較的大きく変位していることがわかる。これに対して、図4に示すように、上記実施形態では、破線で示す円Yで囲まれた部分すなわちコーナー部におけるマイナス方向の変位が非常に小さいことがわかる。
【0051】
図6におけるコーナー部4e〜4hすなわち破線で示す円Yで囲まれた部分において、変位が非常に小さくされており、特にマイナス方向の変位が小さくなっている。それに対して、円Zで囲まれた辺4a〜4dの中央部において変位量が大きくなっている。これは、上記厚み分布を有する支持シート3を用いていることによる。従って、本実施形態の振動装置1では、支持シート3に振動板2が接合されている構造の変位量を飛躍的に大きくでき、大きな音圧を得ることができる。
【0052】
上記のように、支持シート3に厚み分布を与えるだけで、本実施形態では大きな変位量を得ることができる。従って、部品点数の増大や組み立て工程の煩雑さをまねくことなく、大きな音圧を得ることができる振動装置を提供することができる。
【0053】
図7(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態の振動装置を説明するための模式的平面図及び模式的底面図である。
【0054】
図7(a)及び(b)においても、図2(a)及び(b)と同様に、支持シート3の厚み分布を模式的に示すこととする。すなわち、領域3a〜3eは、第1の実施形態と同様に厚みが異ならされている。第2の実施形態が第1の実施形態と異なるところは、枠体4Bの平面形状が異なることにあり、その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0055】
枠体4Bの開口部は、略矩形形状を有する。すなわち、辺4a〜4dの中央部において、開口部が外側に膨らんでいる。従って、振動板2と枠体4との間の間隔が辺4a〜4dの中央においてコーナー部4e〜4hに比べて相対的に大きくされている。言い換えれば、辺4a〜4dの中央部からコーナー部4e〜4hに向かうにつれて、振動板2と枠体4との間の間隔が小さくなっている。
【0056】
このように、振動板2と枠体4との間の間隔、辺4a〜4dの中央部に比べコーナー部4e〜4h側において小さくすることにより、コーナー部において支持シート3の変位をより小さくすることができる。また、辺4a〜4dの中央側における変位をより大きくし、それによって、支持シート3に振動板2が接合されている構造の変位量を効果的に大きくすることができる。このように、支持シート3に厚み分布をもたせるだけでなく、枠体4と振動板2との間隔を調整することによっても、変位量をさらに拡大することができる。
【0057】
第1,第2の実施形態では、支持シート3の厚みが段階的に変化されていたが、図8に示すように、支持シート3の厚みは領域3aから領域3eに向かって連続的に変化されていてもよい。もっとも、このような厚みが連続的に変化する支持シート3を得ることは困難である。従って、第1,第2の実施形態のように、積層体からなる支持シート3において、積層体の積層数を領域3a〜3eで異ならせた構造が望ましい。
【0058】
上述してきた各実施形態では、枠体4の開口部は矩形の平面形状を有していたが、矩形以外の五角形、六角形などの他の多角形形状を有していてもよい。いずれにしても、多角形における複数の辺の中央部に貼り付けられている部分の支持シートの厚みよりも上記多角形におけるコーナー部に貼り付けられている支持シート部分の厚みを高くすれば、上記実施形態と同様に大きな変位量を得ることができる。
【0059】
また、第1〜第3の実施形態では、振動板2は矩形板状であったが、矩形板状以外の平面形状、例えば円形等であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…振動装置
2…振動板
2A…振動板
2a…積層型圧電体
2b,2c…電極
2d…金属板
2e…圧電体層
2f…電極
3…支持シート
3A…振動板積層部
3B…延長部
3a〜3e…領域
4…枠体
4B…枠体
4a〜4d…辺
4e…第1のコーナー部
4f…第2のコーナー部
4g…第3のコーナー部
4h…第4のコーナー部
4i,4j…金属板
31…第1の合成樹脂フィルム
32…第2の合成樹脂フィルム
33…第3の合成樹脂フィルム
34…第4の合成樹脂フィルム
35…第5の合成樹脂フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば圧電振動板からなる振動板が支持シートを介して枠体に取り付けられている構造を有する振動装置に関し、より詳細には、枠体の開口部の形状が多角形である振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機や各種電子機器において、音声や振動を発生させるために、圧電サウンダや圧電スピーカなどが用いられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、図10に分解斜視図で示す圧電音響部品が開示されている。圧電音響部品101では、基板102上にキャップ状に絞り加工した金属板103が固定されている。
【0004】
金属板103の上面には、複数のスリット103aが矩形枠状をなすように配置されている。この複数のスリット103aで囲まれた部分において、金属板103の上面に圧電振動板104が接合されている。隣り合うスリット103a,103aの間の部分、すなわちスリットが形成されていない部分は、矩形の圧電振動板104のコーナー部近傍に位置している。圧電振動板104の振動に伴って、複数のスリット103aで囲まれた金属板部分が大きく変位する。従って、大きな音響を得ることができる。
【0005】
他方、下記の特許文献2には、図11(a)及び(b)に示す圧電スピーカが開示されている。圧電スピーカ111では、圧電素子112が金属からなる振動板113の上面に貼り合わされている。振動板113は、ダンパー部材としての樹脂板114上に貼り付けられている。樹脂板114の対向し合う一対の辺部分で、樹脂板114は、支持体115,116に固定されている。すなわち、圧電素子112及び振動板113の振動を妨げないように、ダンピング性を有する樹脂板114が支持体115,116により支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−355892号公報
【特許文献2】特開平9−271096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の圧電音響部品101では、複数のスリット103aが金属板103に形成されているので、圧電効果による変位を大きくし、大きな音圧を得ることができる。しかしながら、絞り加工により、キャップ状の金属板103を用意しなければならなかった。また、気室を分離するために、スリット103aに封止材料を充填しなければならなかった。従って、加工工程が煩雑であり、かつ部品点数が増大するという問題があった。
【0008】
他方、特許文献2に記載の圧電スピーカ111では、樹脂板114の一対の長辺部分が支持体115,116で支持されているが、樹脂板114は、その一対の短辺側では支持されていない。従って、樹脂板114の一対の短辺側において、封止材料を用いて支持強度を高める必要があった。そのため、やはり部品点数が増大し、加工工程が煩雑になるという問題があった。加えて、一対の長辺側において、樹脂板114が強固に支持されているので、一対の長辺側において、変位が抑制されがちであった。そのため、圧電素子112及び振動板113からなる振動体の変位が小さくなるおそれがあった。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、振動体の変位が抑制され難く、大きな変位量を得ることができ、しかも部品点数及び加工工程数の増大を招くことなく提供することができる振動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る振動装置は、振動板と、前記振動板に貼り付けられており、該振動板に貼り付けられている振動板積層部と、該振動板積層部の外側に張り出している延長部とを有する支持シートと、前記支持シートの延長部に貼り付けられており、かつ前記振動板の外周縁と間隔を隔てて設けられた枠体とを備える。本発明では、前記枠体が、複数の辺と、隣り合う辺が接続している部分がコーナー部である多角形の形状の開口部を有し、前記支持シートの前記コーナー部における前記枠体による保持強度が、前記開口部の辺の中央部における支持シートの前記枠体による保持強度よりも高くなるように、前記支持シートの厚みが、前記枠体の開口部の辺の中央部から前記枠体のコーナー部側に向かって連続的にまたは階段的に厚くされている。
【0011】
本発明に係る振動装置のある特定の局面では、前記振動板と前記枠体の開口部との間の間隔が、前記開口部の辺の中央において相対的に広く、前記枠体の前記コーナー部において相対的に狭くされている。
【0012】
本発明に係る振動装置の他の特定の局面では、上記枠体の開口部が矩形である。矩形の開口部を有する枠体は、簡単な加工により容易に得ることができる。
【0013】
本発明において、振動板の平面形状は特に限定されないが、本発明のさらに他の特定の局面では、矩形板状である。従って、汎用されている矩形板状の圧電振動子などを用いることができる。
【0014】
本発明に係る振動装置のさらに別の特定の局面では、上記振動板が圧電振動子である。
【0015】
本発明に係る振動装置のさらに他の特定の局面では、上記圧電振動子は、金属板と、金属板の片面に貼り合わされた圧電素子とを備える。
【0016】
本発明に係る振動装置のさらに別の特定の局面では、上記支持シートが合成樹脂フィルムからなる。合成樹脂フィルムからなる支持シートの場合、複数枚の合成樹脂フィルムを積層することにより支持シートの厚みを段階的にまたは連続的に厚くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る振動装置では、支持シートが枠体に貼り付けられているが、枠体の開口部のコーナー部における支持シートの枠体により保持強度が、枠体の開口部の辺の中央部における支持シートの枠体による保持強度よりも高くなるように、支持シートの厚みが上記枠体の開口部の辺の中央部からコーナー部側に向かって連続的にまたは段階的に厚くされているので、振動板と支持シートとが積層されている振動部分の変位量を大きくすることができる。従って、大きな音圧や大きな振動を得ることができる。
【0018】
また、本発明の振動装置は、枠体に支持シートを貼り付けた支持構造を有するだけであるため、部品点数の増大をまねかない。また、加工工程の煩雑さも回避することができる。よって、変位量の大きな振動装置を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る振動装置の平面図及び(a)中のB−B線に沿う部分の断面図であり、(c)は、用いられている圧電素子の正面断面図である。
【図2】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態の振動装置における支持フィルムの厚み分布を説明するための各模式的平面図であり、(c)は、(b)中のC−C線に沿う部分の断面図である。
【図3】比較のために用意した振動装置の変位分布を示す模式的斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る振動装置の変位分布を説明するための模式的斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態及び比較例として用意した振動装置における支持シートの領域と厚みとの関係を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態の振動装置における厚み分布を説明するための模式的平面図である。
【図7】(a)及び(b)は、本発明の他の実施形態の振動装置における支持シートの厚みの分布を説明するための各模式的平面図である。
【図8】本発明で用いられる支持シートの変形例を説明するための正面断面図である。
【図9】本発明の振動装置で用いられる振動板のさらに他の例を説明するための正面断面図である。
【図10】従来の圧電型電気音響変換器の分解斜視図である。
【図11】(a)及び(b)は、従来の圧電スピーカの一例を示す斜視図及び(a)中のB−B線に沿う部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより本発明を明らかにする。
【0021】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る振動装置を示す平面図であり、(b)は、(a)中のB−B線に沿う部分の断面図である。
【0022】
本実施形態の振動装置1は、振動板2と、振動板2に貼り付けられる支持シート3と、支持シート3を囲むように配置された枠体4とを有する。
【0023】
振動板2は、矩形板状の形状を有する。図1(b)では、振動板2の一部が略図的に示されているが、実際には、振動板2は、積層型圧電体2aと、積層型圧電体2aの両面に形成された電極2b,2cとを有する。積層型圧電体2aは、2以上のPZTからなる圧電体層を有する。
【0024】
隣接し合う圧電体層が、厚み方向において逆方向に分極処理されている。従って、電極2b,2cから交番電界を印加することにより、振動板2は屈曲振動モードで励振される。すなわち、振動板2は、本実施形態では、圧電振動子である。
【0025】
なお、圧電振動子の構造は、図1(c)に示す積層型圧電体2aを用いたものに限定されない。例えば、図9に示す振動板2Aのように、金属板2d上に、厚み方向に分極された圧電体層2e及び電極2fが積層されているユニモルフ型の圧電振動子であってもよい。さらには、本発明においては、振動板2は、圧電振動子以外の振動体であってもよい。
【0026】
図1(a)及び(b)に示すように、支持シート3の上面に振動板2が貼り付けられている。この貼り付けは接着剤等の適宜の接合材を用いて行うことができる。
【0027】
支持シート3は、矩形板状の振動板2が貼り付けられている振動板積層部3Aと、振動板積層部3Aに連ねられており、振動板積層部3Aの外側に至っている矩形枠状の延長部3Bとを有する。この矩形枠状の延長部3B内の外側部分が、枠体4により固定されている。
【0028】
枠体4は、本実施形態では、矩形枠状の平面形状を有する。すなわち、枠体4は、矩形の開口部を有する。この矩形の開口部は、対向し合う一対の長辺4a,4bと、対向し合う一対の短辺4c,4dとを有する。隣り合う辺、すなわち、辺4aと4cとが接続されている部分を、第1のコーナー部4eとする。また、辺4bと辺4cとが接続されている部分を第2のコーナー部4f、辺4aと辺4dが接続している部分を第3のコーナー部4g、辺4dと辺4bが接続している部分を第4のコーナー部4hとする。
【0029】
上記枠体4は、金属板4i,4jを有する。金属板4i,4jが、支持シート3を挟持するようにして貼り合わされている。この貼り合わせは、接着剤等の適宜の接合材を用いて行うことができる。
【0030】
なお、枠体4は、金属に限らず、セラミックス等の他の剛性材料により形成することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、金属板4iと金属板4jは、同じ平面形状を有するが、異なる平面形状を有していてもよい。例えば、金属板4jを金属板4iよりも外側に張り出させてもよく、張り出された部分において電気的接続等を行ってもよい。
【0032】
上記支持シート3は、合成樹脂フィルムからなる。より詳細には、後述するように支持シート3は、複数枚の合成樹脂フィルムを積層することにより形成されている。もっとも、支持シート3は、合成樹脂フィルムに限らず、金属板により形成されていてもよい。
【0033】
本実施形態の振動装置1では、上記圧電振動子からなる振動板2を屈曲モードで励振した場合、振動板2が、柔軟性を有する支持シート3により支持されているため、振動板2の変位がさほど妨げられない。特に、本実施形態の特徴は、上記支持シート3の厚みが部分的に異ならされており、それによって、大きな変位量を得ることが可能とされている。これを、図2〜図6を参照してより具体的に説明する。
【0034】
本実施形態の振動装置1では、上記支持シート3が厚み分布を有する。図2(a)は、上記支持シート3における厚み分布を模式的に示した振動装置1の平面図である。図2(b)は、上記振動装置1の底面図であり、図2(b)中では、上記支持シート3の厚み分布が模式的に示されている。すなわち、支持シート3は、前述した枠体4の第1〜第4のコーナー部4e〜4h近傍において、最も厚い領域3aを有し、該領域3aから遠ざかるにつれて、厚みが順次小さくなる領域3b,3c,3d及び3eを有する。
【0035】
このような領域3a〜3eを形成するために、本実施形態では、図2(c)に示すように、領域3aでは、合成樹脂フィルム31〜35が積層されている。そして、領域3bでは、合成樹脂フィルム層32〜35、すなわち4層の合成樹脂フィルムが積層されている。領域3cでは、3層の合成樹脂フィルム層33〜35が積層されており、領域3dでは、合成樹脂フィルム層34,35が積層されている。
【0036】
領域3eでは、単一の合成樹脂フィルム層35のみが存在する。このように、合成樹脂フィルムの積層数を領域3a〜3eで異ならせることにより、領域3a〜3eにおける支持シート3の厚みが異ならされている。
【0037】
従って、支持シート3の枠体4に貼り付けられている部分においては、辺4a〜4dの中央部分に貼り付けられている支持シート部分の厚みよりも、支持シート3の枠体4の開口部のコーナー部4e〜4hに貼り付けられている部分、すなわち領域3aの厚みが大きくされている。また、上記のように複数枚の合成樹脂フィルム31〜35を用いているため、本実施形態では、辺4a〜4dの中央部に貼り付けられている支持シート部分から、コーナー部4e〜4hに貼り付けられている支持シート部分に向かうにつれて、支持シート3の厚みが段階的に厚くなっている。
【0038】
また、図2(c)に示すように、支持シート3の中央部分から、支持シート3の対角線方向に第1のコーナー部4eに向かう部分においても、支持シート3の厚みが、領域3eから、領域3d,領域3c,領域3b,領域3aに向かうにつれて厚くされている。
【0039】
本実施形態では、支持シート3の厚みが、上記のように設定されているので、枠体4のコーナー部における枠体4による支持シート3の保持強度が枠体4の開口部の辺の中央部における枠体4による支持シート3の保持強度よりも高くされている。
【0040】
本実施形態の振動装置1では、支持シート3が上記厚み分布を有するため、大きな変位量を得ることができる。これを、具体的な実験例に基づき説明する。
【0041】
本実験例では、振動板2は、PZTからなり、縦15.6mm×横波12mm×厚み110μmの8層の圧電体層を有する積層型圧電体を用いた。
【0042】
また、枠体4は、0.2mmの厚みの金属板4i,4jを積層することにより形成した。
【0043】
上記枠体4の開口部は、辺4a,4bの長さが16.6mm,4c,4dの長さが13mmの矩形の開口部とした。
【0044】
上記支持シート3としては、以下の第1〜第5の合成樹脂フィルム31〜35を積層体により構成した。
【0045】
第1の合成樹脂フィルム31:厚み20μm
第2の合成樹脂フィルム32:厚み10μm
第3の合成樹脂フィルム33:厚み10μm
第4の合成樹脂フィルム34:厚み20μm
第5の合成樹脂フィルム35:厚み140μm
【0046】
なお、第1〜第5の合成樹脂フィルム31〜35は、いずれもエチレンプロピレンゴム系樹脂からなる。また、第1〜第5の合成樹脂フィルム31〜35は、厚みを実質的に無視し得るシリコン系接着剤層を介して貼り合わせた。
【0047】
比較のために、上記支持シート3に代えて、厚みが図5の破線で示すように全領域において一定である支持シートを用いたことを除いては、上記実施形態と同様にして比較例の振動装置を用意した。
【0048】
図3は、上記比較例の振動装置に10Vの電圧を印加した際の有限要素法による変位形状を模式的に示す斜視図である。図4は、上記実施形態の実験例として用意した振動装置の有限要素シミュレーションによる変位形状を示す模式的斜視図である。なお、図3及び図4は、枠体4で囲まれた開口部の変位形状を示す。すなわち、支持シート3は、振動板2と共に振動するが、枠体4により拘束されている。従って、図3及び図4に示す変位形状は、枠体4の開口部内における振動板2及び支持シート3からなる構造の変位形状を示す。
【0049】
図3及び図4における数値は、上記支持シート3が枠体4の開口部の辺4a,4dに貼り付けられている部分における規格化された変位量を示す。
【0050】
図3と図4とを対比すれば明らかなように、上記比較例に比べて、上記実施形態によれば、大きな変位量の得られることがわかる。すなわち、図3の破線で示す円Xで囲まれるコーナー部では、コーナー部がマイナス方向に比較的大きく変位していることがわかる。これに対して、図4に示すように、上記実施形態では、破線で示す円Yで囲まれた部分すなわちコーナー部におけるマイナス方向の変位が非常に小さいことがわかる。
【0051】
図6におけるコーナー部4e〜4hすなわち破線で示す円Yで囲まれた部分において、変位が非常に小さくされており、特にマイナス方向の変位が小さくなっている。それに対して、円Zで囲まれた辺4a〜4dの中央部において変位量が大きくなっている。これは、上記厚み分布を有する支持シート3を用いていることによる。従って、本実施形態の振動装置1では、支持シート3に振動板2が接合されている構造の変位量を飛躍的に大きくでき、大きな音圧を得ることができる。
【0052】
上記のように、支持シート3に厚み分布を与えるだけで、本実施形態では大きな変位量を得ることができる。従って、部品点数の増大や組み立て工程の煩雑さをまねくことなく、大きな音圧を得ることができる振動装置を提供することができる。
【0053】
図7(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態の振動装置を説明するための模式的平面図及び模式的底面図である。
【0054】
図7(a)及び(b)においても、図2(a)及び(b)と同様に、支持シート3の厚み分布を模式的に示すこととする。すなわち、領域3a〜3eは、第1の実施形態と同様に厚みが異ならされている。第2の実施形態が第1の実施形態と異なるところは、枠体4Bの平面形状が異なることにあり、その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0055】
枠体4Bの開口部は、略矩形形状を有する。すなわち、辺4a〜4dの中央部において、開口部が外側に膨らんでいる。従って、振動板2と枠体4との間の間隔が辺4a〜4dの中央においてコーナー部4e〜4hに比べて相対的に大きくされている。言い換えれば、辺4a〜4dの中央部からコーナー部4e〜4hに向かうにつれて、振動板2と枠体4との間の間隔が小さくなっている。
【0056】
このように、振動板2と枠体4との間の間隔、辺4a〜4dの中央部に比べコーナー部4e〜4h側において小さくすることにより、コーナー部において支持シート3の変位をより小さくすることができる。また、辺4a〜4dの中央側における変位をより大きくし、それによって、支持シート3に振動板2が接合されている構造の変位量を効果的に大きくすることができる。このように、支持シート3に厚み分布をもたせるだけでなく、枠体4と振動板2との間隔を調整することによっても、変位量をさらに拡大することができる。
【0057】
第1,第2の実施形態では、支持シート3の厚みが段階的に変化されていたが、図8に示すように、支持シート3の厚みは領域3aから領域3eに向かって連続的に変化されていてもよい。もっとも、このような厚みが連続的に変化する支持シート3を得ることは困難である。従って、第1,第2の実施形態のように、積層体からなる支持シート3において、積層体の積層数を領域3a〜3eで異ならせた構造が望ましい。
【0058】
上述してきた各実施形態では、枠体4の開口部は矩形の平面形状を有していたが、矩形以外の五角形、六角形などの他の多角形形状を有していてもよい。いずれにしても、多角形における複数の辺の中央部に貼り付けられている部分の支持シートの厚みよりも上記多角形におけるコーナー部に貼り付けられている支持シート部分の厚みを高くすれば、上記実施形態と同様に大きな変位量を得ることができる。
【0059】
また、第1〜第3の実施形態では、振動板2は矩形板状であったが、矩形板状以外の平面形状、例えば円形等であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…振動装置
2…振動板
2A…振動板
2a…積層型圧電体
2b,2c…電極
2d…金属板
2e…圧電体層
2f…電極
3…支持シート
3A…振動板積層部
3B…延長部
3a〜3e…領域
4…枠体
4B…枠体
4a〜4d…辺
4e…第1のコーナー部
4f…第2のコーナー部
4g…第3のコーナー部
4h…第4のコーナー部
4i,4j…金属板
31…第1の合成樹脂フィルム
32…第2の合成樹脂フィルム
33…第3の合成樹脂フィルム
34…第4の合成樹脂フィルム
35…第5の合成樹脂フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、
前記振動板に貼り付けられており、該振動板に貼り付けられている振動板積層部と、該振動板積層部の外側に張り出している延長部とを有する支持シートと、
前記支持シートの延長部に貼り付けられており、かつ前記振動板の外周縁と間隔を隔てて設けられた枠体とを備え、
前記枠体が、複数の辺と、隣り合う辺が接続している部分がコーナー部である多角形の形状の開口部を有し、前記支持シートの前記コーナー部における前記枠体による保持強度が、前記開口部の辺の中央部における支持シートの前記枠体による保持強度よりも高くなるように、前記支持シートの厚みが、前記枠体の開口部の辺の中央部から前記枠体のコーナー部側に向かって連続的にまたは階段的に厚くされている、振動装置。
【請求項2】
前記振動板と前記枠体の開口部との間の間隔が、前記開口部の辺の中央において相対的に広く、前記枠体の前記コーナー部において相対的に狭くされている、請求項1に記載の振動装置。
【請求項3】
前記枠体の開口部が矩形である、請求項1または2に記載の振動装置。
【請求項4】
前記振動板が矩形板状である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項5】
前記振動板が圧電振動子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項6】
前記支持シートが合成樹脂フィルムからなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項1】
振動板と、
前記振動板に貼り付けられており、該振動板に貼り付けられている振動板積層部と、該振動板積層部の外側に張り出している延長部とを有する支持シートと、
前記支持シートの延長部に貼り付けられており、かつ前記振動板の外周縁と間隔を隔てて設けられた枠体とを備え、
前記枠体が、複数の辺と、隣り合う辺が接続している部分がコーナー部である多角形の形状の開口部を有し、前記支持シートの前記コーナー部における前記枠体による保持強度が、前記開口部の辺の中央部における支持シートの前記枠体による保持強度よりも高くなるように、前記支持シートの厚みが、前記枠体の開口部の辺の中央部から前記枠体のコーナー部側に向かって連続的にまたは階段的に厚くされている、振動装置。
【請求項2】
前記振動板と前記枠体の開口部との間の間隔が、前記開口部の辺の中央において相対的に広く、前記枠体の前記コーナー部において相対的に狭くされている、請求項1に記載の振動装置。
【請求項3】
前記枠体の開口部が矩形である、請求項1または2に記載の振動装置。
【請求項4】
前記振動板が矩形板状である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項5】
前記振動板が圧電振動子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動装置。
【請求項6】
前記支持シートが合成樹脂フィルムからなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の振動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−119882(P2012−119882A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267028(P2010−267028)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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